TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#356/02-Dec-96

あなたは Web 制作者ですか? もしくはその職業に憧れていますか? そ ういう人はぜひ Tonya による Adobe PageMill 2.0 の詳細なレビューを読 んでください! また今週は、Apple 社が 68K Mac の場合にいくつかのア プリケーションで深刻なバグが発生すると認めたことや Bare Bones Software 社が BBEdit Lite for OpenDoc をリリースしたことのほか、 Adam が 停電などで電源が切れたあとにソフトパワー型 Mac を再起動させ る方法についてを説明している。さらに、TidBITS を毎週読んでいる暇が ないという人のために……テープで読むことが可能になったので、それに ついて紹介しよう。

目次:

Copyright 1996 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は以下のメンバーのボランティアによって翻訳・発行されています。
Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>
井ノ本琢也  <inomoto@helix.mgh.harvard.edu>
尾高 修一  <odaka@iprolink.ch>
尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>
小山 純一  <vb4j-oym@asahi-net.or.jp>
加藤 たけあき<oiso@wolfenet.com>
米谷 仁志  <comet@po.iijnet.or.jp>
齊藤 聡   <akkun@ca2.so-net.or.jp>
杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>
高島 均   <hitak@can.bekkoame.or.jp>
西村 尚   <hisashin@st.rim.or.jp>
水木 潔   <HGH03125@niftyserve.or.jp>
村上 浩   <murasan@yk.rim.or.jp>
矢倉 遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>
山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/02-Dec-96

(翻訳::山浦 礼子<raeko@bnn.co.jp>)

CFM-68K Runtime Enabler を使用しない -- Apple 社は、68K プロセッ サを搭載した Macintosh の場合、機能拡張マネージャを使用するか、もし くはシステムフォルダから取り除くなどして、CFM-68K Runtime Enabler を使用しないように薦めている。CFM-68K Runtime Enabler を使用してい る複数のアプリケーションでは Macintosh をクラッシュしてしまいかね ず、また、データの喪失やほかの問題を引き起こすおそれがある。この問 題は、Power Mac シリーズには 影響ない

<http://www.macos.apple.com/macos/cfm-68k.html>

Code Fragment Manger(CFM)はもともと Power Mac 用として開発され、 Power Mac アプリケーションで shared code libraries を使用させるため のものだ(本当に、これらはよくできている)。そして最近、Apple 社が Power Mac 用アプリケーションの 68K 版を開発するのを容易にする目的 で、この CFM を 68K シリーズに移植したのだ。こうして開発された 68K アプリケーションは今まさに登場したばかりで、まだその多くのものは開 発段階にある。

しかしながら、Apple は、現段階では CFM の 68K 版に問題があることを 認めており、すべての場合に信頼して使用することはできない。このバグ は CFM-68K を使用しているすべてのプログラムに影響を与えるわけではな いが、どのアプリケーションが影響を受けているのかということを判断す るのは簡単ではない。CFM-68K を使用しているプログラムには OpenDoc、 Cyberdog、Apple Media Tool、LaserWriter 8.4 と 8.4.1、Microsoft Internet Explorer 3.0b1、そして AOL 3.0 プレビューがある。これらの プログラムのどれを使用している場合も、Apple は以前のバージョンを使 用するか、使用を中止することを薦めている。CFM-68K Enabler を使用不 可にしてこれらのアプリケーションを使用しようとした場合、エラーに遭 遇するかもしれないが、ダメージを受けることはないはずだ。Apple はバ グフィックスに着手しているものの、ソリューションが提供される日程に ついては正式に発表されていない。 [GD]

BBEdit Lift for OpenDoc -- OpenDoc 1.1 をインストール済みであれ ば、BBEdit Lite for OpenDoc に注目してほしい。これは、BBEdit の基本 的なテキスト編集機能を所有するフリーの Live Objectである。BBEdit Lite のこのバージョンではステータスバーがなく、またすべての BBEdit 機能拡張が使用できるわけではない(ReadMe を参照)が、それでも OpenDoc コンテナのなかであれば有効となる基本的なテキスト編集機能を 提供する。 [GD]

<http://www.barebones.com/freeware.html>

QuickMail Express 入手可能 -- CE Software 社は、私たちが数週間前 に説明したフリーのインターネット用メールクラアントを出荷した。 QuickMail Express は同社の商用 POP3 クライアントである QuickMail Pro ほど強力ではないが、Macintosh 版と Windows 版の双方で提供される。 [MHA]

<http://www.cesoft.com/quickmail/qmexpress/>


テープになった TidBITS

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)

TidBITS は最近 AudioMagNet 社とライセンス契約を結んだ。そこはイン ターネット上の文章を 16-bit のコンピュータ音声を使ってオーディオカ セットに録音するサービスを提供している会社である。AudioMagNet 社は、 そのようなテープが長距離通勤者やどんな理由であれ文章を読むのが苦手 であったり可能ではない人に支持されるだろうと強調しながら、数か月前 にそのアイデアを我々に教えてくれた。TidBITS は AudioMagNet 社の最初 の出版物であるが、彼らが受け取る提案の一部をもとにして、はやくもっ と増やしたいと望んでいる。

<http://www.audiomagnet.qc.ca/>

AudioMagNet 社は TidBITS のオーディオ版を 1 本あたり 5 U.S. ドルで 販売している(TidBITS の ひとつの号は 30 から 40 分でカセットに収ま る)。ちょっとした値引きサービスを受けるために予約することもできる。 予約料金の場合、25 カセットで 120 ドル、50 で 235 ドル、75 で 350 ドル、100 で 460 ドルである。料金には録音サービス、カセットおよび 送料が含まれている。

私は、AudioMagNet 社の共同設立者 Sylvain Laroque 氏に Boston Macworld Expoでお会いした。彼は私に AudioMagNet 社のオーディオテー プを作成するために必要な技術的詳細の一部について話してくださった。 彼のコメントに興味をかきたてられたので、私は Sylvain と彼の共同設立 者の Chantal St-Pierre 氏に短い電子メールインタビューを敢行して追求 した。

[Sylvain Chantal] いや、普通の PlainTalk の音声ではなく、ぼくらは Victoria を使っている。Apple sppech page で入手できる高品質な声さ。

<http://speech.apple.com/>

[Sylvain Chantal] 実際に録音作業に入る前にだいたい 6 時間編集作業 がある。最初に、電子メールアドレス、電話番号、それから URL を全て取 り除く。ぼくらはそういった情報に関しては聞き手に TidBITS のインター ネット版を参照させている。Victoria は内部辞書にないものはつづりを発 音する。だからぼくらの製品を最初にテストしたときは非常に興味深い聴 き物だった。“h-t-t-p slash-slash w-w-w (pause) tidbits (pause) com”と聞くのはきもちのよい聴取経験ではないし、あるアドレスについて は混乱のもととなった。同じような理由で、ぼくらはあるつづりの文字列 を消去し、TidBITS のインターネット版を調べるように聞き手に勧めてい る。ぼくらはカッコやかぎカッコ、ハテナマークといった記号に注意する 必要もある。Victoria はなにも言わなくなったり、見たものすべてを発 音しようとしたりするからだ。

第 2 段階には、email、online、Macintosh それに CompuServe といった Victoria が正しく発音できないことがわかっている単語を検索してすべて 置換する、ということを行う。Victoria は“Los Angeles”や“WYSIWYG” のような発音優先の語句で混乱する。この非常に微妙な問題のためにぼく らは第 3 段階を行うことになる。ぼくらは Victoria が発音できない恐れ のある単語について文章を注意深く調査し、彼女を混乱させるつづりを発 見し、そのような新たな語句を次回の出版物のための検索置換用辞書に登 録する。

ぼくらは終わりのない音の塊になるのを避けるために、長い文章を見つけ カンマでそれを区切らなければならない。ぼくらは“強制沈黙”と呼んで いるものを、特に段落の間に挿入する。そのような長いポーズは主題の変 化を暗示するために用意している。

最後に、ぼくらは最終的な製品を聴いて、欠陥を探し、製品の時間を計り、 マスターを作成するための特別なテープを選ぶ。そしてぼくらは録音工程 へと進む。

[Sylvain Chantal] ぼくらのマスターコピーはクロムテープの特別な長 さのカセットを使い、Mac から標準の録音機器に直接録音している。そし て、必要な部数だけ高速でオーディオカセットに複製する。

[Sylvain & Chantal] Sylvain は自分の生活を楽にするためのサービスに ついてずっと昔に考えた。必要は発明の母ではなかったっけ? Mac のコン サルタントのプロとして、Sylvain は新製品、流行、アップデート、バグ、 問題、ソリューションなどについて情報通である必要があった。情報通で あり続けるために雑誌やプレスリリースを読むことは必要悪だが、読むの が早くない人(または読むことを楽しめない人)にとって読むことは重荷 になりうる。Sylvain は自動車通勤に多くの時間を費やしていた。彼は運 転中に必要としている情報を入手できる手段を見つけ出せば時間を最大限 に使えるだろうと考えた。それで彼は必要とする情報を録音しはじめたが、 それが彼にとってよい時間管理のアイデアであるならみんなに有用である と考えたんだ。

    AudioMagNet -- <comments@audiomagnet.qc.ca>

パワーキーのミステリー

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)

それは 7 月のことだった。私と Geoff は Point of Presence 社のオフィ スで Power Macintosh 7100/66 の設置作業をしていた。そこには我々のメ インの Web サーバとメールサーバ (Apple Workgroup Server 6150)も設 置してある。7100 を設置したのは、StarNine 社の ListSTAR を走らせ、 TidBITS メーリングリスト全体を管理するためである。7100 には容易い仕 事だった。

だが、このことがミステリーなのではない。

ご存じかと思うが、7100 は“ソフトパワー”型 Mac である。つまり、パ ワーオンはキーボードから、パワーオフは Special メニューの Shut Down から行う。もう一方のサーバは“ハードパワー”型 Mac で、パワースイッ チは固定式になっている。つまり、一旦パワースイッチをオンにしたら、 以後ずっとオンのままということだ。サーバにとって、これらは重要な意 味を持っている。電源が切れ、そのまま非常用電源で対応できる時間が過 ぎてしまうと、サーバは停止してしまうからだ。では、後に電源が復帰し たらどうなるのだろう?

AWS 6150 はハードパワー型 Mac なので自動的に復帰する。一方、7100 の 方はモーメンタリなパワースイッチを使っているため、そう簡単には行か ない。電源が戻っただけではマシンは自動復帰しないのだ。では、電源復 帰後に再起動させるためにはどうすればいいんだろう?

ソフトパワー型 Mac を初めて世に送出す際、Apple 社はうまい解決方法 を生みだした。ソフトパワー型 Mac には必ずリセットスイッチが付いてい る(当初はケースの背面に付いていたが、最近の Mac では正面に付いてい る)。リセットスイッチが背面にある旧型 Mac(IIci や 7100 を含む)の 場合、スイッチにはスクリュー状の刻み目がついている。電源復帰した時 に確実に Mac を再起動させるためには、ドライバーでそのスイッチを回 し、中に押し込んでおけばよいのだ。知っていないとできないが、シンプ ルで分かりやすい方法である。

セッティングを全て終了した私と Geoff は、リセットスイッチを押し込ん でロックさせようとした。ロックしておけば、電源が切れても 7100 は復 帰できるはずだからだ。ところが、困ったことにロックしないのである。 そこで、マシンの電源を切り、ケーブルを全部はずし、ラックから引っぱ り出して開けてみた。驚くなかれ、ケースの中にはスイッチをロックする ための受け側がなかったのである。

平均的なウォンバット(フクログマ)より多少は賢い我々なので、クリッ プを使えばパワースイッチを押し込んだ状態で固定できることに気がつい た。そうしてケースを閉じ、ラックに戻し、ケーブルを全部繋ぎなおして、 キーボードのパワーキーを押してみた。が、何の反応も無い。スイッチを 固定したことで、7100 は起動さえしなくなったのである。

またケーブルを抜いて、ラックから降ろし、ケースを外して、クリップの 細工を取り除いた。完全に行き詰りである。仕方なく、もとのノーマルな 状態に戻して、あとはこの先電源が切れないことを祈るしかなかった。

話しは一気に飛んで、ボストンの Macworld Expo でのこと。Apple Tech Support のブースが在ったので、ちょっと立ち寄って、この問題について 聞いてみた。相手は自分が何を話しているのか分かっている風ではあった が、解決の糸口は得られなかった。また行き詰りだが、初めてでない分、 前ほど失望しないで済んだ。

そして、意外な新事実がみつかったのは、ほんの数日前のことだった。そ れは、Maxum 社の新しいインターネットサーバ監視ツール PageSentry 2.0 (非常によくできたツールだ)の情報を探して同社の Web サイトをうろう ろしていたときのことである。Quadra 840AV 以降のソフトパワー型 Mac ではスイッチをロックできないという技術サポートの掲示情報を偶然みつ けたのだ。

<http://www.maxum.com/PageSentry/>

その代わり、Energy Saver コントロールパネルを使って解決できることが 判明した。このコントロールパネルの Preferences メニューから Server Setting を選択すると、“電源復帰後は自動的に再起動”というチェック ボックスのついたダイアログが現われるのだ。

実を言うと、まだ 7100 でこの方法は試していない。この Mac には Energy Saver コントロールパネルが入っていないし、かといって遠隔操作でイン ストールすることには抵抗を感じるからだ。たぶん、無人稼働のサーバに は必要無いと思って捨ててしまったのだろう。今度このサーバを見に行く 機会があったら、一応 Energy Saver をインストールしておくつもりだ。

また、解決方法は判明したものの、その後 7100 の設置場所には行ってな いので、PowerKey Pro と共存する上でどんな影響が現われるのかは全く分 からない。PowerKey Pro は Sophistcated Circuits 社製の優れた小型装 置で、クラッシュしたサーバを自動的に再起動させることが可能だ(機能 はほかにもいろいろある)。もしこれと同じ環境の方がいたら、テストし てみても損はないはずだ。私もこの数ヵ月中には 7100 に会うためシアト ルに行く予定なので、その際には直接この目で確かめることができるだろう。

<http://www.sophisticated.com/>

ただし、サーバソフトウェアの開発者であれば、マシンのパワースイッチ にこだわる必要はない。Mac の多くは、電源復帰後に自動で再起動するよ うにマシン設定のコードを書くことができるのだ。これは Energy Saver コントロールパネルの手法とほとんど同じでものある。

<http://devworld.apple.com/dev/technotes/tn/tn1079.html>


Adobe PageMill 2.0 登場

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

Adobe PageMill 1.0 は、1995 年の末に出荷され、HTML 界に旋風を巻起こ した。ユーザーが単純なワープロに似た環境で Web ページを作成している 間に、裏でこっそりと HTML を生成してくれるという当時としては全く新 しいものだった。PageMill 1.0 のお陰で、Web の作成が楽になったにもか かわらず、ユーザー達はもっと多くの機能と柔軟性を盛んに要求し始めた。 PageMill 2.0 は、レイアウトやその他の視覚的な部分に特に重点を置い て、そういった要求の多くに応えている。

<http://www.adobe.com/prodindex/pagemill/main.html>

Adobe 社によれば、PageMill 2.0 使用のための最低必要条件は、8 MB の RAM(そのうち最低 4 MB を PageMill に割り当てる)を搭載している全て の Macintosh、System 7.1、およびカラーモニタとなっている。定価は 149 ドルだが、Adobe は 99 ドルぐらいの市場価格になるだろうとみており、 1.0 からは 49 ドルのアップグレードを、その他の Adobe 製品を持ってい る人には 69 ドルでの販売を、そして競合製品を持っている人には 79 ド ルの乗り換えアップグレードを用意した。

概観拝見 -- PageMill を起動したら、Edit モードになっている空っぽ の文書ウインドウが現れ、その一番上の部分には、ごちゃごちゃしている 上にカスタマイズできないツールバーが付いている。さらに、その文書ウ インドウには、作成しようとしているページのタイトルを入力する専用の フィールドまである。Preview ボタンを除けば、あとのボタンは全て実に 小さくできている。Preview ボタンは、Edit モードと Preview モードを 切り替えるためのもので、Preview モードになっている時は、Web で見る 時と同じように表示され、オフラインで用意してある他のページのリンク をたどることもできる。

Adobe は、HTML Source ビューというものも用意しているのだが、HTML Source に切り替えるための相応な大きさのツールバー・ボタンが用意され ておらず、Edit メニューの中程に追いやられているが、幸いなことに分か り易いショートカットキーが割り当てられている。HTML Source ビューに すると、通常では目に触れられないようになっている HTML を見たり、手 作業での編集を行ったりできる。直接 HTML をいじりたい人にとって、こ の HTML Source ビューは、全くと言っていいほど使い物にならないものに 仕上がっている。Web ページ作成のためのメニューやボタンのほとんど全 てが、使えないようになっているのだ。

Window メニューの中に、Switch という階層メニューがあるのだが、 (ReadMe ファイル以外には)機能の説明がどこにも書かれていない。これ を使えば、PageMill で扱っている最中の文書を別のプログラム(テキスト エディタや Web ブラウザの類のもの)で開くことができる。例えば、テキ ストエディタに切り替えて、ファイルに手を加えてから、Edit メニューか ら“Revert to Saved(復帰)”を選択すれば、即座にその変更を PageMill で見ることができる。ただ残念なことに、“Revert to Saved”には、 ショートカットキーが割り当てられていない。(全般的には、PageMill の ショートカットキーはなかなかのできである。)

新たに、Download Statistics(ダウンロード情報)ダイアログボックスと いうものが追加されている。これは、指定した Web ページ、選択してある オブジェクト(グラフィックや表のようなもの)、フレームッセットなど のダウンロード時間を様々な接続スピードごとに表示してくれる。

概観の話を終える前に、もう一つ触れておかなければならないものがある。 文書上の選択されている部分に手を加える時に使う、Inspector(属性情 報)と呼ばれるパネルを表示するタブ切りされたフローティングパレット だ。よく使う機能に即座にアクセスできるこの Inspector の機能が気に 入っている。PowerBook や 640 x 480 のモニタを使用している人にとって は、こちらのモニタ具合のことまで配慮してくれている Adobe に感謝する ところだろうが、Inspector のサイズ(やツールバー・ボタンのサイズ) を変更するオプションが付いていればいいのにと思う。例えば、Inspector のパネル一つ一つの上部に、豆粒のようなアイコンをかろうじて表示で きるだけの大きさのタブが付いているとかだ。選択されているタブのアイ コンは青色の丸い輪っかで囲まれており、それ以外のものは、紫色のもの で囲まれている。私のモニタで見ると、アイコンは選択したとたんに形が 変わってしまい、即座に認識しづらいのだ。さらに、この Inspector に は、細やかなマウス操作が要求される小さなポップアップメニューが付い ているのだ。

インターフェースに関する文句はこのぐらいにして、PageMill で何ができ るのかを見ていこうと思うが、まず、“カラーパネル”というちょっと気 になる 16 色のクリックで選択できる絵の具箱のようなフローティングパ レットから始めたいと思う。ある色をダブルクリックすると色を変更する ためのピッカーが開く。モニタやプラットフォームに依存しない Web ブラ ウザ映えのする色が揃っている Netscape 216 色パレットのような特定の パレットを使う場合には何の役にも立たない。

変な話だが、ある色を使おうと思ったら、そのパレットから色を着けたい ものまで、実際にその色をドラッグしなければならないのだ。このドラッ グ ドロップまがいのうっとおしい部分を除けば、カスタマイズできる色 グループを使って簡単に色を付けることもでき、非常に便利なパレットだ。 カラーパネルから Inspector のポップアップメニューに色をドラッグする だけで、ある一ページのテキスト全体の色やバックグラウンドの色を設定 できるのは驚きだ。

新機能がたくさん -- PageMill 2.0 の新機能は手足の指全部を使っても 数え切れないほど多い。PageMill は Netscape プラグインを一部(多分最 も多く)サポートしているという特徴を持っている。ということは、 Preview モードでは QuickTime ムービーや Shockwave プレゼンテーショ ンなどを見ることができるのだ。ということは、Adobe の立場からすると、 PageMill が Acrobat プラグインを通じて PDF ファイルを表示することが できるということがさらに重要なのだろう。

テーブルでデータを -- PageMill は今日の HTML エディタの水準からす ると(ほかの製品の水準が決して低いというわけではないのだが)すばら しいテーブル機能を備えている。PageMill テーブルを新規作成すると PageMill のウインドウの幅いっぱいに広がった、同じ大きさのカラムで構 成されたテーブルができる。Netscape Navigator Gold や AOLpress で新 しいテーブルを作った場合は、文字がほんの少ししか入らないような狭い カラムを作ってくれるのだが、それよりも PageMill 方式の方が私は好き だ。ページ上のエレメントを配置するためにグリッドを使うような場合に は、ページをいっぱいに使う PageMill 方式の方が好ましいだろう。

セルの高さや幅が気に入らない? テーブル全体の大きさを変えたい? PageMill はこういった心配をカラムの幅、セルの高さ、それにテーブル全 体の大きさをドラッグ ドロップで変えられるオプションであっさり解決 してくれる。もっと精確さが必要な場合には、対象となるエレメントを選 択して Inspector でフォーマットする。しかし、PageMill にあまりなじ みのないユーザーは、テーブルの各部を上手に選択できるようになるには マニュアルをチェックしなければならないだろう。

連続したセルを選択して表見出しセルにしたり、寄せを変えるなど、テー ブルをフォーマットするのは簡単だ。残念ながら、セル内のテキストを一 度に選択してフォーマットを変更する方法はないので、ある列にあるセル のテキストの色を赤にしたり、番号なしリストにするには、それぞれのセ ルを一つずつ選択してフォーマットしなければならない。

ツールバーにあるテーブルボタンからは、クリック一つでセルを複数の列 やカラムにまたがるようにする設定や、列やカラムを追加したり削除する ことができる。複数の列やカラムを一度に追加したり削除することも可能 だ。

テーブルには中身がなければならないが、PageMill はこの方面ではまだ弱 い。データ入力のベテランは、Tab キーで挿入ポイントを次のセルへ移動 させることができることに満足するだろう。Excel ワークシートを既存の PageMill テーブルにそのままペーストすることはできないが、(まだ試し てはいないが、マニュアルによれば)ワークシートを PageMill にペース トしたら、自動的にテーブルに変換してくれるそうだ(フォーマット情報 はほとんど失われてしまうようだが)。タブで区切られたテキストをペー ストすることはできるが、PageMill はそれをテーブル化するために必要な ことを何かしてくれるわけではない。

分割統治 -- PageMill は HTML エディタ戦争に大量の弾薬を持って参戦 してきたが、Adobe は PageMill の武器庫の中でもフレームを重視してい るようだ。Edit モードで普通の文書の端を Option + ドラッグすると、 ページは 2 つのフレームからなる“フレームセット”に変換される。ま た、ページをフレームに分割するメニューコマンドもあり、複数のフレー ムやネスティングしたフレームもメニューや Option + ドラッグ、または Command + Option + ドラッグで作成することができる。フレームを削除す るには、フレームの端を別のフレーム上に少しだけドラッグする。フレー ムができたら、今度は Inspector で各種の設定を行い、後は普通の Web ページと同じようにコンテンツを入れる。既に作成してある Web ページを 挿入することもでき、PageMill は完璧ではないが、ほかの方法で作成され た HTML 文書をインポートすることもそこそこにこなしてくれる。

フレーム化されたページからのリンクを作成する際には、リンク先がどの フレーム内に現れるか、またはリンク先が新しいウインドウに現れるべき かを指定する必要がある。PageMill は設定されたリンクをトリプルクリッ クすることにより、メニュー(リンクから直接または、文書ウインドウの 右下にある赤い的のアイコンからポップアップする)を表示させるという 方法によって手助けをしてくれる。このメニューにはフレームセットのサ ムネールを表示し、すばやくフレームを選択したり、“新規ウインドウ” や“同じフレーム”といったテキストベースのオプションを選択すること ができる。

Preview モードでは、設定したリンクをたどったり、異なるページをフレー ムセット内に表示することができる。Edit モードに戻ると、Preview モー ドで表示されていたページを編集することができる。

グラフィックまわり -- バージョン 1.0 と同様に、PageMill 2.0 は PICT 画像をインポートして自動的に GIF に変換することができるが、今 回のバージョンでは変換された画像の名前を自分で変更するオプションも 用意されている。もちろん、GIF や JPEG 画像もインポートすることも可 能だ。画像は選択ハンドルをドラッグしてビジュアルにリサイズするか、 Inspector を使って正確なサイズを指定することも、縦横の比率を保った ままリサイズするオプションもある。また、代替テキスト(グラフィック をオフにしてブラウズする際に表示されるテキスト)を入力したり、枠を 設定するのにも Inspector を使用する。

画像とテキストの上下の位置を揃えたり、テキストをイメージの左右に回 り込ませるにはツールバーを使う。多くのの競合製品には見られない機能 として、PageMill は回り込んだテキストを正しく表示することができる。

バックグラウンド画像(Web ページの背景に敷き詰められる画像)のセッ トアップは簡単で、Edit と Preview モードの両方で見ることができる。

挿入されたグラフィックをダブルクリックしても PageMill の Image ウイ ンドウは開かないが、注意深いユーザーならツールバーにあるテーブル作 成用ボタンがクライアントサイド・イメージマップを作成するためのボタ ンに変わることに気が付くだろう。サーバサイド・イメージマップを作成 するには、グラフィックを Command + クリックして、Image ウインドウで 画像を開かなければならない。いずれの場合もホットスポットの形は円、 長方形、不定形にすることができ、リンクやシャッフルレイヤーを作成す るのも簡単だ。Image ウインドウでは拡大・縮小表示、透明効果やインター レースの指定ができ、サーバサイド・イメージマップを作成するツールも 揃っている。

フォーム重視 -- PageMill は依然として CGI(フォームからデータを受 け取って処理するプログラム)を作るには手を貸してくれず、バージョン 2.0 になっても 1 つのページにつき 1 つのフォームしか作ることができ ない。それでも PageMill はフォームのインターフェースを作る手助けは してくれ、不可視フィールドや Submit ボタンとして機能するグラフィッ クなど、少し変ったエレメントを備えている。あるエレメントの基本的な 属性を変更するには、一度クリックして Inspector を使用する。エレメン トに入力する(たとえば、Submit ボタンのテキストを変える)には、最初 にエレメントをダブルクリックしなければならない。

コンテンツは? PageMill はテーブル、フレーム、グラフィック、それに フォームインターフェースをサポートしているため、ページのレイアウト を簡単に行うことができる。DTP プログラムのようにアイテムをどこにで もドラッグ ドロップできるわけではないが、テーブルのグリッド枠内で アイテムを配置することはできる。一方、長い、または複雑なテキストを 主体としたコンテンツを載せたい場合には、どこか別な箇所でコンテンツ を作成しなければならない。

PageMill にはマクロがなく、最低限の Apple Event しかサポートしてい ない。したがって、データベースなどの別のアプリケーションからデータ を取り込み、大量のページを作成しなければならないような場合には向い ていない。

検索・置換機能はあまりにも単純なものしかなく、簡単なワイルドカード を使った検索にも向かないほどだ。それでも、完全な単語を対象とした検 索やファイル全体の検索など、PageMill のライバルには不思議と欠けてい る機能を備えている。検索・置換には一つだけ珍しい機能がある。テーブ ルやフォームの内部だけを対象とすることができるのだ。

PageMill のスペルチェッカは最終的なチェックだけのためのものだ。スペ ルチェッカの Ignore ボタンは Skip というラベルが付いていた方が正し いだろう。それでも、一回のスペルチェックである単語をすべて無視する Ignore All ボタンは用意されている。スペルチェッカのマニュアルはあま りにも曖昧模糊としているため、よほど経験豊富なユーザー以外には全く 役に立たない。ほかのプログラムのユーザー辞書を使う方法や、テキスト ファイルから辞書を作成する方法についてはマニュアルで触れられていな い。

PageMill は標準的な編集慣行をあまりサポートしていない。ワードをド ラッグ ドロップしてもスペースをインテリジェントに追加したり削除す ることはできず、ワードからワードへ、あるいは行末へカーソルを移動さ せるキーボードショートカットもない。それでも、PageMill はダブルク リックは単語を選択すべきことや、ダブルクリックした後にドラッグして 選択部分を拡大したら、選択範囲が 1 語ずつ広がるべきことは知っている。

評価 -- PageMill の数多い優秀なレイアウト機能をチェックしている間 は、使いにくいインターフェースのことを忘れることができる。インター フェースのエレメントは小さすぎるし、私は Command + クリックや Option + クリックを憶えるほど PageMill を使い込んでいないので、PageMill を すいすいと使えるようにはなっていない。私は PageMill がもっと適切な 文章作成用ツールを備えていたら良いとも思うが、レイアウトを重視する という Adobe の判断は理解できないでもない。Adobe のビジュアル重視の 姿勢からすると、スタイルシートがサポートされていないのは残念だ。 Adobe はスタイルシートの HTML 規格がもう少し具体化するのを待ちたかっ たのかもしれないが、とりあえずシンプルなスタイルオプションがあった ら、PageMill はほかの競合製品から頭一つ飛び出すことができたし、一部 の Web デザイナーの必需品になっていただろう。

Web ページのデザインで生計を立てている方、特にテーブルやフレームを 多用するような方には、PageMill 2.0 はすばらしい選択だ。日曜 Web 作 家にとっても、特にそれほど HTML を覚えたいと思わない方には PageMill は良い選択だ。MacUser 誌の 97 年 1 月号には私が(9 月に)書いた PageMill と当時販売されていた競合製品の比較検討記事が掲載されている。

<http://www.zdnet.com/macuser/mu_0197/features/pagebuilders/wysiwyg.html>

PageMill は 2 つの方向から競争を挑まれている。カジュアルな Web 作家 には、Claris Home Page 2.0(12 月に出荷予定)が要注意だ。プロユー スでは、NetObjects Fusion のような製品が何人かを振り向かせるのは間 違いない。Fusion はもう数ヶ月前から Windows 3.1、95、NT 版が販売さ れており、Power Macintosh 版は現在パブリックベータ版が配布されてい る(ファイルサイズは 14 MB だ)。

<http://www.claris.com/products/claris/clarispage20/clarispage20.html>
<http://www.netobjects.com/>

Cyberian Outpost は以下の URL から PageMill を購入する TidBITS 読者 に 4 ドルのディスカウントを提供している。

<http://www.tidbits.com/products/page-mill.html>

    Adobe Systems -- 800/411-8657 -- 408/536-6000

非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway