TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#288/31-Jul-95

新製品とバージョンップのお知らせ! Adobe Systems社は、PageMaker 6.0 を発表し、Peter Lewis氏はポピュラーになったFTPクラインアントソフトで あるAnarchieをレビューし、CE Software社は教育向けに新たな価格を発表、 YahooのWebカタログが装いも新たに登場、そしてClaris社はGuy Kawasaki氏 のEmailerを出荷した。さらにHyperCardの新たなヴィールスの情報や、Macを メールオーダーで購入した場合に覚えておいてほしいこと、そして、Matt Neuburg氏によるソフトウェアメーカーに対しユーザーは何を期待すべきかに ついてを考察したものをお届けします。

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目次:


MailBITS/31-Jul-95

(翻訳:山浦 礼子 <raeko@aol.com>)

Yahoo、装いも新たに -- 先週はCNNまでもが取り上げたニュースのよう に、Yahoo! 社が − World Wide Web上でもっとも広く活用されていると評 されるカタログのメインテナンスを行なっている会社 − 1時間おきにロイ ター通信からのニュースサービスを更新するなど、1995年7月31日に新らしい インターフェイスを見せる。Yahooの新たなインテーフェイスでは小さいグラ フィカルな素材や、最初のページですぐに検索できるようにフィールドボッ クスを備えたものになっている。そして、主なカテゴリーの数も19から14へ と整理され、Netscap 1.1のユーザーであれば主な記事の見出しを2段に表示 することもできる。(もちろん、テキストバージョンも依然として入手可能 だ。)Yahoo社は、Webユーザーに対して有料化せずに済むようにと法人のス ポンサーを探している −この会社はもともと2人の努力で始まったが、現在 は20数人の会社へと成長している。Yahoo社の新しいインターフェイスは Yahoo社のいつものURLで今日から可能となる、しかしそれはうしろではすで に動作しているのでβサイトをチェックしてみよう。[GD]

http://www.yahoo.com/
http://beta.yahoo.com/

PageMaker 6.0発表される -- Adobe Systems社は、長いことアップデート が待ち望まれていた、最近Aldus社の買収とともに手に入れた広く一般に使用 されている出版向けのアプリケーションであるPageMaker 6.0を発表した。直 接的な競合プログラムであるQuarkXPressに対抗するべくいくつかの新しい機 能に加えて、PageMaker 6.0はAcrobat PDF形式(ストーリーをスマートなハ イパーリンクで結んでいる)や、Web狂達のハートをときめかせるような HTMLをエクスポートできる機能を備えている。けれどお金を貯めるまえに、 いくつかの付加された機能についても考慮すべきだろう。PageMakerはOLEを 必要とし、インストールに20-30MBの空き容量を必要とし、8-10MBのRAMを占 有する、そして68030を搭載したMacで動作し、できるならば68040あるいは Power Macintoshがほしいところだ。PageMakerは、希望小売り価格895ドルで 間もなく入手可能となる、登録ユーザーは149ドルでバージョンアップ可能 だ。CD-ROM版のプログラムを用意されている、そしてそれにはAdobe Type On Callも同梱される。Adobe Systems社 -- 800/422-3623 415/961-4400 [GD]

Anarchie 1.6、リリースされる -- Peter Lewis氏 <peter@stairways.com.au> は、ポピュラーなインターネットのFTPクライアン トであるAnarchieのバージョン1.6をリリースした。Anarchieのこのバージョ ンの新しい点というのは、オプションでのSimple Internet Version Control(SIVC)を採用したことに加えて、Open Transportとの互換性やいく つかのインターフェイスの拡張が挙げられる(transfer progressウィンドウ のtransfer indicatorフィールドやAboutボックスのどこかをクリックすると 何らかの反応がある)。テキサス大学のChris Johnson氏 <chrisj@mail.utexas.edu> が率先して採用したSIVCを用いることで、Peter氏 はAnarchieがどれほど多くの人に利用されているかという大ざっぱなアイ ディアを得ることができ、ユーザーは新しいバージョンができたという情報 を得てAnarchieバージョンアップすることが可能である。(Chris氏は、 MacTCP Monitorプログラムにもときどきこの技術を用いている。)参加は自 発的なものでありプライバシーを侵すものではない。もしもあなたがそれに 対してパラノイア(偏執狂)的になるのであれば、Anarchieのプリファレン スのSIVCバージョンのチェックをオフにすればよい。Anarchieのこのバー ジョンではいくつかのバグもフィックスされ、標準となっていないFTPのポー トもサポートしている。Anarchieはシェアウェアで10ドル、600Kと少しの大 きさである。

ftp://mirrors.aol.com/pub/info-mac/comm/tcp/anarchie-16.hqx
http://gargravarr.cc.utexas.edu/mactcp-mon/main.html

FWBについて訂正 -- 先週の TidBITS-287 の4倍速CD-ROMに関する記事で 記載したFWB社の連絡先が部分的に間違っていた。FWBのメインの電話番号は 415/325-4392で、faxは415/883-4655である。電子メールアドレスは <fwb.inc@eworld.com> のままである。


新ウイルス、ハイパーカード・スタックを標的に

by Mark Anbinder, News Editor <mha@tidbits.com>
(翻訳:遠藤 美加<HGD01374@niftyserve.or.jp>

ウイルス除去ユーティリティーの開発者たちは今日、最近ハイパーカードの スタックを汚染するウイルスが発見されたことを発表した。この"HC-9507"ウ イルスに汚染されたスタックを実行すると、ハイパーカードのホームスタッ クを汚染し、さらに他の実行中のスタックや無作為に選んだスタートアップ ディスク上のスタックにも感染してしまうというものである。ハイパーカー ドのスタックを実行している曜日や時間によって、このウイルスは異常なシ ステム行為をもたらす。例えば、スクリーンが明るくなったり暗くなった り、"pickle" という語がテキストに挿入されたり、システムが突然終了して しまったりフリーズしたりするのだ。

Symantec 社と Datawatch 社は、同社のツールであるSAMとVirexのアップ デートをそれぞれ公開した。このアップデートはスタックのHC-9507の感染を 発見し、取り除いてくれる。入手方法については、説明書を参照のこと。 Central Point Anti-VirusやDisinfectantそしてVirusDetectiveはハイパー カードのウイルスへの対応を試みてはおらず、アップデートも公開されてい ない。ハイパーカードを使用していないMacユーザーはこのウイルスを心配す る必要はない。このウイルスを感染させるのは汚染されているハイパーカー ドのスタックだけなのである。

情報:Gene Spafford氏より


CE 社、学校へ参入

by Mark Anbinder, News Editor <mha@tidbits.com>
(翻訳:遠藤 美加<HGD01374@niftyserve.or.jp>)

1970年代後半から1980年代にかけて、Apple 社は、公立学校や大学にコン ピュータを寄贈したり、またかなりの割引価格で多くの製品を入手できるよ うにしたことにより、教育市場で優位を占めてきた。学校が必要とするすぐ れたソフトウェアの多くは最初はApple II 、そして引き続きMacintoshで利 用できたため、Apple 社は教育機関をつなぎとめたのである。そんなApple 社の成功の歴史を見てきた CE Software 社は、北アメリカのすべての生徒や 教師に QuickMail を使用させようという計画をたった今明らかにした。

CE社の"Educate America" プログラムは、この8月に開始され(8月に CE 社は QuickMail 3.5の出荷を予定している)、同社の LAN ベースの電子メー ルソフトを学校向に、教職員には10ドル、生徒には3ドルで提供しようという ものである(10組セットから始まる様々なライセンス・サイズもある)。こ の価格は、現在の教育用パッケージの約35ドル、またその倍近い値段で販売 されている通常のパッケージと比較すると、かなり魅力的である。

同社が言うには、教師用のライセンス・パッケージには、サーバ および ア ドミニストレーション ソフトウェア、Macintosh 用および DOS 用のネット ワーク クライアント ソフトウェア、WINDOWS用の「ファイルベース」のクラ イアントソフトウェア(中継用ファイルサーバが必要)、同社のQM Formsカ スタムフォームエディタ、モデムによるメールチェックのためのQM Remoteソ フトウェアが付属している。生徒用パッケージには、クライアント ソフト ウェアはあるが、サーバやメンテナンス用のソフトウェアは付属していな い。(購入者は、少なくとも教師用パッケージを1つ、あるいは既存の QuickMail のシステムを必要とする。)

QuickMail 3.5 は、Macintoshの「ドラッグアンドドロップ」機能、メッセー ジ内のスタイル付きテキスト、America Onlineへの新しいゲートウェイなど の提供が期待される。

Educate America プログラムはインターネットの電子メールサービス、 World Wide Webのブラウズ、そしてGlobal Village Communication社の GlobalCenterサービス経由で他のインターネット機能を提供する。導入時の 設定費用は300ドル、毎月の固定使用料金が325ドルである。このネットワー クのユーザーは誰でも制限無く、Web ブラウズや電子メールへのアクセスが できる。Global Village社(UUNET との提供が最近発表された)のインター ネットサービスは、同社のOneWorldインターネット用ハードウェアを使用す れば、28.8 Kbps のモデムかISDN による自動接続を提供する。

QuickMailは、必ずしもインターネット電子メールアクセスへの最高の答えで あるとは言えない。しかし、ユーザーが数十人、数百人のローカルネット ワークにとっては(特にそのほとんどがMacユーザーの場合は)最適なもので ある。GlobalCenterインターネットサービスを利用すれば、簡単な方法で ネットワーク全体に接続することができる。そして、将来は接続がもっと高 くなるであろうことを考慮に入れるなら、学校にとって、これがよいスター ト地点だということが証明されるかもしれない。

CE Software -- 800/523-7638 -- 515/221-1801 -- <sales@cesoft.com>
Global Village Communication -- 800/736-4821 -- 408/523-1000 <sales@globalvillage.com>

情報:CE Software propaganda より


購買者よご用心

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:水木 潔 HGH03125@niftyserve.or.jp>

Macの商業誌の後ろに広告を出している様なサードパーティのメールオーダー 販売業者を通してのMacintoshコンピューターの保証サービスに関する報告が 最近ネットワーク上引いてはTidBITSに氾濫してきています。 何人かの購買 者は欠陥商品に当然あるべき保証サービスを得るのに困難を体験してきてお り、時間とお金の損失は言わずもがな、非常な欲求不満に見舞われていま す。しかしながら、現時点で特別の忠告ができる程には情報が充分ではあり ませんが、サードパーティの販売業者からマシンを購入する場合に注意すべ き一般的な点が幾つかあります:

連絡を取った時には、Apple社は、報告された問題に対する公式の返答を断り ましたが、一般的には保証責務を果たすべく努力すると述べていました(私 の個人的経験から、これは本当です)。 また、販売業者は、一般的に不良 マシンを売る商売をしているのではなくて、彼らはできる限り廉価にマシン を売る商売をしていると言う事を述べておかなければならないでしょう。  時々販売業者は製造中止された製品や海外向けに本来予定していた製品を入 手する事によって、より低い価格の広告を出せます:また時には、彼らは大 幅のディスカウントで、しかし保証無しの中古マシンを提供できるかも知れ ません。

常に、正確に貴方が何を購入しようとしているのか、購入における販売業者 の保証及び返却方針は正確にどんなものか、そして問題があった時の貴方の 選択は正確にどんなものかを確実に理解して下さい。 メールオーダーでマ シンを買う事に弱気になる必要はありませんし、そこには幾つか実のある取 引があるかも知れません。 旨すぎると思われる話には、常に注意が必要で す。


ソフトウェアメーカーに振り回されるユーザー ― 悪意ある怠慢

by Matt Neuburg <clas005@cantva.canterbury.ac.nz>
(翻訳:小山 純一 <vb4j-oym@asahi-net.or.jp>)

アメリカ国内のユーザーがWord 6.0.1アップデートを受け取ってから10週間 以上も遅れて、ニュージーランドのユーザーも、ようやくそれを受け取るこ とができました。ニュージーランドからわざわざMicrosoftに催促の電話を掛 けたユーザーは、Microsoft NZとの間で引き渡し処理を行わなければならな かった上に、輸送費を節約するために ― 航空便なんてとんでもない! ― 時間のかかる船便に切り替えたのだ、という言い訳を聞かされたものでし た。面白いことに、Microsoft NZは、この理不尽な遅延を何とかして償おう とするかのように、オーバーナイトの至急便でそれをユーザーの手元に届け たのです。

例によってうんざりするほど長いインストール作業の後、私は、勇敢にも、 しかし多少の不安を抱きながら、再びSuper Boomerangを有効にし、Wordを起 動しました。その結果、クラッシュは発生しませんでした。どうやら、私が 最も不満に思っていた問題は解決されたようです。それからしばらくの間、 私は思い付くままにタイピングを続け、本アップデートにおけるその他の修 正箇所としてMicrosoftが指摘するに違いない幾つかの機能をざっと確認しま した:

等々。Microsoftは、これらの修正に対して私が感謝すべきだと、暗にほのめ かしているようです。何故、私が感謝しなければならないのでしょうか?  これらの修正の対象となった問題は、どれをとってみても、そもそも実に初 歩的なミスであったように私には思われます。そして、Microsoftは、それ以 外に、何一つ救ってくれてはいないのです。おそらく、Microsoftは今回の アップデートを優れたユーザーサポートの一例であると考えているのでしょ う。しかし、私には、Microsoftがいい加減な仕事をした結果、ユーザーに ベータテスターの役割を押し付けているものとしか思えません。

誤解しないでいただきたいのですが、私は決してMicrosoftバッシャーではあ りません。現に、私は、その全体的なデザインと豊富な機能に関して、Word 6.0を賞賛する少数派の立場に立って、TidBITS向けの記事を執筆しようと試 みたほどです。しかしながら、アップデート版をリリースすることは、それ を最初にきちんと出すのと同じくらい立派なことだという態度には、どうし ても賛同することはできません。そして、このような態度は、商業的なソフ トウェアデべロッパーの多くに共通して見られる、ある種のいい加減さの現 れであるように思われます。発売を急ぐ余り、ユーザーの存在は見失われま す。その一方で、デべロッパーは市場における優位を獲得します。つまり、 市場における競争相手に打ち勝つために、敢えてバグの存在するソフトウェ アをリリースすることによって、デべロッパーは都合のよい時にそれを修正 できるだけの資金を調達するのです。その結果、彼らは時間的余裕をもつこ とになります。なぜなら、いったんバグの存在するソフトウェアを購入して しまったユーザーは、がんじがらめになり、それが修正されるのを待つしか なくなるからです。

なるほど、(すべてのプログラマーが口を揃えて言うように)バグのないソ フトウェアは存在しませんし、宣伝されているもののいつまでたっても発売 されないソフトウェアは「絵に描いた餅」でしかありません。しかし、Word 6.0.1アップデートで修正されたとされるミスの多くは、全くの見かけ倒し に過ぎませんでした。これこそ、通常のデベロップメントサイクルから大き く逸脱した態度であると、私が考える根拠なのです。さらに忘れていただき たくないことは、アップグレードを行なったユーザーは、この見かけ倒しの 商品を手に入れるために少なからぬ金額を支払ったということです。

私にとってもう一つの愛憎半ばするワードプロセッサであるNisus Writerの メーカーの場合も、事情はそれほど異なるものではありません。Nisusメーリ ングリストの購読者は、おそらくこのプログラムに関して最も思慮深く、か つ熱心なユーザーであると考えられますが、実際に、彼らは自分たちが望む 改良点をとりまとめてNisus社に提案しました。しかしながら、Nisus社内の 会議において、その提案内容は大多数のユーザーが望んでいる機能ではない とみなされて却下されたと、会社側のある人物(営業サイドおよび開発サイ ドの人間ではなく、テクニカルサポートチームのスタッフ)から知らされた のです。

さらに、同じ会社の別の人物は、最近、私宛の私信で、会社に対する私の批 判的言辞が他の読者の迷惑になるので、メーリングリストへの寄稿を止めて 欲しいと言って来ました。それにしては、誰もそのことを直接私に言って来 ないのは不思議です。また、TidBITS-116、TidBITS-117、およびTidBITS- 118掲載の、Adamと協同で私が執筆したNisusに関するレビュー記事 ― これ はNisus社が(私には無断で)喜々としてソフトウェアのデモ版と一緒に配布 したものです ― は、過去において、そして現在もなお、多くの改宗者を生 み出していますが、これについてはどうなのでしょうか。どうやら、自他と もに認める私の熱狂的な論調が、あからさまに言われると胸にこたえるよう な事実にまで及んでしまうと、私は破門されてしまうらしいのです。

それでは、あからさまに言われると胸にこたえるような事実とは、何なので しょうか? それは主にニューバージョンのNisus Writer 4.0のことです。 ユーザーが(私に言わせれば)法外な金額を支払ったこのソフトウェアは、 旧バージョン(Nisus 3.47)に比べて明らかに遅く、しかもかなり大きいの です。確かに、数度にわたるメンテナンス・アップグレードを経て、それは 徐々に良くなってきてはいますが、それらが行われたのも、会社側が見落と した(もしくは、故意に無視した)バグや障害を4.0に発見した、私のよう な、顧客からのしつこい苦情のおかげなのです。

敢えて申し上げてしまいましょう。大金を支払わせた上で、いやおうなしに ― Nisus社のため、Microsoft社のため、あるいは別のどこかのソフトウェ ア会社のために ― ベータテスターを務めさせるのは許し難い行為であると 私は考えます。そして、我々は駄目なものには駄目と言う権利に対してもお 金を支払っているのです。もちろん、怒りにまかせて罵詈雑言を吐くような ことは慎むべきです。しかし、もしデベロッパーとユーザーとの間の関係が ぎくしゃくしたものになってしまった場合には、ユーザの叫びのみがそれに 対して何かをなし得るはずです。

かつて、そう昔のことではありませんが、あなたのコンピュータの中で起き ることがすべて奇跡のように思えた日々があったはずです。感嘆の余り、あ なたは口をぽかんと開け、チップと配線からなる無味乾燥な箱をめくるめく ばかりの魔法に変えた献身的な芸術家に対して、感謝と尊敬の念を抱いたこ とでしょう。私はそのような日々が完全に失われたと言っているのではあり ません。ただ、その魔法のような要素が、現実という無視できない要素に よってほとんど覆い隠されようとしているのです。単純な事実は、コン ピュータ・プログラムは魔法ではなく、単なる製作物、つまり一定の機能上 の目的をもった人工的産物に過ぎないということです。もしあなたがコン ピュータ・プログラムに対して金銭を支払うなら、それらもまた、家、自動 車、シャツ、ライターなどのような、他のあらゆる商業的製作物と同じよう に考察され、批評される可能性があります(そして、そうされるべきで す)。もしそれが見かけ倒しだったり、あなたが求める機能を果たしてくれ ないなら、お金を支払ったのはあなたなのですから、あなたは絶対に我慢す べきではありません。

私たちは今のところ我慢を強いられています。私は、プログラムの中にバグ や欠陥を発見した人々からの電子メールをしばしば受け取ります。それに対 して、私はこう言います:すごい発見だ。ところで、この問題についてデベ ロッパーにはもう知らせたかい? その答えは、必ずと言っていいほど、 「いいえ」か「そんなことをしようなんて考えもしなかった」です。私自 身、数百ドルを支払って手に入れたソフトウェアが、バグだらけで使い物に ならないことを発見したにもかかわらず、返品もせず、苦情を言うこともし なかったという経験が一度ならずあります。何故なのでしょう?

ユーザーにすれば、あたかもデベロッパーが一緒にいて、コンピュータの中 から優しく見守ってくれているような気分になり、デベロッパー自身がミス に気づいて、修正してくれることを期待してしまう傾向があることにその一 因があると考えられます。このシナリオは、たとえ最良の場合を想定したと しても非現実的です。Dave WinerがTidBITS-280で指摘しているように、企業 は良いソフトウェアを作り出そうとしているという考え方には無理がありま す。もう一つの問題は、ソフトウェアの一部分に関わる問題または欠陥を ― 客観的かつ効果的に ― 説明することは驚くほど難しいということです。さ らに、大部分のソフトウェア開発会社は、外部からの明確なコミュニケー ション・チャンネルを備えていないという問題もあります。電話や電子メー ルに注意を向けてくれる人間は、プログラム自体に対する責任を負っていな いのが普通であり、責任を負うべき人間とあなたとの間でバッファの役割を 果たすか、たとえあなたの意見を積極的に擁護しようと試みたとしても、単 なる少数意見として企業内暴風の中でかき消されてしまうはずです。

私自身、明確な解決策を持ち合わせているわけではありません。しかし、デ ベロッパーとユーザーの双方が自らの悪い点を認めた上で、それを改善する ことは必要だと思います。デベロッパーは、現在の孤立主義から抜け出し て、彼らのユーザーに対して真の敬意を払うべきです。そして、ユーザーと の協調を積極的に求め、かつ促進すべきです。特に、専門的知識の持ち主の 意見にはデベロッパーにとって有益な情報が含まれていますので、傾聴すべ きです。ユーザーは、ソフトウェアに問題が存在するはずがないとか、たと え問題があったとしてもすぐに修正されるはずだといったむなしい期待を抱 くことは止めるべきです。ただ単に怒ったり、いたずらに手をこまねいてい ることを止めて、デベロッパーとの間で有意義な情報交換を実現するために 努力しようではありませんか。また、ソフトウェアの価格は、より現実的な ものになるべきだと私は考えます。もし、仮にWord 5.1からWord 6.0への アップグレード費用が20ドル程度であったならば、ユーザーの忠誠、感情、 期待、忍耐、および反応などが、どれほど異なっていたかを考えてみてくだ さい。


Claris Emailerが出荷

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@mbox.kyoto-inet.or.jp>)

[Claris社は先週、オール・イン・ワンの電子メール用アプリケーション、 Emailerをリリースしたと発表した。以下の文章はつい最近発行されたAdamの Internet_Starter_Kit_for_Macintosh,_Third_Edition から抜粋・編集し たものである。-Geoff]

EmailerはGuy Kawasaki氏のFog City Software社によって開発された ― こ のプログラムはGuyが熱意をもって開発したものである。なぜなら、業界の他 の大勢の人々と同じように、Guyは色々なオンライン・サービスにたくさんの 電子メールアカウントを持っており、メールを一つずつチェックするには大 変な労力がかかるからである。そこで、GuyやFog City Software社の面々が 電子メールのセンターとすべく設計したのがEmailerなのだ。Emailerは現 在、America Online、eWorld、CompuServe、Radio Mailに接続することがで き、インターネットの電子メールアカウントとやりとりするためのPOPと SMTPを理解することができる。将来はBIXやGEnieなどの他のサービスもサ ポートすることも予想される。

笑顔でサービス -- 私は数か月間Emailerのプレリリース版をテストした が、インターネット、CompuServe、AOL、そしてeWorldとは抜群に良く機能し た。各サービスの設定は個々のサービスごとに項目が設けられており、たと えばインターネットのアカウントを設定する場合には、POPアカウント、 SMTPサーバー、返信用アドレスなどを入力するようになっている。また、 EmailerがInternet Config(急速に普及しているパブリックドメインのユー ティリティで、Internet Configに対応しているインターネット・プログラム が利用できる環境設定情報を格納するソフトウェア)をサポートした最初の 商用プログラムの一つであることも評価したい。

ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/comm/tcp/internet-config-11.hqx

多くの人々は色々なサービスで複数のアカウントを持っているため、 Emailerはその点を考慮して、持っている全てのアカウントを数に関係なく チェックすることができるようになっている。さらに、多くの人々はあちこ ちに移動し、色々な電話番号から色々なサービスに接続しなければならな い。今までCIM、AOLやeWorldといったそれぞれのプログラムを、行き先の電 話番号に設定し直すのは大変な手間だった。Emailerは接続固有の設定(モデ ムの初期化文字列、回線速度、電話番号など)をいくつもLocationリストの サービスごとに保存することができるので、これを一回限りの作業に置き換 えてくれる。

しかし、Emailerの設計でエレガントな点はこれだけではない。複数のサービ スを利用している人の誰もが、各サービスに毎回手動で接続したいとは思わ ないだろう。プログラムが事前に設定した時間に自動的に接続してくれた方 がはるかに便利だし、事実CIM、AOLとeWorldにはこれができる。もちろん Emailerにもできるうえ、しかも他の多くのプログラムよりも柔軟で、接続す る時間と曜日を指定することができる。

送仁先とフッルタ -- まあ、これで複数の場所から設定した時間に複数 のアカウントから複数のサービスに接続するプログラムができたわけだ。 Emailerはあるサービスから他のサービスにメールを送る方法を知っていなけ ればならないが、これにはご想像通り、すべてのサービスに接続することの できるインターネットを利用する。当然、たとえばCompuServeのアカウント にCompuServeを通じてメールを返信することもできるが、もっと安い方法 (例えばインターネット経由)を使おうと思ったら、Emailerの Destinations設定で、メールを受け取ったサービス以外のルートで返信メー ルを出すように設定することができる。CompuServeへの返信をすべてイン ターネット経由で出せるため、私はこの機能が特に気に入っている。さら に、CompuServeの誰かに新しいメールを出そうと思った場合、Emailerはこの 情報を用いて、インターネット経由でCompuServeにメールを送るように正し く送信先アドレスを指定することができる。

Emailerは万全なフィルタリング機能を持っており、送信者やタイトルなど、 いくつかの条件に応じてメッセージを自動的に転送したり、自動的に返信す ることができる。優先順位を設定したり、メッセージをファイルに保存した り、着信するメールの事実上どの部分をも利用してフィルタリングを設定す ることができる。この機能は、商品版のEudora 2.1.3のフィルタリング機能 に似ている部分もあるが、Emailerのフィルタリング機能は ― 主として自動 転送と自動返信の機能により ― 恐らく今まで見た中で最高のものだろう。

メールの読み書き -- サービスに接続した時、Emailerは未読のメールを すべてダウンロードし、そのサービス向けで送信待ちになっているすべての メールを送信する(このように設定してある場合 ― 両方の動作を別々に行 うことも可能)。メールはIn Boxに入り、Emailer Browserウインドウからア クセスすることができるようになり、メッセージをダブルクリックすると開 いて読むことができる。

EmailerのIn Boxでは、削除(EmailerはメッセージをBrowserのFiling Cabinet のDeleted Mailボックスに移動し、後で完全に削除することにな る)、別のメールボックスにファイル、印刷、転送、返信(返信する際、 Emailerは選択したテキストを引用する。この機能は最高だ)など、メッセー ジに対してやりたいと思うようなことはほとんどすべて行うことができる。 アクティブなメールボックスの中で前後のメッセージに移動することもでき るし、お望みの場合には読み終えたメッセージを自動的にFiling Cabinetの Read Mailボックスに移動してくれる。誰にメッセージを送ったかを見たい場 合には、左上にある三角形のところからヘッダが表示され、送信先の隣にあ る「+」印をクリックするとそのアドレスがAddress Bookに追加される。

このAddress Bookだが、これはほとんど芸術作品と言っても良いだろう。複 数のアドレス(同じサービスのアドレスを含め)を簡単に保存することがで き、グループを作ることもでき、文字列に基づいてグループをフィルタリン グすることもできる(この機能はリストが大きくなり過ぎた場合に便利 だ)。ほかにも色々あるのだが、それはお楽しみにとっておくことにしよ う。

Emailerでこのほかに便利な機能としては、保存したメールの検索機能、メー ルをファイリングするための複数のメールボックス、添付書類のサポート、 さらにはCompuServeからほかのサービスへの添付書類のサポート ― これは ほかの方法では不可能だ ― もある。

完璧ではないが、完璧に近い -- 私は2つの理由でEmailerを使わずに商 品版Eudoraを使っている。最初の理由は、Emailerは一つ一つのメッセージを ハードディスク上の別ファイルとして保存するという設計ミスがあるからだ (これに対して、Eudoraは複数のメッセージを一つのメールボックスファイ ルにUnixのメールボックスフォーマットで保存する)。ほとんどのメッセー ジは比較的小さいが、ディスク上のブロックを一個まるまる占領してしまう のだ。たとえば、私がメールを入れているハードディスクのパーティション は700MB程度にフォーマットされている。このことは、Emailerフォーマット の500バイトのメッセージは、ディスクを20K(ディスクが大きいのでこれが 最も少ない使用量となる)使用することになる。私が毎日送ったり受け取っ たり保存したりする何百というメッセージを考慮すると、この無駄は問題で あり、将来のバージョンでは修正されることになるかもしれない。次の理由 は、Emailerのインタフェースは好きで大部分はよくできていると思うもの の、私はEudoraの「ターボ転送」やメッセージを削除したら次のメッセージ が開くなどの気の利いた小技を楽しむようになっているからだ。これは純粋 に個人の好みの問題なのだが。

全体的に、Emailerはほかの電子メールプログラムの良きライバルとなるだろ うし、特に商用サービスで複数のアカウントを使用している人には強くお奨 めする。

Claris社の発表によると、Emailerの希望小売価格は89ドルで、アカデミック 価格は59ドルとなっている。Emailerは68020以上のCPUを備えたMacと、 System 7、1.5MBのRAM、3MBの空きディスクを必要とする。Emailerは小売店 と通販ショップ以外にClarisからも直接販売される。また、Clarisから Emailerのデモ版もオンラインで提供されている。

http://www.claris.com/News/emailer-ships.html
ftp://ftp.claris.com/pub/USA-Macintosh/Trial_Software/ClarisEmailer1.0.hqx

Claris Corporation -- 800/544-8554 -- 408/727-9054 (support) <info@claris.com>


Reviews/31-Jul-95


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