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#1637: 衛星通信による緊急 SOS と Find My 機能をテスト、Ventura で空き容量の問題、ロック画面写真シャッフル機能の楽しさ、Thanksgiving 休刊

ここ米国では Thanksgiving (感謝祭) のホリデーとなるので私たち TidBITS スタッフも数日間休暇を取って来週は休刊とし、次回の TidBITS 電子メール号は 2022 年 12 月 5 日の発行とさせて頂く。それまではどうぞ TidBITS ウェブサイトに載る新しい記事や、TidBITS Talk で進行中の議論をお読み頂きたい。議論の話題に間違いなく上るのは、macOS 13 Ventura へアップグレードする前に十分な空き容量を確保しておくべきだという Adam Engst の警告と、衛星通信による緊急 SOS と Find My 機能についての Adam のテストと分析だ。テクノロジーの話にうんざりした人たちには Glenn Fleishman が、iOS 16 で新たに加わった Lock Screen Photo Shuffle 機能が機械学習アルゴリズムを使って壁紙を取り替えることで楽しみをもたらしてくれたと語る。今週注目すべき Mac アプリのリリースは VMware Fusion 13、OmniFocus 3.14.1、Mactracker 7.12、それに SoundSource 5.5.6 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

2022 年 11 月 28 日は TidBITS 休刊

今週の木曜日 (2022 年 11 月 24 日) は米国では Thanksgiving (感謝祭) の祝日だ。TidBITS 関係者の全員が家族や友人とともに食卓を囲んで一週間を過ごせるように、2022 年 11 月 28 日は TidBITS の電子メール号を休刊にすることにした。次の電子メール号は 2022 年 12 月 5 日の発行となる。

来週の TidBITS 電子メール号は休刊にさせて頂くが、その間も TidBITS ウェブサイト への出版はいつも通り続けるし、非常に役に立つ TidBITS Talkの議論はずっと活発に続いている。サイトを時々チェックするか、RSS フィードを購読するか (TidBITS 会員はフルテキストのフィードを受けられることをお忘れなく)、Apple News でフォローするかして、私たちの最新の記事をお読み頂ければと思う。

Thanksgiving を祝う人たちが楽しくくつろいだ休日を過ごせればと願っている。休みなんかじゃないとおっしゃる方々には申し訳なく思う。Twitter の大惨事 についても、 FTX/crypto のドラマ のドラマについても、来週はニュースをメールでお届けできないのだから。(ただ、FTX の破産申請書の文面を注意深く読んだ Elizabeth Lopatto の記事はとても面白いのでお見逃しなく。)

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Ventura にアップグレードする前に、十分な空き容量を確保する

二つ前の macOS リリースの時、私は "Big Sur にアップグレードする前に十分な空き容量を確保する" (10 February 2021) を書いて、ユーザーにインストーラーバグのせいで Boot Recovery Assistant ループに入り込んでしまう危険性がある事を警告した。Apple はそのバグを macOS 11.2.1 で修正したが、TidBITS 読者の Marc Heusser が空き容量が十分でない M1 MacBook Pro 上で macOS 12.6.1 Monterey から macOS 13.0.1 Ventura にアップグレードしたら MacBook Pro が起動出来ないエラーに陥ってしまったと我々に言ってきた時、そのことを思い出した。Marc は MacBook Pro を働く状態にするために、バックアップから復元しなければならなかった。

では、どれだけあれば "十分な" 容量となるのか? 私の以前の記事では、Big Sur の技術仕様にリンクさせた。その中で Apple は最大で 44.5 GB の空き容量が必要になる場合があると言っていた。残念ながら、Apple は同様の仕様を Monterey にも Ventura にも明らかにしていない。しかしながら、我々の旧友である Charles Edge が最近 Free Space Required for Modern macOS Upgrades で必要な詳細を公表した。その中で、彼は Ventura は 25 GB の空き容量を必要とし、そしてインストーラー自身は 12.19 GB を必要とするので、これ等の数字を足し合わせたものが最も安全であろうから、少なくとも 37 GB が空いている事を確かめるべきだと言っている。

Apple が仕様を提供していないのに、Charles は何処からのこの 25 GB の数字を得たのか私は興味を持った。彼は私にそれは個人的経験だと言った。彼はあまり空き容量のない Mac に Ventura をインストールしようとしたことがあって、その時インストーラーから少なくとも 25 GB は空きを作る必要があると告げるプロンプトを受け取ったという。Trend Micro からのポストがその数字は何も彼の Mac 固有の数字ではない事を裏付けている。従って、安全を見れば、最低でも 37 GB と言う事になる。

では Marc Heusser の場合は、何が起こったのであろうか? Ventura のインストーラーは明らかに Charles に対してした様な警告を発せず、彼には先に進むために十分な空き容量があると判断したのであろう。Marc は、この問題は APFS スナップショットのせいではないかと推測していて、残念ながら、その可能性はある。APFS はとても有用だが、"空き容量" と言う概念をかなり曖昧に使っている。関与する複雑さの例を Howard Oakley が挙げている。 Howard の Mints ユーティリティからのスクリーンショットに見られる様に (Volumes ボタンをクリックする)、私の Mac の主ドライブは 75 GB が空きであるが、"便乗的使用" に対しては 94 GB が使え、そして "重要な使用" に対しては 143 GB が使える。Finder はこの 143 GB の数字を表示している。

Finding free space on a drive using Mints

私の推測を言えば、境目のケースがあって、インストーラーは始めるには十分な空きがあると信じたが (アップグレードは便乗的或いは重要と見做されると仮定)、実際にファイルのコピーを始めると APFS は必ずしも必要とするパージ可能な空間を明け渡さないというものである。

Charles は、彼がこの記事を発表して以来、彼もまた何人かの人から Ventura アップグレードが失敗しクリーンインストールとして始めからやり直さなければならなかったという話を聞いたと報じている。

では、皆さんはこの話から何を学ぶべきか?

Ventura へのアップグレード時に空き容量に関係した問題に遭遇したことがあれば、コメントで知らせて欲しい。

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Glenn Fleishman  訳: 亀岡孝仁  

Apple の新しい Lock Screen Photo Shuffle を使って反復する喜びを自分に

私は、技術が全体として私の生活そして私を取り巻く人々の生活をどの様に改善して来たかについて考える時、ワクチンの開発、化学療法や他のがん治療法の改善、そして Apple Watch の転倒検知や危険な気象条件の自動通知の様な緊急事態ツールに焦点を当てがちである。

しかし、技術が私の幸福をどの様に増進してくれたかに考えを巡らすとすると、そのリストはずっと短くなってしまう。私は現代の iPhone がもたらす写真の高い品質を楽しんでいる。私は FaceTime, Zoom, そしてその他のビデオ会議ツールを利用して家族や友人達とつながれて嬉しく思っている。Twitter や他のソーシャルメディアは間違いなく千差万別であるが、私は人々と新たなつながりを持てたし、とりわけこのパンデミックの期間中にそれは私の精神健康にとても重要であった。

しかし、純粋な喜びはどうであろうか? 私はそれに対する答えを皆さんに与えるのに四苦八苦して来たが、ここに来て Apple が iOS 14 と iPadOS 15 で Home Screen に対して Photos ウィジェットを追加させてくれ、そして iOS 16 で Photo Shuffle を Lock Screen 壁紙選択肢として使わせてくれて事情は変わった。私は Photos ウィジェットを私の最初の Home Screen に持っており、iOS 16 を使い始めて直ぐに Lock Screen に対してカスタムの Photo Shuffle を作成した。更に Apple がこの種の機械学習を Apple TV 上の My Photos スクリーンセーバーにも適用してくれたらと願うものである。

毎朝私が楽しみにしているのは、Home Screen 上の Photos ウィジェットにどんな写真が現れるかを見ることである。このウィジェットは For You セクションからの写真を示す。時として、Memories からの写真を見ることもあるかも知れない。それは AI が生成した "Pittsburgh を年月追って見る" とか "この日に" と言った型破りのコレクションである。

しかし、私が最も多く見るのは Featured Photos からのもので、私は好きである。Featured Photos は小さい、日替わりのアルバムで iOS が毎日私のために集めてくれる。Featured Photos はほぼ何時も 10 から 20 の画像を含んでおり、私の生活、概して私の子供達が主役の幸せで興味深いスナップショット集である。

Featured Photos は Memories の様に Apple が説明していない何らかの機械学習アルゴリズムに依存している。しかし、私はこちらの方が Memories よりも遙かに成功していると思う。Memories は時として奇妙に無関係だったり、退屈だったりする画像のスライドショーを私に示してくる。Featured Photos のスタックに自分で写真を付け加えることは出来ないが、削除は出来る。For You の Featured Photos コレクションの中で一枚の画像が表示されている場面で、右上隅にある ... アイコンをタップし、Feature This Person Less 或いは Remove from Featured Photos をタップする。後者を選ぶと、その写真をローテーションの中で見ることはなくなる。

Memories と Featured Photos のどちらも、勿論ながら、寂しさや悲しみを呼び起こす可能性を持つ。全てのテック会社は Facebook にまつわる Eric Meyer の 2014 年の体験から学んでいるはずである。Facebook は Year in Review 機能を展開して彼に6才の娘 Rebecca の画像を無分別に示したのだが、彼女は脳腫瘍でその年に死亡していた。賢明な会社は、Eric を招いてこの話題について話し合ったが、彼の経験が彼らの製品がこの悲劇的間違いを避ける手助けとなる事を望んでのことである。(Rebecca の人生は rebeccapurple と言う公式な CSS4 色の名前として追悼されている。)

Apple はこれを避ける何らかの方法を見いだした様に見受けられる。私の人生は、死、災害、そして争いに満ち溢れている訳ではないが、ここ 40 年以上の私のパッとしない年月に撮った写真のほぼ全部をデジタイズしてきたので、そこには昔の恋人達、壊れた或いはなおざりにされた友情、そして大事に思うが死んでしまった人達も含まれる。このデータセットからのものを見ることは殆どないが、文脈を無視して痛みを呼び起こすかも知れない画像を Photos ライブラリからパージしていたわけではない。それに最も近いのは私の母が私の子供達と一緒の写真で、定常的に現れるが、煩わしい程ではない。彼女は 2009 年に亡くなったが、私はこれ等の画像は、彼女がいたことを思い出すための切なく、甘く、そして素敵な方法だと思っている。

Apple の機械学習システムは手元に保存された、そして私の写真ライブラリを通じて同期された信号に依存していると私は思っている。それは、私が People アルバムで誰を認識したかを知っている;私は忘れたい人は加えていない。Photos は私が何回画像やビデオを見るかを追跡しているものと推測しているが、私が好きだと印を付けたものも知っている。そして、Featured Photos から写真を削除する必要があると気付くことも時折ある。もう十分で、これ以上は必要ないであろう。

iOS 16 の新しい Lock Screen Photo Shuffle 機能は、無作為ではあるがより焦点がはっきりした異なったデザインを持っている。Lock Screen 壁紙として Photo Shuffle を設定する時、Shuffle Categories を選択出来る:People, Pets, Nature, そして Cities がある。People の場合、出てくるのはあなたの People アルバムの一部であり、定常的に見たい人も選択出来る。私は、Apple が望まない画像の出現を更に抑えるためにこれ等の選択を構成したのだろうと思っている。望まない画像は Lock Screen 上では更に容認され難いであろう。厄介な写真は削除出来るが、手続きは面倒である:... アイコンの陰に隠れた Frequency 選択肢で、Don't Feature Photo を選択し、それが将来の写真シャッフルに出ないようにする。

Lock Screen Photo Shuffle setup

始めに Photo Shuffle をカスタマイズする時、集められた写真 "全部" をスワイプして見ることも出来るが、時間と共にそれは写真をこのコレクションに追加して行くので、最初の設定後にこのアルゴリズムが選択した望まない写真を削除するために、時折 Lock Screen を再度カスタマイズしなければならないかも知れない。

私は Photo Shuffle の頻度を On Lock と言う馬鹿げたアップデートスケジュールにした。私の iPhone が入信アラートで明るくなる度に、私はそれを持ち上げて見る、或いは、Standby ボタンを押すと新たな画像が得られる。それを使い始めて数週間になるが、何十年にも亘る私の人生の中で出会った人々の写真が無作為に現れるのに飽きは感じられない。

喜びを創り出すべく製品を設計出来ることが分かった。Apple はこの種の楽しみをエンジニアするやり方の詳細は隠すという選択をしたが、その予測不可能さが、切れ目ない再発見の喜びの鍵となる要素なのかも知れない。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

衛星通信による緊急 SOS と Find My 機能をテストする

2022 年 11 月 15 日に、Apple は以前から約束していた衛星通信による緊急 SOS 機能を米国とカナダの iPhone 14 オーナーを対象に開始した。また、Apple は 2022 年 12 月にはフランス、ドイツ、アイルランドおよび英国でもこのテクノロジーが利用できるようになると発表した。Apple はそれ以外の国でも可能になり次第この機能を広げて行くことだろう。

このサービスは既存の iPhone 14 オーナーならば 2024 年 11 月 15 日までの間は無料で使える。今後 iPhone 14 を購入する人はアクティベートした日から 2 年間、無料のサービスが受けられる。その後のサービス料金がどうなるかについて Apple は何も語っていない。

参考までに競合会社の状況について紹介しておくと、Garmin の inReach Safety Plan の価格は年毎の請求ならば月額 $11.95、毎月請求ならば月額 $14.95 だ。このプランは Garmin の inReach 衛星通信を使っているが、Apple より多くの機能を提供している。ただ、Apple も 2024 年末にはそれに匹敵する機能を追加し終えているかもしれない。私としては Apple ならそれよりもっと早くもっと多くの機能追加を出せるのではないかと思う。

でも現時点では衛星通信による緊急 SOS と Find My が iPhone 14 オーナーに無料で提供されているので、私は実際に試してみることに決めた。Apple はこれらの機能の存在をユーザーに知らせるためになかなかうまくやっており、Settings 画面に項目を追加してこの機能の使い方を手短に説明するとともに、自分の Medical ID 情報を調べる手順を実際に示して見せる。この情報は緊急サービスの担当者にとって重要かもしれないからだ。

Accessing Emergency SOS via satellite via Settings

ニューヨーク州北部の田舎に住んでいる私にとって、セルラーサービスがまともに届かない地域を見つけるのは簡単だった。ただ、近くの国有林 Shindagin Hollow State Forest の中で電波が届きにくいと分かっている地域に入っても、iPhone がステータスバーの中に SOS の表示と並べて私がこれまで見たことのない新しい衛星アイコンを表示する、そんな地点はしばらく見つからなかった。(2022 年 10 月 11 日の記事“iPhone ステータスバーの SOS は何を意味するのか?”参照。) この衛星アイコンは常時表示されている訳ではなかったが、テストしている間 SOS の方はずっと表示されていた、私の推測だが、これはおそらく T-Mobile 以外のキャリアがほんのかすかな電波を届けていて、衛星アイコンが表示されるのは緊急サービスへの通信手段が衛星通信以外に全くない場合に限られるからなのだろう。

SOS via satellite in the status bar

衛星通信による Find My 機能をテストする

位置がいったん見つかると、私はまず衛星通信による Find My 機能を試してみることにした。こちらは本物のテストが簡単にできるからだ。Find My アプリを開いて、ツールバーの Me をタップし、Send My Location をタップしたところ、下に示すような正しい説明画面が出た。

Sending location via satellite using Find My

そこで Send My Location ボタンをタップすると、Dynamic Island に通知が出て、右を向いて信号を見つけるようにと言ってきた。私は iPhone を高く掲げて、右へ回り始めた。すると Find My は素早く衛星の電波を捉えたのだが、下に一連の通知を示した通りに何度も接続が切れて、私は言われる通りに左を向いたり右を向いたり、衛星を捉え続けようと Hokey Pokey 踊りをさせられる羽目になった。面白いことに、どうやら複数通りの方向にある衛星を見つけているようだった。けれども、ついに Find My は (左下隅のスクリーンショットのように) 諦めてしまった。私は深い谷の中の道路にいたので、丘の斜面を少し登って、そこからもう一度試してみた。すると Find My はさっき中断したところからそのまま引き継いで、その後すぐに位置情報の送信を完了した。

Satellite positioning messages

結局実際には何が起こったのかときっと皆さんも思われるだろう。私もその点が知りたかった。セルラー接続も Wi-Fi 接続もなかったので、すぐに Tonya に連絡して私の位置情報が見えるかどうか聞くこともできなかった。あらかじめ信号のバーが出ているうちに彼女に頼んでチェックしてもらうことを忘れていたのを後悔した。あとで彼女に尋ねると、私の位置情報について何の通知も受け取らなかったとのことで、その時点ではもう Find My が新たな位置情報を示していた。だから、衛星通信による Find My はおそらく何かをしたのだろうが、動作していたことを証明するためにはもっといろいろ準備してテストしなければならなかったと分かった。

衛星通信デモを通じて SOS を走らせる

Find My のテストはそのくらいにして、次に私は衛星通信による緊急 SOS のテストに取り掛かった。Wall Street Journal の Joanna Stern が記事とビデオのため Apple から提供を受けた特別の iPhone 14 のようなものを私は持っていなかったので、本物の通信司令員と実際の緊急 SOS 通話をせずに済むように、今回は Apple が内蔵しているデモ機能を使うことにした。

ライブのデモを内蔵しているのは素晴らしい。これを使うことで、実際の緊急事態で衛星通信による緊急 SOS がどう働くかの感覚を多くの人々が掴めるからだ。このデモは、一時的にセルラー接続を無効にした上で、衛星通信による緊急 SOS のすべての手順を辿らせてくれる。始めるには、まず Settings > Emergency SOS へ行き、下へスクロールして、Try Demo をタップする。

Emergency SOS via satellite demo mode

デモを使っているとライブ感があり、衛星との接続を求められて、それから緊急通信司令員とのやり取りを真似た会話に導かれた。メッセージの送信は素早くはなくて、長く時間が掛かるのも妥当なことに感じられた。自分が本当に衛星を通して通信しているのか、それともすべてが出来合いのものなのかを判断できる方法はなかったが、衛星の方向に向け続けるようにと通知が言ってくることもあって本物の感じはあった。

Emergency SOS via satellite demo conversation

私は 911 に電話をかけたのではなかったので、Joanna Stern が記事に書いた本物の緊急質問の文言は目にしなかった。つまり、ボタンをタップしてどんな種類の緊急事態にいるか、どんな援助が必要かを答えるということはなかった。

衛星通信を通じて自分が送った Find My 位置情報が Tonya に気付かれなかったことと、衛星通信による緊急 SOS のデモが実際に衛星と通信していたのか否かが分からなかったことで少し期待外れの感があったのは否めないが、どちらのテストでもユーザー体験自体は素晴らしかった。実際にはこの上なく手間の掛かるものであるに違いない接続手順に対してユーザーに自信を与えたという点で、Apple は称賛に値する。

衛星通信を利用する次のステップを考える

一方では、バージョン 1.0 の取り組みとして Apple が衛星通信機能を iPhone 14 に追加したのはまさに魔法のようだ。一見不可能なことを達成してみせたことに対して、Apple のエンジニアたちは拍手喝采を浴びるべきだ。これは本気で言っているのであって、私が次に述べることすべてはこの拍手喝采の気持ちから言っていると受け取って頂きたい。

他方では、Apple の現時点での実装は一つ大きな意味で機会を逸している。位置情報を共有することの目的は、コミュニケーションだ。衛星通信による緊急 SOS は自動車で、自転車で、あるいはハイキングでセルラーサービスのない場所で深刻な事態に陥った際には素晴らしいものだ。荒野の只中で道に迷ったり怪我をしたりすれば、あるいは文明から遠く離れた場所で自動車が故障したりすれば、まずは緊急サービスとコミュニケーションしたくなるだろう。

でも、緊急サービスを巻き込みたくない場合にはどうだろうか? これまでの話で明らかにしてきたと思うが、セルラーサービスの全くない土地がこの米国にはたくさんある。(そしておそらくずっと人口の少ないカナダにはもっと多くあるだろう。) ここから西へ 5 マイル車を走らせれば、そこは小さな町の中心部で、世界的な大学の本拠地であり期待できるあらゆるハイテクのコミュニケーションが享受できる。ところが東南へ 7 マイル行けば、そこは人の住まない何千エーカーもの国有林であってセルラーサービスなど一切ない。言い換えれば、セルラーサービスのない地域で長い時間を過ごす人たちは実際に多くいて、衛星通信経由で家族や友人に助けを求められるようになれば (それがいかに最小限にであっても) 嬉しいと思うのではなかろうか。

結局のところ、ほとんどの問題は 911 を呼ぶことを必要としない。ガソリン切れになったり、自転車のスポークが折れたり、トレイルランの最中に足首を挫いたりすれば、家族か友人に来てもらいたいと思うだろう。私が知っている自転車乗りの多くは今はもうパンク修理キットを携帯していない。なぜなら、パンクを修理するより誰かを呼んで連れ帰ってもらう方が早くて楽だからだ。

その種の緊急でないコミュニケーションについては、Find My は何の役にも立たない。確かに、衛星通信経由で現在位置を Apple に送ることはできるけれども、普段から位置情報を共有している相手は誰も、それをチェックすべきだとも、あなたが位置情報を共有した理由も、それについて何をすべきかも知りようがないだろう。もちろん、あらかじめ誰かに知らせておいて「もし私が午後 5 時までに戻らなければ Find My で位置情報を確認して迎えに来てくれ」と頼んでおけば役に立つだろう。でも、辺鄙な場所に住んでいたり頻繁に行き来したりする人にとって、あらかじめそんな準備をすることが難しい状況の下で電波のない地域へ行くのはよくあることだろう。

当初、私は位置情報が衛星通信経由で共有された事実を Find My がフォロワーたちに通知することで解決するだろうと思った。Tonya と私はあらかじめそのような通知を受けた場合には探しに行くことを申し合わせておけばよい。けれども私は他の人たちとも位置情報を共有しているので、そのような通知を受け取る度に両親が私のことを心配するのは困る。

もっと良い解決法は明白だ。そこで私は先ほどの場所まで運転して戻り、Apple が秘かに有効化していたならと思って試してみた。つまり、単純に Messages を使って衛星通信経由で位置情報を送信するのだ! Messages アプリの中で、会話相手の誰かのアバターをタップしてから、Send My Current Location をタップして位置をピンで示した地図を共有するのだ。でも悲しいことに、衛星通信しかない場所では、共有は送信されなかった。

Send My Current Location via Messages fails

そのようにして位置情報を共有することがもしできたならば、見たところ現在のシステムの制約内に留まりつつ衛星通信を利用した緊急でないコミュニケーションを望む私の願いがすべて叶えられるだろう。現時点で既に Find My から衛星通信経由で位置情報を送れているので、Messages から同じことができない理由はないと思う。通常のテキストメッセージを送信するのは無理でも構わない。Apple がしなければならないのは、位置情報が Find My 情報を更新するのと同時に Messages 会話を更新するようにすればよいだけのはずだ。そして、信頼できる友人や家族に対して、もしも前後関係の脈絡なしに位置情報の更新が送られてきたならば援助要請と受け取ってもらいたいと頼んでおくのは容易だろう。位置情報がグループチャットに送られたならば、参加している人たちが相談して誰か一人が助けに行くようにできる。ただ一つ問題があるとすれば、その種の機能においては衛星通信による Find My 機能に比べて桁違いに利用数が多くなると思われるので、システムがまだ大量のトラフィックを扱える段階に達していないかもしれない。

だから私は Apple に提案したい。ロードマップにこれを組み込むのはどうだろうか? iOS 17 になって、衛星通信システムで丸一年間緊急 SOS が使われた段階に至れば、Messages アプリにも衛星通信による Send My Current Location のオプションを追加して欲しい。そうすることで使用度が格段に増すだろうし、もしも衛星通信システムがその規模のトラフィックを処理できると判明すれば、その次の iOS 18 では短いテキストを衛星通信経由で送信できるようになるかもしれない。その二つの機能が加わりさえすれば、私を含めて多くのユーザーたちが喜んで衛星通信サービスに対する月額料金を Apple に支払うようになることだろう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

VMware Fusion 13

VMware Fusion 13

VMware が仮想化パッケージ VMware Fusion のバージョン 13 をリリースして、Intel ベース Mac と Apple M-シリーズ Mac との双方で Windows 11 仮想マシンに対応した。Intel ベースの Mac は VMware Tools で Windows 11 にフル対応となり、ドラッグ&ドロップとコピー&ペースト、フォルダ共有、USB および Camera デバイスのパススルーなど host-guest 間の相互作用が可能となった。M-シリーズのプロセッサを持つ Mac では、VMware Tools が Windows 11 on ARM 用に仮想グラフィックスとネットワーキングへの対応を提供する。(M-シリーズ Mac 上で VMware Fusion が Intel 版の Windows には対応していないことに注意しよう。) ユニバーサルなインストーラが提供されるので、互換性についての混乱が減り、大規模な配置も楽になるはずだ。また、VMware Fusion 13 は Intel ベース Mac 上では Windows および Linux VM で、M-シリーズ Mac では Linux VM で、 OpenGL 4.3 グラフィックスへの対応を追加している。

VMware Fusion 13 Player は引き続き個人利用で非商用の場合は無料で使える。バージョン 12 のライセンスを持っている人は新しいバージョン 13 鍵に登録できる。商用目的には、VMware Fusion 13 Player の価格は新規ライセンスで $149、アップグレードは $79 だ。VMware Fusion Pro の価格は新規ライセンスで $199、アップグレードで $99 だ。(新規には無料/$149.99/$199.99、アップグレード $79/$99、672 MB、リリースノート、macOS 12+)

VMware Fusion 13 の使用体験を話し合おう

OmniFocus 3.14.1

OmniFocus 3.14.1

The Omni Group が OmniFocus 3.14.1 を出した。このタスク管理アプリでいくつかの厄介なバグを解消した、メンテナンス・リリースだ。今回のアップデートでは、Tab キーを使ってフィールド間をナビゲートした際に不必要な編集コンフリクトの警告を出さないようにし、カスタム表示をアップグレードすると予期せぬフィルタリングが起こったバグを修正し、macOS 13 Ventura で Tab キーによるフィールドのナビゲーションが働かなかった問題を解決した。(Omni Group ウェブサイトでの新規購入は Standard 版が $39.99、Pro 版が $79.99、Mac App Store では Standard 版が $39.99、アプリ内購入で Pro 版にアップグレード可、67.4 MB、リリースノート、macOS 11+)

OmniFocus 3.14.1 の使用体験を話し合おう

Mactracker 7.12

Mactracker 7.12

Ian Page が Mactracker 7.12 をリリースして、最近のメジャーな Apple ハードウェアのアップデートとリリースに関する詳細情報を盛り込んだ。具体的には新型 iPad および iPad Pro モデル、iPhone 14 モデル、Apple Watch SE、その他が含まれている。また、最近の Apple オペレーティングシステムへのメジャーアップデート (macOS 13 Ventura と iOS 16 など)、Maximum OS 項目に対する最新のオペレーティングシステムリリースを受けたシステム要件に基づく更新、Apple の最新の Vintage および Obsolete 製品に対する Support Status による項目の更新なども含んでいる。(Mactracker ウェブサイトからも Mac App Storeからも無料、182 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Mactracker 7.12 の使用体験を話し合おう

SoundSource 5.5.6

SoundSource 5.5.6

Rogue Amoeba が SoundSource 5.5.6 をリリースして、新しい Background Sound special source を追加することにより System Settings の Accessibility にある Background Sound 機能からオーディオを調整できるようにした。今回のリリースではまた、Audio Capture Engine をバージョン 11.9.1 にアップデートしてパフォーマンスを高め、メーターのチャンネルマッピングの問題によりクラッシュが起こることがあったのを解消し、macOS の新しい慣習に合わせるため SoundSource の Preferences ウィンドウの名前を Settings に変えた。(新規購入 $39、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、29.4 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

SoundSource 5.5.6 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

AirPods Pro はフル機能の補聴器とかなりの程度に競争力がある

Ars Technica の記事で、Kevin Purdy が次のように述べている

雑誌 iScience に掲載された研究により、特定の騒音環境において AirPods、とりわけ Pro モデルが、処方を要する高価な補聴器と同等に機能する可能性が示された。

...

AirPods と、$1,500 の Bernafon MD1 および $10,000 の OTICON Opn 1 との比較検証が実施された。静かな環境においては、AirPods Pro は人々の聴力を Bernafon と同程度、OTICON とはほぼ同程度に補助できた。AirPods 2 の結果は最低であったが、それでも何も使わない場合に比べて人の声が聴き取りやすくなった。

聴力低下を感じている人に対して医療専門家のところへ行かずに AirPods Pro を使えとお勧めすることは断じてできないけれども、このささやかな調査の結果を見れば、あと少しだけ聴き取りやすくしたい場合に Live Listen を使うことへの裏付けが得られたと言えるだろう。ここで一つ指摘しておきたいことがある。もう十年以上前、AirPods がまだ登場していない時代に、Jeff Porten がよく似たテクニックを提案していることだ。2011 年 2 月 8 日の記事“iOS 補聴器... 或いは、スーパーマンの耳の買い方”をご覧頂きたい。そこで次なる質問は、処方箋なしで買える安価な市販の補聴器が登場し始めているが、そういうものと比べて AirPods Pro がどうなのかという点だ。

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Apple、MLS Season Pass を 2 月に開始と発表

Newsroom 記事で、Apple が次のように述べている

Apple と Major League Soccer は本日、2023 年 2 月 1 日より MLS Season Pass を開始することを発表しました。これまでにないサブスクリプションサービスを通じて、100 を超える国と地域のファンに、MLS レギュラーシーズン全試合、プレーオフ全試合、リーグカップのライブ配信を放送停止なしでお届けします。

...

(米国においては) 2 月 1 日より、ファンは Apple TV アプリケーションで MLS Season Pass のサブスクリプションを登録でき、料金はシーズン中の月額 $14.99、またはシーズンごと $99 です。Apple TV+ 購読者は月額 $12.99 またはシーズンごと $79 の特別料金にサインアップできます。

プロサッカーの視聴を試してみたいだけならば、Apple TV+ 購読者は(プレーオフを含む)いくつかの試合を無料で視聴できる。また、Apple TV アプリで誰でも無料で視聴できる試合も数多くある。個人的に言って、私は Apple が Diamond League と契約を結んでくれないかと心待ちにしている。

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