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#1643: 新型 Mac mini および MacBook Pro モデル、新しい第二世代 HomePod、セキュリティに集中した OS アップデート、業界の大量解雇

この一週間は Apple からの思いがけないリリースが続いたので、今週号ではたくさんの情報をお届けしよう。まず、Apple は新しい M2 搭載モデルの Mac mini と 14 インチおよび 16 インチ MacBook Pro を、M2 Pro および M2 Max チップの意外なお披露目とともに発表した。そしてその次の日、Apple は第二世代 HomePod を発表して、過去に廃止となっていたフルサイズのスマートスピーカーを復活させた。そうして私たちが今週号の完成を目指していた時刻のほんの数時間前に、Apple は iOS 16.3、iPadOS 16.3、macOS 13.2 Ventura、watchOS 9.3、それに加えてセキュリティに集中した iOS 12.5.7、iOS/iPadOS 15.7.3、macOS 11.7.3 Big Sur、macOS 12.6.3 Monterey、Safari 16.3 という一連のアップデートをリリースした。また Adam Engst は、業界で続いている各社の大量解雇の波についてちらりと見てから、他のテック巨人たちと違って Apple がそのような解雇をしなかった理由を探る。それ以外で今週注目すべき Mac アプリのリリースは BBEdit 14.6.3、Audio Hijack 4.1、Fantastical 3.7.6、Default Folder X 5.7.4、Toast 20.1 Titanium と Pro、Fetch 5.8.3、Firefox 109、それに Mimestream 0.41.2 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple、ハードウェアセキュリティキー対応の iOS 16.3、iPadOS 16.3、macOS 13.2 Ventura をリリース

Apple のエンジニアたちはホリデー休暇が明けてから忙しく仕事に没頭していたに違いない。この会社のオペレーティングシステムが前回大きなアップデートを受けてからまだ1か月そこそこしか経っていないからだ。(2022 年 12 月 13 日の記事“Apple、iOS 16.2、iPadOS 16.2、macOS 13.1 Ventura、watchOS 9.2、tvOS 16.2 をリリース”参照。) Apple は今回、iOS 16.3iPadOS 16.3macOS 13.1 Ventura、および watchOS 9.3 をリリースして、1 つの新機能と、Black History Month (黒人歴史月間) を記念する壁紙とウォッチ文字盤、バグ修正とセキュリティアップデートをもたらした。tvOS や HomePod Software について Apple は何も言っていない。

iOS 16.3、iPadOS 16.3、および macOS 13.2 での最も注目すべき変更点は Apple ID 用の Security Keys (セキュリティキー) で、これはサインイン時に物理的なセキュリティキーがないとログインできなくなるようにしてアカウントのセキュリティを高められる機能だ。その種のハードウェアキーを私は全く使った経験がないのだが、この手のもので最もよく聞く名前は YubiKey で、こちらは Yubico が出しているさまざまのハードウェアキーに対する包括的な名前だ。あまり高価なものではないし、Touch ID と同様に指紋を使った認証ができるものさえある。

Yubikey Bio

圧倒的大多数の Apple ユーザーにとって、セキュリティキーで Apple ID を保護するというのはやり過ぎだと言える。ただ、高価値の標的である人にとっては歓迎すべき追加機能となるかもしれない。忘れないで頂きたいが、高価値の標的というのは必ずしも政治家や、上級重役、ジャーナリスト、活動家といった人たちだけに限られない。重要なシステムにアクセスできる人ならば誰でも、例えば普通の IT サポートスタッフなども含まれる。

Apple ID 用の Security Keys と、iOS と iPadOS が第二世代 HomePod に対応するようにしたこと (2023 年 1 月 18 日の記事“第二世代 HomePod、空間オーディオ、温湿度監視、音認識をサポート”参照) を別にすれば、今回は大体においてメンテナンス・リリースと言える。iOS 16.3、iPadOS 16.3、macOS 13.2 はいずれも、デジタルホワイトボードアプリ Freeform で指または Apple Pencil を使って描画した筆線が共有ボードに表示されないことがあったバグを修正している。さらに、iOS と iPadOS では Siri がミュージックのリクエストに正しく応答しないことがあった問題が修正された。

iPhone のみの変更点として知っておくべきものが 2 つある。第一に、意図しない緊急通報を防ぐために、Emergency SOS 通話ではサイドボタンと上下どちらかの音量ボタンを長押ししてから放す操作が必要となった。これによって従来の挙動と実際どう変わるのかはよく分からないが、本当に 911 に電話してしまうのが怖くてあえてテストしようとは思わない。それでも、やはりまず Settings > Emergency SOS を開いて、あなたの設定を確認し、ヘルプテキストを読んでおくことをお勧めしたい。第二に、Black History Month を記念して黒人の歴史と文化を讃える新しい Unity 壁紙が iPhone に付いた。

iOS 16.3 changes to Emergency SOS and Lock Screen wallpaper

これらの変更点以外に、iOS 16.3 では次のようなバグが修正された:

watchOS 9.3 は「新機能と機能改善、およびバグ修正」を含んでいるはずだが、Apple が具体的に説明しているのは Black History Month を記念して黒人の歴史と文化を讃える新しい Unity Mosaic 文字盤だけだ。

悲しいことに、2023 年 1 月 11 日の記事“iPhone と iPad、今やバックアップ/同期の度にパスコードが必要に”で説明した問題、つまり iPhone や iPad が Mac にバックアップしようとする度にパスコードの入力を求められる点を Apple はまだ変えていないようだ。

今回のいずれのオペレーティングシステムもセキュリティアップデートを受けた。Apple が発表している文言を見る限り、対処された脆弱性の中に実際に悪用されていたものはない。

今回のアップデートにおける変更点の影響が及ぶ範囲がどちらかと言えば狭いことと、修正されたセキュリティ脆弱性が実際に悪用されていないことを考えれば、アップデートを急ぐ必要はない。数日あるいは一週間ほど待ってからアップデートしてもよいだろう。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

iOS 12.5.7 と iOS/iPadOS 15.7.3、セキュリティ修正を提供

Apple は古いバージョンの iOS や iPadOS をアップデートするとは約束していないが、同社は最新のものにアップデート出来ない機器のユーザーを保護するため、セキュリティアップデートをしばしばリリースする。その流れで、Apple は iOS 12.5.7 と iOS/iPadOS 15.7.3 をリリースしたばかりである。

iOS 12.5.7 は、悪意の元で作られた Web コンテンツに任意コードを実行するのを許す WebKit の重大な脆弱性に対応している。この脆弱性は、実際に悪用されており、12 月中旬に Apple が他のオペレーティングシステムのために対処したものと同じものである ("Apple、iOS 16.2、iPadOS 16.2、macOS 13.1 Ventura、watchOS 9.2、tvOS 16.2 をリリース" 13 December 2022、そして "iOS 15.7.2 及び iPadOS 15.7.2、不当利用されたセキュリティ脆弱性を阻止" 14 December 2022 参照)。

アップデートをためらう理由があるとすれば、iPhone や iPad を Mac にバックアップしていて、接続の度にパスコードの入力を促されるかどうかである ("iPhone と iPad、今やバックアップ/同期の度にパスコードが必要に" 11 January 2023 参照)、私は、アップデートする事でこの振る舞いが変わるのかどうか知らないが (或いは iOS 12 を走らせている機器が既にそれを経験しているかどうかも)、誰かがテストしてみる迄、待ってみる価値はある。もし iCloud にバックアップしているのであれば、直ちに iOS 12.5.7 にアップデートする事をお勧めする。

iOS 15.7.3 と iPadOS 15.7.3 は5つのセキュリティ脆弱性に対応しているが、そのどれもが実際に悪用されたことはない。アップデートしたいとお思いだろうが、一週間かそこら待って、オンライン討議に予期せぬ問題が登場するかどう見てみるのも悪くは無いであろう。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Apple はレイオフを回避、他のテック巨人達は AI に焦点

CNBC は昨年の テック企業によるレイオフの総まとめ を作成した:

テック世界での人員削減が進んでいる。10 年に及ぶ上昇相場を引っ張ってきた企業達が新しい現実に適合しようとしている。... このレイオフは、成長の陰りが見え、インフレと闘うための金利上昇、そして来年の景気後退への恐怖の時にやってきた。

それが Meta (11,000 削減) と Twitter (3,700) そして Snap (1,000) だけだった時には、この問題はソーシャルメディアだけのものだと思うのは簡単であった。レイオフが Coinbase (2,000) そして Crypto.com (500) にも及んだ時、我々は過熱した仮想通貨の世界が現実に直面しただけだと願う事も出来た、とりわけ FTX の屈辱的な崩壊を目の当たりにして。Amazon が 18,000 人の従業員をレイオフした時、2021 年末迄に倍増して 1.6 百万に達していた Amazon のパンデミック対応の雇用狂騒曲に対するただの修正かもしれないと思えた。しかし、今や Microsoft は 10,000 人の労働者をレイオフし、そして Google は 12,000 人を削減したことで、この業界そして経済にはより大きな問題があることを示唆することとなった。

或いは、大勢の従業員をレイオフするのは、企業の益となることは殆どない単なる伝染性の考えなのかも知れない。何れにしろ、75,000 人のテック従業員が求人市場に流れることは、来るべき 2023 年の大卒者に対して驚愕を引き起こすであろう。私はこれ等全てのコンピュータ科学専攻の人達を羨ましくは思わない。

Apple は未だレイオフを発表していない唯一のテック巨人である。何故か? 好調な業績にも拘わらず、Apple は従業員数を過剰に増やすことに抵抗してきて過去4年間での人員増を平均でたったの 5.6% に抑えてきた。これに対して、平均の人員増は、Amazon で 31.1%, Google 18.3%, Meta 30.3%, そして Microsoft 14.1% であった。

私はまた、Google, Meta, そして Microsoft の全社が従業員に対する書簡で AI への焦点を強化することに触れていたことに興味を抱いた。

Google の Sundar Pichai:

我々の前には、我々の製品全般に亘って AI に関わる大きなビジネスチャンスがあり、我々はそれに対して大胆にそして責任を持って取り組む所存である。

Meta の Mark Zuckerberg:

我々の AI 基盤の構築にあたり、我々はその能力を更に一層効率的に使えるようになることに焦点を当てていく。

Microsoft の Satya Nadella:

同時に、コンピューティングの次の大きな波は AI の進化と共に生まれつつあり、我々は世界で最も進化したモデルを新しいコンピューティングプラットフォームに変えて行く。

昨年 TidBITS Publishing の頭数は 50% 減ったが (二人から一人へ、双方合意の上で - "Josh Centers:さようなら、いままで魚をありがとう" 14 November 2022 参照)、我々は AI をより効率的な基盤を作るチャンス、或いは新しいプラットフォームへ切り替えるべき大きな機会とは見ていないと自信を持って言える。そうではなく、我々は我々が書く全てを HI (human intelligence - 人間知能) をもって創り出す努力を倍増するつもりだ。ボットは他のボットのために書ける;我々は人々のために出版する。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

第二世代 HomePod、空間オーディオ、温湿度監視、音認識をサポート

今週の驚きの発表の続きとして ("M2 Pro と M2 Max を搭載する新型 Mac mini と MacBook Pro" 18 January 2023 参照)、Apple は殆ど誰もが予期しなかった製品の幕を開けた - 第二世代 HomePod である。このフルサイズ HomePod は音楽やビデオのために Dolby Atmos を使った空間オーディオをサポートし、温度と湿度の監視が付き、そして年内には Sound Recognition 機能を追加すると約束している。色はホワイトとミッドナイト (これはスペースグレイに置き換わるものだが、違いは殆どない) がある。

ユーザーは新しい温度/湿度センサーを Home アプリの中で利用して、周囲環境に応じて自動でブラインドを閉めたりファンを制御したり出来るようになる。どうも、この機能は HomePod mini 上でも有効化されるようで、来るべき HomePod Software アップデートでやってくるのかもしれない。他の HomeKit 対応の製品は既にその様なセンサーを提供しているが、その能力が HomePod に組み込まれていることでスマートホームオートメーションに手を出してみようと思う人が増えるかも知れない。このアップデートされた HomePod はまた Matter もサポートする ("Matter 到着、しかし、今意味はあるか?" 4 November 2022 参照)。

もっと興味を引くのは新しい Sound Recognition 機能である。それは HomePod が煙や一酸化炭素検知器の警報音を認識するのを可能にし、警報音が検知された時そのユーザーの iPhone に通知を送る。この機能は iOS の Settings > Accessibility > Sound Recognition にあるものの焦点を絞った利用法で、色々な音を認識しユーザーの注意喚起を促す事が出来る。しかしながら、Apple によると、それは "この春" に出されるソフトウェアアップデートまで使えないという。それはまた新しい Home アーキテクチャを必要とするが、Apple はそれを iOS 16.2 でリリースしたが、数日後に直ぐに引っ込めた経緯がある ("Apple、iOS 16.2、iPadOS 16.2、macOS 13.1 Ventura、watchOS 9.2、tvOS 16.2 をリリース" 13 December 2022 参照)。

Sound Recognition in iOS

また、二つの HomePod をステレオペアとする構成も出来るが、この機能は同じモデルの HomePod を必要とするので注意が必要である。従って、初代 HomePod と第二世代モデル、或いは HomePod mini とミックスするという様な組合せは出来ない。

この第二世代 HomePod は $299 で今予約注文が可能で、初代の HomePod と同じ値段であり、出荷は 3 February 2023 からとなる。

凱旋?

不本意な販売が何年も続いた後、Apple は初代 HomePod をラインナップから 2021 年に外した - "Apple、初代の HomePod を生産終了、HomePod mini に集中" (15 March 2021) 参照。その記事で私は次の様に書いた:

HomePod は驚異的な技術の粋を注ぎ込んで作られ素晴らしいサウンドを届けていたけれども、当初の価格 $349 でも、Apple がその後値下げした $299 でも、価格面で Amazon や Google のスマートスピーカーとは競争することができなかった。

では、何故 Apple はフルサイズの HomePod を戻したのであろうか、そして何故今なのであろうか? 仕様を細かく比較すれば、生産コストを下げ利益率を上げるために第二世代 HomePod の部品表を削ったことが窺える。工業デザインは余り変えず (高さは 4 mm 低く、200 g 軽い)、第二世代 HomePod は以下のものを持っている:

他にも違いはあるが、それがより安価な部品を意味するのか、或いは単に似た様な能力を表現する違った言い方なのかを知るのは困難である。例えば、初代 HomePod は "カスタムアンプ付きの高偏位ウーファー" を有していたが、第二世代モデルでは "4インチ高偏位ウーファー" としか言っていない。同様に、初代のホーンツイーターは (私は "ホーンツイーター" と言う表現を可視化するのをどれだけ楽しんだことか言い表せない程である [訳者注:ホーンツイーターは英語では "horn-loaded tweeter" で直訳すれば、ホーン"装備の"ツイーターとなる]) それぞれに "カスタムアンプ" を持っているが、新しいものはそれぞれに "ネオジム磁石" を装備している。より安価? より良い? よりそれらしく聞こえる? もし皆さんがオーディオ技術者なら、どうかあなたの解釈をコメントで。

Apple は第二世代 HomePod は S7 チップを装備していると言っている。そして Ultra Wideband サポートのための U1 チップで補完されていると思われる (U1 装備の iPhone をタップして HomePod の頂部にオーディオを転送するため)。初代の HomePod は A8 チップを持っていて ("HomePod が 2 月 9 日に登場、マルチルーム・オーディオの登場は年内" 23 January 2018 参照)、より安価な HomePod mini は S5 と U1 チップに依存している ("Apple、$99 の HomePod mini を発売" 13 October 2020 参照)。私が思うに、Apple Watch に搭載されている S7 は 2018 年当時の A8 よりも遙かに安いのであろう。また、それは 802.11ac から 802.11n へと落とされた理由でもある - 後者は S7 チップがサポートする全てである。

私の推測は、S7 の計算力を利用すれば同じレベルの音質と Siri 応答性をもっと少ないハードウェアででも提供出来ることを見つけたのではないかと言うことである。Apple が製造にもたらすことの出来る規模感を考慮すれば、同社は恐らくこの新型 HomePod を復活させるのを正当化するに十分なだけ利益性のあるものと出来るのであろう。勿論、問題となるのは新型 HomePod の品質と性能が初代のものほど良いかどうかである - 我々も間もなく比較結果を手にするであろう。

Apple は、初代 HomePod の最初の $349 という値段に対して強い非難を受け、そして $299 の値段でも、Amazon や Google からの遙かに安いスマートスピーカーとは競争にならなかった。それが、$99 の HomePod mini の開発と初代 HomePod の中止のきっかけとなった。

しかし、昨年末に、Amazon のハードウェア部門は 2022 年に $10 billion の損失を出しそうな状況だとの報道が出た。Echo スピーカーは Amazon でのベストセラー機器の中にあったが、大部分は原価で売られていた。それは、個々の販売では損を出しているが量で稼いで何とかと言うよりはマシな話だが、とてつもなくと迄は行かない。従って、原価を反映した価格設定をするという Apple の意図は恐らくより意味をなすであろう、たとえ市場シェアを獲得するには効果的ではなかったとしても。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

M2 Pro と M2 Max を搭載する新型 Mac mini と MacBook Pro

これは驚いた! Macworld Expo がなくなって以来、私たちは Apple は製品リリースを 1 月中旬になんかしないと思い込むようになっていた。ところがこの会社はなぜかその昔のスケジュールに立ち戻って、今回新しい M2 Pro および M2 Max チップとそれが駆動する新モデルの Mac を出してきた。新型 Mac mini モデルは M2 チップと M2 Pro チップを搭載し、新型 MacBook Pro モデルは M2 Pro チップと M2 Max チップを搭載する。19 分間の入門ビデオが出ているのでご覧あれ。[訳者注: Mac mini ページ で“発表を見る”をクリックすれば日本語字幕付きのビデオがあります。]

これらのモデルの Mac は現在 (米国で) 注文受付中で、2023 年 1 月 24 日に店頭に出る。オーストラリア、中国、香港、日本、マカオ、ニュージーランド、およびシンガポールの顧客は注文受付が開始される 2023 年 2 月 3 日まで待たなければならない。

M2 Pro と M2 Max

まず始めに、チップの話をしよう。先代の M1 ファミリーと同様に、M2 Pro と M2 Max はそれぞれ基本となる M2 を拡張したバージョンだ。

Apple によればこれらのチップはいずれもそれぞれの M1 版に比べて 20% 増した CPU パフォーマンス、30% 増した GPU パフォーマンス、40% 増した Neural Engine パフォーマンスを提供するという。特定のアプリのベンチマークでは 25%-40% 良くなると Apple は主張する。現実世界のテストでどの程度その主張に近い結果が出るかはこれからの話だ。M2 は M1 に比べておよそ 15%-20% 速かったという結果が出ている。

いずれにしても、今回の M2 Pro と M2 Max は M1 Pro と M1 Max の後継として皆が期待するものをほぼ実現していると言えるだろう。では、Apple はこれらのチップをどのように使うのだろうか?

M2 および M2 Pro 搭載の Mac mini

Mac mini に注目していた人なら、Apple が M2 Mac mini を発表しても驚きはしなかっただろう。そのことは、M2 チップが MacBook Air と 13 インチ MacBook Pro でデビューした瞬間から約束されていたようなものだ。(2022 年 6 月 6 日の記事“Apple、M2 駆動の MacBook Air と更新された 13 インチ MacBook Pro を発表”参照。) しかしながらそのことよりもっとずっと歓迎すべきは、手頃な価格の M2 Pro Mac mini も今回追加されて、M1 Mac mini ではパワー不足だと思うけれども Mac Studio へジャンプする気はないという人たちに向けた Apple の極小型のデスクトップ Mac として登場したことだ。

M2 Mac mini spec card

両モデルはどう違うのか?

もちろん、Mac mini には内蔵スクリーンが付かない。複数スクリーンの達人には嬉しいこととして、Apple はディスプレイのサポートを拡張して M2 Mac mini でさえ 2 台のディスプレイに対応するようにした。片方は Thunderbolt 経由で最大 6K 解像度、もう片方は Thunderbolt 経由の 5K 解像度または HDMI 経由の 4K 解像度だ。

一方、M2 Pro に Apple の最新の HDMI 対応を組み合わせれば、超高解像度あるいは超高速のリフレッシュレートを望む人にとってさらに興味深い構成が可能となる。M2 Pro Mac mini は最大 3 台のディスプレイを駆動できて、そのうち 2 台は Thunderbolt 経由で最大 6K 解像度、残りの 1 台は HDMI 経由で 4K 解像度だ。けれども、M2 Pro Mac mini に接続するのは 2 台だけでよいという場合には、片方が Thunderbolt 経由で 6K 解像度、もう片方が HDMI 経由で 4K 解像度を 144 Hz で駆動できる。HDMI 経由で 1 台のみのディスプレイを使う場合には、8K 解像度を 60 Hz で、または 4K 解像度を 240 Hz で駆動できる。もし読者の皆さんの中に 8K 解像度あるいは 144/240 Hz のリフレッシュレートが重要だと思う方がおられたら、ぜひコメントで、その理由を添えてお知らせ願いたい。

いずれの Mac mini モデルでも Gigabit Ethernet が標準で、追加料金 $100 で 10 Gigabit Ethernet に変更できる。上記の通り 2 基または 4 基の Thunderbolt 4 ポートと、1 基の HDMI ポートに加えて、いずれのモデルにも 2 基の USB-A ポートと 1 基の 3.5 mm ヘッドフォンジャックが付く。ワイヤレス接続性については、新型 Mac mini モデルはいずれも最新の Wi-Fi 6E に対応しており、6 GHz バンドの中の新しい無認可周波数帯を利用して、新しい Wi-Fi 6E 対応のルータを使えば短距離での高速なパフォーマンスを提供する。また Bluetooth 5.3 も備えているので、より良い Bluetooth 体験が得られるかもしれない。

これらすべてが合わさることで、今回アップデートされた Mac mini はあなたの購買方程式を変えるものとなるかもしれない。M2 Mac mini は以前にも増してしっかりした入門レベルのデスクトップ Mac となった。それは、M2 によって向上したパフォーマンスと、24 GB にまで広がったメモリのオプション、それから Apple が基本価格を $100 値下げして $599 としたことによる。

でももっと興味深いのは M2 Pro Mac mini だ。Mac mini のコンパクトなフォームファクターでありながら大幅に向上したパフォーマンスを提供し、メモリとストレージの上限も増して、Thunderbolt ポートも多い。近いうちに買うことを考慮している人たちにとっての真の疑問は、装備を増した M2 Pro Mac mini が M1 Max Mac Studio と比べてどうかという点だろう。AppleInsider がその両者を比較しているので、どちらかを購入しようと思っている人はそれを参考にしてご自分の比較シートを作ってみるとよい。もちろん、Apple は間違いなくいずれ Mac Studio を M2 Max でアップグレードするだろうし、今後 6-12 か月のうちには M2 Ultra も出してくるのではなかろうか。そうなれば Mac Studio の方が大幅にパフォーマンスで抜き出ることだろうし、とりわけ Apple があまり大幅に値上げしなかった場合には魅力が増すことだろう。その上誰にも分からないことだが、ひょっとすると Apple は以前に約束していた Apple silicon 搭載の Mac Pro をリリースすることになるのかもしれない。それはおそらく基本的には M2 Ultra 版の Mac Studio であって、内部の拡張オプションを許す筐体に収められたものになるのではないか。

最後にもう一言。Apple は Intel ベースの Mac mini をひっそりと製品ラインから除外した。つまり、今や Intel チップの時代から生き残っているのは Mac Pro のみだということになる。

M2 Pro および M2 Max 搭載の 14 および 16 インチ MacBook Pro

新型の 14 インチと 16 インチの MacBook Pro 各モデルで、Apple は内部のみを変更した。チップを M2 Pro と M2 Max にアップグレードするとともに、ワイヤレス接続性を Wi-Fi 6E と Bluetooth 5.3 に現代化した。基本的機能の詳しい議論は 2021 年 10 月 18 日の記事“M1 Pro および M1 Max チップ駆動の新型 14 インチおよび 16 インチ MacBook”をご覧頂きたい。

14-inch and 16-inch M2 MacBook Pro spec card

では、今回はどんなものが手に入るのか?

ワイヤレス接続性が向上したことに加えて、いずれの MacBook Pro モデルも MagSafe 3 充電ポート、ディスプレイに接続するための HDMI ポート、SDXC カードスロット、3.5 mm ヘッドフォンジャックを 1 基ずつ備え、3 基の Thunderbolt 4 ポート (左側に 2 基、右側に 1 基) を持つ。

新型 Mac mini モデルと同様、この新型 MacBook Pro モデルも外付けディスプレイ対応が向上している。それは、M2 Pro と M2 Max に加えて、HDMI 対応が進化しているからだ。M2 Pro モデルでは、本体ディスプレイとは別に、次のいずれかに対応する:

M2 Max モデルでは、次のいずれかを駆動できる:

新型 MacBook Pro モデルのスペックは素晴らしいが、購買決断を変えるものとして受け取ることができるのは、次に M2 ファミリーのモデルが出たら買おうかと待ち構えていた人たちだけだろう。M2 Pro や M2 Max のラップトップを待ち望んでいた人は、もう待たなくてよい。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

macOS Monterey 12.6.3 and Big Sur 11.7.3

macOS Monterey 12.6.3 と Big Sur 11.7.3

Apple が macOS Monterey 12.6.3 とmacOS Big Sur 11.7.3 をリリースして、それぞれ 14 件と 7 件のセキュリティ脆弱性をパッチした。いずれもカーネル脆弱性と、1 件の WebKit の問題 (これは Safari 16.3 でも対処が施されている)、および連絡先の情報にアプリからアクセスできてしまう可能性を持つ Screen Time のプライバシーの問題に対するパッチを含んでいる。これらのセキュリティアップデートは Monterey または Big Sur の走る Mac 上で Software Update を使ってダウンロードできる。これらの脆弱性が実際に悪用されたか否かについて Apple は何も言っていないが、私たちとしては早めにインストールすることをお勧めしたい。何か問題に気付かれたら、ぜひコメントで教えて頂きたい。(無料、サイズはいろいろ、macOS 12 と macOS 11)

macOS Monterey 12.6.3 と Big Sur 11.7.3 の使用体験を話し合おう

BBEdit 14.6.3

BBEdit 14.6.3

Bare Bones が BBEdit 14.6.3 をリリースした。この古参のテキストエディタのメンテナンス・リリースだ。今回のアップデートでは Extract 操作でマッチしたすべての項目に対して検索結果のリストを生成していたバグ (その結果動作が遅くなっていた) を修正し、soft-wrap された書類で矩形選択域を削除すると“多大な驚愕”を引き起こした問題に対処し、macOS 13 Ventura で導入されたバグを回避するためファイル比較のための代替用 diff ツールをインストールできるようにし、進行中のファイル転送接続をキャンセルした際の小さなメモリリークを塞ぎ、Text Factory 操作で要約が欠落することがあった問題を修正し、また iCloud Drive から BBEdit の Dock アイコンへ項目をドラッグした際にエラーを報告する macOS の挙動への回避策を施した。(新規購入 $49.99、無料アップデート、24.7 MB、 リリースノート、macOS 10.15.4+)

BBEdit 14.6.3 の使用体験を話し合おう

Audio Hijack 4.1

Audio Hijack 4.1

Rogue Amoeba が Audio Hijack をバージョン 4.1 にアップデートして、このオーディオ録音ワークフローアプリに多数の拡張を施した。今回のリリースでは“大幅に拡張された”Session List ウィンドウを導入して馴染みのある Finder に似た動作をするようにし、Global ウィンドウを改良してオプションとしてメニューバーにも置けるようにした。今回のアップデートではまた System Audio 入力ブロックから手動で特定のソースを除外できるオプションを追加し、Recording Inspector ウィンドウの中でファイルの改名ができるようにし、いくつかスクリプティングの拡張を施し、メーターのアニメーションを改良して反応性を良くし、録音タイトルの変更が直ちに反映されるようにし、バックグラウンドにおけるタイマーの更新がより頻繁に起こるようにし、最近追加したブロックを削除する際の Undo が正しく働くための修正を加えた。(新規購入 $64、TidBITS 会員には 20% 割引、無料アップデート、36.5 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

Audio Hijack 4.1 の使用体験を話し合おう

Fantastical 3.7.6

Fantastical 3.7.6

Flexibits が Fantastical 3.7.6 をリリースして、Slack Huddle リンクと SecureVideo telehealth リンクへの対応を追加し、Microsoft Teams リンクへの対応を改良した。このカレンダーアプリは繰り返すタスクを VoiceOver が説明する方法を改良し、CalDAV アカウントの繰り返すイベントの処理を改良し、ダブルクリックしてから Day および Week 表示の日付見出しの上へドラッグすることで新規の全日イベントを作成できるようにし、Detroit タイムゾーンで作成したイベントが Exchange の中で Indiana タイムゾーンに表示されてしまった問題を解消し、添付ファイルを Google Drive にアップロードできなくなったバグを修正し、繰り返すイベントの利用可能性 free/busy を変更すると一つのイベントだけでなくシリーズの中のすべてのイベントで変わってしまった問題に対処した。(Flexibits からも Mac App Store からも購読年額 $39.96、無料アップデート、63 MB、 リリースノート、macOS 11+)

Fantastical 3.7.6 の使用体験を話し合おう

Default Folder X 5.7.4

Default Folder X 5.7.4

St. Clair Software が Default Folder X 5.7.4 をリリースして、いくつかの信頼性の問題に対処した。Open/Save ダイアログを拡張するこのユーティリティは Safari 16.2 で Save ダイアログが反応しなくなることがあったバグを修正し、macOS 13 Ventura で Save ダイアログの Cancel および Save ボタンが無効になってしまった問題を解消し、Open および Save ダイアログで目的のフォルダに切り替わらないことがあったバグを修正し、特定の状況下で Default Folder X が予期せず終了することがあった問題を修正した。(新規購入 $34.95、TidBITS 会員には新規購入で $10、アップグレードで $5 の値引、Setapp からも入手可、13.7 MB、 リリースノート、macOS 10.13+)

Default Folder X 5.7.4 の使用体験を話し合おう

Toast 20.1 Titanium and Pro

oast 20.1 Titanium および Pro

Corel が Toast 20.1 Titanium および Pro を出した。このデジタルメディアスイートに数件のバグ修正を施した、メンテナンス・アップデートだ。いずれの版でも、選択された映画タイトルをより良く表示するためのハイライト挙動を追加し、Star ディスクメニューテンプレートを開くことができなくなった問題を解消し、Wedding メニューテーマで空白のサムネイルが表示されたバグを修正し、ある種の外付け USB デバイスを接続した際に起こったクラッシュに対処し、DVD をデジタルファイルに変換する際にオーディオが落ちていたバグを修正した。(新規購入 $99.99/$149.99、無料アップデート、リリースノート、macOS 10.14+)

Toast 20.1 Titanium および Pro の使用体験を話し合おう

Fetch 5.8.3

Fetch 5.8.3

Fetch Softworks が Fetch 5.8.3 をリリースして、macOS 13 Ventura 上で長い記録で起こったパフォーマンスの問題に対処した。この古参のファイル転送クライアントはまた、予期せぬところで SFTP パスワードのプロンプトが出た問題を解消し、フォントサイズのデフォルト設定を忘れることがあったバグを修正し、New Connection ダイアログに顧客のポート番号を表示する際の問題に対処し、Apple silicon 搭載の Mac で TLS/SSL 接続による FTP をする際の AUTH GSSAPI エラーを修正し、MultipleOutstandingSFTPReads 環境設定を AWS SFTP との互換性のために追加した。(Fetch Softworks から新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、教育機関のユーザーには無料、無料アップデート、10 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Fetch 5.8.3 の使用体験を話し合おう

Firefox 109

Firefox 109

Mozilla が Firefox 109 をリリースして、Control または Command キーを使っている際のマウスホイールとトラックパッドの挙動を調整した。Firefox は今回からページをスクロールするようになり、予期せずズームしてしまうのを避けるとともに macOS の他のウェブブラウザとの整合性を図った。今回のアップデートではまた、Firefox View の Recently Closed セクションで URL リンクを閉じたり削除したりできるようにするとともに、Colorways テーマへの対応を終了した。ただし、アクティブな Colorways を保存している場合は引き続き Add-ons and themes メニューからアクセスできる。(無料、126 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Firefox 109 の使用体験を話し合おう

Mimestream 0.41.2

Mimestream 0.41.2

この Gmail 用 macOS クライアントで間もなく登場予定のバージョン 1.0 リリースに備えつつ、Mimestream がさまざまの改良やバグ修正を加えたバージョン 0.41 をリリースした。今回のアップデートではリスト表示の中の Draft メッセージに新しい見栄えを導入し、Unified フォルダのサブフォルダをショートカットの繰り返しで循環できるようにし、受取人の自動補完提案を評価するアルゴリズムを見直し、macOS 13 Ventura の下でメッセージリストの行をスワイプした際の見栄え上のアーチファクトに対処し、Gmail URL を正しくコピーできなかったバグを修正し、スヌーズしたメッセージが正しい時刻にスヌーズ解除されるようにし、また From アカウントを変更する際の Signature ポップアップメニューのアップデートに関するバグを修正した。そのリリースの後間もなく、Mimestream はベータ版 0.41.2 を出して、From ヘッダを持たないメッセージを表示する際のクラッシュを解消するとともに、Label ピッカーが時々キーボードフォーカスを失うことがあったバグを修正した。(ベータ期間中は無料、12 MB、 リリースノート、macOS 11+)

Mimestream 0.41.2 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Twitter、サードパーティのクライアントアプリを禁止

Engadget の記事で Karissa Bell がこう書いている

サードパーティアプリの開発者を切り捨てる意図が Twitter にあったか否かの議論への決定的な回答として、Twitter 社はその開発者契約をひっそりと更新し、アプリのメーカーが独自のクライアントを作成することはもはや許されないと明確に定めた。

先週、必要な API を Twitter が何の説明もなく停止したことで、独立の Twitter アプリの多くが動作しなくなった。スローモーションで進む Twitter の内部崩壊に関わる最新のニュースとして、Engadget は Twitter がその開発者契約を更新してサードパーティのクライアントを締め出したことを発見した。こうして、機能不全によりアプリが壊滅するという噂が公式となった。それはつまり、近頃 Twitter から聞こえるニュースはすべて公式だということとも言える。これに応じて、The Iconfactory は macOS および iOS 用の Twitterrific の終了を正式発表したし、Tapbots はもはや機能しなくなった自らの Tweetbot アプリへの追悼ページ.を公開した。Twitter は自社のネイティブなアプリを通じてより多くの広告露出回数を得られるかもしれないが、今回のことで Twitterrific や Tweetbot を使っていた長年のユーザーの多くがついに Mastodon へ移行する決断をするかもしれない。

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