TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#357/09-Dec-96

今週は、RealAudio の新バージョンと QuickTime 2.5 用の MPEG 機能拡張 についてのお知らせがある。また、新しいスポンサーへの歓迎の言葉と、 Eudora Pro と Eudora Light を徹底的に比較検討したものを載せている。 Adam は、先週のソフトパワー Mac の続編を書き、Matt Neuburg 氏 は、私たちがここしばらくレビューしてきたマクロプログラムの比較の総 括として、最近の Mac を取り巻くオートメーションの現状を味のあるエッ セイにしてこの件を締めくくってくれている。

目次:

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TidBITS 日本語版は以下のメンバーのボランティアによって翻訳・発行されています。
Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>
井ノ本琢也  <inomoto@helix.mgh.harvard.edu>
尾高 修一  <odaka@iprolink.ch>
尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>
小山 純一  <vb4j-oym@asahi-net.or.jp>
加藤 たけあき<oiso@wolfenet.com>
米谷 仁志  <comet@po.iijnet.or.jp>
齊藤 聡   <akkun@ca2.so-net.or.jp>
杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>
高島 均   <hitak@can.bekkoame.or.jp>
西村 尚   <hisashin@st.rim.or.jp>
水木 潔   <HGH03125@niftyserve.or.jp>
村上 浩   <murasan@yk.rim.or.jp>
矢倉 遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>
山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/09-Dec-96

(翻訳::尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

歓迎の辞 -- Small Dog Electronics 社が、新たに私たちのスポンサー となってくれた。DealBITS を購読してくれていた方は、新品・新古品、 ハードウェア・ソフトウェアを織り交ぜたお買得商品をよく出してくれた Small Dog と思い出すかもしれない。DealBITS と Small Dog はよい取り 合わせだった。読者は低価格の恩恵にあずかり、Small Dog の方は、多く の人達に宣伝することができたのだから。Small Dog とのビジネスは楽し かったし、彼らの顧客から送られた好意的なメールは、悪口メールよりは るかに多かったことを考えると、Small Dog と TidBITS というのもよい取 り合わせでないかと思う。Small Dog は、最近 Web サイトを作り、ただい まのお買得商品を目玉としたホームページのほかに、Performa や Power Mac からプリンタやモニタに至るまで販売品目ごとの製品のリストを載せ ている。また FAQ のページには“新古品”がどんなものなのかの説明があ るし、(もちろん)自分達の飼っている小犬の写真もひけらかしている。 Small Dog Electronics 社 -- 802/496-7171-- 802/496-6257 [TJE]

<http://www.smalldoggy.com/>

RealAudio 3.0 -- Progressive Networks 社は Real Audio Player およ び Real Audio Player Plus 3.0 をリリースした。RealAudio Player は、 個人使用の場合は無償となっており、高音質で、28.8 Kbps のモデム経由 でステレオでのストリーム再生を実現する。Player Plus の方は、30 ドル の市販品で、バッファを使っての(接続が遅かったり、とぎれとぎれであ る場合でさえも)音飛びしない再生が売りである。また、オフラインで聞 くための“録音”モードが付いている。動作条件は、無償の Real Audio Player(約 1 MB)が 68040 以降のプロセッサ、Player Plus が Power Mac となっている。[GD]

<http://www.realaudio.com/>

QuickTime 2.5 用 MPEG ベータ版 -- 以前 TidBITS-338 に、QuickTime 2.5 がソフトウェアだけによる MPEG をまだサポートしていないというこ とを書いたが、今回 Apple 社がリリースした QuickTime の機能拡張のベー タ版は、ソフトウェアだけで MPEG のサポートを Power Mac 上で実現する ためのものだ。この機能拡張には、MPEG I ストリーム用に個別のトラック が用意されている。MPEG トラックをセーブすることはできないが、 QuickTime プラグインを使えば、Web ブラウザで MPEG 画像を見ることが できる。[GD]

<http://quicktime.apple.com/sw/plugin_beta.html>


続・停電復帰後の再起動について

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)

TidBITS-356 でソフトパワー型 Mac が抱える停電復帰後の再起動に関す る問題を取り上げたところ、読者から多数の投書を頂戴する結果となり、 正確を期したつもりだった記事も、一変して疑わしいものとなってしまっ た。そこで、これまで分かったところを整理してお伝えしたいと思う。

停電復帰後の再起動を設定できる Apple 社製のコントロールパネルは二つ 存在する。Auto Power On/Off と Energy Saver 2.0(Energy Saver 1.0 や CPU Energy Saver では不可)である。

Energy Saver 2.0 は PCI Power Mac の全機種で(おそらく、最近の NuBus Power Mac 数機種でも)動作する。Auto Power On/Off は IIsi 以降のソ フトパワー型 Mac のほぼ全機種(“Cuda”ADB コントローラチップを搭載 している機種)とソフトパワー型 NuBus Power Mac の全機種で動作する。 PCI Power Mac でも Auto Power On/Off は機能するかもしれないが、すで にその仕事は Energy Saver 2.0 に引き継がれている。機種ごとの動作可 否については、Apple 社の Tech Info Library にその一覧が用意してある。

<http://cgi.info.apple.com/cgi-bin/read.wais.doc.pl?/wais/TIL/ Macintosh!Software/Energy!Saving!Cntrl!Pnls!!Desc>

まだある。PCI Power Mac には必ず Energy Saver 2.0 がインストールさ れているようだが、Auto Power On/Off が機能するはずの旧型 Mac(特に、 多くの Performa モデル)には必ずしも Auto Power On/Off はインストー ルされていない。これは、MegaPhone と衝突しないよう配慮したためであ る。Performa のなかには、この MegaPhone というソフトウェアを使って 留守番録音できる機種がいくつかあるのだ。Auto Power On/Off が初めて 登場したのがいつ頃なのかはよく分かっていない。System 7.5 には入って いるし、聞くところによれば、System 7 Pro にも入っているようである。 さらに不思議なことに、Power Computing 社の System Software CD には Energy Saver 2.0 は収録されていないことが分かった。つまり、Energy Saver 2.0 は Apple 社の CD から入手するしかないのである。

Dave Warker 氏 <davew@waterw.com> は別の解決方法を提案してくれた。 「先日、Server Power モードに関する短い技術文書を Apple 社が公開し ましたが、私たちが運営している FirstClass BBS に利用できそうな技術 だったので、ServerPower という簡単な機能拡張書類を自作しました。 Server Power モードを使える Mac なら、この機能拡張でそのモードをオ ンすることができます。老化した私の IIfx ではだめでしたが、IIvx や私 の Power Mac 7500 では問題なく機能しています。」

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/cfg/server-power-10.hqx>

Joe Bruni 氏 <joseph_bruni@bigfoot.com> は、これまでの経緯を教え てくれた。「記事を読んで、思わず笑ってしまいました。自動再起動処理 をプログラムできる Mac として最初に登場したのは IIsi です。IIsi の 開発用資料には、マシンの起動時刻を設定できるコントロールパネルの必 要性がかなり熱心に書いてあります。時刻を制御用ビットとともに PRAM にプログラムすれば、停電復帰後にサーバ用の IIsi を自動的に再起動で きたのです。ところが、System 6.0.7 にそのコントロールパネルが付属し たことはついにありませんでした(この開発用資料の内容について Apple DTS に文書で問い合わせたときには、その処理を実行するコードを送って くれましたが)。そしてその後に、Apple 社はこの機能を実現する Auto Power On/Off と Energy Saver をリリースしたわけです。

何故この機能を実現できたかは IIsi の開発用資料を読めばわかります。 IIsi 開発中に、Apple 社は複数のチップの機能を盛り込んだハイブリッド チップの開発をスタートしました。そのハイブリッドチップのひとつが Egret チップです。このチップには PRAM、バッテリ駆動の時計、ソフトパ ワースイッチが組み込まれました。“そうだ、時計とソフトパワースイッ チが同じチップに入っているなら、Mac は自分自身で起動できるかもしれ ない”と思った発想豊かな技術者が何人かいたはずです。しかし、システ ムソフトウェアの開発担当がこの機能を取り入れたのは、それから 5 年後 のことでした。全機種とまではいきませんが、ほとんどのソフトパワー型 Mac はこの Egret チップ(あるいは、その派生品)を搭載していて、起動 時刻を設定したり、ソフトウェアで停電復帰後の再起動を制御できるよう になっているのです。」


私がまだ郵便局に住んでいる理由(あるいは、Eudora は生きている!)

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)

今日のインターネットソフトウェア市場がもたらした利益をめぐる、すご い革新や瀕雑なリリース、そしてその奪い合いの間に、いろいろなソフト ウェアが十分に満足のいくものになり、必須ソフトになり、そして必要性 はもちろんソフトウェアの古典となっていることは驚くべきことだ。そし てそれが無料で提供されているとしたら、もっと驚くべきことといえる。 オリジナルのインターネットの精神がまだ持続している、Eudora はもちろ ん多数のそのようなソフトの一つである。

普通の TidBITS の読者が知らないものとして紹介するが、Eudora は素晴 らしいフリーウェアの電子メールクライアントソフトである。当時、イリ ノイ大学の所属であった Steve Dorner 氏の知恵の産物である Eudora(90 歳代でいまだ健在の偉大なアメリカの作家 Eudora Welty 氏にちなんで名 付けられた)は 1990 年に最初にリリースされた。それはメインフレーム 上の Telnet 経由で電子メールを扱うという単調でつらく込み入った作業 や似たような恐ろしいことからインターネットユーザーをすみやかに解放 した。

1993 年にそのプログラムは Qualcomm 社により引き継がれた。Qualcomm 社は San Diego を拠点とするセルラー電話や衛星通信のようなものを扱う 企業である。Qualcomm 社は Eudora Pro と称して商品化し、売り出した。 しかし、独特な気前のよさがあって、フリーウェア版の Eudora Light は 提供され続けている。

長いこと Pro と Light は共存してきた。Eudora Pro は Eudora Pro 3.0 が 7 月に登場するが、Light 版はまだ 1.5.5 のままである。しかし Qualcomm 社はリリースがいつになるか未定だが、Eudora Pro 3.0.1 と Eudora Light 3.0.1 を(同じコードベースで)一緒に開発している。

3.0.1 はまだ開発中だが、古い Light 版を使う気にならず、およそ 60 ド ルの Eudora Pro を買うことも考えていないというユーザーは Eudora Pro のデモ版や Pro と Light のこれから登場予定のパブリックベータをダウ ンロードすることで最新版にひそかに接することができるだろう。Eudora 3.0.1 が製品リリースされても 3.1 のパブリックベータの登場が期待でき る。

<http://www.eudora.com/>
<ftp://ftp.qualcomm.com/quest/mac/eudora/1.5/eudora155fat.sit.hqx>

私はインターネットを使い始めてからほとんどずっと Eudora のフリーウェ ア版を使ってきたが、ひと月かふた月前に Pro 3.0 を使いはじめた。この 記事では、それと Eudora Light 3.0.1 の最新ベータ版を比較している。

Pro 版ひとめぐり -- Eudora Light 1.5.5 または旧バージョンになれて いるユーザーは 3.0 のたくさんの新機能に注目するだろう。(少なくとも 私にとって)議論の余地のあるものは、メッセージ本体のスタイル付きテ キストである。これはインターネットを通じて整形された情報を伝えるた めに HTML のような“<italic>text</italic>”といったマークアップ表現 を用いる。私の感想は「なぜ?」である。すべての電子メールが MIME 準 拠ですらなく、quoted-printable キャラクタはよくテキストに混乱を招く (その行の後ろに“=20”やそれに類するものをくっつける)。いま、ここ に物事を混乱させる互換性のない“規格”があらわれたことになる。

<http://www.qualcomm.com/People/presnick/textenriched.html>

他の新しい(そして議論の余地なく歓迎すべき)機能は次の通りである。 Apple 社の TextEdit は、32K の壁を破った Pete Resnick 氏の新しいテ キストエンジンによって捨てられた。それで Info-Mac Digests 誌(そし て TidBITS 誌!)はもう複数のメッセージに分割されることはない。すべ てのものをどこにでもドラッグ & ドロップできる。移動先のメッセージの 中ではドラッグとダブルクリックができるようなアイコンとして表示され るような添付機能も準備されている。メールボックスはリソースフォーク にメタ情報として自由に保存できる。“TOC”ファイルの必要はなくなっ た。(受け取ったメールすべてに対して)メッセージをバッチで早く処理 し、特別な指示があれば(特別なメールボックスに移動するといった)作 業を行うというフィルタ機能がある。検索ダイアログは大きく改善され、 ニックネームダイアログも改善されている(いまは Address Book と呼ば れている)。このプログラムは改善されて便利になった多くの洗練された インターフェースを備えている。だれかのお気に入りの機能をスペースの 都合で省略したなら申しわけなく思う。

Light 酷評 -- Eudora Pro にあって Eudora Light 3.0.1 で削られた機 能は主として法人ユーザーがなくなって寂しがるような余計なものである。 現行のベータ版に基づくと(その機能は変更されうるが)、Eudora Light ユーザーはツールバーを使えない(落ち着いて。私はそれを一度も使った ことがないのだ)、メッセージラベルがない、(Spellswell 社のスペル チェッカーのようなアプリケーションを稼働するための)“Word Services”がない。(送信したものコピーがメールボックスにリプライさ れる)FCCing 機能がない。送信する前に自動的にニックネームを展開する 機能のためのオプションがない(が、メニューアイテムでそれを直接行わ せることができる)、Eudora Folder に入っていないメールボックスを開 くことができない、“ひな型”ファイル(よく使う定型文を送信するため のテンプレート)がない、メインと交換用以外の追加署名が作成できない、 フィルタの柔軟性が少なくなっている、スタイル付きテキストを作ること ができない(受信メッセージではそれを読むことができるが)。

また、基本的にはサーバに個々のメッセージについての特別な指示を送る ために用いるメール送信オプションは Pro ユーザーだけが使える。例え ば、仕事場と家庭の両方から同じサーバのメールをチェックするとしよう。 仕事場では、新しいメッセージを調べ、仕事に関するものだけをサーバか ら消去する。そして帰宅したとき、家庭で読むべきものだけダウンロード することになる。この機能だけでも多くのユーザーに Pro を選択させる力 になるだろう。

不愉快だ -- 私は Eudora のいくつかのことについて不便を感じている。 ひとつは、一般的にはマイナーで個人的な好みの問題なのだが、隠された 機能を使うインターフェースについてである。例えば、メールボックスを 強制的に圧縮するためには(それは普通ある条件が整ったときに自動的に 行われる)ウインドウの左下隅をコマンドキー + クリックすることを知っ ていなければならない。同等の機能を持つメニュー項目はないのである。 読んでいるメッセージを残したままメールボックスを開くにはそのタイト ルバーをダブルクリックする(なぜ Finder の場合と同じコマンドキー + クリックでないのだろう?)。Address Book に切り替えることなく Address Book に新しい情報を追加するにはシフトキーを押しながら To ボ タンを押す。メニューバーでクリックを行う前にモディファイヤーキーを 押しておくだけで、多くの重要な操作方法が表示される。このように機能 のつめ込まれたプログラムに伴う設計上の問題に縛られていることを私は 実感する。洗練されたバルーンヘルプとオンラインテキストヘルプがその ようなことの一部については情報を与えてくれる。しかし結果として、こ の多数の機能は多くのユーザーには決して見つけられることはないであろ うし、それ以外には(私のように!)覚えておくことに不便を感じること になるだろう。

その他の不満:Eudora は多くの有用な作業を行うためにスクリプトが書け るが、不十分なスクリプト関数しかない。その関数の小さなサブセットだ けが AppleScript や Frontier を経由して動作できるのであり、その内部 環境についてはドキュメントがほとんどあるいはまったく入手できない。 入手できるフィルタの動作はまったく不十分である。例えば、指定した条 件に合致したメッセージをテキストファイルとして保存するオプションが ない。そして、私のコンピュータではいくつか奇妙なコンクリフトが発生 する。Netscape や Fetch のようなアプリケーションがインターネットに 接続しているときに Eudora をバックグラウンドで開いていると、Eudora は最終的にクラッシュしてしまう。このバグは私が試用したすべてのバー ジョンでつねに発生してきた。

トロフィー -- いまだに、私は今まで使ったどんな電子メールプログラ ムよりもはるかに、はるかに Eudora が好きである。ウインドウがメール ボックスを表し、ダブルクリック可能な情報の列がおのおののメッセージ を表し、それぞれのメッセージが開くとウインドウが表示されるというそ の基本的なインターフェースのメタファはそれ以上改善の余地がないほど だ。その基本的なメッセージを操作する能力、リプライ、送信、転送およ び送信に失敗したメールの再送を行う方法は素晴らしい。

選んだ Eudora のバージョンがどれであっても、POP サーバから電子メー ルを受け取り、SMTP サーバに電子メールを送るのであれば(専用線やダイ アルアップ接続のほとんどのインターネットユーザーにあてはまる)、 Eudora でいくしかない。もしも Eudora を使っていないとしたら、システ ム管理者にこびへつらうに値するだけ POP サーバに能力があるということ で、それはけっこうなことだ。Eudora はクリーン、シンプル、直感的であ り、強力で、緻密であり(ここで説明するには私の能力をはるかに超えて いる)、高速で、そして楽しい。

そして“楽しい”というのは歓喜や満足を意味しているのではない。Eudora にはずうずうしいほどのユーモアのセンスが潜んでいる。インターフェー スを 3D 形式にするためのチェックボックスには“トレンディな 3D ジャ ンクを描く無駄なサイクル”とラベルがついている。メッセージを消去す るためにゴミ箱に直接送る代わりにシフトキー + オプションキー + コ マンドキー+ D を押すことは“核攻撃”と呼ばれている。すべてのヘッ ダを表示するためにオン/オフするアイコンは“つまらん、つまらん、つ まらん”と言う。添付されたデータフォークを uuencode するときにアイ コンは“まずい”という。そう、まさに、オリジナルのインターネット精 神は Eudora の中に生きているのだ。

DealBITS -- Cyberian Outpost 社は以下の URL で TidBITS 読者のために 56.95 ドル(4 ドル値引き)で Eudora Pro を販売している。

<http://www.tidbits.com/products/eudora-pro.html>


Mac とマクロをめぐって

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

比較的最近、TidBITS では 3 つのマクロプログラムを取り上げ(QuicKeys を TidBITS-347 から、OneClick を TidBITS-350 で、KeyQuencer を TidBITS-351 で)検討した。その結果、私は Mac の現状について少し考 えさせられることになった。理想的な世界では、私はマクロプログラムな どは全く必要ないはずだと思う。そんなものが無くても Mac は簡単にスク リプトで駆動できるはずだ。しかしその日が来るまでは、マクロプログラ ムが救いの手を差し伸べてくれるのだ。

牢獄と約束 -- 問題はこういうことだ。依然としてソフトウェアが私た ちを支配しているのであって、その逆ではない。“巨大多機能アプリケー ション”たちで満たされた私の Mac は、アプリケーションの構造に私の習 性を合わせたり、アプリケーションの機能に私のニーズを合わせることを 強要し、時には個性の開放の場よりも企業宣教師の巣のように感じられる。 Mac はあの有名な“1984”のコマーシャルで約束したものをまだ実現でき てはいないのだ。ユーザー駆動のイベントループといってみたところで、 決められた形式や限られた選択枝に縛られた囚人のようなものだ。

このような状況から脱出する一つの方法は、自分のアプリケーションを一 から作り出すことだが、これでは不必要に車輪を再発明しているしている ようなものだ(Mac がもっと簡単にプログラミングできるべきだとは思う が、それはまた別の話だ)。ほとんどの場合には、既に手元にあるプログ ラムが必要な作業をほぼこなしてくれるだろう。もしプログラムが私たち のニーズをもっと理解することができるか、必要に応じてプログラムを組 み合わせることさえできれば。

たとえば、Nisus Writer で検索・置換を行った後に Command + S を押し ても何も起きないということを一日のうち何度も経験する。どうしてだろ う? 私は文書を見ているのだけれども、まだ検索・置換ウインドウが前面 にあり、この状態では Nisus Writer は“保存”コマンドが無効になるの だ。それならしばらくしたらコンピュータも気が付いて、「ああ、Matt。 きみはいつも検索・置換ダイアログが前面にあるのに Command + S を押 したがるね。実はずっと気になってたんだけど、もしかして、保存したい のかね?」と聞いてくれても良さそうなものではないか。残念ながら、コン ピュータがこのように喋る(または思う)ことは近い将来にはないだろう。 そこで、あるプログラムが期待通りに動いてくれないのなら、自分でカス タマイズできてしかるべきだ。

[このようなエージェント技術に最も近い試みとして、Charles River Analytics 社のシェアウエア、Open Sesame があるが、私が以前テストし た際には一度も役に立ちそうな提案はしてくれなかった。programming by demonstration(お手本を示しながらの自動プログラミング)に関心がある 方は、Allen Cypher 氏の Eager のデモをチェックされたい。 -Adam]

<http://www.cra.com/products/sesame/sesameinfo.html>
<http://www.atg.apple.com/Allen_Cypher/Eager/Eager.html>

混乱の分布図 -- Mac にはプログラムのカスタマイズ機能は内蔵されて いない。そこで、プログラムの作者たちは、機能が外部からコントロール できるように意識的にプログラムの作らなければならない。おおまかにい えば、これによってあるプログラムが“スクリプタブル”になるのだ。

しかし、カスタマイズ機能の標準というものは確立されていない。Mac の 初期に、Apple 社はデベロッパーたちが自主的に標準に従うように説得し た。ウインドウは こう_ でなければならない、メニューは _こう 機能 しなければならない、ダイアログは こう 動くべきだ、などといった具 合に。これがあまりにも見事に成功したために、Apple のヒューマン・イ ンターフェース・ガイドラインは Windows やその他のグラフィカル・ユー ザー・インターフェースのルック フィールさえも規定しているのだ。と ころが、アプリケーションをスクリプトで駆動できるようにすること(ス クリプタビリティ)は、これが System 7 で比較的簡単に実現できるよう になった後も、Apple はデベロッパーがアプリケーションをスクリプタブ ルにすることを断固としては主張しなかった。

その結果、デベロッパーたちはスクリプタビリティの重要性をとにかく理 解していないことが多い。MACSCRPT メーリングリストでは、ベテランのス クリプターたちが“わかってくれない”デベロッパーたちのために頭を抱 えることが日々見受けられる。たとえば、ある主要なデベロッパーが、自 社製品の次のバージョンがスクリプタブルでなければならない理由を購読 者たちに要求したことがある。(MACSCRPT メーリングリストを購読するに は、<listserv@dartmouth.edu> に “subscribe macscrpt <あなたの名前>” と本文に書いたメールを送っていただきたい。)

私はコンピュータとはそもそもプログラムされるべきものだと考えている ので、理想的にはすべてのプログラムがスクリプタブルであるべきだ。し かし実際には、プログラムの動作をどのようにして、またどれだけカスタ マイズすることができるかはプログラムによって大きく異なる。プログラ ムによっては持っているすべての機能を外部に開放しているし、プログラ ムによってはほんの一部しか開放しておらず、プログラムによっては全く 機能を開放していない。それに、ユーザーがこれらの機能をコントロール する“プラットフォーム”の問題もある。あるプログラムは独自のスクリ プティング言語を内蔵しているかもしれず、またあるものは Mac 本来の メッセージングシステム、Apple イベントに応答し、またあるものはこの 両方を使う。また、プログラムのユーザーインターフェースを実際の機能 とどれだけ切り離すことができるかという問題もある。たとえば、メニュー やダイアログがカスタマイズできるか、またはプログラムがウインドウを 開いたりフォアグラウンドにいなくてもバックグランドで処理を行うこと ができるか、といった具合だ。

スクリプタビリティの指標はほかにも考えられるだろう。大事なことは、 スクリプタビリティ分布図を作ったとしたら、既存のプログラムはその分 布図上のあらゆる領域にちらばるだろうということだ。Microsoft Word 6 は内部スクリプティング言語を通じて持っている機能を全て外部に提供し、 一部を Apple イベントにも開放している。そのうえ、メニューをカスタマ イズすることができ、カスタムダイアログやパレットといった新しいイン ターフェースエレメントも作成することすらできる。Nisus Writer 4.1 は 機能の一部を内部スクリプティング言語を通じて開放しているだけで Apple イベントには全く対応していない。インターフェースはわずかにカスタマ イズ可能なだけだ(メニューに割り当てられたキーボードショートカット は変更することができる)。Movie Player はスクリプタブルではない。こ んな具合だ。

多言語スクリプティング -- Word 6 のような完璧なスクリプティング対 応はどちらかといえば例外で、一般的にスクリプタビリティは苛立たしい ほど欠落している。Nisus Writer は選択されたテキストのフォントやスタ イルを教えてはくれないし、Eudora にどれかメッセージを開かずに選択さ せることはできない。Word ほど徹底したインターフェースの分離(どのメ ニューアイテムが何をするかを定義できる)はさらに珍しい。もしかした ら System 8 がこのようなアプリケーションの書き方を簡単かつもっと魅 力的にしてくれるかもしれないが、あまりあてにはできない。Apple イベ ントを通じてほかのプログラムの機能にリンクすることができないような、 完全にアプリケーション内部だけのスクリプティング言語というものもあ る。これは気が狂いそうだ。

それでも、内部的にはスクリプタブルなプログラムがすべて外部との通信 をサポートしており、最低でもほかのプログラムから内部的なスクリプト 言語で書かれたスクリプトを送ることができると仮定しよう。それなら外 部的なスクリプタビリティの方が良いと思う方もいるかもしれない。とい うのは、内部的なスクリプティング言語はユーザーに(良くできていると は限らない)新しい言語を学ぶことを強いる一方、Apple イベント経由の 外部的なスクリプティングなら AppleScript など一つだけの言語で処理す ることができるからだ。しかし、多くの内部スクリプティング言語はすば らしい仕上がりになっている(Excel の Visual Basic はこの一つだ)。 それに、皮肉なことに、AppleScript に対応したプログラムはそれぞれが 独自のシンタックスを導入することができるので、 依然として プログ ラムごとに新しい言語を学ばなければならないのと似たような事態になっ ている。むしろ、シンタックスがわかりにくかったり、きちんと文書化さ れていないことが多いため、こちらの方が難しい。(Eudora でメッセージ を削除する方法がわからずに MACSCRPT メーリングリストに助けを求めて くるメッセージをどれだけ目にしたことか。“move message 0 to end of mailbox "Trash"”という魔法の AppleScript 方程式はどう見てもわかり やすいとはいえない。)さらに、外部からのスクリプタビリティは根本的 な問題を解決しない。プログラムが持っている機能をどれだけ外部に提供 しようとするかは依然としてプログラムが決定権を握っているのだ。

マクロ管理 -- カスタマイズが可能なら、プログラムの既存の機能を新 しい形で組み合わせることができるはずだ。また、ほかのプログラムの機 能をも取り込み、それぞれの利点を選んで組み合わせることもできるだろ う。したがって、プログラムのデフォルトでの動作と、何度もくり返され る作業や特殊なタスクを処理するため、プログラムの動作を新しいアプリ ケーションに組み込むことができなければならない。これはそれぞれのプ ログラムの状態を感知して応答することができる地点で行われなければな らず、同時にシステム全体の力を引き出し、最もよく操作の対象となるよ うな情報(たとえば数字や文字列など)に対する基本的なプログラミング をサポートしていなければならない。

スクリプタビリティがもっと標準化されるまでは、システムレベルのマク ロプログラムがカスタマイズに最も適した司令塔となるだろう。システム レベルのマクロプログラムの欠点は、どれだけよくできていても、ほかの プログラムやシステム機能拡張のバグなどの問題に晒される可能性がある ことだ。もしあるアプリケーションのウインドウ管理に問題があったとし たら、マクロプログラムがフローティングパレットやダイアログを表示し た際に(たとえマクロプログラム側では完璧に正しい処理しか行っていな いとしても)問題が起きる可能性がある。いずれにせよ、このようなマク ロプログラムは文字を入力したり、マウスをクリックしたり、メニューを 選択したり、その他ユーザーの動作をシミュレートし、全くスクリプタブ ルでないアプリケーションや部分的にしかスクリプタブルでないものを操 作することができる。これは通常の操作に介在してキー入力などのユーザー アクションに反応したり、どのウインドウが開いているか、クリップボー ドには何が入っているか、このフォルダにはどんなファイルが入っている かというシステムに関する情報を処理することができ、コマンドの受け渡 しができる。そうして、理想的には、できれば何らかの簡単かつ柔軟な方 法で、本格的なプログラミングが可能であるべきだ。

私たちが検討してきた 3 つのマクロプログラムのうち、WestCode 社 の OneClick が最もプログラム性に富んでいる。OneClick の直感的でエレガ ントな言語はユーザーをシミュレートする強力なパワーや、システムレベ ルの機能、それにプログラミング構造を持っている。HyperCard との比較 が的を得ているのは、OneClick が単なるマクロプログラムではなく、小さ なプログラミング環境だからだ。OneClick のパレットに置いたボタンはク リックに反応し、メニューを表示し、選択されたアイテムに応じて反応す る。テキストやファイルのドラッグ ドロップを受け付け、自分自身の表 示をオン/オフし、アイコンやテキストベースの情報、それにプログレス バーを表示する。

私は今では「なんでこのプログラムはこんなことができないんだ?」という 疑問が頭をもたげた時、ほとんど常に OneClick に頼るようになっている。 Eudora のフィルターにはサブジェクトや差出人に応じて受信箱に入って来 たメッセージを自動的にテキストファイルに保存するというオプションが 用意されていなかったが、これをやってくれる OneClick ボタンを作るの は簡単だった。Nisus Writer では、選択されたテキストのフォント、サイ ズ、スタイルを知るためにはいくつものメニューを覗かなければならなかっ たが、私はこの情報をテキストで表示するパレットを作成した。こういっ たことは決して Quickeys ではできなかったことなので、お陰で私は Quickeys とその他多数のユーティリティやコントロールパネルをお払い箱 にすることができた。

<http://www.westcodesoft.com/>

とはいえ、OneClick はユーザーに多少の妥協を強いる。ほかのシステムレ ベルのマクロプログラムと同様に、OneClick は 低いレベルで動作するた め、一部のプログラムや機能拡張とコンフリクトを起こすことがある(少 なくとも私のマシンでは)。それに、OneClick はまだ少し幼いところがあ る。開発途上の興奮を味わいたかったり、自分のためのツールを開発する 時間を投資したいのなら別だが、現時点ではまだ期待しただけの機能が用 意されていないかもしれない。

シンプルなインターフェースと少ない必要メモリ、それにほかのマシンの リモートコントロールやプリンタの選択、カーソルのアニメーションなど といった特定の機能が必要な場合には KeyQuencer がベストだろう。Binary Software 社は WestCode と同様に提案には非常にオープンなので、ここで も製品の成長に関与するチャンスがある。

<http://www.binarysoft.com/keyquencer/keyquencer.html>

もっと実績のあるものの方が好きだったり、テキストベースの言語を全く 学びたくないような方には、Quickeys が依然として重要な選択枝だ。 Quickeys はダイアログやレコーディングを使うことにより、ユーザーにプ ログラミングが行われていることを全く感じさせずに機能を構築させてく れる。それに、Quickeys はもう長年にわたって使われてきた磐石のプログ ラムで、多くの非標準的なシステム機能拡張やユーザーインターフェース とのつきあい方を学んできている。CE Software 社のサポートはほとんど 消滅してしまっているようだが。

<http://www.cesoft.com/quickeys/qkhome.html>

重要なことは、コンピュータではなく、あなたが主人であるようなマクロ プログラムを手に入れることは可能だし、手に入れるべきだということだ。 数多くの選択枝があるということはすばらしいし、どれを選んでも大間違 いということはない。いずれもスクリプティングすることができないプロ グラムを駆動することができ、いずれも AppleScript と話してスクリプタ ブルなプログラムと協力しあうことができ、いずれも安価(40 〜 100 ド ル)だ。最終的にどれを選ぶかは個人的な好みとニーズによる。クリスマ スプレゼントとして自分に買ってあげるというのはいかがだろう? 2 つ以 上買って組み合わせることだってできる。いずれにせよ、コンピュータを 支配するのはあなたなのだ。1997 年を 1984 年のようにしてはいけない。

DealBITS -- Cyberian Outpost は依然として以下の URL から KeyQuencer を 33.95 ドル(4 ドルの割引)で提供している。このページ は特に特別価格になっているとは書いていないが、実はお買い得なのだ。

<http://www.tidbits.com/products/key-quencer.html>

また、WestCode Software 社は TidBITS 読者に OneClick の特別価格を設 定してくれた。以下の URL 経由なら、OneClick を 59.98 ドル(通常価格 から 10 ドルの割引)で購入することができる。

<http://www.tidbits.com/products/one-click.html>


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