TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#462/11-Jan-99

あなたの好きな風味は何?先週の San Francisco での Macworld Expo で Apple 社は iCandy や速度強化した iMac を 5 色も用意して我々を驚かせ た。しかしながら、Apple 社はこれだけにとどまらず、かなりの変更の加 えられた Power Macintosh G3 と新ディスプレイを発表した。この号では、 新 Mac の裏に潜む具体的数字と、近年の歴史の中では大成功の Macworld Expo に関しての印象や観察もお伝えする。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/11-Jan-99

(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

Farallon 社 TidBITS のスポンサーへ -- 我々の最新のスポンサーであ る Farallon Communications 社を熱烈歓迎したい。Farallon 社は 1986 年に創業、たちまちの内にあの PhoneNet LocalTalk コネクタを Macintosh の最も標準的なネットワーク製品の一つにしてしまった。Farallon 社はそ こから、1997 年にその名前を Netopia 社と変えるまで、Ethernet、LAN、 そしてインターネット製品へと手を拡げていった。しかし昨年 8 月には再 び Netopia 社からスピンアウトして別会社としての Farallon 社となり Ethernet や LAN ネットワークに注力している、製品の中には Mac 専用 品、例えば EtherMac iPrint アダプタ、LocalTalk 製品、更に(そして勿 論)過去から現在に至る広範囲の Macintosh モデルに対応する各種 Ethernet ネットワーク製品がある。それよりも多分もっと大事なことは、 Farallon 社はネットワーク技術を簡単でわかりやすいものとする事に重 点を置いていて、一般的なネットワークの話題を扱った“Ask Dr. Farallon”を出版し、SOHO 向けの基礎的なネットワーキングを扱う新たな Home Network Web サイトを開設している。Farallon 社のカムバックは Macintosh 業界にとてもいいことで、我々もスポンサーに迎えることが出 来て大変嬉しい。[ACE]

<http://www.farallon.com/>

Adobe 社 GoLive 買収 -- Adobe Systems 社は、名声の高い GoLive CyberStudio Web 編集パッケージとサーバーベースの GoLive Publishing System のメーカである GoLive Systems 社を買収したと発表した。Adobe 社のプレスリリースによれば、CyberStudio は同社の Photoshop、 Illustrator、そして Acrobat を含んだオンライン・コンテンツを作成す るのによく使われている一連のアプリケーション・スイートを完結させる ものだとしている。既存の(そしてクロスプラットフォームの) HTML 制 作アプリケーションである PageMill に対する、PageMill は CyberStudio のように高度なアプリケーションではないにしても、同社の計画は明らか でない。この買収によって Adobe 社は CyberStudio を PageMill と同様 不細工に扱うのではないかと言う心配がある、と言うのも 1995 年に Adobe 社が Ceneca Communications 社から買収したときには、PageMill は Macintosh のための著名な HTML 制作ツールであった。 [GD]

<http://www.adobe.com/aboutadobe/publicrelations/HTML/9901/ 990104.golive.html>
<http://www.adobe.com/prodindex/pagemill/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01313>


新型 iMac、新型 G3、そして Mac OS X Server

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)

Macworld Expo in San Francisco の基調講演で、Apple 社の 暫定 CEO、 Steve Jobs 氏は、企業とハイエンドユーザーを目標とする新 Power Macintosh G3 コンピュータと、5 つの新色の iMac の改訂版を紹介し、す べて即時発売されると発表した。

トゥッティ・フルッティ -- iMac が Apple 史の中で最も売れたコン ピュータとなったから、Apple 社は若干機能強化した iMac を市場投入し、 5 つの新色で販売することになる。ぶどう色、いちご色、ライム色、ブルー ベリー色、タンジェリン色と、各色に合わせた USB マウスとキーボードが 付く。新型 iMac は 1,200 ドルの小売価格で 266 MHz PowerPC G3 プロ セッサと 6 GB 内蔵ハードディスクを備えているが、それ以外の点では、 32 MB の RAM、2 つの USB ポート、10/100Base-T Ethernet、内蔵 56 Kbps モデム、1024 x 768 ピクセルまでの解像度で 24 ビットカラーをサポート する内蔵モニタという、初代 iMac とほとんど機能的には同じだ。しかし、 新構成でなくなっているものは、先代の埋め込み赤外線ポートとドキュメ ントに記載のない拡張スロットである。233 MHz プロセッサと 4 GB ドラ イブ付きの初代ボンダイブルー iMac は 1,049 ドルでこれまで通り販売さ れ、Apple を 1,000 ドル以下のコンピュータ市場に近づけることになる。

<http://www.apple.com/imac/>

Macworld 参加者からの反応は新構成に対してのものはほとんどなく、みな 新色に関してのものだった。無作為に抽出した意見をみると、新色すべて に確実に支持者はいるのだが、グレープ色が最も人気があるようだ。私は 明るい黄色の“バナナ”色(かつて人気の新聞マンガのバナナ印のコン ピュータを想起させる)がないのにがっかりしたが、Apple は iMac に “レモン”という言葉を結びつけられることを防ぐために黄色を避けたの ではないかと思う。しかし、多くの iMac 周辺機器がブルーと白なので、 ユーザーはまもなくファッション通から批判されることになることは間違 いない。「あんたが その スキャナと その トラックボールを タンジェリン色の コンピュータと一緒に使っているのが信じられないよ! チィ!」

Yosemite -- iMac は Macworld Expo でさらにカラフルになった唯一の ものではなかった。Apple は、4 つの埋め込み(そして完全機能の)ハン ドルの付いた iMac 風のブルーと白のケースで着飾った新ミニタワー Power Macintosh G3 システムも紹介した。非公式に Yosemite というコード名で 知られていたが、これらの新 Power Mac G3 システムは、100 MHz システ ムバスを介してそのコンピュータの残りの部分と接続される 1 MB のバッ クサイドキャッシュ付きで 400 MHz までの処理速度で稼働する PowerPC G3 プロセッサを備えている。Yosemite システムは、内蔵ストレージ装置 用に 5 つのベイを提供し、そのうち 2 つは CD-ROM と Zip ドライブのよ うなリムーバブルメディア用ドライブのために使うことができる。中を見 るのは優美なほどにシンプルだ。レバーを上げるだけでコンピュータのほ とんどが刎ね降りて、難なく RAM や拡張スロット、ドライブベイにアクセ スさせてくれる。(そういうアクセスに興味をもつやからには簡単 すぎ る ので、Yosemite ケースは施錠もできる。)これまでの Apple システ ムと違い、Yosemite マシンはケースを完全に開けていても稼働する。もっ とも、G3 プロセッサを冷却する空流を干渉するのでそうすることはお勧め しないが。

<http://www.apple.com/powermac/>

Yosemite システムは、iMac と他の類似点もある。これは iMac 形式の PC100 SDRAM DIMMS を使うが、1 GB まで RAM を備えることのできる 4 つ のソケットを提供する。フロッピードライブ、シリアルポート、SCSI がな い替わりに、2 つの USB ポートと 2 つの新しい高速 FireWire ポートを 備える。USB は iMac で最初に登場したので、ハイエンド Macintosh シス テムには初お目見えだ。しかし、Yosemite システムは FireWire を備える 最初の Mac である。コンピュータとデジタル消費機器用に、廉価で簡単に 使用できる高速シリアルバスとして、数年前に Apple によって最初に開発 された FireWire は毎秒 400 メガビットまでの転送速度をサポートし、 オーディオやビデオのような高帯域幅のデータに適したものとなる。圧縮 のために、FireWire は初期 Power Mac G3 システム上の外部 SCSI バスの 10 倍までの帯域幅を提供する。もっともハイエンド SCSI システムには及 ばないが。

USB のように、FireWire 機器は電源を入れたまま交換できるので、 FireWire 機器を接続したり切り離したりするためにコンピュータを終了す る必要はない。また、ある FireWire 機器を同時に一台以上のコンピュー タに接続することさえできる。さらに、一つの FireWire チェーンは 63 台までの機器を扱え、機器類は FireWire チェーンから電力を引くことが 可能なので、FireWire 周辺機器の中には独自の電源を必要としないものも あろう。FireWire 技術はここしばらくあちこちに見られたが、現時点で FireWire ポートを使う主要なアイテムはカムコーダだ。Apple によれば、 ハードドライブやスキャナ、オーディオミキサのような他の製品が準備中 で、3 月か 4 月には販売されるはずだという。ベンダーの中には、6 月か 7 月あたりが現実的だろうと指摘するものもあるのだが。Apple には選別 された USB と FireWire 製品を紹介する Web ページがある。FireWire セ クションがここ数カ月で充実するのを期待したい。

<http://www.apple.com/usb/>
<http://www.apple.com/firewire/>

また、Yosemite システムは、埋め込み 10/100Base-T Ethernet とオプショ ンの内蔵 56 Kbps モデム、3 基の標準 PCI スロットを備えている。 Yosemite システムには、高処理性能 ATI PAGE 128 ビデオカードがあらか じめささった 1/4 サイズの占有倍速 PCI スロットもある。また、Apple はいくつかの注文仕様オプションも用意しており、その中には廉価な SCSI PCI カード、ギガビット Ethernet、DVD-ROM、Zip ドライブが含まれる。 Yosemite システムは iMac と共にデビューした USB 省スペースキーボー ドと丸型マウスと一緒に出荷される。新型マウスとキーボードが好きでは ないなら、Yosemite システムは旧型の入力装置と Apple ディスプレイと の互換性のために一つの ADB ポートを依然サポートしている。21 インチ Apple Studio Display だけは USB 対応にアップデートされている。Power Macintosh G3 システムはディスプレイなしで 1,600 ドルから 3,500 ドル の価格帯である。

<http://www.apple.com/store/>

Apple の新型 Power Mac G3 システムは興味をそそるが、オーディオやビ デオの製作会社の人は、Apple がもっとたくさんの PCI スロットを備える モデルを提供しないことを残念がっている。Apple 社は SCSI とシリアル は過去のものだというが、多くの人々は作業を行うためにこれらの装置を 依然必要としている。SCSI カードと USB 対シリアル変換器をインストー ルすれば、たった一つの拡張スロットしか使えなくなる。第 2 のモニタを 追加すれば、Yosemite の拡張の限界に突き当たるだろう。考えものだ。

名前の問題 Apple の新システムで一つ困った面がある。これらはユニー クな名前をもっていないことだ。誰も Apple が無作為に番号付けされた Performa の時代に戻ることを望むものはいないが、私には Apple が半公 式に新型 G3 ミニタワーを“ブルーと白”(または単に“ブルー”)の Power Macintosh G3 と呼ぶのが気になる。もし Apple が新色または同色 の別機種を市場投入したらどうなるだろう?同じように、Apple が iMac を特異な、簡単に認識できる存在として位置づけたことは正しいが、現在 iMac は 3 つある。リビジョン A、次にリビジョン B、そして現在の虹色 の新型マシンである。このことは、iMac 顧客と長期の Macintosh ユーザー に混乱を招くことになるかもしれない。

Mac OS X Server -- Apple はまた、Mac OS X Server を 2 月初旬に米 国内で 1,000 ドルで販売することを発表した。Apple の最初のモダンサー バオペレーティングシステムとして宣伝されてきた Mac OS X Server は、 最近まで Rhapsody として知られ、Mach マイクロカーネル、BSD Unix 4.4、NeXTStep に由来する Yellow Box アプリケーションレイヤー、加え て現存する Mac OS ソフトウェアを稼働できる分離したアプリケーション レイヤーである Blue Box の上に構築されている。(Mac OS X に関する詳 細は TidBITS-430 の“Mac OS X: Mac デベロッパーに愛される Rhapsody”参照。)また、Mac OS X Server は、これも NeXT から買収し た Apple の Web と電子商取り引き開発環境 WebObjects 4 とよく知られ た Apache Web サーバとともに出荷される。

<http://www.apple.com/macosx/>
<http://www.apple.com/webobjects/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04899>

サーバ管理者にとって、Mac OS X Server の最も目を引く機能は NetBoot かもしれない。これは Mac OS クライアントシステムをネットワークを通 じて起動できるようにするのだ。NetBoot は個々のシステムを構成し、ア クセスを制限し、ユーザーのアクセス権を定義するときの何百という頭痛 の種をなくしてくれるだろう。ユーザーは、またネットワーク上のどの Mac からでも自分のアプリケーション、文書、デスクトップ環境にアクセスで きる。残念なことに、NetBoot はどんな Mac でも起動できるわけではな い。いわゆる“New World”ROM-in-RAM デザインを利用するマシンだけし か、この方法で起動できない。そして、現在、唯一 iMac と Apple の新型 ブルーと白の Power Mac G3 システムのみがその資格を持っている。

Mac OS X Server は、また、AppleTalk か TCP/IP を使って広範なファイ ルとメディアのサービスを行う機能を、リモート管理機能と一緒に提供す る。しかし、Apple は、Mac OS X Server が Blue Box を使って現行の Mac OS アプリケーションを走らせることができるとしても、Mac OS X Server はワークステーションとしての使用はお薦めしないと、言葉を注意深く選 んでいた。そういう使用は 1999 年にリリースの予定の Mac OS X まで待 たなければならない。


Macworld Expo SF '99 基調講演より

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

毎年 Macworld Expo に足を運ぶ理由の一つに、来場者や出展者の様子を Macintosh の健康のバロメータのひとつにしているということがある。今 年の Expo を二言でたとえるならば、「大入り」と「盛り上がり」であろ う。もちろん、このふたつはかみ合っていた。Apple が暗く不確かな時期 にあった去年の Expo の基調講演は(驚くほど)空席が目立っていた。今 年の基調講演は満席だったし、展示会場の方も絶えず人を押しのけ、そし て押しのけられながら動くような有り様で、興奮のるつぼと化していた。

もちろん、人の混み具合でショーの規模を計るのは容易ではない。会場と なった Moscone Center では使われていない部分は幕で遮られているだけ なので、実際の面積はわからない。人が感じる混み具合とは、実際にいる 人数と空間の量の比率から割り出される。さらには、出展者数によっても 変わってくる。出展者数が少なく来場者の多いショーは混んでいる印象を 受けるが、悲観的な気持ちになってしまう。

今年のショーでは悲観的な気分にはならなかった。まず、会場外でさえも 人が溢れており、これは絶対数の多さを物語っている。また、出展者の顔 触れも去年とは違い大物だけにとどまらず、今まで耳にしたことのない会 社の小さなブースが多数出ていた。Macintosh は回復に向かっている印だ ろう。

Steve Jobs 氏が基調講演の中で語ったことも大切だが、何が話題にあげら れなかったかも注目に値する。つまり今回触れられなかったこととしては、 HyperCard、QuickTime 4、コンシューマー向け PowerBook、Carbon、Mac OS 8.6、1,000 ドルの壁などがある。一般的に、将来の方向性や将来のテ クノロジーの空論を展開することが今まで Apple の命取りとなっていたの だが、今回はそれらには全く触れずに、Apple の現状報告と現在出荷され ている製品と近々出荷される製品に関することに費やしていた。

演説は実に延々と続いた。嫌気が差すほどありとあらゆるものを総出演さ せたことが、その原因の一部でもある。たとえば、広告を何本も見せられ たし、Jobs 氏は HAL 9000 らしきものと無意味に何度もおしゃべりをして いた。さらに、基調講演は必要もない Microsoft 社による Internet Explorer 4.5 のデモまで行い長引いてしまった。もっともこれは、 Microsoft 社が Mac に肩入れしていることを実際に示したもので、度重な る主張をさらに繰返すよりも効果的であったのだが。余計なことはいうな。 百聞は一見に如かずである。

Jobs 氏は Apple 社が 5 期連続の四半期黒字を達成したと語った。iMac は昨年 8 月 15 日の登場以来すでに 80 万台売れたという。iMac はアメ リカで一番売れているコンピュータモデルとも言われているが、Apple 始 まって以来最も売れているマシンであることは間違いない。12 月の販売調 査によると、iMac の購入者の 32 % がコンピュータを初めて買った人たち であり、13 % が PC 機からの乗り換え組みだったそうだ。すなわち、iMac ユーザーの 45 % は 初めて Macintosh を購入した人達ということになる。

iMac ぽいディスプレイが 3 つ披露された。USB を内蔵した 21 インチの トリニトロン CRT(1,500 ドル)、17 インチのダイアモンドトロン CRT (わずか 500 ドル)、デザインを変更した 15 インチのフラットパネル LCD(かつて 2,000 ドルだったものが、現実的かつ競争になる新価格 1,100 ドルになった)である。

Mac OS X(Jobs 氏の権威ある発音によると“オー・エス・テン”)の下見 よろしく、その機能の一部を Mac OS X Server で採用することになってい る。Jobs 氏が取り上げた Apple 製品の中でこれが唯一まだ出荷されてい ないものだった。Mac OS X Server の説明は一台に 50 台の iMac を繋い で同時に同一のストリーミングビデオをダウンロードし再生するといった デモで盛り上げられた。

そのサーバマシンは何者? とお思いだろうか。今まで“Yosemite”と呼ば れていた新 Power Macintosh G3 で、今回の基調講演のそして Expo の目 玉だった(といっても差し支えないだろう)。新 Power Macintosh G3 の ハードウェアについては今週号で Geoff Duncan が記事を書いているので、 私は細かく取り上げない。基調講演の中で Jobs 氏は、そのマシンが 3D グラフィックをサポートしていることを強調していた。16 MB の SDRAM と QuickDraw 3D サポートが付いた ATI Rage 128 を搭載しているのだ。ま た、Silicon Graphics 社から OpenGL 3D グラフィックソフトのライセン スを取得しており、Mac OS X および次期リリースの Mac OS 8 に組み込む 予定であることが発表された。会場にいたゲーム好きから喝采が飛んでい たし、良いことなのだろうと思った。さらに、Jobs 氏は一台のデジタルビ デオカメラから同時に 2 台のマシンにビデオをダウンロードするという、 新 Power Mac G3 の FireWire のデモを行った。その最中にマシンから線 を抜いたが、クラッシュしなかった部分は一番の見せ場となった。

Jobs 氏は一番オイシイところを最後にとっておいた。カードやドライブを 装着するためにどうやってマシン内部にアクセスしているだろうか。Jobs 氏は扉という言葉を使っていた。新マシンの側面は各コーナーにプラスチッ クのハンドル(下部の二つは足となり上部の二つは取っ手になる)は付い ているものの正方形に見える。Jobs 氏はこの四角い側面上部についた取っ 手を引っ張った。すると底部をちょうつがいにしてマシンの側面全体が机 の上に倒れた。この側面の内側にあらゆるものが取り付けられていたのだ。 つまり、今まで横向きに差していたカードやメモリが、テーブルに開かれ た扉に向かって上から差すことができるようになった。これ以上アクセス が簡単になろうとはとても考えられない。

Apple は新型 Power Macintosh G3 で賭けに出た。SCSI ポートとシリアル ポートを廃止し、Intel 界では 1,000 ドル以下のマシンが顔を利かしてい る時代に中・高価格層に的を絞った(なんと空いたスロットが最高で 3 つ しか付いていないのだが)。いずれこれが正しい選択だったかどうかや、 このほかに Jobs 氏がどんなカードを持っているかが判る日が来るだろう。 私は未来を語らない。今回の基調講演から学んだものがあるとしたら、そ れはうわさを信じてはいけないということだ。しかし Steve Jobs 氏が舵 をとり続けるかぎり、熟慮された Apple の動きから目が離せないことは確 かだ。Expo では随所で、「Apple は甦った」「Apple は大丈夫だ」「Apple には未来がある」といった空気が漂っていた。この雰囲気がなにかを意味 していると期待しよう。


Macworld Expo SF '99 と Macintosh 生態系

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)

先週サンフランシスコで昼食を注文する際、ウェイターに Expo をどう思 うか質問してみた。1997 年に同じ質問をした時には、Macintosh コミュニ ティの外から見た示唆に富んだ意見を聞くことができたのだった。今年は、 ウェイターは英語があまり上手ではなかったものの、文法的にはともかく 的確な答えが返ってきた。「お客さん機嫌良いですよ。前はだめだった、 でも今良いみたい。(聞き取り不能)iMac、(聞き取り不能)iMac、(聞 き取り不能)iMac。」

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00769>

どうやら彼は見抜いていたようだ。ショーは良かったし、ほとんど誰もが 満足していた。しかも驚いたことには、その原因はただ丸っこいケースと ボンダイブルーだけが売り物の Macintosh が巻き起こした興奮にあるのだ。

Apple、舞台中央に -- 確かに iMac 効果がこれほどだったとするのは言 い過ぎで、単純化し過ぎではある。暫定 CEO(一部では iCEO と呼ばれて いる)Steve Jobs 氏の第二王朝のもとで、Apple は 正しい手を打ってき ているのだ。マーケティングを大幅に改善し、混乱するほど多かった企画 は魅力あるものさえもカットし、社員数と支出に大鉈を振るったことによっ て Jobs 氏は連続して四半期黒字を打ち出している。

早い話、Jobs 氏が Apple の指揮をとって時としては厳しすぎるほどに混 乱に秩序をもたらした結果、Apple が Macintosh の世界の中心へと帰って きたのだ。このことを最も良く象徴していることとして、Apple が Moscone Center の 2 つあるホールのうち、一方のど真ん中の一等地にブースを構 えたことがある。過去数年では、Apple はほとんど隠れんばかりにメイン 会場の隅や小さ目のホールの一つに位置していたのだ。再び Apple が親分 になったのだ。

TidBITS の Managing Editor、Jeff Carlson と私は飛行機が遅れたために 基調講演には間に合わなかったが、そのかわりにほとんど無人の Moscone Center South Hall に足を踏み入れ、ライトテーブルの上に新しい各色の iMac が両側にずらりと並んだ(こうすると半透明のプラスチックが最も見 栄えがするのだ)がらんとした通路をぶらぶらすることができた。壁はピ カソのような人の名言(「下手な芸術家は真似をする。上手い芸術家は盗 む。」)で覆われ、巨大な Think Different の横断幕が天井を横切ってい た。Apple の担当者から iMac の色が味覚になぞらえて命名されているこ と(タンジェリン、ライム、ストロベリー、グレープ、ブルーベリー)を 聞いた時、“Cupertino Kool-Aid”という言葉に新しい意味が生まれたと 思わずにはいられなかった。

新 Power Mac G3 にしてもヘリポートのようなモニタにしても、iMac 同様 のデザインセンスと青い色を備えていた。デザインを Apple のハードウェ ア戦略の中心に位置付けることによって、Jobs 氏はハードウェアのお決ま りの話題をスぺックから色へと移し替えたのだ。iMac 購入者の約 45 % は 新規の Mac 購入者で、彼らが iMac を買っているということ自体が色とデ ザイン(それと価格、とは言っても iMac が他の Mac よりさほど安いわけ でもないが)がオペレーティングシステム、CPU スピード、RAM 構成など といったものよりも重要になり得ることを示している。

この新しい流れが作られたもので底の浅い現象に見えるかもしれないが、 私は実はけっこう大事なのだと思う。コンピュータが強力になった結果、 細かな違いは以前ほど問題ではなくなっており、初心者のユーザーが購入 の決断をする時にこうしたことをあまり気にかけない可能性が高い。Mac OS の使い易さと一貫性は常に Windows より優っていたし、iMac のデザイ ンの魅力が PC の安さの上を行っていたのだ。もちろん、PC ベンダー側 だってこの市場の変化に気付き、同じぐらい優秀な産業デザイナーを雇っ て製品に磨きをかけてくるという危険はある。

また Apple は新 iMac を秘密のベールで覆っておくことに成功した。これ は立派なことだ。はっきり言ってボディカラーに新しい色が加わること自 体はたいしたことではない。こんなことは事前にわかっていたら発表のイ ンパクトは消えてなくなってしまう。新しい色を秘密にしておくことによっ て(Apple は Macworld のようなメディアに守秘契約をして知らせること すらしていなかった)、Jobs 氏は基調講演で聴衆にアッといわせることが できるようにしたのだ。びっくりさせられるのは個人的には好きだし(公 式発表というものが格段に面白くなるからだ)、Apple としても綿密に用 意された明快な発表が呼び起こす興奮の恩恵を受けることになる。

Macintosh 生態系 -- Apple が Macworld Expo と Macintosh 業界の舞 台中央に復帰したことによって、私には業界全体を Apple を支配的な生命 体とした生態系と考えるようになった。毎年の Macworld は Apple の変化 とともに推移した。今年は数こそ特に多いとは言えないもののゲームメー カーが生き生きとしていたし、圧倒的な人気でショーの話題をさらった製 品は G3 Macintosh で Sony PlayStation 用ゲームをプレイできる Connectix 社の Virtual Game Station 以外にない。

<http://www.virtualgamestation.com/>

Moscone の 2 つの大ホールで使われていたスペース全体は小さめだった が、去年 7 月にニューヨークで行われた不遇の Macworld Expo とは異な り、企画側は布のパーティションで壁を内側にずらして巧妙にスペースを 調整し、ちょっと見たぐらいでは違いがわからないようにしていた。一方、 小さなブースを構えていた小さな会社が多数あったため、出展者数はこれ までよりも多かったかもしれない。比較的狭いスペースに小さな会社をた くさん詰め込んだ Net Innovators パビリオンと Developer Central パビ リオンの存在も出展者数の増加に貢献した。

新顔の小企業で最多数を占めていたのは間違いなく周辺機器メーカーで、 その多くはバラエティに富んだ USB 機器をボンダイブルー一色で持ち込ん でいた。この多くは新しい iMac の色にはマッチしなくなってしまう。私 が話をした Apple 担当者によると、Apple はメーカーに半透明と白を使っ て色が合わなくなることがないようにするように働きかけていたらしい。

ショー会場での売上にはサンフランシスコ市が 10 % の税金を(消費税に 上乗せして)課税していたため、小売業者はまばらだった。CompUSA は Apple store-within-a-store を真似た大きなエリアを中央に設けていた が、一説によると会場の棚に製品を置いてもらうには、メーカー側が優待 料を支払わなければならなかったそうだ。

皮肉なことだが、iMac の“i”(Internet の i を意味するということに なっている)にもかかわらず、Net Innovators パビリオンを別とすればイ ンターネットは控え目な存在だった。これは部分的にはインターネット機 能は今ではあって当然になったので、メーカー側も数年前には鼻高々だっ た基本機能も今では喧伝しなくなってきたことによるだろう。また、無料 の Web ブラウザと、Microsoft 社の無料メールクライアント Outlook Express と競合することの困難さによって、インターネットクライアント ソフトウェアの多くが消滅してしまったことにもよるだろう。それでも Bare Bones Software や CE Software などのメールソフト会社は出展して いた。Apple が Mac OS が優秀なインターネットサーバ用プラットフォー ムであるという事実を無視し続ける限り、StarNine 社の Web サーバ、 WebSTAR や Maxum 社のキャッシュ機能付きプロキシサーバ兼コンテント フィルター、WebDoubler も苦戦を強いられることになるだろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00915>

Palm Computing 社の Palm デバイス用の製品の数にも感心させられた。 Macintosh にはかろうじて関係がある程度でしかないが、Palm デバイスの エートスは初期の Macintosh に通じるものがあり、ユーザーはブースに殺 到した。私自身には Palm デバイスはほとんど無意味なのだが、ある友人 が新しい名刺をビームしてくれようとした時には時代に取り残された寂し さを感じた。一応 Jeff を指差して「PalmPilot は持ってないけど、持っ ている人なら連れて来てるよ。」と取り繕うことはできたのだが。

進化は続く -- 今から 8 月の Macworld Boston まで Macintosh の世界 がどう変わるか興味深いところだ。進化というものは変化が一度に噴出す る時期と停滞期が繰返されて進む。今は活動期で、Apple に刻々と死が迫っ ていて、Macintosh ユーザーがああしろこうしろと騒いでいた時期と比べ たら好ましい限りだ。Apple が思い描いている通りに、良い方向への変化 がこのまま続いてくれればと思う。その方が業界の動向を追うのがはるか に楽しくなるし、そもそも Macintosh ユーザーであることが楽しくなけれ ば何の意味もないではないか。


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