TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#338/29-Jul-96

Macworld Expo に行かれるだろうか? どこで私たちに会えるかをお教えしよ う。なによりも Macintosh デベロッパーたちが次々とすばらしい製品を 作り出し続けているということにより、Expo はエキサイティングなもの になりそうだ。とりわけ、HyperCard スタックを Web に載せることがで きる LiveCard の概要、Cyberdog の最新バージョンと復活した Wingz の ニュースをお届けする。また、QuickTime 2.5 の詳しいレポートのほか、 いくつかのリリースにいても述べよう。

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目次:


MailBITS/29-Jul-96

(翻訳::尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

来週は ListSTAR ベースの TidBITS メーリングリストのテストを行おうと 思う(テストのため、次号の DealBITS は通常よりも少し早めに配信す る)。私たちからテストメッセージを受け取っても心配しないで(それに 返事を出さないで)いただきたい。また、新しい購読登録用アドレス <tidbits-on@tidbits.com> はすでに機能しているが、従来の LISTSERV の メーリングリストに登録されている方は再度登録する必要はない。重複登 録は削除するつもりだが、少ないことにこしたことはないのだ。[ACE]

Expo への期待 -- Boston での Macworld Expo は 1996 年 8 月 7 日の 水曜日から 8 月 10 日まで開催される。Expo には Adam と私も行くが、 2 日間しか参加しないのでやや駆け足ということになる。私たちに会いた いという方は、8 月 8 日(木)の 午前 11 時から午後 1 時まで、Adam が Macmillan 社のブースで『Internet Starter Kit for Macintosh』の第 4 版にサインをしているので、多分私もそこにいるだろう(本を買わなく ても歓迎!)。MHA Event Management 社は Expo のための Web サイトを作 り、すべての出展者のリストを載せている(残念ながらどの出展者がどの ブースにいるかは教えてくれないが)。ここには価格やスケジュールなど の情報も盛沢山だ。私自身はダウンロードしていないが、Expo に行く Newton ユーザーで Boston の地理に詳しくない方は、Brian Ogilvie 氏の フリーウエア、Newton 用の Boston T(地下鉄)路線図をチェックすると 良いかもしれない。[TJE]

<http://www.mha.com/macworld/index.html>
<ftp://mirrors.aol.com/pub/info-mac/nwt/app/boston-subway-map.hqx>

Internet Explorer 2.1b1 -- Microsoft 社は Internet Explorer 2.1 for Macintosh の最初のパブリックベータをリリースした。この新しいリ リースは、Netscape フレームをサポートし(ただしフローティングフレー ムはだめ)、大幅に改善された History と Favorites リスト、拡張され たプレファレンス(この中にはフレームとプラグインををオフにするうれ しい機能も含まれる)が盛り込まれているほか、QuickTime VR ムービーの サポートが内蔵されている。Internet Explorer 2.1b1 は PowerPC、68K、 ファットバイナリの各バージョンが用意されており、Microsoft 社の Web サイトから入手可能だ。あ、それからあのいまいましい“Homage to Windows 95”のロゴアニメーションがついに無くなっている! [GD]

<http://www.microsoft.com/ie/download/>

CyberDog 1.1 Beta -- ちょうど来週の Macworld Expo で OpenDoc の 火に油をそそぐかのように、Apple 社は CyberDog 1.1 のベータをリリー スした。今度のバージョンは 68K と PowerPC 両方で動作する。Apple は このバージョンは既知の不具合があるベータ版であることをことをはっき りと述べているが、このリリースには AppleTalk ネットワークをブラウズ する機能、多数のインターフェースの変更(OpenDoc の Document メ ニューを File に戻すなど)、DocBuilder の改良、そしてすべての CyberDog ドキュメントを一度に起動する CyberDog アプリケーションが含 まれている。このリリースのファイルサイズは 3.5 MB ほどだ。CyberDog 1.1 は OpenDoc 1.1(多少スピードが改善され、ファイルサイズは約 2.8 MB となっている)を必要とすることに注意していただきたい。[GD]

<http://www.cyberdog.apple.com/beta/index.html>
<ftp://cyberdog.apple.com/pub/beta/>

PWS、Web for Oneに -- ResNova 社は TidBITS-337 で紹介したパーソ ナル Web サーバの名称を PWS から Web for One に変更し(商標問題が あったらしい)、プレリリース版を公開した。私のこれまでの印象では、 Web for One は今のところ専用の IP アドレスを必要とするものの、Mac Web サーバを使って数ページの Web ページを載せるには最も簡単な方法か もしれない。ResNova 社は将来のバージョンでこの問題を解決する方法を 探しているところだ(パーソナル Web サーバを欲しいと思う個人ユーザー は専用の IP アドレスを持っていないことが多い − ほとんどのインター ネットプロバイダはダイアルアップ接続の場合にはダイナミックに IP ア ドレスを割り当てている。)[ACE]

<http://www.resnova.com/WebForOne/wfowhat.htm>

EvangeList、Web でのプレゼンスを拡大 -- Guy Kawasaki 氏が率い、 30,000 人のMacintosh 信者に Apple 社のプロパガンダを届ける活発な メーリングリスト、EvangeList の本格的な Web サイトができた (EvangeList の一部を載せていたり、検索ツールを提供していた Web サ イトは以前から存在していた)。このサイトは『MacAddict』誌が提供して おり、書き込みはカテゴリ別に分類され、日付順にソートされているので 便利な情報源となりそうだ。特に Apple 社について不安を感じていたり、 よくある Mac 対 PC 論争で根拠となる情報を必要としている方には一見の 価値があるだろう。[ACE]

<http://www.evangelist.macaddict.com/>

羽ばたく Wingz -- 1991 年に登場し、Excel の良きライバルと見られ、 その後 Claris Resolve となった Wingz を憶えておいでだろうか? Wingz は Macintosh でのカムバックを図っており、Investment Intelligence Systems 社は Wingz 2.1.1b8 のパブリックベータを同社の Web サイトで 公開した。このベータは、一新されたインターフェースと新しい作図機能 と分析機能が盛り込まれている。Investment Intelligence 社は Wingz と HyperScript Tools(マルチプラットフォームのビジュアルプログラミン グ環境)を来週の Macworld Expo で展示する予定だ。[GD]

<http://wingz.iisckc.com/betadown.html>


Web オーサリングツールの競争が加熱

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

北米の夏が暑さを増すとともに、Macintosh 用 Web オーサリング市場での 競争も加熱している。Adobe 社は PageMill 2.0 をリリースして首位を堅 持しようと懸命だが、2 位グループも Adobe の背後に迫ってきており、 Adobe 社は序盤戦に PageMill 1.0 で獲得した首位を簡単にはキープでき ないかもしれない

今週、7 月 31 日にリリースが予定されている Tapestry 2.0 は、 PageMill 2.0 などと直接競合するような Web オーサリングプログラム だ。Concept 1 Communications 社は Tapestry をベータ 1 バージョンと して出荷するが、同社によると Tapestry は製品版としても充分なほど安 定しているそうだ。これがベータとなっているのは最終版に盛り込もうと している機能の一部がまだ実装されていないからで、これらは 7 回のベー タリリースにより徐々に追加していくとのことだ。登録ユーザーは追加料 金なしで新しいベータ版を入手することができる。ベータ 1 の新機能に は、テーブル、12 回までの Undo、そして一つのファイルだけ、またはそ のファイルからリンクされているすべてのローカルファイルを検索するこ とができる検索・置換機能がある。7 月 31 日以降、Concept 1 社の Web サイトからデモ版をダウンロードすることができる。TidBITS では近々 Tapestry のレビューをするつもりだ。

<http://www.concept1.com/>

私は Concept 1 社がこの製品を 7 回のベータリリースではなく、バー ジョン 2.0 をそれとしてリリースして、その後 2.1、2.2、2.3 という具 合にアップデートした方が良いと思う。ベータ版というものはそもそもバ グがあって製品として出荷できる品質ではないことを意味する言葉だ。こ の意味を変えることはユーザーの混乱を招く。最近では多くの製品が購読 形式を採用しており、登録ユーザーは一定期間無料でアップデートを受け ることができるようになっている。たとえば、Netscape Navigator Gold 3.0(8 月に出荷予定)を早い時期に買ったユーザーは、年間購読した方が 購読なしで買ったよりも安くなる。

FullWrite で知られる Akimbo Systems 社は、Globetrotter を最近発表し た。私は Globetrotter に充分親しむまでこれがどういうものか明言した くないが、多数の HTML タグやオプションをサポートしており、サイトを 中心とした設計になっている。Globetrotter は、ユーザーは文書に入って いるオブジェクトやスタイルがどのように HTML に関連しているかという ことを考える必要すらない、という思想に基づいて設計されている。あな たは文書を作るだけ、あとは Globetrotter が面倒を見ましょう、という ことらしい。ページができあがったら、File メニューから Print を選ぶ か、Publish Web Pages を選ぶだけだ。Akimbo 社は Globetrotter を“第 3 四半期”にリリースする予定だ。

<http://www.akimbo.com/globetrotter/index.html>

多くの HTML ファンが既に知っているように、いくつかの新しい Web オー サリングツールが近々出荷される予定になっている。これらのプログラム が出荷されて入手できるようになったらもっと詳しい情報やレビューをお 届けできるだろう。特に、先週受け取ったメールから判断すると、現在パ ブリックベータとなっている Claris Home Page は熱狂をもって迎えられ ているようだ。Home Page について語り合うには、Blue World Communications 社が運営している公式な Claris Home Page Talk メーリ ングリストに参加すると良いだろう。Blue World 社は PageMill-Talk リ ストも運営している。

<http://www.blueworld.com/lists/>


LiveCard、Web に一石を投じる

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

HyperCard のメーリングリストやディスカッショングループに頻繁に寄せ られる質問の中に、「自分の作った HyperCard のスタックを Web に載せ るのにはどうすればいいのでしょう ?」というのがある。1 月にサンフラ ンシスコで開催された Macworld Expo で Adam と私がこっそり見せても らって、 TidBITS-310 でこういうことができるようになると匂わせてい た製品のベールがついにはがされた。今日(最近 Heizer Software 社を買 収した)Royal Software 社は自社製品の第一号である LiveCard を発表し た。うまくいけば、これで HyperCard のユーザーやデベロッパーは全く新 しい方法で Web を見ることができるようになるだろう。

<http://www.heizer.com/livecard.html>

LiveCard は、HyperCard スタックと Macintosh Web サーバとの相方向ゲー トウェイであり、長年にわたり HyperCard とマルチメディア分野における 第一人者である Eric Oesterle 氏の構想が大本になっている。 LiveCard は、HyperCard アプリケーションを CGI (Common Gateway Interface)と して使って、Web に直接 HyperCard スタックを載せるものである。スタッ クを自分のサーバのフォルダにドラッグすれば、後はすべて LiveCard が やってくれるのだ。LiveCard はブラウザ・プラグインを 必要としない 。 実際ユーザは、HTML フォームと JPEG グラフィックを表示することがで きるブラウザさえ持っていればいいのだ。

HyperCard やほかの Mac のスクリプトを CGI エンジンとして使用すると いうことは目新しいことではない。HyperCard・Frontier・AppleScript の ユーザーなどは Mac ベース Web サーバの初期の頃からこの方法を用いて きた。LiveCard の目新しい点は、スタックを書き換えることなく、 HyperCard のコンテンツを直接 Web に載せることができるということだ。

LiveCard は(ボタンやフィールドのような)HyperCard のインターフェー スとなっているものを HTML テキストおよびフォームのエレメントに変換 して、カード内のテキスト部分も合わせたカード表示を JPEG グラフィク として生成する仕組みになっている。(これらは、ユーザーやスタックが オンにしたり、オフにしたりできる。グラフィックを表示することが無意 味なスタックもあるだろうし、反対にテキスト表示が無意味なものもある だろうから。)スタックによっては LiveCard を使うのに向いているもの と向いていないものがあるだろうが、理屈の上では LiveCard を使うため にスッタックやスクリプトを変更する必要はない(下記参照)。LiveCard は、HyperCard では当り前となっている基本的なナビゲーションや検索機 能を Web ユーザが利用できるようにしているので、LiveCard ユーザはク リックすれば、HyperCard スタックにビルトインされている多くのナビゲー ションツールを使うことができる。さらに、内容や機能を追加するための カスタム HTML ヘッダ・フッタも付いている。

その上、LiveCard はどちらからでもデータを送ることができるようになっ ているので、HyperCard や HyperCard Player、さらには Macintosh さえ も使わずに Web 経由で HyperCard スタック内のデータの追加・変更・削 除ができる。例えば、Web 経由で観ることのできる HyperCard の映画のレ ビュー集を作って、リアルタイムにユーザのコメントや反応を集めたり、 処理したりできるのだ。ユーザーからのデータは直接 HyperCard に保存さ れ、即座にアクセスや検索が可能になる。LiveCard はこのような機能のお かげで、ゼロまたはわずかな HTML や CGI の知識で Web ベースのチャッ ト、(買い物かごまで付いた)オンライン発注システム、製品のテストお よびバグのデータベース、リモート印刷、電子メール、ファックスサービ ス、その他多くのものの楽々作成に向くのだ。HyperCard には、XCMD、 XFCN、カスタム・スクリプトなど諸々の拡張ツールがあるので、 HyperTalk の専門知識がちょっとあれば、本当に驚くような世界へと LiveCard を拡 張できるのだ。例えば、以前地方紙のために HyperCard ベースの編集や広 告の管理システムを作成したことがあるのだが、 LiveCard を使って Web 上にこのシステムを置いておけば、世界中のライター・編集者・アートディ レクターがアクセスできるようになるのだ。

LiveCard があれば、Web 上にどんな HyperCard スタックでも置くことが できるようになるというわけではない。LiveCard は Web 上にある HyperCard に保存される情報を入手したり流したりすることを主点として いるので、データを管理・保存するために HyperCard のカードメタファー を使っているスタックが最も適しているだろう。複雑な構成になっていた り、サウンド、アニメーションを多用していたり、Macintosh の標準アプ リケーションのインターフェース・モデルを利用しようとするスタックは、 LiveCard が動作する際に色々と手を加えなければならないかもしれない し、なかには(HyperCard ベースのゲームなど)全く利用できないものも あるだろう。LiveCard のことを批判しているのではない。正直な話、 QuickTime 3.0 や HyperCard 3.0 が出るまではダイナミックなスタックの オブジェクトとやりとりするといったことは不可能だろう。さらに、 LiveCard を使うには Macintosh Web サーバが必要なので、ダイヤルアッ プでインターネットに接続したり、Mac Web サーバを使うことのできない HyperCard 狂には役に立たない。それでも私は LiveCard が Web For One (前述参照)でうまく動くかどうかということに興味津々である。

それに、LiveCard は完璧ではない。例えば、LiveCard が生成する HTML はどちらかと言えば一般的なものではないし、製品に大きな欠点があると 感じるユーザーもいるかもしれない。つまり、HyperCard 自体にグループ 化されたテキストスタイルの HTML アンカーを作成する機能が標準装備さ れていないために、LiveCard にもこの機能が無いのだ。経験豊かな HyperCard デベロッパーは LiveCard の欠点の大部分が 全く避けようがな いことだと気が付くだろうし、LiveCard が HyperCard ベースでなので、 それらのほとんどが(グループ化されたテキストの HTML アンカー生成を 含めて)何とかなったりするのだ。さらに、HyperCard は Frontier とは 違い、マルチスレッドでもないし、とりわけ速くもない。そこそこの Mac Web サーバが、たいした問題もなく同時に数人の LiveCard ユーザー を処理できるとしても、LiveCard は巨大な負荷を苦手とする。

それでもなお、LiveCard が人を惹き付けるのは、数え切れないほどのユー ザーや事業者にとって Web 上にHyperCard ベースのデータを置くための最 も手っ取り早い方法だからだ。しかし、私が一番気に入っているのは、 LiveCard が Web の ゲートウェイ・アプリケーションの模範であるという 点である。ゲートウェイ・アプリケーションは、Web 本来の理想像の主要 部分だった。Web は、データベースやヘルプシステムのような既にオンラ イン上に存在する多種多様なソースを持った情報を組み合わせるというこ とが全構想であった。LiveCard のような製品は、ゲートウェイの元々のコ ンセプトが追い求める価値が大いにあるということを今でも実証している のである。

LiveCard は、Macworld Expo 会場で Expo 特別価格の 49.95 ドルで入手 可能になり、 Expo 終了後 30 日間は 99.95 ドル、それ以降は 149.95 ド ルとなる。 HyperCard 2.2 以上および Macintosh Web サーバを使うこと が使用条件である。

「余談だが、LiveCard が発表された 1996 年 7 月 29 日という日は、 Eric Oesterle 氏の誕生日にも当る。Eric、誕生日おめでとう !」


Apple 社の QuickTime 2.5 最前線への出撃

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡<akkun@ca2.so-net.or.jp>)
(  :尾高 修一<odaka@iprolink.ch>)
(  :加藤たけあき<oiso@wolfenet.com>)

Apple 社が遡ること 1991 年に QuickTime を登場させたとき、それは究極 のあっと驚く技術だった。QuickTime が登場する前には Macintosh 上でデ ジタルビデオをやろうなどとまじめに考えなかった。比較的廉価な Mac で 切手サイズとはいえデジタルビデオを再生できるというアイデアは不可能 だと考えられていたし、デジタルビデオがテキストやグラフィックのよう なデータタイプになるというアイデアは大部分のユーザーには想像できな いことだっただろう。

しかしそれは起こってしまった。Apple 社は QuickTime 1.0 を数年前にあ まねく配布しただけではなく、自らの OS の中心に QuickTime を据え、 Macintosh 上の時間を基軸とするメディア(ビデオ、サウンドなど)すべ てに対応するように拡張しながら改善し、洗練し続けた。そしてマルチメ ディア制作分野での Mac の優位が小さいものではなかったため、 QuickTime は幾分かは Windows の世界でもデジタルビデオの標準となっ た。QuickTime 2.5 で、Apple 社は新しい機能をいくつか付け加え、 QuickTime をハイエンドデジタルビデオの業界にもっと本格的に対応させ ようとしている。

QuickTime 2.5 の新機能 -- QuickTime 2.5 はデジタルメディアの制作 者と普通の Macintosh ユーザーの両方に有用な新しい機能を追加した。

MPEG と M-JPEG の混乱 -- 過去一年間、デジタルビデオの動きに注意 を払っていた方は、恐らく MPEG のことを聞いたことがあるだろう。MPEG は広く採用されているデジタルビデオのフォーマットで、ビデオデッキ並 みの品質を持った再生レートを約束するものだ。今のところ、MPEG ベース のコンテンツが比較的少なく、MPEG フォーマットは CPU に大きな負担を かけるため、MPEG は普通のコンピュータユーザーにはそれほど大きな意味 は持っていない。MPEG ビデオを再生するのはかなりの CPU の能力を必要 とし、特にフルスクリーン(640 × 480)ではほとんどの消費者レベルの マシンには難しい。一般的な解決策は、(一部の Performa や Power Mac 用の Apple 社の MPEG システムのように)MPEG 再生専用の拡張カードを 使って CPU の負荷を軽減することだが、できればソフトウェアだけの解決 策があればそちらの方が好ましいことは明らかだろう。近々登場してくる デジタルテレビのテクノロジーは MPEG をベースとしているので、近い将 来 MPEG が花開くことが期待できる。

基本的な MPEG 再生のサポートは QuickTime 2.0 から搭載されているもの の( TidBITS-294 を参照)、一部で報道されたこととは異なり、 QuickTime 2.5 はソフトウェアだけによる MPEG サポートは装備していな い。最新の情報によれば、Apple 社は QuickTime に MPEG 拡張を追加し て、QuickTime 単独で MPEG ムービーを処理することができるようにする 予定だ。それまでは、ベストの Mac 用 MPEG プレーヤーは依然として Maynard Handley 氏の Sparkle だ。しかし、Sparkle のメンテナンスは中 止されており、私自身は問題に遭遇したことはないが、System 7.5.2 以上 を使た場合に生じる不具合が報告されている。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/gst/mov/sparkle-245.hqx>

QuickTime をハイエンドのデジタルビデオの世界で普及させようとする Apple 社の努力の一部なのではあるが、QuickTime 2.5 では、かなり喧伝 された "ユニバーサル" M-JPEG フォーマットのサポートが含まれている。 M-JPEG はハイエンドのビデオ・キャプチャと、編集システムで使用されて いるビデオのフォーマットで、MPEG と違い、(キーフレームとキーフレー ムの間に変化分の情報だけを記録するのではなく)ムービーのあらゆるフ レームについての情報を記録しているので、ハイエンドの創作により適し ている。不幸にも今日まで全ての M-JPEG フォーマットはバラバラで互い の互換性が無かったので、ハードウェア業者が Apple 社の新しいフォー マットを採用するのであれば、QickTime 2.5 はハイエンドのビデオ業界の 人々に M-JPEG ビデオをより容易に交換し、作業する事を可能にするであ ろう。本当のところは、QuickTime 2.5 の M-JPEG テクノロジはハイエン ドのビデオ・プロデューサー達には素晴らしい(そして恐らく Apple 社に も立派な業績になる)ものだが、直接エンド・ユーザーにはそれ程には意 味が無いのである。

その他には? QuickTime 2.5 で、Apple 社は公にデベロッパーや本格的 な QuickTime のユーザーにプレ・リリース版を配るという少し新しい方法 を取った。これらのベータ版リリースは、配布が あまりに 公になって しまったために、多少だいなしになってしまったが、私は Apple 社がプレ ・リリース期間中に、迅速かつ徹底的に質問とバグのレポートに対応し、 多くの顕著なバグを直そうとしていたことを評価したい。

QuickTime の次のステップは作者が彼らのムービーにインタラクティブで、 豊富な機能性を取り入れることが可能になり得るバージョン 3.0 である。 - 同じく HyperCard 3.0 の基盤となる役目も果たすであろう機能性だ。 ( TidBITS-329 参照) Apple 社は QuickTime を重要視し、社の核心と なるテクノロジの一つと考えている。Apple 社の新しい組織計画では、 QuickTime を "Alternative Platforms" という事業部の下に据えていて、 すでに全て QuickTime を基にして作られたデジタルカメラ用のオペレー ティング・システムである QuickTime IC(イメージ・キャプチャ)を発表 している。Apple 社は QuickTime を Netscape プラグインや、QuickTime VR、そして QuickTime Conferencing の改良ということも含め、他分野で 利用するという確約を証明してきている。簡単にいえば、Apple 社が QuickTime のメディア能力を Mac OS やその他のオペレーティング・シス テムの中に巧く取り入れることに成功できれば、QuickTime の将来は明る いといえる。

何処から入手できるか -- QuickTime 2.5 は Apple 社から無料で入手で きる。 QuickTime 2.5 は System 6.0.7 以上で使用することができるが、 いくつかの機能は最近のバージョンの Mac OS 上でしか動作しない。

<http://quicktime.apple.com/>
<ftp://ftp.support.apple.com/pub/apple_sw_updates/US/mac/System/QuickTime/>

QuickTime は 2.7 MB のオール・イン・ワン・インストールと、2 つのフ ロッピーディスク・イメージの 2 種類が上記の Web サイトに用意されて いるので、都合の良い方を選んでほしい。(FTP サイトにはディスク・イ メージ版のみである。)

もし貴方が QuickTime とデジタルビデオについてもっと勉強したいと考え ているならば、下記の URL に Acrobat の PDF 形式になっている Charles Wiltgen 氏の QuickTime FAQ がある。(Charles は現在 Apple 社で働い ているが、この FAQ は Apple 社の公式書類ではない。)

<http://www.quicktimefaq.org/>


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