TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#399/29-Sep-97

今週号には死と誕生の両方のニュースがある。友人であり同僚であり Macintosh 界の指導的人物であった Cary Lu 氏の死を悼み、そして、私た ちの誕生したての刊行物 NetBITS(インターネット専門の TidBITS と思っ ていただければよい)についての詳しい説明に話題を変えよう。Tonya は コンテクストメニュー・ユーティリティをまたいろいろと見つけてきてく れている。そのほかのニュースとしては、LetterRip や ListSTAR へのアッ プデート、Intel 社の Dayna 社買収、Internet Config 1.4 のリリース、 Macworld Boston の移転、Virtual PC 1.0.1 などをお送りする。

目次:

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TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/29-Sep-97

(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

NetBITS 購読申し込みのご案内 -- NetBITS の創刊号は非常に好評だっ た。これは、現在 TidBITS を購読して下さっている方全員にお送りしたの だが、NetBITS の中でこれが例外的な配布であることをちゃんと書いてお かなかったことをここでお詫びしたい(我々は TidBITS の読者が先週号を 読んでから、金曜日に NetBITS を受け取ることになると間違った思い込み をしていたのだ)。TidBITS の購読者は 97 年 10 月 2 日に NetBITS の 第 2 号も受け取ることになる。それ以降は、<netbits-on@netbits.net> 宛に購読申し込みのメールを送らない限り、二度と NetBITS が送られてく るということはない。NetBITS については今週号内に詳しい説明を載せて あるのでご覧いただきたい。 [ACE]

<http://www.netbits.net/>

TidBITS のイタリア語翻訳版登場 -- イタリア語に翻訳された TidBITS が登場した。今のところイタリア語への翻訳はコーディネータの Francesco Madeddu 氏 <madfra@tin.it> が行っているが、彼は翻訳作業に協力してく れるボランティアを求めている。翻訳作業を手伝ってみようかと思う方は、 直接 Francesco にメールで連絡を取っていただきたい。TidBITS のイタリ ア語翻訳版は下記の URL の Web ページから入手することもできるし、メー リングリストに登録することもできるので、TidBITS をイタリア語で読み たいという友人がいたら教えてあげていただきたい。購読を申し込む時は <tidbits-it-on@tidbits.com> 宛に、また購読を取消す時は <tidbits-it-off@tidbits.com> 宛にメールを送っていただきたい。TidBITS がますます多言語出版物になっていくことに協力してくれている Francesco およびそれほかのボランティア翻訳者たちにお礼を言いたい。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/it/>

Intel 社、Dayna Communications 社を買収へ -- 先週 Intel 社は Dayna Communications 社を買収することで話がまとまったと発表した。Dayna 社 は Salt Lake City にあり、定評の Macintosh 用および Windows 用のネッ トワークやストレージの周辺機器を 10 年以上製造してきた(5.25 インチ の DOS ディスクを読むことができる DaynaFile を思い出していただける だろうか)。小規模企業や教育関係のニーズを念頭において作られてきた Dayna 社の製品は、今後の Intel 社の小規模企業ネットワーキング市場戦 略の鍵となるであろう。Intel のスポークスマンによると、Intel 社と Dayna 社は Mac 製品を含めた全 Dayna 製品ラインの評価を行って、来年 の製品の最高の構成を決定することになるということだ。 [MHA]

<http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/NW092497.HTM>

PC をアップグレードするより簡単 -- Connectix 社は Virtual PC 1.0.1 アップデータをリリースした。モデムスピードを間違えて設定しまうこと と沢山のゲームに関連する問題を含む多数の細かな点を修正し、Virtual PC を使い易くしている。新しいバージョンではフロッピーディスクへのア クセスが速くなっており、 Ethernet アダプタと印刷のサポート改善に加 え、複数のオペレーティングシステムでの Virtual PC の使用方法が単純 化されている。Virutal PC 1.0.1 では、我々のレビュー( TidBITS-397 を参照)で見落としてしまった問題への対応もなされている。Virtual PC を起動する際に Option を押すと、Virtual PC が Windows 95 を起動する 前に Prefereces のダイアログボックスが表示され、これにより、仮想マ シンの再起動を必要とする D: ドライブの設定やその他の作動状態を変更 できるのだが、Version 1.0.1 では、Windows 95 内で Shut Down し、次 に Option を押すことで、同じ機能にアクセスする事ができるようになっ た。アップデータは約 3 MB のダウンロードで、Windows 3.11 用と Windows 95 用に異なったバージョンが用意されている。 [GF]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04121>
<http://www.connectix.com/html/cvp_updates.html>

Internet Config 1.4 がリリースされた -- Peter N Lewis 氏と Quinn 氏は、電子メールサーバ、Web ホームページ、ダウンロードフォルダ等々 の、Internet 用の初期設定を集中管理するためのパブリックドメインの解 決策である Internet Config の バージョン 1.4 を、リリースした。 NewsWatcher、Anarchie、Fetch、そしてInternet Explorer を含む沢山の Internet 用アプリケーションが、Internet Config に依存している。 Internet Config 1.4 では従来のバージョンに比べ著しく信頼性の向上が 計られており、Internet Config アプリケーション内での Get URL Apple イベントのルーティングのサポート、Internet Config 機能拡張内でのデ フォルト設定、初期設定破損有無のチェック、破損の際には読みに行ける よう初期設定の内部バックアップ、を含む若干の新しい機能が加えられて いる。Internet Config は 161K のダウンロード。 [ACE]

<ftp://ftp.tidbits.com/pub/tidbits/select/internet-config.hqx>

メーリングリストマネジャー最新版 -- 市販されている二大メーリング リストマネジャーである、StarNine 社の ListSTAR と FogCity 社の LetterRip の両方ともが最近アップデートされた。ListSTAR 1.2 では新た な Eメールサービスのセットアップのためのテンプレートが改良され、さ らに Open Transport を使ったマシン上でメールを送信するとき DNS を参 照する回数を減らすことで性能を改善している。ListSTAR のアップデート は POP バージョン、SMTP バージョンどちらも 3.3 MB のダウンロードで 入手できる。FogCity 社の LetterRip 2.0.1 はメンテナンス版であるがい くつかのうれしい改良が加えられている、それはリストに対するヘッダー を無効にする機能と Maxum 社の PageSentry サーバーモニタリングソフト に対するサポートである。LetterRip 2.0.1 のダウンロードは 2.7 MB で ある。 [ACE]

<http://www.starnine.com/liststar/liststarupdates.html>
<http://www.fogcity.com/lr_download.html>
<http://www.maxum.com/PageSentry/>

MacWorld Big Apple [ニューヨーク] へ -- 最近 MHA Event Management 社を買収して出来た IDG Expo Management 社は、将来の東海岸での Macworld Expos は 1984 年以来開催されてきた Boston を離れて New York City で開かれるだろうと発表した。New York での最初の Macworld Expo はマンハッタンウエストサイドの Jacob K. Javits Convention Center で 98 年 7 月 8 日から 98 年 7 月 10 日まで(Macworld Expo Professional Conference Program は 6 日から 8 日まで)開催される。Boston Globe 紙によればこの動きは New York City の方がより大きい Macintosh マー ケットであり、さらに Boston での二会場ショーというのは出展社にとっ ても来場者にとっても不便でかなわないと言う声に応えたものだと言う。 [MHA]

<http://www.mha.com/idgexpos/pr/pr_mwny.html>
<http://www.boston.com/dailyglobe/globehtml/261/ MacWorld_Expo_to_leave_Boston.htm>


Cary Lu を偲んで

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

逝ってしまった親しい友のことは書きづらいものだ。言葉がつかえてしま いがちで、思うように語ることができない。それでも思い出や逸話が、時 には相反したりもする様々な感情とともに押し寄せてくる。こんな気持ち を堪え、97 年 9 月 23 日に癌のためにこの世を去った Cary Lu が私に とってそして Mac コミュニティに係わっているいないを問わず多くの人々 にとってどんな存在だったのか話してみようと思う。

Mac コミュニティ の住人は、Macworld の寄稿記者であり、Macintosh 本 の先駆けの一つ The Apple Macintosh Book の著者であった彼を知ってい るだろう。だが、有名な本の作家や Macintosh 雑誌にレギュラーで記事を 書いている人は大勢いるのだ。こういった説明では彼の人となりを伝える ことはできないだろう。

Tonya と私が Cary に出会ったのは、dBUG(Seattle Macintosh Users Group)の会合の席だった。ちょうど Quadra がリリースされたばかりの頃 で、陶酔した観衆に向かって彼は全般にわたる細かな技術説明を行ってい た。当時 2 歳だった彼の息子 Nathaniel がチョコチョコと彼の邪魔をす るので、彼は新 Mac に関する細かな質問に答えることさえできずに、よち よち歩きの坊やの世話を焼いていた。幸い Microsoft に勤める Tonya の 友人が Nathaniel の面倒をかって出てくれ、会合は邪魔が入らずに続ける ことができた。

その後何度か Cary を見掛けることもあったが、彼はあまりオンラインに は係わっていなかったので、お互いそれぞれ別の道を歩むことになった。 だが、報道関係の仲間がお互いに顔を会わせる場のようになっている Macworld Expos のお陰もあり、Boston や San Francisco で彼に幾度か 会っているうちに共通の住まいである Seattle でも会うようになった。

こうして友達付き合いをするようになったのだが、当初我々の話題はコン ピュータ関係のものに限られていた。ある日、Cary がカナダの Vancouver にある Comdex PacRim まで友人とドライブするのに Geoff Duncan と私も 誘ってくれたのでついて行った。同行してみて始めて知ったのだが、ある 種のレストランで食事をすること(おもしろいことに Cary は Seattle の すぐそばに住んでいながら一度もビールとコーヒーを試したことがないそ うだ。香りだけで十分だったらしい)と、中古の CD 屋に行って、彼の何 千という CD コレクションに新たに加えるクラシックの珍しい輸入版を見 つけることが彼の大の楽しみだった。

親しくなるにつれていろいろなことが分かってきた。Cary は Berkeley で 物理学の学士号を取り、California 工科大で視覚研究をして博士号を取得 した。Unix が登場した頃 Bell 研究所に席を置き、セサミストリート用の の短い映画を作り、Children's Television Workshop の仕事をし、Nova の連続テレビ番組を創り出したチームに加わったりもした。さらに、オー ストラリア、アルジェリア、ケニアの各政府の技術教育問題にも携わった こともあった。とてもたくさんのことをやってきた。51 歳のときに末期の 癌であると判った後、彼は人生を全うしたと語っていた。

Meredith(10 歳)と Nathaniel(7 歳)とういう二人の子供の成長を見る ことができないのが、彼にとっての心残りだった。Cary は私が出会った中 で多分誰よりも頑張り屋の実務家だっただろう。そして、彼は子供達のこ とを愛していた。Tonya と私が子供をつくるということに関して議論して いた時、Cary の意見を聞いてみようという名案が浮んだ。彼ならきっとこ の件に関して絶対的で理知的な意見を披露してくれるだろうと考えたのだ。 そこで、彼の家へ行って尋ねてみた。彼は話し合うためならいつでも時間 を作る人だった。何のためらいもなく、子供に関しては理知的な持論など なく、単に欲しいと思えばそれでいいのだと笑って答えてくれた。期待し ていたような答えではなかったものの、これは事態の本質を見抜くという 彼の能力をよく現わしている例だろう。

人をものすごく納得させる Cary の意見の中でもコンピュータ界でしきり に論争になる話題に対する 2 つの主張は絶賛ものだ。一つは、娘の小学校 のコンピュータに関するポリシーの決定に賛成した時の彼の意見である。 子供が 3 年生の時にどのプラットフォームを使うかということはたいして 重要ではない。なぜなら、コンピュータ業界の変化は速いので、大学に行 く頃にはすべてのコンピュータは全く変わってしまっているだろうという ものだ。もう一つは、どのプラットフォームを購入すべきかというお決ま りの質問に対するもので、コンピュータに通じている友人、それも土曜の 夜、困った時に電話を掛けることができるような親しい友人が使っている のと同じプラットフォームを買うべきであるという適切なコメントである。

(Cary がこんな話をしてくれたことがある。何年も前のことだが、彼の近 所の人が、彼がコンピュータの専門家であることを聞きつけて、Apple II を買うことにしたのだがどうだろうかと聞きに来た。そこで彼は「素晴ら しい選択だね」と言ったのだが、自分が Apple II のことなど何も知らな いで答えていることや、だから彼を生涯テクニカルサポートに陥れること などできないことは口にしなかった。)

Cary は近所のその人からは逃げたものの、コンピュータに関して私が思い 起こすことのできる人達 10 人分よりも一人一人の力になってあげていた。 50 年代、60 年代に育った彼は電子機器の達人になり、友人や知人のため に様々な電気製品を修理してあげた。一度私の PowerBook 100 の半田付け がしっかりしていなかった時、彼は私に子供の頃電気器具いじりをやった かと尋ねた。電気に関する知識もなくコンピュータ分野でお前ぐらいのレ ベルに達することが有り得るのかというような少々戸惑った響きがあった。 そこで私は自分が農家の生まれで、子供の頃は農機具を修理していたし、 それには半田ごてよりもハンマーの方が役に立ったのだと答えた。

彼の電気製品を修理する腕は、趣味の一つである中古のコンピュータ部品 の購入販売でも役に立っていた。最終的に 1 セントもかけずに自分の欲し いと思うハードウェアすべてを手に入れるというのが彼の夢だった。彼と 一緒の最後の外出になった Boeing Surplus(Boeing 社製の払下げやあま りものの部品を売っているところ)で、1996 年になってやっと支出の方が 古いものを売ってできる金額をわずかに下回るようになったと話してくれ た。彼の家は、その時彼が購入した見開き表示のできる古いモノクロのディ スプレイ群ようなもので溢れかえっていたものだった。そのディスプレイ 群は部品取り用に使われたものもあるが、たいていは修理されて売られて 行った。だがそれは、彼の妻 Ellen がガレージを塞いでしまっているその ディスプレイの山に堪忍袋の尾を切らしてしまった後のことだ。そのほか では、予備の部品と友人から貰った部品を使い、クロッククリスタルチッ プに 1 ドル投資しただけで、486 ベースの PC を組み立てたこともあった。

彼はあまり新しいコンピュータを買うことはなかったのだが(長い間中古 の IIfx で仕事をしていたし、最近になってようやく中古の Power Mac 8100 に格上げした)、掘り出し物探しは大好きだった。傷物難物のセール でねぎった末に Ethernet カードを 7 ドルで買ったことがあった。オーク ションで子供のために壊れた立体顕微鏡を手に入れるためにがらくたの寄 せ集めを購入するまではこれが彼の一番のお気に入りのお買得な買い物だっ た。彼は自分が顕微鏡を直すことができると分かっていたし、35 ドル分の 価値は十分にあるがらくた達だった。そのがらくたの山を引っ掻きまわし て、電気コード 50 本と DEC の名前入りの箱 2 つを密着したものを掘り 出した。その箱に入っていた一組の 2 GB SCSIは、DEC の友達の協力もあ り Mac に繋がる立派なハードウェアに生まれ変わった。

Cary にとって友人は彼の人生の大きな部分を占めていたし、彼は自分の経 てきた多彩な経歴の中で大勢の友人を作っていた。彼の癌が最後の数ヶ月 で悪化してしまうまで、友だち同士はあまり知らなかった。突然大勢が彼 に会いに来るようになった。それは彼が治療のために入院していた時もそ の後も同じだった。私たちが彼を見舞うと、そこにはたいてい別の友達が いた。

Cary の癌が判明したのは 1997 年 1 月の Macworld San Francisco の直 後だった。最初の症状は腰を下ろすと背中が痛いというもので、Tonya と 私がその Macworld の終了日近くに彼と一緒に取った昼食は立ったままの 食事だった。その一週間後 MR スキャナでの検査の結果、痛みの原因となっ ている脊柱部に腫瘍が見つかった。それ以降のニュースは悪化の一途をた どったのだが、しばらくは放射能治療と化学療法の副作用以外の症状は現 れていなかった。その後私たちはいつもよりもずっと多くの時間をともに 過ごし、非常に親しい友人になった。彼が健康であればそこまで親しくは ならなかっただろう。

ほかの人達も同じように Cary との親交を深めて行った。そして、私たち は別の彼の友人達数人と共同で Cary の人生に関わった誰でもが思いや思 い出を綴ることのできる Web サイトを作った。このサイトを利用して、み んなで Cary について、そして彼が我々にとってどんな存在だったかにつ いて綴っていきたいと考えている。そして、いずれそのすべてをまとめて Cary の妻 Ellen と子供達に渡すつもりだ。成長していく Nathaniel と Meredith のこれからの人生にもう Cary は係わることはできないが、その 代わり二人は自分の父親がどれだけ多くの人の人生に係わっていたかを知 ることができるだろう。

このサイトを訪れてくれた人はすでに何万人にも及び、Cary を知っている 人からの声は次々と届き続けている。是非このサイトを訪れてほかの人達 がどんな事を書いているか読んで欲しい。そして自分の声も届けたいと思 う人は、<carylu-remembered@tidbits.com> までメールを送って欲しい。

<http://www.tidbits.com/carylu/>

Cary の死は我々皆にとって痛手である。彼の知識、技術、きちょうめん さ、マニアックな子供っぽさ(彼はごく限られた製品にしか夢中にならな かったし、インターネットの全般的な有用性を認めたのもごく最近のこと であった)をもう目にすることができないのかと思うと悲しい。それに彼 の高度なウィット(彼があまりにもさり気なく書くので、彼を知らない人 はそのユーモアを見逃してしまいやすい)が聞けなくなるのも寂しい。そ して最後に、Cary のことは友人としても模範となるような人物としても、 見習うべきところの多い人物だったという言葉で彼の思い出を締めくくり たいと思う。皆さんと同様に私も彼のような人間になりたいと思う。


新出版 NetBITS

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

もう第一号をご覧になったと思うので、我らの新しい出版物 NetBITS につ いて少し解説したいと思う。まず TidBITS は主として Macintosh に関し ての記事に焦点を当てたニューズレターとして出発したが、時と共にイン ターネットに関する記事も多くなってきた。当然我らのインターネット記 事はだいたい Macintosh 関係のもの、例えば Tonya の HTML 編集ツール に関する広範囲で踏み込んだレビュー記事のようなものでやってきたが、 内部ではいつも Macintosh とインターネット情報の理想的な割合について 議論をしてきていた。折りに触れては Macintosh とインターネット関連を 分離することも考えたが、その度に毎週一つの出版物を出していくための 仕事量だけでも大変なのにとても二つにするのは二の足を踏まざるを得な かった。

ここで Glenn Fleishman <glenn@netbits.net> 氏を紹介しておこう。Glenn は我々の古くからの友人で、初期の TidBITS への寄稿者の一人でもあった が Seattle に引っ越してきて以来単なる電子メール友達以上のつきあいと なった。Glenn の経歴は非常に広範囲で、Kodak Center for Creative Imaging から始まって、Peachpit Press 社向けの本の制作を多数手がけて きた Seattle の本制作会社 Open House 社で編集長をしていた。1994 年 に Open House 社を退社、Web ホスティング会社の草分けの一社である Point of Presence Company (POPCO) 社を設立した。我々がまだインター ネットへの専用線接続が出来なかった 9 カ月間(US West の能力のなさの おかげで)Glenn はボランティアとして TidBITS の Web とメーリングリ ストサーバーとを POPCO社の T1 回線にのせてくれた。このころ Glenn は また有名な Internet Marketing Discussion List を立ち上げ自ら議長役 もこなした。1996 年後半には POPCO 社を売却し、半年の間インターネッ ト書店である Amazon.com 社のカタログ部長をやった。しかしながら、こ の様なハイペースの立ち上げは(Microsoft に次ぐ)次第に本人をむしば み始めたため、もっと静かな生活を求め退職する事とした。

しばらく自宅で薔薇などを愛でてゆっくり休養を取った後、Glenn は NetBITS のアイディアを提案してきた。それは TidBITS の様なものでイン ターネットをプラットフォームとして扱うというものであった。我々も似 たようなことをずーっとやりたいと思っていたので、飛びついた次第であ る。Glenn は長年にわたってインターネット記事をいろいろな出版物に書 いてきているし、それに我々の持っていない Unix システムアドミニスト レーションの経験もある。Glenn のアイディアは自らが NetBITS の編集長 をつとめそして我々が TidBITS 用に整備した技術、編集のインフラを活用 しようと言うものであった。

昨月我々はもう一つの出版物をどうするかの計画づくりと、TidBITS では 何がうまくいっていて何は変えた方がいいかを話し合った。NetBITS はい ろいろな意味で TidBITS に似たものとなるであろう、そのスタイル、体 裁、トーン、それにプロ意識。とはいっても時間と共に自分自身の姿を持 つようになっていくであろう。例えば NetBITS は Q&A セクションを持つ し編集者に対する投書の欄もきちんと持つようにする。これまですばらし い投書を頂いても TidBITS の記事にどうからませてよいか悩ましいものが あったりしたが、NetBITS の投書欄がこの種の問題を軽減し読者からの有 益な情報の伝達の一助となることを願っている。

詰まるところ、NetBITS の目標は、目覚めている時間の相当の部分を、職 場でであれ家庭でであれ、オンラインで過ごす人達、そしてインターネッ トをどうしたらより簡単に、より効果的に使えるか、あるいは単にどうやっ てやるのか知りたい人達の興味を引きつける記事を掲載していく事である。 我々は Net の概念的な部分(どのようにして動いているのか)と実際的な 部分(どうしたらよりうまく使えるか)の両面を扱うつもりである。 NetBITS は Macintosh 関連の内容も扱うが、Unix, Windows 95, あるいは その他の OS に関するインターネット情報も含む予定である。TidBITS 同 様、NetBITS も基本的には企業スポンサーの財政的なサポートにより運営 されるが、我々としてはその他の財源を確保する方策も、もちろん支持が あっての話ではあるが、試みたいと思っている。例えば、広告は出したい けれどスポンサーとして名前を連ねるほど余裕のない人たち向けの低価格 の求人広告など。

最初の数週分として用意した記事には法政がインターネットといかにかか わるか、ADSL (Asymmetric Digital Subscriber Line、インターネットへ の高速アクセスの新技術)に関しての概説、Eudora の Mac 版及び Windows 版の使い方についてのヒント集、@Home 社の CATV インターネットの解説 などがある。

当然来るであろう質問に答えておくと、いいや、TidBITS の発行を止める 考えは全くない。逆に TidBITS にはもっと 多くの Macintosh ニュー スを入れられると思う。と言うのもインターネット記事のいくつかは NetBITS 側に移るであろうから。ある記事が大変重要であると判断した場 合は当然両方の出版物に載せるつもりである。単純に言って、NetBITS は TidBITS の替わりを意図したものではない、Macintosh 業界が強さを維持 し TidBITS そのものも財政的にやっていける限りは、我々は我らの大好き なプラットフォームについて書き続けるつもりである。

我々の現在の計画は NetBITS を毎週木曜日の夜に発行すること、つまり皆 さんのメールボックスに金曜には届くはずである。最初の 2 号までは TidBITS メールリスト全員に紹介のために送っている;その後は皆さんに は電子メールで購読登録をして貰わねばならない、 <netbits-on@netbits.net>(テキストバージョン用、この TidBITS の様 な)または <netbits-html-on@netbits.net>(HTML バージョン用、あなた の電子メールソフトが HTML メールを扱えるかどうか確認して欲しい、 Netscape Navigator 3.0 と Netscape Communicator 4.0 は大丈夫だが、 Eudora の HTML サポートは今の所もの足らない)。また下記の NetBITS Web サイトでも登録したり記事を読むことが出来る。

<http://www.netbits.net/>

もしあなたがインターネットを頻繁に利用しもっと有効に使おうと思って いるなら、もしインターネットの技術的なそして社会学的な影響に魅せら れているなら、あるいは単にこの大騒ぎはいったい全体何なのか知りたい と思っているならば、NetBITS に購読登録し、お友達にも紹介して欲しい。 これは無料であり、簡単である。そして我々もこの出版物をオンライン上 で一番役に立つインターネット出版としたいと願っている。


さらにコンテクストメニューについて

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

TidBITS-398 では Mac OS 8 でのコンテクストメニューの使用とカスタマ イズの方法について述べた。今週は、System 7 でコンテクストメニューを 実現するユーティリティ(Mac OS 8 ではプラグインとして機能する)でそ の記事のフォローアップを行い、そしてもう 2 〜 3 の CM プラグインを 見てみたいと思う。また、マルチボタン・マウスを使用することで CM メ ニューの片手操作が同じく可能であることを指摘した読者諸氏と、同意見 であることを述べたい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04154>

マルチボタン・マウスについて投稿してくれた大半の人達は、他のオペレー ティングシステム(例えば Windows)での標準的な使用方法や、PC エミュ レーションソフトを動かしている時のユーティリティに、言及している。 メールから判断すると、沢山の TidBITS 読者が Kensington 社の入力ディ バイスに夢中になっている。例えば、Ross Yahnke 氏 <rcyahnke@doit.wisc.edu> は:

私がコンテクストメニューについて一つ述べたいことは、- Virtual PC に 加えて - マルチボタンマウスを買う為の良い口実を提供するということで ある。私は、4 ボタン・マウスの Kensington 社製 Thinking Mouse を購 入したばかりで、Windows の場合と同じように、右ボタンをコンテクスト メニューに割り当てた。それはコンテクストメニューの使用をもっと素直 なものとし、私は Apple が 2 ボタン・マウスを出荷するまでには長くか からないであろうと考えている。

<http://www.kensington.com/products/>

System 7 や 68K Mac へのメニューの追加 -- TidBITS でのユーティリ ティ群の紹介は、我々が抜かしたその他沢山のプログラムについての投稿 へと、通常、読者を駆り立てるのだが、今回、殆ど全てのコメントは少数 のお気に入りについてのみであった。特に、私が抜かした Mark Aiken 氏 の 15 ドルのシェアウェア PowerMenu 2.0.1 だ。これは Mac OS 8 のコン テクストメニューを使用している PowerPC 搭載の Mac にメニューコマン ドを提供する、また、- Mac OS 8 とは別のテクニックを使用し - System 7.1 またはそれ以降で動作している Mac や、Mac OS 8 で動作している 68040 搭載の Mac に独自のコンテクストメニュー(PowerMenu コマンドの みの表示)を提供するのだ。

PowerMenu は、主にファイルを開いたり、アプリケーションを起動したり、 デスクトップを整理するのを早くできるようにしてくるものだ。例えば、 どの動作中のアプリケーション、または Quick Launch オプションに追加 したどのアプリケーション(例えば、私は、偶にしか使用しない Word 6 の代わりに Word 5 を追加し、常にそれを使用できるようにしている)か らでも、複数の選択されたアイテムを開くことができるのだ。もう1つの コマンド群は、適切な Finder フォルダにコピーやエイリアスを作ること を容易にするものだ(移動用のオプションはない)。Read Me ファイルに は役立つ使用方法が記されており、ダウンロードは 333K である。

<http://www.kagi.com/authors/marka/pm.html>

もう一つの素晴らしいユーティリティ -- コメントの圧倒的多数は Eric de la Musse 氏のフリーウェア CMTools 3.0 に関したものであった。この ユーティリティは Finder での操作を真に容易にする為(PowerMenu のよ うに)、Mac OS 8 のコンテクストメニューに沢山のオプションメニューを 追加するものだ。例えば、もしあなたが私のようであれば、アクティブな ドキュメントはデスクトップ上に積み上がり、これ等は、最終的には、い くつか階層が下のフォルダーにファイルされるのだ。Mac OS 8のスプリン グ・ローディド・フォルダはフォルダへのアイテムの移動を簡単にするも のだが、CMTools のカスタマイズ可能な Copy to と Move to コマンドで はさらに簡単と思われる。

CMTools にはその他の優れものもある。Compress や Decompress オプショ ンも含まれているが、特別な注意を必要としない Chris DeSalvo 氏の 5 ドルの Compression プラグイン(先週述べた)とは違い、圧縮ソフトのエ イリアスを作成し CMTools の Configuration フォルダに納めておく必要 がある。PowerMenu と同じように、Open Using コマンドでは希望するアプ リケーションでファイルを開くことが可能だ。また、Lock/Unlock オプショ ンやファイルの creator や type 属性の設定の為のコマンドもある。さら に、PowerMenu 同様、CMTools は、大半の CM プラグイン以上にセットアッ プを必要とするが、そのセットアップは多大な柔軟性をもたらすものであ り、Eric は明快な使用方法(仏語から英語への Turagd Aleahmad 氏によ る翻訳)を用意している。Read Me によると、CMTools は QuicKeys Toolbox とは動作しないが、QuicKeys Toolbox は、これはしばしば見過ご されている利点なのだが、QuicKeys 3.5.2 の PowerPC 版ユーザーには既 に必要のないものとなっているのだ。

<http://plaza.v-wave.com/aaaj/CMT.html>
<http://www.mycds.com/staff/desalvo/shareware.html>

ダウンロードをもう一つ -- 先週、Look Mom, No Hands! のキーボード ショートカットなしでコンテクストメニューをポップアップできる機能を 称賛した。Look Mom, No Hands! の抜群性故に、同じ機能を提供する Turlough O'Connor 氏の 7 ドルでのオプション付き「パイントウェア」の FinderPop を抜かしてしまった。FinderPop(120K のダウンロード)は見 栄え良くデザインされたコントロールパネル書類で、コンテクストメニュー のアピアランス(フォント、サイズ、等々)をカスタマイズでき、デスク トップ上で開いているウインドウならどれでも素早く全面に持ってくる為 のコマンド、マウントされたどのボリュームでも開く為のコマンド、起動 しているアプリケーションを切り替える為のコマンドを追加できる。

<http://www.geocities.com/SiliconValley/Bay/2573/>
<http://www.toolsandtoys.com/ToolsAndToys/Home/>

最新ニュース -- 最後に、最近のコンテクストメニューについてのニュー スに、John Moe 氏のリリースしたフリーウェア IADD がある。これは、あ なたが望むアプリケーションの何れででも Apple の Internet Address Detectors (IAD) をオフにできるもので、アプリケーションと IAD 間のコ ンフリクトを回避するものだ。

<http://www.luminet.net/~dmoe/iadd.sit.hqx>


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