これは私の推測だが「Google の Threat Analysis Group の Clement Lecigne 氏と Amnesty International の Security Lab の Donncha O Cearbhaill 氏」という名前を Apple が明記しているという事実から、これらの脆弱性は各国政府が活動家やジャーナリストを標的とするために NSO Group の Pegasus あるいはその種のソフトウェアを使って利用したものなのではないかと思われる。(2021 年 11 月 24 日の記事“Apple の訴訟、スパイウェア企業 NSO Group を追う”参照。)
Apple はこの機会を利用してそれ以外のバグ修正も盛り込んだ。3 つのオペレーティングシステムのいずれも、押している手の絵文字🫸 🫷 でスキントーンの選択肢が正しく表示されるようになった。また、iOS 16.4.1 と iPadOS 16.4.1 では Siri が応答しないことがある問題に対処が施され、macOS 13.3.1 では Apple Watch での Auto Unlock 機能が使えないことがある問題が解消された。
活動家が対象となったという私の推測がもし正しければ、対象となるのは主として高い価値を持つ標的に限られているのかもしれない。それでも、やはりこれらのアップデートを直ちにインストールすることをお勧めしたい。現に使われている攻撃を受ける可能性のあるバージョンのオペレーティングシステムを使い続けるのは決して良いことではない。その上、Siri と Auto Unlock に関する修正はそれ自体が歓迎すべきものだ。
何人かの TidBITS 読者が数回に亘って私が macOS 13 Ventura は彼らの Mac にインストールするに足るだけ十分に成熟していると思うか聞いてきた。私の短い答えは "ええ、問題ないです" であった。何故ならば、私は Ventura を M1 MacBook Air 上で昨年のベータ以来走らせてきているが問題は経験していない。より長い答えは、"しかし、iMac は未だアップグレードしておらず、一旦そうしたら、その時はそれについて書こうと思っている" であった。
皆さんは私が Mac を常時同期した状態にしておかないのか不思議に思われるかも知れない。新しいバージョンの macOS がよく働いている時でさえ、私の Mac の内一台は、アップグレードを誰にでもお勧めするのを確信出来るまでは、従前のリリース上に保っておきたいと思っている。従前のリリースを手元に置くことで、二つの間で動きやインターフェースを比べることが出来るし、バグが修正されているか或いは新たに導入されているかを調べる事も出来る。(ここでは、Ventura の System Settings に対する嫌悪感については取り上げない;それはアップグレードを避ける理由ではないが、疑う余地のないほどひどいものである。)
と言うことで、もし我々がゴーサインを出すのを待っていたのであれば、都合のいい時にアップグレードする事をお勧めする。何時ものことだが、アップグレードの助けとして Joe Kissell の Take Control of Ventura をお勧めする。どうしてこれ程長い時間が必要だったのかを以下に記そうと思う。
この問題は少なくとも macOS 10.13 High Sierra の時から長い間に亘って私を苦しめてきたもので、macOS 12 Monterey 迄続いた。私はこれはソフトウェアの粗雑さによるものだろうと思っていた。と言うのも、私の回避策はアップデートする前に他には余り使い途の無い管理者アカウントに切り替えておくことであったからである。それはこの問題が私のアカウントに関係していることを示していた。しかしながら、私は破壊された設定ファイルの様な原因となるものを根絶出来なかった。
スマートディスプレイ、左から右: Meta Portal Go, Google Nest Hub Max, Meta Portal Plus, Amazon Echo Show 8. スマートスピーカー、左から右: Apple HomePod, HomePod mini, Google Home Mini, Amazon Echo Dot, HomePod mini, Google Nest Audio, HomePod.
Amazon や Google のスマートスピーカーは重要な点で HomePod と違っている。これらがかなりの程度自発的に動作して、インターネットに直接接続するのに対して、Apple 製のスピーカーはむしろ他の Apple ハードウェア、主として iPhone を拡張するものとして働く。時としてこの点が決定的な違いとなることが判明した。
また、Amazon や Google はスマートディスプレイを提供する点でも違っていて、これらのスマートスピーカーにはスクリーンが搭載されている。Apple はその種のものを何も提供せず、使ってみると Google Nest Hub Max も Amazon Echo Show 8 もスクリーンのない機器とは違った役に立つことが分かった。
私の必要は大して複雑ではなかった。気に入っているポッドキャストのリストは頭に入っているので、Amazon や Google のスピーカーに向かって例えば "Play MacBreak Weekly" のように呼び掛けるだけだ。この種のリクエストは十分信頼性を伴って働き、Amazon Music や Google Podcasts のサービスを通じて Leo Laporte が Apple メインで語る番組の最新のエピソードを聴ける。Amazon では TuneIn、iHeart、Apple Podcasts など他のサービスを再生のデフォルトとするように指定できる。Google ではその目的で Spotifyを割り当てることができる。
HomePod を使った体験もそれと似ていたが、音声コマンドでポッドキャストの提供源を言い添えなければならないことが多く、例えば "Play Planet Money from Apple Podcasts" のように言わなければ間違った場所を探しに行き、ポッドキャストのエピソードの代わりに音楽トラックを聴かされることもあった。
時間は十分にあったので、私はポッドキャストのバックカタログを調べてみようと思った。Amazon や Google のデバイスで "Play previous episode" コマンドを使えばそれができた。まあ、ある程度はだが。どのポッドキャストでも、最近の 10 個のエピソードをどれでも Amazon Music か Google Podcasts で聴けた。これなら、私のお気に入りの番組で前に戻って聴くのに理想的だ。
でも HomePod ではそううまく行かなかった。古いエピソードを頼むと、Siri は "Sorry, I couldn't go back" と答えた。もっと困ったことに、私がリクエストすると "Sorry, there is a problem with Apple Podcasts" というエラーが返ってくることもあった。(公正を期して言えば、どのスピーカーもさまざまの理由を述べ立てた意味の分からないエラーメッセージを返してくることが時々あった。)
HomePod では別の方法でポッドキャストにアクセスすることもできる。私の iPhone 上のポッドキャストアプリに組み込まれた Siri ショートカットを使う方法だ。Overcast では、"Overcast favorites" で私のお気に入りのポッドキャストエピソードのリストの一番上の項目に行く。同様に Pocket Casts では、数個の単語を並べるだけで好きなポッドキャストやポッドキャストフィルター、例えば Favorites や In Progress が開く。
しかしながら、私の視野に幕が下ろされた時点で私はその種の Siri ショートカットをほとんど覚えていなかったので、この方法にはあまり頼らなかった。それに HomePod は時々、コマンドを実行するためにはあらかじめ iPhone にログインしてくださいと言ってきた。でもそれではそもそも目的にそぐわない。
ニュース
私はニュースに夢中だ。私はニュースをオーディオフォーマットで、National Public Radio やその傘下の Minnesota Public Radio で聴くことが多い。そのコンテンツの多くはポッドキャストとしてパッケージされ、そちらを聴くことについては上で述べた通りだ。
けれども KNOW (MPR のニュースチャンネル) からライブでニュースフィードを聴きたくなることも時々ある。それを音声コマンドで呼び出す方法はいろいろ実験しなければ分からなかった。"Play Minnesota Public Radio" や "Play MPR News" や "Play KNOW" などのコマンドはそれぞれのスピーカーによって単語の並びを理解する方法が違っていた。例えば Google は "Play Minnesota Public Radio" を MPR のポップ音楽ステーション The Current と受け取ってしまう。
定期的に更新されるニュース要約も利用できる。私の HomePod で "Give me the news" と言えば、1時間ごとに更新される NPR News Now の録音が聴ける。公営ラジオが好きでない人のために、Apple は CNN や Fox News のような情報源からのニュース要約も提供している。音声コマンド "Switch to..." を使えばニュース源のデフォルトを設定できる。
Amazon や Google のユーザーはもっと高度なことができ、いろいろなニュース源 (例えば CNN、PBS、New York Times) から取り寄せたニュース要約を集められる。Alexa アプリでは My News Channel を、Google Home アプリでは News Sources を設定できる。いずれの場合も、例えば "Give me the news" で要約がすぐに始まる。幸いにも、私は自転車事故より前にこれらを設定していた。
私が回復期を通じて究極の目的としたニュース聴取方法は、スマートスピーカーのどれかで NPR One が使えるようにすることであった。以前はそんなことをする必要は全くなかったのだが。"NPR One" というのは (モバイルおよびウェブアプリの形で) カスタマイズできるサービスで、何十もの公営ラジオ番組やポッドキャストから取り寄せたものを一続きにし、ユーザーの好みに合わせた終わりのないストリームとして流すことができる。私のように NPR が大好きな人間には NPR One こそニュース漬けになるための方法だ。
このサービスがネイティブに使えるのは Amazon のスピーカーのみだと知って私は少しがっかりした。NPR Alexa スキルをインストールしてあれば使える。(私は家族の助けを借りてできた。) NPR One という名前で呼ばれている訳ではないけれども、"Alexa, play NPR" コマンドを使えば実質的に NPR One に相当するものが得られる。
NPR はスマートスピーカーに自らを順応させようと多くの努力を費やしたけれども、どうやら Apple や Google のスピーカーでは NPR One に懸念があるという理由で阻止されているようだ。Apple の世界では、NPR One は Apple TV と CarPlay で動作するが、HomePod では動作しない。Google の世界では、Android Wear (Google によるスマートウォッチ OS) と Android Auto で動作するが、私の Google Home Mini や Nest Audio スピーカーでは動作しない。
音声電話
Apple は、電話をかけたり受けたりすることに関してはちゃんと私の期待に応えてくれた。私はずっと以前から HomePod スピーカーフォンとして使って電話をかけたり受けたりしてきたので、それは意外でも何でもなかった。
Google のメッセージングサービス Meet も、Google スピーカー同士、あるいはコンピュータやモバイルデバイスへの通話を可能にする。
音楽
音楽のための面倒でない方法を探しながら、私はほんの1か月ほど前に自分が Siri 専用バージョンの Apple Music (2022 年 1 月 22 日の記事“Siri でも大丈夫なら Apple Music Voice Plan はお買い得”参照) にサインアップしていたことを思い出して、嬉しくなった。これこそまさに私のような状況に理想的で、わざわざ他の選択肢を考える必要はなかった。
私自身がレビュー記事にこう書いている:
そのリリース以来私はずっと月額 $4.99 の Apple Music Voice Plan を使ってきたが、驚くほどうまく Siri が私の音楽リクエストをさばいてくれることに気付いた。... Voice Plan を使い始めて、特定のタイプの人にとっては Siri 中心の音楽サービスでも十分立派な選択肢になり得ると思うようになった。意外にも、私は Siri で楽しく Apple Music を使ってきた。... ひょっとすると今後もずっとこれを使い続けるかもしれない。
それでも私は Apple 以外のスピーカーも時々試してみた。私は Pandora を購読していて、ずっと以前に (Amazon Music や YouTube Music の代わりに) Pandora を Amazon や Google のスピーカーで音楽再生のデフォルトに指定していた。自分の体が快方に向かうにつれて、これがいつでも使えることをありがたいと思うようになった。
Apple Music は Amazon や Google のスピーカーでも使えるが、それは月額 $10.99 を払ってサービスのフルバージョンを使っている人のみが対象であって、私のように月額 $4.99 の Voice Plan を持っているだけでは対象外だ。両方のプラットフォームで使える他の音楽サービスも Deezer、iHeart、Spotify などいくつかある。Amazon は 9 つ、Google は 6 つの選択肢を提供する。
HomePods が対応する音楽サービスの数はもっと少ないが、Pandora と Deezer は使えて、いずれも Apple Music の代わりに音楽用のデフォルトに指定することが可能だ。
でもここで Apple は私をがっかりさせた。HomePod で音声コマンドを使ってオーディオブックを Apple Books ライブラリに入れることができないのだ。私のように一時的に身体障害を負った者でなければ iPhone 上で AirPlay を使ったり、あるいはその他の方法を使うこともできただろうが、私にとっては実際的な方法でなかった。それと同じ制約が Apple Books を使って購入したオーディオブックにも、また Amazon Audible アカウントから同期したオーディオブックにもあった。
私は Cormac McCarthy のディストピア小説 The Road がどうしても読みたかったので、iPhone 上の Books アプリでブラインドタップで名前を入力しようと試みたが、うまく行かなかった。Siri に "Play The Road" と言ってみたところ Halo Infinite サウンドトラックから Gareth Coker のワクワクする音楽が流れて、それはそれでありがたかったが (1999 年の Steve Jobs キーノートであの Apple CEO が Halo ビデオゲームを世の中に明かした場面が思い出された)、私が望んだものとは違っていた。
それに比べて Amazon ではオーディオブックの再生が簡単にできた。Alexa に "Read Sailing to Byzantium" と命じるだけで、その Robert Silverberg のSF小説の再生がすぐに始まった。かなり時間が経ってから"Continue my book" と言うと、さっき止めたところから再生が始まった。Audible with Alexa コマンドは他にも数多くある。
Google オーディオブックの再生も動作は似ていたが、信頼性は低かった。Amazon と同様に、私の Google ブックライブラリはクラウド上にあって、直感的なコマンドでアクセスできる。例えば "Read Rise of the Dragons: Kings and Sorcerers" と言えばその魅力的なファンタジー小説が始まり、"Read my book" と言えばさきほど読んでいたところから再開できる。ただ、Google Assistant が私のライブラリの中で見つけられないタイトルがいくつかあって、私がそのような本を言っても "Sorry, I didn't understand" と言われることが時々あった。
Google 検索にアクセスできるかどうかは何よりも重大なことだ。なぜなら、暗闇の中に置き去りにされた中で自分の状態についての疑問が山のように溢れているというのに、いつもなら Mac や iPad を使って深く調査できるところでその能力が断ち切られているからだ。私は一度に何時間も続けて、家族をつかまえては代わりに Google で調べてくれと懇願していたかもしれない。
でも、この制約を少しだけ回避する方法はあった。Google の Nest Hub Max にはスクリーンが付いていてそこで YouTube コンテンツが再生されるので、調べたい話題についてのビデオを尋ねてから、そのオーディオを聴くということはできた。例えばデバイスに "Play videos about post-concussion syndrome" と尋ねることで、この疾患についての入門コースを少しだけ聴けた。それに、"Hey Google, next" コマンドを使えばビデオからビデオへと際限なく渡り歩くこともできた。
Amazon デバイス、Echo Show 8 と Meta Portal にもスクリーンが付いているが、こちらはほとんど役に立たなかった。Echo Show では、Alexa に話題についてのビデオを尋ねることはできるけれども、Bing 検索経由で DailyMotion ウェブサイトに飛ばされてしまい、そこには音声によるナビゲーションのオプションがない上に、コンテンツも最初のビデオ以外はすぐに全く関係ない話題へとさまよい出てしまいがちだ。一方 Meta Portals ではその種のことが全く使えなかった。
ただ、Google の Nest Hub Max でさえも結局のところ満足が得られなかった。強制的にビデオを次から次へと移らされ、私がそれをコントロールできる手段がほとんどないので、役に立つビデオにたどり着く前に役に立たないビデオを何十も我慢させられることも時々あった。Mac でならば、ビデオのサムネイルの並んだ画面をざっと見るだけで最も役に立つビデオに注意を向けられるのだが。どう贔屓目に見ても、こういうスピーカーはスマートとは言えない。
私には複雑に交差した質問の道筋を人間のような会話を通じて手引してくれるアシスタントが必要であった。そう、まさにあの Knowledge Navigator、当時の Apple CEO であった John Sculley が 1980 年代後半に構想し、コンセプトビデオを使って実演してみせた iPad 風のデバイスのようなものが必要だ。そのビデオの一つの中で、そのアシスタントは蝶ネクタイを付けた執事となってさまざまに複雑なやり方で教授の指示に従っていた。
これらのチャットボットは会話型の検索エンジンとは違っていて、自然言語を理解し生成すると同時にユーザーの文脈と意図とに基づいて目が回るほど複雑なリクエストに応えることができる。詩を書いたり、コードのデバッグをしたり、休暇旅行のプランを作成したり、店で買うものを提案したり、ある食材をもとにレシピを作ったり、ビデオやテキストの要約をしたり、言語を翻訳したり、といったことができる。(2022 年 12 月 9 日の記事“ChatGPT: AI の未来がここに”参照。)
Bing で "Write me a step-by-step medical plan to recover from post-concussion syndrome" (脳震盪後症候群から回復するための段階を追った医療プランを書いてください) というコマンドを尋ねると、詳しい返事が返されて、回復期の私がこれを読んだならとても嬉しかっただろうにと思える。その上、iOS アプリ版の Bing はデフォルトで、音声による問い合わせを受け音声で答を読み上げる。何か月間も暗闇の中にいた私には奇跡のように思えただろう。
General Motors は自動車のインフォテインメントシステムを回避するものとして現在広く使われている Apple CarPlay および Android Auto テクノロジーを段階的に廃止することを計画している。その代わりに使われるのが Google が未来の電気自動車のために開発した車載インフォテインメントシステムだ。
人類全体の未来について日々もったいぶって話す少々病的なテクノロジー創設者たちで満ちた今この瞬間の世の中で、Cook はほとんどそういう方面には口を出さない。機敏に動きつつものをぶち壊すなどということを彼はしない。穏やかなまま立つ彼の姿は、Elon Musk や Mark Zuckerberg その他カオスの代理人たちを叱責しているかのようにさえ見える。そういう者たちは Cook とともにしばしば議会に呼ばれて、この国でますます不安定さを増すテクノロジーの状況について証言するよう求められる。仲間内を大切にする Silicon Valley では時として、人々が先を争ってベンチャーキャピタル駆動の宇宙船に乗り込もうと争い、宇宙船に乗れるのは Patagonia ブランドの服を着こなしたエリートのみ、その他の私たちは排除されるとすら思えてしまうことがあるが、そんな場合でも Cook はそっとその他の私たちの味方をしてくれるのだ。
Tim Cook はこれまで 25 年間 Apple で働き、2011 年以来 CEO を務めている。「もし今でも Steve Jobs がいたなら...」という言葉がオンライン上で繰り返し語られるにもかかわらず、Cook が指揮する Apple は今や時価総額世界一の会社となり、Apple Watch と AirPods をこの世に届け、その焦点を製品と、サービスと、価値と、そしてその通り、利益を上げることに集中させている。Apple ほどの規模と地位を持つ会社ならばある程度の劇的なドラマは避けがたいけれども、Cook はそれでも心を穏やかにする作用を及ぼし続ける。そして何と、彼に電子メールを送れば、Corporate Executive Relations チームから返信が届くこともよくあるのだ。