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#1636: TidBITS が Josh との別れを惜しむ、OS セキュリティアップデート、衛星通信技術を用いた緊急 SOS の詳細、Apple Store で実地体験

十年近くも TidBITS で編集主幹として働いてきた Josh Centers が、新しい仕事に移ることになった。これまで何をしてきたか、これから何をするかについて彼自身が語る。Apple が iOS 16、iPadOS 16、および macOS 13 Ventura に重要なセキュリティアップデートをリリースしたので、それぞれのオペレーティングシステムを走らせている人は今すぐアップデートしよう。衛星通信技術を用いた緊急 SOS を Apple が iPhone 14 と共に発表した時点ではまるで魔法のように聞こえたものだったが、今回 Apple はこの機能の背後にあるものについてさらなる情報を明かした。それからもう一つ、Adam Engst が最近 Apple Store を訪れた体験を議論し、Apple の各種製品を直接見て触って感じた印象がいくつかの製品に対する彼の考え方を変えたと語る。今週注目すべき Mac アプリのリリースは LaunchBar 6.16、Parallels Desktop 18.1、Zoom 5.12.8、それに Lunar 5.8 だ。

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

iOS 16.1.1、iPadOS 16.1.1、macOS 13.0.1 Ventura が 2 件のセキュリティホールを修正

Apple が iOS 16.1.1、iPadOS 16.1.1、および macOS Ventura 13.0.1 をリリースして、libxml2 (XML 書類を解析するためのソフトウェアライブラリ) にあった 2 件の深刻なセキュリティ脆弱性を閉じた。2 件とも、リモートユーザによって「アプリが突然終了されたり任意のコードが実行されたりする」可能性があったという。遠隔にいるユーザーにそのようなことができてしまうのが深刻な問題であるのは言うまでもない。救いと言えるのは、これらの脆弱性が Google Project Zero によって発見されたものであり、実際に攻撃に使われてはいないことだ。

iOS 16.1.1 や iPadOS 16.1.1 へのアップデートは Settings > General > Software Update で、macOS 13.0.1 へのアップデートは System Settings > General > Software Update でできる。あなたのデバイスが iOS 16、iPadOS 16、または Ventura を走らせているならば、これらのセキュリティの問題を修正するためにできる限り早くアップデートすべきだ。それより古いがまだサポート対象のオペレーティングシステムに対して Apple は何もリリースしていない。それは古いシステムがこれらの脆弱性の影響を受けないからなのか、それとも近日中にそちらにもアップデートが出ることになるのか、私たちには分からない。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple、衛星通信技術を用いた緊急 SOS についてより多くを語る

iPhone 14 の発表の中で最も興味を引いた点の一つは、Apple が衛星通信技術を用いた緊急 SOS 機能を予定していると発表したことだった。(2022 年 9 月 7 日の記事“Apple、4 つのモデルの iPhone 14 を発表”参照。) セルラー電波も Wi-Fi 電波も届かない場合に、低軌道衛星との通信を使って iPhone ユーザーが緊急サービスに連絡できるようにするものだという。(例えばこの二人はそれがあれば助かったかもしれない。) 今回 Apple は更新情報を公開して、一見魔法のように見えるこの機能がどんなものかについて以前より詳しく説明した。

ごく簡単に言ってしまえば、それは多額の資金を投じて初めて実現される事業だ。Apple は衛星ネットワークと地上ステーションの基盤構造を構築するために 4 億 5 千万ドルを投資した。この基盤構造は主として大域衛星通信サービスの会社 Globalstar によって運営されている。詳細は Apple の記事をお読み頂きたい。

Globalstar ground stations
Globalstar 地上ステーション

私は Apple がこの機能のために注ぎ込んだ資金の額に感銘を受けた。命を救うためなら使う金額が多過ぎることはないと言うのは簡単だが、現実的に言って Apple も金を稼ぐためにビジネスをしているのであり、命を救うためにしているのではない。緊急 SOS 機能が iPhone にとって競争力のあるセールスポイントになるということもある程度は言える。とりわけ、安価であることが多い大量の Android フォンを相手の競争なのだから。

ただ、衝突事故検出については多くの人たちが実際に衝突事故に遭遇しなくてもその有用性を想像できるのとは違って、衛星通信を用いた緊急 SOS 機能があることを理由に iPhone を買いたい人が多くなることは予想しにくい。米国やカナダに住んでいてセルラー電波の届かないところで生命にかかわる状況に陥ることを心配する人はそう多くないだろう。(だからと言ってセルラー電波の届かないところで長時間を過ごす人が多くいることを否定している訳ではないが、そもそもそういう人たちはおそらくずっと以前から衛星通信経由で緊急サービスに連絡できなくても何とか生き延びてきたに違いない。)

けれどもそれよりもっと考えられるのは、Apple が今後ますます衛星通信が重要度を増すと見ているのではないかという点だ。衛星通信を通じた緊急 SOS も、また衛星通信対応の Find My 機能も、こちらは iPhone ユーザーが衛星通信を通じて自分の位置を共有できるというものだが、いずれもこのテクノロジーを活用する最初の機能としてスタートするのだろう。

例えば、将来の iPhone が拡張されたアンテナを使った無線通信機能を備えて、当初は低速のデータ通信に、将来はフル機能の音声通話に対応するということも考えられる。当然ながらそのようなサービスは無料で使える訳ではないだろうが、それは iPhone を差別化するものとして、また新たな収入源をもたらすものとして、働くことになるかもしれない。あなたなら、一切の中断なしに常時接続していられることに対して毎月いくらずつ払えるだろうか?

もっと一般的に言って、セルラー電波の受信地域がまだ幅広く行き渡っていない新興国において、衛星通信の接続性を持つことが長期的に市場シェアを獲得する役に立つのではなかろうか? この衛星通信サービスは当初は米国とカナダに限定されているけれども、Apple がこれを全世界に広げたいと思っているであろうことは想像に難くない。Apple は米国内ではスマートフォン市場のおよそ 50% を占めているけれども、インドにおいては 5% に到達することを目指して苦闘している最中だ。満足できるセルラーサービスを全世界の人口のうちかなりの割合が受けられていないという前提の下でならば、衛星通信による接続性は十分魅力的な機能となる可能性がある。

Apple は衛星通信技術を用いた緊急 SOS 機能と衛星通信対応の Find My 機能が今月中に米国とカナダで利用できるようになると繰り返し述べた。私が住んでいる地方でもセルラーサービスにばらつきがあるのが実情なので、私としてもこの機能が利用可能になればぜひテストしてみたいと楽しみにしている。

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Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

Josh Centers:さようなら、いままで魚をありがとう

何年も前に、私は極めて普通の退屈な事務の仕事をしていた。通勤は長く、ストレスの多いものだったが、テック関係のポッドキャストを聞くことが正気を保つ一つの方法であった。私が聞いていたのは、TWiT, John Gruber の The Talk Show, Mac Power Users, 等々であった。休憩時間には、最新のテックニュース、とりわけ Apple に関係するものに遅れずについて行こうとしたりしていた。

私は Apple メディアに関係する一人になりたいという遙かな夢を抱いていた。Macworld 誌に記事が掲載される、Daring Fireball の第一面を飾る、Mac Power Users のインタビューを受ける、そして、ひょっとしたら本を出版するといった夢だ。

ある日、私は深い失望に苛まされたままで職場から帰途についていた。私は資格もないのに経理の仕事に昇進していたが、それは惨めなものであった。私には長いこと付き合っていた相手がいたが、それは徐々に冷えていっていた。そんな時、新しい女性、Hannah と出会った。私の人生は何処にあり、そして何をすべきか全く分からないでいた。停止信号に出会い、視線を下げ標識を見ようとした。そして視線を上げたら目の前にピックアップトラックが止まっていて、そこには "Hannah: Making Your Dreams a Reality (Hannah はあなたの夢を叶える)" と書いてあった。私は誰も信じてくれないだろうと思って、写真を撮った。その写真を見ても、未だ誰も信じてくれない!

Hannah truck

お笑い芸人 Bill Engvall 曰く:"これがお前のしるしだ"。我々は一年とたたず結婚した。

私は暇を見つけて小さなブログを始め、そして本当はそんな気も無しに一人の Apple ブロガーとなった。それは私が動かされるものであり、それ故に書きたいものであった。Glenn Fleishman が私のポストの一つに目を留め ("iOS 6 の不可思議なセルラーデータ使用量の背後にあるもの" 29 September 2012 参照)、それを機に TidBITS に寄稿する様になった。私の最初の TidBITS 記事は "Apple TV Update 5.1.1、Ethernet で障害の可能性" (2 December 2012 参照) で、そして驚くべき事に、私は未だに時折それに言及している、と言うのも Apple は Apple TV Ethernet 機能を Wi-Fi 程にはテストしていない様に見受けられるからである。

かなりの記事を寄稿した後、Adam と Tonya は私を TidBITS Managing Editor に指名した ("Josh Centers が新しい編集主幹に" 6 May 2013 参照)。その後、私は最初の本 Take Control of Apple TV をリリースし、そしてアップデートしたばかりである ("Take Control of Apple TV、TidBITS でストリームする" 4 November 2013)。そして、私は Daring Fireball の一面も飾った (その後も何回かある)。Macworld にも二回寄稿したが、それは印刷版が廃止される直前でもあった。そして、本当に最後となった Macworld Expo では、著名な賓客のパネルの司会もした ("初めての Macworld 体験記... 2014 年版" 9 April 2014). Macworld で David Sparks に会った数年後には、Mac Power Users での講演に招待された

この間、Hannah と私は3人の子供に恵まれた:2013 年に Harris ("Canon EOS M、低価格で品質と簡便さを提供" 23 August 2013 参照)、2018 年に Stone ("TidBITS 2018 ホリデー休暇: 休んで (Rest) 回復し (Recover) 再充電 (Recharge)" 17 December 2018 参照)、そして 2021 年に Betsy である ("2021 年 6 月 21 日は新人研修のため電子メール号は休刊" 14 June 2021 参照)。

Stone, Betsy, and Harris in their Halloween costumes

あのピックアップトラックの予言は本当であった。私の夢は実現した。私が目標とした事は全てやれ、"次は何?" と自問する所となった。私に征服すべき世界はもう無い。しかし、私には食べさせてやらなければならない家族がいる。

Adam の柔軟性のお陰で、私には色々な副業を試してみる機会があった。鍛冶屋の訓練を受けたこともあるが、それは残念ながら成長産業ではない (しかし、産業文明が崩壊した時には役に立つかもしれない)。私はだいぶ前から準備と生存に興味を持っていたので、Jon Stokes は私を The Prepared の編集者の一人として招いてくれた。私はそれを2年程やった後、私自身の Substack である Unprepared を立ち上げた。それは正気とは思えない程面白かった - そして、時にはただ正気の沙汰ではなかった。私はまた Apple Buying Advice も作ったが (新しい Josh Centers のウェブサイト Apple Buying Advice" 21 February 2022 参照)、これは本当にアップデートする必要がある。子供達の他にも、小さな農園もやっている。Adam に言わせれば、私は沢山の猫を手玉に取ろうとしている。

私も 40 に近づいているので、中年の危機の時期である。しかし、半分程の年の女性と浮気をし小さいスポーツカーを買う代わりに、私は自分自身とその人生を深く検討してきた。私の残りの人生をどの様に見えるものにしたいのか? 私をやる気にさせるものは何か? 私が本当に信じるものは何か?

私が最初に Apple 空間に惹きつけらた時に思った事の一つは、惹きつけているのは Apple 自体ではなく、Apple を取り巻く共同体でありそして Apple の活動領域で偉大なものを作り上げている人々であることであった。私にとって Apple 空間を特別なものにしたのは、開発者達であった - 例えば AgileBits, Bare Bones Software, Marco Arment, Omni Group, Pixelmator, Rogue Amoeba, Smile (今や TextExpander) - そしてもっともっとあるが紙面に限りがあるので全部は挙げられない。

私は前から TextExpander を賞賛してきた、生産性ツールとしてそして会社として。彼等は長年 TidBITS のスポンサーであり、そして顧客転換率 (ウェブサイトの訪問者のうち、何パーセントがそのサイトで商品を購入したかを示す指標) について質問してきたのは一度に留まらない。彼等のマーケティングチームは賢く、効果的なブランドマーケティングは一朝一夕には為し得ないことを理解している。もし皆さんがこれ迄何らかの Apple 関連のメディアを使ったことがあれば、きっと TextExpander も耳にしたことがあるであろうし、テキスト拡張について考える時に最初に思い浮かべるものである可能性が高いであろう。

Apple が最初に内蔵のテキスト拡張機能を発表した時、私は思った、"おっと、Smile は窮地に立つぞ。TextExpander は間もなく用なしになってしまうかも。" しかし、そうはならなかった。代わりに、同社は成長を続け、そして確信を持って TextExpander に全面的に焦点を当てる舵取りをし、最近 $41.4 million の資金供与を Summit Partners から得た。他のテック会社の多くは減速し始め採用を見合わせている - Apple でさえも。不確実な経済条件下でも TextExpander は成長し採用していると言う事実は、Philip Goward と Greg Scown が最初は簡単なユーティリティの様に見えたものから作り上げてきた強固なビジネスに対する証しでもある。

TextExpander が資金調達をしたというのを見た後、私は彼らからの求人に注意を払い始めた。何故ならば、彼らはこれから大きく成長しそうに思えたからである。そして、 Business Journalist 職に対する求人を見つけた。余り深く考えもせず - Adam の応援はあった - 私は詳細を聞くため TextExpander に連絡を取った。一週間もたたない内に、私は面接を受け、試験プロジェクトを一つこなし、最終面接を受け、そして採用の提案を受けた。物事が動くあまりの速さに私の心は未だ戸惑っていた。

と言う訳で、この 14 November 2022 号が私の TidBITS の編集主幹としての最後の号となる。私は少し時間を取って農園と先延ばしにしていたプロジェクト、本のアップデートや Apple Buying Advice の様な、に集中する積もりだ。そして、28 November 2022 には、TextExpander の Business Journalist となり、他のプロジェクトもあるが、TextExpander ブログのコンテンツの責任者となる。

私がこの職に魅せられた事の一つは、TextExpander が質の高いコンテンツを出したいそしてもうこれ以上の低品質の SEO (サーチエンジン最適化) ミルを走らせたくないと言う意向である。私は、TidBITS と Take Control での長年の経験を生かして、TextExpander に対する詳細な how-to コンテンツを作り出して行き、そしてそのブログを読者が積極的に読みたいと思う一つの行き先にしたいと思っている。

私のキャリアの中でこの新しい章を始めるのにとても興奮しているが、この瞬間はほろ苦い。Hannah は、この現実に直面した時目に涙を浮かべていた。と言うのも TidBITS は 10 年に及ぶ我々の結婚生活全てにおいての拠り所だったからである。しかし、私は完全に姿を消す訳ではない:公の SlackBITS には姿を現すつもりだし、TidBITS のメールアドレスでもつながり、そして TidBITS Talk には引き続き参加する。加えて、ここかしこで記事を寄稿する誘惑にはとても逆らえないだろうと思っている。

TextExpander には私への信任とこの新しい機会に対して御礼申し上げたい。Adam と TidBITS の皆さんには私に賭けてくれたことそしてこれ程の長い間近くに置いてくれたことに対して感謝したい。そして、長年の間読んで頂きそして私の仕事を支援して頂いた TidBITS の読者である皆さんに感謝申し上げる。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple Store を訪れる: 直接見て触って感じる印象の値打ち

近くに Apple Store がある人たちが多いことは知っているし、よく行くという人さえおられるだろう。でもニューヨーク州の田舎 Ithaca に住んでいる私にとっては (ここでは "Centrally Isolated" (中央に孤立して) と書かれたステッカーを貼った車をよく見る)、一番近い Apple Store は Syracuse にあって車で1時間、次に近い Rochester 近郊の Apple Store までは2時間かかる。遠くにあることと、COVID の心配があって屋内で不特定多数の人と入り交じりたくないと思う気持ちから (その心配は最近の災難だらけのギリシャ旅行で実証された)、私はパンデミック時期以来一度も Apple Store に行っていなかった。けれども Tonya と私は先週末にクロスカントリーレースに参加するため Rochester にいたので、良い機会だと思って Apple Eastview ストアに立ち寄り、まだ手に取って見たことのなかったいろいろな製品を見てみることにした。

その場で何かを買うつもりはなかったが、最近リリースされた (およびそれほど最近でなくリリースされた) 製品のいくつかを実際に手に取って感じを掴みたいと思った。その多くが第一印象に属するものだったのだが、従来持っていた私の意見を変えてしまうものもあった。

Apple Watch Ultra

Apple Store に立ち寄ろうと思った一番のきっかけは Apple Watch Ultra だった。私が現在使っている 40mm の Apple Watch Series 5 に比べてかなり大きいということは知っていたが、実際に手首に着けてどんな感じなのかは分からなかった。(2022 年 9 月 7 日の記事“Apple Watch Series 8 と Apple Watch Ultra、健康、安全、接続性機能を拡大”参照。) 手首に着けてみると、私の最初の感想は確かにこの Ultra は大きくて分厚いけれども、不恰好に感じるほどではないというものだった。重さも分厚さも問題ではなかった。

Adam Engst wearing an Apple Watch Ultra

しかしながら、Tonya が Ultra を試着してみると、実際彼女の細い手首の上では滑稽なほど変に見えた。手首の平らな部分から外へはみ出してできる隙間に彼女は指を差し込むことさえできた。

さらにもっと問題なのはバンドだった。Apple は Apple Watch Ultra 用にバンドを 3 種類販売している。Ocean Band、Alpine Loop、Trail Loop だ。Ocean Band と Alpine Loop は手首に着けるのも調整するのもひどく具合が悪い。それに比べて Trail Loop の無段階調整と面で取り付けるやり方の方がずっと魅力的だ。もちろん他の2つのバンドでも慣れれば使えるという人もいるだろうが、私は好きになれなかった。

人並外れて太い手首をお持ちでないのならば、Apple Watch Ultra を買う前に実際に Apple Store を訪れて異なるバンドを試着してからにすることを強くお勧めしたい。Apple は従来モデルの Apple Watch についてはすべての人があらゆるサイズにアクセスできるよう気を配ってくれているけれども、Ultra だけは客層が限られるようだ。

いや、私は買わなかった。今使っている Apple Watch Series 5 や Garmin Forerunner 645 にもし何か起これば考えることになるだろうが、今や新しい低電力モードでバッテリーの保ちが良くなったこともあるし、まだ一年か二年はそういう事態にならないのではないかと思う。(2022 年 10 月 10 日の記事“watchOS 9 の Low Power Mode、古い Apple Watch の耐用年数を延ばせるかも”参照。)

MagSafe ウォレット

新しい iPhone 14 Pro を使い始めて、私はウォレットケースをずっと探してきた。(2022 年 9 月 26 日の記事“ウォレットケース3つ: Bellroy、Encased、Smartish”参照。) 私がカスタマイズして注文した Smartish Wallet Slayer Vol. 1 ケースはとても具合が良くて、3 枚か 4 枚のカードが楽に入る。カードと一緒に現金を入れることも可能だが、現金はまず滅多に使わないのでケースの内側に 20 ドル札を 2 枚入れておくようにしている。ボタンを触った時の反応性も iPhone 13 Pro の Bellroy ケースより良い。このケースの欠点を唯一挙げるとすれば、ケースの見た目と感触がちょっとプラスチックっぽいところだろうか。プラスチック製なので仕方のないことだが、私は Bellroy ケースのレザーの感触と滑らかな手触りが大好きだ。

Smartish Wallet Slayer Vol. 1 case with iPhone 14 Pro
Wallet Slayer Vol. 1 ケースは Electric Sheep スクリーンショットでカスタマイズしてある

その後も私はウォレットケースに注意を払い続けている。なので、Apple の MagSafe 対応 iPhone Leather Wallet がどんなものか、とりわけ Apple の MagSafe 対応 iPhone 14 Pro Leather Case と組み合わせて使った場合はどうなのかに興味があった。Encased の iPhone 14 Pro Clearback Case with TPU Wallet にはデザイン上の欠陥があったので MagSafe 対応ウォレットが好きになれるかどうか分からなかったが、きっと Apple のケースなら最高のものなのだろうという気がしていた。

単刀直入に言って、私は好きになれなかった。裸の iPhone 14 Pro で使うと少しだけ磁力を強く感じたが、とりわけ iPhone 14 Pro Leather Case と組み合わせた状態では握った感触が少々頼りなかった。すぐに外れてしまったりポケットから iPhone を取り出す際に取れてしまったりするほどではなかったけれども、きっとポケットの中で手探りしてしまうだろうという気がした。ひっきりなしに。これでは印象が良いとは言えない。

他のもっと安価な MagSafe 対応ウォレットをこれからも試してみたいと思っているけれども、Apple がこのウォレットとケースにそれぞれ $59 ずつという値札を付けているので、長期間使ってみてどうなのかを見極めるためだけに $118 も支払う気にはなれない。カスタマイズした Smartish ケースはたった $39.99 だったのだから。

iPad ラインアップ

私はあまり iPad を使っていない。病気で寝ているときにベッドでビデオを観るために使うくらいだ。iPhone、Mac、HomePod、それに Apple TV で私のデジタルな必要のほとんど全部が満たされている。現在持っている iPad はかなり古くなりつつある 10.5 インチ iPad Pro だけで、その Smart Keyboard が壊れて以来ますます使わなくなっている。それに、バッテリーが弱いので使う前に充電し直さなければならない。なので、私は新しい iPad を買うための市場にいると同時にあまり買う気にもならないという立場にいる。そういう気持ちを持ちつつ iPad の製品ラインアップを見て回って、こんな印象を受けた:

現行の iPad モデルを全部見て、それぞれキーボードを確かめても (キーボードについてはあとで述べる)、私にはどれかを買おうという熱意が全然湧かなかったので、古くなりつつある今の 10.5 インチ iPad Pro を壊れるまで使い続けようと思った。残念ながら Stage Manager とは縁がなかったようだ。

iPad キーボード

さきほども触れたように、私は何年も前に 10.5 インチ iPad Pro で使っていた Smart Keyboard を大いに気に入っていた。取り付けても iPad は大してかさ張らないので私はスクリーンを保護するためにも、少しは滑りにくくするためにも、また手早く開くだけですぐにタイプし始められることもあって、常時取り付けたままにしていた。折り畳み式のキーボードなので使う間以外はキーが外に露出することはない。閉じてスクリーンを保護している状態では外面が少しゴム引きになっている。反対側に折り畳んで iPad をキーボード無しの通常の形で使う間は、内側のソフトな布面が手に触れる。iPad の背面は保護されないが、私には気にならなかった。Smart Keyboard で私が経験した唯一の問題は、時々理由もなしに使えなくなることだった。特に酷使した訳でも、乱用した訳でもなかったのに。

もし新しい iPad を買うとなれば私にはキーボードが必要だが、$159 の Smart Keyboard に対応している現行モデルは第9世代 iPad のみだ。そこで私はそれ以外に可能なキーボード、つまり Magic Keyboard、Smart Keyboard Folio、Magic Keyboard Folio を調べてみた。いずれも、これまで手に取ったことはなかった。

全体的に見て、Apple の新しい iPad キーボード各種の価格と使い勝手を初代の Smart Keyboard と比べてみて、私はがっかりした。今すぐ Apple の製品を買わなければならないとしたら、私は最も安価な選択肢として第9世代 iPad と Smart Keyboard を選ぶことだろう。あるいは Logitech Combo Touch に乗り換えるかもしれない。

24 インチ iMac

次は 24 インチ iMac だ。これは 2021 年 4 月から市場に出ているが、私はまだ直接触る機会を持てないでいた。(2021 年 4 月 20 日の記事“Apple、新しい M1 ベース 24 インチ iMac を春色でリリース”参照。) ずっと以前から私は家庭用に使うには魅力的なマシンとなるだろうと思っていたが、Apple がこれをリリースした時点ではもっと大きなスクリーンを持つ iMac も出るだろうという確信があったので、もっとちゃんとしたスクリーン面積が必要なプロフェッショナル向きの Mac でないと思ってそれ以上関心を向けなかった。

でも、実際にこの 24 インチ iMac の 4.5K Retina ディスプレイをすぐ近くでじっくり見ると、このマシンのプロフェッショナルな可能性について自分の考えを変えざるを得なくなった。このディスプレイは見事な出来栄えで、確かにそのデフォルトの実用解像度は 2240×1260 ピクセルであって私の 27 インチ iMac の 2560×1440 ピクセル解像度ほど大きくないけれども、その差は横 320 ピクセル、縦 180 ピクセルとあまり気にならない程度だ。その上、デフォルトの実用解像度はこのディスプレイのネイティブな 4480×2520 の解像度をスケールダウンしたものなので、27 インチ iMac が使っている 2560×1440 の解像度にスケールアップしても十分使えるように見えた。眼鏡をかけた私の視力は特別に良くはなくて並程度だが、それでも解像度を細かくしたこのスクリーンでウィンドウを横に並べて十分作業ができると思った。

24-inch iMac screen check

私はプロフェッショナルとして生産的な仕事をするために2台の大きなスクリーンが絶対に必要だと思っているので、Apple がこれにマッチする 24 インチのディスプレイを作っていないのはとても悲しいことだと思う。別のメーカーから出ている 4K ディスプレイを見つけて 24 インチ iMac の高さと解像度にマッチさせることはひょっとすると可能かもしれないが、当面それは読者のための宿題としておきたい。そうは言っても、もしも Apple が 24 インチ iMac に M2 チップを搭載するようなことがあったならば、いずれそれを私の 27 インチ iMac の代わりとして真剣に考慮するかもしれない。(2022 年 3 月 12 日の記事“あなたの 27 インチ iMac の後継とすべきはどの Mac か?”参照。)

Studio Display

自分が 24 インチ iMac を気に入ったのは我ながら意外だったが、対照的に Studio Display は、何というか、まあまあだった。誤解しないで頂きたい。$1599 から $1999 (高さと傾きを調整できるスタンドを付けた場合) までという価格を除けば、Studio Display に悪いところは何もなかった。このディスプレイは素晴らしかったが、正直言って、私が 2014 年以来ずっと使っている 27 インチ iMac より優れているとは思わなかった。物理的にこれは 27 インチ 5K Retina ディスプレイであって、私の古い iMac と何ら変わらず、デフォルトの実用解像度は私が毎日使っているものと同じ 2560×1440 ピクセルだ。ウェブカメラが良くなったこと (はたして Apple はこの件に関する苦情に応えたのか?) を除いて、この Studio Display が私の Mac 体験をどのように改善してくれるのかが私には見えない。

でも、最大の問題点はどうにも受け入れ難い価格だ。とりわけ、私にあんなにも感銘を与えた新型 24 インチ iMac の価格が $1299 からとなっているのでなおさらだ。私が望む限り最高に飾り立ててさえたった $2099 であって、Studio Display で私ならこれを注文するであろうと思われる構成の価格よりも $100 だけ高いに過ぎない。

14 インチと 16 インチの MacBook Pro

27 インチ iMac の後継機の一つの選択肢として、Apple のラップトップ機のどれかに Studio Display なり他の大型モニタなりを組み合わせるという方法がある。私は M1 搭載 MacBook Air を持っていて大いに気に入っているし、Tonya は最近 2016 年型 MacBook Pro を M2 搭載 MacBook Air にアップグレードしたばかりで、こちらは私のマシンよりもっと素敵だ。けれどもそのいずれも、USB ベースの DisplayLink ソリューションに頼らない限りたった 1 台のディスプレイしか駆動できないという制約を持つ。

対照的に、14 インチ MacBook Pro と 16 インチ MacBook Pro はいずれも内蔵ディスプレイに加えてあと 2 台のディスプレイを駆動できる。そのお陰で、私の現在の 27 インチ iMac と 27 インチ Thunderbolt Display の組み合わせを MacBook Pro と 2 台の外付けモニタの組み合わせで置き換えるという可能性が生まれる。だからこそ、私はこれらの新型 MacBook Pro を調べてみようと思った。

16 インチ MacBook Pro の大きさに私は衝撃を受けた。これまで私は大型のラップトップ機を好きだったことは一度もないが、それにしてもこれは巨大だった。このフォームファクターが大好きな人もきっといるとは思うけれども、私の身体と比べてあまりにも不釣り合いに思える。ただ、私は大体においてラップトップ機を膝の上に置いて使う。もしも Mac Portable のように、つまり基本的に机の上に置いて使うのならば、たぶん問題ないのだろう。

その一方で、14 インチ MacBook Pro は素晴らしいと思った。MacBook Air に比べて少しだけ大きく、重さははっきり増すけれども、縁が丸まっているところが好ましいと私は思った。長年にわたって私は多くの MacBook モデルが鋭く尖った縁を持っているのを好きになれないでいた。でもこの 14 インチ MacBook Pro では、不快な感じに尖っているのは下側ケースの内側だけだ。私がデスクトップとラップトップの Mac を使い分けるのを止めてラップトップ主体の Mac ユーザーになる日が来るのかどうかは知らないが、14 インチ MacBook Pro があればそれも問題外として片付けられないような気がする。

実際に訪れて確かめる

テクノロジー製品について知るべきことはすべてオンラインで分かるとうそぶくことは容易いし、正直言って私もこれまで Apple が発表するスペックやその他の情報に基づいてそれらの製品についてある程度以上のレベルの解説を書いてきたと思っていた。しかしながら今回の旅で、購入しようと思っているものを購入前に実際に手で触れてみるのがどれほど重要かが明らかとなった。例えば私は自分が iPad キーボードに全然好意を持てなかったという事実に我ながら驚いたし、24 インチ iMac に自分が感銘を受けたことにも驚いた。そう、確かに Apple 製品はすべて 14 日間以内に返品すれば無条件で全額返金されるけれども、もしもお近くに Apple Store あるいは独立の Apple 製品取扱店があるならば、その店舗を実際に訪れる方がたぶん楽だろう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

LaunchBar 6.16

LaunchBar 6.16

Objective Development が LaunchBar 6.16 をリリースして、macOS 13 Ventura 対応を追加するとともに、新しい内蔵アクション Dark Mode On/Off を追加した。また、このキーボードベースのランチャーは画像を PNG や HEIC に変換する新しいアクションを追加し、Google Chrome の Bookmarks および History 索引付けを改良して複数個のプロファイルに対応し、アプリケーションの索引付けを拡張して Xcode の Simulator アプリも対象に含め、LaunchBar ウィンドウの上に項目をドラッグ&ドロップする際のハイライト挙動の見栄えを改善し、Firefox のブックマークや履歴の索引付けを修正し、正方形でない縦横比のアイコンの表示が正しくなかった問題に対処し、Chromium および Opera ウェブブラウザへの対応を削除した。(新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、16.3 MB、リリースノート、macOS 10.14.6+)

LaunchBar 6.16 の使用体験を話し合おう

Parallels Desktop 18.1

Parallels Desktop 18.1

Parallels が Parallels Desktop for Mac 仮想化ソフトウェアのバージョン 18.1 をリリースして、macOS 13 Ventura のための修正を加えた。今回のアップデートは VM のアクティビティインジケーターの位置が正しくなかったのを修正し、Stage Manager を有効にした Coherence 表示モードで Windows の Start Menu が正しく開かなかったバグを修正し、"Share Bluetooth devices with Windows" オプションが有効な場合に起こったクラッシュを解消した。さらに、Parallels Desktop 18 for Mac Pro Edition は M1 Ultra チップ搭載の Mac Studio で仮想マシンに最大 128 GB の RAM を割り当てられるようにした。14 日間有効のフル機能試用版もある。(標準版 $99.99 [アップグレード $69.99]、Pro Edition は年額講読 $119.99 [アップグレード $69.99]、Business Edition は年額講読 $149.99、321.2 MB、リリースノート、macOS 10.14.6+)

Parallels Desktop 18.1 の使用体験を話し合おう

Zoom 5.12.8

Zoom 5.12.8

Zoom は最近 会社名と同名のビデオ会議アプリをバージョン 5.12.6 にアップデートして、追加機能やバグ修正を加えた。デスクトップクライアントで製品タブの並べ替えができるようにし、画面共有の際にフローティングツールバーの近くにポインタをかざせば共有コンテンツが他の参加者にどう見えているかをプレビューできるようにし、終端間暗号化されたミーティングが最大 1000 人の参加者に対応し、チャンネル所有者がチャットチャンネルに最大 50 人の管理者を指定できるようにし、オランダ語への対応を追加し、GIF 検索でネットワークエラーが返された問題を解消し、多数の同時編集者によるホワイトボードのパフォーマンス低下の問題に対処し、古い SMS メッセージが消えていたバグを修正し、AirPlay でのネットワーク接続と共有に関する問題を解消した。

そのリリースの後間もなく Zoom はバージョン 5.12.7 を出していくつかマイナーなバグを修正し、それからバージョン 5.12.8 を出して Zoom Mail および Zoom Calendar クライアントを導入した。Zoom Mail Client を使えば Zoom デスクトップアプリから直接電子メールにアクセス、管理、メッセージ作成、返信できる。また、Zoom Calendar Client を統合したことによりカレンダーの中で直接に新規ミーティングをスケジュールしてそれに Zoom ミーティングを割り当てることができる。(無料、82.7 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

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Lunar 5.8

Lunar 5.8

Alin Panaitiu がバージョン 5.8 の Lunar をリリースして、このディスプレイ輝度制御ユーティリティに改良を施した。今回のアップデートではバグの多かったファジーマッチングのロジックに代えて Smith-Waterman アルゴリズムを使うことによりいくつかのクラッシュを修正するとともにモニタのマッチングロジックを改良し、Manual から別の順応モードへ切り替えた後に Adaptive Paused を再開できるようにし、ViewSonic VX2453 をプロジェクタとして探知できるように特例を追加し、音量ホットキーが無効化されている場合にオーディオ出力デバイスのファジーマッチングのロジックを無効化するようにし、また DDC AVService マッチングロジックでのメモリリークを修正した。(新規購入 $23、無料アップデート、19 MB、 リリースノート、macOS 11+)

Lunar 5.8 の使用体験を話し合おう