TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#386/30-Jun-97

王様は裸かもしれない。だからと言って王様には品格もないだろうか? 通 信品位法に対する合衆国最高裁判所の判決と、「品性に欠ける」データが ひとりでに人々のコンピュータスクリーンに現われるという意見について Adam が検証。そしてリリースされたばかりの Netscape Communicator 4.01 と LetterRip 2.0、さらに Usenet ニュースサーバ RumorMill について短 信を掲載。プラス Tonya は Adobe PageMill、Claris Home Page、 Symantec Visual Page などのビジュアル系 HTML エディタについてレポー ト。

目次:

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MailBITS/30-Jun-97

 (翻訳:小川 浄 <HGB00351@niftyserve.or.jp>)

LetterRip 2.0 入手可能に -- Fog City Software 社は徹底的にシンプ ルなメーリングリスト管理ソフトウェア、LetterRip 2.0 をリリースした。 LetterRip 2.0 は POP (これにより専用線によるインターネット接続を要 しない)、メッセージバナー、フッタ、拡張 AppleEvent、メッセージプロ セッサ、自動購読/購読中止用アカウント(<tidbits-on@tidbits.com> と <tidbits-off@tidbits.com>で一般に広まったもの)、そして複数ドメイン を新規にサポートしている。以前 TidBITS では LetterRip 1.0 が複数の 小規模内部リストの管理に、まずは不自由がないことを確認している。 LetterRip 2.0 は既存ユーザーからのアップグレードは無料である。新規 ユーザーには 295 ドルの出費だが、12 ヶ月のサポートとアップグレード が含まれている。 [ACE]

<http://www.fogcity.com/lr_2.0.html>

Rumor工場からまっしぐら -- Peter Lewis 氏と Stairways Software 社 のファンは 36 ドルの Mac 用シェアウェア Usenet サーバ、RumorMill 1.0 リリースの報に喜びを隠せないことだろう。RumorMill は Usenet ニュー ス配信を残らず取り扱うことを目指したものではないが(最近は一日 1 GB にもなり、なお増加傾向)、ローカルニュースグループのホストとして、 あるいはローカルユーザーが部分的ニュース配信を受ける際サクサク動く アクセス手段として、簡素で安価な問題解決法となるだろう(サーバが ダイアルアップ接続だとしても! )。RumorMill は複数の登り/下りサイ ト、IP 番号によるアクセス制限、遠隔地のセットアップアプリケーション によるリモート管理をサポートしている。さらに RumorMill には NewsWatcher の設定および標準的 newsrc ファイルのサポート機能があり、 telnet 経由で設定可能な先進的特長もいくつか備えている。その価格設定 によって RumorMill はローカルディスカッショングループにとって見逃せ ない存在になりそうだ。必要な RAM はわずか 2 MB である。 [GD]

<http://www.stairways.com/rumormill/>


地球より Netscape へ: Communicator 4.01 がリリースされた

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

Macintosh 用 Netscape Communicator 4.01 が入手可能となった。そのソ フトは Web ブラウジング、電子メール、HTML パブリッシング、プッシュ ・データ受信等々の Internet ツール群のスウィートである。Web ブラウ ザは、スウィート内では“Navigator”と呼ばれ、Netscape 3 からのアッ プグレードとなっている。Professional Edition にはグループスケジュー リングとネットワークオートメーション用の追加モジュールが付いている。 お決まりの言葉に従った仕様書(Dilbert の上司が著述したものかも)か ら判断すると、両方のバージョンは完全に企業ユーザーに主眼を置いたも のだ。Communicator 4.01 は、広くメディアの注目を集めた最近の「プラ イバシー」に関するバグも修正している。このバグは、不埒な Web マス ターがユーザーのディスクから予め名前の判っているファイルを取り出す ことを可能にしていた。

多分、Navigator モジュールで最も目立つ新しい機能(消費者に主眼を置 いたもう一つの機能でもある)は Bookmark メニューで、便利が良いよう に Sports や Shopping といったカテゴリー毎に予め設定されている。各 カテゴリーはサブアイテムを有し、例えば Shopping には The Sharper Image と Amazon Books が含まれている。ユーザー Bookmark はメニュー の一番下に表示される。新規ユーザーはそのメニューを便利と思うかもし れないが、私にはショッピングモールがブラウザに付いてきたかに思えた。

新しい bookmark メニューは以前の bookmarks.html ファイルでスワップ することにより変更できる、つまりユーザーフォルダ内の bookmarks.html (システムフォルダの中の初期設定内の Netscape Users フォルダにある) をそれで置き換えるのだ。少し試してみたのだが、新しい bookmarks.html ファイルの編集もできることが判った。だがこれらのどちらもが永久的な 解決策なのかは未だ判らない。

Netscape 社によれば、Communicator は 16 MB RAM 内蔵 68030 搭載 Macintosh と System 7.5 かそれ以降が少なくとも必要である。全ての Communicator コンポーネントを含んだ Standard Edition のダウンロード は約 10 MB となっている。 [TJE]

<http://www.netscape.com/flash1/comprod/products/communicator/>


通信品位法、違憲との判断

 by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
 (翻訳:小川 浄 <HGB00351@niftyserve.or.jp>)

猛者 CDA 三振し、Mudville に喜び在り。

97 年 6 月 26 日合衆国最高裁判所は満場一致の裁決によって(2 名の判 事が部分的に反対したものの)、通信品位法(Communications Decency Act、通称 CDA)が合衆国憲法修正箇条第一条に抵触するとの判断を下し た。公式の判決文で「CDA の『品性を欠く情報の伝達』と『明らかに不愉 快な表現』という条項が、修正箇条第一条によって保護されている『言論の 自由』を制限するものである」とされた。つまり子どもの親、教師、図書 館司書は、高飛車な政府の手を借りずに、自身の判断によってフィルタソ フトウェアやブロックソフトウェアを用い、どこまで未成年者にオンライ ンで見せるのか決める必要が出てくる。

裁判所は何を言わんとしたのか -- 筆者は法学者ではないが、判決の全 文に目を通し(判決 8 分後支持者が PowerBook と Ricochet ワイヤレス モデムを使ってポストした)最高裁判所は CDA の扱いに多くの問題を抱え ていたらしいという感想をもった。

<http://www.ciec.org/SC_appeal/decision.shtml>

現在は? -- CDA の支持者たちは自分たちが好まない言論(この言葉が ぴったりの表現と思われる)をコントロールする条項制定のため、今後も 闘い続けると述べている。新法を求めて合衆国議会でのロビー活動を計画 しているグループもある。CDA 草案の共作成者である Dan Coats 上院議員 は、さらに焦点を絞り込んだ新規の議案を提出する予定。同時に公表され た Sandra Day O'Connor 判事執筆の意見書(William Rehnquist 裁判長も 賛意を示した)は、その種の可能性に多少の勢いを与えた。意見書のなか で O'Connor 判事はインターネット上に「アダルトゾーン」を設けること は憲法に反しないと見なしている。しかし同判事は一方で「ユーザーを基 準にしたゾーン分けはいまだ発展途上で」「われわれは現在のインターネッ トの状況に当てはめて CDA の合憲性を判断せねばならない」とも指摘して いる。

<http://www.ciec.org/SC_appeal/concurrence.shtml>

そのほかのこれから検討される法案では、インターネットのサービスプロ バイダにフィルタソフトウェアやブロックソフトウェアの用意を求める可 能性がある。Bill Clinton 大統領は最高裁判所の判決内容を行政当局が検 討中であり「インターネットを学習のための強力な情報源とするつもりが あるならば、子どもの親と先生に対し、インターネットを子どもにとって 安全にするツールを用意せねばならない」と述べている。そして CDA 支持 者は再審の手続きを当局に急がせている。

子どものポルノおよび「わいせつな(『品性を欠く』よりは、しっかりと 定義された言葉だ)」データの配布に対して、これまで現行法が適用され てきたし、インターネットにも適用され続けるということを心にとめてお いて損はない。

CDA について考える -- 筆者には行政当局の CDA を擁護する態度が腑に 落ちない。行政当局の論調がちっとも差し迫って感じられないからではな く、そもそもそんな法が通過したことからしてまともではないのだ(そう、 それは 96 年の Telecommunications Reform Act の一部だった)。まして 下級裁判所での敗訴にもかかわらず行政当局が横車を押し通した事実を思 い起こせば、なおさらである( TidBITS-315TidBITS-333 を参照)。 ひょっとすると筆者は個人の責任に対して重きを置きすぎているのかもし れない。しかし、この論争を彩っているレトリックには驚きを禁じ得ない のだ。

たとえば Clinton 大統領は「正しいテクノロジーと評価システムをもって すれば、子どもたちがサイバースペースの赤信号区域に行き着かないよう にするのを手助けできる」と述べている。しかし残念ながらインターネッ ト上の汚らわしい写真を見るという行為に「行き着く」ことはない。その 種の写真を探しているときは、みずからリンクをたどるものである。 Usenet ニュースグループや IRC チャンネル、その他にしても同じである。 さらにいうなら赤信号区域のたとえは、誤解のもとである。身体的危険の 含みがあるからである。現実の赤信号区域は危険かもしれない。しかし、 はっきりと性描写が描き出してある Web サイト、ニュースグループ、 チャットルームに偶然入り込んだ者は、もしそうする気があれば即座にまっ たく安全に退去できる。

さらなる法律関係情報ソース -- 以上の筆者の意見は個人的なものであっ て、裁判所のなかではピンポン玉の箱ほどの重みも持ち得ない。真の法律 上の意見については Cyberspace Law メーリングリストを紹介しておきた い。そこでは自由な言論と CDA についての話題が細かく検討されている。

<http://www.ssrn.com/cyberlaw/>

法律上の討論にまじめに取り組みたい向きには、おびただしい脚注(法文 章というジャンルには不可欠であると筆者は納得した)に備えて Law and the Information Superhighway という書籍をお勧めする。Villanova 大学 法学校 Henry H. Perritt, Jr. 教授の手になるこの本の出版元は Wiley Law Publications 社で、中身は非常に包括的な参考書であり、あるいは教 科書ともいえる。150 ドルと高価で気軽に読める本でもないが、インター ネットをとりまく法律案件がもちあがったとき、筆者は基本を押さえてお く意味でも紐解くことにしている。下のページで書評を入手可能。

<http://jilt.law.strath.ac.uk/elj/jilt/BookRev/3waelde/default.htm>


Web を編む Part 3:初歩的なビジュアル HTML 編集

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

このシリーズ記事の最初の 2 つのパートでは、テキスト・ベースの HTML エディタを見てきた。これらのプログラムは、ページの最後の出来上がり に至るまで十分な制御手段を提供してくれる。このようなエディタでは HTML タグを扱わなければならないのだが、その作業は、ある人には退屈 で、またある人にとっては威嚇的であって、ほとんどの場合 Macintosh の 伝統から外れている。Mac ユーザーの多くは、10 分間も HTML タグをい じってみたならば、見えないところで HTML を操作してくれるプログラム を求め始めるだろう。このようなタイプのプログラムで最初に登場したの は、Adobe PageMill である(一番最近では TidBITS-356 でレビューし た)。PageMill には、今では 2 つの直接的な競争相手、すなわち Claris 社の Home Page 2.0 と Symantec 社の Visual Page 1.0 がある。この記 事では、これら 3 つのプログラムを比較し、さらにいくつかの無料である 選択肢を見ていくことにしよう。

<http://www.adobe.com/prodindex/pagemill/>
<http://www.claris.com/products/claris/clarispage/>
<http://www.symantec.com/vpagemac/>

これらのプログラムすべてで、その機能はローエンドなワードプロセッサ のようだ。すなわち、洗練されたテキスト編集オプションがないし、デス クトップ・パブリッシング・プログラム(あるいは Golive CyberStudio Pro や NetObjects Fusion のようなハイエンド HTML エディタ)ほどには 自由にページ上にオブジェクトをドラッグ & ドロップできるわけではな い。さらに、それらはページ単位ごとにしか俯瞰できないので、大規模な サイトを作る人にとっては不満だろう。それぞれには、WYSIWYG 表示(お そらく、WYSIWYS -“what you see is what you see”- というのが適切な 用語だろうが)を提供しようとする Edit モードがあり、また、HTML タグ で作業する HTML モードや、ブラウザがページをどのように表示するかを 近似する Preview モードが備えられ、これらのモードは作業中内部的にリ ンクしているのだ。いらだたしいことに、HTML モードでは、Edit モード で使えるスタイルに関するコマンドが扱えないときていて、HTML モードの 場合すべてを手作業によるタグ埋め込みで行わなければならないのだ。

これら 3 つのプログラムはすべて、レイアウトを試してみたり、ある一定 の Web ページを作成するには十分である。ところが、日々の実際例からい えば、完全さが求められる場面では結局のところテキスト環境に持ってき て最後の調整をしなければならないという点において、これらは不便なも のなのだ。そうではあっても、すべてのページが、その目的のために完全 な HTML を必要とするものではないし、作者の時間を拘束する必要がある ものでもない。新しくコンピュータを使い始めた人の手助けをした最近の 経験から、グラフィカルなソフトウエアで Web ページを作ることでも、一 定の人々、つまり HTML タグの問題でひどい目に会うこともない人々にとっ ては、立派な成し遂げたことの一つなのだ、ということを思い起こしたと ころである。

PageMillでも、Home Pageでも、Visual Page でも、どれを使ったからと いって、極端に道を誤ることはないだろう。ただ、それぞれに違いという ものはあるのだ。

ちぇっ、まるでテキストみたいだ -- 本格的なページ作成用としては、 これら 3 つのプログラムはおしなべて、凡庸で、今日的なワードプロセッ サにある洗練されたオプションを欠いている。そうはいっても、それらに はすべて基本的な Find & Replace があり、基本的な Macintosh の編集法 を踏襲しているところではある。ただし、Visual Page と PageMill はと もに、2 つの単語の間にテキストをドラッグ & ドロップしても必要なス ペースを自動的に挿入してはくれない。PageMill と Home Page はともに、 スペルチェッカも(PageMill のものはたいしたものではないにせよ)備え ている。Home Page では、Claris 製品標準のスペルチェック・エンジンと 辞書を使っていて、より熟成されたルック フィールを持っている。Home Page は、デフォルトのフォントの種類と大きさを変更できる唯一のプログ ラムであることで高い評価を受けることだろう。これは、3 つのプログラ ムで共通してデフォルトとなっている、いまいましいほど小さな 12 ポイ ントの Times では編集できないとする人々には重要な機能だ。とはいえ、 この範疇にあるソフトウエアは、ポスター、あるいはパンフレットのよう なページ向けに最適であるといえる。

Web 上にサイズの大きな書類を置きたいのなら、HTML コンバータを使った ほうが良いだろう。例えば、Terry Morse Software 社の Myrmidon 1.2 (このソフトウエアの説明にはこれだけではなくもっとスペースを割いて も良いほどだ)、RTFtoHTML 3.6(Chris Hector 氏作の 29 ドルのシェア ウエア)、Microsoft 社の Internet Assistant 2.0 for Word 6.0.1、階 層スタイルシート対応などホットな機能満載の QuarkXPress XTension で ある Astrobyte 社の BeyondPress 3.0(Extensis 社では CyberPress と いうライト・バージョンを販売している)などである。

<http://www.terrymorse.com/>
<http://www.sunpack.com/RTF/>
<http://www.microsoft.com/word/internet/ia/>
<http://www.astrobyte.com/>
<http://www.extensis.com/products/CyberPress/>

あるいは、Nisus Writer 5.0.4 のようなきちんとした HTML 変換オプショ ン付きのワードプロセッサを使うのもよいだろう。(WordPerfect の HTML 機能には心を引かれないのだが。)他に考えられるものでは、Akimbo 社の Globetrotter( TidBITS-374 を参照)が挙げられるだろう。

<http://www.nisus-soft.com/nisus_writer.html>
<http://www.akimbo.com/>

テーブルとフレーム -- テーブルとフレームは、HTML で一から作り上げ るのがとりわけ退屈なものである。だから、Web 出版に携わる人たちは、 手助けを求めてこうしたプログラムに頼りがちなのだろう。フレームに関 しては、Home Page を選ばないほうが良い。何故なら、それはフレームセッ トの中ではページを表示することができないからだ。PageMill と Visual Page はともにこの機能を持っている。

さてテーブルとなると、これら 3 つのプログラムはすべて、テーブルの フォーマットを適用するのにツールバーやパレットを用いているので、テー ブルの組み立てにダイアログボックスを何回も開いたり閉じたりする必要 がない。ただし、Home Page はこの面では低い評価となるだろう。その主 な理由は、一度に一つのセルに対してしかセルやテキストのフォーマット を適用できないからで、たくさんのセルをフォーマットするのが単調きま わりないからだ。

PageMill は、わずかながら Home Page よりは良い。複数のセルに対して 一定のフォーマットを施すことができるが、しかし、例えば強調タグのよ うなテキストに関するフォーマットは適用できない。筆者は、PageMill で テーブルを扱うのが好きになれない。というのも、テーブル内で選択を行 う方法をなかなか覚えられないからだ(テーブル全体、一つのセル、ある いはセル内のテキストをそれぞれ選択したいはずだろう)。PageMill を頻 繁に使うのであれば問題ないのだろうが、たまにしか使わない人は筆者と 同じ不満を感じるだろう。また、PageMill のツールバーは、ボタンが極め て小さくて、すばやく見分けることがなかなか難しい。PageMill での作業 はなめらかに感じられないのだ。

Visual Page は、この範疇のソフトウエアで見てきたなかでは、HTML テー ブルを最もうまく扱える。そのテーブル機能は簡単に覚えられ、Home Page や PageMill よりも多くのオプションを提供する(例えば、PageMill では ドラッグによってセルの大きさを縦方向に決定することしかできないが、 Visual Page では寸法をタイプ入力することができ、それを選択したどの セルに対してもあてはめられるのだ)。最も重要なのは、Visual Page が 一度に複数のセル内のテキストをフォーマットできることのみならず、複 数のセルにあらゆるフォーマットを適用できるということだ。

グラフィックとイメージマップ -- Adobe 社がグラフィックを重要視し ていることからすれば、PageMill のグラフィック操作機能がきわだってい るのも不思議ではない。PageMill にはより多くの機能が備えられているこ とに止まらず、さらにそれらの実装に磨きがかけられている。例を挙げる と、Visual Page ではグラフィックのサイズ変更が可能(ドラッグという 方法で視覚的に、あるいは寸法のタイプ入力という方法で数字的に)であ るが、しかし縦横比を保ったまま変更することができない。Home Page は、 縦横比一定に変更可能であるものの、ドラッグによる変更のみでタイプ入 力はできない。PageMill は、タイプ入力でもドラッグでも縦横比一定のサ イズ変更が可能である。ただ、枠の中に収まるよう縦横比を保ったままサ イズ変更するといったしゃれた機能はないのだが。もし、グラフィックへ の関心がほかのアプリケーションで整えた画像を貼り込めればよいという 程度なら、どのプログラムでも十分だが、もしグラフィックの大ファンで あるのなら、PageMill がぴったりだろう。Home Page の大きなマイナス 点は、グラフィックがテキストの左や右に並べて表示できないこと(Web ブラウザ上ではちゃんと表示されるが)である。

メディアの入れ物 -- これら 3 つのプログラムは、さまざまなファイル 形式に対応している。例えば、すべてが PICT、GIF、JPEG 画像を取り扱え る。ほとんどの場合、ファイルを書類ウインドウの上にただドラッグすれ ばよく、たいていダイアログボックスで定義可能なグラフィックあるいは 埋め込みオブジェクトとして、そのファイルはページの一部となる。しか しながら、時として、単にそのファイルへのリンクを作成することもある。 例えば、Visual Page はサウンドを埋め込みオブジェクトとして取り扱う が、Home Page はクリックでそのサウンドファイルへと導くリンクを作成 するのだ。これらのプログラムでは、ドラッグされたオブジェクトを異なっ た方法で表示するが、この違いは Preview モードで特に目立つ。Adobe 社 は手抜かりなく PDF(Portable Document Format)に対応し、Symantec 社 は Java アプレットにことさら肩入れしているところである。

私見であるが、ブラウザでページをプレビューしていたことで、Preview モードがまがいものであることに気づいた。ただ、Preview モードが重要 となる情景が想像できないわけでもない。ブラウザを同時に起動するのに 十分な RAM を持ち合わせていないユーザーがいるかもしれないし、あるい はアプリケーションの切り替えが法外な冒険となってまごついてしまうほ ど不慣れなユーザーだっているかもしれないからだ。下記の表は、これら のプログラムが、ドラッグされた異なるタイプのファイルをどのように表 示するかをまとめたものである。(“オブジェクト”とは一般的な埋め込 みオブジェクトを意味し、“リンク”とはページ上に合体するのではなく ドラッグされたファイルへリンクすることを意味する。)

> ファイル形式      Home Page        PageMill         Visual Page
>   モード          での表示:        での表示:        での表示:
>  -------------------------------------------------------------------
> アニメーション GIF
>   Edit モード     最初の一コマ     最初の一コマ     最初の一コマ
>   Preview モード  最初の一コマ     再生             最初の一コマ
> QuickTime
>   Edit モード     最初の一コマ     最初の一コマ     再生
>   Preview モード  最初の一コマ     再生             再生
> AIFF
>   Edit モード     リンク           オブジェクト     オブジェクト
>   Display モード  リンク           オブジェクト     オブジェクト
> au/WAV
>   Edit モード     リンク           リンク           オブジェクト
>   Display モード  リンク           リンク           オブジェクト
> Java アプレット
>   Edit モード     Javaオブジェクト Javaオブジェクト Javaオブジェクト
>   Display モード  Javaオブジェクト Javaオブジェクト 実行
> PDF
>   Edit モード     リンク           最初のページ     オブジェクト
>   Preview モード  リンク           最初のページ     オブジェクト
>   -----------------------------------------------------------------

必殺の機能 -- それぞれのプログラムは、ライバルに差をつける、少な くとも一つの必殺の機能を備えている。PageMill には、あらゆるセットの 色を格納するカラーパレットがあって、常用パレットとすることが容易で ある。Visual Page は、HTML モードと Edit モードとを同時に表示して編 集することが可能である。Home Page は、最も習得が簡単だ。

誰が何を使うべきか? -- 筆者は、PageMill をデザインのプロ、とりわ け他の Adobe 社の製品を使っている人に薦めることになるだろう。 PageMill が SiteMill に同梱されたからには、最高のお買い得セットかも しれない。このシリーズ記事では、次回以降 SiteMill についても取り上 げるつもりだ。Visual Page は、たくさんの機能をほどよいインターフェー スに包み込んでいて、そこそこ Macintosh を使い込んだユーザーか、本格 的な Web 出版関係者、また、PageMill を好まない人か、一連の Adobe 社 製品から離れていたい人、にぴったりではないかと思う。Home Page は、 趣味で使う人向けやホームビジネス用ツールという感じだ。それは最も覚 えやすくて、特に他の Claris 社製品をすでに使っていて、Control キー を押しながらのクリックが便利なメニューを表示してくれることを知って いるなら、なおさら簡単だろう。

お値段? -- Visual Page と Home Page の公式の推定販売店価格は、そ れぞれ、99 ドル 95 セントと 99 ドルである。PageMill の希望小売価格 は、149 ドルであるが、きっと 100 ドル以下で見つけられるに違いない。 購入に際しては、SiteMill 2.0 と一緒になった新しいバージョンを探すべ きだろう。また、特別価格をチェックすべきだ。例えば、Visual Page に は他の Symantec 社の開発ツールのオーナーを対象とする 20 ドルの割引 があるし、Home Page 1.0 のオーナーならアップグレードは無料である。

ソフトウエアがただであることを好む向きには、AOLpress 2.0 や 最近リ リースされた Netscape Communications 社の Communicator 4.01 につい てくる Composer モジュール(Communicator は 90 日の試用期間以降はビ ジネスユーザーや政府関係者には無償ではないのだが)などが考えられる。 筆者の意見では、これらのプログラムはどれも、商用の類似品と同じ土俵 に並べられるものではないと考えている。

<http://www.aolpress.com/press/>
<http://www.netscape.com/flash1/comprod/products/communicator/>

AOLpress -- 一見、AOLpress は素晴らしい機能を揃えている:テーブ ル、フレームとフォーム;カスタマイズ可能なツールバー、気がきいたオ ンラインでのワークブックのチュートリアル;そしてサイト管理指向の外 部リンク確認、複数ファイルでの検索と置換、並びに複数ファイルでのス ペルチェック等だ。それは主に AOL のカスタマーのために意図され、 AOLserver で動いているサーバや AOL の Web ホストエリアから直接ファ イルを開いたり保存したりできるようになっている。これらの全ては素晴 らしく聞こえるのだが、そのソフトウェアは抜本的な改良を必要としてい る。

Finder からドラッグ & ドロップできず、バルーンヘルプがなく、そして プログラムは Mac のヘルプメニューを避け独自のものを用いている。 AOLpress は“Open”と“Save”のダイアログにパスを使用し、外部モニ ター上ではサイズの再調整が正しく行われない。Mac ユーザーにとってこ れらの明らかな問題以外にも、そのプログラムは多数の面で期待はずれと なっている:フォームパレットは文書ウインドウの背後に姿を消し、複数 ファイルでの検索と置換は複数ファイル内で一項目のみの置換は行えず (その代わりに全てを置き換えるしかできない)、またテーブルの縁はド ラッグして大きさを変えることができない。メニューとダイアログボック スは、階層メニュー内をマウスをぐるぐる回して時間を費やすかのように 設計されており、またダイアログボックスは異なったフォーマットで素早 く実験を行うための“Apply”ボタンを欠いている。最大の欠点は、少なく とも私の場合、AOLpress は頻繁にクラッシュし、私の Power Mac 7600 で はのろのろと動作するのだ。

Composer -- 正直言って、私は、今回新しく出荷される Composer のバー ジョンに沢山の時間を費やしていない。実際、その前のバージョン、つま り今回の記事を完結なものにするには触れずにはいられないと決断するま で無視していた Netscape Navigator Gold の HTML エディタにはとても がっかりしていたのだ。足早にそのプログラムを眺めてみると、以前より 魅力的な Mac 風バージョンとなっていることが判る。実際、縁無しボタン で、二段のカラフルなアイコンで構成されたツールバーは気にいった。ア イコン上にマウスを動かすと、ボタンは立体的な正方形としてポップアッ プしてくるのだ。

Netscape は、Composer をベーシックなページを作る為のシンプルなツー ルへと変身させている。Composer はフォームやフレームをサポートしてい るかもしれないが、私には見つけることができなかった。テーブル編集は 格段に良くなっている。セルの縁をドラッグして大きさを変えることはで きないが、複数のセルにテキストフォーマットを適用できるのだ。この記 事の冒頭で、ここで記されている全てのプログラムには HTML ビューが備 わっているかの様なことを言ったが、Composer はそうではなく、お気に入 りのテキストエディタで素早くHTML ビューが得られるようにするコマンド を用意しているのだ。安価なツールでベーシックなページを作るのなら、 Composer を試すことをお薦めする。私の 7600 では Composer は満足に動 作しているが、私が気づいていないコンフィギュ問題があるかもしれない - 最近の製品同様、Communicator の推奨ハードウェア条件(16 MB RAM と 68030 ベースの Mac、及び System 7.5)は割り引いて考える必要があるか もしれないのだ。

まとめ -- 個々の読者のお決まりの不平や好みの機能が抜けているかも しれないが、視覚的な HTML エディティング用に提供されている主要なソ フトウェアについて、理解を深めて頂けたことと期待する。次週は、オプ ションでオブジェクトをドラッグ ドロップでき(デスクトップ・パブ リッシング・プログラムのように)、ハイエンド機能を豊富に揃えた Golive 社の CyberStudio Pro を見ることにする。

DealBITS -- Cyberian Outpost は、以下の URL を通じて TidBITS 読者 に Home Page と Visual Page をそれぞれ 84.95 ドルで販売している。こ の価格は Cyberian 社の通常価格から 8 ドルの割引となっている。残念な がら、この号が出る前に SiteMill 同梱の PageMill (更なる情報に関し ては TidBITS-385 の MailBIT を参照のこと)については価格設定を完了 することができなかった。

<http://www.tidbits.com/products/home-page.html>
<http://www.tidbits.com/products/visual-page.html>

    Adobe Systems -- 800/411-8657 -- 408/536-6000
America Online -- 800/879-6882 -- 703/448-8700
Claris Corporation -- 800/544-8554 -- 408/727-8227 800/800-8954 (fax) -- <info@claris.com>
Netscape Communications -- 800/638-7483 -- 415/937-3777 415/528-4124 (fax) -- <info@netscape.com>
Symantec Corporation -- 800/441-7234 -- 541/334-6054 541/334-7474 (fax) -- <cafe@symantec.com>

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