TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#420/16-Mar-98

どうやって我々が Macintosh 関連では最大のメーリングリストの一つを稼 働し、これを Mac のみで行っているのか、どうしても気になる?テクニカ ル編集長の Geoff Duncan が我々のシステムを詳しく説明する。また、Ron Risley 氏がモバイルコンピューティングのソリューションが必要な人々に 助言をくれている。さらに、今週は、長く待たされた Speed Doubler 8.1 と次代の PalmPilot ディバイス、Palm III の発表を掲載する。

目次:

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MailBITS/16-Mar-98

(翻訳:秋山 晃子 <nobineko@club.udn.ne.jp>)

Connectix 社が Speed Doubler 8.1 をリリース -- Connectix 社が、パ フォーマンスが改善され、ユーティリティパッケージが Mac OS 8.1 に対 応している英語版 Speed Doubler 8.1 をリリースした。。新たに加えられ た機能として、Speed Doubler 8.1 がバックグラウンドで常に起動したま まとなること(ファイルコピーあるいはゴミ箱を空にするときに処理が遅 くならないようにする)、そしてリモートボリュームのマウントや、ディ スク、フォルダを開くことを自動化したホットキーがあげられる。またこ のアップデートではファイルコピーと Mac OS 拡張フォーマットへの対応 が改善されている。(“Macintosh Extneded Format(HFS Plus)のすべ て” TidBITS-414 を参照)。Connectix 社によると Apple 社の各国語版 Mac OS 8.1 リリースにより、各国語版 Speed Doubler 8.1 もまもなく提 供の予定であるとのことだ。Speed Doubler 8.1 のアップデータは 476K のダウンロードサイズ。ネットワークサーバ用には Speed Doubler 8 版の Speed Copy アップデータを単独ダウンロードできる。[GD]

<http://www.connectix.com/html/speed_doubler_updates.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04668>

3Com 社が Palm III の発売を発表 -- 先週 3Com 社が Pilot の新製品 Palm III “connected organizer”を 4 月に発売すると発表した。Palm III は 399 ドルに価格設定されており、PDA の人気シリーズ PalmPilot のアップデート版である。Palm III はより曲線的なデザインになり、オプ ション仕様のフリップカバー、2 MB RAM、2 MB フラッシュ RAM、Palm OS 3.0、赤外線ポートなどが搭載されている。(さらに詳しい情報が必要なら クローズアップ写真と第一印象を伝える記事が PalmPower Magazine 誌に ある。)Palm III にめざましい改良はないが、誇大な宣伝をしてまもなく 発売される Windows CE ベースの“Palm PC”に対抗するために、ほどほど の改良がなされたと一般には受けとめられている。現 PalmPilot Professional と PalmPilot Personal の価格はそれぞれ 299 ドルと 199 ドルまで下がっている(これら現行機種の詳細については TidBITS-411 を初号として最近連載された Jeff Carlson 氏による PalmPilot に関する 記事を参照)。

<http://www.palmpilot.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1030>
<http://www.microsoft.com/windowsce/palmpc/>
<http://www.palmpower.com/>

関連ニュース。3Com 社の子会社である Palm Computing 社が Microsoft 社相手に Palm PC の命名にまつわる訴訟を起こした。欧州でなら Microsoft 社の商標違反が立証される可能性が高いと考え、Palm Computing 社は欧州数カ国で訴訟を起こしている。[JLC]

<http://www.news.com/News/Item/0,4,19745,00.html?owv>


Newton の次は?

by Ron Risley <rrisley@pobox.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

TidBITS-418 に私の記事、「Newton なき生活を思う」が掲載された後、 同じような内容のメールを何通も受け取った。その内容とは、「あなたの 記事で Newton テクノロジーこそが私が求めていたものだという思いを一 層強くしましたが、Apple が Newton の開発を止めた今、私はどうすれば 良いのでしょう?」というものだった。[TidBITS-419 の「ニュートン、リ ンゴの木から落ちる」を参照。-Jeff]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04735>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04746>

すでに Newton MessagePad(や同じ Newton OS を使っている eMate)を 持っている方にとっては、答えは簡単だ。Newton は少なくとも今後一年間 は立派に実用になるプラットフォームとして存続する。豊富なソフトウェ アもあるし、Newton デベロッパーのほとんどは短期的には Newton プラッ トフォームのサポートを約束している。当然、新ソフトウェアの開発はよ り先行きが明るいプラットフォームに移行するだろうし、いずれ新しいシ ステムへの乗り換えも必要になるだろう。

<http://www.newton.apple.com/>

必要条件 -- これからハンドヘルドコンピュータへの投資をしようとし ている人は、もう少し難しい選択を迫られる。私が初めてハンドヘルドコ ンピューティングを試してみようと思った時、2 つの必要条件にたどりつ いた。

第一の条件は、立ったまま本やブリーフケースを持ちながら、あるいは手 元に視線を落とすことなく操作することができなければならないというこ とだった。紙製の手帳はこの条件を満たしており、ラップトップコンピュー タがシステム手帳を駆逐できていない理由の一つはここにある。医学実習 生である私は、机のスペースが貴重な診療所や病院で働いていることが多 いうえ、廊下で本や表を持ちながらペンを走らせることが多いのだ。エン ジニアだった頃も同じような状況に置かれることが多かった。こういった 条件で使えないようなデバイスなら机の上に置いておいたほうが良い。

第二の条件は信頼性だった。私生活の方は何年も前からコンピュータを使っ て管理していたが、その間どれだけこまめにバックアップをとっていても データは消失してしまうことが少なくないということを知った。医療とい う分野では、つい数分前に集めたデータや重要な to-do アイテムを失うこ とは大変な結果につながりかねない。他の分野ではこれほど深刻な問題で はないかもしれないが、長期的には同じぐらい大変なことになりかねない。 ハンドヘルドコンピュータを 絶対的 に信頼できるのでない限り、紙の 手帳から乗り換えるのは難しいだろう。

1994 年当時、こういった条件を満たしていたのは MessagePad だけだっ た。1998 年になった今も状況はそれほど変わっていない。第一の条件を満 たすには、なんらかの手書き文字認識が必要となるだろう。通常のキーボー ドにはデバイスを置いて両手で操作するための場所が必要だ。オンスクリー ンキーボードは常に注視していなければならず、現実世界ではデータ入力 の障害になる。

DOS、MacOS、あるいは Microsoft Windows をベースにしたデバイスはどれ をとっても紙と競争できるだけの絶対的な信頼性は持ち合わせていない。 Windows CE や登場が噂されているハンドヘルド版 MacOS はいずれ Newton に匹敵する信頼性を獲得するかもしれないが、“Win CE”デバイスの初期 ユーザーからの報告にはがっかりさせられる。データの損失を伴うクラッ シュが少なくないのだ。今になってから Newton プラットフォームが当初 から持っていたような信頼性を追加することは技術的に困難な事業に違い ない。

未来は掌中に? ハンドヘルドコンピューティングの世界の生き残りの中 では、3Com 社の人気製品、PalmPilot が Apple の撤退によってできた真 空地帯を埋める最有力候補だろう。一種の速記法である入力システム、 Graffiti(もともとは初期の Newton の誤認識からの救済として開発され た)には抵抗を感じる人が多いが、私には簡単に学習でき、速くて正確な 入力ができる入力方法に感じられる。場合によっては手書き文字入力より も優秀で、特に画面を見ずに書くには最適だ。PalmPilot のオペレーティ ングシステムはオープンでもあり(サードパーティによるソフトウェア開 発を奨励)、信頼性も比較的高い。

<http://www.palmpilot.com/>

PalmPilot は主としてハードウェアの制約に縛られている。たとえば信頼 性。現行製品では、電池が 1 分以上外されたままになっているとメモリに あるデータが失われてしまう。電池を交換した際、もし電池が不良品だっ たり、きちんと押し込まれていなかったりしたら回復不能なデータ消失に つながってしまう。次世代の PalmPilot、最近発表されたばかりの Palm III はある程度のフラッシュメモリを採用しているので、この点ではいく らか改善が見られるはずだ。

<http://www.palmpilot.com/catalog/palmiii.html>

この他のハードウェアの制約にも対策が講じられている。新 Palm III に はデータ交換のために赤外線ポートが備えられている。最終的には IrDA プリンタをもサポートすることができるはずなので、これはデバイスの大 幅な実用性向上につながるだろう。Palm III には PC カードなどのスト レージデバイスを追加することが依然としてできないため、参考資料や大 量のデータを格納しておく用途には向かない。1 MB 以上のメモリを備えた Palm デバイスなら Web や Telnet のアクセスもできるので、この点では 一歩前進というべきだろう。

Newton か否か? 紙の手帳から乗り換えるべきデバイスを探しているとい うだけなら、Palm III はまず間違いではないだろう。残念ながら、比較的 少ない搭載メモリ、印刷を直接はサポートしていないこと、拡張カードサ ポートの制約などのため、MessagePad クラスのハンドヘルドコンピュータ の代役を完全には務めることができない。

ハンドヘルドコンピューティングの可能性の多くを実現し、公私のデータ や参考資料をポケット入れておいてしかもインターネットの無限の情報に アクセスするには、依然として Newton が事実上唯一の選択肢だ。人によっ ては低くなった Newton MessagePad 2100 の価格のおかげで、Newton が時 代遅れになるにつれて他のプラットフォームに乗り換えるという打撃をや わらげてくれるかもしれない。他の人は 3Com/Palm Computing や他の先見 性のある会社が Newton の跡を継ぐことのできるデバイスを作ってくれる まで紙を利用した方法に頼り続けることになるだろう。


正統のメーリングリストにあらず

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

TidBITS では自らのことを記事にするようにしている。つまり、新しいシ ステムやサービスを始めたり変更事項があったり中止事項がある場合、た いていそのことを記事にしているのだ。他の雑誌に出ている製品レビュー をリストアップし続けるかどうかを決定するための投票や、全文検索エン ジンのコンテストを行なったこともあった。

これは TidBITS の読者に我々の行っていることをお知らせするといった役 割もあるが、目の前にある問題の解決に Mac を使っているからこそ記事に しているのだ。もちろん、業界ニュース、製品の案内、レビュー、分析は 欠かせないことであるのだが、我々自身の事例を書くことはほかの人の事 例を取り上げることに劣らないぐらい重要なことだ。

TidBITS をずっと読んでくださっている方のなかには、1996 年の 8 月に、 Rice 大学の LISTSERV を利用して運営していた TidBITS のメーリングリ ストを、自分たちで運営管理するシステムに移行した話を思い出す方もい るだろう。実際 TidBITS 規模のメーリングリストをどのように管理してい るのかという問い合わせ(「ハードウェアやソフトウェアには何を使って いるのですか」「メーリングリストを立ち上げるのにあたり何か特別なこ とをしましたか」「どういった仕組になっているのですか」など)を頻繁 に受ける。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00937>

現在 TidBITS 関連のメーリングリストはいくつもあるのだが、その中で最 も大きく最も長期間利用されているのは、購読者約 5 万人に及ぶ setext 版 TidBITS(英語)のメーリングリストだ。そのほかに 翻訳版の TidBITS 用のメーリングリストが個々にある。その大半(オランダ語、フランス語、 ドイツ語など)は我々がホストしているが、かなりの大きさである日本語 版は日本語翻訳チームが別途処理している。

<http://www.tidbits.com/about/list.html>
<http://www.tidbits.com/about/translations.html>

特記 -- 話を進める前に、管理上の委細についての重要なことをいくつ かお話ししておこう。まず、TidBITS が扱っているメーリングリストは完 全に極秘扱いになっている。我々はいかなる理由があろうとも、いかなる 状況においても TidBITS の購読者の個々の情報を売ったり、貸したり、公 表したりはしないと断言する。

つぎに、購読に関する情報は TidBITS の各号に記してあるが、あえて繰返 しておく。TidBITS(英語版)の購読申込をするには <tidbits-on@tidbits.com> 宛に、購読を中止するには <tidbits-off@tidbits.com> 宛にメールを送る。我々の Web ページにある フォームを使って購読申込をすることもできる。TidBITS の翻訳版をメー ルで受け取りたい場合は、翻訳版の Web ページで当該のメーリングリスト が存在するかどうかをご確認いただきたい。

TidBITS の受け取り先を新しいアドレスに変更したい場合は、現在申し込 んであるアドレスから購読中止のメールを送り、改めて新しいアドレスか ら購読申込を行う。古いアドレスにアクセスできなくなった場合は、新旧 のアドレスを明示のうえ購読の変更を行って欲しい旨のメッセージを <editors@tidbits.com> 宛に送っていただきたい。

所在とサーバのトリック -- 毎週の TidBITS の配信には StarNine 社製 メーリングリストソフトウェア ListSTAR/SMTP を利用している。これはた かだか( PowerPC 601 を搭載した)Power Mac 6150/66 上で動いているの だ。この 6150 は我々のメイン Web サーバとして活躍している他の Power Mac と同様、Washington 州は Seattle の中心にある Point of Presence Company(POPCO)社が引き受けてくれている。TidBITS の配信は、配布を 迅速に行うために 6150 が POPCO 社内の設置されている高速の Unix シス テムをゲートウェイとして利用しながら、より速く TidBITS をインター ネットへ送り出すというシステムになっている。一方、Fog City 社製 LetterRip を載せた SE/30 は Adam と Tonya の家に置かれ、小規模な翻 訳版 TidBITS のリストをいくつか処理している。

<http://www.starnine.com/liststar/liststar.html>
<http://www.popco.com/>
<http://www.fogcity.com/>

さらに付け加えておくと、メインの TidBITS メーリングリストは FileMaker Pro のデーターベースを利用している。これらのデータは私の メインのデスクトップマシンである Power Mac 7600/120 に納められてお り、私以外の者が使うことはない。

<http://www.filemaker.com/>

上記のことは複雑きわまりなく感じるだろう。このセットアップの理解に は、TidBITS の物理的位置関係の説明が必要であろう。Adam と Tonya は Seattle のはるか東にある自宅で仕事をしており、US West 社との 9 ヶ月 にわたる戦いの末設置した 56K フレームリレイで接続でしている。一方私 は Seattle 東部にある自宅を仕事場にしており、そこに ISDN 専用線でイ ンターネットに接続している Mac を置いてある。また、町の中心地に設置 されている TidBITS のメインサーバは、T1 回線を享受している。すなわ ち、購読のデーターベースは配付用サーバとは物理的に隔たったところに 置かれているのだ。

では、ListSTAR と FileMaker をどのように連動させているのだろうか。 この 2 つは同一マシンにも同一 AppleTalk ネットワーク上にも置かれて いないので、ListSTAR のルール、自分たちで作った HyperCard スタック、 FTP、そしてちょっとした人力を組み合わせることになる。TidBITS に購読 申込が送られると、ListSTAR がその人の氏名とアドレスを購読者リストに 書き加えて、確認のメールを送る。(購読中止の場合も同様の処理が行わ れている。)HyperCard を利用した自動操作で、私の Mac が毎晩 NetPresenz の FTP サーバの管理機能を利用し ListSTAR を終了するよう 命令を出すようにセットしている。さらに、TidBITS のメーリングリスト に追加されたり削除されたアドレスの一覧を手際よくダウンロードして、 リストを空にして戻しておく。最後に、ListSTAR を起動して一連の自動操 作は終了する。ListSTAR は何も知らないままメール処理を再開するのだ。

<http://hypercard.apple.com/>
<http://www.stairways.com/netpresenz/>

今度は、ListSTAR ファイルの購読申込情報を FileMaker に統合しなけれ ばならない。別の HyperCard スタックが ListSTAR のファイル一つ一つ を、アドレスごとに適当な処置をとりながら、適当な返答や購読レポート などを作りメールで送付するという処理をする。この処理を行うのに HyperCard を利用しているのは、その安定性と私の長年の HyperCard 歴に 加えて、HyperCard のツールを使えばインターフェースを作るのが簡単だ からだ。HyperCard は柔軟性に富んでいる。たとえば、このシステムが動 作しだして以来、購読のデーターベースからおこなうメールの返信は、 Eudora、メール用カスタム XCMD、Allegiant 社製 Marionet、Atul Butte 社製 TCP/IP Scripting Addition、Chuck Shotton 社製のスクリプタブル な TCP ユーティリティ NetEvents、FileMaker Pro 4 のビルトイン SMTP 機能など様々なツールを使って送られているのだ。

<http://www.eudora.com/>
<http://www.allegiant.com/marionet/>
<http://www.mangotree.com/scriptingaddition.html>
<http://www.biap.com/downloads/NetEvents.html>

なぜこのような面倒を? メーリングリストをホストするにはもっと簡単 な方法がある。FileMaker とこれ等スクリプトでのごまかしの両方を避け、 ListSTAR ですべてを処理することもできるのだ。あるいは、誰かにお金を 支払って TidBITS をホストしてもらえば、メーリングリストを我々が再び 運営する必要もない。

我々は様々な理由からそれ等のオプションを拒絶した。最も巨大な Macintosh メーリングリストの一つとして、我々は TidBITS を配信するた めに Mac を用いた解決策を見いだすことを望んだのだ。1996 年当時、Mac を使用してホストされた TidBITS 規模のメーリングリストは存在せず、 我々はそれを変える機会だと感じた。第二に、巨大なメーリングリストを ホストするための費用は膨大であったし、また、質の高いサービスや - さ らに重要なことに - TidBITS メーリングリストのセキュリティに対する保 証もなかった。

ListSTAR だけを使用して TidBITS 規模のメーリングリストをホストする ことは可能だ。しかし、ListSTAR のアドレスリストエディターは約 15,000 件以上のエントリーを持つメーリングリストを開くことができず、手作業 でアドレスや名前を検索することが困難なのだ。さらに、我々の誰も ListSTAR サーバと同じ物理的場所には居ないので、メーリングリストの管 理業務は Timbuktu Pro を経由しなければならず、理想的ではない。

<http://www.netopia.com/software/tb2/mac/>

メーリングリストの管理にデータベースを使用することは、単純な着脱可 能システムに比べ、様々な利点がある。まず、リレーショナルデータベー スでは複数のメーリングリストの購読情報を集中管理する事が可能だ。も しあなたが TidBITS と NetBITS の両方を購読しているなら、データベー スが返す購読レポートにはあなた固有のメールアドレスへのすべての購読 物がリストされていることにお気づきかも知れない。だから、もし購読者 がメールアドレスの変更を連絡してくれば、私は一カ所の情報を更新する だけで良いのだ。同様に、データベースを通しての検索と置換機能は、ド メインネームの変更や消滅(eWorld を覚えておいでだろうか?)があった 場合のメールアドレスの一括修正や除去、重複アドレスの削除、または問 題を抱えている購読をファジーな条件で検索することを容易にするのだ。

また、メーリングリストプログラムは購読者について多くの情報を保存し ない。通常はメールアドレスのみか名前が入る程度だ。他方、データベー スでは個々の購読者または購読に関する任意の情報を何でも保存する事が できる。購読申し込みを含め、我々のデータベースは、各々のメールトラ ブル、分析結果、およびデータベース管理者による手作業業での変更をイ ベントログとして保持している。また、私は不完全なメールアドレスや繰 り返し発生するメールトラブル、並びに私が把握しておく必要があり得る その他項目に関して、フラッグの役割を果たすフィールドを設けている。 これ等により管理業務は非常に容易となっている。

データベースのもう一つの利点は忘れ去られる人が誰もいないということ だ。ListSTAR や LetterRip のようなメーリングリストプログラムが購読 中止の要請を受けた場合は該当エントリーは削除されてしまう。その時 点で、購読者は消え去り、その人がかつては購読していたというしるしも なくなるのだ。それに対し、誰かが TidBITS の購読を中止しても何等の情 報も削除されない。データベースはその購読の終了日を追加し、配布が中 止された旨のメモを送るのみである。購読者と購読に関するのすべての情 報は維持されるのだ。

なぜって?データベースにこの情報を維持させる理由の一つは、私が TidBITS 規模のリストを運営するのに不可欠と感じているからだ。私は、 すべてのドメインでメール配信トラブルを突然報告し始めたり(これは、 通常、サーバレベルのスパム用フィルターが暴走している事を示す)、購 読者が TidBITS の購読中止と再購読申し込みを毎日または毎週繰り返す (通常は自動返信の設定ミス)等の情報の中から、パターンを捜すための クエリーとツールを有している。これ等の情報は私がいくつかの問題に対 し事前に対処する事を可能とし、また、購読者が問題に遭遇にした場合に 対処するための更なる情報も与えてくれるのだ。

リストプロファイル -- データベースを用いる事のその他の利点はもっ と微細なものだ。TidBITS リストが Rice 大学でホストされていた頃、そ こでの LISTSERV システムは我々のために問題なく働いてくれていた。こ れは Mark Williamson 氏の献身的な努力によるところが多い。しかし、 我々は我々が TidBITS メーリングリストについてほとんど知らない事に しばしばフラストレーションを起こしていたのだ。それがどのように巨大 かは随時認識しており、コピーを取り出して検索と分析を行うことはでき たのだが、我々が知りたかったことすべてを告げるものではなかったのだ。

例えば、データベースを用いれば、TidBITS リストにはいくつの異なった ドメインが存在するかを随時に(現在は 127 で、ニウーエイ、サンマリ ノ、キューバやイランといったエキゾチックな地域が含まれている)、ど の Internet プロバイダに最も多くの購読者がいるか(AOL、EarthLink、 CompuServe、そして Netcom)、そして日本(1,582)、スイス(333)、 またはシンガポール(139)には何人の人達が TidBITS の英語版を購読し ているかを簡単に調べられる。

購読者データベースは他の種類の情報も提供してくれる。AOL や有線テレ ビのようなサービスでの大きな関心事は、購読申し込み後にある期間で購 読を中止する購読者の「退会率」であり、そのサービスがいかに上手く購 読者を引き留めておくことができているか、つまりそれ等購読者がそのサー ビスがいかに価値があると感じているかを測る間接的手法だ。HBO のよう ないくつかの有線テレビサービスの退会率は 40 パーセントの高さと推定 され、AOL の退会率は時には 50 パーセントを超すとされている。

<http://www.zdnet.com/intweek/print/960520/upfront/doc16.html>

TidBITS は無償故に、その退会率は商業サービスとは違っているはずであ り、事実そうである事を知って嬉しく思っている。我々が 1996 年の 8 月 にリストを引き継いで以来、TidBITS の 30 日間での平均退会率は 1.2 パーセントであり、TidBITS を受信する人々の 98 パーセント以上が 30 日以上購読を継続していることを意味している。同様に、TidBITS の 90 日間での平均退会率は 1.9 パーセントで、年間での平均退会率は 8.3 パー セントとなっている。もう一つの興味深い統計では、我々が 18 カ月前に リストを引き継いだ時の TidBITS 購読者の 72 パーセントが今日も購読を 続けている。

これ等の種類の数字は不正確な測定値ではあるが、それ等は TidBITS 読者 が TidBITS を価値あるサービスと認識し、長い間 TidBITS を購読し続け ている事を意味している。人々はメールを送ってくれる際にこれ等の事柄 を我々に告げてくれるのだが、それ等の感情が、長期にわたって TidBITS 購読者のすべてにおいて真であることが立証されているのを知るのは嬉し いことだ。

返送メールの扱い -- TidBITS のリスト管理上一番の問題の一つが返送 メールである。現状では一回の TidBITS に対して 12 から 15 MB の返送 メッセージやエラーが返ってくる。その大部分が返送された記事の全テキ ストであるとはいっても、手でいちいち処理するには量が多すぎる。そこ で私はその仕事をさせるプログラムを書いて Hired Thug[雇われ用心棒] と名付けた。

Hired Thug は簡単な理論に基づいて動く:まず返送メールの中から数ダー スの既知のパターンを探しエラーの原因となったアドレスを抽出しようと する。次に Hired Thug はそのアドレスを過去に問題となったアドレスの リストに対して照合する。もしそのアドレスがリストに含まれていなけれ ば、Hired Thug はそれを日付と共につけ加える。さもなければ、Hired Thug は既存の日付と現在の日付とを比較する。そしてその二つの日付が十 分に近ければ、Hired Thug は問題のアドレスを購読者データベース上で探 し、関連する購読を停止させ、受け取ったエラータイプを記録する。

毎週 Hired Thug はエラーや返送メールの中から 400 から 1,000 のメー ルアドレスを取り出す。しかしその中で最近も我々にエラーを返してきた “常習者”は全体の 1/4 から 1/2 だけである。メールプロバイダーに起 因する短期的な問題では読者の TidBITS 購読が抹消される様な事はない が、繰り返しエラーとなるような問題が残ったままだと購読が停止されて しまう。そして、もし読者が TidBITS に購読申込しようとしてもこちら からの確認メッセージが配信できない場合は、その購読を直ちに停止して しまう。

我々のデータベースは [読者によって] 取り消された購読申込とメールエ ラーによって停止された購読申込とを別認識するので、いったん停止され たアドレスから再購読申込しようとしてもうまく行かない。その代わり (メールアドレスが正常に働いていれば)、あなたの購読は停止されてい て再購読できない旨のこちらからの通知を受け取ることになる。そうなっ た場合、我々の <editors@tidbits.com> に状況を知らせて欲しい。大抵の 場合、あなたのエラーの性質とどうすればあなたの購読を再開できるかを いえる。

LetterRip や Lyris(Mac 用はない)の様なメーリングリストソフトは今 やエラー処理機能を有しているが、“単純消去”法を用いているので問題 のアドレスに関するすべての情報は消されてしまう。我々の場合エラーを 自分で追跡しているので、誤りがちなジャンクメールフィルタ、メールルー プや AOL や CompuServe のような大きな組織のメールプロセス変更などに よる問題をよりよく追跡できる。

<http://www.lyris.com/>

もしご自分でメールリストを管理していて返送メールを処理するのに Hired Thug を使ってみたいと思われたかもしれないが、それはできないのであ る。Hired Thug は TidBITS の購読システムと密接に関係して作られてい て簡単にはスタンドアローン型のユーティリティに変換はできないのであ る。しかしながら、Vince Sabio 氏のプログラムである SmartBounce は同 じ様な機能を有していて大抵のメーリングソフトと動くように設計されて いる。私は SmartBounce が出る前に Hired Thug を書いた、しかしもし Hired Thug がこれ程うまく動かずかつ我々のニーズにぴったりと合わせた 物になる所まで来ていなかったら、多分 SmartBounce を使っていただろう と思う。

<http://www.smartbounce.com/>

データベースを見せて -- 人々は我々が購読管理をデータベースを使っ てやっていると聞くときまって、どうして読者に自分の購読を管理させな いのかとか、TidBITS の購読用に指定したアドレス以外のアドレスから購 読申込コマンドを送るのを許さないのかとか聞いてくる。これらのリクエ ストはそれなりに意味のあることだとは思うが、我々は購読者の守秘と単 純なリスト撹乱を防止するためこうしたやり方を許していないのである。

例えば、もし我々が Web ベースの購読者データベースの検索をできるよう にしたとすれば、ジャンクメーラーがその機能を悪用して数千ものメール アドレスを取得するのにいくらも時間はいらないであろう。同様にもし第 三者による代理購読申込を受け付けるとしたら、その機能を悪用してある 特定のアドレスが登録されているか調べるとか、他人の購読をキャンセル するとか、誰かをその許可を得ずに TidBITS に購読申込をする人が出て くるであろう。もしこれを考えすぎだとお思いの方には、こんな現実を見 て欲しい。我々の所には毎週数 10 通にも上るいかがわしい購読申込が来 る(そのアドレスは Bill Gates から Bill Clinton にまで及んでいる)、 また時折同じアドレスをほんの少しずつ変化させて 20 から 30 回も購読 申込しようとする者までいる。もちろんメーリングリストのデータベース は改ざんに対して防備万全とはいかない(デジタル署名や写真 ID をもっ てしても不可能なことである)が、我々はその様な悪意の試みを難しくし てやろうとしている。

これでおしまい -- 理想をいえば、この様な複雑な舞台裏は TidBITS の 読者には全く見えず、ただ購読申込して記事の配信を受け始めるのは造作 もないことですむべきである。将来は、より進んだ機能や購読オプション が提供できる様にしたいが、今の所は、我々はシステムがちゃんと動いて おり、それもすべて我々の Mac からやれている事に満足している。


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