TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#334/24-Jun-96

Adam と Geoff が Internet Starter Kit for Macintosh 第 4 版用の CD-ROM で最終のテストをしているとき、私はこの号を上梓しながらも、彼らが食 事くらいしてほしいと思っている。今週、私達はあなたに Claris 社の Emailer と FileMaker Pro のアップデートに関するニュースをお届けしよ う。同じく Motorola 社の PowerPC 演算ライブラリ LibMoto についての 情報を。また、あなたはPowerPC チップについての記事の第一部の始まり と、Suitcase と MasterJuggler の詳細な比較レビューに出会う。

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目次:


MailBITS/24-Jun-96

(翻訳::矢倉遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>)

次週、TidBITS はお休み! 次週の TidBITS を予定に入れないで頂きた い。というのは配信されないからだ。私達は、トレードショーに参加した り、家族と過ごす時間のために一年の流れの中で 例年 2 から 4 つの号を 休むことにしている。それで、次週は休む予定なのだ。なぜなら 7 月 4 日ということでもあり、その日は米国では独立記念日にあたる。次号は 1996 年 7 月 8 日を予定してほしい。それではまた。[GD]

Emailer 1.1v2 Updater -- Claris Emailer のユーザーは現在バージョ ン 1.1v2 へアップデートできる。Claris 社からは2つのアップデーターが 入手可能となる。まず一つは、いくつかリリースされた Emailer を 1.1v2 にアップデートするものか( 2MB 程度)、あるいは小さいサイズのバー ジョンは 1.1v1 から 1.1v2 へアップデートするというもの( 350k 程 度)。改良点は、Claris 社の新しい OfficeMail をサポートしており、テ キストファイルをメッセージ欄へドラッグアンドドロップできたり、アド レスの取り扱いが改善され、そして添付書類としてフォルダを送ることが 可能となった。[GD]

<http://www.fogcity.com/>
<ftp://ftp.claris.com/pub/USA-Macintosh/Updaters/>

FileMaker Pro 3.0v3 Updater - Claris 社は FileMaker Pro 3.0v1 あ るいは 3.0v2 の米国バージョンを 3.0v3 にアップデートするという最新 のニュースをリリースした。最新ニュースは演算や、ScriptMaker、そして AppleScript にともなう問題を修正し、リレーショナルな受け渡しやファ イル修復機能を改善している。Macintosh 用のアップデータは約1.4MB の サイズである。Claris 社は現在サポートされている Windows 95 や Windows NT 同様、(最終的には) Windows 3.1 をサポートする FileMaker Pro 3.0 バージョンも出荷する予定である。[GD]

<ftp://ftp.claris.com/pub/USA-Macintosh/Updaters/FileMakerPro3.0v3.hqx>
<http://www.claris.com/press/company/archive/fmp-win31.html>

Official Motorola Library -- TidBITS-322 において、私達が Motorola 社の Power PC 版 SDK(Software Development Kit)でコンパイ ルされた PowerPC 数値演算ライブラリのことについて言及した。そのライ ブラリはライセンスに関することと自らのバージョンをリリースするとい う Motorola 社の思惑のために後になって取り下げられた。そして 2、3 週間後のことであるが、Motorola 社は実際に LibMoto をリリースしたの である。それは、Power Mac 上でのいくつかの浮動小数点演算機能のパ フォーマンスを改善している。シェアード・ライブラリは無償で入手でき る(開発者用バージョンも可能)。また、Motorola 社はライブラリをダウ ンロードするためにオンライン登録するようユーザーにお願いしている。 もし、あなたが Power Mac 上で負荷のかかる演算処理やあるいはグラ フィックの作業を必要としないのなら、あなたにとってこのライブラリは たいしたメリットにはならないだろう。しかし、いくらかのユーザーには 改善されたパフォーマンスの価値が確認できる。私は、GeoPort Express Modem といくつかのファックスソフトウエア(意外にも!)とで LibMoto を使用したときの問題について未確認の報告を目にしたのだが、そのため この(あるいはなんらかの)システムソフトウエアをインストールする前 に、ぜひ一般的な予防手段を講じてほしい。[GD]

<http://www.mot.com/SPS/PowerPC/library/fact_sheet/libmoto.html>


フォント・ブティック

by Andrew J. Cohen <sandrew@fdt.net>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

私がフォントを選ぶ時は服を選ぶ時と同じように色々と試してみる ― 全 部をあたり一面に広げて一つずつ試着するのだ。Macintosh は活字の書体 の柔軟性については古くから定評があるが、膨大なフォントのワードロー ブを維持するのは決して簡単ではなかった。フォントを使用可能にするに は、使用中のプログラムを一旦終了して起動しなおさなければならない。 これではまるで帽子をかぶるために着ている服を全部脱がなければならな いようなものだ。

このため、言葉に自由な装いを与えようとする人にとって、Symantec 社の Suitcase と Alsoft 社の MasterJuggler は長い間必須のコンポーネント になっていた。ユーザーは 4 年近く、Fifth Generation Systems 社から Symantec 社へと所有権が移される間、Suitcase の古色蒼然としたイン ターフェイスに苦しめられてきた。この機会をとらえた Alsoft 社は、 Power Mac との鉄壁の互換性を誇る Master Juggler 1.9 へと前進した。 今度は Suitcase 3.0 が一新されたインターフェイスを備え、Alsoft 社は 多少の改良とともに 6 月初めに MasterJuggler Pro 2.0 を出荷した。

いずれのプログラムも今では Power Mac ネイティブの単体のアプリケー ションで、いずれもフォントをシステムの Fonts フォルダの呪縛から開放 し、どんなストレージ・デバイス上でもフォントを管理できるようにする ことを目的としている。必要な時に必要なフォントだけをロードすれば良 いので、システムメモリを節約することと、(多くの場合)プログラムの 起動にかかる時間を大幅に短縮することが可能だ。

フォントの整理 -- いずれのプログラムを使った場合でも、最初に行わ なければならない(しかも最も面倒な)作業は、サーバーまたはローカル ディスク上にあるフォントスーツケースを整理することだ。System Folder の Fonts フォルダから、Chicago、Geneva、Monaco を除いたすべてのフォ ントを取り除く。Adobe SuperATM か Adobe Acrobat を使っているなら、 Adobe Sans MM、Adobe Serif MM、そして Symbol も残しておくべきだ。後 はプロジェクト別、クライアント別、アルファベット順、あるいはベンダー 別といった具合に、好きなようにフォントを整理することができる。 PostScript フォントファイルは仲間のスーツケースと同じフォルダに入れ ておかなければならない。私が働いているグラフィック部では、まず最初 にフォントスーツケースを Serif、Serif Display、Sans Serif、Script、 Dingbats という具合に種類別にフォルダに分けている。[業界用語では、 dingbat とは装飾つきのシンボルを意味する -Geoff]

フォントスーツケースのセットアップが終わったら、MasterJuggler か Suitcase を使って同時に使用するフォントのセットを作る。フォントスー ツケースの整理・分類が上手にできていれば、その構成をそのままセット に適応することができるだろう。たとえば、私は Times フォントはハード ディスク上にある Serif というフォルダに入れてあり、同時にそれは MasterJuggler または Suitcase の Serif というセットにも含まれてい る。

このようにセットを作成・管理する方法が、Suitcase と MasterJuggler に違いが出る部分だ。それぞれのプログラムを個別に見ていこう。

全く新しくなった Suitcase 3.0 -- Symantec 社の Suitcase 3.0 (64.95 ドル、アップグレードは 34.95 ドル)では、Symantec 社 は以前 からの最も良い面を残す一方で、インターフェイスを完全に一新した。 Suitcase 3.0 は Apple Guide、AppleScript、そして QuickDraw GX フォ ントなど、Apple 社の技術を多数取り入れている。

<http://www.symantec.com/compinfo/news/products/suit30pr.html>

Suitcase 3.0 でフォントの分類と全く同じ構造のフォントセットを作るの は簡単だ。単に個々のフォントスーツケース(またはフォントスーツケー スが入ったフォルダ)を Sets ウインドウにドラッグすれば、プログラム がフォルダと同じ名前のセットを作ってくれる。Drag Drop が使えない 場合(Drag & Drop を使うには System 7.5 以上か、あるいは System 7.1.1 または 7.1.2 に Macintosh Drag and Drop extension がインストー ルされていなければならない)には、Add ボタンを使ってセットを作るこ ともできる。Add All ボタンを使えばフォルダに入ったフォントを一気に 取り込むことができる。もっとも、フォントセットは一つずつ作らなけれ ばならないが。

Suitcase セットには個々のフォント、フォントスーツケース、または他の Suitcase セットさえも入れておくことができる。私はフォントフォル ダ(Serif、Sans Serif など)に対応したセットを作り、次に顧客または 仕事ごとのセットを追加した。たとえば、Dingbats セット全部といくつか の sans serif フォントからなる地図作成用のセットを作った。

Suitcase は 2 種類の特殊なフォントセットを提供している。一つは Mac を起動した時にロードする Startup Set で、もう一つは特定のアプリケー ションを起動したときにロードする Application Set だ。Application Set はインストールしてあるアプリケーションの数だけ作ることができる。自 宅の Mac では、ただちに MacInTax 以外では何の役にも立たないあのいま いましい TaxType フォントのセットを作った。カスタムフォントが付いて くる CD-ROM のアプリケーションでも同じことができるだろう。

Suitcase が作るセットは Finder のリスト表示に良く似ている。フォント セットの名称を変更したり、削除したり、ソートすることができ、すぐ横 にある三角形をクリックすればセットの中身を見ることができる。もう一 つのウインドウはどのフォントが使用中で、どのフォントが System Folder の中にあり、どのフォントが一時的に使用されているかなどの詳しい情報 を与えてくれる。

Suitcase 3.0 は従来と同様に、どのアプリケーションでもフォントメ ニューに現れるフォント名をそれぞれの書体で表示することができる(ほ かのフォント管理ユーティリティの方が柔軟性に富んではいるが)。 Suitcase 3.0 はフォントを圧縮してディスクスペースを節約することもで きるが、圧縮されたフォントは Suitcase 2.0 や MasterJuggler、あるい は System Folder の Fonts フォルダには認識されない。Suitcase はフォ ント ID コンフリクトを自動的に解決することができる。

Suitcase のフォントデータベースファイルは、ほかのユーザーとフォント セットを共有するために、ほかの Mac に移動することができる。しかし、 私がテストした結果では、フォントデータベースファイルをコピーするの は必ずしも簡単ではなかった。たとえば、フォントセットからリンクが張 られたフォントは共有ボリューム上になければならず、さもないとリンク が壊れてしまうということがわかった。Suitcase はスクリプタブルなので フォントやフォントセットを作成したり、削除したり開くことはできるが、 Suitcase はレコーダブルでもアタッチャブルでもない。

Symantec 社 は多少のバグを修正し、Suitcase 3.0.1 にアップデートす るパッチをリリースした。このパッチには 68K、PowerMac、Universal (Fat)の 3 種類があることに注意されたい。Easy Install オプションを 使用して Suitcase 3.0 をインストールしたのであれば、Universal のパッ チを使わなければならない。

<ftp://ftp.symantec.com/public/Updates/mac/suitcase/>

少し新しくなった MasterJuggler Pro 2.0 -- 新しくでた MasterJuggler Pro. 2.0 (49.95 ドル、アップグレードは 29.95 ドル)は、大々的な改 訂はないもののバージョン 1.9 の頃のいらいらの原因がだいぶ解消されて いる。壊れているフォントを自動的に探してくれる機能や、一時的に使用 しているフォントをシステムのクラッシュ後に自動的にリロードする機能 (下記参照)が新しく加わった。

自分のフォントのフォルダ構成と全く同じ構成の MasterJuggler セットを 作ろうとしても、一度に一フォルダしか実行できないという操作性の悪さ がある。操作は Option キーを押しながら、フォルダを一つずつ − 例えば Serif − MasterJuggler アプリケーションにドラッグするのだ。(一度私 はタイミングを外してしまい、ばらまいてしまったフォントスーツケース を一つずつ閉じなければならない羽目に陥った。)もしフォントを 10 個 のフォルダに分けているのであれば、10 回 drag drop を行わなければ ならないのだ。MasterJuggler プログラム内で個々のセットを作るのはもっ と簡単だろうが、Add All ボタンが付いてないのでフォントスーツケース を一つずつ加えていくという作業を行わなければならず 、嫌になってくる かもしれない。少なくともフォントを閉じるのはもっと簡単になっていて、 フォントまたはフォントスーツケースを MasterJuggler Drop Closer アプ リケーションにドラッグするだけでよい。

Suitcase とは異なり、MasterJuggler のセットはプログラム内部にできる リストに保存されることはない。その代わり、MasterJuggler セットの一 つ一つが、自分のハードディスクまたはネットワーク上のどこにでも置く ことができる個々のファイルになっている。これを便利だと感じるか不便 だと感じるかは、個人の好みの問題に過ぎないように思える。セットのファ イルがあると、サービス・ビューローのようなほかの MasterJuggler ユー ザーとフォントセットを共有しやすくなる。セットは独立したファイルで あり、ほかの Macintosh ファイルと同様に MasterJuggler セットの名称 の変更・移動・消去が可能だ。

裏を返せば、ハードディスク上でそのセットファイルを見つけ出さないと 名称変更や消去はできない。セットの内容を見るだけのためにもそのファ イルを探し当てなければならないので、私は全ての MasterJuggler セット を一つのフォルダにまとめておくことにした。MasterJuggler のディレク トリー・ポップアップ・メニューは、MasterJuggler で開けたファイルの うち最新のものからフォルダを 10 個表示してくれるが、常に開くマスター リストよりも分かりにくい。

MasterJuggler のインターフェースは、スクロールするリストが 2 つと 10 個のボタンになっていて、実に System 6 当時を思い出させてくれるの である。上部リストを Available Files といい、フォントセットまたは 個々のフォントを操作するところだ。まずフォントセット探し出して、そ れから眺めるなり編集するなり開けるなりができるようになる。いったん その上部リストからあるセットを開くと、今度はそれが Open Files とい う下部リストに表示される。これでそのフォントがスタートアップの際に ロードされるようになる - Open ボタンをクリックする時に Command キー を押さなかったらの話だ。

Open Files ウインドウは、あまり融通が利かない。個々のフォントやフォン トセットが、整理されていない状態で入っているのだ。アイコンは、それ ぞれのアイテムがフォントなのかフォントセットなのか(さらには一時的 に使うものか常にロードされるものか)を表すが、ウインドウ内でソートし たり、開いているフォントセットを編集したりはできない。

MasterJuggler 2.0 では、1.9 当時だれもがいらいらさせられたことが 2 つ解消されている。一つは、フォントセット追加する度に、とにかく常に ロードするように設定しようとすることである。フォントを追加するとき に Command キーを押していなければ、Mac を起動する度にそのフォントが ロードされるのである。2.0 のバージョンでは、その設定を変えることが できるようになった。二つめは、1.9 の頃は一時的に使用するフォントを 開いて、しばらくしてからクラッシュに見舞われただけで、それらのフォ ントを開け直すのに 10 分からそれ以上の時間を費やすことがよくあった。 今度からは MasterJuggler も賢くなり、クラッシュの後も一時使用をして いたセットを全てリロードしてくれるようになった。

MasterJuggler は Suitcase の進んだ機能を多く備えていて、場合によっ てはそれをしのぐこともある。MasterJuggler は、フォントの圧縮 (Suitcase とは互換性がない)ができるし、フォントのコンフリクトを直 ちに解決することもできる。Font Guardian という新機能が加わり、フォ ントがいっぱい入ったフォルダをスキャンして壊れたフォントや PostScript が見当たらないファイルのような問題のあるエリアを表示する こともできるようになった。MasterJuggler 独特の機能としては、サービ ス・ビューローで出力する用に一つのフォルダにフォントファイルを集め ることができるというのもある。発想はなかなか素晴らしいのだが、もっ と賢くなって欲しい : Gather ボタンをクリックする前に Open ダイアロ グを使ってそれぞれのフォントやフォントセットのありかを一回一回示さ なければいけないのだ。

まとめ -- 私が MasterJuggler 2.0 よりも Suitcase 3.0 の方が気に 入っているのは、それぞれのフォントマネジャーが、私の仕事の習慣にど う適応したかという点に私の関心が向いているからだ。ユーザーの中には、 フォントセットの管理が Finder ベースになっているという理由で MasterJuggler を選ぶ人もいるかもしれない。たが、私には Suitcase の インターフェースや設定のしやすさが MasterJuggler よりも抜きんでてい るように思えるのだ。新規ユーザーは、Suitcase の方がより直感的だと思 うだろうが、いままで自分用の MasterJuggler セットを作るのに時間を投 資してきたユーザーにとっては、MasterJuggler 2.0 にアップデートする のが得策かもしれない。個人的には、私は MasterJuggler のインターフェ イスに苦戦したので、今後は Suitcase 3.0 の方だけを使うつもりだ。

Suitcase の優位は、絶対ではない。Adobe 社が、形状的にも機能的にも Suitcase 3.0 と著しく似ている Adobe Type Manager 4.0 でこの地位を揺 るがすかもしれない。Symantec 社は、色々な面で Mac OS の重要な部分と なってきているサードパーティのユーティリティ ATM と競合したいのな ら、Suitcase を洗練させるための絶えまぬ努力を示していかなければなら ないだろう。


チップを探して(第一部)

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)
(  :加藤たけあき <oiso@wolfenet.com>)

1994 年に Power Macintosh を紹介する際、Apple 社はコンピュータ産業 界でもこれまであまり例のない技術的離れわざをやってのけた。Apple 社 はオペレーティングシステムと既存のアプリケーションの大半を、68000 ファミリーのプロセッサから RISC ベースの PowerPC プロセッサへ移行す ることに成功したのだ。これら専門用語を聞き慣れない方のために説明し ておくと、68000 ベースの Mac は“68K” Mac と呼ばれることが多いし、 RISC とは Reduced Instruction Set Computing のことである。

Power Macintosh の登場から 2 年以上経ってもなお、PowerPC プロセッサ の相対的な優劣について、どう判断すべきか混乱してしまうことがある。 Apple 社が暗号めいたモデル名を使用したことで、さらに状況は悪化して しまった。PowerPC 601 と 603 とはどう違うのか? クロックスピードはど れほど重要なものなのか? 二次キャッシュとは何なのか? そして、これら の違いが Performa 5400 と Power Mac 7600 との違いにどう関係している のだろうか ?

このような質問の答えを見つけることは難しいし、Apple 社やほかの Mac システムの製造業者から入手できる資料もほとんどない。さらには、ニュー ス情報源( TidBITS を含む)でも、これら用語の説明をすることはめった にないのだ。最新リリースに遅れずについていくだけでも、やるべきこと がたくさんあるからである。そんなことから、PowerPC プロセッサの全体 像とそれに関連した用語や技術をいくつか以下に説明したいと思う。次号 では、エミュレータやシステムソフトウェアそれにパフォーマンスチュー ニングを含めた PowerPC の実情についてお伝えする。

RISC にする価値はある? 全ての PowerPC プロセッサにはソフトウェア 上の互換性がある。したがって、PowerPC チップの入った Macintosh を 使っているかぎり、どんな PowerPC ネイティブの Macintosh 用ソフトウェ アでも走らせることができるのだ。また PowerPC ベースの Macintosh は、 68K Mac 用に開発された比較的古いソフトウェアでも動作させることがで きる。ただしそれはエミュレーションモードでのことで、猛烈に速いと評 判のマシンから期待してしまうスピードよりは少々遅い気がする。しかし ながら、68K Mac では PowerPC 専用に開発されたソフトウェアを走らせる ことはできないのだ。

これは 68K Mac が突然役立たずになってしまうという意味ではない。これ らマシンのほとんどは、今後何年にも渡って活躍してくれるだろう。私が 自分の 68K Mac を使い続けるつもりでいることも確かである。ある意味 で、これは Apple 社や他のソフトウェア開発者にとっては頭の痛いことで ある。マシンの寿命が長いということは、それだけ数多くの人が今後何年 も 68K Mac を使い続けるということであり、そのユーザーは新機能の恩恵 を受けるためにソフトウェアのアップグレードを要求してくるだろうから である。

だが、不吉な前兆は始まっている。時の流れとともに、現行のシステムや アプリケーション・ソフトウェアは PowerPC 上でしか動作しなくなってい くだろう。System 8 が 68K Mac でも使えることにはなりそうにない。と はいえ、旧型のマシンでも使うことができるような技術がおそらく登場し てくると思われる。同様にソフトウェアは、より新しい PowerPC プロセッ サ上でパフォーマンスが向上するよう最適化されることになるだろう。つ まり、新しいプロセッサほどより多くの恩恵を受けることになるのだ。

クロックとキャシュについて -- ここでちょっとのあいだ、PowerPC ベー スの Macintosh を解説する上でよく使われる用語について、その意味を明 確にしておきたいと思う。

現在の PowerPC -- Macintosh に関係のある PowerPC プロセッサ・ファ ミリーのアウトラインをここで簡単に紹介しよう。

<http://www.3do.com/3dosystems/m2/>

PowerPC の未来 -- より高速なプロセッサの開発ということに関して、 PowerPC は留まるところを知らない。未来のプロセッサには、その低消費 電力と高速なクロック・マルチプライヤを呼び物にするであろうPowerPC 603e の 200MHz バージョンである PowerPC 603e-200 も含まれるだろう。 もし 604 チップの改良を考えるなら、高速で(166、180、200 MHz から始 まる。)、大きなクロック・マルチプライヤと、拡張されたプロセッサ・ キャッシュ・サイズを持った PowerPC 604e はどうだろう。大量の 604e チップが現在出荷されているので、Apple 社、Power Computing 社や他の ベンダーからハイスピードの 604e マシンが 1996 年の末には登場するだ ろう。

604 が速いと思っていても、間もなく登場する PowerPC 620 は最初の 64 ビット PowerPC で、それは超ハイエンド・システム向けにデザインされた さらに高性能のプロセッサだ。PowerPC 620 は 604e と同じ基本のデザイ ン・プロセスを用いている。それにもかかわらず、620 の出荷は技術的問 題と、報告されている人事の問題とで 1 年以上も遅れているので、私は Apple 社や他のベンダーからの 620 マシンの登場は 1997 年の前半になる と推測している。伝えられるところによると、すでにいくつかのメーカー は、200 MHz 版の 620 を入手しているようだ。620 は複数のプロセッサを 使用してのデータ処理を意識して開発されていて、128 MB までという巨大 な二次キャッシュをサポートしている。

現在は、IBM 社と Motorola 社が唯一の PowerPC チップのプロバイダであ るが、San Jose に在る小さな会社がそれを変えることができるかもしれな い。IBM 社が Exponential Technology 社(以下 Exponential 社)に PowerPC コンパチブルのプロセッサを開発することができるライセンスを 認可したからだ。Apple 社の副社長であった Rick Shriner 氏が会長を務 め、その他業界のベテラン達が率いていて、Exponential 社はプロセッサ のコア・ロジックを形成するために BiCMOS テクノロジーを用いて、従来 的な CMOS をオンチップ・メモリに使用している。ちょうど Pentium チッ プが製造される方法を逆にしたようなものだ。Exponential 社はそのスピー ドについて何も報告していないにもかかわらず、300 〜 400 MHz のレンジ という今日のマイクロ・プロセッサの 2 倍の性能になるだろうと予測され ている。Exponential 社は、まだその技術の可能性を実証しなければなら ないが、同社は Apple 社や、他の投資家から巨額の資金援助を受けてい て、チップは 1997 年の初頭には完成するだろうとしている。

<http://www.exp.com/>

乞うご期待 -- 次回は、エミュレーター、システム・ソフトウェア、リ アルワールド・パフォーマンス、そしてこれらの知識を Power Mac を購入 する際にどうやって活用するのかについて話そうと思っている。来週の 7 月 4 日は独立記念日。我々も短い休暇を取る予定で TidBITS は発行され ないのでご了承ください。


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