TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#416/09-Feb-98

Apple 社はここに来て大きな動きを示している、Claris 社をリストラして FileMaker 社にし、大手の小売りチェーンと手を切って CompUSA 社だけに 集中するなど。これらの動きははたして 1997 年の損失からの後退続行な のか、それとも同社はここに来てようやくいくつかの事に焦点を絞りそれ をきちんとこなすという教訓をついに学んだのであろうか?今週の Adam の分析記事を読んでみて欲しい、加えて、Jeff Carlson の PalmPilot シ リーズの最終回、Speed Doubler 8.1 のニュースがある。

目次:

Copyright 1997 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/09-Feb-98

(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

諸般の事情で、私自身多かれ少なかれ今後 5 週間の間メールからちょっと 遠のきます。その間、Mikael Hansen 氏のフリーウェアである AutoShare を使って自動化された休暇中の旨の返事を出します、そして私宛のメール は全部読みますが、多分返事は書けないと思います。TidBITS に関するメー ルは <editors@tidbits.com> 宛に出して下さい、そうすれば Geoff Duncan と Jeff Carlson が対応出来ますので。ご協力感謝します! [ACE]

<http://www.dnai.com/~meh/autoshare/>

Speed Doubler 8.1 が 3 月に登場 -- Connectix 社は Speed Doubler 8.1 FAQ を掲載し、なぜ Speed Doubler 8.0 と 8.0.1 が Mac OS 8.1 で 動かないかを説明しかつ無料のアップデートを 3 月に出すと約束してい る。要は Mac OS 8.0 と 8.1 では違いが大きすぎるので Connectix 社は Speed Doubler の中で Mac OS 8.1 とコンフリクトを起こすコンポーネン トを不能化させる様にしたのである。 [ACE]

<http://www.connectix.com/html/sd81faq.html>


PalmPilot 第 3 部:最良の装置は... おもちゃ?

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@axes.co.jp>)

私が PalmPilot を買ったとき、家族はみんな目をむいて、電子“おも ちゃ”をすぐに買ってしまいやすい私の癖のことを指摘した。それ以来、 私は Pilot の手帳機能と Pilot 用に書かれた範囲の広いさまざまなソフ トウェアに頼ってきた。Pilot は、珍しさが消えると誰かにやってしまう ようなただの機械以上のものとなったが、私は Pilot が依然としてある種 のおもちゃであることを認めよう。つまり、使って楽しいのだ。ただ住所 を探しているだけのときでも。そして、以前周りで Pilot を見たことがな かったときに、私が使うことで周りに影響力をもった特上の珍しさがもは やなくても。

この連載の最初の 2 回では、PalmPilot と内蔵のアプリケーション、私が日 常使っているプログラムをいくつか紹介した。この号ではそれを要約し、 簡単な説明を少し行い、非常に貴重なユーティリティ、HackMaster を取り 上げ、次に、アクセサリやゲームなど、本当によくできた製品への鍵で締 めくくりたい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04613>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04650>

エラーのない ROM -- TidBITS-411 で、Pilot の購入を決め兼ねている 人は、Zilot をチェックしてみるべきだと述べた。Zilot は PowerPC ベー スの Macintosh 用 Pilot エミュレータである。私はすぐに気づいたが、 落とし穴は Pilot ROM のコピーが必要だということで、著作権侵害に関し て正当性を示すために、もはやインターネット上でこれを入手することは できないのだ。Zilot は、Pilot 用のソフトウェアを開発しようとする、 または HotSync を使って繰り返しアプリケーションをインストールするこ となく、多数のプログラムを試用したいと考えている Pilot オーナーに依 然として役立つものだ。しかし、将来の購入者への私のお勧めは、3Com 社 の Web サイトにある Shockwave PalmPilot デモに全面移行しよう。

<http://www.teaser.fr/~mpollet/Zilot/>
<http://www.3com.com/palm/vrdemo/>

Personal と Professional の違い -- 私がいつも聞かれるのは、 PalmPilot Personal と Professional モデルの違いに関してだ。 Professional には拡張 512K RAM 以上のものがある、というのは Christian Moskal 氏 <dimento@cs.tu-berlin.de> だ:

ほかにも、書き留めておくだけの重要性のある違いがあります。それは、 TCP/IP スタックです。HandStamp [これは最初の記事で触れた] は独自の 専用 IP スタックが付属する唯一の POP3 電子メールクライアントで、こ の IP スタックは Personal はもちろん 1000 や 5000 という、より旧い シリーズで HandStamp の動作を可能にします。しかし、もしあなたが Pilot Pro を購入すれば、POP3/IMAP4 電子メールクライアントの選択が もっと広くなるでしょう。

Mac Pilot Desktop はまだ好きになれない -- 私は、Macintosh Pilot Desktop ソフトウェアの貧弱な状態、つまり、バージョン 1.0 から更新さ れていないことと、これが Now Synchronize 以外でデータのシンクロので きる唯一のオプションのままであることを嘆いた。もし、Mac Pilot Desktop ソフトウェアの使用を断固として拒否するが、Pilot をバックアッ プするために Windows PC を購入するのが妥当だと思えないならば、 Connectix 社の次期 Virtual PC 2.0 が解決策となるかもしれない。 Connectix 社の Mark Hayden 氏 <hayden@connectix.com> によると、次期 バージョンのこの PC エミュレータは Pilot と Windows バージョンの Pilot Desktop 間のデータシンクロナイズをサポートするという。また、 Windows バージョンの Pilot Desktop を使えば、たとえば Palm OS に付 属する Expense プログラムのような、Mac ソフトウェアに欠く機能もいく つか手に入る。

<http://www.connectix.com/html/connectix_virtualpc.html>

絶え間ないハック -- Pilot 用には、財務計算機、目覚し時計、ドロー プログラムなどを含む、多数のユーティリティが入手可能だ。そして、 Edward Keyes 氏の HackMaster がある。これはシステム拡張機能の管理 ツールで、プログラマーが小さなコントロールパネルに似た“Hack”を作 成できるようにするものだ。ほとんどは、完全なアプリケーションの幅広 い機能を提供するよりは、むしろ特定の目的を満たすものである。私が今 や Palm OS から切り離せないと考えている 2、3 の Hack がある。これら を機能させるには HackMaster を走らせなければならない。

<http://www.daggerware.com/hackmstr.htm>

他人が自分の Pilot 内の“private”マークをつけた項目を覗き見するの ではないかと心配なら、Water Lou 氏のフリーウェア、SafeHack をインス トールしよう。Palm OS では、特定のパスワードを使って秘密の項目を隠 すことができる。それを表示するには、Pilot の Security ユーティリティ でパスワードを入力し、Show を選択する。問題はここにあり、事が終えた ら Security に戻ってレコードを隠さなくてはならないのだ。もし、その まま Pilot の電源を切り、後で誰かがいろいろ調べてやろうと思ったら、 秘密のファイルが全部見えるわけだ。SafeHack は、電源が切られたとき単 純に Security オプションを Hide に切り替える。

<http://www.hk.super.net/~cwlou/safehack.zip>

Matt Peterson 氏のフリーウェア、GlowHack は、暗闇で PalmPilot を使 おうとするときの手軽な機能を追加する。GlowHack をインストールしてお けば、特定の時間帯(たとえば 5 P.M. から 6 A.M.)に電源ボタンを叩く と、Pilot のバックライト機能が自動的に ON になる。通常は、緑の電源 ボタンを 2 秒間押し続ければいいだけだが、GlowHack ならはるかに簡単 になる。

<http://www.dovcom.com/pilot/glowhack.html>

Macintosh 上では、私はキーストロークを使ってアプリケーションを簡単 に起動したり、切り替えたりするために、CE Software 社の QuicKeys に 頼っている。現在、私の Pilot には Murray Dowling 氏の SwitchHack を 使った同様の切り替え機能がある。ペンを Application アイコンから Graffiti 描画領域にドラッグすれば、現在と直前に使用したアプリケー ションの間をジャンプできる。また、Menu アイコンから Application ア イコンにドラッグすれば、最近使った 10 個のアプリケーションのメニュー が現れる。SwitchHack は 5 ドルのシェアウェアである。

<http://www.deskfree.com/SwitchHack.html>

私が紹介する最後の Hack は TealPoint Software 社の TealEcho だ。こ れは、単純に Graffiti 文字を書いていくと、それを画面に表示する。正 確性と速度が向上するわけだ。TealEcho は 11.95 のシェアウェアである。

<http://www.tealpoint.com/software.htm#echo>

PalmPilot 用アクセサリ -- ヒット製品の特長には、いかにアクセサリ を付けられるかがあるので、PalmPilot 崇拝者とアクセサリの用命に応ず る零細産業があったとしても驚くことではない。その範囲は、スタイリッ シュなスタイラスペンから画面保護用品、239 ドルの Pilot 用安全内ポ ケット付き皮革ジャンバーまで広がる。

<http://palmpilot.3com.com/catalog/jacket.html>

PalmPilot には携帯保護ケースが付属しているが、使用のたびにポケット 状の袋から Pilot を滑り出すのが不便なことに気づいた。市場にはいくつ かケースのバリエーションがある。たとえば、FlipCase は、旧式の Star Trek コミュニケータのように開く。RhinoSkin 社の Cockpit はチタン製 ハードケースで、摂氏 1,666 度まで融けない!私は一時 3Com 製の Slim Leather ケースを考えていたが、ケースを閉じたままにしておく留め金に かかる圧力で、あるユーザの画面が割そうだということを耳にして、これ は取り止めにした。代わりに、E & B Company 社の Copilot ケースを選ん だ。本のように開くコンパクトな携帯ケースである。

<http://www.synsolutions.com/products/flipcase.html>
<http://www.rhinoskin.com/>
<http://palmpilot.3com.com/catalog/slimcase.html>
<http://www2.ebcases.com/cgi-bin/rofm_cgi/ebprodfind.html>

生産性低下アプリケーション -- 保守的なコンピュータユーザーは、ゲー ムのできないマシンは本当に使い物になるとはいえないという。現在、 PalmPilot 用には優に 100 を超えるゲームがある。ソリテアゲームや Missile Command や Space Invaders のような古典的なアーケードゲーム をいくつもプレイしたが、私の Pilot では、現在 2 つのゲームだけしか 常時持ち歩いていないことを認めねばならない(これらに夢中なため、そ して、512K の RAM しかない理由で)。

知的/戦略的な方では、Scott Ludwig 氏のフリーウェア、Pocket Chess を いつでも使えるようにしている。27K の容量しかないくせに、Pocket Chess はかなりうまく私を打ち負かす。それも入門レベルでだ(その通り、私は Grand Master ではないのさ。しかし、そう下手でもない)。こいつは明晰 で、素早く、まだ兄貴分の Deep Blue を呼び出してもいない。

<http://www.eskimo.com/~scottlu/pilot/>

純粋な遊びの方では、Tan Kok Mun 氏の 12 ドルのシェアウェア Yahtzee さいころゲーム、yahtChallenge をまだ堪能できていない。いつかはこの ゲームが Pilot 向きに作られていると断言するだろうが、ひどい組み合わ せしか出ないので、いつもにがく苦しいときばかりなのだ。

<http://home.pacific.net.sg/~kokmun/pilotpgm.htm>

メモリ不足で試したことのないプログラムだが、触れないではすまされな いような気がするのが PilotZip である。Zork の国にどうしても戻りたい 場合、PalmGlyph Software 社は、Infocom 社製の旧いテキストベースの ロールプレーイングゲーム製品群からデータをインポートする Macintosh のデスクトップアプリケーションを作り出した。PilotZip はほかのインタ ラクティブな物語ファイルもプレイする Z-code インタープリタである。

<http://www.palmglyph.com/zip.html>
<http://www.activision.com/games/low/classics/masterpiece/>
<http://www.geocities.com/Heartland/9590/interactive.htm>

単なるおもちゃ以上のもの -- PalmPilot は、市場で最もヒットした携 帯電子手帳である。それは、主にその大きさと、使い勝手と、草の根開発 コミュニティによって作られている増加一方のプログラム群のためである。 手帳機能だけでなく、遊ぶこともできるポケットサイズの電子装置に、ど うやって我慢していられるだろうか?

DealBITS -- PalmPilot Professional を TidBITS スポンサーの Cyberian Outpost から通常の 337.95 ドルの価格で購入すれば、無料で MacPac(13.95 ドルお得)が手に入る。Cyberian Outpost のスポンサー関 係のテキストはこの号の先頭に詳細がある。


1998 年の Apple:後退か、焦点を絞り込むか?

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

Apple は 1997 年の損失の後も後退を続けているのか、あるいはそれらの 暗い日々から回復し始めているのだろうか?Apple は過去数週の間に多く の動きを見せ、それ等は、同社で起きる全ての事柄同様、答えの明確でな い質問を引き起こしている。幾つかの最近の出来事を見てみよう。

Claris の再編 -- 1 月の終わりに、Apple は、Claris が数々の賞を受 賞したデータベース FileMaker Pro に特化すべく再編を行うことを、発表 した。ClarisWorks、Emailer、ClarisDraw、ClarisImpact、そして Claris Organizer を含むその他の Claris が販売するプログラムは Apple に戻さ れる事となった。ただ一つの例外は Home Page で、現在、それは FileMaker の一部と受け止められている。

<http://www.filemaker.com/>

数ヶ月前より、Claris が Organizer や Emailer をラインから外すつもり だという不満を耳にしているが、正直いって、我々は、ClarisDraw や ClarisImpact について誰かが何かをいうのを、過去数年間、聞いたことが ない。(ClarisDraw が TidBITS で言及されたのは 1995 年の 11 月であ り、ClarisImpact は 1994 年の 3 月以降登場していない。)噂による と、Claris Organizer の悲劇は、製品があまり売れなかった為に Claris が手を引く決断をしたのではなく、問題が主に高価な 70 ドルという価格 設定にあったことに Claris が気がつくのが遅すぎたのだ。

同じく、我々は、人気もありユニークな機能を有しているが、Macintosh 専用であまり売れてもいないが為に、どのようにして Emailer が次のアッ プグレード 2.0v3 で最後になるかの噂を数々耳にしている。これ等の噂は Emailer が Apple に移される事になる前から出ていたものであり、今後ど うなるかは定かでなく、幾つかの可能性が提起されている。先ず、Emailer は、System 7.1 Pro で Mac OS にメール機能を提供した PowerTalk のよ うに Mac OS に組み込まれるかもしれない、というものだ。率直にいって、 Mac OS の一部であると Apple が強調した Cyberdog に何が起こったのか を考えると、これはありそうもない。次の噂は、メールとスケジュール機 能が統合された Windows の Microsoft Outlook と競争する為に、Apple は Emailer と Organizer を一つの統合プログラムへと合体する、という ものだ。Apple と Microsoft の現在の緊密な関係、そして Microsoft の Outlook Express メール・クライアントのリリースを考えると、このオプ ションもありそうもない。最後に、最もありそうなことは、Emailer は現 在のリリースのままメンテナンス・モードに入る、というものだ。良くて、 Apple は何時かの時点で最新バージョンを無償とするかもしれない。結果、 Microsoft、Netscape 社、Qualcomm 社、及び当然ながらその他のメール制 作会社の怒りを買うことになるかもしれないが。

ClarisWorks に関しては、それをどのようにメンテし開発し続けるかにつ いて、Apple は極めて明確な姿勢を示している。これは疑いもなく ClarisWorks が教育市場でポピュラーであるという事実の為で、教育と出 版が現在 Apple の二つの主要なマーケットなのだ。Apple が Windows 版 の ClarisWorks のメンテを続けるか否かは、見てみるしかない。

結局、再編はビジネス的には相当な意味があると思われる。FileMaker、そ してウェイトが高くなりつつある Windows 版の FileMaker は、Claris が 収入の大半を稼ぎ出していたもので、1997 年は約 73 百万ドルであった。 沢山の収入を生み出してこなかったような小さな製品を取り除き、従業員 300 人をレイオフすることで( Claris の全従業員の 40 から 50 % を占 める)、新たに設立された FileMaker, Inc. は焦点を新たにして前進でき るのだ。幾つかの分野では、Claris というブランドから離れる事はマイナ スではない。それは余りにも Apple と結びついた名前であり、Windows 用 ソフトウェアを販売するには助けにならないかもしれないからだ。

Apple が Claris を売却する事を考えているとの噂もあり、今回の再編は、 実際、FileMaker 部門を飾りたて、買収ターゲットとしての魅力を増すた めの手段なのかもしれない。私は収益性の高い子会社を売却することに意 味を見いだせないが、ひょっとするとこれは Apple の新しいマントラ、 “Focus, focus, focus.”の一例かもしれない。全ての再編は、Apple は 一般的なビジネス・アプリケーション・ソフトウェアを制作すべきでなく Mac の製造に集中すべき、との Steve Jobs 氏の決断をもって説明できる かもしれない。

小売店からの撤退 -- 次に大きな Apple にとって良いとも悪いともとれ るニュースに、Best Buy、Circuit City、Computer City、Office Max、そ れに Sears などの大手小売店からの撤退がある。Apple からの公式情報に よると、この動きは好調(だと Apple と CompUSA がいっている)な “store within a store”のコンセプトに専念するためのものだとされて いる。CompUSA は、“store within a store”戦略開始以後、全売り上げ における Mac の割合が 3 % から 14 % に上昇したと述べている。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1998/q2/ 980202.pr.rel.compusa.html>

CompUSA がどんなに好調だからといって Apple が他の業者から Mac を引 き上げるのはやや奇妙に感じられるが、実は別の要因があったようだ。一 説によると、Best Buy と Sears はこの発表の前の週に Mac の販売を取り やめており、他の大手小売業者も Mac の売れ行きには不満だったようだ。 要するにどちらも別れたいと思っていたのだ。

では、他の店での Mac の売れ行きが不調だったのに、なぜ CompUSA だけ は大幅な売り上げ増を記録したのだろう? 大手小売店の店員が Mac に対 して冷たかったり、時には敵意をあらわにするという話は昔から何度も聞 いたことがあるだろう。私たちも TidBITS でこの問題を取り上げたことが ある。Apple が伝統的に消費者向けの小口販売に対してはあまり熱心でな かったことと、劣悪な展示とテクニカルサポート、それに Mac に無知な店 員がこの原因の一部であることは確かだ。店の中に入ってモニタやキーボー ド、マウスがつながれていない、あるいは電源が差し込んでいない Mac を 見たことは何度もあるだろう。Mac を買おうと思っているといったら“今 月のお買い得 PC クローン”を薦められたこともあるだろう。私自身も何 度もこういう目に合っているし、東海岸の Sears で好調な Mac 販売部門 を受け持っていた人からも同じことを聞いた。彼はきちんとした仕事をす る許可を(かろうじて)受け、管理の行き届いた Mac を展示し、ケーブル や周辺機器の在庫を置き、客の質問に答え、地元のユーザーグループと付 き合った結果、かなりの数の Mac を売ることができたのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00727>

確かにほとんどのコンピュータ店では PC も似たような扱いを受けている が、Mac が PC に代わる最有力選択肢となっているこの世では、さらなる セールス努力が必要なのだ。何人かの Apple 販売員の果敢な努力にもかか わらず、Apple がしかるべき人に Mac の販売を担当させるということはつ いになかった。私は以前にも述べたしここでも繰返すが、Apple は長年に わたって築き上げた驚くべきユーザーの支持を活用することがついになかっ たのだ。

CompUSA に“専念”するというたてまえとは関係なく、私はこの撤退が悪 いことだとは思わない。もちろん、大手小売店で Mac を買うことが難しく はなるが、こういった店ではそもそもあまり Mac を売っていなかったので たいした損失ではない。より重要なのは、この撤退によって全米に 3,500 以上ある小さな Apple ディーラーなどが脚光を浴びるかもしれないという ことだ。こういった店には親身に応対してくれる店員と、(願わくば)本 来の正しい扱いを受ける客がいるという場合が多い。こういった店の方が チェーンの大型店よりも知識や経験が豊富だということを Apple が強調し てくれれば良いと思う。

この戦略についての最大の懸念は現在ではなく未来にある。もし Apple が ここ数年の売上・シェア減少傾向から回復したとしたら? 撤退した小売店 と寄りを戻すことができるだろうか? それともその頃は人々のコンピュー タの買い方が変わっているため、そんなことは関係なくなるのだろうか?

イメージングの黄昏 -- Apple の専念傾向の隠れた犠牲者にプリンタや デジタルカメラを作っているイメージング部門がある。情報筋によると、 ここはさほど利益を上げていなかったうえ、ここの製品には Apple ならで はの付加価値がなかったと Steve Jobs 氏が考えた結果、大鉈が振るわれ たのだ。Apple との競争という要因がなくなった今、Hewlett-Packard や Epson といった周辺機器メーカーがもっと Macintosh 対応の製品を作るよ うになるだろう。Hewlett-Packard は Apple のラベルの付いたプリンタの エンジンを製造していたため、Apple との契約上の関係で Mac 対応プリン タを一部売ることができないでいたのだ。

私の理解では、今後の Apple プリンタに関するシナリオは以下の通りだ。 ハイエンドのカラーレーザープリンタを除き、Apple は Apple ブランドの プリンタやデジタルカメラの製造販売を中止する。しかし、他社製の PostScript レーザープリンタは今後とも Apple の LaserWriter ドライバ で作動する。だいたいにおいて個々のハードウェアはあまり重要ではなく、 ドライバが大事なのであって、Apple の LaserWriter ドライバはなかなか 優秀なのだ。低価格のインクジェットプリンタの方は、個別にドライバの コーディングを行わなければならないため問題が少し複雑だ。ただ、 Infowave 社(旧 GDT Softworks 社)の PowerPrint があればほとんどの PC プリンタも使うことができる。Apple がこのような低価格インクジェッ トプリンタを製造している会社を、コーディングや開発の面で支援するこ とを望みたい。

<http://www.infowave.net/printing_solutions/html/products.html>

Apple は教育機関向けにはこういったサードパーティ製のプリンタを価格 表に載せることにするといわれている。こうすれば今後も学校が一件の発 注で Mac とプリンタを買うことができるわけだ。

OpenDoc & Cyberdog -- OpenDoc とそのしもべであるインターネットの リトリバー Cyberdog のことはご記憶にあるだろうか? 一方は小さく相互 操作の可能なパーツにより機能する Apple のコンポーネントテクノロジー であり、もう一方はその OpenDoc を利用した最高の例であっただろうモノ である。どちらもあの 1997 年の大規模削減の際に“メンテナンスモード” に追いやられてしまった。つまりマイナーフィックスの対象にはなるがテ クノロジー自体は葬られたということだ。

OpenDoc は葬られるべきでないと考えた OpenDoc のデベロッパーもいた (どうしてだろう ?)。その中の一社、Hutchings Software 社は OpenDoc Development Framework のための“管理協定”を取り付け、それにより同 社がその開発を続ける代わりに Apple 社は OpenDoc を利用できるように し続けるということになった。Hutchings Software 社は Apple が OpenDoc や Cyberdog を喜んでライセンスし、このふたつを Rhapsody でもブルー ボックスに入れておいてくれると見越してこの協定を結んだのだ。Apple の社員の中にもこのテクノロジーを信じ、実現に向けて時間外の仕事をし ている者もいる。だが、その約束をした Apple の副社長はすでに同社を 去っている。Kantara Development 社の Steven Roussey 氏は昨年 4 月ま で Cyberdog の管理協定を目指して動いていたのだが、先ごろ Apple 社の 別の副社長から Apple の経営陣には OpenDoc、Cyberdog および関連のテ クノロジーをライセンスするつもりがない旨が告げられた。

Apple がこれにかまっている理由は分からないままだ。唯一思いつくのは ライセンス契約には、手間賃やら法律用費用やら何やらとお金のかかるの だろうということだ。OpenDoc や Cyberdog のライセンスに一度は首を縦 に振っておきながら、今度は横に振ったのは Apple の心がほかにあるとい うことの現れでもあるのだろう。しかし Kantara Development 社や Hutchings Software 社などが OpenDoc の存続をかけて懸命の努力をした 後で、その運命に事実上のピリオドを打った。こういったことは Apple が 改心したのか否かという疑問に繋がる。

新 CM -- Apple の新しいテレビ CM のことを耳にした方もいるだろう。 かたつむりが Pentium II を引っ張る、Pentium II と驚異的な速さの Power Mac G3 の比較広告だ。Macintosh コミュニティの反応はまあよさそ うだが、そんなことはすでに知っていたことではないか。問題は Mac ユー ザーでない者がこの広告をどう捕らえるかということではないだろうか。 言葉を変えると、現在 Mac を使っていない人がコンピュータに何を求める かということが問題なのだ。そういった人たちにとってスピードは何より も優先させるべきことだろうか? ちょっと考えていみよう。彼らは CPU の スピードを何よりも重視するような専門的知識を備えていない人たちなの だ。専門誌でない雑誌に、2 つの異なるチップを比較するときはクロック スピードだけを見ればよいような間違ったことが記載されているのを目に することがあるだろう。(これは明らかに誤りである。クロックスピード は同一モデルのチップを比較するときだけに参考になる数字である。)あ ら探しはさておき、Apple が真の比較広告を出しているというのは良いこ とである。

退却か、絞り込みか? 最後に Apple がビジネスの対象を絞り込もうとし ているかまたは退却をしているのかという疑問を繰返そうと思う。Apple 内部のモラルが比較的高まっているように思われることと、第 1 四半期の 収益が( TidBITS-412 で書いた予想収益の 4 千 500 万ドルをわずかだ が上回る)4 千 700 万ドルになり景気付けしてくれているところから、現 時点での私の意見は絞り込みの方に傾いている。次の第 2 四半期の収益が さらに好材料となってくれると思われる。4 千 700 万ドルという数字がま ぐれでもなければ、Apple が必死になって否定している作為的に作られた ものでもないということを証明することになるのだから。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04625>

つまりは、Apple がまっとうな方向に前進し続けているということになる のだ。焦点を絞るのも良いが、そのうち対象から外れた人からは忘れさら れてしまうだろう。たとえば、PC 界で千ドル以下のマシンがリリースされ ると、多くの人は Apple が市場からさらに取り残されてしまうと心配にな る。同様に、PC 界のラップトップマシンはとてつもないぐらいの種類があ るのに、Apple はといえばモデル数の限られた PowerBook ラインに焦点を 絞っているのだ。

Rhapsody は Rhapsody で、開発が進んでいるにもかかわらず Apple は未 だにサーバ用のオペレーティングシステムにしようとしている。Apple の サーバはハイエンド Network Server システムを含め、昨年対象から外さ れていた。どんなに良いものだったとしても、ネットワーク管理者達がサー バオペレーティングシステムを求めて Apple の方を振り向くとは思いがた い。

Apple は屋台骨を組み直している間に多くの人を蹴散らした。さて、その 改修ぶりを見に来てくれるユーザーがどれほどいるのかということ、これ が私にとっての総合的な関心事だ。


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway