TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#455/16-Nov-98

ビデオ証言、首脳部の告発、法廷での論争。合衆国大統領にまた疑惑か? いや、今回法廷とマスコミで告発されているのは Bill Gates 氏と Microsoft 社だ。今週は独占禁止法違反を問うこの裁判について Matt Deatherage 氏が検証し、なぜ Mac ユーザーがこの裁判に注目すべきなの か説明する。そして CD 並の音質でインターネットから音楽を聴くための MP3 フォーマットについて検証し、Photoshop 5 と Font Reserve 2 のアッ プデートについてレポートする。

目次:

Copyright 1997 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/16-Nov-98

(翻訳:秋山 晃子 <nobineko@club.udn.ne.jp>)

Font Reserve 2.0 見事に成熟 -- DiamondSoft 社が、フォントを組み合 わせ、表示させ、活用するための素晴らしいユーティリティを更に大幅に 改良した。(“フォント管理最前線” TidBITS-400 を参照。)Font Reserve 2.0 のフォントデータベース構造は簡素化されている。普通のフォ ルダひとつに納められ、バックアップを取ったり、コピーしたり、このフォ ルダを複数持っておくこともできる。フォントはそれぞれのスーツケース ごとにリストしたりアクティブにしたりできる。多くのアプリケーション で、文書に使われているフォントを自動的にアクティブにしてくれる。ユー ザーが自由に組み合わせた書体見本を印刷したりレポートを作成したりで きる。設定の共有化が簡単になり、一時的に使用するフォントはエイリア スで追加することもできる(一度きりの仕事だが、特別なフォント組み合 わせが必要な場合に便利である)。私はまだ試してないが、AppleScript による完全自動化が可能。GX フォントのサポートが追加され、表示の問題 (Mac OS 8.5 と Kaleidoscope に対する)が解決されている。すぐれた新 マニュアル(PDF 書類)が付いている。Font Reserve 2.0 は 100 ドルだ が、登録ユーザーは 5.4 MB のアップグレードを無料でダウンロードでき る。OEM のユーザーは DiamondSoft 社に連絡すれば 70 ドルでアップグ レードできる。 [MAN]

<http://www.fontreserve.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04180>

Photoshop Update で文字と色の処理が改良される -- Adobe 社が最近リ リースした Photoshop 5.0.2 update は画像処理プログラムの文字処理と カラーマネジメントを改良する。文字ツール内の自動カーニング機能は字 詰めを正しい値で行い、新しいアンチエイリアス・アルゴリズムにより、 サイズの小さな文字がより読みやすく表示される。(文字とアンチエイリ アスの論証は“より良いタイポグラフィ接近中” TidBITS-403 を参照の こと。)また Photoshop 5.0.2 にカラーマネジメントを設定するための Color Management Wizard が加えられた。カラーマネジメント設定は、タ グなしの RGB ファイルを開くときに sRGB カラースペースに自動変換しな いよう設定されている。(Adobe 社はこれまでのバージョンと大きく異なっ た Photoshop 5 の新カラーエンジンについて技術ガイドを提供してい る。)このアップデートは無料で 3.9 MB のダウンロードだ。 [JLC]

<http://www.adobe.com/prodindex/photoshop/updat502.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04228>
<http://www.adobe.com/supportservice/custsupport/TECHGUIDE/PSHOP/CMS1/ cms_ps5.html>


MTV よ、後進 MP3 に道を譲る時だ

by Kevin Savetz <savetz@northcoast.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

私が MP3 音楽に手を出したきっかけは、オンラインではなくテレビだっ た。88 Lines about 44 Women をベースに作った短いのりのよい曲が特徴 の車のコマーシャルが一晩中繰り返し流れていた。その曲を通しで聴きた いと思い、インターネットが手掛りになってくれるのではと考えた。

それは MP3 をいじるということにも繋がった。MP3 というのは一部のイン ターネットの仲間内では結構知られている高音質のオーディオフォーマッ トだ。

DejaNews で検索してみたところ、私の探し物は The Nails というニュー ウェーブのバンドの曲だと判った。こういった情報を集めるのは簡単だっ た。しかし、曲そのものを見つけるのはまた別の話で、MP3 のファイルを 無料で(違法に)提供している海賊 Web サイトに入り込んでしまうという 腹立たしいことも待っていたりする。最終的には Nails の公式ホームペー ジにある合法のものを見つけた。80 年代のニューウェーブへの欲求はおさ まったが、その過程で MP3 に関することを相当学んだ。

<http://www.dejanews.com/>
<http://ourworld.compuserve.com/homepages/dakaufman/nails.html>

手順通りに -- MP3 は MPEG 1 layer 3 の略で、コンパクトディスクの 品質に近い再生が可能な音声格納用ファイルフォーマットで、音質は飛び 切りだ。私はさほど繊細な耳の持ち主でないので、ちゃんとエンコードさ れた MP3 ファイルの音質は CD 並に聞こえる。MP3 の曲をかけるのに必要 なものは、最低でも PowerPC Mac とプレイヤーソフトだ(必要条件の詳細 はプレイヤーによって異なる)。聴くためには MP3 ファイルが必要だが、 ダウンロードできるものもあるし、CD から自分で作ることもできる。

純粋なマシンパワー以外にも、MP3 ファイルは帯域幅とストレージスペー スが必要になる。MP3 ファイルは音声一分あたり一メガバイトになる。ポッ プス一曲がだいたい 3 〜 4 MB、Arlo Guthrie の長ったらしい Alice's Restaurant は 20 MB ほどになる。もっとも MP3 ファイルは AIFF やその 他高品質サウンドフォーマットの 10 パーセントほどの大きさになり、そ の小ささは驚くばかりだ。(静止画像用の JPEG 同様 MPEG は損失のある 圧縮方式で、エンコードの際に情報の一部が失われてしまうものの、大抵 の人には判らない程度のものだ。)MP3 ファイルをダウンロードする場合 は、高速の接続を用いるか、さもなくば辛抱強く待つ心積もりをすること だ。ファイルを自分で作るという場合でもディスクスペースが相当いるこ とを覚悟しておくように。

MPEG Archive に、MP3 についての詳しいことや関連のファイルフォーマッ トのことが出ている。このサイトには、ものすごくテクニカルな FAQ や 様々なプラットフォーム用のプレイヤーのダウンロード、その他情報がある。

<http://www.mpeg1.de/>

プレイヤーの入手 -- MP3 の曲を聴くには MP3 プレイヤーが要る。

Windows ユーザー用 MP3 プレイヤーは山と用意されているが、Mac ユー ザーには選択肢がほとんどない。有名なのは MacAmp と SoundApp だ。 MacAmp のインターフェースは CD プレイヤーの前面パネルのようにトラッ クタイマーがありイコライザーが点滅するようになっている。演奏リスト というものがあり、MP3 ファイルをそこにドラッグして演奏順をいじるこ とができるようになっている。

SoundApp のインターフェースはもっとシンプルだ。MP3 以外のサウンドも いろいろと再生できるのだが、演奏リストは基本的な機能しかない。この 二つ以外の Macintosh 用プレイヤーの一覧については MP3.com のアーカ イブの Mac ソフトのところを見るとよいだろう。

<http://www.macamp.com/>
<http://www-cs-students.stanford.edu/~franke/SoundApp/>
<http://www.mp3.com/software/mac/players.html>

MP3 をダウンロードする -- インターネットにある MP3 ファイルには合 法なものと非合法なものの 2 種類のものがある。製作元がオンラインに置 いてくれている合法の MP3 ファイル。つまり、著作権の持ち主が提供して くれているものだ。合法の MP3 の曲を見つけるのは簡単だし、それを聴く ことは非合法のものを聴くことと違って報いを受けなければならないよう な悪行を積む行為にはならない。

MP3.com は 9 月現在でユーザーがダウンロードできるものが 200 万曲以 上サイト置かれていると伝えている。International Federation of Phonographic Industries によると、毎月約 9 千万の MP3 ファイルが ダウンロードされているそうだ。この数字は合法的なもののみをカウント したものだと思われる。

もちろん良い話ばかりではない。レコード業界の主流は MP3 を受け入れて おらず、有名どころのバンドの合法のものはあまりない。それどころか、 この業界では MP3 を脅威に感じている人が多い。CD から高音質の MP3 ファイルを作り、それを無料でオンラインに置くのが実に簡単で、自分で 作った海賊版を CD よりも安く取引するような輩のために大枚を儲けそこ なうことを危惧しているからだ。このため Top 40 に登場するような人気 グループの曲はいまだに MP3 にはなっていないと思ったほうが良いだろう。

聞くところによれば、わずかだがいくつかの著名なアーティストやレーベ ルが MP3 を試行錯誤しているとのことだ。それらアーティストの中に、the Beastie Boys、Dionne Warwick、Taylor Dayne がいる。アーティストに よっては、CD の売り上げを伸ばすため、曲目を選んで無料で入手できるよ うにしているし、また一方ではインターネットを通じて MP3 の曲を直接販 売するといったことまで進められている。

合法的な MP3 サイトにある楽曲のほとんどは、聞いたこともないようなバ ンドのものばかりだが、ブルースからテクノまであらゆるジャンルを網羅 している。これらのバンド名を聞いたことがないからといって、それらが ひどいバンドだということでは必ずしもない。事実、私はいくつかの素晴 らしい曲に出会っている。しかしまた、それら以外のバンドが物陰に潜ん でいるのには訳がある。それらサイトははひどく評判が悪いのだ。

無料で合法的な MP3 楽曲ファイルを大量に収集している 2 つのサイトに、 MP3.com と Internet Underground Music Archive がある。両方とも曲目 をジャンル別に検索できるけれども、知らないバンド名ばかりでは検索結 果はほとんどいつもがらくた同然だろう。もし新しめの音楽やインディー ズ系バンドに興味があるのなら、これは打ってつけだ。偉大な曲に遭遇し たときにはさぞかしうれしいことだろうが、本当にどうしようもないもの にも覚悟しておくように。

<http://www.mp3.com/>
<http://www.iuma.com/>

非合法な MP3、つまり著作権者の許諾なしに出まわっている楽曲ファイル もまたたくさんある。もしお気に入りのバンドが MP3 をリリースしていな くても、インターネットにいる誰かがそのバンドのためにリリースしてく れるという具合だ。その気があれば、街頭演説の台に登りなぜ著作権侵害 がいけないのかを喧しく言うこともできるのだろうが、あいにくそのつも りはない。ただ、これだけは言っておこう。MP3 の海賊サイトから曲を取っ てこようとする行為は、それにかける時間やトラブルに見合うほどの値打 ちはないのだ、と。

こうしたサイトは検索エンジンで簡単に見つけることができるものの、無 効リンクの山に出くわすだろう。ISP が手早くこうした海賊サイトをシャッ トダウンしてしまうからだ。本当に存在しているサイトには、ダウンロー ドできるのは(数千曲のアーカイブを売り物にしていていても)一握りの 曲しかない。そうでないサイトにしたところで、一曲ダウンロードするご とに何か一曲アップロードする必要があったりするのだ。海賊版 MP3 事情 にそれ程詳しいわけではないし、探し方がよくわかっていないのかもしれ ないが、オンラインのよどみを 2 時間かけて探し回っても、ほんの少しの MP3 ファイルしか得られなかったし、耳を傾けるに値するものは一つもな かった。

ある MP3 グルによれば、海賊版 MP3 の受け取りに Usenet が好んで使わ れれ、毎日 2 〜 3 ギガバイトの MP3 ファイルが流入し、それは Usenet 全体の帯域幅の 10 パーセント以上を占めるのだそうだ。

自前でどうぞ -- 著作権のある楽曲を他人とわかち合うのは違法だが、 自分が持っている CD から自分自身で楽しむために MP3 ファイルを作成す るのなら合法である。ある一曲あるいは CD まるごとをエンコードするの は CD-ROM ドライブとエンコードソフトウェアを備えれば簡単なことだ。 CD トラックから MP3 ファイルを作成するには 2 つのステップがある。ま ず最初に CD オーディオを AIFF のようなコンピュータ固有のファイル形 式にコンバートする。この工程は ripping と呼ばれている。次に、エン コーディングと呼ばれる工程でそのファイルを MP3 ファイルにコンバート するのだ。使うソフトウェアによって、ripping とエンコーディングは、 一発でできたり、それぞれ別々だったりする。

そうでもしなければ忘れてしまいがちな CD たちから好きな曲を rip して “ベストオブ”MP3 ミックスのフォルダを作ることもできよう。Zip や Jazz のようなリムーバブル記録メディアがあれば、それら MP3 ファイル をリムーバブルカートリッジに収めて気が向いたときにいつでも楽しむこ ともできよう。(それらファイルのコピーを他人にあげたりインターネッ トにアップロードしたりすると著作権の侵害となる。)

インターネットで見つかった rip とエンコードとを一発でできる唯一の Mac ソフトは、MPEG Audio Creator で、使い方は簡単だ。ところが、これ は MPEG 1 layer 2(MP2 と呼ばれている)ファイルしか作成できない。 MP2 ファイル形式は古いバージョンでサイズがちょっと大きなバージョン である。

<http://www3.pair.com/odreer/mpeg.html>

誰かが Mac 用に rip とエンコードとを両方できるツールを書いてくれる まで、本物の MP3 ファイルを作成するには 2 つのプログラムが必要だ。 まず CDtoAIFF を使って CD トラックから AIFF ファイルを作る。そして Mpecker Encoder で AIFF を MP3 ファイルに変えるのだ。

<http://www.musicglobalnetwork.com/Mac.html>
<http://www.anime.net/~go/mpeckers.html>

MP3 ファイルのエンコード中はマシンパワーがそれに集中する。だから、 たくさんのビジーカーソルを見ることになるので心するように。

さあわかっただろう。ひっきりなしに流れる自動車のコマーシャルのせい で忘れていた 80 年代のあるバンドのことを想い起こしたことが、知りた いと考えていた以上に MP3 のことを学ぶに至り、そうして数え切れない楽 曲ファイルを記録するためハードドライブスペースの最後のビットまでを 使い切ることになってしまったのだ。もうテレビを見るのはほどほどにし ないと。

[Kevin Savetz 氏は Computer Shopper 誌や他の雑誌に Mac やインター ネットに関する記事を寄せている。年代物コンピュータの熱心な収集家で、 Kevin は Mac 同様 Atari 800 や Timex-Sinclair とも戯れていることだ ろう。]


誰を反トラストするか? 第 1 部

by Matt Deatherage
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)
(  :西村 尚 <hisashin@axes.co.jp>)

司法省の Microsoft 社に対する反トラスト法違反訴訟の裁判は進んでいる が、一般大衆は Microsoft 社が競争を妨げようとしたのか、もししたとし て、それは本当に問題なのかについて意見が分かれたままに見える。もし、 読者がこれは Apple とは関係のない問題だと思うなら、もう一度考えてみ て欲しい、というのもこの問題は全コンピュータ業界に跳ね返る事だから である。本件がどちらに転んでも Apple 社は得するかも知れないし、損す るかも知れない。しかし、選択肢を吟味していけば、望ましい道も見えて くるのではないかと思う。

いったい何がいけないのか? Microsoft 社のコンピュータ市場独占で浮 き出てきた問題は複雑でその解もきっと読者の皆さんが想像したような複 雑なものになるであろう、と言うのも、どの提案も誰にもなるほどと言わ せる様なものはないからである。問題は複雑で要領よく簡明に説明しよう としてもうまく行かないので、どうか面倒でも細部にわたる論議につきあっ て欲しい。

20 世紀初頭より、米国法はある市場でほとんど圧倒的な地位をしめた事業 を“独占事業”と規定してきた。この当時いくつかの事業が疑惑ありとさ れる市場で事実上の手かせ足かせをきかせる程にまでなった例を見てきた。 競争が起きた時、独占企業はその強力な地位を活かして、ボルグより 500 年も前からある動きで弱者を潰してしまうか、呑み込んでしまう。例えば、 Standard Oil 社は鉄道を所有していて、Standard ブランドの油が他のど の油よりも安く輸送される様に手を打った。こうして Standard Oil 社は より安いコストと誰にも負けない価格を提供できた。

Standard Oil 社は理論上はいくつかの会社から成り立っていたが、現実に は価格を談合し、競争を排除するよう謀りあって一つの巨大な会社として 活動した。この様な協力関係を“トラスト”と呼ぶ。American Heritage Dictionary ではこれを“ある事業や産業を通して、競争を削減し価格を統 制する目的の企業や会社の集団”と定義している。これが米国で競争助長 法がなぜ“反トラスト”と呼ばれるかの理由であるが、しかし往々にして、 AT&T 社や Microsoft 社の様に単一の会社に適用される事もある。

この法そのものはよく論議の種とされてきた。ある人は経済学者の Adam Smith を引き合いに出す。彼は“見えざる手”が自由市場を最適な状況へ と導くとする説を理論化した。もし一企業が強くなりすぎると、見えざる 手が小さな企業に対して参入と売上げ奪取の機会を示してくれ、競争が回 復される。もしある市場でどの企業も成功できなければ、見えざる手はそ の様な市場は存在しないと信号を送ってくる。この理論は数世紀にわたる 解釈と実践に堪えてきて、なぜ多くの非統制経済が元気にやってこれたか の中心的な説明として生き延びてきた。米国の事業に対する統制は大体に おいて社会的なものであり、ある企業が何は売ることができて何はダメか 言われることはほとんどないが、禁止品は通常、毒性とか“国家安全保障” とかの社会的理由で禁止されている。従って、この見えざる手は経済を通 常繁栄状態に保ってくれているので、一般大衆は米政府の様な官僚機構が 商行為を統制し始めるのを快くは思っていない。

統制および反トラスト法の支持者はこれは単純化した見方であると言う。 Adam Smith は数百年も前の人であり、今日の事業形態を単に思い及ぶこと ができなかっただけである。今日の会社はどこにでもある - 会社を設立す るには一枚の申請書と少々の資金があればよい。ところが Smith の時代に は会社は珍しいものであったし、その後も長いことそうであった - テキサ スが州になったとき、会社の承認には両議院の 3 分の 2 の賛成を必要と した。会社は個人の責任を経済的行動から切り離してくれる、そしてこの 事が我々の経済の働き方を大きく変えたと言う論議がある。今日、会社は その株主にだけ責任を有するとみなされている。たかだか 20 年前には、 この様な事業は広く - そして疑問の余地なしに - その従業員に、地元社 会に、そして顧客に対しても責任を有するとみなされていた。今日、ある 会社がより大きな利益追求の名の下に数千人をレイオフすると決定したと しても、不満の声は大きいが、合法性について疑問を呈する人はほとんど ない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=387>

新規の顧客を求めて古くからの顧客を見捨てるというのは決して最良の事 業活動ではないかもしれないが、新しい道がより多くの利益に繋がるので あればそういう選択をする会社は多い - これまでいくつの健全な Macintosh ソフトウェア会社がより儲かる Windows の会社に転換すると決 心してきたであろうか?この世の中、ただ単なる利益追求のために、有害 であると知りながら製品を売った疑いのある、また環境や従業員の健康に 害がある可能性を知りながら事業活動を続ける会社に対する訴訟、ボイコッ ト、あるいはその他の反対行動に関するニュースでいっぱいである。労働 者を最大限に利用する事は Adam Smith の時代でもよく行われていた、し かし Smith の経済下にあっては、その様な事業家はその行動に対して個人 的責任も問われる可能性があった。今日、その責任は会社自身にあり、特 定の人に対する特別の嫌疑が証明されない限り、会社は経済的な意味での み罰せられる。究極の責任は誰も取らない、そしてこの責任の欠如が社会 的良心の欠如へと繋がっている。

さてここまで言って、Microsoft 訴訟に関しては二つの鍵となる質問がある。

1.Microsoft 社は米国反トラスト法の条文にあるいはその精神に違反した のか?

2.もし違反したとして、Microsoft 社は罰せられるべきか、それとも法そ のものが改正されるべきか?

Microsoft は有罪か? Thomas Penfield Jackson 判事がその疑問への判 決を下す現在の裁判長だ。だが“有罪”は偏った言葉だ。Microsoft 社は 独占禁止法の、刑事ではなく、民事違反のかどで告訴されているのだ。

6 月に MWJ 誌にてこの問題を最初に検討した時、その時点で入手可能な証 拠に基づき、我々は Microsoft 社が恐らくこれらの法律に違反していると 結論した。裁判での意外な新事実は興味深いものであったが、同社に対す るその基本的見解にはダメージを及ぼすには至っていない。

合衆国法では、独占的地位を持つ会社が別の市場にて優勢をなすためにそ の利点を用いることは許されない。独占的地位そのものは許容できるもの であり、公益事業はしばしば“生まれながらの独占”をなすと言われてい る。何故なら送電線や電話ケーブルのインフラを二重に有することは、不 可能ではないが、実際的ではないからだ。それらの事業はしばしば規定料 金を維持できるが、1984 年の AT&T の分割が示すように、時にはそれすら も規定者側には十分ではないのだ。1984 年に AT&T が、全てのモデムはビ ジネス料率で電話線を使用するよう求めていたことを覚えているだろうか。 そのような考えは今日の競争市場では一笑に付されるものだ。

控えめな見積もりでは、今日販売されているコンピュータ用オペレーティ ング・システムの 80 % を Microsoft が握っており、ほとんどの基準にお いて独占といえるものである。善し悪しは別として、独占的地位にある会 社はより厳しい基準を守ることが求められている。もし Microsoft 社がそ の支配的な OS ベンダーの地位を利用し、他市場にて支配的な勢力となる ことを試みたなら、同社はルールを破ったこととなる。これが Internet Explorer で起きたことはかなり明白だ。

合衆国司法省は、Microsoft 社が 1995 年に Web ブラウザ市場に参入した のは、Netscape Navigator がオペレーティング・システムに取って代わる ものと Netscape 社側が語っていたためであると申し立てている。Windows (または Mac OS)は Navigator をホストするものだが、Navigator が、 Web やファイル転送、そしてテレビ会議等のインターネット機能へのゲー トウェイとなるのだ。従来、Microsoft 社は、BackOffice や Windows NT Server Edition(Microsoft 社の沢山のサーバーにバンドルされている) に支えられ、Office や Encarta 等のアプリケーションにて大金を稼いで きた。Windows は高額の収入を Microsoft 社に現在もたらしているが、技 術的にはアプリケーションであり、かつ“プラットフォーム”として Windows NT Server Edition と一緒に販売されているサーバーがどれぐら いの割合を占めるのか、同社の説明は不明確だ。Microsoft 社のソフトウェ アはよく大ヒットするが、それは Microsoft 社のオペレーティング・シス テムの最新の進歩を最大限に利用しているからである。Microsoft Office 95 は、失望していた Office ユーザーにとってロングファイル名等の恩恵 をもたらす Windows 95 のリリース時に、入手可能であった。もし Microsoft 社が Netscape 社が定めた仕様に基づいてインターネット用ソ フトウェアを書く“単なるもう一つのディベロッパー”となれば、主要な 競争的有利性を失うこととなり、それは超競争力のある Microsoft 社に とっては受け入れられないものであった。

そこで彼らは、単に、アプリケーションをインターネットスタンダードへ と作り替え、それらスタンダード対応のサーバを提供するだけはでなく (疑問の余地のない賢明な策)、Microsoft 社独自の“ミドルウェア”と なる Microsoft のインターネットブラウザを作るという、インターネット 戦略を考えたのだ。もしインターネットが次のオペレーティングシステム になるのであれば、それが彼らのインターネットであることを Microsoft 社は欲したのだ。彼らはマルチメディアのスタンダードが QuickTime では なく、Microsoft 社のスタンダードであることを欲したのだ。彼らはディ ベロッパーがブラウザの機能を拡張すために、Netscape のプラグインや OpenDoc のパート、または Java アプレットではなく、ActiveX コントロー ルを制作することを欲したのだ。彼らはスタンダードがレッドモンドで開 発され、他社の方が熟知しているサードパーティの技術にではなく、 Microsoft 社のアプリケーションに組み込まれることを欲したのだ。

これは全く健全な競合であり、政府が通常タッチしない分野である。しか し、そこでストップすることはなかった。Microsoft 社は、同じく申し立 てによると、同社のインターネットソフトウェアが顧客の手に必ず渡るよ う Windows の供給者としての地位を用いることを決めたのだ。司法省は、 Microsoft 社が Compaq 社や Dell 社のような Windows ライセンシーに対 し、全てのシステムに Internet Explorer アイコンを表示させるか、また は Windows の販売権を失うリスクをおかすか、要求したと主張している。 司法省はさらに、Microsoft 社は Windows 95 が添付された PC に Netscape Navigator や他のいかなる Web ブラウザも同梱することを当初 は PC メーカーに許さず、インターネットサービスプロバイダーに対して は、協力するものには Windows 上に名前を載せるという貴重な広告メッリ トを与え、Netscape に固執するものにはそれを拒否するという方法で、 Microsoft 社のインターネットソフトウェアを好むよう強要したと申し立 てている。

裁判に提出された初期の証拠はこれらの訴えを支持するものだ。AOL 社の ビジネス部門上級副社長 David Colburn 氏は Microsoft 社が Internet Explorer を AOL ソフトウェアのブラウザにするよう同社にアプローチし、 「Netscape をねじ込むにはいくら払えばいいだろう?」とはっきり質問し たと証言している。Microsoft 社は AOL 社との交渉での Microsoft 社ソ フトウェアの技術メリットを強調したその他の書類 - いかに Netscape と 競争しうるか - を提出している。しかし、政府の訴えは、Microsoft 社の ブラウザが貧弱かではなく、彼らが Windows での独占的地位を用いてイン ターネットソフトウェア市場を支配しようと試みたことである。その意味 で、AOL 社の証言は特にダメージが大きかった。なぜなら、AOL 社が Microsoft 社の技術を選択したのは 全ての Windows 95 上に AOL 社の クライアントソフトを載せる唯一の方法であったと、Colburn 氏が揺るぎ のない主張をしたからだ。

<http://www.usdoj.gov/atr/cases/f2000/2045.pdf>
<http://www.mercurycenter.com/business/microsoft/trial/breaking/docs/ colbur102798.htm>

他の申し立てによれば、Microsoft は諸 ISP に同様の戦略を使ったとい う。彼らが Internet Explorer を奨励し、Netscape Navigator の配布を 拒否し、ユーザーを Microsoft のソフトウェアに切り替えさせることに同 意しなければ、彼らは新規のインターネットアカウントをサインアップす るための Windows 95 の埋め込みソフトウェアからはずされることになる。 それぞれの申し立てで、Microsoft は、Windows を持つ力を利用して Microsoft のインターネットソフトウェアを、それを望んでいたかどうか に関係なく人々に手渡したことで訴えられている。無償のバージョンが必 要なことをほぼすべて行えれば、プログラムを購入する人はほとんどいな い。これに疑念を持っているなら、あなたの知るどれほど多くの電子メー ルユーザーが Claris Emailer や Eudora Pro、Bare Bones Mailsmith の ような市販クライアントを購入しないかを考えてみよう。Microsoft は市 場専有率を上げるためにこの戦略をあてにしている。最近の数字は、 Microsoft Internet Explorer が今や 40 % から 55 % の市場専有率を持 つことを示している。1995 年の 0 % からの上昇である。

バンドル万歳 -- Microsoft は、一部で、これらの申し立てに対し、 Internet Explorer がオペレーティングシステムの一部だと述べることで 抗弁している。司法省によると、Internet Explorer は一つのアプリケー ションであり、Microsoft Word や Netscape Communicator、Riven とまっ たく同じであるという。したがって、Microsoft の Windows 98 のブラウ ザ同梱はバンドル行為であり、バンドルされたものはなんでも別売りでき る。 Microsoft は Internet Explorer の機能が Windows 98 に埋め込ま れ、オペレーティングシステムの多くの部分に使われていると反証を挙げ る。つまり、Internet Explorer“アプリケーション”は Windows 98 の中 心機能の周りにアプリケーションラッパーを据えるシェルに過ぎないとい う。これらの機能を剥ぎ取ろうとすることは、Mac OS から Apple Event Manager を取り去ろうとするのと同じくらい損害が大きいだろう。

Internet Explorer の機能は、Mac OS ユーザーが Shared Libraries とし て知っているもの(Windows ユーザーには DLL[dynamically linked libraries]と呼ばれる)にますます多く含まれるようになった。Windows 版の Internet Explorer はこれらのライブラリを呼び出してその作業の大 部分を行う。Windows 98 の他の部分もこれらのライブラリを使う。同じよ うにするアプリケーションは次第に増加している(たとえば、Eudora Pro 4.0 for Windows はこれらのライブラリを使って HTML 形式の電子メール を表示する)。したがって、これらを別売りすることは Microsoft のため のオプションではない。それが、“シェル”アプリケーションを取り去れ という政府の要求が指導の誤りであり、それは Internet Explorer の機能 の大部分はこれと他のアプリケーションが適正に動作するために Windows 98 内に残しておかなければならないからだと Microsoft が主張する理由 である。

では、これはバンドル行為なのだろうか?伝統的な意味では否である。 Microsoft はさらに多くのインターネット機能を OS に追加することで推 賞されるべきだ。メディアはインターネットが世界中のどの個人(Every Single Person)にもいかに重要になってきているかを強調し続けているの だから。Internet Explorer シェルを取り去ることでは問題が解決される ことはないし、Microsoft は Netscape Communicator を Windows 98 にバ ンドルすべきだという政府の今さらながらの要求でも解決しないだろう。 Communicator は Microsoft の無償のブラウザに対抗して現在は無料であ る。したがって、Microsoft はバンドルするためのコストは負わない。し かし、この提案に対する Microsoft の抵抗は、ほんの 2 年前に Netscape が優位を占める恐れのあったミドルウェア層をいかに強くコントロールし ようと努めているかを示している。

しかし、私たちは Microsoft を司法省の法の狼たちに引き渡す前に、これ は一社が他社を食い物にするという単純な事例ではないということに気づ くことが重要だ。Microsoft の反トラスト裁判の結果が、業界の残りにも 衝撃を与えることは間違いない。それはこの記事の第 2 部で見ていく。

[Matt Deatherage 氏は、真面目な Macintosh ユーザーのための定期購読 のみの優れたニューズレターである MWJ 誌の発行者だ。3 号分の無料購読 のために今週サインアップした人は、まだ MWJ の Mac OS 8.5 臨時増刊号 を受け取ることができる。あらゆる場所で利用可能な中で最も総合的に Mac OS 8.5 を扱ったものである。]

<http://www.gcsf.com/>


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway