ごく簡単に言ってしまえば、それは多額の資金を投じて初めて実現される事業だ。Apple は衛星ネットワークと地上ステーションの基盤構造を構築するために 4 億 5 千万ドルを投資した。この基盤構造は主として大域衛星通信サービスの会社 Globalstar によって運営されている。詳細は Apple の記事をお読み頂きたい。
私は Apple がこの機能のために注ぎ込んだ資金の額に感銘を受けた。命を救うためなら使う金額が多過ぎることはないと言うのは簡単だが、現実的に言って Apple も金を稼ぐためにビジネスをしているのであり、命を救うためにしているのではない。緊急 SOS 機能が iPhone にとって競争力のあるセールスポイントになるということもある程度は言える。とりわけ、安価であることが多い大量の Android フォンを相手の競争なのだから。
ただ、衝突事故検出については多くの人たちが実際に衝突事故に遭遇しなくてもその有用性を想像できるのとは違って、衛星通信を用いた緊急 SOS 機能があることを理由に iPhone を買いたい人が多くなることは予想しにくい。米国やカナダに住んでいてセルラー電波の届かないところで生命にかかわる状況に陥ることを心配する人はそう多くないだろう。(だからと言ってセルラー電波の届かないところで長時間を過ごす人が多くいることを否定している訳ではないが、そもそもそういう人たちはおそらくずっと以前から衛星通信経由で緊急サービスに連絡できなくても何とか生き延びてきたに違いない。)
けれどもそれよりもっと考えられるのは、Apple が今後ますます衛星通信が重要度を増すと見ているのではないかという点だ。衛星通信を通じた緊急 SOS も、また衛星通信対応の Find My 機能も、こちらは iPhone ユーザーが衛星通信を通じて自分の位置を共有できるというものだが、いずれもこのテクノロジーを活用する最初の機能としてスタートするのだろう。
何年も前に、私は極めて普通の退屈な事務の仕事をしていた。通勤は長く、ストレスの多いものだったが、テック関係のポッドキャストを聞くことが正気を保つ一つの方法であった。私が聞いていたのは、TWiT, John Gruber の The Talk Show, Mac Power Users, 等々であった。休憩時間には、最新のテックニュース、とりわけ Apple に関係するものに遅れずについて行こうとしたりしていた。
私は Apple メディアに関係する一人になりたいという遙かな夢を抱いていた。Macworld 誌に記事が掲載される、Daring Fireball の第一面を飾る、Mac Power Users のインタビューを受ける、そして、ひょっとしたら本を出版するといった夢だ。
ある日、私は深い失望に苛まされたままで職場から帰途についていた。私は資格もないのに経理の仕事に昇進していたが、それは惨めなものであった。私には長いこと付き合っていた相手がいたが、それは徐々に冷えていっていた。そんな時、新しい女性、Hannah と出会った。私の人生は何処にあり、そして何をすべきか全く分からないでいた。停止信号に出会い、視線を下げ標識を見ようとした。そして視線を上げたら目の前にピックアップトラックが止まっていて、そこには "Hannah: Making Your Dreams a Reality (Hannah はあなたの夢を叶える)" と書いてあった。私は誰も信じてくれないだろうと思って、写真を撮った。その写真を見ても、未だ誰も信じてくれない!
お笑い芸人 Bill Engvall 曰く:"これがお前のしるしだ"。我々は一年とたたず結婚した。
私は暇を見つけて小さなブログを始め、そして本当はそんな気も無しに一人の Apple ブロガーとなった。それは私が動かされるものであり、それ故に書きたいものであった。Glenn Fleishman が私のポストの一つに目を留め ("iOS 6 の不可思議なセルラーデータ使用量の背後にあるもの" 29 September 2012 参照)、それを機に TidBITS に寄稿する様になった。私の最初の TidBITS 記事は "Apple TV Update 5.1.1、Ethernet で障害の可能性" (2 December 2012 参照) で、そして驚くべき事に、私は未だに時折それに言及している、と言うのも Apple は Apple TV Ethernet 機能を Wi-Fi 程にはテストしていない様に見受けられるからである。
私が最初に Apple 空間に惹きつけらた時に思った事の一つは、惹きつけているのは Apple 自体ではなく、Apple を取り巻く共同体でありそして Apple の活動領域で偉大なものを作り上げている人々であることであった。私にとって Apple 空間を特別なものにしたのは、開発者達であった - 例えば AgileBits, Bare Bones Software, Marco Arment, Omni Group, Pixelmator, Rogue Amoeba, Smile (今や TextExpander) - そしてもっともっとあるが紙面に限りがあるので全部は挙げられない。
Apple が最初に内蔵のテキスト拡張機能を発表した時、私は思った、"おっと、Smile は窮地に立つぞ。TextExpander は間もなく用なしになってしまうかも。" しかし、そうはならなかった。代わりに、同社は成長を続け、そして確信を持って TextExpander に全面的に焦点を当てる舵取りをし、最近 $41.4 million の資金供与を Summit Partners から得た。他のテック会社の多くは減速し始め採用を見合わせている - Apple でさえも。不確実な経済条件下でも TextExpander は成長し採用していると言う事実は、Philip Goward と Greg Scown が最初は簡単なユーティリティの様に見えたものから作り上げてきた強固なビジネスに対する証しでもある。
TextExpander が資金調達をしたというのを見た後、私は彼らからの求人に注意を払い始めた。何故ならば、彼らはこれから大きく成長しそうに思えたからである。そして、 Business Journalist 職に対する求人を見つけた。余り深く考えもせず - Adam の応援はあった - 私は詳細を聞くため TextExpander に連絡を取った。一週間もたたない内に、私は面接を受け、試験プロジェクトを一つこなし、最終面接を受け、そして採用の提案を受けた。物事が動くあまりの速さに私の心は未だ戸惑っていた。
と言う訳で、この 14 November 2022 号が私の TidBITS の編集主幹としての最後の号となる。私は少し時間を取って農園と先延ばしにしていたプロジェクト、本のアップデートや Apple Buying Advice の様な、に集中する積もりだ。そして、28 November 2022 には、TextExpander の Business Journalist となり、他のプロジェクトもあるが、TextExpander ブログのコンテンツの責任者となる。
私がこの職に魅せられた事の一つは、TextExpander が質の高いコンテンツを出したいそしてもうこれ以上の低品質の SEO (サーチエンジン最適化) ミルを走らせたくないと言う意向である。私は、TidBITS と Take Control での長年の経験を生かして、TextExpander に対する詳細な how-to コンテンツを作り出して行き、そしてそのブログを読者が積極的に読みたいと思う一つの行き先にしたいと思っている。
近くに Apple Store がある人たちが多いことは知っているし、よく行くという人さえおられるだろう。でもニューヨーク州の田舎 Ithaca に住んでいる私にとっては (ここでは "Centrally Isolated" (中央に孤立して) と書かれたステッカーを貼った車をよく見る)、一番近い Apple Store は Syracuse にあって車で1時間、次に近い Rochester 近郊の Apple Store までは2時間かかる。遠くにあることと、COVID の心配があって屋内で不特定多数の人と入り交じりたくないと思う気持ちから (その心配は最近の災難だらけのギリシャ旅行で実証された)、私はパンデミック時期以来一度も Apple Store に行っていなかった。けれども Tonya と私は先週末にクロスカントリーレースに参加するため Rochester にいたので、良い機会だと思って Apple Eastview ストアに立ち寄り、まだ手に取って見たことのなかったいろいろな製品を見てみることにした。
Apple Store に立ち寄ろうと思った一番のきっかけは Apple Watch Ultra だった。私が現在使っている 40mm の Apple Watch Series 5 に比べてかなり大きいということは知っていたが、実際に手首に着けてどんな感じなのかは分からなかった。(2022 年 9 月 7 日の記事“Apple Watch Series 8 と Apple Watch Ultra、健康、安全、接続性機能を拡大”参照。) 手首に着けてみると、私の最初の感想は確かにこの Ultra は大きくて分厚いけれども、不恰好に感じるほどではないというものだった。重さも分厚さも問題ではなかった。
さらにもっと問題なのはバンドだった。Apple は Apple Watch Ultra 用にバンドを 3 種類販売している。Ocean Band、Alpine Loop、Trail Loop だ。Ocean Band と Alpine Loop は手首に着けるのも調整するのもひどく具合が悪い。それに比べて Trail Loop の無段階調整と面で取り付けるやり方の方がずっと魅力的だ。もちろん他の2つのバンドでも慣れれば使えるという人もいるだろうが、私は好きになれなかった。
人並外れて太い手首をお持ちでないのならば、Apple Watch Ultra を買う前に実際に Apple Store を訪れて異なるバンドを試着してからにすることを強くお勧めしたい。Apple は従来モデルの Apple Watch についてはすべての人があらゆるサイズにアクセスできるよう気を配ってくれているけれども、Ultra だけは客層が限られるようだ。
いや、私は買わなかった。今使っている Apple Watch Series 5 や Garmin Forerunner 645 にもし何か起これば考えることになるだろうが、今や新しい低電力モードでバッテリーの保ちが良くなったこともあるし、まだ一年か二年はそういう事態にならないのではないかと思う。(2022 年 10 月 10 日の記事“watchOS 9 の Low Power Mode、古い Apple Watch の耐用年数を延ばせるかも”参照。)
その後も私はウォレットケースに注意を払い続けている。なので、Apple の MagSafe 対応 iPhone Leather Wallet がどんなものか、とりわけ Apple の MagSafe 対応 iPhone 14 Pro Leather Case と組み合わせて使った場合はどうなのかに興味があった。Encased の iPhone 14 Pro Clearback Case with TPU Wallet にはデザイン上の欠陥があったので MagSafe 対応ウォレットが好きになれるかどうか分からなかったが、きっと Apple のケースなら最高のものなのだろうという気がしていた。
単刀直入に言って、私は好きになれなかった。裸の iPhone 14 Pro で使うと少しだけ磁力を強く感じたが、とりわけ iPhone 14 Pro Leather Case と組み合わせた状態では握った感触が少々頼りなかった。すぐに外れてしまったりポケットから iPhone を取り出す際に取れてしまったりするほどではなかったけれども、きっとポケットの中で手探りしてしまうだろうという気がした。ひっきりなしに。これでは印象が良いとは言えない。
第6世代 iPad mini: 私は小型の iPhone が好きなので、これまではこの $499 の iPad mini を大き過ぎて不恰好な iPhone Pro Max モデルに似ていると感じて良い印象を持てなかった。でも実際に触ってみると、意外にも iPad mini が気に入った。とりわけ、読書をしたりウェブをブラウズしたりするのに具合が良いと思った。四角張ったデザインと、第2世代 Apple Pencil との互換性を備えている。ただ、iPad mini を購入するつもりはない。自分の iPhone 14 Pro で問題なく読書ができるからだ。でも、これは素敵だ。
第5世代 iPad Air: これも、以下に述べる iPad モデルも、すべて四角張ったデザインであり、第2世代 Apple Pencil の磁力充電が使えるのでずっとエレガントだ。でも私が Apple Pencil を使うのは年にほんの数回に過ぎず、新たに一本買うのも正当化しにくいし、そもそもこの iPad Air は既に $599 とかなり高い。
第4世代 11 インチ iPad Pro: 価格が $799 と、かなりよく似た iPad Air に比べて $200 も高いので、プロレベルのビジネス上の必要でもなければ 11 インチ iPad Pro を買う理由を見出すのは難しい。iPad Pro のパワーを活用できる仕事をしている人ならば、その支出を正当化できるのだろうが。
第6世代 12.9 インチ iPad Pro: これまで私は 12.9 インチ iPad Pro に触ったことがなかったので、今回それがどんなに大きいか、持ってみてどんなに扱いにくいかにびっくりした。キーボードを取り付けてタッチスクリーンのラップトップ機として使うのならば想像できるけれども、手に持って使うなど私には全然考えられない。その上価格が $1099 (キーボードや Apple Pencil を付けずにこの値段だ) となれば、大スクリーンとパワーがどうしても必要だという人以外には意味を成さないだろう。
27 インチ iMac の後継機の一つの選択肢として、Apple のラップトップ機のどれかに Studio Display なり他の大型モニタなりを組み合わせるという方法がある。私は M1 搭載 MacBook Air を持っていて大いに気に入っているし、Tonya は最近 2016 年型 MacBook Pro を M2 搭載 MacBook Air にアップグレードしたばかりで、こちらは私のマシンよりもっと素敵だ。けれどもそのいずれも、USB ベースの DisplayLink ソリューションに頼らない限りたった 1 台のディスプレイしか駆動できないという制約を持つ。
対照的に、14 インチ MacBook Pro と 16 インチ MacBook Pro はいずれも内蔵ディスプレイに加えてあと 2 台のディスプレイを駆動できる。そのお陰で、私の現在の 27 インチ iMac と 27 インチ Thunderbolt Display の組み合わせを MacBook Pro と 2 台の外付けモニタの組み合わせで置き換えるという可能性が生まれる。だからこそ、私はこれらの新型 MacBook Pro を調べてみようと思った。
16 インチ MacBook Pro の大きさに私は衝撃を受けた。これまで私は大型のラップトップ機を好きだったことは一度もないが、それにしてもこれは巨大だった。このフォームファクターが大好きな人もきっといるとは思うけれども、私の身体と比べてあまりにも不釣り合いに思える。ただ、私は大体においてラップトップ機を膝の上に置いて使う。もしも Mac Portable のように、つまり基本的に机の上に置いて使うのならば、たぶん問題ないのだろう。
その一方で、14 インチ MacBook Pro は素晴らしいと思った。MacBook Air に比べて少しだけ大きく、重さははっきり増すけれども、縁が丸まっているところが好ましいと私は思った。長年にわたって私は多くの MacBook モデルが鋭く尖った縁を持っているのを好きになれないでいた。でもこの 14 インチ MacBook Pro では、不快な感じに尖っているのは下側ケースの内側だけだ。私がデスクトップとラップトップの Mac を使い分けるのを止めてラップトップ主体の Mac ユーザーになる日が来るのかどうかは知らないが、14 インチ MacBook Pro があればそれも問題外として片付けられないような気がする。
実際に訪れて確かめる
テクノロジー製品について知るべきことはすべてオンラインで分かるとうそぶくことは容易いし、正直言って私もこれまで Apple が発表するスペックやその他の情報に基づいてそれらの製品についてある程度以上のレベルの解説を書いてきたと思っていた。しかしながら今回の旅で、購入しようと思っているものを購入前に実際に手で触れてみるのがどれほど重要かが明らかとなった。例えば私は自分が iPad キーボードに全然好意を持てなかったという事実に我ながら驚いたし、24 インチ iMac に自分が感銘を受けたことにも驚いた。そう、確かに Apple 製品はすべて 14 日間以内に返品すれば無条件で全額返金されるけれども、もしもお近くに Apple Store あるいは独立の Apple 製品取扱店があるならば、その店舗を実際に訪れる方がたぶん楽だろう。
Parallels が Parallels Desktop for Mac 仮想化ソフトウェアのバージョン 18.1 をリリースして、macOS 13 Ventura のための修正を加えた。今回のアップデートは VM のアクティビティインジケーターの位置が正しくなかったのを修正し、Stage Manager を有効にした Coherence 表示モードで Windows の Start Menu が正しく開かなかったバグを修正し、"Share Bluetooth devices with Windows" オプションが有効な場合に起こったクラッシュを解消した。さらに、Parallels Desktop 18 for Mac Pro Edition は M1 Ultra チップ搭載の Mac Studio で仮想マシンに最大 128 GB の RAM を割り当てられるようにした。14 日間有効のフル機能試用版もある。(標準版 $99.99 [アップグレード $69.99]、Pro Edition は年額講読 $119.99 [アップグレード $69.99]、Business Edition は年額講読 $149.99、321.2 MB、リリースノート、macOS 10.14.6+)