TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#390/28-Jul-97

Mac OS 8 参上 ! Geoff Duncan が今回大幅に変更された中から微妙な点を いくつか細かに調べ、普通の Mac ユーザーの協力を得て試した普通の使い 易さなども少し盛り込んだ全般的な品定めを行っている。また今週号では、 Robert Hess Memorial Macworld Party List のことや ClarisWorks for Kids のお知らせをするほか、Tonya が Web 出版のサイト中心とした視 点から Site Weaver、SiteMill、CyberStudio Pro の 3 製品を比較した記 事を書いている。

目次:

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MailBITS/28-Jul-97

(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

Macworld Expo Party List -- Ilene Hoffman 氏 <ileneh@mediaone.net> は、Boston で開催される Macworld Expo に関連して 8 月 5 から 8 日ま での間に行われるイベントのリスト Robert Hess Memorial Macworld Events を公開している(このリストを始めた故 Robert Hess 氏について は TidBITS-310 を参照していただきたい)。このリストは 8 月 6 日ま では変更が加えられることになっているので、現在手に入るものが完成版 でないことをご了解いただきたい。Macworld Boston 開催中に行われるイ ベントやパーティの多くには招待状が必要だということを留意の上、招待 客のみのイベントに押し掛けて迷惑をかけたりしないようにしていただき たい。また、イベントを主催する方は、そのイベント情報をフォームに記 載して送付するか、Ilene 宛に直接メールすればよい。 [ACE]

<http://www.xensei.com/users/ileneh/partylist.html>

Claris 社子供向けソフトを -- Claris 社は ClarisWorks for Kids 1.0 の出荷を開始した。これは 5 歳 〜 11 歳の子供を想定して作られた ClarisWorks のスペシャルバージョンで、サウンドトラックが付属した Claris ソフトはこれが初めてだろう。通な子供や大人達は、パスワードプ ロテクトのかかった Teacher メニューから初期設定をいじることができ る。時々の警告メッセージには“Important Question(重大な問題)”と 書かれているし、ファイルを開くためのファイアログボックスは、ある特 定のフォルダや同梱されている多数のテンプレートに到達しやすい仕組に なっている。メニュー項目とツールバーボタンは味のある明るい色合いに なっており、どうして大人向けの実用ソフトの見栄えはつまらないのだろ うと思うと羨ましくなった。

CWFK のファイルは ClarisWorks 4.0 との互換性がある。教育関係向けの 予想小売価格は 49 ドルで、サイトライセンス価格も用意されている。こ のソフトウェアの使用に当たっては最低でも、System 7.1、68020 ベース の Macintosh、3,250K の空き RAM、13 インチモニタ、30 MB の空きディ スクが必要となる(CWFK に喋らせるためには、さらに RAM を使う MacinTalk が必要)。ダウンロード容量 4 MB のお試し版が用意されてい るのだが、この記事を書いている時点では ClarisWorks for Kids の Web サイトにあるダウンロード用リンクは機能していなかった。だが、FTP の 方は大丈夫であった。 Claris -- 800/544-8554 -- 408/727-9054 -- <info@claris.com> [TJE]

<http://www.claris.com/kids/>
<ftp://ftp.claris.com/pub/USA-Macintosh/Trial_Software/ ClarisWorksForKids.bin>


Mac OS 8 検証速報

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

先週の TidBITS-389 で、Mac OS 8 の新機能の一部をざっとお伝えした。 今週は実際に使ってみて感じる微妙なところや技術的な部分をもっと細か く見ていくことにする。

この記事で何を取り上げるべきかを決めるにあたって、私のマシンを使っ て、ある二人の人に初めて Mac OS 8 に触れてもらった。一人は色々なプ ラットフォームを使っている大企業で事実上 Mac の管理担当をしているパ ワーユーザー、もう一人は自宅でワープロを打ったり、簡単なインターネッ トをしたり、教養 CD-ROM を見たりぐらいにしか Mac を使っていない人で あった。それ以外にも Mac 歴の長い 4 人(4 人とも Mac OS 8 を使って おり、そのうち 2 人はコンピュータ関連の仕事をしている)に Mac OS 8 について分かったことや望むことを尋ねてみた。今回の記事には、彼らの コメントや関心事があからさまに影響している。

システムフォルダ内のフォルダ達 -- Mac OS 8 のシステムフォルダを開 いてみると、新しいサブフォルダができているのに先ず気が付くだろう。 System 7 に Control Panels、Extensions、Fonts、Preferences などのサ ブフォルダがあったように、Mac OS 8 にも新たなサブフォルダができてシ ステムの中が散らからないようにするのに一役買っている。Help、Voices、 Modem Scripts、Printer Descriptions など多くのサブフォルダは名前通 りのものであるし、そのほかのものはサードパーティのアプリケーション が利用するサブフォルダである。たとえば、(Adobe 社製や Microsoft 社 製のほとんどの製品のように独自のシステムリソースが付いているプログ ラムが使用する)Application Support や、(ブラウザのプラグインやア ドオンを入れておくのに使えるであろう)Internet Plug-Ins というもの がある。システムフォルダ外に作られるフォルダとしては、(Apple の Setup Assistants や Internet Assistants が入っている)Assistants、 Utilities、OpenDoc 用の Stationery、Editors などがある。Scripting Additions フォルダはシステムフォルダのルートレベルに昇格した(だが、 このためにスクリプトユーティリティの中には面食らうものがあるだろう)。

各種サービス -- Mac OS 8 ではファイル共有に関するユーザーインター フェースが大幅に改善されている。File Sharing コントロールパネルと Users & Groups コントロールパネルのインターフェースは(まだ時として うっとうしいところもあるが)前より良くなったし、Sharing Setup コン トロールパネルと File Sharing Monitor コントロールパネルは File Sharing という一つの新しいコントロールパネルにまとめられた。各フォ ルダを共有するためのアクセス権の設定には、従来のチェックボックスに 代わってポップアップメニューが使われるようになったが、Copy ボタンを 用いてフォルダ階層間でのアクセス権を広げる操作は残念ながらさらに分 かりにくくなっていた。(二人がアクセス権をクリップボードにコピーし てから別途フォルダにペーストしなければならないと考えた。)

システム内のカラーピッカーを使用するプログラムは、新たに付属するこ とになった 2 種類のカラーピッカーを使うことができるようになった。一 つは、Crayon Picker という地元の Mac ユーザーグループである dBUG で 大人気の奇抜なもので、もう一つは、HTML Picker という(0099FF のよう な 3 つの 16 進法の数字を用いる)HTML の色表示ができ、ディザリング されない“Web 色”に限定することもできるものである。カラーピッカー 内で option キーを押すと、カーソルがスポイトに変り画面上にあるどの 色でも採取できるようになる。

Mac OS 8 には、そのほかにもちょっとしたクールな仕掛けが隠されてい る。Text Encoding Converter 1.2 を使えば、アプリケーションが(Mac OS Roman から Windows Latin-1 のような)特殊なエンコード形式間でシ ステム、プラットフォーム、言語の枠を超えて、特殊文字や分音符号など のテキストエレメントを正しく置き換えながらテキストを変換することが できるようになる。また、膨大な Unicode 1.1 および 2.0 の文字セット をサポートして、Mac で初めて Unicode 変換を実現した。さらに、Mac の 全スクリプト・エンコーディング、多くの Windows エンコーディング、お よび Web やメールのエンコーディング もいくつかサポートしている。だ が、プログラムがこれらのサービスを利用できるような仕様になっていな いといけないので、広くサポートされるようになって欲しい。

<http://www.unicode.org/>

Finder の Apple メニューから About This Computer を選ぶと現れるメモ リの使用状況の表示が改良された。従来のシステムでは、システムヒープ 内の一時メモリを使用するアプリケーションは、それぞれの Get Info の ウインドウで設定する比較的少なめのメモリだけを使っているかのように 表示される一方で、システムヒープの方が段々膨れ上がっていっていた。 新しいシステムでは、アプリケーションが使っている一時メモリも、その アプリケーションに割り与えられたメモリの一部として表示されるので、 Internet Explorer のようなアプリケーションが 実際に どれだけの RAM を使用しているのかを知ることができるようになった。ただ残念なことに、 今回の検証に協力してくれたユーザーの一人は、この新しい About This Computer ウインドウにまごついてしまった。彼はあるアプリケーションが Get Info のウインドウから割り当てた量以上のメモリを使用しているので 変だと思い、マシンをリスタートさせてしまった。

ネットワークに関しては、Open Transport 1.2 が付属しており、盛んに話 題になっていた Ping Of Death や SYN 洪水 と呼ばれるインターネット サーバのサービスを停止してしまうような攻撃から守ってくれるようになっ た。Mac OS 8 がサポートしているネットワーク・テクノロジーは Open Transport だけ なので、Open Transport を必要としないようなマシン でさえも、旧来のネットワークを使用することはできない。また、 AppleShare Workstation Client 3.7.1 が付属されており、TCP を使って ローカルネットワークやインターネット上の AppleShare IP サーバに接続 することもできるようになっている。

Mac OS 8 に関する技術書類の暫定版を Apple から入手することができる ので、もっと詳しくお知りになりたい方は、利用していただきたい。

<http://devworld.apple.com/MacOS8/MacOS8/MacOS8.html>

キャッシュと性能 -- 先週の記事の掲載後、読者から 68040 ベースの Mac での Mac OS 8 のパフォーマンスに関する質問を受け取った。私の場 合 Quadra 650 で OS 8 を 2 〜 3 週間動作させていたのだが、なかなか 良いというのが結論だ。システム測定用ユーティリティ(Speedometer や Norton System Info のようなもの、ただし MacBench は動かなかった)を 使って調べたところ、System 7.6.1 を動作させている際のパフォーマンス とだいたい同じような結果がでた。ただし、使ってみた感じとしては(特 にアプリケーションの切替えやバックグラウンド処理を行っている時)前 よりもややきびきびとしているように思えた。

パフォーマンスの記載に関してはお断りしておきたいことがある。特に Finder においては、ディスクキャッシュ次第で状況がまったく異なってく るのだ。68040 ベースのマシンでも PowerPC ベースのマシンでも、 (Memory コントロールパネルで設定する)ディスクキャッシュの量は 512K とか 1 MB に増やして Finder の反応が格段に良くなるのを知るまでは、 128K で十分だと思っていた。ところが、増やした途端にウインドウを開い たり、閉じたり、描き換えたりが速くなったのだ。(Web ブラウザのよう な)ファイルへのアクセスの多いアプリケーションの動きも速くなった。 私は現在ディスクキャッシュを 512K ぐらいに設定しているが、最適値と いうものはシステムや利用できる RAM 次第で変わってくる。先ず Memory コントロールパネルの Default ボタンをクリックして初期設定値に戻して から、必要に応じて変更を加えれば良い。

OS 8 用ユーティリティ -- OS 8 用のユーティリティやアドオンが多数 出てき始めているが、検証に協力してくれたユーザーや TidBITS の読者か ら質問のあったものだけについて取り上げる。

<http://www.bombaydigital.com/cmms/>

<http://www.opendoor.com/>

<http://devworld.apple.com/MacOS8/MacsBug.sea.hqx>
<http://devworld.apple.com/MacOS8/System-Picker.sea.hqx>

Apple Events と AppleScript -- 今回の変更の中で最も目立たないけれ ど全体への影響が大きいのが Finder と AppleScript 1.1.2 に関するもの で、AppleScript はここ 3 年の間で初めての本格的なアップグレードと なっている。Macintosh の自動化やカスタマイズをするのに AppleScript を使っている人達ならば、今回の AppleScript 1.1.2 はこれまでに知られ ていたバグ(空のリストと結んだりとか多文字デリミタを使ったり)の修 正とか、新たにサポートするアプリケーションタイプ(コントロールパネ ルとアクセサリアプリケーション)が増えている事に気づくであろう。さ らに大きな変更が System と Finder に含まれている。以前は Finder を 通して記述していた項目の多く(例えばアクセス権)がスクリプタブルな コントロールパネルに移り、Finder はいくつかのファイル属性を新しいや り方で扱うようになった。System 7.x 下でこれらの属性を使ってコンパイ ルされたスクリプトを Mac OS 8 下で開くと“obsolete”という表記がそ の末尾につけ加えられる。このスクリプト名から“obsolete”の部分を削 除してやれば OS 8 ではおそらく動くと思うが、以前のシステムではもう 動かなくなるであろう。これはスクリプト作者にとってはバージョンの異 なる Mac OS 毎に違ったソーススクリプトを用意しておかねばならないと 言う面倒をもたらす。Apple 社はさらにアプリケーションとプロセスの扱 い方も変えて、今や Finder が Apple イベントを別のスレッドで扱い、こ れが誤解を招きやすい時間切れエラーとなる可能性がある。Apple 社はこ の AppleScript と Mac OS 8 についての良い説明を掲示しているので、 AppleScript プログラマーは全員これに目を通すようお勧めする。

<http://applescript.apple.com/applescript_overview/system8/OS8_index.html>

実は Finder には“re-open application”の意の“rapp”と呼ばれる新イ ベントが用意されている。このイベントは多くの初心ユーザーが陥りがち なある問題をプログラマーが解決する手助けとなるであろう:それは何か というと、初心者があるアプリケーションがすでに立ち上がっているのに 気づかずに、そのアイコンをダブルクリックした時、それに応じてメニュー バーも変化したのに気が付かないと言う問題である。“rapp”は、この再 立ち上げの試みを検出し相応な反応を返す(例えば白紙のウィンドウを開 くとか、ダイアログボックスが現れるとか)様な仕掛をプログラムにさせ ることが出来る。しかし残念なことに、古いプログラムの中には Apple イ ベントエラー発生したという警告を表示するようなエラーとなってしまう 物も少なからずある。

AppleScript 1.1.2 は PowerPC ネイティブでは ない ;1998 年の半ば には予定されている AppleScript 1.2 まで待たねばならない。

諸君、注目! -- さて今回私に協力してくれた Mac ユーザーの諸氏はど の程度 OS 8 の変化を理解しただろうか?全体的にはかなりな程度だと思 うが、でも Apple 社が望む程度には至っていないかもしれない。

バラは他の名前で呼ばれても所詮...バラである、たとえ前に改名していた としても。Apple の Copland オペレーティングシステムプロジェクトは以 前は System 8 と呼ばれることになっていて、早ければ 1994 年には出荷 できるであろうと言われていた。それが 1996 年の 8 月には Apple 社は Copland をお蔵入りにし、1996 年 12 月には(数ヶ月にわたる噂と推測の あげく)NeXT 社の買収を決定した。これが Rhapsody となり、Apple-NeXT まぜこぜのオペレーティングシステムプロジェクトとして現在開発下にあ る。ところが今年の 3 月になり、Apple 社は Mac OS 7.7 アップデート (コードネーム Tempo) を Mac OS 8 として出す計画を発表するに至った。 それは Copland のために開発していた技術の取込み、大規模に手を加えた ユーザーインターフェースを身にまとうためであった。

もしこれを知ってる話だと感じたならば、あなたは Machintosh 識者の一 人と自分を見なしてよろしい - 私に協力してくれた Mac ユーザーのなか にも誰一人としてこの経緯をきちんと(日付ありでもなしでも)語れる人 はいなかった。Copland、System 8、Mac OS 8、Rhapsody それに加えて Be OS、これらの間の違いでさえ、Machintosh の雑誌、Web サイト、メーリン グリストと常に目を通している人でなければ、言うことはたやすくないで あろう。今回協力してくれた人達中で一人を除いた全員が次のような質問 をしてきた。Mac OS 8 のどこに「NeXT の物」は入っているのか(もっと ひどいのは、Unix のプロンプトに到達するにはどうしたらいいのかを聞い てきた)。またある人はこの冬の Be OS に関する大々的な報道を覚えてい て、Be 技術が反映されていないと残念がっていた。またある人は Mac OS 8 ではコントローパネルと機能拡張は動かなくなると聞いていたが(これ は Copland がそのまま生残っていたら本当の話になったであろう)、実際 の Mac OS 8 が現システムの強化機能との互換性をかなり高度に保ってい る事に対して良い意味での驚きを示していた。

Mac OS 8 のプラチナ仕立ての外観には System 7.x で育った人達は戸惑い があるかもしれない。というのは、いくつかのインターフェース要素には 誤った視覚キューを与えるかもしれないからだ。あるユーザーはなぜ Finder のポップアップウィンドウが自動的に閉じてしまうのか知りたがっ た(「私の机の引出しはいっぺん開ければ、私が膝でそれを蹴とばすまで は勝手に閉じたりはしないものだ」);また他のユーザーは大抵の文書ウィ ンドウの縁取りが太くなっているのをみて、「なぜこれらのウィンドウは モーダル(階層的)なんだ - Mac OS 8 はマルチスレッドのはずじゃなかっ たのか」と疑問を呈していた。

私が話をした 6 人の Machintosh ユーザーは必ずしもさらに大きな Mac コミュニティの代表ではないかもしれないし、彼らのコメントだけからこ うだと言うような結論づけをするのは適当ではないであろう。また紙面の 制限もあって、彼らが(Web 共有、ファイル共有、デスクトッププリンタ の設定、貼り付型メニュー、バネ付フォルダ、折畳みボックス、そしてテ キスト追随型メニューなど)Mac OS 8 をほとんどかあるいは全くトラブル なしでいかに使いこなしたかについて言及しなかった。更に言えば、私が 直接 Mac OS 8 に引き合わせた二人のユーザーはよい印象を持ったので自 分のマシン用に買うつもりである。製品にも Apple 社のプレゼンテーショ ンの仕方にも問題点は多少あるが Mac OS 8 は非常によい物である。言い 方を代えて言えば、もし Mac OS 8 が無償なら、対象となる機種の持ち主 全員にすぐにも入手するよう勧めるが、残念ながらタダではないので、読 者自身が自分でそれだけのコストにに見合う物かどうか決めなければなら ない。それは我々のためにある。

DealBITS ディスカウント -- Cyberian Outpost 社が TidBITS 読者のた めに Mac OS 8 を 通常価格 97.95 ドルから 2 ドル引きの 95.95 ドルで 提供している。

<http://www.tidbits.com/products/mac-os.html>


Web を編む Part 6: サイト管理

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(  :高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

この連載が長期化するにつれ、読者の皆さんも Web 出版を行うためのソフ トウェアにどのようなものがあるか、視野が広がっていることだろう。こ れまで私は、ページを中心とした視点から Web 出版の世界を眺めてきた。 先週の TidBITS-389 「Web を編む Part 5:新たなフロンティア」 では、サイトを中心とした視点に切替え、UserLand Software 社の Frontier を検討した。今週号では Frontier の複雑さから 離れ、よりシンプルなオプションとして Miracle Software 社の SiteWeaver、Adobe Systems 社の SiteMill、それに GoLive Systems 社の CyberStudio を取り上げたい。

<http://www.miracleinc.com/>
<http://www.adobe.com/prodindex/pagemill/siteben.html>
<http://www.golive.com/>

SiteWeaver -- SiteWeaver はサイト管理に必要な最小限の機能に徹して いる。サイトの維持管理のためにこれでもかとツールを提供するのではな く、相対リンクを壊すことなくWeb サイト内でアイテムを動かすという作 業のみに特化しているのだ。このソフトウェアは 68020 CPU、System 7 以 降、それに約 5 MB の空きメモリを必要とする。

Current Web Site という名前の付いた SiteWeaver のメインウインドウで は、サイト内でファイルを動かすことができ、サイトにあるエレメントを 操作する出発点ともなっている。このウインドウはアイテムをアウトライ ン形式で表示し、各階層はサイトにあるフォルダに対応している。残念な ことに、アウトラインを展開・縮小することはできないので、大きなサイ トだとだいぶスクロールをする羽目になる。アウトラインから探している アイテムを見つけたら、ダブルクリックで開くか、Option + クリックで Netscape Navigator でロードすることができる。

SiteWeaver はサイトの構造をゼロから組み上げていくのに便利だ。いつで もアウトラインに新しいフォルダやページを追加することができ、ページ は空でもテンプレートを利用したものでも良く、どんなプログラムで作成 したものでも構わない。新しいページで作業する場合には、ファイルを閉 じるようにするという注意が必要だ。というのは、他のアイテムを移動す る間にファイルが開いていたら、その動かしたアイテムへのリンクは更新 されず、SiteWeaver はこの問題について知らせてくれないからだ。

SiteWeaver はサイト内にある既存の壊れた相対リンクを発見することがで き、簡単に修理させてくれる。外部リンク(通常は他の Web サイトへ接続 するリンク)を扱う機能は搭載していない。あるサイトにあるすべてのリ ンクをまとめたり、壊れた相対リンクやリンクが張られていないアイテム をリストしたレポートを作成することもできる。

まとめると、SiteWeaver はシンプルかつ便利な機能を備えており、ユー ザーが特定の HTML エディタを使うことを強要しない。(後述するが、もっ と高度な製品の多くは特定の HTML エディタを使うことを強要したり、少 なくとも強く推奨したりするのだ。)残念なのは、Miracle Software 社が SiteWeaver の価格をあまりにも高く設定していることだ。World Wide Web Weaver(W4)( TidBITS-385 でレビュー済み) ユーザーには、SiteWeaver は 59 ドルだが、それ以外の場合は 109 ドルから 139 ドルとなる。この 価格帯なら、サイトのアウトラインを操作する機能をもっと備えていて欲 しいと思うし、より高水準のドキュメンテーションやダイアログボックス、 それに FTP やリモートリンクのチェックなどの機能も欲しいところだ。 Miracle Software 社は SiteWeaver のアップグレードも予定しているの で、将来は Miracle 社がより手頃な価格設定をしてくれるかもしれない。 競合製品もあることだし。

SiteMill -- 機能という面では、Adobe SiteMill 2.0 は SiteWeaver の 兄貴分に当たる。だが、SiteMill は新たなページを作成することはできな いので、サイトの骨格を手早く作り上げるということはできない。 SiteWeaver と同様に、SiteMill は サイトを Finder ライクなアウトライ ンで表示するが、SiteWeaver とは異なってアウトラインを操作することが できる。アウトラインは展開・縮小してフォルダの中身を表示したり隠し たりすることができ、アイテムを名前、タイプ、日付などでソートするこ ともでき、名前順でソートした際には、最初の文字をタイプするだけでア イテムにジャンプすることができる。これも SiteWeaver と同様に、ファ イルはダブルクリックで開くか、Option + クリックで好みのブラウザで開 くことができる( SiteWeaver は Netscape Navigator だけに限定されて いる)。

SiteMill には Site view ウインドウとともに、外部 URL をリストした External URLs ウインドウがある。外部リンクをチェックするコマンドも あり(幸いバックグラウンドで処理してくれる)、変更になった外部リン クは SiteMill で一度更新すればサイト全体にわたって更新してくれる。 SiteMill は問題のあるサイト内の相対リンクも発見でき、修正させてくれ る。

SiteMill は FTP クライアントの機能も持っており、完成したサイトを Web サーバにアップロードすることができるが、SiteMill の初期設定でパスを 正確に指定しておかなければならない。とりあえずサーバに接続してどこ にアップロードすべきかを見て、それからアップロードするということは できないのだ。一度すべてを設定してきちんと動作するようにしてしまえ ば操作は楽だが、トラブルシューティングは難しくなるし Synchronize オ プションなどを使うのはちょっと恐い。(Synchronize はサーバーのある ディレクトリをデスクトップにあるフォルダと全く同じ内容に書き換える 機能だ。デスクトップにあるフォルダには存在しないファイルを削除する ことまでやってくれる。)変更があったファイルだけをアップロードする オプションもあるが、ダウンロードのオプションはない。3 種類の FTP サーバソフトウェアで試したところ、いずれも失敗に終わった。トラブル シューティングとテストの結果、どうやら問題は私のマシンの方にあるよ うだが、特にマイナーな FTP サーバを使っている場合には、購入前に SiteMill がきちんと動作するかどうかを調べた方が良いだろう。

SiteMill 1.0 からのアップグレードを別とすれば、PageMill 2.0.1 の一 部としてしか SiteMill を入手する方法はない。驚くには値しないことだ が、SiteMill と最も相性の良い HTML エディタは PageMill だ。たとえ ば、SiteMill は PageMill 文書に加えられた変更を自動的に反映するが、 他の HTML エディタで行った修正はサイトをロードし直さなければならな い。これを頻繁に行うのはかなり面倒だ。PageMill と SiteMill の相性の 良さを示すもう一つの例として、SiteMill の Site view ウインドウから PageMill 文書へのドラッグで、そのアイテムへのリンクを張る機能があ る。PageMill を基本的なレイアウト用に使い、その後別のツールで HTML ファイルをいじる場合には、SiteMill の扱いには注意が必要だ。場合に よっては PageMill が起動し、ファイルを書き換える可能性があるからだ。

Adobe 社は Acrobat PDF をファイルフォーマットとして相変わらず重視し ている。SiteMill は Acrobat ファイルをサイトの構成要素としてリスト するうえ、Acrobat 文書内のリンクも扱うことができる。Adobe 社は SiteMill で Acrobat 3.0 ファイルをいじった後にファイルを最適化する ことを推奨している。SiteMill がこの作業を自動的に行ってくれることは ない。

SiteMill の検索・置換は使用には耐えるが制約が多い。ワイルドカードが 使用できず、サイトの一部だけで置換したり個々の検索結果を置換前に確 認することもできない。

SiteMill には最低 68020 CPU の Mac、System 7.1、2.5 MB の空きメモ リ、それに 4 ビットモニタが必要だ。“ベストパフォーマンス”のために は、68040 Mac、System 7.5、3.5 MB の空きメモりが必要になる。

私の SiteMill の印象は複雑だ。良い新機能はあるものの、どれももっと 良くできる方法が考えられる。それでも、PageMill ユーザーは SiteMill をサイト管理に便利なツールだと思うだろう。少なくとも SiteMill 1.x や手動より良いのは間違いない。一方、すでに他のサイト管理ツールを使っ ている方には、PageMill と SiteMill の組み合わせがそれほど魅力的に見 えるとは思えない。PageMill とこれまでの競合製品(Claris Home Page と Symantec Visual Page − TidBITS-386 を参照)を検討しているか、 PageMill と他のサイト管理機能を持ったツール(たとえば CyberStudio) で決めかねている場合には、PageMill の定価が 149 ドルでありながら 100 ドル以下で売られていることが多いことを考えると、PageMill がやや有利 となるかもしれない。

CyberStudio -- お伝えしたとおり、ここで CyberStudio について再度 見てみることにしよう。349 ドル(希望小売価格)/149 ドル(学割価格) の CyberStudio は、テキストベース及びビジュアル指向の Web ページ作 成用ツールをサイト管理ツールとともに統合したものである(ページ作成 機能については TidBITS-387 を参照)。SiteMill が PageMill を使うこ とを選ぶように、サイト管理だけのために CyberStudio を購入することは ないだろう、つまり、購入するならば、ページ開発のほとんどを行うため に CyberStudio を使おうとする場合のはずだ。

CyberStudio では、最終形となるサイトのディレクトリ構造を管理するこ とを諦めなければならない。CyberStudio がサイトを“出力”するときは、 デフォルトページ、そのほかのページ用の Page フォルダ、そのほかのサ イトリソース用の Media フォルダ、を収めたサイトフォルダが生成される のだ。

CyberStudio は、サイトをいくつかの方法で表示する。SiteMill での表示 に最も近いものは、タブ付きの Project View だ。これには、異なるリソー スのタイプ、すなわち、ページ、メディア、URL などに対応するそれぞれ のタブがある。この表示(これは Finder でのアウトラインのように展開 ・縮小できる)を使って、擬似フォルダにアイテムをグループ化すること ができ、各アイテムは相対リンクを崩すことなく名前が付け替えられるの だ。URL 表示にはすべての URL が記録されていて、ここに記録された URL を変更すると、サイト内の同様の URL がすべて自動的に更新される。残念 なことに、CyberStudio には外部リンクをチェックする機能が無い。さら に、CyberStudio にサイトを取り込むことはできるのだが、URL タブに外 部 URL を加える手順が煩わしくて、およそ自動的とは言えないのだ。その ほかの表示法では、どんなページでも追跡していってリソースのリンク関 係を詳細に見ることができたり、サイトの階層を確認することができる。

CyberStudio には組込みの FTP 機能があって、NetPresenz(Stairways Software 社の FTP サーバ)とでは使えなかったものの、全般的に動作は 良好で、ファイルをダウンロードするだけでなく、サーバのディレクトリ をあちこち動き回らせてくれる。CyberStudio には、更新されたファイル だけ、もしくはディレクトリをシンクロナイズさせてアップロードする自 動化機能がなくて、実際、アップロードするにはアイテムを Finder 上か らドラッグしなければならない。FTP 機能をその実質よりも見た目で表現 しているのだ。

SiteMill 同様、CyberStudio にはサイト全体に対する思うように使えない 検索・置換がある。CyberStudio の場合、この機能は筆者の Power Mac 7600 では極めて動作が遅く、またワイルドカードを使った検索ができな い。CyberStudio で見つけたもう一つの機能(SiteMill には無い機能) は、ファイルにラベルを付けられることだ(例えば、出版できる状態にあ るかを識別できるようにラベルを付けたいだろう)。

まとめ -- 結局のところ、SiteMill は PageMill に CyberStudio が提 供する以上に強力な一連のサイト管理機能をもたらすのであるが、しかし ながら両プログラムのサイト管理機能はいずれも必携のものではない。 SiteMill は PageMill(これは筆者の好みの HTML エディタではない)と の連携によって最も本領が発揮されるものだし、CyberStudio のサイト関 連機能はさらに充実が望まれるからだ。そうではあっても、これら製品は ともにかなりの商品価値を有している。シリーズ記事で以前述べたように、 もし Adobe 環境の中で過ごしているのなら PageMill はとりわけ簡単に使 えるだろうし、また SiteMill を同梱するに至ってはその値段の手頃さに わくわくすることだろう。CyberStudio のテキストツールとビジュアルツー ルとの結合に魅力を感じるなら、たくさんの便利な機能を見出すだろうし、 サイト運営をいくらか手助けしてくれるという特典がある。もしそうした いのであれば、CyberStudio がどう考えようがそれに関係なくサイトの構 造を保持するというように、避けて通ることだって簡単にできるのだ。次 週は、誌面の許す限り、サイト管理の傘下にあるさらにいくつかのアプリ ケーションを検証することにして、そして Macworld Expo をカバーする余 力を残すため数週間の中断をいただいた後、手軽な Web 出版ユーティリ ティーたちを見ていってこのシリーズの完結としよう。

DealBITS ディスカウント -- TidBITS 読者のため、Cyberian Outpost から、PageMill 2.01(SiteMill 2.0 を同梱)を通常価格の 99.95 ドルか ら 2 ドル割引した 97.95 ドルで提供してもらえるようにした。また、交 渉の結果、CyberStudio が 295.95 ドルとなり、これは Cyberian の通常 価格 297.95 ドルからは 2 ドルの割引となっている。

<http://www.tidbits.com/products/page-mill.html>
<http://www.tidbits.com/products/cyberstudio.html>


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