今日の Apple の WWDC キーノートの始まりを見ていたら、アメフトチームが試合の最初のプレーで長いタッチダウンパスを決め... そして続く二つの攻撃でも同じことを繰り返すのを見る感じがした。最初の得点は 15-inch M2 MacBook Air の発表で、その後すぐさま続いたのは M2 Max 又は新しい M2 Ultra 搭載の新型 Mac Studio と、そして長いこと待たされた Mac Pro であった。Mac Pro にもまた M2 Ultra が使われている。これ等三つの Mac は今日から予約注文が可能で、出荷は 13 June 2023 からとなる。
新型 Mac の仕様は印象的だが、取り立てて取り上げるべきものは無い。
15-inch M2 MacBook Air
この新しい 15-inch MacBook Air は分かり易い。それはただ単に 13-inch M2 MacBook Air の 8-core CPU/10-core GPU モデルで、より大型の画面とより多くのスピーカーを備えているだけである。仕様の比較表から私が言える限り、それ以外は同じである。
スクリーンは 15.3-inch Liquid Retina ディスプレイで、224 ppi、標準解像度 2880 x 1864 である。ピクセル密度は 13-inch M2 MacBook Air と同じだが、MacBook Pro の 254 ppi よりも少し粗い。14-inch MacBook Pro は、画面サイズはより小さいが、標準解像度 3024 x 1964 を有しており、そして 16-inch MacBook Pro の方は標準解像度 3456 x 2234 である。MacBook Pro モデルはまた、Extreme Dynamic Range (XDR) を誇っており、HDR コンテンツを表示する時にはより高いコントラスト比と明るさが得られる。
オーディオに関しては、15-inch MacBook Air は、より大型の MacBook Pro モデルが享受しているフォースキャンセリングウーファーを備えた同じ6スピーカーサウンドシステムを受け継いだ;それは 13-inch MacBook Air の4スピーカーよりも上である。
15-inch M2 MacBook Air の値段は、8 GB のメモリと 256 GB ストレージ付きで$1299 から始まる。色は、シルバー、スターライト、スペースグレイ、そしてミッドナイトがあり、13-inch モデルと同じである。同時に、Apple は 13-inch M2 MacBook Air を $100 値下げしたので、その価格は $1099 から始まる。13-inch M1 MacBook Air も存続し $999 から始まる。
正直言って、15-inch M2 MacBook Air は素晴らしいマシンのように見えるし、13-inch モデルと同様に歓迎されると私には思える。この 13-inch モデルは Apple によれば世界で一番売れているラップトップだという。
M2 Max/Ultra Mac Studio
会場を行進する Apple の旋風で次に登場するのは Mac Studio である。ここでの話題は中にあるチップについてが全てである。以前の世代の Mac Studio モデルは M1 Max や M1 Ultra を用いていたので、Apple が M2 Ultra を導入して、以前は 14-inch 及び 16-inch MacBook Pro にしか用いられていなかった M2 Max に続いても驚きには値しないであろう。
M2 Ultra チップは、誰もが想像する通り、二つの M2 Max チップを一緒にして詰め込んだもので、基本的には M2 Max の仕様を2倍にしている。つまり M2 Ultra が持っているものは:
20-30% の性能向上は軽視出来るようなものでは無いが、M1 Max や M1 Ultra Mac Studio からアップグレードするに値するものではないかもしれない。Apple もこの事実に同意しているようで、この新型 Mac Studio モデルを最速の Intel ベースの iMac と比較して、400% から 600% の性能向上が得られるとしている。我々は未だ、Apple が 27-inch iMac を Apple シリコンにアップデートするという兆しを見ていない。
新型 Mac Studio の仕様を見ても、M1 と M2 Mac Studio モデルの間には、性能向上、メモリ上限の拡大、そしてより新しいバージョンの Bluetooth を除けば大きな違いは見られない。提供されているポート、ワイヤレス接続性、等々は同じである。
これ迄と同様、M2 Max Mac Studio は $1999 から始まり、M2 Ultra Mac Studio は $3999 から始まる。安いとはとても言えないが、それだけの性能が必要なのであれば、Mac Studio はそれを可能にする。
M2 Ultra Mac Pro
その日の最後の Mac 発表で、Apple は Apple シリコン搭載の Mac Pro を披露した。これでその製品群から最後の Intel ベースの Mac が消えることとなった。M2 Ultra チップを基盤としており、Mac Pro の基本仕様は M2 Ultra Mac Studio と全く同じとなるであろう - Apple シリコンを使うとそうなる。ケースは Intel ベースの Mac Pro と同じものが使われている - 車輪は別売りで $400 である。
しかしながら、Mac Pro が際立つのは、その PCI カードに対するサポートにある。それは6つの空きフルレングス PCI Express gen 4 スロットを提供している。Intel ベースの Mac Pro は空の gen 3 スロットを7つ持っていた。どちらも一つのハーフレングス x4 PCI Express gen 3 スロットを Apple I/O カードに当てている。また8つの内蔵 Thunderbolt 4 ポートを有しており、その内6つは背面に、そして二つは上部に (タワー筐体)、或いは前面に (ラック筐体) にある - 前身の二倍の数である。
Apple はこの新型 Mac Pro はこれ迄の Intel モデルより 3-7 倍高速だと言っているが、その比較となると少々扱いが難しい。例えば、Apple はこれ迄の Intel ベースの Mac Pro に対して Apple Afterburner アクセレレーターカードを売っていたが、M2 Ultra チップの専用シリコンは Afterburner カード7枚に匹敵する性能を提供するという。Intel ベースの Mac Pro は 32 GB から 1.5 TB に及ぶ幅広い RAM 構成を提供していたが、我々の理解する所によると Apple シリコンのユニファイドメモリは遙かに効率的なので、新型 Mac Pro が 192 GB で上限に達しても問題とは全くならないのであろう。
値段は変わらず目から涙が出るほど高い。タワー型は $6999 から始まり、ラックマウント型は $7499 から始まる。オプションを加えるとその価格はほぼ二倍となる。何れにしろ、全てのオプションを備えた Mac Pro タワーは $12,199 でお買い得品のように見える。これに対してフルスペックの Intel ベースの Mac Pro はほぼ $53,000 もした ("2019 Mac Pro と Pro Display XDR:大枚を要する超高性能機" 10 December 2019 参照)。それでも、ベース価格だけでも目の痙攣が起こるようであれば、Mac Pro を買う余裕は無いと言うことである。
Apple は、その史上最強力の Mac を出すには今が適した時期では無いと事前に知ることは出来なかったと思われる。と言うのも、Mac Studio や Mac Pro の狙いとするのは Hollywood だからである。現在の Writer’s Guild of America ストライキ に関連したピケラインを破ることを拒絶する補助労働者のお陰で、多くの制作が中断されているからである - これに輪をかけているのは。Apple が Alliance of Motion Picture and Television Producers へ参加している事に抗議するため同社を攻撃目標とする運動である。また、Screen Actors Guild による別のストライキの兆候もあり、大手の制作会社は、Apple の最新のハードウェアを買うよりも、コストカットや人員整理に走る可能性の方が高いように見える。
Apple は WWDC キーノート (基調講演) の壇上で、来たるべき同社の 2023 年版オペレーティングシステムに登場予定の機能を披露する議論に新型 Mac を発表したよりも多くの時間を費やした。(2023 年 6 月 5 日の記事“三つの新型 Mac で Apple シリコンへの移行を完了”参照。) それでもなお、壇上に立った人たちはそれぞれのオペレーティングシステムごとにほんの少数の機能のみに集中して話を進めた。
ただ、macOS 14 の名前が今回判明した。ワインで有名なカリフォルニアの地名を使って、macOS Sonoma と呼ばれるようになる。改めて考えると奇妙なことだが、今後数年間 macOS のこの名前が私たちの間で日常的に至るところで使われることになると思えば、名前の選択というのはとても重要だ。少なくとも Sonoma という名前はほとんどの人にとって読みやすく書きやすいものに違いない。つまり Mohave とか Big Sir とか Venture のような書き間違いは減るだろうと願いたい。
Apple がキーノートで特に取り上げた機能に絞ったとしても一つの記事ですべて取り上げることなど到底できないし、ましてや Apple のウェブサイトでプレビューページに載っているさらにもっと多くのことをカバーするなど考えられない。そこでこの記事では、私が試してみたいと強く思った機能や、多くの人にとって魅力的なものになると思える機能を 12 個だけ、特に順序は気にせず書き並べてみたいと思う。2023 年版オペレーティングシステムに登場予定のあらゆる機能のリストは、以下で私が述べる機能についての Apple による説明も含めて、Apple が出しているプレビューページでご覧頂きたい:
かなり前から私たちは他の人たちと共有するための自分の写真を指定することができていた。Messages、Contacts、Phone、その他で表示される写真のことだ。iOS 17 では、写真またはミー文字の上にあなたの名前を表示した Contact Poster をカスタマイズして作成でき、あなたが電話をかける度にそれが相手のデバイスに表示されるようになる。そう、尋ねられる前に答えておくと、ここでは Apple の Communication Safety 機能による保護が働くので、電話がかかって来た際に誰かの下品な写真を見せられる心配は要らない。
Siri に "Hey" は不要に
自分の脳を再教育するためにしばらく時間がかかるかもしれないが、Apple によれば "Hey Siri" で "Hey" を省くことができるようになるという。今の私は毎日何度となく Siri を呼び出して照明を点灯したり消灯したり、シーンを設定したり、リマインダーを作成したりといったことをしているので、話す単語が一つ減ればそれはありがたいことだと思う。残念ながら新しいバージョンの Siri が現代の機械学習テクニックを利用して言葉の認識を改善し滑らかな応答を返せるようになるのかどうかについて Apple は何も述べなかった。私としては Siri が ChatGPT を組み込むことは望まないが、現在使われているトークン照合でコマンドを判断するやり方はますます非力に見えつつある。
iOS 16 で、Apple はディクテーション (音声入力) を拡張して、音声で入力しつつ同時にキーボードも使えるようにした。それは大きな前進であって、Dictation がまだ Voice Control と同様の音声による編集機能を備えていないにもかかわらず私は頻繁に iPhone で音声入力を使っている。そして macOS Sonoma では、この機能が Mac にも登場する。これで、ようやく私も執筆作業の一部を音声を使ってできるようになるかもしれない。
FaceTime が Apple TV に対応
FaceTime は私たちが使うビデオ通話システムのうちでは大きく引き離された第3位にいる。圧倒的首位は Zoom で、Tonya は Cornell 大学での仕事に関係したことで、また私は Finger Lakes Runners Club のミーティングで、いつも Zoom を使っている。第2位の Google Meet を私たちは家族の間の通話で使っている。ビデオ画面を搭載した Google Nest Hub Max スマートスピーカーを使っている者が家族にいるからだ。けれども FaceTime が新たに獲得するオプションを使えば、Apple TV 上で Continuity Camera 機能を経由して iPhone や iPad のカメラを使って通話できるようになる。そうすれば、リビングルームのソファにゆったり座ったまま大画面のテレビで相手の顔を見て話すことができる。ビデオ通話の習慣が多くの人々に染み付いたパンデミックのロックダウン時期に Apple がこの機能を実装できなかったのはとても残念だ。
長年の要望にようやく応えて、Apple は Preview を目に見える形でアップグレードしてくれるのだろうか? Apple によれば、PDF 関連の機能が拡張されてフォームへの入力が手早くできるようになり、AutoFill 機能が Contacts から情報を取り寄せるようになるという。この機能は iOS 17、iPadOS 17、および macOS Sonoma で動作するが、Apple は iPadOS 17 で使えることを強調した。ただし iPadOS 17 は比較的最近のモデルの iPad でしか動作しない。どうやらこのフォーム記入機能はスキャンされた PDF でも動作するらしいが、果たしてそれがフォーム記入を意図せず作られたどんな PDF でも働くのかどうか、期待しつつ待ちたい。
Mac のデスクトップウィジェット
そろそろ登場する頃だと思った。macOS Sonoma では、Notification Center からデスクトップへウィジェットをドラッグして取り出すことができる。(私自身はこれまで Notification Center を使ったことがない。) さらに良いこととして、iPhone 上のウィジェットを Mac で走らせることもできる。これは Continuity (連携) 機能のお陰で、実際には近くにある iPhone、あるいは少なくとも同じ Wi-Fi ネットワーク上にある iPhone の上でウィジェットが走ることになる。そうは言っても、私自身が使うウィジェットは iPhone 上にある CARROT Weather のみなので、Mac 上で魅力あるウィジェットが登場するようになるのかどうか、楽しみに見守りたい。
到着報告
私の祖父母の家を家族で訪問して、さてこれから長距離のドライブをして家に帰ろうとする時、私たちはいつも「家に着いたら必ず電話しなさい」と言われる。(これはおそらく私が子供の頃、休暇の前に私を祖父母の家に預けてから帰宅中の両親のおんぼろ車が深夜に故障して、祖父母と私が助けに行かなければならなかったからだろう。あの車は、後輪が薪割り台に置き換わりダダ漏れのラジエーターに庭仕事用ホースが突き刺さった状態でその生涯を終えた。) でも今では、ほとんどの人が無事自宅に着いたことをテキストメッセージで知らせているだろう。ところが Apple はこれを自動化することを狙って新しい Check In 機能を作った。あなたが無事に目的地に到着すれば、家族や友人に通知が届く。また、あなたが進まなくなれば、あなたにそれを知らせる。それに対してあなたが反応しなければ、位置情報と iPhone の状況に関する情報を相手の人に共有する。当然ながら、すべての通信に終端間暗号化が用いられる。
タブグループを作成するのは簡単で、複数個のタブを選択してからそれらを Control-クリックし、Add Tabs to Group > New Group を選ぶ。私の場合はまず TidBITS と FLRC のブックマークフォルダを Command-クリックして中にあるタブを全部同時に開いておいてから、それぞれをタブグループにまとめた。
Microsoft Edge における垂直タブの実装は、機能性の観点からは Brave のものに似ている。edge://settings/appearance にナビゲートして "Show vertical tabs for all current browser windows" の横にある Turn On ボタンをクリックすればオンになる。何とも奇妙なインターフェイスの判断だ。どうしてそのすぐ上にあるコントロールのようなトグルスイッチにしなかったのだろうか?
けれどもこの記事では Orion の垂直方向の、樹状のタブの機能に集中して述べることにしよう。View > Show Vertical Tabs Sidebar を選べばオンにできる。Orion が他と違うのは、この記事で私が議論してきた中ではこれが最初の、タブグループの分離ができるブラウザだからだ。タブグループは Named Window と呼ばれている。サイドバーの一番上にあるポップアップメニューを使って Named Window を切り替えることができ、Orion は再起動をしてもそれぞれの Named Window の内容を記憶している。このようにして Named Window を分離することで、ピン留めタブの有用性も高まる。そう、ここでもやはりピン留めされたタブはサイドバーの一番上に極小のアイコンとしてのみ表示されるけれども、少なくとも全部をごっちゃに集めるのではなくてその Named Window に属するもののみが並ぶ。
Safari に解説は必要ないだろう。ただ、メジャーなブラウザのうちでこれが垂直タブの最も充実した実装を備えていることを知らない人は多いかもしれない。Safari のインターフェイスや Apple のサポート記事のどこを見ても垂直タブという用語は登場しないのだが、Safari でサイドバーを表示させれば、そこにタブやタブグループが表示されている。(混乱の元だと言えるが、ブックマークやリーディングリスト、Shared with You リンク、iCloud Tabs もサイドバーに表示できる。) タブグループが望みの形に表示されるようにするためあちこちクリックして回る必要があるかもしれないが、いったん設定できれば機能性はしっかりしている。