TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#382/02-Jun-97

今週は、人気のメールクライアントプログラム Claris Emailer 2.0 のレ ビューと大規模なショーと比べて小振りの Mac ショーの方が勝る点につい ての Adam の意見をお送りする。そのほかには、Macintosh ウイルスに対 する備えの話、新しく加わったポルトガル語版 TidBITS のこと、Apple Internet Solutions ガイドのお知らせ、NetObjects Fusion と Global Village モデムカードのアップグレードのニュースなどをお伝えする。

目次:

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MailBITS/02-Jun-97

(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

ウイルスへの油断 -- (特に PC 界と比べてみると)Macintosh 界には あまりウイルスはいないのだが、この一ヶ月ほどの間にウイルスに感染し た CD-ROM やファイルに関するレポートをいくつか受け取った(するどい Info-Mac の管理者 Michael Bean 氏が見つけたアップロードが最新のもの だ)。新たなウイルスはなく、John Norstad 氏作の無償の Disinfectant 3.6 を使えばこれら全てには対処できるのだが、最近ではウイルスの話が ほとんど持ち上がらないので、大抵の Macintosh ユーザーが注意を怠って しまっていると思う。それに、ここ数年の間に Mac ユーザーになった人が 大半で、Macintosh ウイルスが現れていた昔のことを知らない人が多いの だ。Macintosh ウイルスはあまり危険性は高くないが、常にウイルス撃退 プログラムを起動させておくに越したことはない。ウイルスについてもっ と詳しく知りたい方は、Apple メニューから Disinfectant Help を選択す れば Disinfectant のよく出来たオンラインマニュアルを読むことができ る。お金を出しても構わないという方は(TidBITS としては自分達も使っ ている Disinfectant をお薦めする)、Symantec AntiVirus for Macintosh とか Datawatch 社の Virex for Macintosh といった商品版のウイルス撃 退用ソフトウェアを検討いただきたい。 [ACE]

<ftp://ftp.tidbits.com/pub/tidbits/tisk/util/disinfectant-36.hqx>
<http://www.symantec.com/sam/index.html>
<http://www.datawatch.com/virex.shtml>

ポルトガル語版 TidBITS! 翻訳版 TidBITS の中に新たにポルトガル語が 加わってくれた。ポルトガル語で TidBITS を読みたい方は、下記 URL を チェックしていただきたい。6 人の翻訳者を集め体制を整えてくれた Henrique Penha 氏 <hpenha@qmail.com> には深くお礼を述べたい。さらに 多くのボランティアを募集しているので、関心のある方は Henrique にメー ルを出していただきたい。

いつものことだが、TidBITS の翻訳版にご協力いただける方は、私 <ace@tidbits.com> に連絡していただきたい。イタリア語、ロシア語への 翻訳版の案もあるのだが、今のところ作業を順調に進めていくしっかりと したコーディネーターや相当量の作業をこなすだけの翻訳者の頭数が不足 している。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/pt/>

Fusion の新バージョン -- 1996 年後半に登場した Web サイト作成ソフ ト NetObjects Fusion 1.0 は、テキスト、グラフィック、ナビゲーション バーといったサイトのスタイル変更が簡単に行えるなどサイト中心とした 思想で新たな分野を切り開いた。Fusion は、直後に発売された Adobe SiteMill 2.0(詳しくは来週お伝えする)同様、サイトの構成を簡単に変 更できる。また、最近発売された GoLive Systems 社の CyberStudio 1.0 ( TidBITS-376 参照)同様、テーブルをこっそり使って Web ページにオ ブジェクトを自由に置くことができるようになっている。

素晴らしい考えを実現させるのには時間がかかる。先週 NetObjects 社は Fusion 2.0 を出荷した。この新バージョンは、一見したところ、非常に完 成されたものになっている。新しいバージョンでは新機能が数多く追加さ れた。たとえば、スペルチェッカー、Macintosh ドラッグ & ドロップ の サポート、フレーム機能の強化、ページ単位でなく既存のサイト全体をイ ンポートする機能などである。NetObjects 社の Web サイトには 30 日間 のお試し版(ダウンロード 14.5 MB)が置いてある。

<http://www.netobjects.com/downloads/softwaredownload.html>

Fusion 2.0 は、相変わらず相当なおでぶちゃんである。この新しいバー ジョンの動作条件は、PowerPC Macintosh、16 MB のアプリケーション RAM、そしてフルインストールでなんと 90 MB のディスクスペースが必要 になる。Fusion 2.0 の希望小売価格は 495 ドルだが、今年の 7 月 31 日 まで有効の 100 ドルの払い戻し用クーポンが同梱されている。NetObjects -- 415/482-3200 -- 415/562-0288 (fax) -- <sales@netobjects.com> [TJE]

Macintosh Internet Solutions Resource -- Starfish Technologies 社 は、Mac、Unix、インターネット関連ネットワークを専門としたオーストラ リアのコンサルタント会社で、Macintosh インターネット分野での役に立 つあらましをまとめてくれた。もともとオーストラリア国内の Apple の販 売店が利用できるように作られたものだが、Apple オーストラリアの采配 によって、Mac とインターネットに関する充実した情報が欲しい人なら誰 でもこのガイドを利用できるようになった。このように Apple の海外事務 所が国際的な Macintosh コミュニティに貢献しているのを目にするのは嬉 しいことだ。(商用、シェアウェア、フリーウェアを問わず)インターネッ ト関連製品を扱おうと思っているソフトウェアデベロッパーの方は、 <netguide@starfish.net.au> に連絡を取っていただきたい。また、充実し たその他の Macintosh インターネットリソース集に関しては、下記の Web サイトをご覧になっていただきたい。 [ACE]

<http://www.apple.com.au/GSAIS/>
<http://www.starfish.net.au/>
<http://host.comvista.com/Internet.tfm>
<http://www.netprolive.com/products/productDefault.html>
<http://www.cen.uiuc.edu/~wronkiew/macos_servers/>


小 Mac ショー

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

先日、Tonya と私は比較的小さめの Macintosh 関連ショーに顔を出してお 喋りをしてきた。一つは Berkeley で開催された BMUG 主催の一日限りの MacFest、もう一つは Los Angeles で 2 日間にわたり行われた LAMG 主催 の MacFair である。両者ともここ数年開催されており、混み具合から判断 してどちらも相当評判がいいようだ(BMUG 主催の MacFest の入場者数は 7,500 人に達した)。ともかく、San Francisco や Boston で開催される 総動員型の Macworld Expo よりも、この 2 つのショーの方が印象が良かっ た。

<http://www.lamg.org/>
<http://www.bmug.org/>

すし詰めの Macworld Expo -- 今や Macworld Expo は新製品の知識を得 るための場ではなくなってしまった。インターネットで新製品関連の情報 を入手できるようになったことが、その主な原因であろう。デモを見る場 としては役に立つこともあるが、よくある一時間ほどのデモを眺めるより も、自分で 15 分ほどインターネットの中を駆け巡った方が往々にしてた めになる情報を集めることができるのだ。Macworld Expo で行われる会議 はそれなりのものであったりするのだが、公演者は無償で喋るため必ずし も内容がいいとは限らない。また正直言って、Macworld Expo に行くとと てつもなく疲れ果てるのだ。巨大な街のような会場を毎日 16 時間歩いて 回るのが 3 〜 4 日続き、その間あまりにも多くの刺激を受け続けるのだ。 みんなが大声を張り上げて、客に製品を見せようと、触らせようと、そし て買わせようとするのだ。それに、押し付けてくる Expo 関連資料を避け て歩くことなど到底できないだ。

Macworld Expo に行くとワクワクするのは事実だが、くたくたになるまで 歩かなくても、もっとましな方法で安く同様の気持ちになれる人がほとん どだと思う。私にとってのコンピュータ関連のショーは、人と知合になっ たり、メール友達と顔を会わしたり、TidBITS や私の本の読者とお喋りを したり、ちょっとばかり情報を入手したりのようなことが関心事となるの だ。つまり、自宅で仕事をしている私たちのような人間があまり味わえな いようなこと事に対してだ。

小規模なショーの良さ -- 小規模な地方の Macintosh のショーの方がこ ういった目的にかなっていることがわかった。ホテルの大宴会場で行われ るこれらのショーは、Rhode Island ぐらいの大きさはあろうかと思われる San Francisco の Moscone Center の二大ホールとは違う(し、Boston の World Trade Center と Bayside のに設置された巨大な会場の間を行き来 する必要もない)。地域的なショーにも大勢の人が集まるが、自分の居場 所を確保できないほどは混んではいない。小規模なショーの会場は歩き易 いし、個々のブースに時間も割けるし、人探しも楽である。ブースはあま り飾りたてずに内容的を充実させている場合が多く、Macworld Expo の贅 沢な見せかけの華やかさを繕ったブースとは違い気分がいい。Maxum Development 社の John O'Fallon 社長も次のように同意してくれた。「派 手に飾りたてていない 3 メートル四方のブースは皆にとってありがたいも のなのです。コスト削減にもなるし、来てくれた人も舞台ではなく製品の 方を見てくれるのです。」

<http://www.maxum.com/>

さらに、ブースには大抵商品知識のある人間が待機していて、彼らが身だ しなみだけを気にかけて大概は何も知らない Macworld Expo の住人とは違 うということも嬉しい。この辺りが小さなショーでの小さな会社の強みだ ろうが、どちらのショーにも Apple をはじめとする大企業も参加してい た。ベンダーの数は Macworld Expo とはとても比較にはならないが、それ でも、今年の MacFest には 43 社のベンダーが顔を並べていたし、来年は 50 社が見込まれている。LAMG 主催の MacFair の方は、ショー会場も幾分 大きめで、ベンダー数も多かったように感じた。

その後、Maxum Development 社、APS Technologies 社、Sonic Systems 社、Dantz Development 社のなどのベンダーの人と話をしたところ、ユー ザーグループのメンバーとは食い違いも合ったりしたが、手応えはなかな か良かったようである。「ユーザーグループのメンバーが企業のようには インターネットのサーバを買わないのはあたりまえのことだし、企業やイ ンターネットに焦点を当てた似たような小規模のショーに期待をしていま す。」と John O'Fallon 氏は語ってくれた。(Mactivity、 StrictlyBusiness をはじめ)こういったショーはすでにいくつかあるのだ が、成功の度合はといえばまちまちである。

ユーザーグループ相手の小さなショーに参加してみて気がついたよい点は、 ベンダーにとってもさることなら出席者にとっても安上がりだということ だとだった。近ごろでは会議に出ると 200 〜 800 ドルがあっという間に 飛んでしまうし、さらにそれに、旅費だのホテル代だのがかかってくるの だ。BMUG の MacFest は 5 ドルの寄付は募っていたものの入場無料という ことになっていた。LAMG の MacFair の方は有料だったが、入場料は 25 ドルで Macworld Expos にくらべたら安いのだが、会議、基調講演、セッ ション(など MacFair に係わる全てのもの)に出席するには 170 ドルと いうことだった。どちらも高いショーではなかったが、BMUG と LAMG はと もに収入面では十二分に満足していた。

-- Westwind Computing という家の近くにある行きつけの Macintosh ディーラーでのお喋りの中でこの話題を持ち出したところ、社長がすぐに 興味を示してここで(Seattle)ショーを開催しようと言い出した。もちろ ん、彼が自分の手でショーを仕切ろうとは考えてはいないのだが、その場 でベンダー集めなどの協力を引き受けてくれた。地元の Macintosh ユー ザーグループ dBUG や同じく地元の Apple の事務所の協力を得られれば、 Seattle でちょっとした Mac ショーを開催することは可能である。それ に、BMUG や LAMG が今後もこういったショーを開催し続けていけば、 Seattle で開催しようという話のみならず、アメリカのいや世界のいろい ろな処で同様のことが考えられていると思っている。それぞれのグループ が自分達の特長を生かしたショーを開催することになるだろうから、ある ところではデスクトップやハイエンドパブリッシングが中心になり、また あるところでは、インターネットものが中心になったりするだろう。

<http://www.westwind.com/>
<http://www.dbug.org/>

このようなショーを開催することはそんなに難しいことではない。BMUG の Colleen Miller 氏は、MacFest を行うのにはたいした数の人間を動員する 必要はなかったという話を次のようにしてくれた。「Sean O'Connor 氏が 手助けをしてくれたけど、作業はすべて一人でやったし、ショーの当日は 大勢のボランティア達が協力してくれた。ほとんどすべてがスムーズに進 んだよ。こういったイベントを行う場合の秘訣は、早めに着手して、とに かく自分でこまめに動くことだね。それに、人を確実に呼ぼうと思ったら、 報道とマーケティング、それに有名企業と新鋭の企業をうまく組み合わせ ることだね。」

巨大な Macworld Expo が無意味なものになったと言うつもりはないのだ。 何万という Macintosh ユーザーと何百というベンダーが一堂に会すること はそれなりに意義がある。大きなショーはベンダーにとってアメリカ国外 の販売業者と知り合ったり、ほかのデベロッパーと情報交換したり、さら には、報道関係者の目に触れることになるチャンスなのである(もっとも、 仲間の不満から判断すると、ありきたりの報道関係者は小規模なショーの 方を高く評価するだろうが)。しかし、短期間で快い小規模な Mac ショー は新鮮だ。Colleen Miller 氏が「行き易いこと、安いこと、共通の仲間意 識があることが、小さなショーにとっての成功への道ですね。」と語った 通りなのである。


Global Village でのレスリング

by Glenn Fleishman <glenn@popco.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

私は最近ソフトウェアアップグレードとの格闘にしばしの時間を過ごした。 そして Global Village 社からダウンロードした二つに、隠された美味な るものを発見したのだ。これらのエンハンスメントの幾つかはしばらく前 より供給されていたが、私は、一度に纏めて私の PowerBook をアップデー トすることに決めていたのだ。もしあなたが PowerPort Platinum か Platinum Pro PC card を使用しているなら、Gloval Village 社は 28.8 Kbps モデムを 33.6 Kbps にアップグレードするファームウェア・アップ デートを用意している。更に、同社は Open Transport/PPP 使用時の「ポー トが使用されています」というエラー( TidBITS-354 を参照)を一時的 に解決する PowerPort PC Card コントロールパネル書類のベータ版もリ リースしている。以下はあなたが Open Transport 1.1 (1.1.2 が最新バー ジョン)と System 7.5.5 またはそれ以降を使用していることを想定した ものである。

<http://www.globalvillage.com/support/swlocator/pplocator.html>

PC Card アップデータ -- PowerPort PC Card アップデートは、PC Card のファームウェアを更新するアプリケーションを含んだ 1.2 MB のダウン ロードである。ファームウェアはある種の不揮発性メモリに書き込まれた ソフトウェアである。RAM と異なり、電源を落としてもその内容が消える ことはない。だが(ROM と違い)、ある特定の負荷やチップ上のピンを触 発することにより、新しいコードを書き込むことができるのだ。その新し い Global Village 社のファームウェアは、33.6 Kbps モデムスピードを サポートするのに必要なプロトコルとルーチンを追加するのである - もし それをサポートするプロバイダと電話線を有していればだが。(私もアッ プデートし、28.8 Kbps に比べればほぼ 10 % 速い 31.2 Kbps を継続して 得ている。)

もし OT/PPP (大いに推薦する)を使用しているのなら、33.6 Kbps アッ プデートにはモデムスクリプトが添付されているので、それを使用しなけ ればいけない。スクリプトの“ GV 28.8/33.6 for ARA 2.1/OT-PPP ”を機 能拡張フォルダのモデムスクリプトフォルダにコピーし、モデムコントロー ルパネルでその新しいスクリプトを選択するのだ。さもないと、OT/PPP は 新しいスピードを認識せず、PPP を正しく開始しない。

<http://devworld.apple.com/dev/opentransport/ppp.html>

PC Card OT/PPP ベータ版 -- PowerPort PC Card コントロールパネル書 類ベータ版は、PowerPort PC Card と OT/PPP を使用している人達からし ばしば報告されていた「ポートが使用されています」という問題を解決す るものだ。本質的に、その問題は、別のアプリケーションがシリアルポー トを使用していると Mac OS が思い、モデムが使用できなくなるのだ。私 は何カ月もこの問題に不規則に遭遇し、私が見つけられた唯一の解決策は RAM Doubler 2 をオフにし(または増加RAMサイズを変更し)、再起動する ことであった。そのポート問題は Connectix のソフトと何ら関係がないの だが、これは、私の場合、かなり継続して巧くいった。その新しい PowerPort PC Card コントロールパネル書類は、この問題から私を完全に 楽にしてくれたのだ。

居眠りと敗北 -- Global Village 社には、複数の製品登録で私の電子 メールアドレスを伝えてあるのだが、無償で提供されているどちらのソフ トも、電子メールでの通知を受けていない。これは Global Village 社に とって機会損失と思われる。33.6 Kbps の能力を与えてくれる無償アップ デートを得た事に私は夢中であったし、再起動なく安定してシリアルポー トにアクセスできるのは天の賜物であった。将来、私は、Global Village 社がその顧客電子メールリストを活用し、これら二つのダウンロードのよ うに、多大な時間の節約となるものを我々に知らせてくれるようになると 期待しており、すでに髪の毛をかきむしることも少なくなっているのだ。


Email Reliance: Emailer 2.0

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

私は意外なほどメールに依存している。かつては単なるコミュニケーショ ンの一つの手段でしかなかったものが、今では外の世界や to do リスト、 それにプロジェクトのデータベースとの主なパイプとなっているのだ。そ れに加え、メールなら頻繁に(かつ安価に)カリフォルニア州 Sacramento にいる母、ワシントン州 Redmond にいる父、それに世界各地の友達と連絡 を保つことができる。

これだけ電子コミュニケーションに頼っているということは、ヘビーデュー ティーなメールソフトが必要だということになる。多少の欠点を我慢しな がら一年間 Claris Emailer 1.1v3 を使った後、まさに待ち望んだ Emailer 2.0 を試してみることができた。その結果、Emailer は欠点の少ない多機 能プログラムだということがわかった。

<http://www.claris.com/products/claris/emailer/>

概観 -- Emailer が登場した時の最大の売りは、複数のメールアカウン トを扱うことができるという点だった。初心者には America Online のア カウントが一つだけあれば十分かもしれないが、最近では複数のアカウン トを持ち、それぞれに入ってくるメールを管理しなければならない人が多 い。Emailer なら POP と SMPT を使ったインターネットメールに加え、 CompuServe、AOL、今は亡き Claris OfficeMail と RadioMail のメールの 送受信が可能だ。

Emailer は上記の複数のアカウント(同一サービスの複数のアカウントを 含む)に一度に接続することができるだけでなく、定期的にメールを自動 でチェックしてくれる。気が短い人なら 2 分間隔でメールをチェックする こともできるし、もっと気が長い人なら夜中にまとめてメールを送受信し たり、特定の曜日の特定の時間を指定することもできる。

Emailer は他のオペレーティングシステムを使っているコンピュータに添 付書類を送るための幅広いエンコーディングと圧縮方式を備えている。メッ セージはオフラインで書いて後で送信することもできるし、送り出すまで ドラフトとして保存しておくこともできる。Emailer は主なインターネッ ト関係の設定を一ヶ所に保存し、複数のアプリケーション(Anarchie や Microsoft Internet Explorer など)からアクセスできるようにするため の Internet Config もサポートしている。

<http://www.quinn.echidna.id.au/Quinn/Config/>

帰ってきたハードディスク -- Emailer 1.x の最大の欠点の一つはメッ セージの格納方法にあった。個々のメッセージを個々のファイルとして保 存してしまうため、大量のディスクスペースを無駄遣いしてしまうことに なりやすい。Mac のファイルシステムは、ハードディスクを 64,000 ほど の区画に切り分け、それぞれにはファイルを一つか、大きなファイルの一 部をしか入れることができない。大きめ(たとえば 2 GB)のハードディス クの場合、どんなに小さなファイルでも 最低 32K のスペースを割り当 てられることになる。たとえファイルには一文字しか入っていないとして もだ。小さなファイルが何百、何千とあったら、無駄になったスペースが どんどん増えていくことになる。Emailer 1.x で何百ものメッセージを保 存していると、2 GB のハードディスクが小さく感じられるかもしれない。

Emailer 2.0 はメッセージをすべて Mail Database ファイルに保存し、 Mail Index ファイルでメッセージを記録する。一人の友人などは、Emailer 2.0 にアップグレードしたらこのファイルシステムのオーバーヘッドが無 くなっただけで 85 MB もディスクスペースを取り戻すことができたと言っ ていた。

一ヶ所のデータベースにメッセージを保存するようになると、Emailer が ファイルを開いたり閉じたりする回数が激減するため、パフォーマンスも 向上する。Emailer 2.0 は複数の検索を同時に行うことができ、スピード は今ひとつだが、少なくとも検索をかけている間にコーヒーを淹れに行か なくても済むようになった。

1.x から 2.0 にアップグレードする際には、メールファイルをバックアッ プすることと、付属の説明書を読むことを力説したい。一言一句まで説明 書通りの手順に従わないと、データを失うことになりかねない。

私にとっては、アップグレードの際の問題は PowerBook とデスクトップの 間でメールをシンクロさせることだけだった。以前は増えたか変更があっ たメールだけをコピーすれば良かったのだが、今は毎回 25 MB もあるメー ルデータベースをコピーしなければならない。2 台のマシンをシンクロさ せることは頻繁に行うので、比較的安価な 4 ポートネットワークハブを 買って自宅で 2 台だけの Ethernet ネットワークを張った。

ニュールック -- Emailer 1.x のインターフェースに慣れていたため、 バージョン 2.0 の分割ウインドウ方式には少々の適応が必要だった。メイ ンの Browser ウインドウの左側に、In Box や Out Box、それにユーザー が作ったフォルダが表示される。選択されたフォルダの中身は右側に表示 される。小さな画面だとやや窮屈に感じられ、メッセージコラム (Subject、From/To、Date、Priority)の幅やメインの画面を 2 縦方向に 分割しているバーを動かして色々調整する必要があるだろう。メールフォ ルダとメッセージが Browser 内に表示されるのが嫌なら、フォルダをウイ ンドウとして開くことも可能だ。

Emailer にはよく使うコマンドのボタンが並んだ Toolbar と、Connection Status のフローティングウインドウがある。アイコンの意味がわからない 場合には、カーソルをボタンの上に持っていくとボタンの名前のラベルが 表示される。私はどちらかというとキーボードショートカットを使う質な ので、Toolbar は隠して貴重な画面スペースを節約することにした。

Emailer の新しいインターフェースには、ユーザーがどのようにしてこの 製品を使うかを Claris のエンジニアが考えたことを示す小さな変更が多 数見られる。たとえば、複数のアカウントを管理するのがより簡単になっ た。Emailer 1.x だと、複数の相手に <jeffc@tidbits.com> ではなくて <jeff@necoffee.com> からメールを送りたいとしたら、すべての送付先に 一人ずつ From アドレスを指定しなければならなかった。バージョン 2.0 では、一つのポップアップメニューだけですべての相手がどのアカウント からメールを受け取るかを指定することができる。

大量メールのファイリング -- Emailer 2.0 の嬉しい新機能に、より 柔軟になったメールフォルダ操作がある。フォルダの中にサブフォルダを 作ったり、Folder メニューで名前を変えることもできるようになった。私 は今 56 のメールフォルダを使っているが、TidBITS フォルダの中に Article Ideas フォルダを入れておくことができるので整理がしやすく画 面も散らかりにくい。

個々のメッセージにはポップアップする File アイコンがあって、メッセー ジをすばやくメールフォルダにしまうことができる。Toolbar にも同様の ボタンがあるほか、メッセージをフォルダにドラッグ & ドロップすること も、(私のお気に入りの) Command + Option + F でフォルダの一覧を表 示し、保存先のフォルダを選んで Return を押すこともできる。気の利い た機能として、メッセージが開いている間にフォルダに保存しても、メッ セージウインドウは開いたままになるというものがある。

優先事項 -- メールで一番難しいのは In Box に入ってくるものを整理 ・分類することだろう。Emailer の Priorities and Actions 機能を使え ば、毎日押し寄せてくるメールの洪水を多少はコントロールしている気に なることができる。

Mail Actions は到着するメールのフィルタとして機能する。私の意見で は、これは実に便利な機能だ。Emailer 2.0 の Actions は以前のバージョ ンよりも強力になっており、合致するかどうかチェックする条件のオプショ ンが増えている。たとえば、私は趣味で編集している電子雑誌である eSCENE のインフォーマルなメーリングリストを運営している。誰かが Subject に“yesmail”と書いたメールを送ってきたら、Emailer は自動 的に eSCENE フォルダにメッセージを保存し、受信した旨のメッセージを 返信する。自動的に差出人のアドレスを Address Book にコピーしたり、 メッセージを転送・印刷したり、差出人をグループに加えたり削除したり、 特定の AppleScript を実行することも可能だ。これはすべて自動で、私自 身が手を下す必要は全くない。

<http://www.escene.org/>

私は Actions を主に受信箱に入ってくるメールの優先度を決めるために 使っている。メッセージには 19 までのユーザー定義可能な優先度を与え ることができ、それぞれ別の色を指定することができる(20 番目は Emailer がアラート用に使っている)。Adam、Tonya または Geoff から来 たメールは“TidBITS”の印が付き、紫色に変わる。他のクライアントには それぞれ別の色が用意してあり、ものによって(たとえばプレスレリース など)は後でゆっくり読むために特定のフォルダに移される。受信箱に入っ てくるメールの優先度を指定することによって、早く返事を出してメッセー ジをフォルダにしまうことができる。

バージョン 1.0 の自動ファイリングと比べて大幅に改良された点は、 Emailer 2.0 はファイリングされた未読メッセージを憶えていることだ。 未読メッセージが入ったフォルダには小さな封筒の印が付き、フォルダ名 が太字で表示される。Mail メニューの Go to New Mail サブメニューを 使って、未読メッセージが入っているフォルダにジャンプすることができる。

最近 Fog City Software 社(Emailer の最初の開発元)はジャンクメール (“ spam”)を防止する Mail Actions をリリースした。これは受信した メールの発信者を、大量の迷惑メールを発信することで知られるドメイン のリストと照らし合わせてチェックするものだ。迷惑メールは複雑な問題 で(まずは TidBITS-347 を参照)、この Mail Actions がどれだけの効 果を持っているかは保証できないが、パジャマを着替えもしないで 10 億 ドルも儲けられるというようなメールに嫌気がさしているなら試してみる 価値はあるだろう。

<http://www.fogcity.com/em_utilities2.0.html>

アドレスブックの王者(とその他の機能) -- Address Book は間違いな く Emailer の最も優れた機能の一つだ。名前とメールアドレスを保存する だけでなく、検索も超簡単だ。Filter フィールドに入力しはじめると、リ ストがリアルタイムに縮んでいく。大抵の場合は、2 〜 3 文字入力すれば 探している名前に行き当たるだろう。

名前を追加する方法も美しい。受信メールの From アドレスの横には“+” ボタンがあり、これをクリックすると氏名、メールアドレスとアカウント が新しいエントリとして登録される。メールアドレスを Address Book ウ インドウにドラッグ & ドロップして新しいエントリを作ることもできる し、メールアドレスを集めたテキストファイルをドラッグしてきて一度に たくさんのエントリを作ることもできる。

その他の改良点としては、AppleScript サポートの強化と統合(独立した AppleScript メニューや Speak Unread Mail などのサンプルスクリプト) や、スペルチェッカがある(“email”という単語にひっかかって代替案を 出せなかったのは皮肉だが)。また、比較的網羅的でコンテクスト感応型 のオンラインヘルプも用意されている。

信頼性 -- それでも、まだ少しは変更してほしい点もある。Emailer は Eudora と違ってリダイレクト転送はサポートしていない。メッセージが開 いている状態で Command + D を押すとそのメッセージを削除できるが、 Auto File Log を見ている場合には Browser から削除しなければならな い。一度グループにアドレスを追加すると、元のアドレスが変更になって もグループのアドレスには反映されない。Browser で複数のメッセージを 選択して一つのテキストファイルに保存できるようにしてもらいたい。だ が、こういった不満は小さなことで、大体においては一応の解決策は見出 している。メールを多用する者として、Emailer に頼ることができるのは 大きな安心だ。

Emailer 2.0 は 68020 以上のプロセッサを持った Macintosh、System 7.1 以上、9 MB の空きディスク、2 〜 3 MB の RAM を必要とする。Claris は Emailer の“推定市場価格”を 49 ドルとしており、私が調べた限りでは 市場価格は 45 ドルから 50 ドルだった。Claris は 1.x からのアップグ レードの場合と他の Apple 製ソフトウエアユーザーに 10 ドルを払い戻し ている。Claris はファイルサイズ約 4.1 MB のデモ版も用意している。

<ftp://ftp.claris.com/pub/USA-Macintosh/Trial_Software/ ClarisEmailer2.0Trial.bin>

DealBITS -- 以下の URL 経由で、Cyberian Outpost は TidBITS 読者に Claris Emailer 2.0 を通常価格より 2 ドル安い 42.95 ドルで提供してい る。

<http://www.tidbits.com/products/emailer.html>


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