TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#376/21-Apr-97

書物とセミナーがオンラインで出会うとどう変わるのだろうか。自身の最 新のプロジェクトをにらみながら、Adam がこの話題に取り組む。今週の ニュースとしては、Apple 社が四半期の損失といくつかのモデルの値下げ を発表、GoLive Systems 社がホットな見栄えの HTML エディタをリリー ス、そして Jeremy Kezer 氏が彼のコントロール・ストリップ・モジュー ルをアップデート。Tonya が新型の Macintosh スペルチェッカである Online Army Knife をレビューする。

目次:

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MailBITS/21-Apr-97

(翻訳:高橋 邦明 <kuniaki@mail.netwave.or.jp>)

Apple 社が 7 億 800 万ドルの損失を計上-- 米国内の読者が先週確定申 告に苦しみもだえていたときに、Apple 社の人たちは四半期ベースで 7 億 800 万ドルの損失を見つめることとなった。これは Apple 社史上、2 番目 に悪い数字である。損失の原因の大半は、3 億 7500 万ドルの NeXT Software 社の買収と、1 億 5500 万ドルの「リストラ活動」にかかる費用 である。

ことに会社の深い蓄えが浅くなってしまった今、数字は脅迫的なものにも 見えるが、「Apple は終わった」とはやしたてる(まるで Apple 社の所在 地名 Infinite Loop -- 無限ループ -- が象徴するような)きりのない風 評作りに、今のところマスコミはのっかっていない。これはおそらく、会 社のリストラ策が徐々に奏功し始めていることを示す要素が出てきている からであろう。経費は先四半期から 3200 万ドル、昨年同期からは 6500 万ドル減少。ビジネス向け売上げは第 1 四半期から 35 % 上昇、そして PowerBook の売上げが総収入に占める割合が、10 % から 22 % に上昇し た。 [JLC]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1997/q3/ 970416.pr.rel.q297.html>

Apple 社値下げ-- 先週 Apple 社は Performa 6360 と 6460 シリーズ機 の 200 ドルの値下げを発表したが、(もっと重要なことには) PowerBook 1400 ラインを 30 % 以上値下げした。PowerBook 1400cs/117 システムは 今や 1700 ドルから始まり(CD-ROM 付きはもう 300 ドル)、PowerBook 1400c/133 の 3200 ドルまでの価格帯となっている。もしあなたが PowerBook 購入を延期してきていて、3400 シリーズが高すぎるなら、これ は PowerBook 1400 を再検討してみるよい機会かもしれない。一方、Apple 社と IBM 社共同開発の 1.9 キロのサブノート、PowerBook 2400 の噂も絶 えることがないが、米国内での販売は依然として、かなり限定的なもので ある模様。 [GD]

<http://biz.yahoo.com/prnews/97/04/18/aapl_x000_3.html>

GoLive はゆく-- 先週、GoLive Systems 社は、現在バージョン 1.0.1 の GoLive CyberStudio を出荷した。標準小売価格 349 ドルでは CyberStudio は普通の Web 作者には手が届かないが、プロの書き手、とく に視覚的に豊かな Web サイトを作る人、プラグインを頻繁に使う人、カ ラーシンタックスのチェック機能のついたビルトインの JavaScript エディ タをありがたいと思うような人には、前途有望な WYSIWYG の選択肢となる。

<http://www.golive.com/>

CyberStudio はその前身である GoLive Pro ( TidBITS-337 参照)のエレ ガントな見栄えを保ちつつ、多くの重要な特徴を追加している。Layout Grid のおかげでユーザーは特定のピクセルでレイアウトを作成できる。 HTML の側から言えば、こういったレイアウトは複雑で固定的なサイズにな ることとなるのだが、グリッドがオプションでついていてサイズ変更可能 なので、特定のブラウザのウィンドウのサイズを縛らないページを作成す るのは簡単である。このプログラムのサイト・マネージメントのオプショ ンをざっと試してみたところ、サイトの構造の閲覧、壊れたリンクのチェッ ク、Apple 社の Meta Content Format ( TidBITS-355 参照)にエクスポー トする能力が含まれている。ことに感心したのは、ソース・ビューで HTML を入力できるのみならず、レイアウト・ビュー時と同様にメニューとツー ルバーを用いてタグを作ることもできるということで、これは明らかに他 の WYSIWYG の HTML エディタがやり損ねてきた機能である。

GoLive Systems 社によれば、CyberStudio は同時に複数の言語をサポート しうる。同社では、日本語とドイツ語を含む、各国語版を国際的に出荷す る短期的プランを持っている。このソフトウエアの使用には、システム 7.5.5 以降を搭載した PowerPC ベースのコンピュータで、少なくとも 8MB、16MB 推奨の RAM の空き、といった若干大がかりなシステムが必要で ある。30日間限定の試用版が用意されており、ダウンロードは約 4MB であ る。GoLive, GoLive Pro からのアップグレードは249ドル。GoLive Systems 社 -- 415/463-1580 -- 415/563-1598 -- <info@golive.com> [TJE]

Jeremy's CSM 更新-- Jeremy Kezer 氏は、小さくて役に立つ10ドルの シェアウエアのコレクション、Jeremy's Control Strip Modules のバー ジョン 1.6.4 をリリースした。これらのツールは、Apple 社の Control Strip に追加したり、置き換えるためのコントロール・ストリップ・モ ジュールである。このおなじみのユーティリティであるコントロール・ス トリップは、2 〜 3 年前に PowerBook に搭載されてお目見えし、今では デスクトップ・コンピュータにも用意されているものである。Jeremy のモ ジュールの多くは PowerBook 上のみで役に立つものだが(コンピュータと バッテリの温度を記録する温度計モジュールの改訂版や、バッテリーが後 どれくらいの時間残っているかを予想するモジュールを含む)、1.6.4 版で はファイル共有の取り扱いを改善する改訂版 AppleTalk モジュール、 OpenTransport TCP/IP の設定の簡単なポップ・アップ・メニュー、それに 改善されたスピーカー音量のコントロールなどが提供される。 [MHA]

<http://members.aol.com/jbkezer/shareware.html>


DigitalThink とオンライン講座

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

みなさんもご存じの通り、私は TidBITS を発行する以外にも本を書いて生 計を立てている。その中でも一番有名なのが『Internet Starter Kit for Macintosh』だ。皮肉なことだが、インターネット本の著者としてその普及 に一役買ったところのインターネットが、コンピュータ書籍の市場を変え てしまったのだ。本はオンラインで販売され、オンラインで広告され、時 には一冊がまるごとオンラインで読めるようになっている。

こういった状況の変化に対応して、書籍の目的とマーケティングを再考す る動きが見られるようになった。コンピュータ本の多くは実質的にはハウ ツーものなのであり、例えば Photoshop を使って特定の効果を得るにはど うするべきかとか、インターネットで情報を探すにはどうしたら良いかと いった特定の技術を教えようとするものだ。ハウツー本というものはなに もコンピュータの分野に限られているわけではない。料理や園芸の本のほ とんどは、ある作業をどのようにして行うべきかを教えるハウツー本では ないだろうか? そして、ハウツーものを出版するにもっと適した方法は無 いだろうか? たとえばインターネットを利用するとか?

一部の企業は、本になっているようなハウツーものをインタラクティブな 講座に作り替え始めている。中でも私が良く知っているのが San Francisco にある DigitalThink 社という小さな新会社である。同社は自社製品の差 別化を図るために面白い方法を用いている。DigitalThink は、ただ単にあ る分野の専門家に講座を書かせるのではなく、その分野に精通し、上手に 説明することができるという実績を持っている人気作家を特に選ぶのだ。

<http://www.digitalthink.com/>

私は最近数ヶ月の間に、同社のための“Living with the Internet”とい うインターネット用のインタラクティブな講座を作った。もちろん、講座 そのものがインターネットを舞台として行われるので、受講生は既にイン ターネットに接続できて、Web ブラウザの基本も知っていることが前提と なっている。しかし、あるプログラムの基本操作以外にも、インターネッ トには学ばなければならないことが実に多い。私が自分の講座で扱ってい ることはこのようなことなのだ。私はこの講座と DigitalThink 社には大 きく期待している。真に役に立ち、かつ新しいことを始めようとしている ように見えるからだ。オンラインでの学習やインタラクティブな講座に関 心がある方のために、これがどんなしくみになっているかをご覧にいれよ う。

講座の構成 -- DigitalThink の講座がインタラクティブなことは既に述 べた。これは講座が成功するためには重要な要素だと私は考えている。た だ Web ページに指示を書き連ねるだけなら既に前例もあるし、それだとそ もそも退屈だ。そのかわり、DigitalThink は講座をインタラクティブにす るための方法をいくつか導入している。受講生は DigitalThink のサーバ と交信するだけでなく、ほかの受講生や講師とも交信するようになってい る。

DigitalThink の講座は 5 〜 6 のモジュールから成っており、各モジュー ルには 6 〜 20 回のレッスンが収められている。一つのモジュールは比較 的大きなテーマを扱い、レッスンはそのテーマの特定の面を掘り下げたも のになっている。各レッスンには達成すべき目標がある。(DigitalThink の調査では、人は目標を設定されるのが好きだという結果が出たらしい。) レッスンには地の文(人はオンラインでテキストを読むのを嫌うので、文 章はたいてい短くなっている)と、時には関連した情報や練習問題、ディ スカッション、チャット、クイズなどが入った囲みの部分がある。こうし てオンラインコースに活気を与え、インタラクティブにする工夫が凝らさ れている。

テキスト -- 講座を作るに当って最も苦労したのは、文章の量を最小限 に抑えることだったかもしれない。私を担当してくれた Tali Bray 氏は、 当初各レッスン 400 ワードを目標にするように薦めてくれた。私が扱って いたテーマの大きさからこれが不可能だということが判明した後、私たち は講義の一部を囲みに移して全体の量を抑えながらも必要な情報は盛り込 むという方法を採ることにした。Tali の主な役目は、私に必要な情報を極 限まで煮詰めさせることにあった。これが書籍とは違い、オンラインでの 教育に必要なことだからだ。

DigitalThink は、講座の多くに必読文献を指定したり、講師と受講生のや りとりを奨励するなど、他の方法でもレッスンのテキストを基本だけに抑 えようとしている。

練習問題 -- レッスンを作る上で難しいことの一つに、毎回練習問題を 作らなければならないことがある。練習問題によっては、ただ受講生が 2 〜 3 の Web ページを見に行き、読み、その意味について考えることを求 めるだけの単純なものもある。ほかのものはもっと複雑で、たとえば自分 が使っているインターネットプログラムを評価して、全体の評価と比較す るというものもある。

私自身も練習問題では楽しい思いをした。講座というものは退屈でなけれ ばならないなどということはない。クライアント/サーバの関係を説明す るレッスンでは、友達と食事をしに行くことが必要な練習問題がオプショ ンで用意してある。また、インターネットでのメールが実際どのように機 能するかを説明するところでは、小さな子供を使う練習問題がある(手近 なところに小さな子供がいることが前提となるが)。

クイズ -- 講座というものにはテストがつきものだ。受講生は練習問題 の答案を提出することはあるが、DigitalThink 講座におけるテストは主に クイズという形態を取っている。クイズのほとんどは択一式で、時折「は い・いいえ」形式が登場する程度だ。すべてのクイズに回答して提出した ら、DigitalThink のサーバはどれが正解でどれが誤りだったかを教えてく れ、その説明もしてくれる。講義を受けている時に Scores ボタンをクリッ クすれば自分と他の受講者の成績のグラフを見ることができる。

ディスカッションとチャット -- 練習問題やクイズのため、受講者は DigitalThink のサーバとやりとりせざるをえない。これは濃密なインタラ クティブな体験を与えるという点では良い方向性だが、生身の人間に代わ るものはないことも事実だ。したがって、ほとんどの講義にはディスカッ ションが用意されており、各モジュールには最低一回のチャットが予定に 組み込まれている。ディスカッションはメッセージが順番にポストされて いくという Usenet ニュースと同じように機能する。オンラインチャット は iChat プラグインを使用する。

講師として、私は毎月数時間程度講座に顔を出し、ディスカッションに参 加したり時にはチャットにも参加する。とはいえ、チャットは手に負担が かかるのでできるだけ避けるようにしている。どのディスカッションも最 初に私が書き込んで話題を提供しているし、どの講義にも受講生が考えな がら受講するような質問が用意されている。これ全部以外にも、インター ネットをめぐる問題について考えてもらおうとしているのだ。

ディスカッションフォーラムでもオンラインチャットでも、DigitalThink が目指しているのは、受講生が講師や他の受講生とやりとりすることを奨 励することにより、講座がより楽しくなるだけでなく、より有意義になる ことなのだ。このインタラクティブ体験により、オンラインでの教育は従 来の教室形式での教育よりも効果的な場合があることが最近の調査で報告 されている。

<http://www.csun.edu/sociology/virexp.htm>

全体のシステム -- DigitalThink がこうした講座を提供するには、単純 な HTML だけでは不十分だということはもうお判りだろう。細かいことは よく知らないが、DigitalThink は講座や受講生をすべて記録する独自のシ ステムを開発したそうだ。だから、クイズの採点を一瞬のうちに行い、各 クイズの直後に成績を更新することができる。受講中に Classmates ボタ ンをクリックすれば、ほかにどんな人が受講しているかも見ることができ る。気が利いているのは、DigitalThink の受講生は全員が DigitalThink 専用のメールアドレスをもらえ、このアドレスから各個人のアドレスにメー ルが転送されることだ。こうすれば受講生同志で連絡を取り合うことがで きる一方、一定のプライバシーが確保される。

このしかけの残念な副作用として、講座のスケジュールとディスカッショ ンは JavaScript に依存しているということがある。Mac 版の Microsoft Internet Explorer 3.0.1b がつい最近 JavaScript サポートを組み込んだ ものの( TidBITS-373 参照)、Explorer 3.0 は今のところ JavaScript はサポートしていない。その他の動作条件としては、講座の途中に何度か 登場する私の美声を聞くには Shockwave プラグイン、チャットに参加する には iChat プラグインが必要だ。

受講生の個人情報は各自のロッカーに入れられている。ロッカーはどの講 座を受講したかを記録し、自分のプロフィールを好きなように書いたり編 集することができる。たとえば私の履歴欄には、“炭素化合物”とだけ書 かれている。講座の受講者登録を済ませた後は、毎回ロッカーに行き講座 の続きを受けることになる。

私の理解では、DigitalThink は 1 〜 2 日のセミナーには費用を払って参 加するが、何日もの講座に参加する時間は無いような人をターゲットとし ている。各講座を受講し終わるまでは約 25 時間を要するが、これは長期 にわたって少しずつ消化することができ、常識の範囲内なら好きなペース で受講することができる。

講座 -- 現時点で、DigitalThink はインターネット、コンピュータ、マ ルチメディアの 3 つの主な分野でいくつかの講座を開講している。この中 には、Object-Oriented Programming with C++、Home Sweet Home Page、 Advanced Perl for the Web(Perl for Programmers Series の一部)、 Building Graphical User Interfaces(Java for Programmers Series)、 Hands-On Photoshop が含まれている。

<http://www.digitalthink.com/catalog/>

DigitalThink は 4 月末までに財政とライフスタイルという 2 つのセク ションを新設する予定だ。ご想像通り、財政では個人向の財政ソフトや投 資などを扱う。私は仕事に関係の無いライフスタイルセクションを大いに 楽しみにしている(たとえばソムリエ講座など)。ただ、試飲の練習問題 の際にワインを飲み込んでしまうとクイズが解けなくなってしまうかもし れないが。

受講料は講座の種類や長さによって大きく異なる。入門コースはたった 45 ドルだが、長い上級のコンピュータのコースになると 275 ドルというもの もある。

最後に、セミナーや短い講座を受けるのが好きな人は、DigitalThink の Web サイトを訪れてどんな講座があるかをチェックすることをお薦めする。 特に Tali の無料のインターネット講座はオススメだ。DigitalThink 社の 人たちのおかげで、私も“ Living with the Internet”は今までに書いた どの本よりも楽しみながら作ることができたし、インターネットの説明の 仕方を考え直すことになった。ほかの DigitalThink 講師も同じように感 じているなら、ほかの講座も同じぐらい役に立つだろう。こういったオン ライン講座がある種のコンピュータ本の未来の姿かもしれないのだから。


進めオンラインの戦士:必須の一括スペルチェッカ OAK

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

昨年 11 月に、Casady & Greene 社製のスペルチェックとその他文章を書 くのに役に立つ機能を搭載した便利なユーティリティ Spell Catcher のレ ビューを行った( TidBITS-353 参照のこと)。一度設定をしてしまえば、 ユーザー辞書と Interactive Checking 語彙集がすべてのプログラムで利 用でいるようになるという点がとくに気に入った。ワープロ使用中にユー ザー辞書に登録した単語が、そのままメールのスペルチェックでも使える のだから。その記事の中で宣言していたとおり、今回は類似のユーティリ ティである JEM Software 社の Online Army Knife 1.21 (OAK) を取上げ る。

<http://www.casadyg.com/CG/Products/SpellCatcher/description.html>
<http://arielpub.com/jem.html>

OAK は、スペルチェックを行うだけでなく、インターネットユーザーの役 に立つようにと作られた製品である。特に、まともなスペルチェック機能 がついていないメールクライアントや HTML エディタなどのインターネッ ト関連プログラムで使用されることを想定している。その上、スイスアー ミーナイフのように付加機能を満載している。たとえば、文法チェック、 QuickTime ムービーの再生、GIF、PICT、JPEG 形式のグラフィックを開く (さらには EPS や TIFF など各種形式に変換するオプションもある)、 WAV、SND、AIFF サウンドファイルを開けたり、そのいずれかに変換する (および、基本的な録音機能)、文字の暗号化(OAK または OAK 暗号解読 ソフトを所有していれば、暗号化された文字を解読することができる)、 インターネットを介して送付しようとすると引っ掛かってしまう曲線引用 符などの上位 ASCII 文字の削除といった機能だ。

これらの機能を使うことがないとまでは言わないが、OAK の主要機能であ る一括スペルチェックを使っただけで、是が非でも欲しいユーティリティ のリストに名前が挙がるのだ。(Adam もこの一括スペルチェックを JEM Software 社に提案した一人だった。当時、順番に一つずつチェックしてい くやり方に嫌気がさしていたのだ。)

OAK は、一つのコントロールパネルと一つのアプリケーションで構成され ている。インストールをしてから、OAK のアプリケーションのエイリアス を起動項目フォルダに入れた。OAK を立ち上げると、ボタンが 8 つ入った 小さなウインドウが表示される。取り敢えずどれかボタンを押すと、その ボタンに係わるオプションの簡単なリストが表示される。ほかのアプリケー ション同様 OAK も隠すことができるので、画面に余裕が無くなったら目に 触れないようにしておくことができる。

基本的な一括チェック -- OAK では、Spelling ボタンを押してスペル チェックを行うというのが基本である。ボタンを押してから、クリップボー ドに入っているものをチェックするのか、ファイルをチェックするのかが 選択できるようになっている。また、どのプログラムからでも、テキスト を選択して(変更可能な)キーボードショートカットを押せばスペルチェッ クをかけることができる。Batch Processing ダイアログボックスに引っ掛 かった単語の一覧が出る。同じ間違いがいくつもある場合、表示されるの は一回だけだ。

この一覧は非常に便利だ。まず、この一覧の中にある自分が無視してもら いたい単語を選択し、Ignore ボタンをクリックする(Ignore ボタンを適 用したものは、OAK を終了するまで有効)。次に、ずっと覚えていてもら いたい単語を選択し、Learn ボタンを押す。後は、残った単語を選択して、 Correct in Context ボタンをクリックする。すると、キーボードからの完 全操作が可能なよくあるスペルチェックのウインドウが現れる。このほか に、文法チェックを開始したり、重複した単語をチェックするボタンもあ る。

最近の TidBITS を使って処理速度を計ってみた。4561 語中から OAK の知 らない 24 語を一覧にするまで、私の Power Mac 7600(120 MHz PowerPC 604)では一秒少々、Duo 230(25 MHz 68030)では約 10 秒かかった。JEM Software 社によれば、OAK がチェックできるファイルの大きさは、割り 当てるメモり次第でいくらでも拡大可能とのことだ。

この一括チェックがあまりにもよく出来ているので、Eudora やフォーマッ トしていないテキストを扱う時にこのまま使い続けようと思っている。惜 しむらくは、OAK がすでに私のソフトウェアコレクションの中に入ってい る Spell Catcher を追いやるには至らないことだ。OAK は、スペルチェッ クを行った後でテキストを文書にペーストするのだが、その際に、スタイ ルやフォーマット情報が失われ易いのだ。色々と試してみた結果、OAK で スペルチェックを行った後、フォーマットの被害が大きいのは Word 5.1、 Nisus の 4.1 と 5.0、WriteNow 3.0、WordPerfect 3.5 であった。だが、 OAK と Word 6.0 は、スタイル、フォーマットともに相性が良いようであ る。JEM Software 社が、今後 Word Services をサポートしてくれると、 この問題は起らなくなるかもしれない。

対話形式の部分 -- OAK には、基本的な一括チェック以外にも対話形式 のチェック機能を豊富に備えている。その中の一つリアルタイムスペル チェックでは、フォーマットの問題が起きないので、ほとんどのプログラ ムで使用して大丈夫だ。リアルタイムでのスペルチェックをオンにすると、 アプリケーションウインドウ上に小振りの Unknowns Suggestions フロー ティングウインドウが現れる。OAK の知らない単語が入力されると、(任 意で)音が鳴るようにや、メニューバーがフラッシュするようにできる。 この音やフラッシュが Unknowns & Suggestions ウインドウに目をやる合 図になる。このフローティングウインドウにはリストが 2 つ付いており、 左側に表示されるのが、OAK がスペルミスではないかと判断した入力され た通りの綴りである。その引っ掛かった語をクリックすると、これではな いかと思われる単語の候補が、右側のリストに表示される。自分が入力し た綴りが正解であれば、飛ばす、無視する、学習するのいずれかの指示を 出せばよいし、そうでなければ、置き換えるべきものを選べばよい。さら に、そこで Glossary ボタンをクリックしておくと、次に同じ間違いを犯 した時 OAK が自動的に修正してくれるようになる。OAK は、引っ掛かった 単語をそのフローティングウインドウのリストに貯めていくので、後から まとめて処理することもできる。だが後回しにすると、正解がペーストさ れるのが間違いのある箇所ではなく、その時カーソルのある位置になって しまうので、この方法は気に入らない。

OAK には、たまたま小文字のままになってしまった文字を即座に大文字に 直したり、打ち間違った文字の位置を直ちに修正する(例:“Apple”を “Appel”と入力してしまった時)といったオプションも付いている。

一括チェックでは、メールアドレスや Web の URL は無視されるのだが、 リアルタイムチェックでは、OAK が認識できない部分は引っ掛かってしま う。(www や com を学習させなければならなかった。)Web ブラウザでこ れをやられたら、うっとうしくてかなわない。今後のバージョンでは、OAK を使いたくないアプリケーションではオフにできるインターフェースを付 けるべきである。

よく使用する語句や文を保存しておくためのの語彙集が用意されており、 その登録や編集は簡単である。たとえば、この語彙集を使って、“ti”と 入力しただけで OAK が“TidBITS”と変換してくれるようにした。そのほ かでは、通常メールの最後に入れる署名、長い会社名や製品名、自宅の住 所にも利用した。語彙集には、ありがちなタイプミスとその正しいものが 予め登録されていはいないが、Unknowns Suggestions フローティングウ インドウにある Glossary ボタンに注目して使ってみれば、自分専用のタ イプミス集をあっという間に簡単に作ってしまえる。また、JEM Software 社によれば、ひっくり返して打ってしまった文字を訂正するだけで、よく あるタイプミスの多くはなくなるとのことだ。

盛り沢山の機能 -- OAK は、クラッシュの際にデータを救えるようキー ストロークを保存するといった、予想しうるような付加機能や、クロスワー ドパズルを解くのを手伝ったり、キーボード・ショートカットでプログラ ムを起動したり、スケジュール設定で自動的に Mac がプログラムを起動し たりなどの、予想しえないような機能も持っている。

また、一般的な慣用ルールで問題のある人達に主に役立つ文法チェッカが ある。たいていの文法チェッカは、適切でない提案を山ほどし、大事な問 題に焦点を合わせることを難しくしている。OAK の文法チェッカは、25 の 一般的に混同されている言葉のペア(単純な "your" と "you're" などか ら、あまり一般的でない "stationery" と "stationary" まで)のリスト に合致した文書中の言葉に反応する。OAK が反応すると、それはエラーか もしれない箇所を喚起し、ペアでそれぞれの言葉の適切な使用法について の情報を提供する - しばしば情報を覚えるためのヒントも。選んだ通りの 言葉にしておくことも、ペアのもう一方の言葉に置き換えることもできる。 文法チェッカからペアを取り除くことも、あなた自身のものを加えること も容易となっている。

さらに、Online Army Knife には MemoEdit - ベーシックなテキスト編集 用で Simple Text を置き換えることを意図したテキスト・エディタ - が 付いている。Simple Text の基本的な機能に加え、検索と置換コマンド、 そしてスマートなカラーセレクター(文字に色を付けるため)が用意され、 多色のカラー・フィールド上でマウスを動かすと、そのフィールドの下に 表示された RGB 値が適宜に変化するのを見ることができる。

Spell Catcher との比較 -- このレビューのため、OAK に切り替える前 に約 3 ヶ月間、Spell Catcher を使用した。Spell Catcher での主なフラ ストレーションは URL について何も知らないことである。OAK の一括 チェッカはこの点問題がない。もう一つの問題は、Spell Catcher の Interactive Checking 性能が ClarisWorks 4.04 と NisusWirter 4.1 で は目立って遅かったことである。OAK の動作はきびきびとしており、これ 等のプログラムでは遅くなるということがなかった。更に、私の Duo 230 より遅いマシンでの使用には、Spell Catcher をお薦めすることは難しい と分かった。OAK のリアルタイム・スペルチェックは Duo 用の代替として 提案するには若干遅いが、全体的なパフォーマンスは申し分ない。

Spell Catcher は、物を書く人達のニーズに合うよう年月をかけて練られ ており、沢山の異なった著作スタイルにマッチするものとなっている(最 新のバージョン 1.5.7 には更に 2 〜 3 のひねりが加えられている)。直 線の引用符を曲線にしたり、ダブルスペースを無くしたりし、また、1,000 個強のタイプミスを自動的に訂正する語彙集を備えている。OAK の全てか 無かのアプローチと異なり、これ等の機能はオフの状態で起動され、アプ リケーション毎に、必要に応じ、オンにすることができる。シソーラスが 付いているが、文法チェッカはない。Spell Catcher の Ghostwriter 機能 は、日付やアプリケーション別に、保存されたキーストロークを楽に整理 できるようになっている。加えて、異なった言語や職業用の無数の辞書オ プションが付いているが、OAK はアメリカ英語を話すインターネット・ユー ザーのみを対象としている。両方のプログラムには、本当に人が書いたと 思える、重宝なマニュアルが付いている。OAK の方はちょっとカジュアル で、パーソナルな感じとなっている。

OAK は、新しいアイデアを持った新興の意欲的なプログラムである。OAKを インストールしたままにしないつもりならば、一括チェッカは使わない方 がよい。一旦、使ってしまうと、不器用な、順番に一個ずつスペルチェッ クしていくやり方に戻れなくなってしまう。OAK とSpell Catcher のもう 一つの大きな違いは、OAK の語彙集は、Spell Catcher の幾分渋めの 225 文字よりも、さらに長い入力が可能となっていることである。そして、当 然ながら、OAK はその全体的な価値を上げる沢山の飾りとユーティリティ を備えている。

JEM Software 社によれば、OAK は System 7.1 またはそれ以上で動作する 全ての Macintosh に対応しており、コアのスペルと文法チェックで 1 MB の空きメモリを必要とする。フルインストールで 4.5 MB のハードディス ク容量を使用する。希望小売価格は 128 ドルで、97 年 7 月 1 日までに JEM 社から直接購入した場合は 69.95 ドルとなっている。Spell Catcher/Thunder 7 のオーナーは 49.95 ドルで乗り換えでき(OAK の語彙 集は Spell Catcher/Thunder 7 の語彙集を読み込むことができる)、その 他幾つかの競合製品のオーナは 59.95 ドルで乗り換えできる。一週間のデ モ版は JEM の Web サイトより入手可能であり、ダウンロード・サイズは 約 1 MB である。

    JEM Software -- 800/335-0935 (orders through Ariel Publishing)
      <jemsoftware@kitchen-sink.com> -- 303/422-4856 (fax)

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