TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#452/26-Oct-98

今週も Mac OS 8.5 に焦点を当て、Geoff Duncan が Open Transport ネッ トワーキング、AppleScript、オンラインヘルプシステム、Navigation Services などの重要な変更や追加機能を検証する。サーバに Mac を使っ ている者にとって我々がお送りする tips は興味深い記事になるはず。 MacsBug を使ってクラッシュしたサーバを自動的に再起動させる方法をお 届けする。今週のニュースは Netscape Communicator 4.5 のリリースとイ ンターネットの指導者 Jon Postel 氏の死去についてだ。

目次:

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MailBITS/26-Oct-98

(翻訳:秋山 晃子 <nobineko@club.udn.ne.jp>)

多機能な Communicator 4.5 は PowerPC 専用 -- 先週 Netscape Communications 社がインターネットソフトウェアの総合セットでメジャー アップデートとなる Netscape Communicator 4.5 をリリースした。 Communicator 4.5 はメールやコンタクト管理(テンプレートベースのメー ルやアドレスアシスタントを含む)に多くの改良が施され機能が高められ ている。また Communicator 4.5 では Netscape 社のサーバと連動させて、 ユーザーがカスタムホームページを作ったり Web 情報をフィルタにかける こともできる。

<http://home.netscape.com/communicator/v4.5/>

Communicator 4.5 の Web ブラウザは Netscape 社が最近導入した機能、 Smart Browsing を取り入れている。この機能は“複雑で覚えにくい”URL をタイプする手間を省く。Smart Browsing がアクティブな状態で(デフォ ルトでアクティブに設定されている)Internet Keywords 機能を使えば、 タイプしたアドレスがそれぞれ Netscape 社のキーワードサーバに送られ る(プライバシーの保護が心配ならこの機能を使用中止にしておく)。た とえば Address 欄に“powerbook”とタイプすれば Apple のホームページ (PowerBook のページではない)へ行くことができる( PowerBook のペー ジへ行くには“www.powerbook.com”とタイプする)。一致するキーワード が無い場合のために Netscape は、当然大きな広告付きだが、ヒントを掲 載したページを提供している。また Smart Browsing には What's Related ボタンが付いていて、ユーザーが見ているサイトに関連したサイト情報を 提供する。Communicator 4.5 は Netscape AOL Instant Messenger(指定 しなくても含まれる)、Shockwave Flash プラグイン、RealNetworks 社の RealPlayer クライアント、Communicator の Messenger と Composer モ ジュールエンハンスメントなどを含む。Communicator のフルインストーラ は PowerPC ベースの Mac だけに提供され、ダウンロードは 13.9 MB であ る(標準版と暗号化機能強化版がある)。Communicator のスタンドアロー ン Web ブラウザの Netscape Navigator はバージョン 4.07 のままだ。 [JLC]

<http://home.netscape.com/download/>
<http://home.netscape.com/communicator/navigator/v4.0/>

Internet の指導者 Jon Postel 氏逝去 -- Jon Postel 氏はネットワー キングの先駆者であり、自ら求めて得たのではなかったがインターネット に巨大な影響力を持っていた。98 年 10 月 16 日心臓弁膜の手術中に逝去 した。享年 55 歳。Postel 氏は国防総省の ARPAnet プロジェクトのもと で最初のインターネットプロトコルを作り出したグループの一員で、イン ターネットとの関わりは亡くなるまで続いた。最近の Postel 氏はさまざ まな仕事をこなしながら、ドメインネームを番号化するプロセスを管理す るための組織、Internet Assigned Numbers Authority(IANA)のトップを 務めていた。IANA ではリーダーシップを発揮し、Postel 氏は最後の数ヶ 月の間にドメインネーム登録のプロセスを変更するため、一連の継続的な 計画案を作った。最も新しい草案は今月上旬に発表された。

<http://www.iana.org/>

プラトンが説いた哲人王は、統治者である哲人王が力を求めないがために 却って権威を与えられるのであるが、Postel 氏もまた出来事の中心にいた いと願ったことは一度も無かった。しかし重要不可欠な仕事に臨むとき躊 躇はなかった。彼は政治的理由は後回しにし技術的問題を優先に取り組み、 障害になったり発展を利用するよりもむしろ変化を促進させることで有名 だった。Postel 氏はインターネットが成長し商業化へ向かう動きや、新し い基準や手続きの開発を促進した中心人物でもあった。彼の公平な判断は 広く知られ尊敬を集めていた。特にソフトウェアおよびハードウェア開発 者による一般的規格のための技術仕様を定義している基本ドキュメントで ある RFC の公正な管理は有名だった。Postel 氏の死は将来のドメインネー ム開発と登録についての議論をより広範に激化させることになるかも知れ ない。 [GF]

<http://www.tbtf.com/archive/10-19-98.html#s01>


MacsBug、パワーユーザーのために:第 3 部

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)

このシリーズの第一部と第二部では、Apple 社が無償配付しているローレ ベルデバッガ、MacsBug の世界を探求した。最初は MacsBug のインストー ルとアプリケーションのクラッシュから回復する方法について述べるとと もに、MacsBug が Macintosh の世界で最もとっつきにくいソフトウェアで あると位置付けた。続いて Macintosh やアプリケーションがどのようにメ モリを使用しているかを垣間見るためによく使われるコマンドについて述 べ、遭遇した問題を記録する方法にも触れた。MacsBug に向かうには少々 勇気が必要だが、プログラミングで生計を立てている人以外にも役には立 つのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1057>

MacsBug の動作に慣れたところで、サーバがクラッシュした際に自動的に再 起動させるという応用例を紹介しよう。

貧乏人のサーバ再起動法 -- 第二部で紹介した StdLog コマンドが多数 の MacsBug コマンドからの出力を合わせたものだということにお気づきだ ろうか。これは StdLog が実は MacsBug マクロ、つまりセミコロンで区切 られたコマンドを並べたものだからだ。マクロがどんなコマンドから構成 されているかを知るには help コマンドを使う。“help stdlog”と入力す れば StdLog マクロの中身を見ることができる。

通常、プログラマー以外はマクロを定義する必要はない。しかし、MacsBug は FirstTime と EveryTime の 2 つのマクロ名を予約語としている。この 2 つのマクロはサーバを無人運転する際に重宝する。FirstTime マクロが 存在している場合、このマクロは MacsBug がシステム起動時にロードした 時に実行される。EveryTime はユーザーによって、またはシステムエラー の結果として MacsBug が呼び出された際に実行される。以下はこの 2 つ のマクロの一般的な使用法だ。

シンプルな再起動: FirstTime: G EveryTime: RS

もう少し賢い再起動: FirstTime: DX OFF;G EveryTime: STDLOG;RS

最初の例は、MacsBug がシステム起動時に呼び出された際に単に起動を続 行するように伝えており、システムエラーの際にはマシンを再起動するよ うにしているのだ。2 つ目の例も同様だが、FirstTime マクロでユーザー ブレイクをオフにし(第二部で紹介した DX コマンドを参照)、システム エラーの際にはログを取ってからマシンを再起動するようにしている。こ うすればマシンが問題に遭遇しているということが一応記録に残るからだ。 コマンドがセミコロンで区切られていることに注目していただきたい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05130>

上記のマクロで RS コマンドの代わりに RB を使っても良い。FirstTime マクロの最後に G コマンドを持ってくることを忘れないように。そうしな いと Mac が起動を続けられなくなるからだ。また、EveryTime マクロの最 後に G コマンドを持ってくると MacsBug に入ることが永遠にできなくなる。

FirstTime と EveryTime を有効にするには、恒久的なマクロとして登録し なければならない。このためには、Apple 社製の ResEdit などのリソース エディタを使ってマクロを定義し、ファイルに保存する。

<ftp://ftp.info.apple.com/Apple_Support_Area/Apple_SW_Updates/US/ Macintosh/Utilities/ResEdit_2.1.3.sea.bin>

ここで ResEdit の使用法について詳しく述べることはできないが、こう いったマクロの作成法を紹介しておこう。

パワーユーザーの仲間入り -- MacsBug が万人向けだとは言わないが、 MacsBug がプログラマーという妙な人種だけのものではないことがおわか りいただけただろう。MacsBug の基礎知識を持っていれば、今後遭遇する Macintosh アプリケーションの問題の理解と、トラブルシューティングに 役立つことは間違いないし、そのことによってあなたの Mac がより安定し て生産性の向上に寄与するだろう。これは誰もが望んでいることなのだか ら。


Mac OS 8.5 の機能検証

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

先週号の TidBITS-451 では、Mac OS 8.5 の第一報として、システムの必 要条件やインストールのこと、Sherlock、アピアランス、テーマ、新 Finder などの目立った機能をお送りした。今週は、インターネットやネッ トワークに関る変更点、新しい HTML ベースのオンラインヘルプや Navigation Services などのお話ししよう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05142>

インターネットとネットワーク -- Mac OS 8.5 でのネットワーク周りの 変更はインターネットユーザー、中でもモデムを使って接続している人に とって最も目に付く部分であろう。

まず、Open Transport/PPP がなくなった。Mac OS 8.5 からは、PPP コン トロールパネルではなく、Apple Remote Access 3.1 にある PPP 機能を利 用するようになる。つまりダイアルアップ接続のためのお馴染みの選択項 目がリモートアクセスコントロールパネルにすべて組み込まれているのだ。 PPP 接続もリモートアクセスの一種だとするのは拡大解釈の範疇内だろう が、古くからの Macintosh ユーザーにとってリモートアクセスはモデムを 経由した AppleTalk ネットワークへのアクセスのみを指していた。今まで リモートアクセスを必要としなかった人は、Mac OS 8.5 をカスタムインス トールする際にリモートアクセスを外してしまうかもしれない。すると PPP 機能のない Mac OS 8.5 がインストールされることになる。モデムを使っ てインターネットにアクセスする方は、Mac OS 8.5 ではリモートアクセス をちゃんとインストールするように。

リモートアクセスコントロールパネル内にあるダイアルアップの設定を終 えたら、リモートアクセスコントロールパネルまたは、Apple メニューに インストールされるリモートアクセス状況アプリケーションからインター ネットに接続できるようになる。どちらのインターフェースも接続状況を 表示してくれるようになっている。Open Transport/PPP を使わずに FreePPP を利用している方は、Mac OS 8.5 でも FreePPP ちゃんと動いて くれるのは嬉しい話だろう。

<http://www.rockstar.com/ppp.shtml>

インターネットコントロールパネルも Mac OS 8.5 で初お目見えしたもの である。これは、インターネット関連の各種設定を一まとめにしたもので、 メールサーバ、メールアドレス、拡張子マッピングなどの情報とともにメー ルや Usenet ニュース、Web ブラウザ用デフォルトアプリケーションの指 定などの設定を行う。これでは Internet Config と同じではないかと思う かもしれないが、それもそのはずで、目には見えなくなっているが Internet Config が入っているのだ。Apple は Mac OS 8.0 に Peter Lewis 氏と Quinn 氏のパブリックドメインである Internet Config 1.3 こっそ りと付属して、インターネット関連機能がまとまるようにしていた。Mac OS 8.5 では独自のインターフェースでインターネットコントロールパネル から Internet Config 2.0 の設定を行えるようになっているほか、複数の 初期設定のセットを作りそれぞれに切り替えるというような Internet Config の機能にもアクセスできるようになった。(初期設定の切替えは移 動のあるラップトップや、複数のユーザで共有しているマシンで重宝す る。)Internet Config とインターネットコントロールパネルは共通の初 期設定利用するのでどちらから変更を行っても良いが、Internet Config は 2.0 以降を用いなければならない。

<http://www.stairways.com/ic/>

マシンをいろいろな組み合わせで利用している人にとっては、(デフォル トでインストールされるようなった)作業環境マネージャが一回の操作で グループのセットの変更をできるようになったことは嬉しいであろう。こ れでインターネット、リモートアクセス、TCP/IP、AppleTalk、プリンタの 類から、機能拡張マネージャになっているもの、タイムゾーンなどを組み 合わせておけるのだ。PC Exchange と Macintosh Easy Open を統合して新 しくできた File Exchange コントロールパネルに Internet Config の拡 張子マッピングが表示されるようになった(また変更も行える)ことに気 がついた方もいるだろう。

Mac OS 8.5 には Open Transport 2.0 が同梱されている。これは目立たな いが Mac OS の主要なネットワークテクノロジーの大幅アップグレードで ある。TCP/IP や AppleTalk のコントロールパネルの変化にはあまり気が 付かないが、Open Transport は Dynamic Host Configuration Protocol (DHCP)のサポートや Windows NT ベースのサーバとの互換性が向上され ている。Open Transport 2.0 からは Simple Network Management Protocol (SNMP)もサポートするようになった。この SNMP はそのシンプルという 名前とは裏腹に、洗練されたネットワークマネージメントツールである。 ネットワークで繋がっているサイトによってはシステムに SNMP をインス トールするようユーザーに要求するところもあるかもしれない。SNMP は (Mac OS 8.5 のインターネットソフトではないが)パッケージに同梱され ている。もっとも典型的なホームユーザーやビジネスユーザーにとっては インストールする必要のないものだ。また、SNMP はマシンに関するハード や構成の情報を SNMP 管理ツールを持っているリモートユーザーに報告で きるようになっており、セキュリティ上の問題が発生する可能性がある。 (Apple はこの管理ツールを Mac OS 8.5 の CD-ROM に入れてあるのだ。) SNMP をインストールしたものの要らないということになれば、Mac OS 8.5 インストーラーのカスタム削除の機能を使って消去することができる。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58128>

Open Transport 2.0 の最大の売りは、ネットワークパフォーマンスの向上 だ。Apple は Mac OS 8.5 のネットワーキングが Windows NT よりも高速 だと力説している。もっとも、これはMac OS 8.5 を搭載した 2 台の Mac を高速な 100Base-T Ethernet で接続した場合に限られており、Open Transport 2.0 をもってしてもモデムのパフォーマンス向上は期待できな い。モデムそのものがネックとなっているからだ。とはいえ、Mac OS 8.5 が現実世界にありそうなネットワーク環境、たとえば各種の Mac OS を搭 載している Mac たちで構成された 10Base-T ネットワークでも、ネット ワークパフォーマンスの向上が見られたことは嬉しい誤算だった。Mac OS 8.5 を使っていると、リモートマシンで走っている Mac OS のバージョン にかかわらず、Finder でのファイルのコピーや共有されている FileMaker データベースの応答が高速に感じられ、AppleTalk サーバやプリンタなど のデバイスの動作がスムーズに感じられた。インターネットアプリケーショ ンも若干きびきびと動作するようになり、バックグラウンドでの動作(ダ ウンロードなど)がフォアグラウンドのアプリケーションの動作を邪魔す ることもなくなった。

残念ながら、セレクタは依然として不細工なままだ。だが Mac OS 8.5 は 新たに AppleTalk ゾーンやサーバを階層的に表示し、サーバやリモート AppleShare サーバに TCP/IP 経由で接続させてくれるネットワークブラウ ザアプリケーションを搭載している。ネットワークブラウザは Windows の Network Neighborhood に酷似しており、Navigation Services(後述)を 使ってその機能の大部分を実現している。Navigation Services は 「開く /保存する」ダイアログでもこういった機能の多くを提供している。とは いえ、ネットワークブラウザは日々大規模な AppleTalk ネットワークを利 用する人には歓迎されるだろう。

よく使う項目、エイリアス、Navigation Services -- Mac OS 8.5 をイ ンストールした後、Apple メニューに“よく使う項目”フォルダができて おり、ファイルメニューや色々なコンテクストメニューに“よく使う項目 に追加”コマンドが加わっていることに気が付くかもしれない。その名の 通り、メニューコマンドを使って“よく使う項目”フォルダ内に選択した 項目のエイリアスを作成することができる。先週も指摘したが、“よく使 う項目”は Finder にブックマーク機能を追加する試みのように見えるが、 実は“よく使う項目”は Mac OS 8.5 であのおぞましい「開く/保存する」 ダイアログに代わる Navigation Services と連携するものなのだ。

Navigation Services を利用するには、アプリケーションの書き換えが必 要だ。実は Mac OS 8.5 の一部として出荷されるプログラム、たとえば SimpleText や MoviePlayer もまだ Navigation Services をサポートして いない。それでも Anarchie Pro など一部のサードパーティー製アプリケー ションはすでに Navigation Services をサポートしている。ともあれ、も う一つの Finder の新機能、壊れたエイリアスの修復で Navigation Services を垣間見ることはできる。

すでにオリジナルのファイルを見つけることができなくなっている壊れた エイリアスを持っているなら別だが、まずは壊れたエイリアスを作らなけ ればならない。最初に小さなファイル(ReadMe ファイルやテキストクリッ ピングなど)の複製を作り、そのエイリアスを作る。複製のファイルをご み箱に捨て、ごみ箱を空にして削除する。次に作ったばかりのエイリアス を選択し、Finder のファイルメニューから“オリジナルを表示”を選択す る。Mac OS 8.5 では、単にエイリアスのオリジナルが見つからないという ダイアログを表示する代わりに、エイリアスを削除するか修復するかを選 択できるダイアログが表示される。修復を選ぶと、オリジナルを探すか、 新しいアイテムを選択することのできる新たなダイアログが表示される。

このダイアログは Mac OS 8.5 の Navigation Services の一部だ。リスト のフォルダの中身を表示したり隠したりすることができることや、ダイア ログがリサイズ可能で、ダイアログが開いている間に他のアプリケーショ ンに切り替えることができる(ただし Finder では不可能)ことにお気付 きだろうか。また、右上には最近使用したアイテム、ディスク、ネットワー クボリュームのメニューがあり、ここから AppleTalk ネットワークをブラ ウズすることもできるうえ、よく使う項目をメニューから選択することも できる(なるほど!)。Navigation Services のダイアログはムービー、ピ クチャ、テキストなどのプレビューを表示することもでき、Finder や Mac OS 8.5 の新しい検索機能である Sherlock からアイテムをドラッグ & ド ロップすることも可能だ。

Navigation Services はまだあまり普及していないが、私はアプリケーショ ンがサポートしてくれることを期待している。過去 10 年間、私は標準の 「開く/保存する」ダイアログを拡張するユーティリティはほとんどすべ て使ってきた。こういったユーティリティは便利だし、Navigation Services が提供していない機能を持っているものも多いのだが、互換性の 問題や頻繁なアップデートは常に頭痛の元だった。Navigation Services がもたらしてくれる標準化と機能の拡張は、長期的には Mac ユーザーに とって大きなプラスとなるだろう。

AppleScript がネイティブに -- Mac で作業を自動化したり、アプリケー ション内部やアプリケーション間で特別な機能を実現させたい人々は、何 年もの間ずっと AppleScript の PowerPC ネイティブバージョンを望んで きた。出版業界や Macintosh システム管理者とパワーユーザーの間では広 く使われているにも関らず、AppleScript は、ハイエンドなシステムにお いてさえ、いつも貧弱なパフォーマンスの汚名をきせられてきた。

<http://applescript.apple.com/>

AppleScript 1.3 で、Apple は遂に重大なパフォーマンス上のボトルネッ クを解消し、この組込みスクリプト環境の PowerPC ネイティブバージョン を作り上げた。そして、率直に言って、その違いは昼と夜の差ほどある。 Apple は AppleScript 操作が AppleScript 1.3 で従来のバージョンより 5 倍速くなったと公言している。私が試した結果はそれ程ドラマチックで はなかったものの、日常使用している AppleScript スクリプトで、Mac OS 8.5 では Mac OS 8.1 のときより概して 2 倍から 3 倍くらい速くなった。 Apple はまた、AppleScript に要望の強かった新しい機能を加えている。 すなわち、アラートダイアログは一定時間の無応答でタイムアウトするよ うになり、さらに、スクリプトはクリップボードへのアクセス、テキスト の要約、ユーザーによるリストからの項目選択が可能になり、多くの新し い装置やデータタイプ(Unicode テキストを含む)を理解するようになっ た。加えて、Apple は Finder やその他のシステム・コンポーネント用ス クリプティング辞書を明快にするため広範囲に渡る再編を行った(このこ とはスクリプトによっては Mac OS 8.5 で動作するよう更新しなければな らないということなのだが)。Mac OS 8.5 ではまた、アピアランス、作業 環境マネージャ、File Exchange、インターネット、アップルメニューオプ ションの各コントロールパネルなど、いくつかのスクリプト可能な新しい アイテムが増えた。どうってことないかも知れないが、画像に ColorSync 特性を埋め込むために AppleScript を使うことだってできる。

この拡張された AppleScript の機能が歓迎されるのと同様、フォルダアク ションはおそらく最も巧妙な新しい AppleScript の能力であろう。フォル ダアクションは、ユーザーが AppleScript スクリプトを特定のフォルダに 適用するのを可能にし、フォルダウインドウの開閉やアイテムの追加削除 などそのフォルダに作用するイベントに応答できるようにする。この機能 の可能性は幅広い。私はフォルダアクションを使って、メール添付書類フォ ルダのがらくたを片付けたり、Web サーバのログ記録を自動的に作成する ようにした。別のスクリプト愛好者は、テキストクリッピングを特定のフォ ルダにドロップすることを自家製リマインダーやシステムのスケジュール 操作に利用しているし、また、Gordon Meyer 氏は、彼の父親の iMac 上に フォルダアクションを用いて特別に設定したフォルダがスクリーンの最下 部を横切るポップアップウインドウとして常駐するようにしたと TidBITS Talk で教えてくれた。とうとうスクリプトがシステムに完全にアクセス可 能となったこともあって、フォルダアクションには 2 〜 3 のセキュリティ 上の懸念があることから、フォルダアクションはローカルハードディスク のみからしか実行できないようになっている(サーバ上のボリュームやリ ムーバブルディスク上からは実行できない)。また、メール経由でフォル ダアクションを送る術はない。いずれにせよ、フォルダアクション・スク リプトを使うに当たっては、自分で作成したものか信頼できる入手元から 手に入れたものだけにするよう留意すべきである。

Mac OS 8.5 ではフォルダアクションをコンテクストメニュー(フォルダの Control + クリック)経由からしか設定できない。もしこれが問題となる なら、Bill Cheeseman 氏のシェアウェア Folder Action Setup はいかが だろう。インターフェースはひどく過剰気味だが、時間をかけてフォルダ アクションを設定していけば使いでがあることにきっと気付くはずだ。

<http://oasis.bellevue.k12.wa.us/cheeseb/downloads/ FolderActionSetup.html>

オンラインヘルプ -- Mac OS 8.5 はまた、新しい HTML ベースのオンラ インヘルプという手軽さを備えている。限定された表示能力しかない軽量 級で特殊な Web クライアントである Sherlock とは異なり、ヘルプビュー ア・アプリケーションは、Web 能力を持たないが程よく機能を満載した HTML エンジンである。

Macintosh のデベロッパーたちは何年もの間 HTML ベースのオンラインヘ ルプを口喧しく求めてきた。Apple Guide は、操作の手順を順番に教える にはいいものだが、詳細な説明やレファレンスには使い物にならない。さ らに、Apple Guide 用の素材を作るには専用のツールや知識が必要で、そ れらは Web サイト用にも製品の Windows バージョン用にも、どこにも応 用できないのだ。テクニカルライターやソフトウェア出版者たちのほとん どは、今日 HTML をもはや当たり前のものとしており、HTML 作成には標準 的なサードパーティー製ツールが使えるので、HTML ベースのドキュメント は簡単に転用できるのだ。(GoLive CyberStudio が Apple のヘルプライ ターたちのお気に入りであるらしい。)

Apple はこの機会を逃さず実行した。Mac OS の拡張性の高いオンラインヘ ルプ(上級ユーザー向けの驚くほど有用な Tips や情報を完備)のみなら ず、ヘルプビューアに AppleScript を通じてシステムとやりとりする能力 を加えたのだ。これにより、HTML ベースのオンラインヘルプは、セレクタ を開いたり、Web ページに接続したり、アプリケーションを起動したり、 アプリケーション切替の設定を変更したりできる。さらに、リモートサー バ上の Web ページにスクリプトへのリンクを埋め込むこともできるので、 技術サポートページは、その製品自体に組み込んだ AppleScript を通じ て、製品を起動してユーザー用に設定を修正することもできるはずだ。ス クリプトを実行するこの能力は、インターネットコントロールパネルで制 御する。ヘルパーアプリケーションにある詳細設定を見ると“help:”URL スキームを扱うようヘルプビューアが設定されていることに気付くだろう。 (それを変更するには及ばない。ヘルプビューアが設定を元に戻す。)こ の仕様は、誰かがあなたの Mac に悪意あるスクリプトもしくは不幸を喜ぶ ようなスクリプトをインストールして、それを Web ページから起動させる ような可能性を孕んでいるが、ただ、率直に言って、そのリスクは誰かが ソフトウェア製品に悪意あるスクリプトを同梱するのとさほどの差はない のだ。

(ついでに言うと、Mac OS 8.5 で AppleScript を使う良い参考例は、ヘ ルプフォルダにある謎めいた名前の付いたスクリプトのいくつかを見るが 良い。)

ヘルプビューア同様になかなかのものであるけれども、ヘルプの構成はサ ブジェクト間を行き来するのが不便なものとなっていて、特に前へ進んだ り元に戻ったりするためのキー操作がなく、したがってナビゲーションの ほとんどすべてをクリックにより行わなければならない。精通したユーザー ならこうしたナビゲーション上の困難をヘルプビューアの検索機能を活用 することで避けられるだろう。検索機能は関連性の高い順に結果を返して くる。私の経験では、もし探し求めているものが何かがわかっているのな ら、ブラウズしていくより適切な検索問い合わせの方がベターである。

忘れてはならないもの -- Mac OS 8.5 には数十にも及ぶ新しい機能が盛 り込まれているが、この連載記事ではほんの一握りのものを紹介したに過 ぎない。さて、そこで、忘れてはならない Mac OS 8.5 の重要な他の項目 をいくつか掲げることにしよう。

<ftp://ftp.info.apple.com/Apple_Support_Area/Apple_SW_Updates/US/Macintosh/ Utilities/Apple_System_Profiler/ASP_2.1.2.smi.bin>

<http://www.tidbits.com/search/talk.html>


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