家族の訪問が続いたこともあって、ここ TidBITS 本部ではとても忙しい一週間が過ぎたのだったが、Apple が macOS 14.6 Sonoma およびその他のオペレーティングシステムのアップデートをリリースしたことについて記事を書くだけの時間を見つけることはできた。それから Michael Cohen が Apple の Q3 2024 業績報告について寄稿記事を書いて、その中で Apple が Q3 としては過去最高となる売上高 $85.8 billion と $21.45 billion の純利益を報告したことを記した。ただ、私たちは Apple 専門家だが財務の専門家ではないので、この種のビジネス記事を書くことについてあまり自信を持てないでいる。そこで、今週は TidBITS 読者にアンケートをお願いして、このような四半期ごとの Apple 業績記事に皆さんが価値を見出せているか否かをお尋ねすることにした。今週注目すべき Mac アプリのリリースは BusyCal 2024.3.3、DEVONthink 3.9.7、Little Snitch 6.0.4、Safari 17.6、それに TextExpander 7.8 だ。
Apple が macOS 14/iOS 17 世代のオペレーティングシステムにおける最後の X.Y リリースと思われるものをリリースした。そのうち Apple がリリースノートの中で機能の変更点を明記しているのは macOS のみであって、それ以外についてはただ単に「重要なバグ修正とセキュリティアップデート」が含まれるとしか述べていない。また、Apple は古いバージョンの macOS、iOS、および iPadOS もアップデートして、数多くのセキュリティ脆弱性に対処した。一般的なアドバイスとしてこれらのアップデートはすべて早いうちにインストールすべきだとお勧めしたいが、それらの脆弱性は1つだけの例外を除けば実際に悪用されているものではないようなので、時間の余裕のあるときにアップデートすれば十分だろう。その例外は macOS 12.7.6 Monterey であって、これは以前に macOS 14 Sonoma と macOS 13 Ventura で修正済みのゼロデイ脆弱性を修正している。
macOS 14.6 Sonoma に最も胸躍らせているのは 14 インチ M3 MacBook Pro のオーナーかもしれない。なぜなら今回のアップデートで、ラップトップのリッドを閉じた状態で最大 2 台の外部ディスプレイを使う機能への対応が追加されたからだ。従来、この M3 モデルの 14 インチ MacBook Pro では内蔵ディスプレイに加えて 1 台の外部ディスプレイを接続することしかできなかった。ただしこの記事の執筆時点で Apple はまだその技術仕様ページを更新していない。(M3 Pro モデルの 14 インチ MacBook Pro は 2 台の外部ディスプレイに対応していてそのためにリッドを閉じる必要もなく、M3 Max モデルは最大 4 台の外部ディスプレイに対応している。)
しかしながら、M3 MacBook Air はリッドを閉じた状態で 2 台の外部ディスプレイに対応するという拡張機能を既に導入済みだ。M3 チップはそれを搭載するあらゆる Mac で同じなので、Apple が MacBook Air のデュアルディスプレイ機能を 14 インチ M3 MacBook Pro に拡張できたことも頷ける。
また、Howard Oakley は macOS 14.6 のリリース候補版に次のような記述があったと報告している:
Apple silicon 搭載 Mac 上で iPhone や iOS のアプリを走らせる際のアプリのクラッシュを修正するとともに、使うべき状況でハードウェアビデオデコーダーが使われない結果となった複雑なバグも修正している。
それ以外の macOS 14.6 の変更点に興味を持つはずのもう一つのグループは、企業内の管理者たちだ。エンタープライズ向けの変更点としては次のようなものがある:
- モバイルユーザーが初めてログインした際にログインキーチェーンが正しく作成される。
- 特定のソフトウェアアップデートバージョンを指定する機能が、利用可能な最新のバージョンでないものについても正しく働く。
- MDM でキーを表示しないと設定された状態でアップデートしても FileVault 復旧キーが表示されてしまうことがなくなる。
- System Settings の Remote Management 用アクセスリストにユーザーを正しく追加できる。
- allowAssistant 制限が Siri アプリを開かないようにする機能が正しく動作する。
セキュリティアップデート
macOS 14.6 における上記の変更点を別にすれば、Apple はそれ以外のオペレーティングシステムでのバグ修正について何も詳細を語っていない。ただしセキュリティアップデートについては、いつも通りに修正点のリストを発表している。
討論に参加
今週の記事“Apple Q3 2024 の記録的な売上げ Tim Cook を驚かす”(2024 年 8 月 2 日) でお分かりの通り、Michael Cohen と私はいつも変わらず Apple の最新の四半期業績報告を記事にしているのだが、記事の内容は大体において「Apple が膨大な儲けを荒稼ぎした! iPhone が下がった! Services が上がった!」という感じで、何となく同じことの繰り返しのような気がしてならない。
そこで皆さんにお尋ねしたいのがこの質問だ: 皆さんは、四半期ごとのこの業績報告の紹介記事に興味がおありだろうか? TidBITS が Apple のビジネスを記事にすることは滅多にないけれども、私はこれらの業績報告まとめを一種の得点表と見ていて、それを通じてこの会社が一つの製品シリーズあるいはビジネス部門に向けている注目度が増しつつあるのか減りつつあるのかを見分ける手掛かりとなればと思っているのだ。どうぞ、この記事へのコメントとしてアンケートに投票して頂きたいし、この情報をより意味あるものとするため、あるいは読んで面白いものとするためのアイデアが何かあれば、ぜひコメントして頂きたい。
私の観点からはもう何年も前に Josh Centers が初めたチャートを維持しつつ出版するのが楽しいのだが、今ではそういうことを Jason Snell がもっと幅広く調べて Six Colors サイトで記事にしている。Michael も私も財務について知識が豊富にある訳ではないので、たとえ純現金収支の利鞘とか製品構成が粗利益に及ぼす影響とかに TidBITS 読者が興味を持っていると思ったとしても、私たちにそのようなことについて語る資格はない。
私がこれらの記事を書くことで一番楽しいと思うのは、Apple の財務上の成功や困難について Tim Cook と Luca Maestri が語る言葉を聞いている時だ。悪い結果を取り繕ったり、明らかな難点を即座に肯定的に言い換えたりするために Cook が使う修辞的な歪曲の言葉使いが、いつも私にスリルを与えてくれる。示唆に富むと同時にますます至る所で使われつつある「外国為替の逆風」という語句で、私には Cook が中国人民元の強風の中へと帆船の進路を舵取りして行く姿が目に浮かぶが、それと共に次のような彼の語り口が快く響く:
iPad では3月期の収益が $5.6 billion となり、前年同期比で 17% 下がりましたが、これは前会計年度の M2 iPad Pro と第 10 世代 iPad の勢いによる困難な比較の結果です。
Wearables、Home、Accessories の収益は $8.1 billion で、前年同期比で 2% 下がりましたが、これは3月期から引き続く加速を示しています。
Cook が 2024 年 5 月の結果を 2022 年の M2 iPad Pro 登場の「勢い」による「困難な比較」と組み合わせたこと、また Wearables 部門の下降を「引き続く加速」という表現で前四半期より悪くはないと示唆したことには、きっと皆さんもさすがだとお思いになるだろう。
また、アナリストたちが躍起になって Cook と Maestri に何かを語らせよう、準備された講演や過去の発表にないことなら何でもいいから! 引き出そうとするところを聞くのも好きだ。非常に稀な例外を除いて、Cook はあらゆる質問に対して今語ったばかりのことの言い直しを述べたり、発表したこと以上を公表できないとか、まだ語るには時期尚早だとか、Apple としては開発者たちがどんな素晴らしいアイデアを思い付くか楽しみにしているとかいう定型文を一つ二つ述べたりすることで、うまくかわしている。それは質問に答えないための達人のやり方であり、質問したアナリストはいつもそれに感謝を述べざるを得ない。
でも、もしも読者の皆さんが結局はこれらの記事を読まないとおっしゃるのならば、私としても自分の楽しみのためだけに書き続ける訳にはいかない。なので、どうぞこの記事へのコメントで投票をして頂きたい。また、どうぞご自由にコメントでご意見の色付けをして頂きたい。
討論に参加
Q3 2024 の業績報告で、Apple は四半期利益 $21.45 billion, 売上げ $85.8 billion を発表した。Apple CEO Tim Cook によれは、売上げは "June 四半期としては新記録で、我々の予想よりも良かった" と言う。同社の売上げは前年同期と比べて 5% 上昇した ("Apple Q3 2023 業績、為替相場の影響で 1% 減収" 4 August 2023 参照)。
要約:Apple の Services と iPad 部門は昨年比で大幅に伸び、Services は 14%そして iPad は 24% 上昇した。Mac もまた 2% ほど伸びたが、iPhone は 1% そして Wearables は 2% 下落した。国際的には、ほぼ全ての地域部門でまずまずの増収を記録したが、例外は Greater China で、昨年より幾分低い業績となった。
iPhone は、前年同期比で減収となったが、Apple の売上げの部門別構成で支配的地位を維持し、Services はこれ迄で一番大きい割合を占め、そして Mac, iPad,そして Wearables が残りを埋めている。
iPhone
iPhone の売上げは 1% 減少したが、Apple は通貨の問題がなければ上昇していただろうとわざわざ言及した。それはおそらく主に Greater China での話で、前年比の減少の半分は為替レートに起因していた。何れにしても、iPhone 売上げは、United Kingdom, Spain, Poland, Mexico, Indonesia, そして Philippines で Q3記録となった。より重要なのは、iPhone の設置ベースが過去最高を記録したことで、それが Services の成長を押し上げた。
Mac
前年比 2% の Mac 販売の増加は、新しい M3 MacBook Air の販売によって牽引された ("新型 M3 MacBook Air モデルは2台のディスプレイを駆動出来る" 4 March 2024 参照)。Mac 販売は、Latin America, India, そして South Asia で Q3 記録を達成した。Apple はまた MacBook Air 顧客の半分はこのプラットフォームに対する新規顧客であると言った。そのお陰で、実際の設置ベースは大きくなり、そして Services は成長を加速している。
iPad
2023 年に Apple は新モデルを何もリリース出来なかったため、前四半期の iPadの販売はどん底を予告しているように見えたが、同じ事が今四半期には当て嵌まらなかった。このタブレットの売上は、M4-based iPad Pro に加えて、11-inch と13-inch iPad Air のリリースにより、24% 近く増加した ("Apple、新型 iPad Air, iPad Pro, Apple Pencil Pro, Magic Keyboard を発表" 7 May 2024 参照)。Macの場合と同様、iPad の購入者の半分は新規顧客である。
Wearables
Wearables 部門の売上げは、この四半期に約 2% 減少した。Apple は、この下落を"前年の AirPods Pro 第二世代、Watch SE、そして最初の Watch Ultra の発売と比べるのは難しい" に帰した。これらの製品全てが September 2022 に登場したことを考えると、それがどの様に Q3 2024 の業績に引き続き影響するのかは良く分からない ("第2世代 AirPods Pro が H2 チップ、タッチコントロール、機能充実のケースを追加" 7 September 2022, そして "Apple Watch Series 8 と Apple Watch Ultra、健康、安全、接続性機能を拡大" 7 September 2022 参照)。何れにしろ、このわずかな減少は高い顧客満足度評価によって補われ、そしてこの部門での新製品の欠如はあっても、Apple Watch の販売の3分の2近くは新規購入者へのものである。
驚くことではないが、Apple は Vision Pro に関して定量的なことは何も言わなかったが、Tim Cook はそれに対してより多くの国で利用可能であると賛辞を寄せた。そこには、Australia, Canada, China mainland, France, Germany, Hong Kong, Japan, Singapore, そして United Kingdom が含まれる。それは Vision Proの売上げを後押しするであろうが、Apple の財務報告で目立つには余りにも希少すぎる。
Services
Services 部門は引き続き Apple の生計を支え、前年比 14% の成長を誇示し、有料アカウントと有料定期購読のどちらもが2桁の成長を示している。Apple は、有料アカウントは過去4年間で倍増し、Services 部門は、広告、クラウド、決済サービスで史上最高を記録したと述べた。同社は "クラウド" の意味を説明しなかった;ひょっとすると iCloud+?
地域別
Apple の地域別売上げの増加はとても劇的とは言えないが、Greater China を例外として、Apple はその全ての国際市場で好調である。Greater China では、売上げは 6.5% 減少したが、Cook は、"恒常通貨ベースで見ると、我々の減少は 3%に満たない。従って、前年比の減収の 50% 以上は通貨関連である。それは今会計年度上半期からの改善だ" と言った。その後、Cook は Apple の中国での販売に関する一連の肯定的な統計をよどみなく読み上げ、"私たちは中国での長期的な可能性に自信を持ち続けている。本の全ての章がどの様に展開するのか私には分からないが、我々は長期的にはとても自信がある" と締めくくった。
Apple の次の会計四半期には、新しい iPhone のリリースと、待望の Apple Intelligence 機能の最初の展開が反映されるであろうが、それには Mac と iPad上では M シリーズチップ、そして iPhone 上では A17 Pro が必要となる。多くのアナリストが Tim Cook に Apple Intelligence に対する需要がどのようにアップグレードを促し、Apple の収益に影響を与えるかを予測させようとしたが、Cook はいかなる推測にも引き込まれることを断固として拒否した。何れにしても、Apple の 2024 オペレーティングシステムの看板機能が古いハードウェア上で利用できないと言うことは、アップグレードを奨励することは明らかであろう。しかし、Apple Intelligence の機能は来年中に時間をかけてゆっくりと展開されるため、これらのアップグレードは必ずしもすぐに行われるとは限らないであろう。それ故に、Apple は次の四半期の業績は今四半期の数字とよく似たものになると予想している。
要するに、Apple はその方針を堅持し、長期展望を持って経営している:投資資金を預ける安全な場所を探している人達を惹きつけるには悪い戦略ではない。
さて、皆さんが Apple の最新の業績報告の要約をお読みになった所で、質問がある:これらの四半期業績報告の要約は、私たちがそれらを続けるべきほど十分に興味深いと思われますか? "LittleBITS: TidBITS は Apple 業績報告の記事を続けるべきか?" (2 August 2024) で、Adam は我々がこの質問をする理由を説明し、皆さんの意見を投じることの出来るアンケートへのリンクを示している。
討論に参加