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#1640: 重要な OS アップデート、iOS/iPadOS 15.7.2 セキュリティ修正、連絡先電話番号の奇行、ウクライナからの便り、TidBITS Talk で絵文字の応答、ホリデー休刊

年末のホリデーが近づいたので、TidBITS 電子メール号を2週間休刊とさせて頂く。次号の電子メール版 TidBITS は 2023 年 1 月 9 日発行の予定だ。今週の大ニュースは Apple が iOS 16.2、iPadOS 16.2、macOS 13.1 Ventura、watchOS 9.2、tvOS 16.2、それに HomePod Software 16.2 をリリースしたことだ。大きな変更点 (デジタルホワイトボードの Freeform アプリ、M1 搭載 iPad で外付けディスプレイの Stage Manager 対応、watchOS の Race Routes など) も、細かな変更点 (ロック画面の新たな設定とウィジェット、Network Locations の復活、重要なセキュリティ修正など) も紹介する。それと合わせて Apple は iOS/iPadOS 15.7.2 と Safari 16.2 もリリースしてセキュリティ脆弱性に対処したが、その一つは実際に悪用された可能性があるという。それから、ウクライナに住む TidBITS の友人からの便りと TidBITS Talk での絵文字による応答を説明した LittleBITS に加えて、連絡先から電話番号をコピーしてペーストする際に起こり得る奇妙な問題についても掘り下げる。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Safari 16.2、macOS Monterey 12.6.2 と Big Sur 11.7.2、BBEdit 14.6.2、TextExpander 7.4、Cardhop 2.2.3、Art Text 4.2、TripMode 3.2、Ulysses 29、それに URL Manager Pro 6.1 だ。

Adam Engst

TidBITS 2022 ホリデー休刊 - また 2023 年にお会いしましょう!

2022 年最後の TidBITS 号をお届けする時期がやって来た。今週一杯はいつも通り業界の出来事に注意を払い続けて、何か特に皆さんの注目に値することが起これば私たちのサイトに記事を載せるつもりだ。でも、何も起こらないことを願っている。皆さんもどうかテクノロジー世界の喧騒から少し離れて休暇を取られるようお勧めしたい。

次号の電子メール版 TidBITS は 2023 年 1 月 9 日発行の予定で、そこでは私たちも心を新たに年を迎えつつ、皆さんが止むことなく変わり続ける Apple デバイスやサービスについての最新情報を得られ、効率的かつ生産的に働くことができ、現代のテクノロジーの魔法を享受して喜べるようにと、また新たな年の仕事を始めたいと思っている。

このホリデー期間に私たちは家族や友人と時を過ごせるのを楽しみにしている。バンクーバーの Simon Fraser 大学でコンピュータ画像認識の PhD プログラム2年目を迎えている息子の Tristan が、数週間の予定で帰省中だ。集まりを少人数に抑え、あらかじめ抗原検査で誰もが健康でいられるよう配慮することで、いつも通りのホリデーの交流が少しずつ戻りつつあるのが嬉しい。

Adam & Tonya and Yule Mule
ニューヨーク州 Fairport でエリー運河沿いに立つ "Yule Mule" (クリスマスのラバ) と、トロント空港に到着する Tristan を迎えに行く途中の Adam と Tonya

仕事に関しては、この休暇中に私のメインの Mac である 2020 年型の 5K Retina ディスプレイ搭載 27 インチ iMac を macOS 13 Ventura にアップグレードするつもりだ。その際には、多くの人たちにお勧めしている標準的なアップグレード手順を使わずに、十分時間をかけてすべてを一から再構築したいと思っている。そうすれば、数限りないソフトウェアを長年テストしてきたことによる汚点などもきれいに一掃できるからだ。運が良ければ、理由が分からないでいるいくつかの奇妙な挙動もなくなるだろうし、また直ちにインストールする必要のあるアプリとサービスがどれとどれなのかもきちんと見分けられると期待している。

毎年この時期に、Tonya と私は自分たちが TidBITS で何をしているのか、それがなぜなのかをあらためてよく考えるとともに、TidBITS の活動を可能として下さっている多くの人々にも感謝の思いを新たにしている:

ありがとう、皆さん、そして、2023 年を通じて皆さんと皆さんの大切な人たちが、安全で、健康でいられますようにと願っています!

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

LittleBITS: ウクライナからの便り、TidBITS Talk で絵文字の応答

最近私はウクライナにいる TidBITS の友人と電子メールのやり取りをしたが、彼女からの返信をどうしてもここで共有したくなった。また、TidBITS Talk の投稿に絵文字で応答する方法 (Apple が Messages に付けた Tapback 機能と同様のもの) についての説明もしよう。

ウクライナからの便り

最近私は Irene Stepanovska から電子メールを受け取った。BeLight Software で広報の仕事をしている彼女を私はずっと以前から知っていた。そのメールは、Art Text 4.2 のリリースを知らせるものであった。そのニュースを Watchlist (TidBITS 監視リスト) 担当の Agen Schmitz に伝えてから (2022 年 12 月 15 日の記事“Art Text 4.2”参照)、私は Irene に BeLight の人たちはみんな元気でやっていますかと尋ねた。外から見れば普通のビジネス会話に見えたかもしれないが、彼女や仲間のウクライナ人たちがどんな風に暮らしているかを伝えた彼女の返事を、ここでどうしても共有したいと私は思った:

私たちのチームの大多数がオデーサに残っています。私たちは元気でやっています。アプリを開発しながら、私たちの国と、軍隊と、この国の人たちを支えています。ウクライナ国中のどの都市も、あるいは小さな町も同じことですが、私たちは毎日、この国と市民たちに向けられた残酷で非人道的なロシアの戦争の結果を体験させられています。ここ数週間ずっと停電が続いています。今はオデーサ市民の大多数が一日二回、3-4 時間だけ電気を使えています。時には、大規模な攻撃があった後など、数日間にわたってずっと電気が来ないこともありますし、集中暖房や水道が完全に止まっている人たちもいます。家にガスが来ておらず、電気ストーブも料理のための電気オーブンも使えない人たちにとっては悪夢以外の何物でもありません。大変な被害を受けているにもかかわらず毎日 24 時間あらゆるものをできる限り早く修理しようと休みなく働いている技術者たちに、私たちは皆感謝しています。このことすべてが私たちの自由と将来の勝利のための代償に他ならないことを、私たちは十分に理解しています。

Irene のメールに呼応するかのように、最近の Los Angeles Times の記事で、ウクライナ政府が重要なデータをクラウドへ移す作業を Amazon が手伝った話が私の目に留まった。Amazon の Liam Maxwell がコメントした通り、クラウドにあれば巡航ミサイルにやられることはないからだ。思うにこれは、たいていの人が思いもよらなかったクラウドのセキュリティの一面ではなかろうか。

TidBITS Talk 投稿に応答する新しい Reactions 絵文字

記事“Messages アプリ、柔軟性を増しミスには寛大に”(2022 年 10 月 27 日) で、私は Apple が Messages に付けた Tapback 機能が好きになったと書いた。これは、メッセージに対する手早い、テキストなしの応答として絵文字風のものを送信する。その種の手早い応答を TidBITS Talk でシミュレートするため (質問をした人が返事をくれた人全員に別々の短いテキストメッセージで応答するのは TidBITS Talk ではむしろ迷惑なので)、ずっと以前に私はサードパーティの Retort プラグインを Discourse にインストールしていた。これを使えば、ハート形のアイコンが示すデフォルトの "like" 機能に限らず他の好きな絵文字を使って投稿に応答することができる。これまで 👍 や 😁 が数多く使われていたが、他にもいくつか絵文字が見られた。

だから、長年の TidBITS Talk 読者 Jolin Warren からの最近の指摘のお陰で Retort プラグインはもう推奨されておらず今は Reactions プラグインが公式に採用されていると知って、私は Reactions プラグインに切り替えた。従来通りに投稿の下に見えるハート形アイコンをクリックすることもできるけれども、そのハート形アイコンの上にポインタをかざして少し待つと、カスタマイズされた一連の絵文字が示されて、そこから選ぶことができる。TidBITS Talk コミュニティーの人たちと議論した結果、私は以下の選択肢を表示するように設定することにした。それぞれの意味について私の見解を書いておこう。

最初の四つはニュアンスの違いこそあれ、ありがたい、感謝している、あるいはその意見に同意するという意味だ。あえて四つも作ったのは意図的にそうしてあって、そもそも TidBITS Talk はそういうタイプのコミュニティーだからだ。でも、あまり意味を深読みしないで頂きたい。これはただ、いろいろな意味合いを何でもかんでも同じハート形の ❤️ だけに詰め込んでしまうことに違和感を持つ私のような人のためのものなのだから。

❓ と👎 は、他とは少し違う立ち位置にあって、誰かが言っていることが理解できないとか、その投稿内容に同意できないとかを手早く示す手段だ。これらが必要となる状況があまり頻繁に起こらないことを願いたいし、そういう応答を得た投稿の筆者がそれを建設的批判と受け取ることも願いたい。皆さん、どうぞこれらの応答用絵文字を試して、どんな感じか見てみて頂きたい。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

iOS 15.7.2 及び iPadOS 15.7.2、不当利用されたセキュリティ脆弱性を阻止

最近の iOS 16.1.2 のリリースはちょっと奇妙で、他の Apple オペレーティングシステムに対するアップデートを伴っていなかった。変更点は比較的マイナーであり、更に Apple はそのセキュリティノートのリリースも遅らせた ("iOS 16.1.2 が衝突事故検出を最適化、ワイヤレスキャリアとの互換性を改善" 7 December 2022 参照)。我々は今になって Apple が何故ひっそりとそれ単独で出したのかを知ることとなった - iOS 16.1.2 は一つの WebKit 脆弱性を阻止している。その脆弱性は実際に世の中に出回っていて、悪意の Web コンテンツが任意コード実行につながることを許す。結果的には、その脆弱性は他の Apple オペレーティングシステムの殆どにも悪さを及ぼすことが分かった。そこには以前のバージョンの iOS や macOS も含まれる。

iOS 15.7.2 release notes

Apple は今やこの脆弱性を最新のオペレーティングシステム全てで ("Apple、iOS 16.2、iPadOS 16.2、macOS 13.1 Ventura、watchOS 9.2、tvOS 16.2 をリリース" 13 December 2022 参照)、最後の二つのバージョンの macOS で ("Safari 16.2" 13 December 2022 参照)、そして、最後に iOS 15.7.2 及び iPadOS 15.7.2 をリリースして iOS 15 で取り除いた。

もし iOS 16 や iPadOS 16 にアップグレード出来ない古い機器上で未だに iOS 15 を走らせているのであれば、我々は iOS 15.7.2 や iPadOS 15.7.2 に直ちにアップデートする事を強くお勧めする。それは、何時もの様に、Settings > General > Software Update で見つけられる。

しかしながら、iOS 16 に対応出来る iPhone 上でアップグレードするのを手控えているのであれば、Apple はその様な iPhone が iOS 15 路線に残る事をもはや許さないことを知っておくべきである。その様な場合、バージョン 15.7.1 にしがみつくか、或いは 16.2 にアップグレードしなければならない。しかしながら、iPadOS 16 は iOS 16 よりもかなり後に出荷されたので、iPadOS 15 ユーザーは未だ iPadOS 15.7.2 にアップデートする事が出来、iPadOS 16.2 に跳躍することは強制されないであろう。 (でも、それはただ時間の問題である。)

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Contacts からコピーした電話番号をペーストする時注意すべき事

Contacts からコピーした電話番号を Web フォームにペーストするのに問題があったことはありますか? それは良くある問題では無いかもしれないが、TidBITS 読者の Dave Fultz がオンラインの注文フォームとイライラしながら格闘して解決した問題である。

Dave はフランスで小包を注文しようとしていて、そのフォームは届け先での携帯電話番号を求めていた。彼は間違いを防ぐべく、それを Contacts からコピーしてそのフォームにペーストした。しかし、彼が Submit をクリックした時、そのフォームは検証を通らなかった。彼はその電話番号に対する別のフォーマットを試したが -フランスでは、国内でかける時には 10 桁の番号の最初のゼロを含めなければならないが、外国からかける時には外さなければならない - 効果はなかった。その番号を幾つかのオンライン検証サービスにペーストするのもダメであった。プレーンテキストとしてペーストしても変わりはなかった。

そこで Dave はその番号の友人にテキストし、それは正しく動作した、そして彼女にその番号をフランス国内の友人に教える時と全く同じように彼に送って欲しいと頼んだ。それは彼のバージョンと同じ様に見えたが、彼がその番号を Messages スレッドからコピーしてペーストしたら、そのフォームは受け入れた! 何が起こっているのであろうか?

Dave は Terminal で Python スクリプトを使って、Contacts から得た数字と友人が送ってくれたものとを比べてみようと思ったのだが、彼が彼の数字を Terminal にペーストするや否や、その問題はその姿を現した。下記の私のテストでのハイライトされたテキストに見られる様に、その電話番号の両側に余分な文字がある。

Demonstration of the Unicode characters in Terminal

分かったことは、Mac 上の Contacts は全ての電話番号を二つのゼロ幅 (そしてそれ故に見えない) Unicode 文字の間に挟むと言うことであった:U+202D (LEFT-TO-RIGHT OVERRIDE) と U+202C (POP DIRECTIONAL FORMATTING) である。Dave は、それ等の文字は電話番号を周りのテキストの流れ方向から隔離しているのではないかと推測した。文字の流れの方向は、例えば Hebrew や Arabic では右から左である。

Contacts はこれ等の文字を電話番号と共に保存するようだが、それ等はゼロ幅なので、私の知る限りそれ等を選択しないようにする方法は無い。Contacts がコピーの一部としてこれ等の文字を付け加えているようには思えない。と言うのも、数字の中間の幾つかの文字を選んでそれ等を Terminal にコピーペーストすると、その見えない文字は現れないからである。また、それ等は電話番号フィールドに特有のものである;Notes フィールドに保存された番号はそれ等を持っていない。最後に、この問題は Mac 上の Contacts に限られている;私の試験では、iPhone や iPad からコピーされた電話番号にはこの問題は起きない。(その後の調査で、この問題を記述している Ask Different スレッドが見つかった - これは Apple にバグとして報告されている - そしてそれは macOS 13.1 Ventura にも未だ存在していることが確認されている。)

何故これ等の文字は他では問題の原因となってないのであろうか? 開発者がデータを受け入れるアプリを設計する時、彼らは通常望まないデータをフィルターして取り除く入力フィルターを作り込む。電話番号フィールドが見えない句読点文字を受け入れるべき理由は見当たらないので、それ等を除外するのは良いプログラミング慣行だと言える。少なくとも、ユーザー入力をフィルターするのは必須のセキュリティ慣行である。何故ならば、攻撃者は悪意を持つコードを注入したり、不当に利用出来るバッファーオーバーフローを起こしたりするためにシステムデータを投入しようとしたりするからである。

ところで、Apple が全ての電話番号をゼロ幅記号の間に挟むべく Contacts を設計したのは奇妙に見えるが、右から左のテキストの流れの中にペーストされた電話番号が変更されないように守る役目はする。でも Contacts がそれを全ての Mac ユーザーに対してやる必要はないようには思える。Apple がそれをやることに意味がある時を特定しようとするのは出来そうに思える - ユーザーが macOS の Language & Region 設定で右から左の言語を有効にした場合にのみとかである。

Hebrew and Arabic in the Language & Region preference pane

実際の話をすると、Contacts からコピー&ペーストした電話番号が予期通り働かなかった場合、最も簡単な修正方法はその数字を手入力することである。勿論、それを Terminal にペースとして電話番号だけを、両側にある余分な Unicode 記号を避けて、 コピーすることも可能ではある。

もしこの問題にしょっちゅう遭遇しギークとしての腕前を発揮したいのであれば、これ等の余分な記号を自動的に取り除く Keyboard Maestro マクロを作成することも出来る。動物のように数字をタイプし直すのにイラついて、Dave Fultz はまさにそれをやったので、彼のマクロを始点として使って自分に意味のあるワークフローを作ることも出来る。

或いは、私がやっている様に、連絡先管理アプリ Cardhop を使う事も出来る。それはこの問題に悩まされることもないし、使い勝手は遙かに良い ("Cardhop、連絡先を中心に据える" 18 October 2017, と "Cardhop 2.0 と Fantastical が Flexibits Premium バンドルに" 27 May 2021 参照)。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple、iOS 16.2、iPadOS 16.2、macOS 13.1 Ventura、watchOS 9.2、tvOS 16.2 をリリース

最近 Apple は約束を次々に積み重ねて、今月末までに出荷するもののリストに Advanced Data Protection for iCloud (iCloud の高度なデータ保護) と Apple Music Sing を追加した。それ以前に約束していたものとしては共同作業用のデジタルホワイトボード Freeform や、M1 搭載 iPad 上での Stage Manager の外付けディスプレイ対応、Apple Watch で自分の過去のワークアウトと成績を比較できる Race Route 機能がある。そして、今述べた機能のすべてが今回、iOS 16.2、iPadOS 16.2、macOS 13.1 Ventura、watchOS 9.2、tvOS 16.2、および HomePod Software 16.2 で利用できるようになった。

つまりこれらは重要な機能付加リリースであって、通常ならば私はその種のメジャーリリースについては直ちにアップデートせず少なくとも一週間待つことをお勧めしている。しかしながら、今回は早めにアップデートするようお勧めしたい。なぜなら、今回の新バージョンは WebKit 関係のある脆弱性をブロックしていて、Apple によればそれが“iOS 15.1 より前にリリースされたバージョンの iOS で”悪用された可能性があるとのことだからだ。(実際、Apple は iOS 15.7.2 と iPadOS 15.7.2 もリリースして、この深刻な脆弱性とその他 16 件とに対処した。古いデバイスも早めにアップデートしよう。)

ただし一つだけ例外がある。iPhone だ。もしもあなたが既に iOS 16.1.2 へのアップデートを済ませているのならば、上記の脆弱性からは既に保護されており、その上に iOS 16.2 をインストールしたくないと思えばしばらくの間待っても問題ないだろう。(2022 年 12 月 7 日の記事“iOS 16.1.2 が衝突事故検出を最適化、ワイヤレスキャリアとの互換性を改善”参照。) Apple は今まで iOS 16.1.2 のセキュリティノートの公表を遅らせていた。

Freeform 登場

iOS 16.2、iPadOS 16.2、および macOS 13.1 での最も注目すべき変更点の一つが、新たにバンドルされたアプリ、Freeform (フリーボード) だ。これは共同作業のためのブレインストーミングを意図してデザインされたデジタルホワイトボードのアプリで“柔軟なキャンバスの上でコンテンツを整理して視覚的に配置することができ、レイアウトやページサイズを気にすることなく、表示、共有、共同作業のすべてを一か所で行なえる”という。iCloud を通じてデータを自分の他のデバイスに同期させるオプションもある。

Freeform app

Freeform についてどう考えるべきか、私にはまだよく分からない。今後数週間のうちに、実際に使って試してみたいと思っている。それは決して、Apple の手際が悪いのを恐れてのことではない (ただし Jason Snell は荒削りな点を多数見つけている) し、使いにくいと言っているのでもない。(それでも万一に備えて Freeform マニュアルも用意されている。) そうではなくて、共同作業のためのデジタルホワイトボードという考え方そのものが、全体的な Apple 体験の中に加えるものとしては奇妙な選択に思えるからだ。最近になって Apple はこの方面に力を入れるようになってきたものの、そもそも共同作業がこの会社の強みであったことは一度もなかった。Apple は何よりもまず個人に力を与えるものであって、グループを相手にしてはいなかった。Zoom にも他の多くのビデオ会議プラットフォームにもデジタルホワイトボードは組み込まれているし、ビジネス目的にも、教育目的にも、共同作業に使うにはそれらの環境の方が FaceTime よりもはるかに人気を集めていて、その点は今後もそう変わらないだろうと思えるからだ。

それに、Apple からデジタルホワイトボードが出ればいいのにと望む声を、私はかつて一度も聞いたことがないと思う。対照的に、Apple からコンシューマレベルのデータベース、例えばその昔に人々が使った AppleWorks/ClarisWorks や、初期バージョンの FileMaker、さらには HyperCard さえ引き合いに出して、そういうものが出て欲しいと待ち望む声は至る所で聞こえている。

たぶん私は気難しい意地を張っているだけなのかもしれない。なぜなら、私にとっての共同作業は主として文書についてのものであって、そこにほんの僅かのスプレッドシートを投げ込むだけで使っているからだ。(私はここ一年、グループに主眼を置いた Google Sheets のスプレッドシートを大いに気に入るようになった。) その一方で、Freeform がティーンたちや若い大人たちの間でとてつもない人気を得て、本格的な共同作業ツールなんか要らないけれども限界のないキャンバス上で一緒になって楽しめるのが最高だという定評を獲得するというのもあり得ることだ。皆さんもどうぞ試してみて、感想を聞かせて下さればと思う。

iOS 16.2 と iPadOS 16.2

新しい iOS 16.2iPadOS 16.2 では、iPhone と iPad がいくつか新機能や機能改善を獲得する。そこには重要なものもあるし、そうでないものもある:

他にも iPhone のみの追加機能がいくつかある:

約束されていた iPad 機能で iPadOS 16.2 で実現された最大のものは、M1 搭載 iPad 上での Stage Manager の外付けディスプレイ対応だ。対象となるのは第5世代 iPad Air、第3世代 11 インチ iPad Pro またはそれ以降、および第5世代 12.9 インチ iPad Pro またはそれ以降だ。Stage Manager は最大 6K の解像度の外付けディスプレイ (Pro Display XDR も含む) に対応し、ファイルやウィンドウを iPad からディスプレイへドラッグ&ドロップできて、iPad スクリーン上で最大 4 つ、加えて外付けディスプレイ上で最大 4 つのアプリが使える。 (Julio Ojeda-Zapata の 2022 年 7 月 18 日の記事“Stage Manager の第一印象: iPad と Mac で”参照。)

それ以外の iPad 専用の変更点は、どうやら Tracking Notifications の追加だけのようだ。これは、AirTag が所有者から離れた場所にあって、最近サウンドを鳴らして移動中であることを示した場合に、警告を発するものだ。言い換えれば (私が正しく理解しているのならば)、今後は iPad も iPhone と同様に AirTag ストーキングを警告してくれるようになる。

今回のアップデートでは 2 件のバグが修正された。片方は iOS と iPadOS に共通でアップデート後に一部のメモが iCloud と同期できなくなる問題の修正、もう片方は iPad のみでのもので、アクセシビリティの Zoom 機能を使用している際に Multi-Touch ジェスチャーが反応しなくなる問題の修正だ。

iOS 16.2 と iPadOS 16.2 は 33 件のセキュリティ脆弱性にも対処している。まだ iOS 16.1.2 にアップデートしていなかった人に対して実際に悪用されたあの脆弱性もおそらく含まれているのではないかと思われる。

アップデートは Settings > General > Software Update からできる。

macOS 13.1 Ventura

macOS 13.1 Ventura のリリースノートは iOS 16.2 や iPadOS 16.2 のものよりかなり短く、三者すべてに共通の変更点、つまり Freeform、Advanced Data Protection、Messages の検索機能向上、Notes の参加者カーソル、メモが正しく同期しない問題の修正などを除けばますます短くなる。

No release notes for macOS 13.1 in Sysetm
私が自分の M1 搭載 MacBook Air をアップデートした際に、System Settings はリリース情報を表示しなかった。どうやら、アップデートがたった一つしかなくてそのチェックボックスが既にチェックされている場合でさえも、アップデートの項目を選択しなければならなくなったらしい。良くない UI デザインだ!

すると残るのは、たった 1 つの改良点と、たった 1 件の Ventura でのバグ修正のみだ:

もう一つ、Apple は発表していないけれども Howard Oakley が気付いた変更点として、macOS 13.1 では System Settings の Network Locations 機能が復活したという事実がある。

Network Locations returns to macOS 13.1
何とまあ、階層的な ... ポップアップメニューだって? 良くない UI デザインだ!

macOS 13.1 では 33 件のセキュリティ脆弱性も修正された。実際に悪用された可能性があるあの WebKit バグも含まれている。

アップデートは System Settings > General > Software Update で、または System Settings の中に出る Software Update Available 通知を使ってインストールできる。

watchOS 9.2

全然違った種類の変更点をというならば、watchOS 9.2 がある。最も注目すべきは、従来約束していた機能として Race Route (レースコース) 機能が導入され、Outdoor Run、Outdoor Cycle、Outdoor Wheelchair のワークアウトで自分の過去の成績と競争できるようになったことだ。また、ウォッチが認識するランニングトラックを走る場合、Outdoor Run ワークアウトが自動的に位置情報を探知して、そのトラック固有の指標を提供する。毎週のようにトラックでのワークアウトをコーチする立場の者としては、当然のことだと言いたい。

それ以外の watchOS 9.2 での変更点を挙げておこう:

watchOS 9.2 では 23 件のセキュリティ脆弱性に対処が施されたが、他のオペレーティングシステムにあった WebKit のバグの影響は受けない。言い換えれば、セキュリティの理由で急いでアップデートする必要はない。ただし、他の機能も十分価値あるものに思えるが。

watchOS 9.2 アップデートは iPhone 上の Watch アプリの My Watch > General > Software Update でインストールできる。Apple Watch が充電器に接続されていて、かつ少なくとも 50% 充電されていることが必要だ。

tvOS 16.2

tvOS 16.2 にはいつもの Apple TV オペレーティングシステムに比べて珍しく多数の変更点が含まれる。中でも最も重要なのが Siri の改善で、最大 6 人の家族の声を認識できるようになり、Apple TV の表示言語とは異なる言語で動作でき (息子 Tristan は表示言語を英語のインターフェイスにしたままで iPhone の Siri にフランス語で話しかけるのが好きだ)、より多くの言語に対応して (デンマークのデンマーク語、ルクセンブルグのフランス語とドイツ語、シンガポールの英語) 番組や音楽を声だけで探せるようにした。

また、Apple は Apple TV の Apple Music 対応も強化した。リアルタイムで音楽に同期される歌詞を提供し (一緒に歌えるようにするためとのことだが、何と言っているかを知るためだけにも便利だ)、第3世代 Apple TV 4K ではボーカルの音量も調節できるようになり、こちらはおそらくカラオケファンのためだろうと思われる。

tvOS 16.2 では 23 件のセキュリティ脆弱性に対処が施された。Apple TV がハッキングされるリスクを強調するのはなかなか難しいが、これらの修正は Apple の各種オペレーティングシステムが非常に多くのコードを共有しているという事実によるものだ。

tvOS 16.2 は Settings > System > Software Update へ行けばインストールできるし、そのまま放置して自動的にインストールされるのを待ってもよい。

HomePod Software 16.2

Apple は HomePod アップデートについて“全般的なパフォーマンスと安定性の改善が含まれます”ということ以上に何も語っていない。このアップデートはいずれ自動的にインストールされるはずだ。あるいは、iOS 16 で HomePod のアクセサリータイルにタッチして押し続け、Accessory Details を選ぶこともできる。それから下へスクロールして、ギアをタップし、それから Update をタップすればよい。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Safari 16.2

Safari 16.2

Apple が macOS 12 Monterey と macOS 11 Big Sur 用に Safari 16.2 をリリースして、8 件の WebKit 脆弱性をパッチした。そのうち 1 件は Apple によれば実際に悪用された可能性があるという。言い換えれば、このアップデートを直ちにインストールすべきだ! Safari 16.2 は Software Update からのみダウンロードできる。(無料、リリースノート、macOS 11+)

macOS Monterey 12.6.2 and Big Sur 11.7.2

macOS Monterey 12.6.2と Big Sur 11.7.2

Apple が macOS Monterey 12.6.2macOS Big Sur 11.7.2 をリリースして、それぞれ 13 件と 10 件のセキュリティ脆弱性をパッチした。これらのセキュリティアップデートは Monterey または Big Sur の走る Mac 上で Software Update を使ってダウンロードできる。これらの脆弱性が実際に悪用されたか否かについて Apple は何も言っていないが、私たちとしては早めにインストールすることをお勧めしたい。何か問題に気付かれたら、ぜひコメントで教えて頂きたい。(無料、サイズはいろいろ、macOS 12 と macOS 11)

macOS Monterey 12.6.2 と Big Sur 11.7.2 の使用体験を話し合おう

BBEdit 14.6.2

BBEdit 14.6.2

Bare Bones が BBEdit 14.6.2 をリリースした。この古参のテキストエディタへのマイナーなアップデートで、数多くのバグ修正と、フォント合字への対応をグローバルに無効にする新しいオプションを追加した。今回のアップデートでは Markdown レンダラーの設定を編集している際のクラッシュを解消し、不正な形式の CSS ファイルに関するクラッシュを取り除き、クリッピングのためのキーボード組み合わせに関する問題を修正し、Spaces を切り替える際に Find および Multi-File Search ウィンドウがアクティブな Space へ移動してしまった macOS の不正な動作を回避した。詳細なリリースノートには他にも数えきれないほど多くの調整的変更がリストされているが、その中には見かけと違ってとても重要なユーザー体験上の利点を持つものもある。(新規購入 $49.99、無料アップデート、23.4 MB、 リリースノート、macOS 10.15.4+)

BBEdit 14.6.2 の使用体験を話し合おう

TextExpander 7.4

TextExpander 7.4

TextExpander が TextExpander 7.4 をリリースして、バグを修正するとともに、このテキスト展開ユーティリティの新しいライブ対応チャット機能をより多くの顧客に提供するようにした。今回の新バージョンでは日付調整マクロとの互換性を改善し、日付マクロでの数値解析のバグに対処し、Mail と Mimestream での展開と照合を修正し、macOS 11.6 やそれ以前でのクラッシュを取り除き、埋め込まれたスクリプトスニペットに含まれた記入に関するバグを解消した。(購読料金年額 $40、TidBITS 会員は最初の年のみ 20% 割引、54.1 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

TextExpander 7.4 の使用体験を話し合おう

Cardhop 2.2.3

Cardhop 2.2.3

Flexibits が Cardhop 2.2.3 をリリースして、数個のバグ修正を加えた。この連絡先管理アプリは電話をかける番号 (特に macOS での #) の処理を改良し、ノートに加えた変更が理由もなく破棄されてしまった稀なケースを避け、vCard を読み込む際に連絡先の写真が無視された問題を修正し、ソーシャルプロファイルを vCard から正しく読み込むようにし、一部のユーザーについて近日中に起こるお祝いを表示するショートカットが働かなかった問題を解消し、ウィジェットの設定に関係して起こったクラッシュを除去した。(Flexibits からも Mac App Store からも購読年額 $39.96、無料アップデート、31.2 MB、リリースノート、macOS 11+)

Cardhop 2.2.3 の使用体験を話し合おう

Art Text 4.2

Art Text 4.2

BeLight Software が Art Text 4.2 を出して、テキストアニメーション機能を追加して 2D および 3D の文字に命を吹き込めるようにした。(テキストアニメーションの基本を説明したビデオがある。) アニメーションを MOV、MP4、M4V、GIF の各動画形式に書き出したり、Art Text 書類の中でアニメーションを共有したりできる。このグラフィックデザインアプリはまた、Document Size ダイアログを作り直すとともに新しいプリセットを追加し、マスク回転スライダーでの問題に対処し、2D テクスチャーに関するさまざまな改良も施した。(BeLight Software からも Mac App Store からも新規購入 $29.99、無料アップデート、750 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Art Text 4.2 の使用体験を話し合おう

TripMode 3.2

TripMode 3.2

Alix Sarl がデータ使用量制御ユーティリティ TripMode のバージョン 3.2 をリリースして、macOS 13 Ventura に対応するとともに、リクエストのあったいくつかの機能を追加した。今回のアップデートではお持ちのアプリのアップロード速度とダウンロード速度をリアルタイムで追跡するバンド幅モニタを追加し (良くないアプリを見つける役に立つ)、TripMode に任意のネットワークのトラフィックをフィルターしたりブロックしたりさせられる常時動作モードを導入し、またプライバシー設定を追加して共有コンピュータでのプライバシーを保護できるようにした。(TripMode ウェブサイトから新規購入 $15、Mac App Store からの購読は年額 $14.99、Setapp からも入手可、15.7 MB、リリースノート、macOS 11+)

TripMode 3.2 の使用体験を話し合おう

Ulysses 29

Ulysses 29

Ulysses が会社名と同名の執筆アプリ Ulysses のバージョン 29 を出して、書籍や論文やブログなどの大きなプロジェクトで作業する新しい方法を導入した。Projects 機能がそのプロジェクトに関係あるものだけをサイドバーに表示するようにし、章になる部分とリサーチの部分のそれぞれのためにコンテンツ専用セクションと付録セクションを提供し、プロジェクトごとに別のキーワードを管理できるようにし、プロジェクトごとに書き出しのスタイル、ファイルフォーマット、プレビューを維持できるようにした。

Ulysses 29 ではまた、グループを書き出す際に並べ替え順が継承されるようにし、ウィンドウのツールバーをアップデートしてダッシュボードとリビジョンモードの操作を改良し、タイプライタースクロールの位置を固定していない場合にエディタでテキストがジャンプした問題を修正し、Mac をスリープ解除する際に Touch ID によるロック解除の要求が表示されなかった問題に対処した。(Mac App Store から購読月額/年額 $5.99/$49.99、Setapp からも入手可、無料アップデート、29.7 MB、リリースノート、macOS 11+)

Ulysses 29 の使用体験を話し合おう

URL Manager Pro 6.1

URL Manager Pro 6.1

Alco Blom が URL Manager Pro のバージョン 6.1 をリリースして、Apple の Shortcuts と Markdown への対応を追加した。この独立のブックマークマネージャユーティリティはまた、履歴の保存を最大 100,000 個のウェブページまでに増やし、Orion および DuckDuckGo ウェブブラウザへの対応を追加し、URL Manager Pro を起動時に開く (macOS 13 Ventura のみ)、URL Manager Pro を起動時に隠す、および起動時ブックマーク書類を選択するという設定項目を新たに追加した。(新規購入 $34.99、無料アップデート、22.1 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

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