TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#361/13-Jan-97

先週は、Macintosh 信者たちが Macworld Expo 開催地のサンフランシスコ に集結した。今週の TidBITS では、そのショーのハイライトとして、 Apple 社のオペレーティングシステム戦略についての分析、注目を集めた 会社や製品、そして恒例の、ブース、アイテム、イベントで目についたも のの一覧をお伝えする。また、Internet Explorer 3.0 と Macromedia 社 による FutureWave 社買収のニュースもお届けしよう。

目次:

Copyright 1996 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は以下のメンバーのボランティアによって翻訳・発行されています。
Kaz Yoshikawa <kaz@fact.com>
井ノ本琢也  <inomoto@helix.mgh.harvard.edu>
尾高 修一  <odaka@iprolink.ch>
尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>
小山 純一  <vb4j-oym@asahi-net.or.jp>
加藤 たけあき<oiso@wolfenet.com>
米谷 仁志  <comet@po.iijnet.or.jp>
齊藤 聡   <akkun@ca2.so-net.or.jp>
杉浦 雄一郎 <ysugiura@direct.ca>
高島 均   <hitak@can.bekkoame.or.jp>
西村 尚   <hisashin@st.rim.or.jp>
水木 潔   <HGH03125@niftyserve.or.jp>
村上 浩   <murasan@yk.rim.or.jp>
矢倉 遠十吉 <oto@mb.infoweb.or.jp>
山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/13-Jan-97

(翻訳:村上 浩 <murasan@yk.rim.or.jp>)

Internet Explorer 3.0 -- 先週の Macworld Expo で、Microsoft 社は Power Mac 用 Internet Explorer 3.0 の最終版をリリースした。HTML ス タイルシートや(論議の的である)RSAC Internet Ratings システムに加 え、Explorer 3.0 では ActiveX や Java にも対応している。Apple 社の Java VM か Microsoft / Metrowerk 社の Java VM のどちらかをユーザー が選択できるようになっており、Mac 用としては初の Just in Time(JIT) Java コンパイラも備えている。ActiveX や Java を利用するには余分にメ モリが必要となるが、4 MB の RAM でも十分快適に Explorer は動作して くれる。その理由のひとつが、電子メールと Usenet ニュースの機能を別 アプリケーションとして分離したことだ( TidBITS-335 を参照)。さま ざまなパッケージの Internet Explorer 3.0 を Microsoft 社のサイトか らダウンロードできるが、Java 対応のフルバージョンだと 7 MB を越える サイズになっている。Apple 社の CFM-68K にからんだ問題( TidBITS-356 を参照)のため、68K Mac 用の Internet Explorer 3.0 はまだ用意されて いない。[GD]

<http://www.microsoft.com/ie/mac/>

Macromedia 社が FutureWave 社を買収 -- 先週、Macromedia 社が FutureWave Software 社の買収を発表。オンライン・マルチメディア市場 での勢力拡大に意欲を示した。FutureWave 社は、(ほかにも機能はある が)コンパクトなベクタ・ベースのアニメーションが作成できる FutureSplash 製品ファミリーの開発元である。このアニメーションは Web ブラウザのプラグインで見ることが可能だ。Macromedia 社は FutureSplash 製品群を Macromedia Flash と改名して Shockwave ラインアップに統合し ていく予定でいる。同社の Director も含めたほかの Web アニメーション 技術より小型で高速なことから、FutureSplash は数多くのハイエンド Web サイト(Microsoft 社の“新しい” MSN など)で現在使われている。後 は、法外な価格設定も含め、Director の魅力に欠ける機能を Macromedia Flash が受け継がないことを祈るのみである。[GD]

<http://www.macromedia.com/software/flash/>


Macworld Expo San Francisco のこと

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

私はいつも Macworld Expo が終わると、ショーについての感想をまとめた 記事を書いてきたが、ここ数年間はあまり前向きな記事を書くことがなかっ た。しばらくの間は面白い製品があまり登場しなかったし、インターネッ トサポートに関しては概して物足りなく感じていたからだ。しかし、今年 は新たな希望(と得体の知れない悪性の風邪)とともに Macworld Expo 会 場を後にすることができた。

ビッグな NeXT -- ビッグニュースはもちろん Apple 社による NeXT 社 の買収だ。会場では Apple からさらに詳しい情報を引き出すことはできた が、Apple は今後数年間で歩むべき道を比較的大まかに描いていただけだっ た。詳細は Tonya が書いている Gil Amelio 氏のあまりにも長かった基調 講演の記事に譲ることにしよう。

買収劇に対する反応はおおむね前向きだったが、何人かは Apple は単に何 かをしなければならないと思っただけで、細かなことはそれほど問題では なかったのだという私の意見に同意していた。会場では将来のオペレーティ ングシステムへの支持を誇示するためにか、物置から引っ張り出されてき た NeXT マシンもちらほら見受けられた。私が聞いた最も批判的な意見は、 NeXT 買収は結構だけど、Apple の本当の問題(彼の意見では経営陣)を一 つも解決することにはならない、という元 Apple 社員のものだった。

元 NeXT の社員やデベロッパーがどこからともなく現れ、深夜のパーティー に時折シュールな雰囲気を与えていた。現役の NeXT デベロッパーたちは 興味深いことに買収には好意的なようだ。彼らは今まで陽の当らなかった 自社製品が主流のマーケットに踊り出る可能性に狂喜していた。一人は Apple が一ヶ月の間に売る Mac の数は、今までに NeXTstep が売れた数 (NeXT 社製ハードウエアの数を入れて)よりも多いだろうと推定していた ので、NeXT デベロッパーが大きなマーケットを歓迎するのも無理はない。

Power と Be -- NeXT 買収が好評だったにもかかわらず、Be 社のブース は最も人気の高いブースの一つだった。Power Mac 上の BeOS 上で Macintosh アプリケーションを動かしているマシンなどは近くで見ること がほとんど不可能だった。ほかの出展者には本格的なバッジオタクに身を 固めてもらうため、大きな黄色いバッジで大量配布していた Iomega 社の ように気前よく大番振る舞いをしているところもあった。

演出という点では、Macintosh クローンメーカーの Power Computing 社に 迫るものはいなかった。引き続き“Mac のために闘え!”というテーマを中 心に、会場の一角を完全に占拠してブースを迷彩ネットなどのサバイバル 用品で覆っていた。Power 社のスタッフは全員黒い T シャツと迷彩パンツ を着用しており、ひと目で見分けがつくだけでなく、おそらくは一部の他 社の衣装よりもだいぶ楽だったに違いない。Power Computing 社の CEO Steve Kahng 氏の顔写真がポスター、T シャツ、それに Moscone Center の 2 つの会場のうちの一つの外にある巨大な横断幕を飾っていた。Steve の肖像の下には、“Steve は告げる”として、“Mac のために闘え”的ス ローガンが書き付けてあり、何人かには毛沢東主義ではないかと憂慮され ていた。また、Power 社は米軍の輸送車両である Hummer を一個中隊分借 り出し、メガホンを搭載して“Steve は告げる”スローガンを大音量で鳴 らしながらサンフランシスコの町を駆け巡った。

Power Computing のマーケティング責任者、Mike Rosenfelt 氏が Adobe Premiere を使った性能比較テストで、Power Computing マシンが Compaq 社製の 200 MHz Pentium Pro をぶっちぎるのを見せて聴衆を大いに盛り上 げるのを見た後、私が思ったのは Apple にもこの熱意が少し欲しいものだ ということだった。Apple の最も重要な強みに、熱心なユーザーベースと いうものがあったはずだ。その忠誠度は多少衰えてきているかもしれない し、Power 社の展示は押し売りそのものかもしれないが、まだ Macintosh の世界では炎が燃えていることを感じさせるのだ。

<http://www.powercc.com/>

今度こそインターネット -- 過去数回の Macworld Expo では、ほとんど の会社が突然インターネット会社のふりをしているのを見て苦々しく思っ たものだ。製品がインターネットと関係あろうが、ほとんど、あるいは全 くなかろうが、とにかくそれが主張だったのだ。今年はインターネットは やや抑え目で、さらに重要なことには、インターネットを前面に押し出し ている場合には、ちゃんとそれを支える現実があったのだ。

会社の URL を背中に焼き付けた T シャツはどこでも見られたし、「URL が書いてある一番小さな紙をくださいと」言った時に何のことかさっぱり わからないという顔に遭遇する回数も少なくなっていた。ある製品につい てもっと詳しく調べることを自分に思い出させるには、立派なカタログな どは必要なくて、名刺か絵葉書で十分なのだ。せっかく手間と大金をかけ てパンフレットを印刷しても、並程度の出来の Web サイトと比べてもほと んど役に立たないに等しい。

脇役に感謝 -- 私の全体の印象に影響を与えた大きな要因は、多数の小 さな会社がショーに出展していたことだ。特に、Developer Central、 Developer Greenhouse、Component 100 の各エリアを手配した人たちに感 謝したい。このエリアには小さな会社にほんの少しのスペースを与え、普 通ならとても参加費が払えないような小企業が出展することを可能にして くれた。

Developer Central はデベロッパー用のツールが中心だったが、いくつか 開発とは全然関係の無い面白いツールを発見した。その一つが私が最優秀 新製品賞を進呈した 6prime 社の Rev だ。これは一般向けのバージョン管 理プログラムとでもいうべきもので、これについては来週号で詳しく紹介 するつもりだ。Developer Greenhouse は応募者の中から最も面白そうな会 社を選ぶという趣向のようだ。ここでインターネット関係の会社がいくつ か見られたのは、最近 Mac に起きている面白いことはインターネット関係 だという事実を裏付けている。Component 100 は、OpenDoc を使い始めて いる人たちに安価な LiveObjects を展示(と販売)している会社がひしめ いていた。中にはかなり立派なツールもあり、今後もっと調査しようと思っ ている。

最後に、興味深い話を一つ。金曜日の朝、Marriott Hotel(会場となった 主なホテルの一つ)で友人と朝食を食べながら、ウエイターと実に面白い 話をすることができた。彼はハイテクに詳しいわけでもなく、Macintosh 業界について知っていることといえば新聞の見出しに書いてあることぐら いなのだが、彼は Macintosh 業界が順調に回復に向かっていることを感じ ていたのだ。彼の判断はテーブルで接する客の様子から汲み取ったもので、 ウエイターがショーの期間中に接する人数を考えたら、かなりの規模のサ ンプリングだと考えて良いだろう。彼によると、去年はテーブルで文字ど おり泣いている人もおり、全体の雰囲気は暗いか絶望的のどちらかだった という。一方今年は、Apple の 1,500 万ドルの赤字にもかかわらず、人々 は明るくて前向きだそうだ。これが科学的に何かを表していると言うつも りはないが、今後私がショーに出かけた際にはもっとウエイターとお喋り をするようになるのは間違いない。彼らが最も的確に世論を解析してくれ るかもしれないのだ。


基調講演・期待の NeXT

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

先週の TidBITS-360 に掲載した Adam と Geoff の記事を読んでご想像な さったとおり、先週の Macworld Expo は、Apple が NeXT Software 社を 買収した噂で持ちきりだった。NeXT テクノロジーが採用される Apple の 新しい OS (コードネーム、Rhapsody)に関するもっとちゃんとした詳細 を知りたいという思惑を抱いた人が、基調講演に大勢集まった。私もその 中に混ざって相当な量のメモを取りながら 3 時間の講演を聞き、情報を いっぱい手に入れた。そして数日後、他の人達も大体私と同じような受け 取りかたをしたということが分かった。要するに、基調講演には、新しい ニュースはほとんど無かったのだ。

基調講演では、Rhapsody に関する疑問のうち幾つかの非常に重要な点には あまり答えていなかった。Gil Amelio 氏は、下位互換の重要性を訴えてい たのに、Rhapsody は、“Apple 社製およびライセンス契約をしている会社 製の、現在発売されている” PowerPC Mac だけでしか動かないらしい。旧 モデルの Power Mac や 68K Mac にどう対処するかは、どうやら Apple は 未だ検討中のようだ。はっきりしていないことの中にも、希望的観測をし ていいものがある。Apple は、今ある System 7.x のアプリケーションに 関しては、エミュレータの類のものを使わずに、Rhapsody 上でネイティプ に動作するようにするつもりらしい。もっとも、この互換性は、Rhapsody の「初お目見え」の時には実現しないかもしれない。さらに、この Rhapsody に関しては、多少のインターフェースの変更や改良があったとし ても、マック・ライクなものが期待できそうだ。

基調講演では System 7.x のアップデートに関しての確実な点にはほとん ど触れていなかったが、半年おきのアップデート・リリース案は健在なよ うだ。それに、基調講演と Apple の Web サイトの両方を照らし合わせて、 細部をもっとうかがうこともできた。前もって断っておくが、ソフトウェ アリリースの予告発表を聞くときは、私はいつも一歩下がって(ときには、 十歩ぐらい下がって)聞くようにしている。

お手元の Mac には -- Apple は、来たる 1 月 31 日に Mac OS 7.6 (コードネーム、Harmony)をリリースする。今回のリリースでは、インス トーラが新しくなっており、内容的には、既存のコンポーネントに新しい コンポーネントを少々掛け合わせたものになっている。特徴の簡単な説明 には、QuickTime 2.5、QuickDraw 3D 1.0.6(PowerPC のみ)、QuickDraw GX 1.1.5、LaserWriter 8.4.2 とさらに磨きのかかった Extensions Manager などが、挙げられている。私は、お試し用の OpenDoc パーツが 入っている OpenDoc Essentials キットを見てみたいと思っている。System 7.6 は、最近のだいたいの Macintosh で動作するのだが、68020 や 68000 ベースのマシンや、SE/30、IIx、IIcx では動かない。しかし、68K Mac を お持ちのかたには、アップグレードはあまりお薦めできない。現在悪名を とどろかしている CFM-68K のバグ( TidBITS-356 参照)の問題があり、 68K マシンでは OpenDoc、Cyberdog 、LaserWriter 8.4 が動作しないから だ。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q2/ 970107.pr.rel.macos76.html>

Apple は、今回のリリースをお金集めのために利用しているように思われ る。この System 7.6 は、予想小売り価格で 99 ドル、System 7.5 または 7.5.x を持っている人は 69 ドルぐらいになりそうだ(フロッピー版はさ らに 30 ドルの追加料金がかかる)。昨年の 12 月 7 日以降に Mac を購 入した方は、Mac OS Up-To-Date プログラムを覗いて、もっと大きな割引 を受けられるかどうかを確認して頂きたい。

<http://www.macos.apple.com/macos/releases/fulfillment.html>

もちろん、アップデートの入手方法は多数登場するだろう。合衆国内から の購入に関しては、Apple 社(800/742-1926)に問い合わせて頂きたい。

強まる Tempo -- Mac OS 7.6 は、どうもパッとしないもののような気が するのだ。最大の原因は、その機能のほとんどが個々に入手可能になって いるからである。半年後に登場予定の Tempo のほうが、PowerPC でネイ ティブに動作をする多くの Copland Finder エレメントが入ってくるので、 魅力的だろう(Copland は、以前予定されていた Mac OS 8 のコードネー ムだった)。フォルダは、子フォルダが次々と“ポップアップ”して、ア イテムを簡単に深い階層にあるフォルダに保存できるようなタイプのもの になる。Finder には、作成日によるファイルのソートや、ファイルやフォ ルダがランチャーのボタン代わりになるような新しい機能が加わる。

基調講演の際のデモでは、ウインドウの右上隅部分の変更を取上げていた。 今までウインドウの右上にあったのはズームボックスだけだったが、Tempo では、ここに、クリックひとつでウインドウがタイトルバーだけの表示に なる“ウインドウシェード”ボックスも置かれることになるらしい。 (Aaron や Kaleidoscope を使えば、この機能を体験できるが、Tempo に は Option キーを押しながらこのウインドウシェードボックスをクリック すると、開いている全てのウインドウがタイトルバーだけに早変わりする という新しい機能が加わることになるようだ。)7.6 へのアップグレード の必要のない方や懐具合が許さない方は、だいたい同じくらいの価格にな ると予想される Tempo まで待っても良いだろう。

<http://greg.math.harvard.edu/>

Apple 協奏曲 -- Apple によると、Rhapsody のデベロッパー向けリリー スは、今年半ばに予定されており、普通の Macintosh ユーザー向けには、 来年のお正月前に初お目見えということになるだろう。もっとも、業界筋 の話では、この日程は気負い過ぎていて現実味を欠いているようだ。また、 Apple は、System 7 の別バージョン(コードネーム、Allegro)を 同じく 98 年の年明けに、そして、さらに別のバージョンの System 7(コードネー ム、Sonata)とまた一歩進んだ Rhapsody をその半年後の 98 年半ばに出 荷することにしている。Allegro や Sonata でどんなテクノロジーにお目 にかかれるかは、今のところほとんど情報がない。

98 年半ばまでは、メモリプロテクトのかかったプリエンプティブ・マルチ タスクの Rhapsody ワールドに足を踏みいれるユーザーはあまりいないと思 うし、この Rhapsody ワールドはまだ未知数の部分が大きい。Apple の Web サイトには、Rhapsody は、Display PostScript を採用するが、ColorSync とか QuickDraw GX タイポグラフィー(必ずしも QuickDraw GX 丸ごとと いうわけではない)といった Apple のディスプレイ・テクノロジーも一部 取り入れると書いてある。Rhapsody 搭載の Mac が、画像表示の生成に PostScript を使用するので、PostScript に依存しているデザイナーたち は、今までの Mac よりもより WYSIWYG な PostScript ディバイスへの出 力を得られるぐらいのことは、言ってもいいかもしれない。Apple は、一 貫してマルチメディアを重視してきたし、今度も Rhapsody に QTML (QuickTime Multimedia Layer)テクノロジーの最適化バージョンを取り 入れることではっきりとした態度を示す模様だ。最大の謎は、オペレーティ ング・システムにどのカーネルを採用するかということだ。これに関して は、Apple は近々決断を迫られることになるだろう。

<http://www.macos.apple.com/macos/releases/rhapsody/letter.html>

見通し -- Rhapsody を予定通りに出荷できるかどうかは、Apple と NeXT 双方の社員がいかにうまく協力しあえるかにかかっている。さらに、NeXT のデベロッパーは、志を同じくする仲間になるわけだし(そのうちの何人 かは、Macworld Expo に顔を出して 最新の Mac ソフトウェアを調べてい た)、彼らすべてに、重要な技術情報や援助の手を差し出さなければなら ないだろう。Mac ユーザーや一般の人達は、胸がときめいて Rhapsody が 輝いて見えるかもしれない。Rhapsody は、基調講演の中で Steve Jobs 氏 が約束した“適切で魅力的なもの”になるには違いないが、それを一般に 認めてもらい、さらに、絶大な信頼を得てこそ成功といえるだろうと、締 めくくっておこう。


Macworld Expo の極上品/97 年 1 月

by TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
(翻訳:高島 均 <hitak@can.bekkoame.or.jp>)

Macworld Expo は、Macintosh 業界にとって最良のものや最悪のものだけ ではなく、全く奇妙なものをももたらしてくれる。そのうえ、70,000 人も の Macintosh ファンに囲まれて、洞穴のような Moscone Center を 4 日 間歩き回った後では、現実の世界をしっかりと捕えるのがなかなか難しく なる。ここに、筆者たちの注意を特に惹いた製品、ブース、アナウンスや さまざまなものをいくつか紹介しよう。

最良の子ども向けソフトウェア -- Apple 社の Cocoa である。この、ど の年齢の子どもにも適した、(Prograph で書かれたものに迫る)ゲームや シミュレーション・ワールドを創作するのにすばらしいツールは、無料の DR1 リリースが行われており、ダウンロードにより入手可能である。これ でスタンド・アローン・プログラムを作成したり、Netscape のプラグイン を使ってインターネット上で遊んだりできる。すでに、Tenadar Software 社と称して、Cocoa を使って書いたゲームを販売する子どもたちが現われ ている。小人たちからデモを見せられるなんてうろたえてしまうが、こう いうことにも慣れていかなければならないのだと感じている。 [MN]

<http://cocoa.apple.com/>
<http://www.millertime.com/tenadar/>

最も高くつく無料サンプル -- Symantec 社は、自社製品のデモの席上に いた人々に誰それかまわず 99 ドルする Visual Page の無料コピーを配っ ていた。Visual Page は、また一つの WYSIWYG Web ページ作成ツールで、 筆者がまだ手にしていなかったものであったが、なかなかちゃんと動いて いる。彼らが無料で配布していた理由は、(a) CD のプレスにちょっとした エラーがあった、 (b) このプログラムはまだわずかに仕上げが粗い、(c) HTML の仕様がプログラムの実装以上に進んでしまった、(d) Adobe 社の Page Mill がそこかしこで配られているのに対抗する必要があった、から ではないかと想像している。 Symantec 社は大損することはないだろう。 何故なら、彼らはたくさんのユーザーをうまく捕まえて将来のアップデー ト料を要求することができるのだから。 [MN]

<http://www.symantec.com/vpagemac/>

汝 REI に迫らん -- この賞は、比較的見ためのぱっとしない SCSI や ネットワーク用アダプタカードを作っている Adoptec 社のものだろう。彼 らは、高さ 25 フィートもある模造の山を持ち込んでブースの視覚的アピー ル度を上げていた。この模造の山は、シアトルの Recreational Equipment, Inc. (REI) が自社の最大店舗に最近据え付けた巨大な室内クライム用の壁 (世界最大とされている)を思い起こさせる。どうも、Adoptec 社のブー スにやってきてクライム用の壁を備えないかと持ちかけた人物がいたらし い。岩の色をした気泡ゴムなんかではとてもではないがスパイクを支えら れるはずはなかったのに。 [ACE]

<http://www.adaptec.com/>

口をつきあるいはペンが綴った最も悲しいことば -- “PowerPC のみ”。 この次第に身近になりつつあるマントラは、特に、Symantec 社の Visual Cafe や RandomNoise 社の Coda のような Java の GUI ベースのツール (例外としては Power Production Software 社の WebBurst があるが)に 顕著であった。このことはそうなっていくのだとは理解しているものの、 筆者や筆者の 68k Mac はそれを受け入れがたいのである。 [MN]

<http://www.symantec.com/vcafemac/>
<http://www.powerproduction.com/>

最もすばらしい外部機器テクノロジー -- 最もすばらしい外部機器テク ノロジーには SMART Technologies 社の SMART Board に一票を投じたい。 これは、シリアルポートを通じてコンピュータに接続するホワイトボード である。カラーマーカーでボードに書きこみができ、また書いたものなら どんなものでもコンピュータにグラフィックとして取り込むことができる。 あるいは(これはさらにすばらしい機能であるが)コンピュータの画面を ホワイトボードの上に投影して、ボード上を指で触れてマウスのようにコ ンピュータを操作することができるのだ。さらに、実際にはその形状が投 影されているだけの仮想のカラーマーカーを使って、ピクチャーの上に書 き込むこともできるのである。もしこれがまだ筆者が教師をしていたころ にあったならば! [MN]

<http://www.smarttech.com/smtboard.htm>

すばらしい外部機器テクノロジーの次点 -- Metricom 社の Wireless Modem である。もはや、筆者は、PowerBook とともにヤッピーの集まるカ フェで、このかっこいい黒い筐体のアンテナを通じてインターネットに接 続している自分の姿を心に描いている。Metricom 社が、その受信用のイン フラ整備を完了してくれてさえいれば。というのも、このモデムを使うに は、その前に街中の街灯の支柱にレシーバーが取り付られていなければな らないのだが、これまでのところでは、いくつかの主要都市のみで行われ ているに過ぎないのだ。そのほか、筆者がヤッピーの集まるカフェに席を 持つだけの余裕がないことも問題なのだが。 [MN]

<http://www.ricochet.net/>

最も手際の良いユーティリティー -- PreFab Player をもたらしたのと 同じメンバーによる独創的なプログラムである PreFab 社の TextMachine だ。これは、ある意味では Nisus Writer のものをしのぐ、より英語的な GREP を使った検索・置換エンジンである。AppleScript あるいは Frontier を通じて TextMachine と相互に作用するプログラム、または TextMachine を OpenDoc パートとして用いるプログラムであればあらゆるものに、パワ フルなテキスト操作をもたらすに違いない。目下のところアルファバージョ ンに止まっているが、かつてライト兄弟を予言してみせた者がいたように、 「こいつらは注目に耐える」のだ。 [MN]

<http://www.tiac.net/prefab/textmachine.html>

最も安全な電子メール -- ベルギーのデベロッパーである Highware 社 は、Pretty Safe Mail のベータバージョンを出展していた。これは、ファ イル、フォルダ、電子メールメッセージやメッセージの一部分の暗号化や 解読を行うのに PGP (Pretty Good Privacy) を用いたもので、すべてをシ ステムレベルのメニューからコマンドを選択して行うことができる。Pretty Safe Mail は、デジタル署名をもサポートしていて、待ち望んでいた強固 な暗号化ソフトウェアをシンプルに実現したものといえる。 [ACE]

<http://www.highware.com/highware/safemail/safemail.htm>

最も退屈なベーパー・ウェア -- Mac OS 7.6 をもって Apple 社が受賞。 Mac OS 7.6 は未だ姿を見せず、すでに誰しもが空騒ぎの一部始終をいぶか しがっている。 [ACE]

最もそのソフトウェアに似ている人々 -- Photoshop のフィルタパッケー ジ Eye Candy 3.0(以前は Black Box の名で知られていた)のメーカーで ある Alien Skin Software 社の社員たちは、蛍光色に髪を染めていた。た ぶん、自社の Photoshop 用プラグインである Hairdresser を引き立てる ためだったのだろう。 [ACE]

<http://www.alienskin.com/>

ショーでショーを見るための最良の方法 -- Rearden Technologies 社 は、ショーフロアの回りに MacWebCam を使って何台かのビデオカメラを設 置して、頻繁に更新される静止画像や連続したライブビデオを取り込んで いた。 MacWebCam でちょっとした QuickTime ムービーを作成することも できる。ショーで目新らしかったのは、Web ブラウザから操作するパン/ チルト装置で、これでカメラ付近の違った風景を調べることができた。 [ACE]

<http://www.rearden.com/>

最も HyperCard を打ち負かす可能性のあるもの -- 誠心誠意 HyperCard びいきの筆者であるが、Allegiant 社の SuperCard 3.0 には強く心を動か された。これは、HyperCard を申し分なくしたようなもの(有用なパレッ ト類、真のカラー機能の統合、ベクターを基にするグラフィック、より簡 明な「自動」スクリプト)で、すでに Roadster と呼ばれる Netscape 用 プラクインを使って Web ページ上でインターネット越しに操作することが できるものだ。 [MN]

<http://www.allegiant.com/>

太陽崇拝者あるいは毎日をビルの中で過ごす者への最良のプログラム -- John Neil & Associates 社の Sundial は、デスクトップパターンをプロ のカメラマンが写した 10 種類のカリフォルニアの景色の一つに置き換え る。すごいことには、この画像は実は 288 コマからなる 24 時間分の QuickTime ムービーであって、太陽の推移に合わせて一日中ゆっくりと変 化していくのだ。 Sundial は世界の各地域で実際の日の出や日の入の時間 とシンクロさせることさえできる。景色だけに止まらない将来の Sundial ムービーの可能性 - 「サラエボのある一日」、「ストリートに暮らす」、 「ホテルのロビー」など - を想像してみよう。Sundial は、理論上 288 コマの QuickTime ムービーであればどんなものでも扱うことができ、John Neil Associates 社では新しいアイデアのコンテストを実施している。 QuickTime のサウンドトラックや QuickTime VR をサポートする(理論的 にはすでにそこにある)ようになったらどんなものになるのだろうか。 [ACE]

<http://www.jna.com/sundial.html>

最もそら恐ろしいサポート -- Casady Greene 社のブースには、精霊 の衣装を身につけたとんでもなく背の高い男性がいて、彼のことを Answer Genie(彼はテクニカルサポートのスタッフの一員らしい)と呼んでいた。 不幸なことに、彼はあまりにいかめしかったので、とある常連客の一人が、 技術的な質問なら小柄な営業担当ではなくて Answer Genie へどうぞと促 されたとき、そのお客は図体の大きい精霊をちらっと見て「いや、彼じゃ ないほうがよい」と断言したのであった。

<http://www.casadyg.com/C&G/Welcome.html>

そろそろ時間だ -- 老舗のインターネット関連デベロッパーである Intercon Systems 社は、多くの人々が欲しがっていた製品 - MacVPA(VPA とは Virtual Private AppleTalk の略である)を提示してきた。基本的 に、 MacVPA は PPP ベースのインターネット接続しか持たない人々に AppleTalk アクセスを提供するものだ。したがって、旅先にいるとき、 MacVPA を使えば、自分のダイヤルイン・サーバーを操作することなく(あ るいは長距離電話をかける必要なく)、いずれかのインターネット・プロ バイダーに電話を繋ぎオフィスにあるインターネットに接続されたネット ワークに AppleTalk でアクセスすることができるのだ。 [ACE]

<http://www.intercon.com/macvpa/macvpa.html>

最もすばらしいエルゴノミック製品 -- Hunter Digital 社の No Hands Mouse はマウスではなく、机の上にすら存在しない。それは実は一組のフッ トペダルである。右のペダルはジョイスティックのような操作でマウスの 動きを制御し、左のペダルはマウスのクリック(前方に踏むとクリック、 後方でダブルクリック)を制御する。筆者はカーソルを動かすのに苦労し、 無意識のうちにあるはずのないマウスをつかもうとしている自分に気がつ いたりしたが、他の人は使い心地がよいと話していた。きっとみんなすぐ に慣れるだろうと思う。 [JLC]

<http://www.footmouse.com/>

最も不釣り合いなブース -- この賞は、ほとんど理想的もいえるその商 品の小さなサイズと際立って対照的に、大きく手の込んだブースを構えた すべての RAM ベンダーに進呈する。RAM は小さく、SIMM も DIMM も見た めに変わりなく、デモの素材にはなりにくいのだ。そうはいっても、持っ ていて多すぎるということは決してないものである。 [ACE]

お気に入りのボタン -- StarNine 社の "Email Rules" である。本当で ある。

最もすてきなコンピュータ筐体 -- Apple 社の重さ 4 ポンドの eMate Newton である。これは、教育市場では間もなく、その他では 1997 年の中 頃には入手可能となるもので、本体と一体化した取っ手と(目撃したユニッ トでは)濃い緑色の半透明のプラスチックケースを備えている。取っ手は、 ある人にとっては“電動がまぐち”とでも呼びたくなるようなものだが、 総じて、筆者には極めて印象的であった。キーボードは明らかに小さな手 をした人用にデザインされていたが、大人でも使えそうである。Newton オ ペレーティング・システムはよく動き、アプリケーションには、機能的な ワード・プロセッサ、スプレッドシート、ドロー・プログラム、グラフ計 算機、アドレスブック、カレンダーが含まれていた。しばらくの間、より 大きなスクリーン(480 x 320)とキーボードがついた Newton を待ってい たところである。これまで目にしたことがないすばらしい仕様の一つは、 底に三脚用の台板がついていることだ。三脚は eMate を屋外で使うには もってこいの方法だろう。 [ACE]

<http://www.newton.apple.com/newton/productinfo/eMate300.html>

最良の小物 -- バスにひかれたり、湖に落としたりした PowerBook から ハードディスクを蘇らせることができる Drive Savers 社は、Roomerangs を発表した。これは、室内で投げる四つまたのブーメランのような小さな 気泡ゴムのおもちゃである。Drive Savers 社のサービスを利用する必要が あるとすれば、間違いなく逆上して何か物を投げつけたくなっていること だろう。ならば Roomerangs を使ってみてはいかがだろうか? [JLC]

<http://www.drivesavers.com/>


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway