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#1711: Apple Intelligence を検討、Apple ID が Apple Account に、SMS 迷惑テキストをブロック、Apple Pay Later が廃止に

今週の特集記事では Apple Intelligence を検討する。これは Apple が WWDC でお披露目した一連の AI ベースの機能で、来年にかけてゆっくりと実装される予定になっている。また、Apple がひっそりと発表した Apple ID から Apple Account への改名は、マイナーな変更ではあるもののテクノロジー系ライターにとっては悩みの種となるだろう。David Shayer が久しぶりの TidBITS 寄稿記事で、手に負えない SMS の迷惑テキストメッセージの問題を解決する手段として Nomorobo を見つけたと語る。それからもう一つ、Apple が Apple Pay Later サービスを廃止したニュースを簡潔に紹介する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは 1Password 8.10.34、Arc 1.47、BusyCal 2024.2.5、Little Snitch 6.0.1、それに Zoom Workplace 6.1 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple ID から Apple Account への改名は独立文書に混乱をもたらす

今年後半に登場予定の Apple サービスの新機能を宣伝するプレスリリースの一番最後のところに、Apple は次のような文章をひっそりと滑り込ませた:

iOS 18、iPadOS 18、macOS Sequoia、および watchOS 11 の登場に伴って、Apple ID は Apple Account と改名され、さまざまの Apple サービスとデバイスを横断しつつ、ユーザーの既存の認証情報に依存して首尾一貫したサインイン体験を提供するようになります。

たいていの人にとって Apple Account であろうと Apple ID であろうと大した違いはないように思えるし、現時点で Apple の側で一貫性のない使い方をしている個所に私は気付いていない。今のところ最も具合が悪いと感じられるのは iCloud で、自分の認証情報が使えるのではないかと期待したいところなのに、実際には Apple ID のみに依存している。

Apple ID とは何かを既に理解している人は、おそらく今回の変更で混乱させられることはないだろう。二つの用語は互いにかなり似ているからだ。(どうやら、少なからぬ数のコンサルタントたちが Apple ID のパスワードを入力せよと求められても何を入力するのかさっぱり分からない人たちを相手にしているらしく、そういう人たちには Apple ID という名前が Apple Account という名前に変わっても何の解決にもならない。Mac のログインと Apple ID とで別のパスワードがあることに面食らう人たちも実際多い。)

Take Control 出版者の Joe Kissell との会話の中で彼が指摘したのは、厳密に言えば Apple ID と Apple Account は同等の存在ではない、なぜなら Apple ID は第一義的に識別子 (実際には電子メールアドレス) である一方で、Apple Account にはユーザ名とパスワードの双方が伴うからだ、という点だった。

けれども真の問題点は、テクノロジー系ライターが複数のバージョンの Apple オペレーティングシステムにわたって存在する機能について記事を書く際に生じる。おそらく私たちは、時代がゆっくりと進んで新しい用語に落ち着くまでの間、両方の用語を併記することになるだろう。「連係機能を使うには同一の Apple Account (2024 年以前のオペレーティングシステムにおいては Apple ID) にログインしている必要があります」といった読みにくい文章を目にしたなら、それは Apple が悪いのだと思って頂きたい。あるいはライターたちはもっと手短な書き方を目指しつつ「連係機能を使うには同一の Apple Account/ID にログインしている必要があります」のように書くかもしれない。

憎たらしいことに、Apple 自身が出している説明書ではあまり問題が生じない。なぜなら Apple は個々のバージョンのオペレーティングシステムごとに同じサポート記事の別々のバージョンを出しているからだ。(2024 年 3 月 25 日の記事“Apple、マニュアル・仕様・ダウンロードを統合したドキュメンテーションサイトを開始 ”参照。)

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David Shayer  訳: 亀岡孝仁  

Nomorobo で SMS テキストスパムを排除

受け取る SMS スパムが増えていますか? もしそうでなければ、幸運だと思って欲しい。と言うのも、私の SMS スパム負荷は最近天井知らずに増えているからである。未知の送信者をフィルタする Apple の組み込みオプションは約束したことをするが、私は未知の送信者からのすべてのテキストをより分けて正当なメッセージを探すことを余儀なくされた。私は幾つかの SMS スパムフィルタを試してみたが、どれも殆ど何も見つけられなかった。最終的に、私は長年の通話保護サービス Nomorobo に辿り着き、それがこの問題を抑制した。

Nomorobo splash screen

スパムは進化し続ける

数年前、メールスパムは大きな問題であった。スパマーとスパムフィルタの間では、拡大する戦争があった。最終的には、スパムフィルタ技術が勝った。電子メールスパムはまだ問題だが、その大部分は自動的にフィルタされる。私が Gmailを使う主な理由は、その賞賛すべきスパムフィルタである。自分のメールプロバイダが Gmail ほど良くない人でも、C-Command Software の由緒ある SpamSieveで殆どのスパムを排除出来る。

次に、電話のスパムが現れた。車の保証を売ろうとするテレマーケターから多くの電話を受けたので、私は見覚えのない番号からの電話に出るのをやめた。それが絶望的に見えた頃、Apple は Silence Unknown Callers オプションを追加した(Settings > Phone > Silence Unknown Callers)。今や、私の Contacts にない人からの電話は直接ボイスメールに行く。殆どのスパマーは最早ボイスメールなど残さない;きっと、それは彼らがやっているどんな詐欺に対しても効果がないのであろう。実在の人物が私にボイスメールを残す時、私の歯医者が予約を確認するように、その番号を Contacts に追加して、次回には電話が鳴るようにする。

Silence Unknown Callers

最新のスパム前線は SMS テキストスパムである。以前は受け取るスパムメールが数通しかなかったが、今は1日に 10 通程度受け取ることもある。"amazon.scam. com/pkg/8675309" をクリックして私の Amazon パスワードでサインインしない限り、注文した覚えのない Amazon パッケージを配達出来ないというテキストが届いたりもする。"Jenny" から "今夜楽しまない?" と尋ねるメールが来たりもする。しかし、殆どの場合、私は政治家からお金を求めるテキストを受信する。どういうわけか、私はどちらの米国の政党のリストにも載ってしまった。米国の選挙シーズンが熱くなるにつれて、政治的スパムは悪化する一方である。

働かなかった簡単な解

まず、Apple の組み込みフィルタリングを試してみようと思った。Settings >Messages > Filter Unknown Senders をオンにした。それにより、Messages には画面の左上に Filters リンクが表示される;それをタップすると、メッセージをKnown Senders と Unknown Senders に分けるフィルターのリストが表示される。私の Contacts にない番号からのテキストは、Unknown Senders に表示され、肯定的に聞こえるが、比較的効果がないことが分かっている。問題は、それでも、DoorDash の注文、Uber の確認、そして多数のサイトからの2要素認証コードのために、Unknown Senders リストを調べる必要があることだ。さらに悪いことに、私は彼らの連絡先を持っていないにも拘わらず、政治的なスパムテキストの中にはKnown Senders に現れるものもある。

Filter Unknown Senders and effect on Messages

次に、スパムテキストの発信元の電話番号をブロックしてみようとした。しかし、各メッセージは固有の番号から来ていて、おそらく多くの場合偽装されたものであり、そうするのは簡単である。(私は実際の詐欺に返信しようとしたことはない。) 私の iPhone に簡単に何百ものブロックされた番号が溜まったが、スパムテキストが減ることはなかった。

しばらくの間、私はスパムテキストを削除して Delete と Report Junk をタップすることに忠実であったが、それは何もしないように見える。何ヶ月もジャンクを報告した後でも、スパムの減少は目に見えるようなものではなかった。私の理解する所では、このような SMS テキストメッセージの報告はキャリアに送信され(7726 にそのメッセージを転送することも出来る)、そして彼らはその情報を使って同様のスパムテキストを阻止出来る。キャリアが実際にそれをしても、それは効果がない。iMessage 経由で送信されたメッセージでは、それらを報告すると、その情報は Apple に送られる。私は Apple の適切なグループに誰も知り合いを持たないが、同社の他の知り合いは、Apple はその情報を使い、十分な数の報告のあるスパマーアカウントを検出して取り消す助けにしていると信じていると言っていた。

Block caller and Report Junk texts

テキストの中には STOP と返信するとオプトアウト出来ると言っているものもあるが、私は多くの場合それを試す気になれない。何故ならば、それは私の番号がライブであることを詐欺師に確認させることとなり、さらに多くのテキストスパムにつながる可能性があるためである。STOP と返信するのは政治的なスパムでは機能するが、その特定の候補者でのみなので、政治的なテキストスパムと戦うことは Whac-A-Mole (モグラ叩き) のゲームとなる。一人の候補者を黙らせると、別の候補者が出てくる。(彼らは地元ですらない!)

SMS スパムフィルタアプリ

勿論、そのためのアプリはある。次に、私はテキストスパムフィルタを試すことにした。App Store には、Apple の公式の SMS and MMS Message Filtering APIを使用するものが沢山ある。これらのフィルタアプリの殆どは、定期購読が必要とする。

Enabling Nomorobo

これら全ての製品は Apple の API を使用しているため、同じ様にインストール出来る。これらのアプリの1つをダウンロードしたら、Settings > Messages >Unknown & Spam に移動し、Filter Unknown Senders をオンにして、自分の SMSフィルタアプリを選択する。

Nomorobo changes to Messages on iPhone but not on Mac

フィルタアプリをインストールすると、iPhone 上の Messages のフィルターのリストが、Transactions, Promotions, そして Junk を含むように拡大される。iPadをお持ちの場合、Messages には同じカテゴリが表示され、メッセージは iCloud Messages を介して同期されるが、それは数時間停止することがある。macOS バージョンの Messages は、View メニューに Known Senders と Unknown Senders リストのみを表示する;他のグループにフィルタされたメッセージは出てこない。

Nomorobo changes to Messages on iPhone but not on Mac

私は主として当面の問題を解決することに興味があったので、私のテストはかなり非科学的だった。私は各スパムフィルタを自分の iPhone 上で使った。ええ、それは1つのサンプルサイズだが、すべては同じ環境で動作していた。また、App Store の全ての SMS フィルタも試した訳ではない。最後に、これらの製品の殆どはスパムテキストだけでなくスパム音声通話も阻止するが、私はスパムテキスト機能のみをテストした - Silence Unknown Callers は私にとって十分に機能する。

私は SMS スパムフィルタアプリにお金を払うのは厭わないが、幾らでも良い訳ではない。優勝アプリは自動的に動作し、データを不必要に要求しない必要があったが、どちらも問題であることが判明した。私が試したアプリは次の通り:

商用アプリの中で最も安価で効果的な Nomorobo を見つけた時に私が何故立ち止まったかはお分かり頂けるであろう。AT&T Active Armor は無料だが、効果がない。SMS Spam Block も無料だが、リストを手動で維持する必要があり、6年間も更新されていない。Robokiller は、私の連絡先にアクセスせずにアクティベートすることを拒否して私の警戒心を喚起したし、それに非常に高価でもあった。TextKiller はインストールエラーがあり自信が持てず、それに私のスパムをほとんど捕捉しなかった。

もし他のテキストスパムフィルタアプリがうまくいった場合があれば、コメントで詳細を共有して欲しい。しかし、私は Nomorobo を定期購読するつもりだ。年間$20 は、1日に 10 本程のテキストメッセージの妨害を排除するために払う小さな代償と言える。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple Intelligence を検討する

Apple 社内で誰が "Apple Intelligence" という用語を思い付いたにせよ、今はその人もきっと満足しているに違いない。これは、Apple が AI を使ってしている事柄と、人々の大多数が AI という言葉から連想する生成 AI チャットボットやアートボットとの違いを際立たせるための、巧みな言い回しだ。

(いずれ "AI" が "Apple Intelligence" を意味する略語になればという議論が社内で交わされたかどうかは知らないが、その昔の eWorld オンラインサービスの "eMail" 機能から取り出した "email" という単語が定着するだろうと Apple が考えた時ほどには思い通りに行かないだろう。これは本当の話だが、今は亡き私の友人 Cary Lu が 1990 年代中頃に eWorld について本を執筆していた際に、Apple が彼に向かってそう願っていると言及したとのことだ。)

誤解のないように強調しておきたいが、Apple Intelligence は“来年にかけて”ゆっくりと実装される予定のものだ。だから、今年 9 月に iOS 18 と macOS 15 Sequoia が最初にリリースされる時点では、以下で議論する事柄の大部分はまだ実現されないままで、Siri に最も魅力的な拡張機能が実装されるのはおそらく 2025 年の後半になると思っておいた方がよいだろう。辛抱が大切ですよ、キリギリスさん。

Apple Intelligence と AI の違い

Apple Intelligence は AI と何が違うのか? Apple は Apple Intelligence を“パーソナルな知能システム”(personal intelligence system) と呼んでおり、実際に WWDC 基調講演で Apple が発表した機能の大多数はユーザーの個人データを中心に働くものであった。現存の多くの AI システムは、プロンプトに書き込まれたこと以外にあなたに関する知識を何も持っておらず、その点こそが AI システムの難点だと Apple は洞察する。それは、プライバシーと個人に力を与えることを重視してきた Apple の姿勢とも合致している。生成 AI チャットボットやアートボットは素材の膨大な資料でトレーニングされており、統計的に可能性の高い結果を返す。けれども私たち個人は統計的可能性とは程遠い。私たちは自分のデータ、つまり自分の電子メール、自分のメッセージ、自分の写真、自分のスケジュール、自分の連絡先を持っているのだ。

個人のコンテクストに集中する Apple の自社製ツール、とりわけ Siri の持つ問題点は、ローカルな情報のみでは答えられない質問を私たちが発した際に起こる。問われた質問がグローバルな知識を必要とするものだと Siri が判断すれば、Siri はその質問を ChatGPT に渡してもよいかと尋ねる。ChatGPT は Siri に限らず Apple のシステムワイドの執筆ツールの中でも利用できる。この ChatGPT 統合は無料で使えるが、ChatGPT Pro 購読者は自分のアカウントに接続することができる。そうすることでどれくらい役に立つのか現時点での私には分からない。Apple によれば将来には他の AI チャットボット、例えば Google の Gemini などにも対応する予定だという。これまで私がテストしたことのあるチャットボットの中で、最も不満足な結果しか得られなかったのが Gemini で、良い結果が得られたのは ChatGPT と Claude だった。

Apple Intelligence とプライバシー

これらの機能があなたのプライバシーにどう影響するかというのは確かに考えておくべき問題だ。Apple は、ユーザーのプライバシーを確保するため Apple Intelligence にどれほどの努力を注ぎ込んだかを繰り返し強調した。AI 駆動の機能は、以下の3つの道のうちどれか1つを選ぶことになる:

Apple Intelligence の機能

Apple Intelligence とは、言語、画像、アクションという3つの機能クラスの総称だ。言語関係の機能としては、システムワイドの執筆ツール、電子メールメッセージや通知のカテゴリー分けと優先順位付け、録音データや通話や音声メモの文字起こし、Siri の自然言語理解の改良などがある。画像関係の機能としては、Genmoji (生成絵文字)、画像生成ツール Image Playground、および Photos の高度な編集機能などがある。そして、Apple が“アクション”と呼ぶ機能は主として Siri の機能強化に関するもののようで、Siri が特定のタスクを実行できるようにしたり、複数のアプリにわたるタスクを可能にしたりといったことだ。

言語ツール

Apple Intelligence の言語関係の機能のうちで最も目立つ存在は、おそらく Apple の新しいシステムワイドの Writing Tools だろう。これは Apple のアプリでも、サードパーティのアプリでも利用できるようになる。Grammarly が現在果たしているやり方と同様に、校正したり書き直したりする際に役立ち、また文章の要約もする。

私は長年 Grammarly を使って校正作業をしてきた。タイプミスや、重複した単語、不要な空白などを見つけてくれるし、新しい AI 駆動の機能は上手くない文章を書き直す提案を時々してくれる。Grammarly の校正ツールがこれほど役に立つという点に私は正直言って少し苛立たしい気持ちになることもあるが、自分が書いた文章をプロのレベルに直す編集作業はなかなか困難である上に、Grammarly は私よりずっと素早く間違いを見つけてくれる。ただし、文法や、単語の選択、文章構造などに役立つ Apple Intelligence の校正機能を丸ごと支えとして依存してはいけない。もちろんそれで十分という人もいるかもしれないが、自分の文章を大切に思っている人たちでさえ、役に立つ提案はありがたく受け取れる一方で、役に立たない提案は無視するようにするのが賢明だ。(例えば、Grammarly は "own"、"actually"、"both" といった単語が嫌いなようだが、私はそういう単語を必要と思う個所で意図的に使っているのだ。)

Apple Intelligence の書き直しや作文の能力 (後者は ChatGPT に依存する) に疑問を抱くのは容易なことだが、疑問を抱く人たちの大多数はそのような機能を必要としていないという点がきっと見えてくるだろう。記事“生成 AI のチャットボットやアートボットの上手な使い方”(2024 年 5 月 27 日) に書いたことを思い出して頂きたいが、AI は主としてスキルや知識が C+ (並程度) の評価を受ける学生と同等程度に達していない状況で役に立つ。Apple がフレンドリー、プロフェッショナル、簡潔の3つの文体を提供しているやり方を私は好ましく思う。経験の少ないライターはなかなか一貫した文体を維持できないことが多いが、多くの人が文体に気を配ることで要らぬ誤解や傷付いた感情が回避できるようになるだろう。

そうは言っても、私は Mail の Smart Reply 機能についてはかなり疑わしく思っている。その Q&A の作り方を見れば生成 AI の賢い使い方についての私のもう一つの基準 (喜んでアシスタントと一緒に働く気持ちが必要) に答が出るのだが、この機能の使用を正当化できる程度に高速で動作するかははっきりしない。とりわけ、出力されたものを自分が書いたものらしくするために編集の手を入れなければならなかった場合にはなおさらだ。

Apple Intelligence の要約ツールはシステム全体に広がるものなので、これはきっと Apple がまずはいろいろ試してみてどれがうまく行くかを確かめようとしているのではないかと推測する人たちもいる。要約ツールは少なくとも以下に挙げる機能に結び付いて実装されるようだ:

もう一つ最後に紹介したい言語ツールは、通知や電子メールメッセージの内容を評価して、どれを最初に表示すべきか優先順位付けしてくれるものだ。通知で具体的にどんな風に動作するかはなかなか想像できないけれども、電子メールメッセージに優先順位付けする機能があれば大いに人気を得るはずだと思う。また、Focus (集中モード) を Reduce Interruptions に設定しておくことで、すぐに読む必要のある通知のみが表示されるようになるという。これならすべてを許す設定と Do Not Disturb (おやすみモード) 設定の中間のありがたい選択肢として使えるように思えるが、反面それは Focus (集中モード) 機能をさらにもう一段予測不能のものと化してしまうかもしれない。(2022 年 1 月 20 日の記事“Apple の新しい Focus (集中モード) 機能 - これはやり過ぎかも”と 2023 年 2 月 17 日の記事“通知が予期せず沈黙させられた? Focus を疑え”参照。)

画像ツール

Apple Intelligence の画像ツールはさまざまな範囲に及ぶ。Image Playground アプリ (その機能は他のアプリでも利用できるようになる) を使えば、既存の他の AI アートボットと同じようにテキストプロンプトを通じてオリジナルの画像を作成することができる。Apple によれば、画像のスタイルを Sketch、Illustration、Paint の3つのうちから選べるようになるという。そうすることで、Image Playground を使って写真のようにリアルなディープフェイクを作ることが不可能になる。また、Image Playground が作成できるものについて Apple がきちんとした一線を引いてくれることを私は確信している。手始めに、NSFW (職場で開くとまずい) 画像や、有名人の画像、商標権を伴う画像などは作れないようにしてもらいたい。

Genmoji とは AI 生成のカスタム絵文字のことだが、これは絵文字を楽しいと思うけれども特定の数個の笑顔文字くらいを除いて実際に使う気はしないと思う人にとって興味ある存在となるかもしれない。私の場合、Messages や Slack に書いたメッセージに何か感情的な強調を入れたいと思っても、望みの画像が存在しないことが多い。お出かけの提案を受けた私の熱狂的な気持ちを表現するためにサングラスをかけたペンギンがサーフボードに乗っている画像が欲しいと思ったら、他にどこでそんな画像が手に入るだろうか? 現在の絵文字は限定されたセットであるので他の人と意味が共有できるけれども Genmoji になればその制約が外れて意味の共有がなくなるのではないかと危惧する人たちもいるが、現状でさえその共有された意味というのは限られた人々の間でしか存在していないのだから、その危惧に共感するのは難しい。

Notes アプリの Image Wand 機能は指や Apple Pencil で描いたラフなスケッチを洗練された絵に変えるものだが、オンラインでそれに対する批判が寄せられた。その原因は一つには、Apple が実演の中で完璧に問題のないスケッチが「良くなった」と述べたからだ。この批判はどうやら、プロのライターが執筆ツールを批判しているのと同じタイプに属するものに思える。イラストレーションのスキルを身に付けている人なら文句を言いたくもなるだろう。絵を描くことに関して紙袋を破る力もない (さらに言えば紙袋の絵を描くことさえできない) 者に過ぎない私は、Image Wand 機能がどんな風に自分の描く絵を良くしてくれるかをぜひとも試してみたいものだと思っている。それでもなお、そもそもスケッチなんかほとんどしないので、自分がこの機能を必要とする状況を思い付けない。私には、絵を描くより千語の文章を書く方が向いている。

残る画像関係の Apple Intelligence 機能3つはすべて Photos アプリにある:

アクション、つまり Siri が頭脳を得る

多くの人にとって、Siri に AI 駆動の頭脳が与えられることこそ Apple Intelligence の一番の魅力だろう。Siri はそのデビュー時点では目を見張る存在であったし、Apple はその後も着実に Siri の能力と知識量を広げてきたけれども、特に最近数年間は劣化を見せてきていたような印象がある。まるで アルジャーノンに花束を の物語のようだ。

最も重要な点として、新しい AI 駆動の Siri は言語理解がより豊かになるとともに、会話のやり取りの中で文脈を維持することができるので、個々のコマンドがもはや独立に扱われる必要はない。また、私たち誰もが時には経験する言い間違いなどにもかなり寛大に対処できるようになる。

Apple は Siri があなたの個人的コンテクストとスクリーン上のコンテンツを認識するようになるという点を大きく取り上げて宣伝している。そうなることで、Mail や Messages を横断してコンテンツを見つけたり、Notes から直接に情報を抽出したり、スクリーン上に表示されているコンテンツを使って何らかのアクションを起こしたりできるようになるはずだ。その機能は複数個のアプリに跨って働くので、例えば Siri に命じて写真に手を入れてからそれを Mail のメッセージに添付することも可能になる。ただ、これらの機能がどの程度うまく働くのか私にはよく分からない。Siri には現時点でもたくさんのことができるが、それを使うあなたが何ができるかを正確に知っていて、かつ完全に正確な言葉遣いで命じなければならないのが現状なので、Siri の機能をフルに使いこなせている人など現時点ではほどんど誰もいない。失敗したらまず受け入れられることはなく「すみませんがそれはできません」と言われるのがオチだ。だから、ほとんどの人はまた Siri を使う気をなくしてしまう。

Siri はそのデバイス上でローカルに動作するので、その知識基盤に限界があることは避け得ない。Apple は巧みな一手として、Apple 製品に関する知識を Siri に与えるので、iPhone、iPad、Mac の使い方についてのヘルプが受けられるようになる。私としてはこの機能が実現されるのを楽しみに待ちたい。私のような人にとっても、どの設定が何をして Apple がその設定項目をどこに隠したのかをすべて覚えているのは不可能だからだ。(実例を一つ言えば、iPhone ユーザーによって Messages で緑色の吹き出しの友人がライムグリーン(黄緑色)で表示されたりエメラルドグリーン(濃緑色)で表示されたりするのはなぜか? その答は、設定項目 Settings > Accessibility > Display & Text Size > Increase Contrast に依存するからだ。)

さきほども書いたように、Siri への質問がグローバルな知識を必要とする場合、Siri はその質問を ChatGPT に渡してもよいかと尋ねる。多くの場合にはそれでうまく行くかもしれないが、会話の流れを妨げないように Apple がそれを実装してくれるかどうか、慎重に見極めたいと思っている。ここでの大きな問題点は、ChatGPT の知識に時間制限があることだ。対照的に Perplexity は検索をしてから見つかったものの要約に基づいて返答を構築するので、そちらのやり方を使った方が満足できる結果が得られるかもしれない。さらに想像を進めて Apple がより一般的にその方向へと移行し、Google の検索エンジンへの依存度を減らすことを目指すところを思い巡らしてみたりもできるが、反面それをすると Apple は Google から得ている何百億ドルもの収益を諦めることになってしまう。

Apple Intelligence はどの程度賢くなるものなのか?

Apple が Apple Intelligence の作成へと強制的に追い込まれたことに疑いの余地はない。その機能の多くは時間さえかければいずれ Apple のアプリやオペレーティングシステムに取り入れられたことだろうが、他の巨大テクノロジー会社からの AI を巡る過剰宣伝 (その中にはそれ相応の価値あるものも、そうでないものもある) が、Apple の次の一手を強要したのだ。思い出して頂きたいが、ChatGPT が登場したのは 2022 年の末頃になってからのことで、それから数か月も経たないうちに誰もが AI はオンラインの世界に旋風を巻き起こすと予想するようになった。Apple に残された時間は少なかった。

そのこともまた、Apple Intelligence にごちゃ混ぜの寄せ集めの印象を与える一因となっているかもしれない。とりわけ、ChatGPT 統合のような取って付けたように見える部分はなおさらだ。Image Playground や Smart Reply などの機能は、Apple が既存の他のツールと競争できるか確認するために設けられているようにも感じられる。それ以外の、例えば Photos が説明で写真を検索できる機能などは、魅力的に思える。多くの人々が Siri に AI から取り入れて欲しいものは、その理解への困難度が減ることだ。

これらの機能を取り入れる点で Apple は立ち遅れているかもしれないが、この会社はアーキテクチャ上の問題に真剣に取り組んでいるというのが私の受けている印象だ。デバイス上での処理はパフォーマンスとプライバシーの両面から重要な要素であるし、Private Cloud Compute はサーバベースの AI ツールに対して人々が求めるものに新たな標準を打ち立てる存在となるかもしれない。

私の知る限りで言えば、Apple Intelligence が他人の芝生に足を踏み入れることはない。もしあなたがそれを使いたくなければ、ただ無視するだけでよい。それは、あなたがテクノロジーを使いたいやり方に関係しない機能を無視していればよいのと同じことだ。けれども私が話をした人たちの何人かは、Apple Intelligence はここ数年間にソフトウェア側で Apple がした仕事の中で大きな期待に胸踊らせるものに属すると言っていた。Apple のハードウェアは既に驚くべきレベルのパフォーマンスに到達しているけれども、ソフトウェアの側では進化したハードウェアの処理能力を活かすことで初めて可能になるような新たな機能が大多数の人たちに届けられることはまずなかったのだから。

つまり、今の私たちは興味深い時代に生きている。これから半年後、あるいは一年後には、もっともっと興味深い時代になるかもしれない。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

1Password 8.10.34 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

1Password 8.10.34

AgileBits が 1Password 8.10.34 をリリースして、ファミリーアカウントの復元コードをアプリの中で直接に生成させることができるようにした。このパスワードマネージャはあなたが前回 SSO 認証に使ったデバイスに応じて適切な登録方法を表示するようになり、1Password ファイル読み込みの際にヴォールト作成の承認を得ず読み込もうとすると重複して警告が表示された問題点を修正し、文字を含むクレジットカード番号の表示に一貫性がなかったバグを修正し、LastPass から共有フォルダを読み込む際の問題に対処し、再起動後にアプリアイコンが Dock 上に残ったままになったバグを修正した。(購読年額 1Password から $35.88、新規にアカウントをセットアップする TidBITS 会員は 6 か月間無料、無料アップデート、4.8 MB のインストーラダウンロード、リリースノート、macOS 10.15+)

1Password 8.10.34 の使用体験を話し合おう

Arc 1.47 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Arc 1.47

The Browser Company が Arc 1.47 をリリースして、Google Calendar を使っていて Favorites にピン留めしている人のために Live Calendars を導入した。デスクトップ版に搭載されたこの機能で、近付きつつあるミーティングを一目で一覧でき (カウントダウンタイマーもある)、ビデオ会議用の Join ボタンが Sidebar 上に自動表示されるようにした。今回のリリースではまた、Instant Links 機能のショートカットを示す Command Bar 上の Shift+Enter アイコンを廃止し (検索のトップヒットから直接ナビゲートできる)、同期中のタブのファビコンをキャッシュする方法を改良した。iOS アプリ Arc Search でタブが開いていれば、Handoff 経由でその URL を Mac のデフォルトウェブブラウザで開くように Mac が促すようになる。(無料、387 MB、 リリースノート、macOS 12.1+)

Arc 1.47 の使用体験を話し合おう

BusyCal 2024.2.5 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

BusyCal 2024.2.5

BusyMac が BusyCal 2024.2.5 をリリースして、タグとそれぞれに割り当てられた色を iCloud 経由で同期する機能への対応を追加した。(色付きタグへの対応は iOS 版にも近日登場予定だ。) このカレンダーアプリは Apple の Contacts から取り込んで誕生日を表示する際の没年の探知を拡張し、メニューバーオプション "Switch to upcoming event" に新たな分カウントを追加して拡張し、購読済みの WebDAV カレンダーとの同期の際に遠隔で変更されたイベントの探知を改善し、macOS 11 Big Sur やそれ以前で Icon Finder からダウンロードした画像が正しくディスク上に保存されなかった問題を解消し、単語一つのタイトルがアラームウィンドウ上で省略記号を付けて表示されたバグを修正した。(BusyMac からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、Setapp からも利用可、68.2 MB、 リリースノート、macOS 10.15+)

BusyCal 2024.2.5 の使用体験を話し合おう

Little Snitch 6.0.1 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Little Snitch 6.0.1

Objective Development が Little Snitch 6.0.1 をリリースした。最近のメジャーアップグレードに続く、メンテナンス・アップデートだ。このネットワークトラフィック管理ユーティリティは今回、個々のプロファイルで DNS 暗号化を完全にオフにできるようにし、すべての DNS/name-ベースのルールで IP アドレスベースのブロックリストを優先させるようにし、ローカルネットワークのトラフィックを状況メニューのトラフィック率とグラフに含めるか否かを選べるオプションを追加し、検索フィールドを使ったルールの検索を改良し、ブロックリストの更新に失敗した際のフィードバックを拡張し、ブロックリスト内の国際化されたドメイン名に対するテキスト検索を修正し、Network Monitor のインスペクタで要約統計情報が更新されなくなった問題を解決し、欠落していたドイツ語ローカライズを追加した。(新規購入 $59、旧ライセンスからのアップグレード $39、無料アップデート、36.1 MB、リリースノート、macOS 14+)

Little Snitch 6.0.1 の使用体験を話し合おう

Zoom Workplace 6.1 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Zoom Workplace 6.1

Zoom がビデオ会議アプリ Zoom Workplace をバージョン 6.1 にアップデートして、改良とバグ修正を加えた。今回のリリースではミーティング内のリアクションにキーボードショートカット対応を追加してアクセスしやすいようにし (例えば Command-Option-4 で拍手する手が表示される)、録音オプションのラベル名を Local Recordings から Computer Recordings に変更し、メッセージの編集機能を改良して画像・ファイル・テキストを追加できるようにし、ミーティング中の複数個のコンテンツ項目やタイプの共有を拡張し、ビデオの見栄えや背景をより手軽に調整できるようにし、カスタム絵文字の並べ替えを改良し、一部のユーザーが連絡先を編集・削除できなくなっていた問題を解消し、共有された PowerPoint スライドで正しくない色が表示されたバグを修正した。(無料、123.3 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Zoom Workplace 6.1 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple、Apple Pay Later を廃止

9to5Mac の記事で、Chance Miller がこう書いている

Apple が、Apple Pay Later をもう提供しないと発表した。これは米国で昨年スタートした“今買って、支払いは後 (Buy Now, Pay Later)”のサービスだ。Apple によればこの変更は本日から発効されるという。既に開始済みの Apple Pay Later ローンを持っている人は Wallet アプリで管理できる。

私はなくなってせいせいしたと思う。分割ローンは今後もデビットカードやクレジットカードで利用できるけれども、無責任に出費するために使われがちな機能を Apple が宣伝するというのはやはり有名ブランドに似合わない気がする。(2023 年 3 月 29 日の記事“Apple、Apple Pay Later を発表”参照。)

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