TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#410/15-Dec-97

アイディアをまとめる良い方法をお探しの方に、Matt Neuburg がダイアグ ラムおよびアウトライン用のツール Inspiration 5.0 のレビューをお送り する。1997 年最終号となる今週は、Adam が Apple Store に係わる数字を 検討し Apple の収支にどれだけ貢献しているかを見ていく。また、56K モ デム標準案、先週のデジカメ記事のアップデート、クリスマスプレゼント 特集号に登場していたビデオカード MacPicasso のありかなどのニュース をお伝えする。ではまた 1998 年に !

目次:

Copyright 1997 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/15-Dec-97

(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

1997 年最終号 -- これから 2 週間年末年始の休暇を取ることにしたの で、次回の TidBITS は来年の 1 月 5 日に発行されることになる。この間 我々は家族や友人と過ごすことにしており、メールをこまめにチェックし たりしないだろう。この場を借りて、今年一年我々を励まし支えて下さっ た皆さんにお礼を述べるともに、来年が皆さんにとってよい年であるよう 祈ろう。今年は Macintosh ユーザーにとってはかんばしい年ではなかった が、来年こそは Mac とともに明るく楽しく過ごすことができればと願って いる。 [ACE]

TidBITS のスタッフと会おう -- TidBITS-405 に掲載した記事“Eudora の賢い使い方”の中で、来月 San Francisco で開催される Macworld Expo 中皆さんとお会いする機会を作るとお約束していた。97 年 1 月 8 日 (木)2 時 〜 4 時に Peachpit Press のブースで私の本『Eudora Visual QuickStart Guide』のサイン会を行なうことが決定したので、ぜひ立ち寄っ て一言声をかけて欲しい。多分 Tonya と Jeff Carlson もその場にいるこ とになると思う。[ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04270>

NetBITS の Web サイトへ -- ここ 2 週間 NetBITS を見逃した方は 2 回にかけて連載された Peter Kent 氏の記事をチェックして頂きたい。プ ログラムの切り替え無しでチャットルーム、ショッピングカート、CGI な どのしゃれた機能を自分の Web サイトに載せる方法を書いた記事だ。その ほかにここ 2 週間で登場した記事では、簡単メッセージユーティリティの 概要、56K モデムを試すことのできる電話番号、さらに FAQ 形式で説明し てあるインターネットの決済はどうなっているか、インターネットと Web の違い、Web のサーチエンジンの解剖学などがある。NetBITS は <netbits-on@netbits.net> にメールを送ると毎週自動的に配信されるよう になる。[ACE]

<http://www.netbits.net/nb-issues/NetBITS-011.html>
<http://www.netbits.net/nb-issues/NetBITS-010.html>

MacPicasso を求めて -- 先週のクリスマスプレゼント特集号 ( TidBITS-409)を読んだ読者数人から、MacPicasso 516 ビデオカード の販売先に関する問い合わせがあった。我々はこのカードの米国内での販 売先を突き止めるのが大変なことだとは思っていなかったのだ。Anne-Marie Concepcion 氏 <amarie@sdandc.com> は大変な苦労をして米国内の販売代 理店である Software Hut 社を見つけ出したらしい。彼女からのメールに には、「Software Hut 社によると MacPicasso 516 はすでに製造中止に なっていて在庫も全く無いようです。代わりに 119.95 ドルと同じ値段の ローエンドボードである MacPicasso 523 を薦められたのですが、これも また 1 月にならないと入手できないとのことなので、結局 MacConnection から別の手頃なビデオカードを買いました。」と書いてあった。

この情報の裏を取るために Software Hut 社に電話したところ、話は違う 展開にと進んだ。担当者は 523 は今週の木曜日には用意できるようになる が、価格が確定するのはこの号が出た後になると話してくれた。また、ド イツ在住で MacPicasso の推薦者でもある Kai Niggemann 氏 <canine@muenster.de> によると、ドイツでは Picasso 516 は“現在も広 告に出ている”とのことだ。米国在住でもドイツ在住でもないのならどち らから買ってもいいだろうし、全く別のビデオカードを買うという選択肢 もある。[TJE]

    Software Hut (in the U.S.) -- 610/586 5701 -- 610/586 5706 (fax)
      <softhut@erols.com>
Villagetronic (in Germany) -- 05066-7013-10 -- 95966-7013-49 <orders@village.de>

56K 規格戦争収束か ? 56 Kbps モデムの標準規格戦争に巻き込まれてい た企業は、先週オフィシャル標準規格になるかもしれない 56K テクノロ ジーに関する暫定合意を結んだ。この合意は、先頃 NetBITS の記事“Speed Jockeys on the Internet: Flying at 56K”で 1998 年の 9 月以前に一つ の規格が現れることがないだろうとしていた我々の予想よりも早く成立し た。だが、現在は一般的に認められたテクノロジーがないために 3Com 社、 USRobotics 社連合や Lucent Technologies 社、Rockwell Communications 社連合のどちらにとっても損失となっているようだ。最終 56K テクノロ ジーは現在の K56flex と X2 両方の設計要素が組み合わされるだろうとい う噂が聞こえてきている。これで ITU(国際電気通信連合)は 1 月の会合 でこの合意をもとに“最終”(予備)標準規格を草案することになりそう だ。なおこの会合と時を同じくしてこのテクノロジーを用いたモデムが登 場することになるだろう。ITU が最終標準規格を批准するのは 1998 年 9 月の会合になるという公算が高い。 [JLC]

<http://db.netbits.net/getbits.acgi?nbart=04451>
<http://www.itu.int/>
<http://www.3com.com/news/releases/dec0897c.html>
<http://www.lucent.com/press/1297/971205.mea.html>

Frontier 5.0 アルファ版 Mac 用と Windows 用 -- UserLand Software 社は Mac 用 Frontier 5.0 の最初のパブリックアルファ版をリリースし た。また初めて Windows 用もリリースされた。Frontier はアウトライン ツールとスクリプティング言語とオブジェクト指向のデータベースを統合 した無償のプログラムである。そのパワフルなスクリプティングを使って アプリケーションどうしを結び付けることができるので Mac 界には信望者 が多い。最新のリリースでは Web マスターが複雑でアップデートが頻繁に あるサイトを管理し易くなるような変更が施されている( TidBITS-389 の“Web を編む Part 5: 新たなフロンティア”を参照)。Web 管理に Frontier を使っている人なら、その Web サイトのフレームワークに大き な変化があったのに気が付くだろう。アルファ版は安定性は保証されてい ないし、機能も完成されているわけではないという点にご注意を。 [ACE]

<http://www.scripting.com/frontier5/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02699>
<http://www.scripting.com/frontier5/migration/>

Win95 と AppleShare IP を結んだ COPSTalk 2.5 -- Apple 社製の AppleShare IP 5 と Open Door Networks 社製の ShareWay IP を利用すれ ば Mac ユーザーはインターネット上の AppleShare ボリュームにアクセス できる。今まで Windows 95 ユーザーはインターネット上にある AppleShare ボリュームにはアクセスできなかったのだが、COPS Inc 社製 の COPSTalk 2.5(159 ドル)の登場により可能になった。COPSTalk は現 在 AppleShare IP 5 Software Bundle CD にバンドルされており、アップ グレードディスカウントも用意されている。また 10 日間のお試し版を ダウンロードすることもできる。[ACE]

<http://appleshareip.apple.com/>
<http://www.opendoor.com/shareway/>
<http://www.copstalk.com/news/ctw_2_5_pr.shtml>
<http://www.copstalk.com/docs/ctw2_5doc/ctw2_5_upgrade.htm>

AutoShare 2.0 リリース -- Mikael Hansen 氏は AutoShare 2.0 をリ リースした。これは無償のメーリングリスト管理およびメール自動応答プ ログラムの最新版である。AutoShare は小さく、速く、完全にスクリプタ ブルで、Eudora Internet Mail Server や Stalker Internet Mail Server と並行して利用することができる。この新バージョンでは、ドキュメンテー ションが新しく書き直され、複数のドメインを扱う複数の初期設定をサポー トするようになり、フィルタ機能が強化され、ユーザーインターフェース が改良されている。[ACE]

<http://www.dnai.com/~meh/autoshare/>

ピクセル -- Arthur H. Bleich 氏 <arthur@zim.com> によるデジタルカ メラ選びの記事( TidBITS-407 および TidBITS-408 を参照)が掲載さ れた後、鋭い読者から、カメラの解像度は画素数で表示されるべきものな のに、ppi(ピクセル/インチ)という言葉が使われていたと指摘があっ た。デジタルカメラは、感光素子上に画像を取り込むが、その画素数はサ イズに左右されるものではない。撮影した画像をスクリーンに表示する時 は、その画像の解像度は(640 x 480 ppi のような)インチあたりのピク セル数で表示される。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1022>

また、オーストラリアの Andrew Nielsen 氏 <andrews@starfish.net.au> からのメールによると、合衆国外では Olympus シリーズの 200、300、 500、600 はそれぞれ 400、800、1,000、1,400 という数字が付いているそ うだ。さらに、Arthur は 1 月初めから ZoneZero に月に 2 回コラムを執 筆するという話も耳にした。[JLC]

<http://www.zonezero.com/>


Apple Store 再点検

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

鳴り物入りで登場した Apple Store は、開店後一ヶ月の間に一見見事な成 績を収めた。Apple Store が成功だったことは否めないものの、Apple 社 の収支にどれだけ貢献できるものだろうか?

Apple Store が開店した翌日、Apple は 12 時間の間に 50 万ドルの売り 上げを記録したと発表し、先週には最初の一ヶ月間に 1,200 万ドルの売り 上げを上げたことを自慢するプレスレリースを出した。この数字は一見立 派だが、売り上げが多いからといってそれだけ儲けがあるとは限らない。 最初に断っておくが、私は Apple が Apple Store で達成したことにけち をつけるつもりはなく、単に発表された数字が現実を美化しがちな事実を 指摘したいだけだ。さて、それでは数字を見てみよう。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1998/q1/ 971210.pr.rel.store.html> <http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1998/q1/ 971111.pr.rel.onlinestore.html>

年間ではいくら? もし Apple Store が 12 時間に 50 万ドルという当初 のペースを維持できていたら、一日あたり 100 万ドル、一ヶ月あたり 3,000 万ドルの売り上げということになる。ほとんどの人はアメリカ時間 のビジネスアワーに相当する 12 時間にオーダーを入れると仮定しても (Apple Store はまだ海外からの注文は受け付けていないため)、月間 1,500 万ドルになり、Apple が最初の一ヶ月で記録した金額よりも 300 万 ドル多くなる。(さらに、Apple がちょうどこの期間の最後の一週間に Apple Store で実施したカメラのプレゼントキャンペーンがこの数字を押 し上げたという説もある。)

こういった数字から、Apple Store がインターネットの“スプラッシュ” 効果の恩恵を受けたと考えることもできるだろう。つまり、新しいサイト は登場直後に最大の注目を浴び、その後注目を維持するのは難しいのだ。 たとえば、メジャーな Web サイトは発表直後には大混雑するが、その後 ヒット数が低迷するものだ。

Apple Store で同じことが起きたとは思いたくないものだ。一ヶ月あたり 1,200 万ドルだと、年間では 1 億 1,400 万ドルの売り上げになる。もち ろんこれが少ないとは言わないが、Apple の四半期分の赤字に対しても焼 け石に水にしかならない。しかも、1 億 1,400 万ドルというのは売り上げ であって、利益ではない。Apple の直販での利益率は不明だが、35 % より 高いとは考えにくい(最近の粗利益率は 20 % 前後になっており、流通や 小売の段階で 15 % 程度が上乗せされる)。この数字がそこそこに正確だ とすると、Apple Store は収支に年間 5,000 万ドルの貢献をすることにな る。さて、この計算は正しいのだろうか?

Apple Store は多くの場合、他の Macintosh ディーラーが処理したであろ う注文を受けるのだ。Apple が別の流通経路を利用した場合よりも Apple Store を利用した方が 15 % 多くの利益を上げることができるとしても、 この 5,000 万ドルの 85 % はいずれにしても Apple に流れ込むことにな る。とすると Apple Store が実際に収支に貢献するのは 750 万ドルにな る(Apple Store が月間 1,200 万ドルの売り上げを維持することができる と仮定して)。

ではそれだけの価値はあるのだろうか? 全体としてはある、と私は思う。 しかし Apple は微妙なバランスを保たなければならない。直販戦略の申し 子である Dell Computer 社とは異なり、Apple は今まで小売店に頼ってき たし、今後も頼り続けるからだ。というのは、最寄りの小売店がなければ 購入前に Mac をいじることができないからだ。Dell の場合、小売店でい じった PC が何であれ、Dell から買ったマシンも同様に動作すると考える ことができるため、この問題に悩まされることはない。

小売店が Apple Store をどう見ているかを聞き出すため、私の地元 Seattle でお気に入りのディーラー、Westwind Computing 社の Michael Koidahl 氏の話を聞いてみた。彼によると、今の Apple Store はディー ラーを痛めつけているという。ディーラーはカスタムオーダーの Mac を作 ることが認められていないからだ。Michael は、Apple はディーラーにも 1998 年第 1 四半期にはカスタムオーダーを認めると約束しているとも言っ た。こういったシステムを立ち上げるには間違いなく時間がかかるが (ディーラーが必要なパーツを在庫していなければいけいないため)、 Michael は Apple が既存の修理体制を流用すればディーラーがパーツを在 庫し、カスタムオーダーを受け付けると同時に修理にも使うことができる という提案もしていた。しかも、通常なら Apple から取り寄せなければな らないパーツを待つ必要が無くなるため、修理もより迅速に行うことがで きるようになるという余録もある。

客と Mac の数は? Apple Store の売り上げだけに注目していると次のよ うな落とし穴があることにも言及すべきだろう。たとえば、Apple は Apple Store が最初の 12 時間に 50 万ドルの注文を受けたとしている。注文一 件あたりの平均金額が 2,500 ドルだとすると、わずか 200 人の客という ことになる。12 時間とすれば悪くないが、Apple Store が同じ 12 時間の 間に記録した 4,400 万件のヒット(一人当たり 20 〜 50 ヒット?)を記 録したことと比較すると、たいしたことではない。要するに、サイトを覗 きに来た人は多いが、実際に買い物をした人はあまりいなかったのだ。

Apple Store が 1,200 万ドルを売り上げた月に、先程の一人当たり平均 2,500 ドルの買い物をしたとして計算すると、合計 4,800 人または一日あ たり 160 人ということになり、最初の 12 時間よりは少々低くなる。繰り 返しになるが、一日 160 人は決して恥ずかしい数ではないが、それぞれが 一台ずつの Mac を買っていたとして(一人平均 2,500 ドルの買い物をし ていたという仮定で)、年間 5 万 8,400 台をオンラインで売ることにな る。Apple が最盛期には四半期に 100万 台以上の Mac を売っていたこ とを考えると(今でも Apple は四半期あたり 65 万台の Mac を売ってい る)、年間 5 万 8,400 台は決して多くはない。

第 3 位? Apple のプレスレリースは Apple Store がインターネット上 で 3 番目に大きな電子商取引サイトであると主張していた。この主張を裏 付ける情報はなく、Apple の PR 部門は私の問い合わせに回答してこなかっ たが、皮肉なことに Apple のプレスレリースと同日に Dell 社もこのへん の数字を公開したのだ。Internet World の基調講演で、Dell 社の CEO、 Michael Dell 氏は、同社が Web サイトで一日 300 万ドル以上を売り上 げ、歳末のピーク時には 600 万ドルに達すると述べた。これは年間約 10 億ドルの売り上げに相当する。Dell は 2000 年までに売り上げの半分がオ ンライン経由になると予想している。

以上をまとめると、Apple Store が成功だったことは疑いないが、同時に 今までのような売れ行きでは Apple の業績にそれほど影響を与えることも ないだろう。また、Apple Store で買い物をする客は、カスタム構成の Mac を買えるということに魅力を感じていることも明らかだ。Apple がカスタ ム構成 Mac をユーザーに与えなかったことは長年の間不満の元になってい たのだから。Apple Store はディーラーがカスタム構成 Mac を販売するこ とができるようになると、その真価を問われることになるだろう。一方、 Apple Store の門戸を海外にも解放することで、Apple ディーラーが少な い地域では大幅な売上増も期待できる。Apple Store は Apple が販売、サ ポート、そして修理のための依存しているディーラーたちをむしばむこと なく Apple の業績アップに貢献することが理想だ。


Inspiration 5.0: 驚異の生存者

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

テキストの保存や操作をするのにパワフルで興味深い構造を持つソフトウェ アに絶望的な思いで中毒になっていたから、お気に入りのアプリケーショ ンのいくつかでサポートがジリ貧になるのを見るにつけ、ここのところ陰 うつな日々を過ごしていた。もちろん、コンピュータ・プログラムという ものは、その大部分が、製作者が販売やアップグレードを中止したからと いって、古ぼけて使えなくなったり存在を絶たれたりするものではない。 しかし、ユーザーが、In Control( TidBITS-191 )、Info Depot、More ( TidBITS-198 )のような魅力的でパワフルなプログラムをもはや入手 できないなんて悲しいことだと思う。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02443>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02381>

だから、9 月に Inspiration Software 社が、同社の主力製品であって社 名の由来ともなっているダイアグラム及びアウトラインソフトウェア、 Inspiration をバージョン 5.0 にアップグレードしたと聞いた時は、ほっ としたのだった。このプログラムを最後に検証したのは 1993 年( TidBITS-180 )だったから、この間の歳月を経て Inspiration が勢いよ く返り咲くのを見るなんてすごいことだ。同社は、Inspiration の成功の 鍵を Macintosh だけでなく Windows 版も製作したことと、高等学校まで 及びそれ以降の両方の教育マーケットに特別版を用意し焦点を合わせたこ とだ、と位置付けたところである。

<http://www.inspiration.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02542>

絵を描いてくれ -- Inspiration ドキュメントではアウトラインとダイ アグラムのどちらででも作業を進められる。筆者は通常ダイアグラムを使 うことはないのだが、Inspiration のダイアグラムの使いやすさは、ほと んどの考えつくニーズを満たすに十分にパワフルで柔軟であると同時に、 すばやく簡単でかつおもしろい。したがって、同社の Web サイトがプログ ラムのこの側面を強調する理由もうなずける。

Inspiration のダイアグラムは“リンク”で繋がった“アイデア”で構成 されている。ここで、アイデアとは通常一つのグラフィック内もしくはそ の隣に書くテキストのことであり、また、リンクとは矢印付きだったりテ キストラベル付きだったりする線のことである。例えば、フローチャート や組織図や手続きフローのダイアグラムを思い浮かべてほしい。これらは Inspiration でダイアグラム化できるものの数々だ。

Inspiration はダイアグラムをカスタマイズするための強力な機能を備え ている。新規アイデアや選択されたアイデアのデフォルトの形態を変更で きる。アイデアを配置しサイズを変更でき、また、塗り潰しの色、枠線の 色、テキストの色、枠線と塗り潰しのパターン、枠線の太さ、テキスト各 部分の文字スタイルを変更することができる。リンクに対しても同様(も ちろんリンクに塗り潰しはないが)であるほか、矢印の向きの変更やテキ ストラベルの再配置、アイデアグラフィックでの起点・終点位置の詳細な 設定、ジグザグや曲線を含む様々な形状変更も可能だ。

Inspiration にはたくさんのグラフィックのライブラリが付いてくるし、 自前のグラフィックを使うことも可能だ。実際、自前グラフィックをアイ デアグラフィックにするには、内部のテキスト領域の制限など添付のグラ フィックにある“賢い”機能は持たせられないものの、単にアイデアに絵 をペーストするだけでよいのだ。さらに、備え付けのツールで描くことに よってダイアグラムの背景にグラフィカルな要素を付け加えることもでき る。ただ、妙なことに、背景にグラフィックを取り込むことはできないの だが。

よく考えられた機能によって、ダイアグラムを修正するのは簡単だ。ダイ アグラムの表示は拡大・縮小できる。既存のリンクにアイデアを挿入・削 除すると、リンクは賢く自らを再編成する。どれをメインアイデアとする かも変更可能だ。アイデアの整列もでき、あらかじめ用意された様々な形 態に一気に変更することも可能なのだ。

従順と反抗 -- ダイアグラムは階層構造も持つ。メインアイデア(その 他のアイデアは全てこれに従属する)があって、リンクは方向性を持つ。 したがって、アイデアAからアイデアBへリンクされていれば、アイデア BはアイデアAのサブアイデアということになる。この階層構造はダイア グラム表示とアウトライン表示で互いに関連付けられていて、これにより ダイアグラムはアウトラインとしても表示可能になるのだ。

ダイアグラム操作におけるいくつかの賢い機能はこの階層構造の利点を利 用している。あるアイデアのサブアイデア(あるいは与えたレベルより下 位にある全てのサブアイデア)を隠したり、また、あるアイデアとそのサ ブアイデア以外の全部を隠したりできるのがそれだ。

ところが、問題がある。それは、単純なアウトライン形式の階層構造では できないようなことがダイアグラムではできてしまうことである。例えば、 ダイアグラムでは、AをCにリンクし、またBをCにリンクし、さらにB をAにリンクし、そのうえCをBにリンクするなど、伝達しようとする考 えや関係の表現に役立つと思えば何でもできてしまう。しかし、このよう な複合した関係や逆順の関係はアウトラインでは表現できないのだ。

こうしたパラドックスに対する Inspiration の解決法にはちょっと困惑す る。アウトラインには、常にアウトライン表示に切り替えたときに目にす る基本的な底流をなす階層構造というものがある。困ったことに、それは 予期するものと異なることがあるのだ(それはアイデアがもともと作成さ れた順番に何か依存しているのではないかと思うのだが、正直言ってその アルゴリズムが何かはよくわからない)。さらに、アイデアは必ずしもメ インダイアグラムにリンクされる必要がないことから、アウトラインでは このような“ばらばらな”アイデアは特別な“Miscellaneous Thoughts” トピックのサブトピックとして現れる。そして、ダイアグラムがアウトラ インでは適切に表示できないくらい複雑になれば、いつでもアウトライン を単に全く放棄してしまえばよい一方で、Inspiration には階層抜きでア イデアテキストを読んだり編集する特別な“text view”モードが用意され ていたりする。

アウトラインの仕組み -- アウトライン表示でドキュメントを眺めたり 操作出来るアウトライナーは多機能だ。概して粗末で基本的なナビゲーショ ン用ショートカットを欠き、まともに使用するにはまったく非現実的であっ たバージョン 4.0 のアウトライナーからは、大幅な改善となっている。4.0 では Inspiration を自己のアウトライナーとして選ぶ理由は 全く な かったのだが、5.0 ではそう しない 理由がほとんどないのだ。今、 Inspiration には全てのキーボードショートカットや、上位トピックへの ナビゲーション、ラインの移動、サブトピックを下位に移したり上位に持っ てきたり、特定のトピックとサブトピック以外の全てを隠したり等の、ナ ビゲーションとアウトライン編成に必要な全ての機能が備わっている。 (奇妙なことに、一つのトピックを二つに分けるコマンドはあるのだが、 二つのトピックを一つに結合するコマンドはないのだ。)

種々なレベルでデフォルトのテキストスタイルを設定する為の便宜が図ら れている。これは良しとは言えるがグレートとは言えない(特に MORE と 比較すると)。各トピックの前に来るアウトライン接頭語の変更とカスタ マイズも行える。トピックにはノートが添付でき、中にはグラフィックさ え入れられ、表示したり隠したり出来る(ノートはダイアグラム表示でも 見ることが可能だ)。そして、トピックにはキャリッジ・リターンさえ含 ませることが出来るのだ(アウトライナーとしては驚くべきことだ)。複 数の隣接していないトピックを一つのトピックの下に統合することも可能 だ。「合計」機能では一定のフォーマットを持つサブ・トピックの全ての 数の計をトピック内に挿入することが出来る。これと似たような機能が MORE にもあり、カテゴリー毎の目録をメンテするには役立つものだ。

Inspiration 5.0 は、私が 4.0 でとても感心させられた興味深い整理機能 を継承している。それぞれのアウトライン・トピック(又は、ダイアグラ ム表示でのそれぞれのアイデア)には、第二の殆どハイパーテキスト形式 の階層次元が、何時でも開くことの出来る「子供」ウィンドウの添付によ り実現されている。これ等のウィンドウは、実際は同一文書のパートなの だが、独立した Inspiration ドキュメントのように見える。もちろん、 「子供」アウトラインの中のどのトピックもそれ独自の「子供」を持つこ とが出来るのだ。Inspiration ドキュメントはそのようにしてサブ・ドキュ メント群を包含することができ、それ等の各々はメインドキュメント或い はサブ・ドキュメントの特定のトピック(又はアイデア)を通じて呼び出 すのだ。それこそ私が、テキストを蓄えそして操るためのパワフルで興味 深い構造、と呼ぶものである。

互換性 -- Inspiration のインポート及びエキスポート機能はとても優 れている。ダイアグラムは PICT 又は GIF としてエキスポート出来る。ア ウトラインに関しては、Inspiration は MORE のアウトラインを直接開く ことが出来る(私が解っている限りでは完璧に)。テキストファイルも開 くことができ、タブはトピック・レベルに、タブなしのラインはノートに 変換されるのだ。また、RTF (Rich Text Format) として保存された Microsoft Word ファイルを、Word 内部の Heading スタイルをトピック・ レベルとして扱い、文字スタイルをかなり上手く維持しながら、開くこと が出来る。アウトラインはこれ等の形式及びその他多数の形式へのエキス ポートが可能となっている(おっと、Inspiration はノートだけのエキス ポートは未だ出来ないのだ)。

最近は製品を Internet 対応にして販促することが常套となっている。 Inspiration も例外ではなく、アウトラインを HTML としてエキスポート 出来るのだ。私はこの機能が気に入っている。アウトライナーはある種類 の Web ページを作成したり維持したりするには便利な環境となり得るの だ。Inspiration には四つの選択が用意されている。リストを使用し元々 のアウトラインの外観を模倣した単一の Web ページ、ノートなしアウトラ インがノート付きアウトラインの前に表示(前者は後者へのライブリンク ・インデックスとして機能する)される単一の Web ページ、二枚の Web ページ(一方が他方のインデックス)、そして各 Level One のトピック毎 に一枚が用意され、それぞれがインデックス・ページに結合され他のペー ジへとリンクされる複数の Web ページだ。

残念ながら、それ等の HTML ページをフォーマットする為のオプションは 用意されていない。全てのトピックはボールド体となり、そして全てのノー トはプレーンなテキストとなる(手作業で独自の HTML を加えることは出 来る)。また、英語以外のキャラクターは正しく処理されない。

巧妙、奇抜、醜さと結論 -- Inspiration 5.0 の全体的なインターフェー スは賞賛に値するものだ。がたがたで混乱する 4.0 のインターフェースに 比べると、良く練られ、顕著な改良となっている。様々なコマンドや様式 は「ブレインストーム」、又はダイアグラムやアウトラインをマウス操作 なしに素早く構築するのに、役立つものである。頻繁に使用されるコマン ドは、モディファイヤキーを押しながらのクリック、ダブルクリック、及 び良く出来たパレット(ウィンドウのパートであり隠しておくことも出来 る)を経由してアクセスすることが出来るし、さらに、メニュー項目と少 数のナビゲーション用キーボード・ショートカットだけで全てを行うこと も可能だ。

他方、若干、角の取れていない部分も残っている。私が未だ述べていない Inspiration の弱点の幾つかは以下の通りである。

しかしながら、概して、私の Inspiration 5.0 に対する印象はとても肯定 的なものである。Inspiration 5.0 は、私が 4 年前にレビューした貧弱な 4.0 からの大きな飛躍であり、結果として、今ではダイアグラムやアウト ライン作成に特化した貴重なプログラムとなっており、両側面において検 討に値するものだ。

Inspiration 5.0 は 100 ドル前後で売られており、無償お試し版はオンラ イン上で入手可能だ。

<http://www.teleport.com/~inspirat/demoform.html>


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway