最初の2つの要素は、Apple が macOS 11 Big Sur で読み出し専用の Signed System Volume へ移行したことに端を発している。かの比類なき Howard Oakley が説明する通り,、Signed System Volume の内容を変更するためにはまず System ボリュームにアップデートをインストールし、暗号法的に封印されたスナップショットを作成して、そのスナップショットから再起動する必要がある。結果として、たとえマイナーな変更であっても数多くのファイルをアップデートすることが必要になるので、アップデートの際にはダウンロードする量も多く、インストールに掛かる時間も長くなる。
Apple の解決策は、アップデートの必要が大きいと予想されるコンポーネント、例えば Safari やその基盤となる WebKit が真っ先に考えられるが、それらを Signed System Volume の外へ移すことであった。そうすればアップデートは容易になるけれども、同時に脆弱度が高まる。それらの外部コンポーネントのセキュリティを維持するため、Apple は cryptexes (cryptographically signed extensions) と呼ぶ特別のディスクイメージを導入した。cryptexes が何かについては Howard Oakley による探査以外にほとんど何も資料が見つからないが、Howard によればこれは Preboot ボリューム上に保存されていて、ブート処理の初期の段階にロードされ、その際に親ファイルシステムの中へ移植されることで実質的にシステムの一部分となることができるという。
緊急セキュリティ対応 (Rapid Security Response) がインストールされたかどうかを知るには、Settings > General > About または About This Mac でバージョン番号を見ればよい。バージョン番号の後に文字が追加されて、例えば iOS 16.4.1 (a) のように表示される。私の想像だが、次のオペレーティングシステムアップデートより前に複数回の Rapid Security Responses が出ればこの文字が次の文字に変わるのだろうと思う。
"難しい比較" と言う表現が、今四半期の Apple の Mac 販売に関して何度も出てきた。その販売は前年同期比で 30% 以上下落し、$10.4 billion に対して $7.2 billion しか稼げなかった。昨年は Mac ラインナップ全般での M1 チップ展開が進み、販売を劇的に押し上げたが、今年のリリースに画期的なものは無かった。それでも、Mac 販売は 2021 年より前のどの年よりも遙かに良いものとなっている。2021 年は M1 チップの導入とパンデミックの最中に家から働いたり勉強したりする人々によって押し上げられた ("Apple の Q2 2021、開いた口が塞がらない程だが、何時ものこと" 28 April 2021 参照)。
iPad
Mac 同様、iPad 販売もまた前年同期から減収で、昨年の $7.6 billion に対して $6.7 billion の稼ぎとなった。Cook は Apple が Mac の減収と同様の理由からこれ等の結果を予測していたと言った:昨年は M1-based iPad Air の導入があったが、今年はその様なリリースは無かった。Maestri は、今四半期の iPad 売上げの 13% に及ぶ減収は "マクロ経済環境" のせいだとした。それでも、パンデミック以前の6年間と比べると、Apple の結果はそう悪くはない。
Wearables
減収パレードの最後に登場するのは、Wearables, Home, and Accessories 事業からの Apple の収入で、前年比 1% 未満の小さな下落で、前年同期の $8.81 billion に対して $8.76 billion の売上げであった。Cook はこの横ばいの業績に対する理由を何も言わなかったが、Maestri はマクロ経済環境が主たる原因だとした。Maestri はこの四半期の Apple Watch 購入者の三分の二はこの製品を初めて手にする人達であったと指摘し、この機器の将来の販売は明るいであろうことを匂わせた。
Services
iPhone と同様、Apple の Services 事業は昨年の数字からそこそこの増収を記録して、$20.9 billion を稼ぎ出し、前年同期の $19.8 billion から 6% 近くの増加となった。Cook は Apple TV+ ストリーミング作品の活況を褒め称え、そして "The Boy, the Mole, the Fox and the Horse" が Academy Award の Best Animated Short Film を獲得したことに言及するのを忘れなかった。Maestri は Apple の 975 百万人にも及ぶ有料定期購読者を強調したが、この数字は過去3年間で2倍となっており、これの多くは Apple 機器の設置基盤が引き続き成長していることに起因している。
しかしながら、アナリストからの質問に答えて、Maestri はモバイルゲーム売上げは、一部はマクロ経済環境故に、そして一部は "COVID 期間中の極めて高い利用" 故に、今四半期中に下落したと言った。人々は家に閉じ込められていない時にはゲームで過ごす時間は短くなるようだ。Apple Pay Later や Apple Savings Account 等の Apple の最新の金融サービス商品について、Cook は Apple Watch の健康機能になぞらえて、Apple の金融サービスは顧客がより良い "金融体質" を達成するのを手助けするのが目標であると言った。ふーむ...
地域別
色々な地理的地域に対する Apple の売上げは、Americas, Greater China, そして Japan では下がった。一方で、Europe と Asia Pacific では販売は伸びた。Asia Pacific 販売は Apple 製品に対する新興のインド市場での二桁の成長に助けられた;Cook はインドの中流階級における成長を亜大陸での iPhone 販売改善の希望的な兆しとして強調した。Greater China の結果に対して、彼は売上げは 3% 減ったが、この地域での収入は "通貨変動を考慮しなければ" 実際には増加しており、そしてこの地域での Mac と iPad 顧客の 60% はこのプラットフォームへの新顔であり、将来販売への希望の指標だとした。
将来
Cook と Maestri は、Q3 2023 の業績はこの四半期と同等であろうと言ったが、Maestri はその業績に及ぼす為替問題の影響には大きな変化は無く、部品価格は現在下落傾向にあると言って、アナリスト達との Apple 会見を幾分楽観的な調子で終結させた。
右肩上がりの成長が今日の経済モデルの目標のようには見えるが、この四半期でそれを達成出来なかったからと言って Apple がとりわけ何か間違ったことをしたと見るのには無理がある。新型 Mac や iPad のリリースがあればそれ等の数字はもっと良いものであったかも知れないが、Apple の規模での製品開発や製造は何時もきちんと計画出来るという様なものでは無い。Apple の次の改善の流れはこれ迄もそうであった様に来るであろうし、その改善が Mac ラインナップで Apple シリコンへの移行がもたらしたと同じように販売を促進するかどうかは時が見せてくれるであろう。
犯罪の増加について政治家や小売業者や警察が公に語る内容は誇張されたり不正確であったりすることが多いけれども、アメリカのほとんどの大都市で自動車窃盗が急増していることは紛れも無い事実だ。都市によっては 2022 年の件数がそれ以前の年の 2 倍から 4 倍になっているところさえある![訳者注: Hill Street Blues は大都市の警察署を舞台とした 1980 年代の有名なテレビドラマです。]
その原因は決して、犯罪の黒幕が突然自動車窃盗を流行の先端だと考え始めたからではない。そうではなくて Hyundai Motor Group 傘下の Kia 社と Hyundai 社が販売するモデル (前者は 10 年ほど前以後の、後者は 6 年前以後のモデル) がとてつもなく簡単に侵入できる欠陥を持っており、2022 年中頃にそのことが広く知られるようになったからだ。その通り、これはソーシャルメディアを通じて急速に広まった。報道によれば、脆弱性のあるモデルならば 1 分もかからずに侵入してそのまま走り去ることができるという。影響を受けた車は 8 百万台以上あり、Hyundai が 2023 年 2 月になってようやくソフトウェアの修正をリリースしてその種の攻撃を格段に困難にしたのだったが、それをインストールするには車をディーラーに持ち込む必要があった。
Knog Scout: ユニークなサードパーティの Find My 項目 Knog Scout($59.95) は、二種類の保護機能を提供する。まず、専用のアプリを使って Bluetooth 経由で移動警報を設定し、電波の到達範囲内ならば有効・無効を切り替えられる。もっと広範囲の追跡のために、この Scout は Find My ネットワークにも対応する。自転車から取り外すことなく USB-C で再充電できる。私のレビュー記事をご覧頂きたい。
VanMoof の自転車: 現在のところ、Find My 追跡機能を内蔵している電動自転車のメーカーは一社だけで、VanMoof がいくつかのモデルに追跡機能を組み込んでいる。
不要な追跡から保護するための規格
追跡テクノロジーがストーキングのためにも使われるという事実を受けて、Apple と Google は業界規格の仕様案を広く受け入れられた標準化団体 Internet Engineering Task Force (IETF) の手続きを通じて共同提案した。"Detecting Unwanted Location Trackers" (不要な位置情報追跡を検出する) という単刀直入のタイトルが付けられたこの仕様案は、技術的なやり方で問題の範囲を区切り、この規格に準拠するすべてのデバイスがサポートすべき重要な最小限のルールをどのように定めるべきかを提案する。
この仕様案は大体において Apple が Find My ネットワークに実装した追跡防止要素をベースにしているけれども、その実装がどのようにコード化されるべきかについてより明確な詳細を含んでいる。特に、トラッカーがそのトラッカーのオーナーから離れると判断するためのあらゆる条件をこの規格が定める。具体的には、AirTag または Find My 項目が当初ペアリングされた iPhone または iPad に接続されたたった一つの Apple ID に対する iCloud セットの中にあるデバイスでなければならない。
Apple が当初 AirTag に与えた機能だけでは不要な追跡が起こり得るあらゆる方法をカバーしておらず、その気になった人物なら知られずに誰かを追跡できるいくつもの機会を残していた。何度かの騒動を経て (2022 年 2 月 12 日の記事“Apple、AirTag プライバシー問題への対処の方法を説明”参照) Apple はいくつか調整を施し、それが家庭内暴力やその他のストーキングの被害者たちを支援するグループ、例えば National Network to End Domestic Violence のようなところからは改善として評価された。しかしながら、Apple が施したそれらの変更も個人のプライバシーを擁護する人たちや団体からはまだ不十分だとされた。
もしも Find My 項目がそのオーナーから離れた状態で動かされれば、大きな音を立てる。サウンドがいつ鳴るかをストーカーに予想されないように、Apple は最初に音が鳴るまでに 8 時間から 24 時間までの範囲でランダムな間隔を空ける。(トラッカーが動いていない場合は音が鳴らない。これは、そこに置かれた時点でオーナーが近くにいたはずだからだ。ただしその場合、その項目が動いていないのをオーナーが知っていることになる。)
Apple は移動の警告を提供しない。AirTag が現在ある場所はネイティブな Find My アプリを使っていつでもチェックできる (iCloud.com サイトを通じてはチェックできない) けれども、移動したことの警告は受けられない。この点が、自動車や自転車が現在盗まれているところだと分かるために Find My から移動警報を受けたいと思う人たちには不満に感じられるだろう。.
I 不要な追跡が起こる多くの状況の下で、追跡されつつある人は位置情報トラッカーのオーナーが誰かを知っています。アクセサリーを手にした時点でこのように曖昧化された電子メールや電話番号が分かるようにすることで... 犠牲になり得る者がそのオーナーについてある程度までの情報を得られる一方で、そのアクセサリーから離れるに至ったあらゆる状況の下にあり得るアクセサリーのオーナーのプライバシーともバランスを取ろうとしています。
これまで AirTag による保護に非常に批判的であった者たちも、Apple/Google の今回の発表には極めて肯定的な反応を示している。National Network to End Domestic Violence と Center for Democracy & Technology (CDT) は共同声明を発表し、その中で CDT 代表の Alexandra Reeve Givens は「悪用を防ぐための重要な要素は、人々が日々使っているさまざまの種類のスマートフォンの上で異なる会社が作ったトラッカーを探知できる普遍的な、プラットフォームレベルのソリューションです」と述べた。
Apple と Google の報道発表は「Samsung、Tile、Chipolo、eufy Security、Pebblebee が仕様案の規格への支持を表明しています」と述べた。しかしながら、それらの会社のうちこの発表に対する認識を表明しているのは Pebblebee のみで、自社の報道発表ページにそこへのリンクを載せている。Tile は自社の報道発表ページを 2022 年 1 月以来更新していない。
Apple と Google がこの仕様書の背後にいる以上、あまり長い時間を掛けずに実現される可能性が高いだろう。私がこの試案を読んだ印象では、既存のデバイスの一部は (AirTag ではほぼ間違いなく) ファームウェアアップデートを通じて準拠するようにアップデートされることだろう。ただ、製品によっては新しいハードウェアを必要とするものもあるに違いない。
また、Apple と Google が物理的な追跡デバイスに対して働くアプリに関するアプリストアの要件を追加することも考えられる。それらのデバイスが新しいガイドラインに適合していることを要求するようにするためだ。既に Apple はすべてのサードパーティの Find My 項目が Apple のルールに準拠することを義務付けている。