TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#443/17-Aug-98

Matt Neuburg は HyperCard の後継者を探せたのか?彼の REALbasic レ ビューから見出してほしい。そして TidBITS が Windows プログラムのレ ビューを載せる時、世間は何を思うのであろうか?Aladdin Expander と Aladdin DropStuff を使えば Windows ユーザーに Stuffed するよう言え るようになる。ニュースの部では、iMac が大興奮の中に登場、LetterRip 3.0.2 出荷、SyQuest 社 SyQuest Utilities のバージョン 4.0.1 をリリー ス、そして Farallon 社が Macintosh ネットワーク製品に集中するため Netopia 社からスピンアウトする。

目次:

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MailBITS/17-Aug-98

(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

LetterRip Pro 3.0.2 リリース -- Fog City Software 社は、その簡素 だが高性能のメーリングリスト管理ソフトである LetterRip Pro の無償 アップデートをリリースした。バージョン 3.0.2 ではバグフィックス数 点といくつかの変更がなされている;Mailer Daemon Strings ファイル経 由での自動レスポンスを更に削除した事、ログの中で送出ファイルを特定 する事、そして二つの似たようなアドレスは同一のものであると LetterRip に認識させる事態を引き起こしていたファジィドメインロジックに関する 問題の修正を含んでいる。Fog City 社はすべての LetterRip Pro ユーザー がこの新バージョンにアップグレードするよう推奨している。それは 3.1 MB のフルインストーラー・ダウンロードか 381K のアップデータ・ダウン ロードである(LetterRip Pro Server だけが変わった)。[ACE]

<http://www.fogcity.com/letterrip.html>

Farallon 社が戻ってきた! かって Macintosh の世界で大手のネットワー キング会社の一つであった Farallon 社が、昨年その名前を Netopia 社に 変えてインターネットにより一層注力するようになっていた。しかしここ に来て、Farallon 事業部は Netopia 社からスピンアウト、独立会社とし て、Ethernet カード、スイッチ、ハブ、および関連物品に特化しようとし ている。製品の中には新 iMac と LocalTalk プリンタや Mac との間をつ なぐ EtherMac iPrint Adapter LT も含まれている。Netopia 社自身は Netopia Internet Routers、Netopia Virtual Office、そして Timbuktu Pro に代表されるインターネット製品を継続していく。我々としては、こ の Farallon 社のカムバックを歓迎したい。と言うのも、Macintosh 市場 が昨年の低迷から堅調な回復への道を歩んでいる明らかなしるしでもある からである。 [ACE]

<http://www.netopia.com/>
<http://www.farallon.com/news/98_08_05.html>
<http://www.farallon.com/news/98_07_28.html>

コンピュータのもう一つの盗難登録 -- Rob Jorgensen 氏が、盗難マシ ンを登録するか、あるいは中古マシンを買おうとしている時にシリアル番 号をチェックできるデータベースが他にもあることを知らせてくれた。The American Computer Exchange Database of Stolen Computers は TidBITS-442 の“泥棒!”で紹介した O'Grady の Stolen PowerBook Registry と同様に働くようだ。 [ACE]

<http://www.amcoex.com/AmCoEx/Stolen/>
<http://celebs.ogrady.com/larceny/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05033>

新 SyQuest Utilities とレイオフ -- SyQuest Technology 社は全く静 かに SyQuest Utilities のバージョン 4.0.1 をリリースした。(SyQuest 社には、このような事を登録顧客に対して敢えて知らせる必要はないとす るに十分な理由があるのだろうか?)これまで La Cie 社の Silverlining Lite にやむなく依存してきた人達は、SyQuest 固有のドライバとコント ロールパネルのインターフェースを活用できるようになった。こちらの方 が簡潔で、簡単で、かつドキュメントも良く、そして更なるオプションと 機能が加えられている。

<ftp://ftp.syquest.com/pub/drivers/misc/mac/SyQuest%20Utilities.hqx>

私の SyJet でうまく行ったたアップグレードのやり方は以下のようであ る。機能拡張をオフにして、コントロールパネルをインストールすると、 これが自動的に Silverlining Lite を働かなくする。再起動して、個々の SyJet カートリッジに対して次のことをする:データをバックアップし、 カートリッジを初期化する、これでデータは即座に消去されるので次に新 ドライバをインストールする。(もしバックアップできないのであれば、 Option を押し Update を選ぶ。)コントロールパネル上のタブ毎に(他の オプションを選択するはっきりした理由がない限りは)、Use Defaults を クリックし Save Settings を選択する。ここでカートリッジをベリファイ する - 中レベルで良いであろう。これに約 1 時間かかる、そしてダメブ ロックも修復できる - 私のカートリッジには数カ所あった;これがデータ に悪さをする事はないはずである。最後に、データをバックアップしたの であれば、それを元に戻す。

残念なことには、SyQuest 社は全世界で 950 人をレイオフし、他のコスト 削減策と共に Fremont、California 工場での生産を中止すると発表した。 これは同社の健全性を向上させるための、大規模なリストラによるもので ある。 [MAN]

<http://www.syquest.com/press/1998/pr080698.html>


iMac フィーバー

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:加藤たけあき <oiso@wolfenet.com>)

iMac に関する大騒ぎを見逃したと Apple 社に苦情を唱えるような人はい ないであろう。美しい曲線美を持った新しいコンシューマー向け Macintosh は、一連の特別イベントや巧妙な演出による宣伝、そしてニュースでの報 道と共に 1998 年 8 月 15 日の土曜日にそのデビューを飾った。私たちは 既に iMac の仕様、問題点、可能性について語ってきているので、ここで は私が iMac について見聞してきたことのいくつかを伝えていこうと思う。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbtxt=iMac>
<http://www.apple.com/imac/>

インフレータブル iMac -- おそらく最も大きなiMacの宣伝に該当するも のは Apple 社が作った、空気を入れると 20 フィートの高さになる iMac の形をした風船であろう。同社はこれを 40 個作り、一つを社のキャンパ スに置き、他の 39 個を全米各地に散まいた。シアトルにある Westwind Computing 社の Michael Koidahl 氏発案の演出は、新しい白の Volkswagen ビートルを iMac に見立てて塗装し、イベントに登場させるというものだっ たが、残念ながら資金繰りがうまく行かず実現しなかった。他の Apple 販 売業者が実現させてくれることを期待したい。

<http://www.apple.com/hotnews/features/imacparty.html>

150,000 件のオーダー -- Apple 社は 98 年 8 月 3 日から 8月 10 日の間に 150,000 件に上る iMac のオーダーを受注したと発表した。同社 は在庫品に関する方針を変え、販売業者は売れ残った iMac を返品できな いようになったという噂を考えると、これは驚くべき数字だといえる。私 が聞いた限りでは、販売業者はそれほど返品については心配していないよ うだ。シアトルのある販売店は 58 台の iMac が入荷し、土曜日の午後2 時までに 20 台の注文が入った。別の店では 30 台入った在庫をその週末 で売り尽くしてしまった。

<http://www.apple.com/pr/library/1998/aug/10orders.html>

マスコミの報道 -- おそらく iMac が Apple 社にもたらした最も重要な 利益は、マスコミの報道の焦点を退屈な「問題が山積みの Apple Computer」から、その製品と前向きな話題に戻したことだろう。宣伝部に 席を置いている友人は、マスコミが常に根も葉もないことを先導するのは 茶の間でフットボールを観戦していることと似ていて、大部分は Apple 社 が勝っていなかったためである。常に負けてしまう傾向はすべてを過剰に 分析させてしまうが、勝っていればみんな満足なのだ。と、最近語ってく れた。一連の iMac に関する報道は間違いなく Apple 社が注意深く選んだ ものだとはいえ、確かに興味深いものがある。

<http://www.apple.com/imac/reaction.html>

USB と Ethernet -- iMac についてもっぱらの批評は今まで使い慣れた シリアル、ADB、SCSI ポートが無いことに加えてフロッピードライブも無 いこと(ところが TidBITS Talk の読者の一人が学生向けに作られた、内 蔵 Zip ドライブ、フロッピードライブ、24倍速 CD-ROM を持つ「iMac+」 の目撃談を寄せてきている)だったが、多くのメーカーがそれらの制限事 項を解決するものを発表または出荷している。しかし私が主に気になった ことは、販売業者には都合のいいことかもしれないが、以前の Macintosh から様々なファイルをどうやって iMac に移し換えるのだろうかという一 度きりの問題である。以前の Macintosh に Ethernet が付いていれば良い が、もし Ethernet が付いていなければ、販売業者が iMac の顧客のため に(LocalTalk/Ethernet bridge や、他の方法を用いて)データを移し換 えることが可能だということは明らかだ。古い Mac を使っているユーザー にとって、Ethernet を介してのネットワーキングはより少ないオプション しか残されていない。たとえば、Farallon 社はいくつかの iMac とネット ワーク機器を繋ぐ製品を販売している。SCSIを使用するスキャナやシリア ルプリンタを持っているならば、Stalker Software 社の ScanShare や LineShare を使ってネットワークに繋いだ iMac からそれらを利用するこ とができる。その他、興味深い iMac 接続問題の解決法があれば TidBITS Talk <tidbits-talk@tidbits.com> まで送ってほしい。今後の参照のため に TidBITS Talk アーカイブに集めておき、保存しておきたいと思う。

<http://www.apple.com/usb/>
<http://www.farallon.com/>
<http://www.stalker.com/>
<http://www.tidbits.com/search/talk.html>

一大宣伝攻勢 -- Apple 社は出荷の 3 ヵ月前に iMac の発表を行った。 振り返ってみると、それはコンピューターを未だ持っていない人達をも含 む多くを魅了した見事な戦略だった。ある情報によると、地元の小売店は 週末の渋滞の約 30% は新しいコンピューターを買おうとしている人達だと 見積もっているという。そして Apple 社は iMac を中心に置いた Web ペー ジを作り、最新の iMac 情報をメーリングリストに流し、ラジオやテレビ で宣伝することによって追撃をかけた。加えて Apple 社は同社史上最高の 10 億ドルを超えるという宣伝費を将来の iMac 広告に投入することを決め た。

<http://www.apple.com/hotnews/features/imacradiosked.html>
<http://www.apple.com/pr/library/1998/aug/13mktg.html>

Go、iMac! もし iMac が売れなかったら、私も自信をなくしてしまう。 洗練されたデザインの製品はこの半分のチャンスしかなくても成功する。 一見実用的だがベージュ色をしていないがために売れないということであ るなら、現在のコンピューティングにおける美的感覚、外見、姿勢、そし て創造性を刺激する力といった価値観を変える必要がある。iMac は長年間 の抜けたデザインに執着してしまっていた、従順で臆病な業界を正しい方 向に導き直してくれることであろう。


Windows で StuffIt

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@axes.co.jp>)

Mac と PC 間でファイルを共有するときの問題の一つは、異なる圧縮、エ ンコードフォーマットを使用することだ。Mac は一般的に圧縮に StuffIt フォーマットを使い、方や PC は Zip を使う。Mac は電子メール用のファ イルのエンコードに BinHex を使うが、PC は uuencode を使う方が多そう だ。我々 Mac ユーザーが少数派だから、我々のツールはよりよくならなけ ればいけなかった。Aladdin の StuffIt Expander とさまざまな他のツー ル(無料で入手できることが多い)のおかげで、Zip アーカイブ、uuencode されたファイルや、多様な Unix ファイルフォーマットさえ取り扱うこと は、我々にはたいてい簡単だ。しかし、PC の世界でツールが Macintosh フォーマットをサポートすることは非常に珍しい。だから PC を使ってい て StuffIt で圧縮後 BinHex された Microsoft Word ファイルのフォル ダを開ける必要がある場合は「好運を祈る」だ。

さて、Aladdin Expander 2.0 for Windows と Aladdin DropStuff 1.0 for Windows のおかげで、我々 Macintosh ユーザーは、我々がかつて使ってい たファイルフォーマットやすでに使っているものを取り扱えるのだ。

Aladdin Expander 2.0 -- Macintosh の親戚、StuffIt Expander と同 様に、Aladdin Expander は完全に無料であり、Aladdin Web サイトから 1.2 MB の自動展開アーカイブとして入手できる。

<http://www.aladdinsys.com/expander/>

一度インストールすれば、Windows のデスクトップにショートカットを作 成し、その上に様々なフォーマットで圧縮されエンコードされたファイル をドロップすることができる。その中には StuffIt(.sit)、Zip(.zip)、 uuencode(.uue)、BinHex(.hqx)、MacBinary(.bin)、ARC(.arc)、 Arj(.arj)、gzip(.gz)と、さらに StuffIt、Zip、Arj で作成された 自動展開アーカイブも含まれる。Aladdin Expander は長いファイル名を サポートし、MIME ファイルをデコードし、Aladdin の Private File 暗 号化ユーティリティ(これもクロスプラットフォームである)で暗号化さ れたファイルをを解読し、StuffIt のセグメント化されたアーカイブを結 合する。

<http://www.aladdinsys.com/privatefile/>

ドラッグ & ドロップは、ほとんどの Macintosh ユーザーが Aladdin Expander の使い方として思い描く方法だが、また Aladdin Expander のウ インドウ内にドラッグ & ドロップしたり、メニューやツールバーを使うこ ともできる。さらに面白いことに、ファイルを右クリックし、現れるポッ プアップメニューから Expand か Expand with Options のどちらかを選択 することができる。

Aladdin Expander のオプションは、StuffIt Expander のオプションに類 似した機能性と、さらに Options ダイアログの More ボタンを介してアク セスできる興味深い付加機能をいくつか提供する。Cross Platform タブ は、Aladdin Expander がテキストファイルを Windows フォーマットに変 換し、Macintosh 固有のファイル(他形式では失われるリソースフォーク 付きのファイル)を MacBinary フォーマットで保存し、ファイルのタイプ とクリエータを元にファイル名拡張子を追加できるようにするコントロー ル機能を提供する。これらの機能は極めて役に立つことがわかったが、そ れは Macintosh テキストファイルを Windows フォーマットに変換し、別 途、ファイル名拡張子のないファイルを正しく特定する煩わしさから解放 してくれるからだ。Macintosh ファイルを MacBinary フォーマットで保存 するオプションもまた便利だ。それは、StuffIt アーカイブを展開し、そ の後あるアプリケーションを破壊することなく Macintosh に戻すことがで きるからだ。

Aladdin DropStuff 1.0 -- バージョン番号からお察しのように、 Aladdin Expander は新製品ではない。しかし、Aladdin DropStuff 1.0 は 新製品であり、Macintosh の DropStuff with Expander Enhancer の機能 を模倣している。Aladdin の Web サイトから 1.1 MB の自動展開アーカイ ブをダウンロードできる。Aladdin DropStuff は 20 ドルのシェアウェア だが、TidBITS のスポンサーである Digital River 社は TidBITS の読者 に対し、この号の冒頭の広告部分のリンクを介してこれを 14.95 ドルで販 売している。

<http://www.aladdinsys.com/dropstuff/winindex.html>

DropStuff で一つ以上のファイルを圧縮するときは、予想通りドラッグ & ドロップが効くのだが、さらに、そのウインドウ内にドラッグ & ドロッ プしたり、メニューやツールバーを使ったり、ファイルを右クリックして ポップアップメニューから適切な圧縮方法を選択することもできる。

Aladdin DropStuff はいくつか珍しい機能を提供する。Windows Messaging をインストールしていれば、一つのコマンドで一つ以上のファイルを Stuff and mail することができる。同様に、Stuff and SendTo コマンドは、で き上がった StuffIt ファイルを Windows の別のいろいろな場所に送れる ようにする。最後に、Zip ファイルは Windows の標準なので、Aladdin DropStuff はこれも作成できる(そして DropStuff が他の Windows の Zip ユーティリティよりも簡単だとわかった)。

Aladdin DropStuff の快い特色は、Aladdin が Control-Q を Exit に割り 当てたことだ。残念なことに、Aladdin Expander は同じキーボードショー トカットがない。私はキーボードショートカットを Macintosh の慣習にな らう Windows アプリケーションの方が好きだ。つまり無意味な Alt-F4 よ りも Control-Q がほしいのだ。

最後に、Windows を Stuff -- これまで使ってきて、これらのユーティ リティを使う最も簡単な方法は、ファイルの右クリック時に現れるコンテ キストメニューだとわかった。画面の場所の大部分を Mac のもので使わ れ、デスクトップショートカットは通常他のウインドウに占められている ので、これはある程度までのことだ。これらのユーティリティを得て、私 は非常にありがたい。Mac と補助的な PC で、特にインターネットを介し て日常的な作業を行っているなら、Aladdin Expander と Aladdin DropStuff は必需品である。


そうさ Virginia、REALbasic があるさ

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:Kaz Yoshikawa <kaz@digitalstone.com>)
(  :高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

コンピュータはプログラムされるものである。そうされなければ、ただそ こに置いてあるだけの、ずうたいの大きな箱に過ぎない。もっとも、プロ グラムは他の人によって書かれたものを利用する場合がほとんどであるが、 やはり時々その箱に自分の指示したとおりに、正確に何かをさせたい場合 がある。理由は 自分 の思いどおりの事をやってくれるプログラムが存 在しないという場合もあれば、金銭の節約につながる為、ただの娯楽とし てという場合もある。それが、独特のインターフェースの笛をいとも簡単 に自分の思い通りに踊らせる事ができるソフトウェア構築キット、 HyperCard( TidBITS-213 の“HyperCard 2.2: The Great Becomes Greater”参照)の登場まで、筆者が最初の Mac を買わなかったかの理由 なのである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04075>

HyperCard は粗削りでも迅速にインターフェースを構築するという目的の ためには右に出るものがいなかった。しかし、やがてその古さと制限を現 わすようになったのである。HyperCard は文字などのテキスト格納やハイ パーリンクにおいては素晴らしいものをもっていたが、検索と照会におい ては、ぱっとしない。さらに特定のグラフィックまたはインターフェース の機能(色、ドラッグ & ドロップ、本格的なスクロールバーなど)はしっ くりくるように実現できなかったり、サードパーティのエクステンション を必要としたり、はたまた単刀直入に不可能であったりといった具合だ。 また大きなプロジェクトは作成や保守が面倒なものになりかねない。しか し、それにも増して重要な事は、スタックが HyperCard 自身の内部で動作 するので、ディスクと RAM への要求は大きく、動作スピードは時として満 足できるレベルに達していない。とにかく書かれたアプリケーションはちゃ んとコンパイルされたスタンドアロンのアプリケーションではないのだ。

たとえ Mac のプログラミング雑誌を編集してる合間に、ちょっといかした ツールを触って遊んでいても(例えば Prograph のような。 TidBITS-312 の“Prograph を使ってみよう”を参照)、私は魔法の弾もアマチュア(あ る程度の知性を備えているが、Toolbox や Inside Macintosh にじっくり 取り組むほどの事までやりたいとは思わない)が 真のマッキントシュのア プリケーションを、しかも HyperCard のように便利に実現できるような環 境に出会う事はなかった。Virginia がサンタクロースを疑っていたよう に、筆者もそのような物が一体全体存在するものなのだろうか思いやって いたのである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01160>

REAL の世界 -- 1997年に、CrossBasic と呼ばれる製品が波紋をたては じめた。CrossBasic はたった一人の作者、Andrew Barry 氏により、いく 年にもわたり時間を割いて開発されたものだ(そのあいだ同氏は、Prince of Destruction というゲームや Spotlight というデバックツールを書い ていた)。1997 年 7 月に CrossBasic は FYI Software 社 に拾われた が、その名が商標として登録済みであることがわかったため、新しい名前 の製品と新しい名前の会社が生まれた。REALbasic と REAL Software であ る。

<http://www.realbasic.com/>
<http://www.wr.com.au/mars/mars/pod_home_page.html>
<http://www.onyx-tech.com/spotlight.html>

REALbasic のインストールでは心地よい衝撃を覚えた。REALbasic は 3.1 MB 程度のハードディスクを占めるのみなのだ。起動すると、典型的なイン ターフェースのコンストラクションキット、すなわち空白のウインドウに ドラッグ & ドロップで配置可能なコントロールのパレット(テキストの フィールド、プッシュボタン、ラジオボタン、チェックボックスなど)が 現れる。別のウインドウをつくる事もできる。ウインドウ内のコントロー ルが選択されると、windoid はその継承されたプロパティ(ウインドウの 位置や色など)を変更する事ができる。メニューやメニューのアイテムな ども同じく直感的な視覚的方法で追加できる。

この時点ですでに、自分のアプリケーションをスタンドアロンのアプリケー ションとして“ビルド”できるのである。もっとも、REALbasic の開発環 境でテストする事であろうが。(ちなみにこの環境は、部分的でダイナミッ クである、つまり一般的にはアプリケーションを実行しているか、修正し ているかのどちらかであるが、なんと実行中のアプリケーションを修正で きるのである)作成したウインドウが表示されるが、これはドラッグやサ イズ変更それに閉じるといった一般的な操作が実現されているし、作成し たメニューも画面の上部にちゃんと現れるのである。ウインドウにテキス トのフィールドが配置されている場合は、そこでテキストの修正ができる し、カット、コピー、ペースト、さらに終了といったメニューがちゃんと 動作するのである。しかし通常は配置されたメニューやウインドウコント ロールは実際には何もしない。それらにはまだ何もコードが書かれていな いからだ。

これは、配置されたウインドウをダブルクリックすると現れる Code Browser を利用する。Code Browser の左下の隅のにはメニューのアイテム と自動的に受け取るシステムレベルのイベントが一覧され、リストの選択 により、Browserのメインペーン内でコードが修正できるのである。コード は簡単に習得できる BASIC の類の言語で行う。

REAL Object* -- デモンストレーションの目的で、REALbasic を学ぶ間 に書いた三つのシンプルなアプリケーションをポストしておいた。

<http://www.jetlink.net/~mattn/downloads/TinyText.hqx>
<http://www.jetlink.net/~mattn/downloads/whack.hqx>
<http://www.jetlink.net/~mattn/downloads/Odummo.hqx>

これらのアプリケーションは驚くほど小さいし(Odummo を除く、これは ファットバイナリであるため)、驚くほどサクサク動作し、驚くほど説得 力がある。TinyText は 32K より大きなスタイル付のテキストの修正が可能 し、Whack のアニメーションはスムーズであるし、Odummo は ちょっとし たゲームを実行し、驚くほど病みつきになる。

しかし本当に強調した事は、これらのプログラムが驚くほど簡単に書ける といえる事だ。TinyText には 1 週間程度費やしたが、それはドキュメン テーションを読みながら進めたためである。Whack はグラフィックスの動 作を学びながら進めたので数日費やしたが、できあがったコードは究極の 80 行だけであった。Odummo は食べる時間、寝る時間、そしていつもの生 活を営みながらも、24 時間以内に完成した。

これは REALbasic のクラスをベースとしたオブジェクトモデルのおかげで ある。ウインドウ、ボタン、グラフィックのすべてのオブジェクトがいく つかのクラスを代表している。どのオブジェクトも他のオブジェクトにメッ セージを送る事ができるのだ。それぞれのオブジェクトが内部の変数を扱 うのと同じように、クラスやオブジェクト内で、メッセージに対する応答 を定義するのである。さらにあるクラスをサブクラス化して特有な動作を するようにもできる。このようにして、メッセージングとカプセル化によ るオブジェクト指向原理は、コードの整理と思考を助長するのだ。

Whackは本当に少ないコードを必要とするだけである。これはほとんどの コードはすでにクラスの中に存在するからである。ウインドウは常に8匹 のモグラが現れたり消えたりしているが、それらすべてはたった 一つの モグラクラスで実現されており、それらは、たった 一つの スレッドク ラスを具現化する事によって実現されているされている。同様に、アタリ、 ハズレ、経過時間は三つの集計フィールドによって制御されている。この ように、動作が全く同じである為に、集計フィールドのクラスはたった 一つ だけ作成すればよかったのである。

当初もっと難しいのではないかと考えていたが、Odummo の方がむしろ簡単 だった。ボードには 64 個のマス目があったが、これを記述するのに複雑 な 2 次元配列の面倒を見なければならないんじゃないかって? ぜんぜん! マス目の一つ一つはそれぞれたった 一つの クラスのオブジェクトであ り、またウインドウそれ自身が配列なので ある から、わずか 一つ のマス目に対して何をすればよいか教えてやるだけで十分なのだ。マス目 には、コマが置かれているかどうか、何色であるか、またコマをどう描け ばよいかがわかっているので、ゲームのすべては、ユーザーがクリックし たときのマス目の応答と他のマス目への適切なメッセージの送信という問 題に過ぎないのだ。

プログラマーの辛苦の日々に興味津津な読者がいるかと思い、私は Odummo の開発過程を日記に記していた。

REAL の能力 -- REALbasic のさまざまな能力を挙げ連ねるのは非常に困 難な作業だ。フローティングウインドウやどんなアプリケーションよりも 常に最前面に来るものを含み、ウインドウはあらゆる標準のタイプとなり 得る。ウインドウには、プッシュボタン、チェックボックス、ラジオボタ ンを置くことができ、(TinyText のように)スタイル付きテキストの編集 可能フィールド、クリック可能なグラフィック領域であるキャンバス (Whack のモグラはキャンバスである)、スライダとスクロールバー、リ ストボックス、ポップアップメニュー、タブ付きパネルを含めることがで きる。

REALbasic では、ファイルのデータやリソースの読み書きができ、クリッ プボードへのアクセス、ドラッグ & ドロップへの対応が可能である。 QuickTime ムービーの再生、MIDI ノートの演奏、コンテクストメニューの 表示、パルーンヘルプの表示、プログレスバー、“スプライト”のアニメー ション、スレッドの生成が可能である。シリアルポートを使った操作、 TCP/IP 経由の通信、Apple イベントの送受信もできる。

REALbasic の機能は、さまざまな形式でプリコンパイルされたコードを通 じて、さらに拡張可能となる。例えば、コンパイルした AppleScript、 XCMD や XFCN、共有ライブラリ、デベロッパーキットが供給されている C++ 用プラグイン(新しいウインドウコントロールタイプも定義できる)など だ。

REAL Software 社の FTP サイト、同社の Hotline サイト (cafe.realbasic.com)、プログラム CD、そしてユーザーたちのサイトに ある、さまざまなユーザーによって REALbasic で作られたアプリケーショ ンの幅広さは、このプログラムのパワーの驚くべき証しである。バッチ処 理ファイルタイパー、Tetris ライクなゲーム、磁気コア計算プログラム、 日の出時刻計算プログラム、スペルクイズ、アドレス帳、ランダムな“アー ト”生成プログラム、chat サーバ、メールクライアントに至るまであるのだ。

私のお気に入りの REALbasic サクセスストーリーは、7 月の Macworld Expo のものだ。REALbasic のチームはバッジの“読み取り機”をレンタル していて、ブースを訪れたお客の名前と住所をコンピュータに記録できる はずだったのだが、提供されたソフトウエアがきちんと動作しなかった。 でも、読み取り機がシリアル機器だったことから、彼らは REALbasic を 使って自前のソフトウエアを書き上げ、さらにはクレジットカードも読み 取れるようモディファイしてみせたのだ!

REAL を入手 -- REALbasic を称賛し尽くすことは難しい。値段が手頃で あること。小さなサイズで、迅速に動作し、簡単に覚えられ、簡単に使え ること。言語と開発環境が、明らかにユーザーの要求や心理的プロセスへ の深く配慮の行き届いた洞察から生まれているので、快適なインターフェー スを通し、手早く思い付くままに正しく振舞うアプリケーションを開発さ せてくれること。

ドキュメンテーションは Acrobat PDF ファイルで構成されている。チュー トリアル、14 章からなる Developer's Guide、そしてオンラインヘルプで も再録されている言語リファレンスだ。ドキュメンテーションは良好だが 素晴らしいとまでは言えない。執筆時点では、チュートリアルには重大な 誤りがあって、説明される機能が実際にはなかったり、実際にある機能が 説明されていなかったりする。また、ほとんど全部といってよい程の文に、 不注意な文法誤り、文字の脱落、スペルミスが見受けられるからだ。

このプログラムには、多くの点で否定しがたい質の未完成さがある。例え ば、ウインドウが Window メニューにリストされず、ウインドウの位置や 状態を憶えていてくれないこと。デバッガが原始的であること。コードブ ラウザがたくさんの行をうまく扱えないことだ。問題点はでき上がったア プリケーションにもある。印刷サポートが雑であること。特定のシステム レベルのイベントを適切に発生させられないこと。アプリケーションがビ ルド時と REALbasic 内で実行させた時とでたまに異なる動作をすること だ。REALbasic のメーリングリストは、言うまでもなくいつも大賑わいだ。

それでもなお、そのメーリングリストは熱心なユーザーたちのコミュニティ を創り出してきていて、REALbasic の成熟に貢献してきている。Andrew Barry 氏と仲間たちは、定期的に顔を出していて、彼らが、一致団結し、 主義はあっても心が広く、よく答え、愛想が良く、プログラムの欠点を知 り、ユーザーの要求や助言を熱心に聞くことを示している。そればかりで なく、彼らは、バグフィックス、新機能の実装、新しいアップデートやデ ベロッパーリリースを迅速に行うのだ。このプログラムは、基本的に堅実 であって、驚く程思慮深く類稀な感触に溢れている。考えるに、今が市販 リリースにふさわしい時期なのだと思う。未解決の問題を解決しないまま 新規路線でごたついてしまうことなく、REAL Software 社が今のペースと 姿勢を守り続けられれば、すぐにこれを採用した人でもサポートの充実を 感ずることだろう。

30 日間の無料デモが 2.2 MB のダウンロードで入手できる。REALbasic は 100 ドル(アカデミックなら 60 ドル)で販売されている。Java アプレッ トがコンパイルできるアップデートは 1999 年 1 月頃となるとみられ、ま た、ついに Windows プログラムがコンパイルできる“拡張”バージョンが およそ 300 ドルで手に入ることになりそうだ。このバージョンにはデータ ベースおよび SQL 機能が盛り込まれることになるだろう。


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