iOS 16.3、iPadOS 16.3、および macOS 13.2 での最も注目すべき変更点は Apple ID 用の Security Keys (セキュリティキー) で、これはサインイン時に物理的なセキュリティキーがないとログインできなくなるようにしてアカウントのセキュリティを高められる機能だ。その種のハードウェアキーを私は全く使った経験がないのだが、この手のもので最もよく聞く名前は YubiKey で、こちらは Yubico が出しているさまざまのハードウェアキーに対する包括的な名前だ。あまり高価なものではないし、Touch ID と同様に指紋を使った認証ができるものさえある。
圧倒的大多数の Apple ユーザーにとって、セキュリティキーで Apple ID を保護するというのはやり過ぎだと言える。ただ、高価値の標的である人にとっては歓迎すべき追加機能となるかもしれない。忘れないで頂きたいが、高価値の標的というのは必ずしも政治家や、上級重役、ジャーナリスト、活動家といった人たちだけに限られない。重要なシステムにアクセスできる人ならば誰でも、例えば普通の IT サポートスタッフなども含まれる。
Apple ID 用の Security Keys と、iOS と iPadOS が第二世代 HomePod に対応するようにしたこと (2023 年 1 月 18 日の記事“第二世代 HomePod、空間オーディオ、温湿度監視、音認識をサポート”参照) を別にすれば、今回は大体においてメンテナンス・リリースと言える。iOS 16.3、iPadOS 16.3、macOS 13.2 はいずれも、デジタルホワイトボードアプリ Freeform で指または Apple Pencil を使って描画した筆線が共有ボードに表示されないことがあったバグを修正している。さらに、iOS と iPadOS では Siri がミュージックのリクエストに正しく応答しないことがあった問題が修正された。
iPhone のみの変更点として知っておくべきものが 2 つある。第一に、意図しない緊急通報を防ぐために、Emergency SOS 通話ではサイドボタンと上下どちらかの音量ボタンを長押ししてから放す操作が必要となった。これによって従来の挙動と実際どう変わるのかはよく分からないが、本当に 911 に電話してしまうのが怖くてあえてテストしようとは思わない。それでも、やはりまず Settings > Emergency SOS を開いて、あなたの設定を確認し、ヘルプテキストを読んでおくことをお勧めしたい。第二に、Black History Month を記念して黒人の歴史と文化を讃える新しい Unity 壁紙が iPhone に付いた。
これらの変更点以外に、iOS 16.3 では次のようなバグが修正された:
ロック画面の壁紙が真っ黒になった問題
iPhone 14 Pro Max のスリープ解除中に一時的に横線が表示された問題
ロック画面の Home ウィジェットに Home アプリの状況が正しく表示されなかった問題
CarPlay の Siri へのリクエストが正しく認識されなかった問題
watchOS 9.3 は「新機能と機能改善、およびバグ修正」を含んでいるはずだが、Apple が具体的に説明しているのは Black History Month を記念して黒人の歴史と文化を讃える新しい Unity Mosaic 文字盤だけだ。
これは驚いた! Macworld Expo がなくなって以来、私たちは Apple は製品リリースを 1 月中旬になんかしないと思い込むようになっていた。ところがこの会社はなぜかその昔のスケジュールに立ち戻って、今回新しい M2 Pro および M2 Max チップとそれが駆動する新モデルの Mac を出してきた。新型 Mac mini モデルは M2 チップと M2 Pro チップを搭載し、新型 MacBook Pro モデルは M2 Pro チップと M2 Max チップを搭載する。19 分間の入門ビデオが出ているのでご覧あれ。[訳者注: Mac mini ページ で“発表を見る”をクリックすれば日本語字幕付きのビデオがあります。]
Apple によればこれらのチップはいずれもそれぞれの M1 版に比べて 20% 増した CPU パフォーマンス、30% 増した GPU パフォーマンス、40% 増した Neural Engine パフォーマンスを提供するという。特定のアプリのベンチマークでは 25%-40% 良くなると Apple は主張する。現実世界のテストでどの程度その主張に近い結果が出るかはこれからの話だ。M2 は M1 に比べておよそ 15%-20% 速かったという結果が出ている。
いずれにしても、今回の M2 Pro と M2 Max は M1 Pro と M1 Max の後継として皆が期待するものをほぼ実現していると言えるだろう。では、Apple はこれらのチップをどのように使うのだろうか?
M2 および M2 Pro 搭載の Mac mini
Mac mini に注目していた人なら、Apple が M2 Mac mini を発表しても驚きはしなかっただろう。そのことは、M2 チップが MacBook Air と 13 インチ MacBook Pro でデビューした瞬間から約束されていたようなものだ。(2022 年 6 月 6 日の記事“Apple、M2 駆動の MacBook Air と更新された 13 インチ MacBook Pro を発表”参照。) しかしながらそのことよりもっとずっと歓迎すべきは、手頃な価格の M2 Pro Mac mini も今回追加されて、M1 Mac mini ではパワー不足だと思うけれども Mac Studio へジャンプする気はないという人たちに向けた Apple の極小型のデスクトップ Mac として登場したことだ。
M2 Pro Mac mini の価格は $1299 からで、10 コア CPU と 16 コア GPU を提供するが、追加料金 $300 で 12 コア CPU と 19 コア GPU の M2 Pro にすることもできる。基本価格では 16 GB のユニファイドメモリと 512 GB のストレージだが、追加料金 $400 で 32 GB のメモリにでき、ストレージのアップグレードは 1 TB ($200)、2 TB ($600)、4 TB ($1200)、8 TB ($2400) となっている。Thunderbolt 4 ポートは 4 基で提供できる接続性オプションが増す。
もちろん、Mac mini には内蔵スクリーンが付かない。複数スクリーンの達人には嬉しいこととして、Apple はディスプレイのサポートを拡張して M2 Mac mini でさえ 2 台のディスプレイに対応するようにした。片方は Thunderbolt 経由で最大 6K 解像度、もう片方は Thunderbolt 経由の 5K 解像度または HDMI 経由の 4K 解像度だ。
一方、M2 Pro に Apple の最新の HDMI 対応を組み合わせれば、超高解像度あるいは超高速のリフレッシュレートを望む人にとってさらに興味深い構成が可能となる。M2 Pro Mac mini は最大 3 台のディスプレイを駆動できて、そのうち 2 台は Thunderbolt 経由で最大 6K 解像度、残りの 1 台は HDMI 経由で 4K 解像度だ。けれども、M2 Pro Mac mini に接続するのは 2 台だけでよいという場合には、片方が Thunderbolt 経由で 6K 解像度、もう片方が HDMI 経由で 4K 解像度を 144 Hz で駆動できる。HDMI 経由で 1 台のみのディスプレイを使う場合には、8K 解像度を 60 Hz で、または 4K 解像度を 240 Hz で駆動できる。もし読者の皆さんの中に 8K 解像度あるいは 144/240 Hz のリフレッシュレートが重要だと思う方がおられたら、ぜひコメントで、その理由を添えてお知らせ願いたい。
いずれの Mac mini モデルでも Gigabit Ethernet が標準で、追加料金 $100 で 10 Gigabit Ethernet に変更できる。上記の通り 2 基または 4 基の Thunderbolt 4 ポートと、1 基の HDMI ポートに加えて、いずれのモデルにも 2 基の USB-A ポートと 1 基の 3.5 mm ヘッドフォンジャックが付く。ワイヤレス接続性については、新型 Mac mini モデルはいずれも最新の Wi-Fi 6E に対応しており、6 GHz バンドの中の新しい無認可周波数帯を利用して、新しい Wi-Fi 6E 対応のルータを使えば短距離での高速なパフォーマンスを提供する。また Bluetooth 5.3 も備えているので、より良い Bluetooth 体験が得られるかもしれない。
これらすべてが合わさることで、今回アップデートされた Mac mini はあなたの購買方程式を変えるものとなるかもしれない。M2 Mac mini は以前にも増してしっかりした入門レベルのデスクトップ Mac となった。それは、M2 によって向上したパフォーマンスと、24 GB にまで広がったメモリのオプション、それから Apple が基本価格を $100 値下げして $599 としたことによる。
でももっと興味深いのは M2 Pro Mac mini だ。Mac mini のコンパクトなフォームファクターでありながら大幅に向上したパフォーマンスを提供し、メモリとストレージの上限も増して、Thunderbolt ポートも多い。近いうちに買うことを考慮している人たちにとっての真の疑問は、装備を増した M2 Pro Mac mini が M1 Max Mac Studio と比べてどうかという点だろう。AppleInsider がその両者を比較しているので、どちらかを購入しようと思っている人はそれを参考にしてご自分の比較シートを作ってみるとよい。もちろん、Apple は間違いなくいずれ Mac Studio を M2 Max でアップグレードするだろうし、今後 6-12 か月のうちには M2 Ultra も出してくるのではなかろうか。そうなれば Mac Studio の方が大幅にパフォーマンスで抜き出ることだろうし、とりわけ Apple があまり大幅に値上げしなかった場合には魅力が増すことだろう。その上誰にも分からないことだが、ひょっとすると Apple は以前に約束していた Apple silicon 搭載の Mac Pro をリリースすることになるのかもしれない。それはおそらく基本的には M2 Ultra 版の Mac Studio であって、内部の拡張オプションを許す筐体に収められたものになるのではないか。
最後にもう一言。Apple は Intel ベースの Mac mini をひっそりと製品ラインから除外した。つまり、今や Intel チップの時代から生き残っているのは Mac Pro のみだということになる。
Apple が macOS Monterey 12.6.3 とmacOS Big Sur 11.7.3 をリリースして、それぞれ 14 件と 7 件のセキュリティ脆弱性をパッチした。いずれもカーネル脆弱性と、1 件の WebKit の問題 (これは Safari 16.3 でも対処が施されている)、および連絡先の情報にアプリからアクセスできてしまう可能性を持つ Screen Time のプライバシーの問題に対するパッチを含んでいる。これらのセキュリティアップデートは Monterey または Big Sur の走る Mac 上で Software Update を使ってダウンロードできる。これらの脆弱性が実際に悪用されたか否かについて Apple は何も言っていないが、私たちとしては早めにインストールすることをお勧めしたい。何か問題に気付かれたら、ぜひコメントで教えて頂きたい。(無料、サイズはいろいろ、macOS 12 と macOS 11)