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1654: OS 緊急セキュリティアップデート、macOS 13 Ventura へのアップグレード、一時的に視力を失ってスマートスピーカーを使う

深刻な 2 件のセキュリティ脆弱性が実際に悪用されている事態に対処するため、Apple は現行の iPhone、iPad、および Mac 用オペレーティングシステムにアップデートをリリースするとともに、前回のバージョンの iOS と iPadOS、それから過去の 2 つのバージョンの macOS にもアップデートをリリースした。お持ちのデバイスをすべて直ちにアップデートしよう。アップデートに関するもう一つの話題として、Adam Engst が自分のメインの Mac で起こっている扱いにくい問題を取り除くために macOS 13 Ventura の Level 2 クリーンインストールを実行した体験を語る。それから Julio Ojeda-Zapata が寄稿記事で、脳震盪後症候群で1か月間ほど目が不自由になり、そのため Apple、Amazon、Google のスマートスピーカーを使わざるを得なくなった体験を議論する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは BBEdit 14.6.5、Fantastical 3.7.9、Safari 16.4.1、それに macOS Monterey 12.6.5 と Big Sur 11.7.6 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

iOS 16.4.1、iPadOS 16.4.1、macOS 13.3.1 が深刻なセキュリティ脆弱性に対処、バグを修正

オペレーティングシステムのアップデートを大量にリリースしてたった 11 日しか経っていないというのに (2023 年 3 月 27 日の記事“Apple、iOS 16.4, iPadOS 16.4, macOS 13.3 Ventura, watchOS 9.4, tvOS 16.4, HomePod Software 16.4 をリリース”参照)、Apple はほんの少しの変更を施した素早いアップデート iOS 16.4.1iPadOS 16.4.1、およびmacOS Ventura 13.3.1 を出した。

いったいなぜこんなに素早く出したのか? セキュリティノートによれば今回のアップデートは 2 件の脆弱性をブロックするものであり、Apple はそれらが両方とも実際に悪用されていると言っている。脆弱性の 1 つはアプリがカーネル権限で任意のコードを実行できるもので、もう 1 つは悪意を持って作成されたウェブコンテンツが任意のコードを実行できるというものだ。

これは私の推測だが「Google の Threat Analysis Group の Clement Lecigne 氏と Amnesty International の Security Lab の Donncha O Cearbhaill 氏」という名前を Apple が明記しているという事実から、これらの脆弱性は各国政府が活動家やジャーナリストを標的とするために NSO Group の Pegasus あるいはその種のソフトウェアを使って利用したものなのではないかと思われる。(2021 年 11 月 24 日の記事“Apple の訴訟、スパイウェア企業 NSO Group を追う”参照。)

iOS 16.4.1 release notes

Apple はこの機会を利用してそれ以外のバグ修正も盛り込んだ。3 つのオペレーティングシステムのいずれも、押している手の絵文字🫸 🫷 でスキントーンの選択肢が正しく表示されるようになった。また、iOS 16.4.1 と iPadOS 16.4.1 では Siri が応答しないことがある問題に対処が施され、macOS 13.3.1 では Apple Watch での Auto Unlock 機能が使えないことがある問題が解消された。

活動家が対象となったという私の推測がもし正しければ、対象となるのは主として高い価値を持つ標的に限られているのかもしれない。それでも、やはりこれらのアップデートを直ちにインストールすることをお勧めしたい。現に使われている攻撃を受ける可能性のあるバージョンのオペレーティングシステムを使い続けるのは決して良いことではない。その上、Siri と Auto Unlock に関する修正はそれ自体が歓迎すべきものだ。

この記事の最初のバージョンで私が予言した通り、Apple はすぐ後に古いオペレーティングシステムに対する追加アップデートもリリースした。記事“Safari 16.4.1”(2023 年 4 月 7 日)、“iOS 15.7.5 と iPadOS 15.7.5 が深刻なセキュリティ脆弱性に対処”(2023 年 4 月 10 日)、“macOS Monterey 12.6.5 と Big Sur 11.7.6”(2023 年 4 月 10 日) をお読み頂きたい。お持ちのものはすべてアップデートしておこう。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

iOS 15.7.5 と iPadOS 15.7.5 が深刻なセキュリティ脆弱性に対処

ここに書き加えることはあまりないが、予想通りに Apple は iOS 15.7.5 と iPadOS 15.7.5 をリリースして、記事“iOS 16.4.1、iPadOS 16.4.1、macOS 13.3.1 が深刻なセキュリティ脆弱性に対処、バグを修正”(2023 年 4 月 7 日) で説明した 2 件のセキュリティ脆弱性に対処した。いずれの脆弱性も実際に悪用されているとのことなので、すぐに iOS 16 を走らせることのできない古いデバイスをお持ちの方にはアップデートをお勧めしたい。お持ちのデバイスで iOS 16 を使うことが可能であれば、その代わりにバージョン 16.4.1 にアップグレードするのがよい。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Ventura の Level 2 クリーンインストールで根の深い問題を解決

何人かの TidBITS 読者が数回に亘って私が macOS 13 Ventura は彼らの Mac にインストールするに足るだけ十分に成熟していると思うか聞いてきた。私の短い答えは "ええ、問題ないです" であった。何故ならば、私は Ventura を M1 MacBook Air 上で昨年のベータ以来走らせてきているが問題は経験していない。より長い答えは、"しかし、iMac は未だアップグレードしておらず、一旦そうしたら、その時はそれについて書こうと思っている" であった。

皆さんは私が Mac を常時同期した状態にしておかないのか不思議に思われるかも知れない。新しいバージョンの macOS がよく働いている時でさえ、私の Mac の内一台は、アップグレードを誰にでもお勧めするのを確信出来るまでは、従前のリリース上に保っておきたいと思っている。従前のリリースを手元に置くことで、二つの間で動きやインターフェースを比べることが出来るし、バグが修正されているか或いは新たに導入されているかを調べる事も出来る。(ここでは、Ventura の System Settings に対する嫌悪感については取り上げない;それはアップグレードを避ける理由ではないが、疑う余地のないほどひどいものである。)

と言うことで、もし我々がゴーサインを出すのを待っていたのであれば、都合のいい時にアップグレードする事をお勧めする。何時ものことだが、アップグレードの助けとして Joe Kissell の Take Control of Ventura をお勧めする。どうしてこれ程長い時間が必要だったのかを以下に記そうと思う。

カーネルパニックとブート認証失敗

私が 2020 27-inch iMac 上では macOS 12 Monterey を保ち続けたのは、Ventura の信頼性やアプリの非互換性に関わる懸念からでは無い。そうではなく、積年の二つの問題の解決につながるのではと思われた時間のかかるクリーンインストールを試したいと思ったからである。

最初でそして最も目につくのは一連のカーネルパニックで、2021 年の半ばに macOS 11 Big Sur で始まり Monterey でも存続した。私の iMac は時折日に二回ほどパニックした;通常は、パニックは一、二週間おきであった。パニックの頻発に見舞われる迄2から4ヶ月間は完璧に働いたことも数回はあった。(私がこれ等全てを知っているのは、BBEdit Notes ウィンドウに 47 のパニック報告を手動で保存していたからである。macOS は昔パニックログを生成し、Console でアクセス出来た。それ等のログは今でも生成させているのかもしれないが、私は見つけ出せていない。) このカーネルパニックは私が Mac の前に座っている間には決して起きなかったし、一旦再起動させれば macOS は私がパニックの前にいた状態に復元してくれた。極めて邪魔くさい問題ではあったが、それ程破壊的ではなかった。

二つ目の問題は、頻度はさほどでは無かったが同様に不可解であった。マイナーな macOS アップデートをインストールする度に、最初のブートでは何らかの理由からキーチェーンにアクセスが出来ず、私の何時も使うアプリ全部が起動される時に沢山の認証要求に見舞われて (20? 50?) 私はそのダイアログを撃退し再起動しなければならなかった。その二回目の再起動そしてそれに続くものでは、全ては問題なかった。(仲間のTidBITS 記者である Glenn Fleishman も再起動後のプライバシー設定に関する進行中の問題を経験していた。彼はそれを解決するのに核問題解決の様な難しい解を書き上げた。)

この問題は少なくとも macOS 10.13 High Sierra の時から長い間に亘って私を苦しめてきたもので、macOS 12 Monterey 迄続いた。私はこれはソフトウェアの粗雑さによるものだろうと思っていた。と言うのも、私の回避策はアップデートする前に他には余り使い途の無い管理者アカウントに切り替えておくことであったからである。それはこの問題が私のアカウントに関係していることを示していた。しかしながら、私は破壊された設定ファイルの様な原因となるものを根絶出来なかった。

クリーンインストールでこれ等の苛立ちは解消出来るのか?

クリーンインストールのレベル

私が "クリーンインストール" と言う時、この記述が暗示するよりも遙かに重大な意味を持つものを意味している。クリーンインストールとは通常 Mac のブートドライブを再フォーマットし、アプリ、設定、そしてデータをバックアップから復元する前に macOS のフレッシュコピーをインストールすることを指す。ここではそれを "Level 1 クリーンインストール" と呼ぶことにしよう。

それは最早助けにはならない。Big Sur 以来、Mac のドライブは Finder 上では一つのボリュームとして登場するが、二つの部分に分割されている。皆さんのデータ全ては一つのリード/ライトボリューム上に置かれ、そして全てのシステムファイルは別のリードオンリーの暗号学的に署名された Sealed System Volume と呼ばれるボリューム上に、ロックされる。セキュリティの理由から、Mac はそのボリュームから直接では無く、システムのスナップショットからブートする。全ての構成要素は署名されているので、どのファイルでもほんの少し変更されたり、基礎にあるストレージの失敗により壊れたりしたら - 一ビットが反転しただけでも - シールは無効となり、macOS はブートすることを拒絶することとなる。誰かがこのロックされたボリュームに計り知れなく深く侵入出来るマルウェアを開発したとしても、同じことが言えるであろう。

別の言い方をすれば、macOS のインストールで何かが間違っていれば、Mac は全くブートしないであろう。少なくとも、それが Apple が言っていることである - 私はその様な問題で Mac がブートするのを拒否するのを実際に見たことは無い。

私の iMac がブートを拒否したことはないし、Big Sur から Monterey へのアップグレードも、そしてそれぞれのメジャーバージョン内の数多くのマイナーアップデートも不平を言わずにインストールした。NVRAM をリセットする、ハードウェア診断を走らせる、USB や Thunderbolt 機器を外す等々の考えられること何をやっても、違いは無いか、或いは解に向けた如何なるヒントも得られなかった。私の次の手は Level 2 クリーンインストールであった。

Mac の世界における私の役割からして、私は膨大な量のソフトウェアをインストールする。Monterey の Applications フォルダに、私は 236 項目を有していた。その中には 2017 年初期に遡るものもあったが、それは Level 2 クリーンインストールを最後にやった時である。私は全てのアプリの名前すら認識出来ない! 問題はこれ等のアプリの幾つかは年月を重ねる間にカーネル拡張や他のシステムレベルの要素をインストールしたことであり、一方で Apple の macOS インストーラーは問題の原因となり得る複雑すぎる古い情報を不能にしようと試みるが、それは必ずしも効果的とは言えない。

私がやった Level 2 クリーンインストールのやり方を以下に示す:

滅多に無いことだが、使っているアプリが最早ダウンロードでは入手出来ない場合、私はそれをバックアップから復元するが、時代遅れのアプリは置き換えるよう出来るだけの努力はする。

多くの場合、アプリはそのライセンスや設定に私のアカウントからアクセスするので、私が前回使った所からそれ等を使い始められる。アプリを一つ一つ新たにインストールするのはつまらない仕事で、一、二週間の間は私の生産性にも影響を及ぼすが、新たな出発の感覚は心地良い。

Level 3 クリーンインストールというのはあるのか? ええ、でもそれはとても大変そうであり、私は一度もやったことはない。Level 3 クリーンインストールのためには、ブートドライブを消去し、macOS をインストール、そして新しいアカウントを設定する。それから自分のデータだけ - 設定は省く - を新しいホームフォルダに手動でコピーする。大変な所はここからである。登録コードを入力しそして個々のアプリの設定を最初からやり直さなければならない。アプリによっては、必須のデータを含んでいるサブフォルダを見つけるためにホームフォルダの Library フォルダをかき分けて調べなければならないこともあるであろう - Application Support や自分の Mail フォルダにある項目とかである。Level 2 クリーンインストールが役に立たたず、そして自分のアカウントでだけ起こる問題と戦い続けなければならないと言うのでない限り、Level 3 クリーンインストールを試そうと思わない方が良い。

結果は?

はっきり分かる迄には何ヶ月もかかるであろうが、Level 2 クリーンインストールはどうもカーネルパニックを止めたようだ。私の iMac は 3 March 2023 にアップグレードして以来一度もパニックに陥っていない。その前の月には7回のパニックがあった。

macOS 13.3 and 13.3.1 のリリースもまた、Level 2 クリーンインストールがマイナーアップデートをインストールした後最初のブートでの認証問題も解決したことを裏付けた。それ等のアップデートは問題なくインストールしたが、macOS 13.3 アップデートの後、Time Machine ドライブを解錠して Setapp にログインしなければならない事案はあった。macOS 13.3.1 アップデートの後に、余分な認証要請は現れなかった。

Ventura 万歳! しかしもっと重要なのは、厄介な問題を解決するためには Level 2 クリーンインストールが必要となることもあり、そして時には Level 3 クリーンインストールを必要とするものもあるかも知れないと言うことである。もし皆さんがその様な厄介な小悪魔と闘っているのであれば、より深いクリーニングをお試しあれ。

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Julio Ojeda-Zapata  訳: Mark Nagata   

一時的に視力を失ってスマートスピーカーを使う

何十年も前から私たちの生活の中にはさまざまの大きさのコンピュータ画面が常にあった。でも、もしも突然それらが全く使えなくなったならどうなるだろうか。あなたなら、どうやってそれまでの接続されたライフスタイルを見掛けだけでも維持できるだろうか。あなたは音だけの世界でやって行けるのか?

私は 2022 年 8 月にその難問に直面した。St. Paul のダウンタウンで自転車のコントロールを失い、自転車から投げ出されて、ヘルメットを着けた頭をアスファルトの路面に強く打ちつけ、嫌な音がした。酷い脳震盪だった。その後間もなく、世界が暗くなり始めた。

私は重度の光恐怖症になっていた。ある種の光過敏症で、周囲の光がまるで私の眼窩に突き刺さるナイフのように感じられた。どうやらこれはよくある脳震盪の副作用のようで、この数か月間に私が苦しんだ症状のうちの一つであった。状態が悪くなるにつれて、私は痛みを避けるために常時アイマスクを着けたままでいるようになった。つまり実質的に視覚を失ったのと同じなのだと悟った。

コンピューティング機器が使えなくなって、それまで毎日していたように情報に触れたり、やり取りしたり、娯楽を享受したりできなくなると知って、私はうろたえた。VoiceOver の使い方を覚えておけばよかったと後悔した。もう何年も前から、目が不自由な人たちは VoiceOver を使って Mac や iOS デバイスをコントロールしてきたのだ。でも、傷付いた状態のまま複雑なことを学習する気にはなれなかったので、まずは音声で制御できるアシスタントを内蔵したスマートスピーカーを使ってみようと思った。

その時点で私が持っていたその種の音声制御機器は、Siri を搭載した一対の HomePod mini スピーカー、Google Assistant で使う何個かの Google Home および Nest スピーカー、それから Amazon の Alexa で使ういろいろの Amazon Echo および Meta Portal デバイスなどだった。その後私は HomePod mini スピーカーを下取りに出して最近 Apple がリリースしたフルサイズの第二世代 HomePod の一対に替えた。

Julio's collection of smart speakers
スマートディスプレイ、左から右: Meta Portal Go, Google Nest Hub Max, Meta Portal Plus, Amazon Echo Show 8. スマートスピーカー、左から右: Apple HomePod, HomePod mini, Google Home Mini, Amazon Echo Dot, HomePod mini, Google Nest Audio, HomePod.

それまで、私がこれらのスピーカーを使っていたのはごく単純な用途に限られていた。つまり、タイマーをセットしたり、サーモスタットを調整したり、部屋の照明を点けたり消したり、AirPlay 経由で音楽を聴いたりといったことだ。

これらが皆スクリーンを持たないコンピュータだということを念頭に置きつつ、私は使えなくなったスクリーン付き機器の代わりとしてこれらをどの程度使えるのだろうかと考えを巡らせた。果たしてこれらは HAL 9000 から精神の病を抜いたものに、あるいは映画 Her の中の Samantha に、はたまた Marvel の Cinematic Universe に登場する J.A.R.V.I.S. になって、私の役に立ってくれるだろうか?

ネタバレを言ってしまうと、スマートスピーカーはまだまだ全然賢くない。

記事の残りをいくつかのカテゴリーに分けて綴ることにしよう。ポッドキャスト、ニュース、音声電話、音楽、読書、そしてウェブ検索だ。コンピュータでしていたそれぞれのことをスマートスピーカーを使って再現しようと試みたのだが、成功の度合いはまちまちだった。

中でも特に重要だったのがウェブ検索だ。自分の病気について詳しい情報を知りたいというのが切実な望みだったが、家族には私のために検索できるような時間も根気もなかった。音声アシスタントはその代用手段としてろくな仕事ができなかったのだが、そのことについてはあとで述べよう。

これらすべてのことは、OpenAI の ChatGPT のような AI チャットボットが広く知られるようになり人間のようなやり取りを通じて (常に正確とは言えないまでも) 徹底的に情報を掘り出せるようになるよりも数か月前に起こった。スマートスピーカーで何が得られるかは容易に予想できる。

スマートスピーカーの性能を試そうという段になって、私はまず HomePod が競合製品と比べてどうなのかを知りたいと思った。その結果、HomePod が優れている分野もあった一方で、別のカテゴリーでは他のものより見劣りがした。

Amazon や Google のスマートスピーカーは重要な点で HomePod と違っている。これらがかなりの程度自発的に動作して、インターネットに直接接続するのに対して、Apple 製のスピーカーはむしろ他の Apple ハードウェア、主として iPhone を拡張するものとして働く。時としてこの点が決定的な違いとなることが判明した。

また、Amazon や Google はスマートディスプレイを提供する点でも違っていて、これらのスマートスピーカーにはスクリーンが搭載されている。Apple はその種のものを何も提供せず、使ってみると Google Nest Hub Max も Amazon Echo Show 8 もスクリーンのない機器とは違った役に立つことが分かった。

以下に書くことは、音楽以外の目的にスマートスピーカーを使うことについて書いた私の以前の記事とよく似たところもあるが (2018 年 3 月 15 日の記事“音楽の向こう側: HomePod を Amazon Echo や Google Home と比較”参照)、詳細情報を更新しているし、私の医学的状態により特化したものとなっている。

私は愕然としている。5 年経っているのに、スマートスピーカーはあまりにも少ししか変わっていなかった。

ポッドキャスト

私の iPhone 上にあるポッドキャスト情報収集アプリ、例えば OvercastPocket Casts などは、何が進行しているかが見えない私にとって使うのが困難になった。幸いにも、スマートスピーカーが思ったよりはるかに適切な代用品となってくれた。

私の必要は大して複雑ではなかった。気に入っているポッドキャストのリストは頭に入っているので、Amazon や Google のスピーカーに向かって例えば "Play MacBreak Weekly" のように呼び掛けるだけだ。この種のリクエストは十分信頼性を伴って働き、Amazon MusicGoogle Podcasts のサービスを通じて Leo Laporte が Apple メインで語る番組の最新のエピソードを聴ける。Amazon では TuneIniHeartApple Podcasts など他のサービスを再生のデフォルトとするように指定できる。Google ではその目的で Spotifyを割り当てることができる。

HomePod を使った体験もそれと似ていたが、音声コマンドでポッドキャストの提供源を言い添えなければならないことが多く、例えば "Play Planet Money from Apple Podcasts" のように言わなければ間違った場所を探しに行き、ポッドキャストのエピソードの代わりに音楽トラックを聴かされることもあった。

時間は十分にあったので、私はポッドキャストのバックカタログを調べてみようと思った。Amazon や Google のデバイスで "Play previous episode" コマンドを使えばそれができた。まあ、ある程度はだが。どのポッドキャストでも、最近の 10 個のエピソードをどれでも Amazon Music か Google Podcasts で聴けた。これなら、私のお気に入りの番組で前に戻って聴くのに理想的だ。

でも HomePod ではそううまく行かなかった。古いエピソードを頼むと、Siri は "Sorry, I couldn't go back" と答えた。もっと困ったことに、私がリクエストすると "Sorry, there is a problem with Apple Podcasts" というエラーが返ってくることもあった。(公正を期して言えば、どのスピーカーもさまざまの理由を述べ立てた意味の分からないエラーメッセージを返してくることが時々あった。)

HomePod では別の方法でポッドキャストにアクセスすることもできる。私の iPhone 上のポッドキャストアプリに組み込まれた Siri ショートカットを使う方法だ。Overcast では、"Overcast favorites" で私のお気に入りのポッドキャストエピソードのリストの一番上の項目に行く。同様に Pocket Casts では、数個の単語を並べるだけで好きなポッドキャストやポッドキャストフィルター、例えば Favorites や In Progress が開く。

しかしながら、私の視野に幕が下ろされた時点で私はその種の Siri ショートカットをほとんど覚えていなかったので、この方法にはあまり頼らなかった。それに HomePod は時々、コマンドを実行するためにはあらかじめ iPhone にログインしてくださいと言ってきた。でもそれではそもそも目的にそぐわない。

ニュース

私はニュースに夢中だ。私はニュースをオーディオフォーマットで、National Public Radio やその傘下の Minnesota Public Radio で聴くことが多い。そのコンテンツの多くはポッドキャストとしてパッケージされ、そちらを聴くことについては上で述べた通りだ。

けれども KNOW (MPR のニュースチャンネル) からライブでニュースフィードを聴きたくなることも時々ある。それを音声コマンドで呼び出す方法はいろいろ実験しなければ分からなかった。"Play Minnesota Public Radio" や "Play MPR News" や "Play KNOW" などのコマンドはそれぞれのスピーカーによって単語の並びを理解する方法が違っていた。例えば Google は "Play Minnesota Public Radio" を MPR のポップ音楽ステーション The Current と受け取ってしまう。

定期的に更新されるニュース要約も利用できる。私の HomePod で "Give me the news" と言えば、1時間ごとに更新される NPR News Now の録音が聴ける。公営ラジオが好きでない人のために、Apple は CNN や Fox News のような情報源からのニュース要約も提供している。音声コマンド "Switch to..." を使えばニュース源のデフォルトを設定できる

Amazon や Google のユーザーはもっと高度なことができ、いろいろなニュース源 (例えば CNN、PBS、New York Times) から取り寄せたニュース要約を集められる。Alexa アプリでは My News Channel を、Google Home アプリでは News Sources を設定できる。いずれの場合も、例えば "Give me the news" で要約がすぐに始まる。幸いにも、私は自転車事故より前にこれらを設定していた。

悲しいことに、Apple の世界でこれに似たものは何もない。少なくとも、私が記事“音楽の向こう側: HomePod を Amazon Echo や Google Home と比較”で説明した厄介な“ステーション”を使わずにはできない。

私が回復期を通じて究極の目的としたニュース聴取方法は、スマートスピーカーのどれかで NPR One が使えるようにすることであった。以前はそんなことをする必要は全くなかったのだが。"NPR One" というのは (モバイルおよびウェブアプリの形で) カスタマイズできるサービスで、何十もの公営ラジオ番組やポッドキャストから取り寄せたものを一続きにし、ユーザーの好みに合わせた終わりのないストリームとして流すことができる。私のように NPR が大好きな人間には NPR One こそニュース漬けになるための方法だ。

このサービスがネイティブに使えるのは Amazon のスピーカーのみだと知って私は少しがっかりした。NPR Alexa スキルをインストールしてあれば使える。(私は家族の助けを借りてできた。) NPR One という名前で呼ばれている訳ではないけれども、"Alexa, play NPR" コマンドを使えば実質的に NPR One に相当するものが得られる。

NPR はスマートスピーカーに自らを順応させようと多くの努力を費やしたけれども、どうやら Apple や Google のスピーカーでは NPR One に懸念があるという理由で阻止されているようだ。Apple の世界では、NPR One は Apple TV と CarPlay で動作するが、HomePod では動作しない。Google の世界では、Android Wear (Google によるスマートウォッチ OS) と Android Auto で動作するが、私の Google Home Mini や Nest Audio スピーカーでは動作しない。

音声電話

Apple は、電話をかけたり受けたりすることに関してはちゃんと私の期待に応えてくれた。私はずっと以前から HomePod スピーカーフォンとして使って電話をかけたり受けたりしてきたので、それは意外でも何でもなかった。

この点で、HomePod は最大の安らぎの源となった。孤立によって心乱れた私にとって、友人たちや家族たちの声が何より必要だった。Contacts に保存してある皆の電話番号は、手早い "Call" コマンドだけで呼び出せる。

もちろん、HomePod が独力でその種の通話を開始することはできない。近くにある iPhone がそれを手助けするのであって、FaceTime 通話には iPad または iPhone の存在が必須となる。ただ、このセットアップはあまりにもトラブル知らずの確立したやり方で、私は他の方法を試してみたいとも思わなかった。

Amazon や Google でもそれぞれのスピーカーを通じた音声電話ができるが、それほどエレガントな実装でもないし、制約もある。

Amazon ユーザーは Echo ハードウェアを使って電話をかけるモバイルまたは固定電話の番号を最大 10 個まで定義できる。電話をかける際にその番号が Alexa-to-Phone リストに追加され、Alexa アプリの中でリストを一覧したり編集したりできる。使えない番号もある。例えば米国、英国、カナダ、メキシコ以外の国の番号は使えない。

また、Amazon は一つの Echo スピーカーから別の Echo スピーカーに (あるいは Alex アプリの走る電話機に) 直接通話できるようにしている。最近になって Amazon は AT&T、T-Mobile、および Verizon のユーザーがセルラー番号を Alexa アカウントに割り当てて (それに関係するスキルが必要だが) ハンズフリーの通話をかけたり受けたりできるようにした。このやり方は大まかに言って HomePod の音声電話に似ている。

Google ユーザーにはスピーカーを使って電話をかける方法がいくつかある。その一つはキャリア通話と呼ばれ、Google Voice または Google Fi のアカウントを利用する。もう一つの方法は Google-supported 通話と呼ばれ、アカウントは必要ない。この通話に対応しているのはカナダと米国 (米国の海外領土は除く) だけだ。

Google のメッセージングサービス Meet も、Google スピーカー同士、あるいはコンピュータやモバイルデバイスへの通話を可能にする。

音楽

音楽のための面倒でない方法を探しながら、私はほんの1か月ほど前に自分が Siri 専用バージョンの Apple Music (2022 年 1 月 22 日の記事“Siri でも大丈夫なら Apple Music Voice Plan はお買い得”参照) にサインアップしていたことを思い出して、嬉しくなった。これこそまさに私のような状況に理想的で、わざわざ他の選択肢を考える必要はなかった。

私自身がレビュー記事にこう書いている:

そのリリース以来私はずっと月額 $4.99 の Apple Music Voice Plan を使ってきたが、驚くほどうまく Siri が私の音楽リクエストをさばいてくれることに気付いた。... Voice Plan を使い始めて、特定のタイプの人にとっては Siri 中心の音楽サービスでも十分立派な選択肢になり得ると思うようになった。意外にも、私は Siri で楽しく Apple Music を使ってきた。... ひょっとすると今後もずっとこれを使い続けるかもしれない。

今になって振り返ると、自分が書いた「特定のタイプの人」というところに笑えてくる。光恐怖症で目が見えなくなって、私自身がそういう人になったのだ。たとえ、これを書いた時の私にはそんな医学的意味を含めるつもりが何もなかったとしても。

それでも私は Apple 以外のスピーカーも時々試してみた。私は Pandora を購読していて、ずっと以前に (Amazon Music や YouTube Music の代わりに) Pandora を Amazon や Google のスピーカーで音楽再生のデフォルトに指定していた。自分の体が快方に向かうにつれて、これがいつでも使えることをありがたいと思うようになった。

Apple Music は Amazon や Google のスピーカーでも使えるが、それは月額 $10.99 を払ってサービスのフルバージョンを使っている人のみが対象であって、私のように月額 $4.99 の Voice Plan を持っているだけでは対象外だ。両方のプラットフォームで使える他の音楽サービスも DeezeriHeartSpotify などいくつかある。Amazon は 9 つ、Google は 6 つの選択肢を提供する。

HomePods が対応する音楽サービスの数はもっと少ないが、Pandora と Deezer は使えて、いずれも Apple Music の代わりに音楽用のデフォルトに指定することが可能だ。

読書

光恐怖症になるまでは、私がオーディオブックを聴くことはほとんどなかった。印刷した本や電子ブックの方が好きだったからだ。けれどもオーディオブックを持ってはいたので、それが唯一の実用的方法となったからにはぜひ試してみたいと思った。

でもここで Apple は私をがっかりさせた。HomePod で音声コマンドを使ってオーディオブックを Apple Books ライブラリに入れることができないのだ。私のように一時的に身体障害を負った者でなければ iPhone 上で AirPlay を使ったり、あるいはその他の方法を使うこともできただろうが、私にとっては実際的な方法でなかった。それと同じ制約が Apple Books を使って購入したオーディオブックにも、また Amazon Audible アカウントから同期したオーディオブックにもあった。

私は Cormac McCarthy のディストピア小説 The Road がどうしても読みたかったので、iPhone 上の Books アプリでブラインドタップで名前を入力しようと試みたが、うまく行かなかった。Siri に "Play The Road" と言ってみたところ Halo Infinite サウンドトラックから Gareth Coker のワクワクする音楽が流れて、それはそれでありがたかったが (1999 年の Steve Jobs キーノートであの Apple CEO が Halo ビデオゲームを世の中に明かした場面が思い出された)、私が望んだものとは違っていた。

それに比べて Amazon ではオーディオブックの再生が簡単にできた。Alexa に "Read Sailing to Byzantium" と命じるだけで、その Robert Silverberg のSF小説の再生がすぐに始まった。かなり時間が経ってから"Continue my book" と言うと、さっき止めたところから再生が始まった。Audible with Alexa コマンドは他にも数多くある。

Google オーディオブックの再生も動作は似ていたが、信頼性は低かった。Amazon と同様に、私の Google ブックライブラリはクラウド上にあって、直感的なコマンドでアクセスできる。例えば "Read Rise of the Dragons: Kings and Sorcerers" と言えばその魅力的なファンタジー小説が始まり、"Read my book" と言えばさきほど読んでいたところから再開できる。ただ、Google Assistant が私のライブラリの中で見つけられないタイトルがいくつかあって、私がそのような本を言っても "Sorry, I didn't understand" と言われることが時々あった。

それまでは電子ブックやオーディオブックの入手源としていつも使っていた Libby アプリが使えなくなったのはとても残念だった。Libby アプリは公共図書館から本を借り出すためのポータルとして機能する。(2020 年 9 月 14 日の記事“図書館まで行かずとも、自宅で電子ブックその他を借りよう”参照。) 視力を失った状態でこれを扱える方法が (VoiceOver 以外に) 見つからなかった。例えば、Libby には作り付けの Siri ショートカットはないようだ。これが使えるようになったなら桁違いに多くのオーディオブックの選択肢ができたはずなので、とても残念だ。

ウェブ検索

Google 検索にアクセスできるかどうかは何よりも重大なことだ。なぜなら、暗闇の中に置き去りにされた中で自分の状態についての疑問が山のように溢れているというのに、いつもなら Mac や iPad を使って深く調査できるところでその能力が断ち切られているからだ。私は一度に何時間も続けて、家族をつかまえては代わりに Google で調べてくれと懇願していたかもしれない。

そこで私はスピーカーに向かって脳震盪とその副作用についての質問を次から次へと投げ掛けた。私の場合、副作用として頭がぼんやりしたり、バランスが取れなかったり、体全体が痙攣してどうしようもなくなったりということがあった。これらはすべて脳震盪後症候群の兆候で、ほとんどの人が数週間以内に回復するところをそれ以上の期間を回復に要した私が体験した症状であった。

そしてすぐに明らかになったのは、スピーカーではほとんど役に立たないということだった。検索の結果を声で読み上げてもらうことが必要で、そうなることは多かったけれども、Wikipedia とか医療情報ウェブサイトとかで情報のごく一部分が読み上げられるのみに過ぎず、希望は満たされなかった。フォローアップの情報を得る手段は何もなくて、もっと情報を求めても、ただ困惑した答が返ってくるだけだった。

HomePods は頻繁に、結果を読み上げてくれず、その代わりに iPhone で同じ検索をしなさい、そうすればウェブで結果を読めるからと言ってきた。私にとっては不可能なことで、どうしようもなくフラストレーションが溜まった。

一番役に立ったのは Google のスピーカーで、二段階の返答を提供してくれた。まず私の質問に答えてから、その後で多くの場合 Google が他のユーザーから寄せられた質問をもとに構成した関連質問を提示してくれる。それを聞きたいかと問われ、私がイエスと答えると、その質問への答も示される。

例えば私が "What is photophobia?" と尋ねると、Google Assistant はまずそれに答えてから、親切に他のユーザーが尋ねた質問 "Is there a cure for photophobia?" も提供してくれる。

それは良かったけれども、ここでもやはり、ほんのちょっぴりの情報だけ与えられて、より深く切り込んだり情報源を知ったりそこでさらに調べたりということは全然できなかった。

でも、この制約を少しだけ回避する方法はあった。Google の Nest Hub Max にはスクリーンが付いていてそこで YouTube コンテンツが再生されるので、調べたい話題についてのビデオを尋ねてから、そのオーディオを聴くということはできた。例えばデバイスに "Play videos about post-concussion syndrome" と尋ねることで、この疾患についての入門コースを少しだけ聴けた。それに、"Hey Google, next" コマンドを使えばビデオからビデオへと際限なく渡り歩くこともできた。

Amazon デバイス、Echo Show 8 と Meta Portal にもスクリーンが付いているが、こちらはほとんど役に立たなかった。Echo Show では、Alexa に話題についてのビデオを尋ねることはできるけれども、Bing 検索経由で DailyMotion ウェブサイトに飛ばされてしまい、そこには音声によるナビゲーションのオプションがない上に、コンテンツも最初のビデオ以外はすぐに全く関係ない話題へとさまよい出てしまいがちだ。一方 Meta Portals ではその種のことが全く使えなかった。

ただ、Google の Nest Hub Max でさえも結局のところ満足が得られなかった。強制的にビデオを次から次へと移らされ、私がそれをコントロールできる手段がほとんどないので、役に立つビデオにたどり着く前に役に立たないビデオを何十も我慢させられることも時々あった。Mac でならば、ビデオのサムネイルの並んだ画面をざっと見るだけで最も役に立つビデオに注意を向けられるのだが。どう贔屓目に見ても、こういうスピーカーはスマートとは言えない。

私には複雑に交差した質問の道筋を人間のような会話を通じて手引してくれるアシスタントが必要であった。そう、まさにあの Knowledge Navigator、当時の Apple CEO であった John Sculley が 1980 年代後半に構想し、コンセプトビデオを使って実演してみせた iPad 風のデバイスのようなものが必要だ。そのビデオの一つの中で、そのアシスタントは蝶ネクタイを付けた執事となってさまざまに複雑なやり方で教授の指示に従っていた。

SiriGPT?

残念ながら、私の自転車事故とその後の回復期間は、現在 OpenAI の ChatGPT、Microsoft の Bing (これはあるバージョンの ChatGPT を使っている)、Google の Bard といったチャットボットのお陰でテクノロジーの世界を席巻している人工知能の流行より数か月も先立つものであった。

これらのチャットボットは会話型の検索エンジンとは違っていて、自然言語を理解し生成すると同時にユーザーの文脈と意図とに基づいて目が回るほど複雑なリクエストに応えることができる。詩を書いたり、コードのデバッグをしたり、休暇旅行のプランを作成したり、店で買うものを提案したり、ある食材をもとにレシピを作ったり、ビデオやテキストの要約をしたり、言語を翻訳したり、といったことができる。(2022 年 12 月 9 日の記事“ChatGPT: AI の未来がここに”参照。)

Bing で "Write me a step-by-step medical plan to recover from post-concussion syndrome" (脳震盪後症候群から回復するための段階を追った医療プランを書いてください) というコマンドを尋ねると、詳しい返事が返されて、回復期の私がこれを読んだならとても嬉しかっただろうにと思える。その上、iOS アプリ版の Bing はデフォルトで、音声による問い合わせを受け音声で答を読み上げる。何か月間も暗闇の中にいた私には奇跡のように思えただろう。

ここで私が何を言いたいかはもうお分かりだろう。スマートスピーカーに組み込まれたアシスタントは、適切な状況の下で ChatGPT のように動作すべきだ。そうなっていたならば、スピーカーでの私の体験は桁違いに有用なものとなっていたことだろう。自由な会話ができるようになって、一つの問いが別の問いへ、それからまた別の問いへと、まさに現在 ChatGPT がしてくれているような形で話が進むだろう。

あの暗い時期にスピーカーが提供してくれた満足のいかない断片的な医療情報の代わりに、音声プロンプトの内容を理解できさえすればウェブサイト上のコンテンツのすべてを抽出することができただろう。その結果私は脳震盪の専門家にさえなれたかもしれない。(もちろんそれは ChatGPT の供給するデータが正確だという前提の下での話であって、よく知られているように実際には正確でない。) 結果として何も知らないことへの不安を払拭することができただろう。今すべきことを知っていれば、もっと早く回復できたかもしれない。

例えば、当時の私は光恐怖症による激痛は光が私に物理的ダメージを与えていることを意味しており、それを緩和する唯一の方法は毎日 24 時間アイマスクで目を覆っておくことだという誤った前提で物事を考えていた。心的外傷を与える脳損傷の専門家が後日私に説明して、この激痛はダメージと同等のものではなく、回復のための最善の方法は光に晒される時間を意図的に少しずつ増やして、光が気にならなくなるまで続けることだ、と教えてくれた。それを試したところ、その後の回復は早かった。もっと早くその情報に触れてさえいればと思う!

私が説明してきたカテゴリーのすべてにおいて、AI チャットボットは違いを生んだに違いないと思う。ただしそれは、AI チャットボットが Siri と、またより広く iOS や macOS のエコシステムと、適切に統合されていたならばの話だ。実現されれば、ポッドキャストのバックカタログの奥深くまで調べたり、どんな言葉でリクエストしても間違いなく KNOW からライブのニュースフィードを受けられたり、NPR One をセットアップしたり、Apple Books で購入したオーディオブックを再生したりも問題なくできるようになることだろう。

Dan Moren が Macworld の記事で、その種の改善について見事な説明を書いている。また、Ed Hardy も Cult of Mac に "Siri desperately needs some ChatGPT-like smarts" (Siri には何か ChatGPT 風のスマート機能が絶対に必要だ) と題した記事を書いている。

進取の気性に富んだ iOS ユーザーたちがある程度までこれを実現しつつあるけれども、Apple がまず立ち上がって公式の実装を出すべきではなかろうか。

今の私はスピーカーを元通りの目的に、つまりタイマーをセットしたり、天気予報を問い合わせたり、iPhone から AirPlay 経由でポッドキャストを再生したり、Nest サーモスタットで温度調整をしたり、といった単純なことに使っている。スマートスピーカーに私の生活の中でもっと大きな役割を果たさせようといろいろ試してみたけれども、スマートスピーカーにもう一段上の人工知能が載るまでの間は、そんなことを試してもほとんど意味はないように思える。そう、今はまだ大した知能を持っていないということだ。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

BBEdit 14.6.5 Agen Schmitz

BBEdit 14.6.5

Bare Bones が BBEdit 14.6.5 を出した。メンテナンス・アップデートだ。今回のリリースでは View メニューの最後に Enter Full Screen コマンドが重複して出ていたバグを修正し、補完を生成する際に状況によって rust-analyzer の挙動がおかしくなった問題を回避し、XML 書類が HTML5 として扱われることになってしまった不具合に対処し、Spaces の挙動の衝突を回避するためのメカニズムを追加し、コードレス言語モジュールでパターンのエラーが誤って報告された問題を解消し、遠隔サーバボリューム上のファイルを Finder のタグとして表示されなくしていた macOS ファイルシステム API の挙動に回避策を施した。(新規購入 $49.99、無料アップデート、23.6 MB、 リリースノート、macOS 10.15.4+)

BBEdit 14.6.5 の使用体験を話し合おう

Fantastical 3.7.9 Agen Schmitz

Fantastical 3.7.9

Flexibits が Fantastical 3.7.9 をリリースして、Fantastical Openings でミーティングを予約する際に電話番号を要請または要求できるようにした。このカレンダーアプリは今回から、現在のイベントの残り時間をメニューバー上に表示できるようになり、PracticeBetter ミーティングの探知への対応を追加し、Settings でタイムゾーン名の表示を改良し、Day および Week 表示で真夜中に終了するイベントが少し真夜中を過ぎたところまで広がって見えた問題を修正し、繰り返すイベントのシリーズを分割すると余計なイベントが作られてしまった問題を解消し、また Google Account を切り替えることに関係するクラッシュを解消した。(Flexibits からも Mac App Store からも購読年額 $56.99、無料アップデート、68.4 MB、 リリースノート、macOS 11+)

Fantastical 3.7.9 の使用体験を話し合おう

Safari 16.4.1 Adam Engst

Safari 16.4.1

Apple が macOS 12 Monterey と macOS 11 Big Sur 用に Safari 16.4.1 をリリースして、深刻な WebKit 脆弱性 1 件をパッチした。この脆弱性は他のアップデートでパッチされたのと同じものだ。(2023 年 4 月 7 日の記事“iOS 16.4.1、iPadOS 16.4.1、macOS 13.3.1 が深刻なセキュリティ脆弱性に対処、バグを修正”参照。) 直ちにインストールすることをお勧めする。Safari 16.4.1 は Software Update からのみダウンロードできる。(無料、リリースノート、macOS 11+)

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macOS Monterey 12.6.5 and Big Sur 11.7.6 Adam Engst

macOS Monterey 12.6.5 と Big Sur 11.7.6

Apple が macOS Monterey 12.6.5macOS Big Sur 11.7.6 をリリースして、任意のコードをカーネル権限で実行される可能性のある 1 件のセキュリティ脆弱性をパッチした。(この件についてのさらなる議論は 2023 年 4 月 7 日の記事“iOS 16.4.1、iPadOS 16.4.1、macOS 13.3.1 が深刻なセキュリティ脆弱性に対処、バグを修正”をご覧頂きたい。) この脆弱性は実際に悪用されているとのことなので、直ちにアップデートすることをお勧めしたい。何か問題に気付かれたら、ぜひコメントで教えて頂きたい。(無料、サイズはいろいろ、macOS 12 と macOS 11)

macOS Monterey 12.6.5 と Big Sur 11.7.6 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Adam Engst

GM、将来の EV で CarPlay の廃止を予定

Reuters の記事で、Joseph White がこう書いている

General Motors は自動車のインフォテインメントシステムを回避するものとして現在広く使われている Apple CarPlay および Android Auto テクノロジーを段階的に廃止することを計画している。その代わりに使われるのが Google が未来の電気自動車のために開発した車載インフォテインメントシステムだ。

いやはや、これは良くないニュースだ。私が現在乗っている車、2015 年型 Subaru Outback と 2015 年型 Nissan Leaf はいずれも CarPlay より前の時代のもので、車載インフォテインメントシステムはひどいものだ。燃費の悪い Outback を新しい電気自動車に買い換えようと考え始めているところなのだが、今や CarPlay が賭けの対象になってしまった。私たちが Tesla を考慮の対象にさえ入れていなかった大きな理由の一つが CarPlay に対応していないことであった。それに加えて近所にサービス店がないことと、Elon Musk に関係することは好きになれないという気持ちもあったのだが。

私たちの事情はさておき、自動車は携帯電話よりずっと長い寿命を持っているので、スマート機能を自動車そのものに内蔵するということは、たとえアップデートがあったとしても (自動車メーカーはあまりまともにアップデートしてくれないものだ)、それはそのテクノロジーが間違いなく時代遅れになることを保証するものに他ならない。そのことは、将来の自動車が完全な自動運転にもっと近付く時になるまでは変わらないだろう。たとえそうなったとしても、必要なセンサーを備えた自動車を対象としてその種の機能を CarPlay に組み込むことを Apple が考慮中だとしても私は全く驚かない。

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Adam Engst

GQ が Tim Cook を紹介: 温和で、好奇心が強く、普通の人じゃない

Zach Baron が男性向けファッション・カルチャー雑誌 GQ に Tim Cook の紹介記事を書いた。そこにはこうある:

人類全体の未来について日々もったいぶって話す少々病的なテクノロジー創設者たちで満ちた今この瞬間の世の中で、Cook はほとんどそういう方面には口を出さない。機敏に動きつつものをぶち壊すなどということを彼はしない。穏やかなまま立つ彼の姿は、Elon Musk や Mark Zuckerberg その他カオスの代理人たちを叱責しているかのようにさえ見える。そういう者たちは Cook とともにしばしば議会に呼ばれて、この国でますます不安定さを増すテクノロジーの状況について証言するよう求められる。仲間内を大切にする Silicon Valley では時として、人々が先を争ってベンチャーキャピタル駆動の宇宙船に乗り込もうと争い、宇宙船に乗れるのは Patagonia ブランドの服を着こなしたエリートのみ、その他の私たちは排除されるとすら思えてしまうことがあるが、そんな場合でも Cook はそっとその他の私たちの味方をしてくれるのだ。

Tim Cook はこれまで 25 年間 Apple で働き、2011 年以来 CEO を務めている。「もし今でも Steve Jobs がいたなら...」という言葉がオンライン上で繰り返し語られるにもかかわらず、Cook が指揮する Apple は今や時価総額世界一の会社となり、Apple Watch と AirPods をこの世に届け、その焦点を製品と、サービスと、価値と、そしてその通り、利益を上げることに集中させている。Apple ほどの規模と地位を持つ会社ならばある程度の劇的なドラマは避けがたいけれども、Cook はそれでも心を穏やかにする作用を及ぼし続ける。そして何と、彼に電子メールを送れば、Corporate Executive Relations チームから返信が届くこともよくあるのだ。

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