TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#377/28-Apr-97

Apple 社はジャーナリスト達から叩かれているのか、それとも Apple の身 からでた錆なのか? 今週は Keith Brindley 氏が Apple 社と不評の因果関 係をジャーナリストの視点で伝えてくれる。さらに、Adam が Web ブラウ ザをもっと便利に使う方法を明かしてくれているほか、2 次キャッシュが 使えなくなるバグのフィックスが Apple からリリースされたニュース、オ ンラインに戻ってきた Info-Mac のアーカイブ、TidBITS を再配布してい る人へのお願い、新しい TidBITS のスポンサー MacWorks の紹介の記事を 掲載している。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/28-Apr-97

(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

MacWorks が TidBITS のスポンサーに -- 今回から新たに MacWorks が 我々のスポンサーに加わってくれた。「洒落っ気に富んだ Macintosh フ リーク」を自称している MacWorks は、店舗自体は Kansas 州の Lenexa にあるのだが、世界中の Macintosh ユーザー相手にハードウェアを主体と した販売を行っており、我々も幾度となく満足のいく買い物をした。また、 我々が 1995 年から 1996 年にかけて行っていた DealBITS のメーリング リストでも主役的存在だったので、付き合いも多かった。実際、MacWorks は色々な意味で信用のおける店で、DealBITS の読者からは好かれていた し、ちゃんとした広告を締切に間に合うように出してきていたし、支払も きちんとしていた。Kansas から遠く離れたところに住んでいる読者がほと んどだと思うが、ブラウザさえ持っていれば Web で仮想来店ができるの だ。かれらの Web サイトに立ち寄ったら“Hey, Stuff This!”をチェック して、MacWorks のスタッフ Pete Steinfeld 氏が描く漫画“ MacBiased” をご覧になっていただきたい(これは定期的にアップデートされる)。 [TJE]

<http://www.macworks.com/>

Apple 社 2 次キャッシュのバグを修正 -- 先週 Apple 社は、機能拡張 の 54xx/64xx L2 Cache Reset をリリースした。これは、Apple 社の “Alchemy”マザーボードを搭載しているマシンで 2 次プロセッサキャッ シュが使用できなくなるというバグを修正したものである。該当するのは、 Power Macintosh、Performa の 6360、5400 シリーズと 6400 シリーズの マシン、Power Computing 社の PowerBase シリーズ、UMAX 社の C500 お よび C600 である。ご存じでない方のために説明しておくと、2 次キャッ シュというのは PowerPC プロセッサのそばにある小さな高速の(通常 256K 〜 1 MB)メモリである。繰り返し使われるような命令や情報を(比べてみ ると遅い)RAM やディスクまで取りに行かなくて済むように、すぐに検索 できる 2 次キャッシュに入れておくのだ。

上記のマシンをお使いの方で かつ Mac OS 7.6.1 を搭載しているか、機 能拡張の 54xx/64xx Update 1.1 を入れた System 7.5.3 を搭載している 場合に限りこのアップデートが必要となる。場合により異なるが、このアッ プデータにより 2 次キャッシュが再度使用できるようになるため、最高で 30 % のスピードアップを実現することができる。このパッチ自体は、11K と小さなディスクイメージなのだが、このイメージをマウントするために は、およそ 500K の Apple 社の DiskCopy が必要となる。 [JLC]

<ftp://ftp.info.apple.com/Apple_Support_Area/Apple_SW_Updates/US/ Macintosh/System/Mac_OS_7.6.1_Update/54xx-64xx_L2_Cache_Reset.img.hqx>
<ftp://ftp.info.apple.com/Apple_Support_Area/Apple_SW_Updates/US/ Macintosh/Utilities/Disk_Copy_6.1.2.sea.hqx>

帰ってきた Info-Mac -- Info-Mac は、休止期間が予定よりも延びたも ののアーカイブが立ち上がり新居での活動が始まった。かつての sumex-aim アーカイブと違い、新生 Info-Mac へは anonymous FTP ができなくなった が、ユーザーは世界中に散らばっている何十という Info-Mac のミラーサ イトアーカイブにアクセスできる。ミラーサイトは、MIT にある Info-Mac HyperArchive、AOL の Info-Mac ミラー、TidBITS の FTP サイトに載せて ある抜粋ミラーの Info-Mac comm のディレクトリをはじめ数多くある。

<http://hyperarchive.lcs.mit.edu/HyperArchive.html>
<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/>
<ftp://ftp.tidbits.com/pub/tidbits/select/>

Info-Mac Digest は、メール送付とニュースグループ <comp.sys.mac.digest> 宛のポストを再開しており、Info-Mac のモデレー ター達は、新たに寄せられていたファイルの溜まっていた分をほぼ片付け 終えた。Info-Mac の Web サイトに、アーカイブまたはメーリングリスト に関しての詳しい情報(その大部分が新居への引っ越しに際して更新され た)が記載されている。今回の重大な移行が滞りなく行われるようにと尽 力をつくした Info-Mac のモデレーター達(全員がボランティアである) に絶大なる感謝の意を表したい。 [GD]

<http://www.pht.com/info-mac/>

Cyberdog 2.0 -- Apple 社は、先日 OpenDoc のインターネット用ツール セットである Cyberdog の バージョン 2.0 をリリースした。このバージョ ンは 7 月に出荷予定の Mac OS 8 に同梱されるだろうと思われているもの であり、HTML のサポートと性能(特に、Web ページとメールの処理の点) が改良され、複数のメールアカウントを処理できるようになり、また、自 分用のインターネット・フロントエンドを構築するための Cyberdog DocBuilder が付属になった。Cyberdog 2.0 は、従来通り OpenDoc と Finder を統合し、Web ブラウザ用プラグインと Apple の Macintosh Runtime for Java をサポートしている上に、(見落とされがちだが) AppleTalk ネットワークをしっかりサポートしている。Cyberdog 2.0 の使 用に当たっては、68030 以上のプロセッサ、System 7.5.3 以降、最低 8 MB の RAM、および先頃リリースされた OpenDoc 1.2 が必要になる。 [GD]

<http://cyberdog.apple.com/>
<http://opendoc.apple.com/>

TidBITS の再配布を行っている方へ 毎週 TidBITS を受けとっている方 の中には、我々から直接送られたものではなく、非公式のメーリングリス トやオンラインフォーラムから送られたものを読んでいる人達がいる。そ の多くが、一つのメインアドレスで TidBITS を受け取り、それをさらに多 くの人が読むことができるようにしてある会社やユーザグループなどの組 織によるサービスである。これは我々にとっても非常にありがたいことな のだが、我々に直接購読申し込みがなされていないアドレスからエラーメー ルが届いた時が問題となる。その様な場合、我々にできることは、エラー メッセージを止めるために、全メーリングリストの中からそのアドレスを 探し出し購読中止にするしかなく、このために多くの人が被害を被ったり する。残念ながら、TidBITS のリストが大きくなるに従い、このようなこ とも頻繁に起るようになったのだ。

そこで、毎週 TidBITS を再配布しているメーリングリスト、オンライン フォーラムなどの 担当者 の方は、Geoff Duncan <geoff@tidbits.com> 宛に下記の情報を連絡していただきたい。

お寄せいただいた情報は、TidBITS の購読リストと同様、極秘扱いになる。 これにより、問題が生じた際にも冷静な処理ができるようになるし、それ が原因で TidBITS が入手できなくなるようなことも起らなくなるのだ。皆 さんのご協力に感謝する。 [GD]


ブラウザを滑らかに

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

みなさんと同じように、私も Web ブラウザを毎日長時間使用している。私 の場合は、TidBITS の題材を調査したり、メールで教わった URL に接続し たり、時には本を書くために Web ブラウザを使うのだ。私は Internet Explorer のヒストリファイルのデフォルト制限ページ数である 500 ペー ジを数日間でいっぱいにしてしまうつわものとして知られている(そこで 今は 制限ページ数を 2,000 に設定してある)。つまり、私は Web ブラウ ザを酷使するのだ。Web ブラウザには、56 Kbps の専用線という制約のも とで、可能な限り速く、滑らかであってほしい。本当は Web ブラウザが私 の考えを先読みしてくれればさらに良いのだが、主な Web ブラウザメー カーの性格を考えると、これが本当に実現されてしまうのも少々考えもの だ。これまでに私は Web ブラウザが簡単かつ速くなるような使い方を徐々 に身に付けてきたので、中にはみなさんにも役立つものがあるかもしれな いと思い、ここでご紹介することにした。

ショートカット万歳 -- 私は目下最新バージョンの Netscape Navigator と Microsoft Internet Explorer についている実に便利なショートカット の福音を説いて回っている。ほとんどの企業の Web サイトは“www.会社名 .com”というドメイン名を持っている。このいずれの Web ブラウザでも、 Address/Location フィールドか Open Location ダイアログで会社名だけ を入力すると、Web ブラウザが“www.会社名.com”と推測して補ってくれ る(Web サイトに行くのに二度と“http://”を入力しなくて良いのだ)。 私は Apple、Microsoft、Netscape、Claris、Adobe、Symantec といった企 業のサイトへ接続することが多いので、この方法だと Address/Location フィールドに表示されている URL を編集したり、完全なドメイン名を入力 するより劇的なほど少ない手間しかからない。どういうわけか、ブックマー クを使うよりも速く感じるぐらいだ。この機能は Internet Explorer より も Netscape Navagator の方が一歩進んでいて、会社名と残りの URLパス だけを入力することができる。つまり、Navigator の Location フィール ドに“tidbits/tb-issues”とだけ入力するのは、

<http://www.tidbits.com/tb-issues/>

と入力するのと同じことになる。

ボタンに命懸け -- 最近私の愛用の Kensington TurboMouse 4.0 の左ボ タンが壊れてしまったので、この機会に新しく TurboMouse 5.0 を購入し た。これには(驚くなかれ)4 つもボタンがあるのだ。付属の MouseWorks ソフトウエアを使えば、ほとんどどんなプログラムでどんなことでもでき るように設定することができる。私はほとんどの Web ページで同じことを する傾向があることに気がついたため、まずは Web ブラウザを中心に設定 してみた。私は Back ボタンをクリックすることが多く、画面に収まりき らないページをスクロールすることも多い。そこで、上の 2 つのボタンを 上下へのスクロールに割り当て、右下のボタンは Back ボタンに(実は Command + [ のキーストロークを実行する)に割り当てた。これだけの機 能をボタン一つで実行できるだけで、Web ブラウジングがどれだけ快適に なるかは説明しきれない。私は以前から Kensington 社の入力デバイスが 好きだったが、Web ブラウザを多用するのであればそれだけで多数のボタ ンがあるマウスやトラックボールの購入を検討する十分な理由になるだろ う。

<http://www.kensington.com/>

Web を ShrinkWrap -- Web ブラウザのスピードを向上させるために最近 使いだした手法に、Chad Magendanz 氏の手になる Aladdin 社の ShrinkWrap 2.1 を使うものがある(素敵な新機能を搭載した ShrinkWrap 3.0 も登場間近だ)。この方法は Netscape Navigator でも Microsoft Internet Explorer でも使える。どの Web ブラウザも一度読み込んだ Web ページをキャッシュフォルダに保存し、再度同じサイトを訪れた際にはす ばやく表示するようになっている。ハードディスクからファイルを読み込 むのはインターネットから持ってくるよりは速いが、満足できるほどとは いえない。それなら Web ブラウザが RAM ディスクにページを保存するよ うにしたら? こうすればスピードは大幅に速くなるし、スペースの無駄遣 いであるキャッシュファイルがディスクからなくなるという余録もある。 さらに、キャッシュファイルを RAM ディスクに移すことによって、ハード ディスクへ書き込む回数が減るので、たとえばキャッシュファイルを書き 込んでいる際にクラッシュしてもディスクが壊れる可能性が少なくなる。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/disk/shrink-wrap-21.hqx>

私は最初 Memory コントロールパネルの RAM ディスク機能を使ってみた が、普通の RAM ディスクではあまりうまくいかなかった。Mac を終了した ら RAM ディスクの中身が消えてしまうし、名前も忘れてしまうのでどうし ようもない。そこで、誰が教えてくれたのかは忘れてしまったが、 ShrinkWrap を使ってみることにした。ShrinkWrap ならディスクイメージ を RAM にマウントすることができるので、事実上恒久的な RAM ディスク を作ることができる。

この方法は難しくはないが、わかりやすいとはいえない。まず、ShrinkWrap を起動して Preferences ダイアログを開く。RAM への読み書きのスピード を利用したいのだし、Web ブラウザがディスクイメージに書き込めないと いけないので、必ず“ Keep mounted images in RAM”と“Mount images unlocked by default”をチェックしておく。“Save disk image files as”のポップアップメニューが “ShrinkWrap Image File”になっている ことも確認していただきたい(こうしないと ShrinkWrap が自動的にマウ ントしてくれない)。次に、Image メニューから New Image を選択し、 ディスクイメージに名前をつけ、Other ボタンをクリックして必要なサイ ズを入力する。

十分な RAM があれば、5 MB 程度をお薦めしたい。Web ブラウザがこれほ どのスペースを使うことはまずない(Web ブラウザはハードディスクをいっ ぱいにしてはいけないことを知っているのだ)。Shockwave Director を多 用するようなサイトに頻繁にアクセスするのでなければ、これより大きな キャッシュフォルダを設定しておくのは無意味だ。ファイルに変更があっ た時にわかるように、Web ブラウザが一回のセッションに一度ページを チェックするようにしておきたい。したがって、数 MB 以上のキャッシュ ファイルがパフォーマンスに寄与することはないだろう。

OK ボタンをクリックしたら、ShrinkWrap はイメージファイルを(デフォ ルトではデスクトップに)作成してくれる。このイメージファイルをダブ ルクリックしたら、ShrinkWrap はこれをボリュームとしてマウントしてく れる。次に、Web ブラウザが ShrinkWrap ボリュームをキャッシュファイ ル用に使うように指定する。

Microsoft Internet Explorer の場合、Edit メニューから Preferences ダイアログを開き、Advanced タブをクリックする。Cache 設定が最大でも 5 MB に成っていることを確認し、Change ボタンをクリックして新たに作 成した ShrinkWrap ボリュームを指定する。この際、ShrinkWrap ボリュー ムに切り替える前に少しでもディスクスペースを取り戻すために、Empty ボタンをクリックしてこれまでにキャッシングしてあったファイルを削除 しても良い。

Netscape Navigator の場合、Options メニューから Network Preferences を選ぶ。Cache タブをクリックし、Cache Size を 5 MB 程度に指定し、 Browse ボタンをクリックして ShrinkWrap ボリュームを指定する。この場 合も Clear Disk Cache Now ボタンをクリックして使用されているスペー スを取り戻すこともできる。

Web ブラウザが ShrinkWrap ボリュームを使うように設定したら、今度は Web ブラウザを起動した際に ShrinkWrap ボリュームが必ず存在している ようにしなければならない。そうしないと、Web ブラウザはほかのフォル ダを使うように切り替わってしまうからだ(Internet Explorer はこの 点ややお行儀が悪く、あちこちに Explorer Cache フォルダを作ってしま う。Netscape Navigator は常に起動ボリュームの Preferences フォル ダにある Netscape フォルダに戻るようだ。)したがって、ShrinkWrap イ メージファイル(マウントされたボリュームではない!)を Startup Items フォルダに移動し、Mac が起動する度に毎回 ShrinkWrap がマウントする ようにする。

私が経験した小さな問題は、Startup Items フォルダに Web ブラウザのエ イリアスを置いておくことができないということだ。というのは、 ShrinkWrap がボリュームをマウントし終わる前に Web ブラウザが起動し てしまうからだ。みなさんの必要に応じて色々と名前のつけ方を工夫して 特定の順序で起動するようにすることはできるだろうが、もう一つの方法 は Exta Software 社の 8 ドルのシェアウエアユーティリティ、Delayed Startup Items を使うことだ。これは Mac がアイドルになるのを待ってか ら Delayed Startup Items フォルダの中にあるものを起動してくれる。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/cfg/delayed-startup-items.hqx>

ShrinkWrap ボリュームをマウントしていない状態で Web ブラウザを起動 してしまったら(たとえば機能拡張をオフにして起動して、Web ブラウザ に HTML ファイルをドラッグして開こうとした時)、Web ブラウザがキャッ シュフォルダを他のボリュームにリセットしてしまうことをお忘れなく。 間違ってこんなことが起きないように、時々チェックしてあげると良いだ ろう。

一度この作業をしてしまえが、後は RAM ディスクにキャッシングした Web ページを読む快適さと、何百もの不要なファイルをディスクに置いていな いという安心感を味わうことができるのだ。


Apple と報道との悪しき関係

by Keith Brindley <keith@brindley.demon.co.uk>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)
(  :尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

Ian Gregson 氏が Macintosh の小売販売で経験したことに関する記事 ( TidBITS-367 参照)を読んでみて、なんとそれが英国の事情とそっく りなことかと驚いた。私はまた、Apple 社なら、こうした小売店を通じた 自社の Mac 販売方法を変えることなく、小売店の姿勢に不満を言い出し始 めるだろうと予感できたのだ。つまるところ、Apple のこうした問題にお ける通常の防御法は、攻撃してくる者を攻撃せよ、なのだ。私はこのスタ ンスを知っている - なぜなら、私はジャーナリストで、これまで Apple 禍の飛礫や矢の攻撃を被ってきた(個人的にではなく、職業人としての私 にだが)からだ。比喩を混用して言うと、Apple はずっと自らの災いをそ の使者のせいにし続けてきた、ということだ。Apple のもっぱらのスタン スは、クリスマスシーズンの売り上げが低調だった原因や四半期の損失額 が予想よりも大きかった(もうお馴染み?)原因を悪しき報道のせいにす る、というものである。

しかし、報道を責めることは話の半分でしかなく、もう半分の話がある。 われわれジャーナリストはどうだろうか? どう感じているのか? われわれ は極めて無関心な一群で、とどのつまり(ご想像のとおり、このことが問 題の本質的部分である。)、まったくもって怠惰で、ほとんど大酒飲みで、 主流にはすぐに迎合し、新しくて可能性を秘めたものをなかなか試そうと はせず、ただの昼食と月末の支払い小切手を探し回っているだけなのだ。 少なくともこれがジャーナリストに対する一般の見方であって、それがた いてい間違っているとかについては気にしないでほしい。

ジャーナリズムにおいては、時間は最も重要な要素であり、それは私が証 明したいことなのだが、Apple はその事実を正しく認識していないようだ。 Apple に問題点について告げようとするときにおいてすら、それがきちん と届くのだろうか? もちろんそうはならない。Apple の経営陣に電子メー ルを送ろうとしたことがあるだろうか? そのとき返事を受け取っただろう か? 受け取ってないだろう。

ジャーナリストの視点 -- Ian Gregson 氏の記事は、ジャーナリストの 視点に関連づけてみることが良いアイデアだと考えさせてくれた。これは 英国という国から発しているものではあるが、大洋の向こうから聞いたと ころでもほぼ同様のようだ。おそらく Apple の誰かがインターネットの鼓 動に聞き耳を立てていて(比喩というものは混用されるためにある - それ は大胆な分離不定詞以上に読者の注意を引くのだ!)、この記事が何か良い ものを生んでくれるかもしれない。(考えてみよう、この記事を読み鼓動 に耳を傾けている人は Amelio 博士自身かもしれない...いや、ありえない ことだ。)

4 つの事実から始めよう:

4 つめの事実を理解するためには、報道の過程に関する少々の背景が必要 だろう。ジャーナリストとして、必要な情報をすばやく得ることが重要で ある。編集者からレビューや特集記事を書くよう依頼されたならば、ほと んどの場合編集者は 2 〜 3 日のうちに原稿を要求する。特集がまだ先に 予定されている場合でも、調査に与えられた猶予は通常 1 〜 2 週間しか ない。これは英国ジャーナリズム一般のケースで、メディアの別(雑誌、 新聞、放送)を問わないが、米国のジャーナリストであっても情報をすば やく必要とするのは同様だろう。換言すれば、4 つめの事実は、ジャーナ リストは Apple の都合で情報が期限を過ぎてやってくるのをただ待ってい る訳にはいかない、ということなのだ。

Apple のような企業にとっては、文書や会見等で情報を流すのは比較的容 易だ。さまざまな電子工学的手段(電子メール、HTML、PDF、ファックスや 電話を含めて)が、すべてジャーナリストが必要な情報をすばやく得るの を確実にしてくれる。ここ数ヶ月以上に渡り、Apple が、提供する事実に 基づく情報とその行動とをともにし始めていることは好ましいことだ。 Apple の Web サイトは、情報とリンクとがますます調和するにつれて、ど んどん利用するのが楽しくなってきている。情報にすばやくアクセスする 必要のあるときは、最初の情報源として Apple の Web サイトに頻繁に向 かっている。この点において Apple は良くなってきており、批判の余地は 見出せない。

一方、ジャーナリストが特定の製品について書こうとするときは、実際に 使ってみた評価を行うため、その製品が手に入らなければならない。製品 を持っていなければそのレビューはできないのである。Apple が、ジャー ナリストに対し協調的で仕事になる対応を欠いている点がここにある。

いくつかの例 -- このことを詳しく説明するために、対処しなければな らないいくつかの実際例を紹介しよう。これらは英国特有のものかもしれ ないが、米国内の雑誌を読んでみた印象では、この問題は Apple とそのす べての子会社に固有のものと思われた。

まず、ほかの企業はどのようにジャーナリストを扱っているのだろうか? 英国 Microsoft 社を考えてみよう。彼らは報道担当の代理店(Text 100) を持っていて、ここがもっぱらジャーナリストへの援助を行っている(電 話交換台の前で暇を持て余したり、同じレコードをかけ続けているのでは ない)。ジャーナリストがレビューする製品を必要とするときには、Text 100 はあらかじめ用意したものをその場で出してくれるのだ。面倒な質問 などない。製品は NFR(転売禁止)扱いで、そのままジャーナリストの個 人使用コピーとなるのだ。これが英国における如才ないやり方だ。 Microsoft は優れた論説報道の価値を知っているのだ。そのほかの成功企 業(ソフトウエアやハードウエア - Adobe 社、Macromedia 社、Visioneer 社などのいくつか)には、同様の広報体制がしかれている。気の毒だが、 Quark 社ですら報道関係者とは協調しているのだ。

Apple U.K. はどのようにジャーナリストを扱っているか? その報道担当の 代理店は、あなたの要請を受けてから Apple からその製品を入手しなけれ ばならないのだ。ほとんどの場合、Apple は代理店用には貸し出し専用の 2 〜 3 の製品コピーしか用意しておらず、したがってレビューの後にはそ の製品を返却しなければならない。通常、貸し出し品はジャーナリストた ちから常に引き合いがあり、借りる順番が全員に回るまでには何週間もか かることだろう。

一年ほど前にオンラインとインターネットの多様なサービスに関する連載 ものを書いた時の話が、この手の問題の一番いい例だろう。連載の中に今 はなき Apple 社の eWorld を取り上げようと思い報道担当の代理店に連絡 を取ったところ、英国のジャーナリスト用にはわずか 2 つのアカウントし か割り当てられておらず(英国全体でたった 2 つ ?)、私の前に順番待ち をしている人が 3 人いるため 6 週間待たされてようやく 2 週間ほど有効 のアカウントが手に入るということだった。具合のいいことに私は月刊雑 誌に連載を持っているという特殊な状況にいたので、eWorld の記事の掲載 を先に延ばせばよいと判断し、了承した。もし私がその他大勢のジャーナ リストのように一回きりの特集記事を書いていたら、とても eWorld のこ とを記事に加えることはできなかっただろう。予定通り 6 週間後にアカウ ントを受け取ったが、連載に取上げることになるまでほったらかしていた。 しばらくしてログインしてみたのだが、有効の 2 週間を一日過ぎていたた めに拒否されてしまった。そして、報道への対応が劣っているために記事 を書くことができなかった世界中にいる大勢のジャーナリストと同様、私 も eWorld のことは一切書かなかったし、そのため私が図らずも eWorld の終焉に手を貸すことになったのは間違いないだろう。

同様のケースで、ジャーナリストから好意的であり続けてもらうために Microsoft 社はどうしているのか ? 希望したジャーナリスト全員が、 Microsoft Network に無料かつ無期限で接続できるのである。英国にある その他のオンラインサービス(AOL や CompuServe)も同様のことを行って いるし、ほとんどのプロバイダも同様である。すなわち、これが Apple が eWorld から手を引くことになった原因であろう。サービスが悪かったから ではなく(私は一度もアクセスしていないので何も言えないということを 思い出して頂きたい)、Apple 自身のうぬぼれのためにまともな取材を受 けていなかったからなのだ。

このようなことは、一度きりのことではないのだ。MessagePad 130 をレ ビューした時も同じような目に遭った。4 週間ほど先にわずか一週間だけ しか借りることができなかったのだ。MessagePad 130 のレビューを書くた めには、最低でも一ヶ月は Newton を使ってみて、精通しなければならな いことぐらい(おそらく、Apple を除く)誰もが知っていることなのだ。 一週間程度しか MessagePad を使っていないジャーナリストが、説得力の ある記事を書けるはずがない。

Newton のような新しいテクノロジーを登場させるに当っては、Apple はえ さ代わりに、世界中のハイテクジャーナリストに MessagePad を配るぐら いのことをすべきだったのだ。そうしていたら、この技術は今頃もっと広 まっていたはずだと言っても良いだろう。このために、内容的にはずっと 劣っている Windows CE は、関心を持ったジャーナリストが最寄りの Microsoft の広報担当に使ってみたいと電話を一本かけるだけで済むので、 Newton の果たせない成功のチャンスをつかんだのだ。新しいテクノロジー の素晴らしさは口で説くだけではだめで、証明しなければならないのだ。

つまり、英国のごく一般的な人達のコンピュータ購買力全体に影響を及ぼ すジャーナリストが大体 400 人いる。その全員に MessagePad 2000 と 6500/300 を配ったら、損失が大きいと感じるかもしれないが、実際はなん と何百万ポンドの売上に繋がるのだ。本屋に並んでいるマルチメディア関 係の雑誌に一度も目を通さずにコンピュータを買う人間なんてただの一人 も存在しないのだ。Mac 専門誌以外の雑誌では Apple のことはほとんど取 り上げられないし、一般大衆にとって Mac が検討の対象にならないこと は、日を見るよりも明らかである。

この怠惰さは Apple 総本社に限ったことではない。数か月前に Internet Today 誌から電子メールソフトの総括記事を書くことを依頼された。当然 のことながら、その中に Claris Emailer のことも取り上げようと思った のだが、編集者も私も雑誌の締切に間に合うように(2 週間というのが典 型的)Emailer の市販品を手に入れることができなかったのだ。実際に見 てみるために、Claris 社の Web サイトから 30 日間のお試し版をダウン ロードしなければならなかった。これでは不十分だったどころではなかっ た。[多分これは改善されただろう。実際、TidBITS は公式出荷の前日に Claris Emailer 2.0 の市販品を受けとり、どういうわけか、一週間後にさ らに 2 つ受けとった。 -Adam]

ただで欲しいと言っているのではない -- ふと思ったのだが、読者の方々 は我々ジャーナリストが無償で製品を提供してもらえるようになるべきだ とひとりよがりになっていると感じているのではないだろうか。ナンセン スだ。ジャーナリストにとって提供品というは避けては通れないものなの だ。私の屋根裏部屋をご覧になっていただきたい。私が今までにレビュー したり特集記事を書いたりした製品で溢れ返っている。その製品のことを 記事にすることが、代価となっており、金銭は一切受けとっていないのだ。 マーケティングの一環として製品を提供した会社は、それが記事になるこ とで見返りを得ているのだ。提供された製品が良いものであれば、良く取 り上げてもらえる。報道は専門職であり、ジャーナリストはプロなのだ。 だが、彼らにはモノのために Apple のような会社を追いかけ回しているほ どの時間が無いのだ。モノがジャーナリストの手に渡らなかったら、触る ことも、善し悪しを判断することもできないのだ。さらに悪いことには、 モノがないために否定的な記事をでっち上げるかもしれない(実際にある ことだ)。Apple の負の部分を目の当たりにすることが報道に波及してく るということをご理解頂きたい。

私は Mac が大好きな一介の Mac ユーザーであり、Apple の製品全てが好 きなのだ。だた、不満が鬱積してしまっている。みんなが Mac ユーザーに なって欲しいと思っているし、この手の問題に耐える覚悟もできている。 大好きだからこそ皆さんに知っていただきたかったのだ。

一方で、Mac のことを私と同じようには感じていないジャーナリスト達は、 この手の問題を抱え込みたくもないし、正直なところ、我慢できないだろ う。このため、絶えず Apple は叩かれているのである。実際は、報道関係 から悪く思われているのではなく、ただ単に誤解されているのにすぎない のだ。ジャーナリストがすぐに欲しい情報が手に入らないということだけ が問題なのではなく、すぐに製品が手に入らないということも問題なのだ。 そもそも、モノがなければ、情報を探す気にもならない。要するに、鶏と 卵の関係なのだ。Apple がこの問題に真っ向から取り組んで、ジャーナリ ストを攻めたてることを止めて、反対に彼らを援助し始めない限りは、こ の悪しき関係はいつまでも続くだろう。

Gil よ、Apple よ、変わってくれ給え。


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