TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#486/21-Jun-99

お亡くなりになったディスクをどうにかしたい?データ復旧の専門家 John Christopher 氏が Alsoft 社の DiskWarrior をレビューする。ユニークな 復旧テクニックが満載だ。また、Matt Neuburg が RichLink をレビューす る。これは Web ページでポップアップ式のハイパーテキストリンクを作成 するためのオーサリング環境とブラウザプラグインである。ニュースでは、 Netscape 社が Communicator 4.61 を出荷し、Apple 社が ATI Video Software Update 1.0 を出荷したこをとお伝えする。最後に TidBITS は次 週はお休みし、99 年 7 月 5 日に再開するこををお知らせする。

目次:

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MailBITS/21-Jun-99

次週の TidBITS はお休み -- 我々は、米国に夏が近付くころ特別に毎年 2 週間のお休みをとることにしている。したがって、次号の TidBITS は 99 年 7 月 5 日に発刊予定だ。しかし、この期間も TidBITS Update は 我々の Web サイトにポストを続けるし、TidBITS Talk も普段と変わらな い。 [JLC]

<http://www.tidbits.com/macnews.html>
<http://www.tidbits.com/search/talk.html>

ATI Video Update がクラッシュを修正 -- Apple 社は ATI Video Software Update 1.0 を出荷した。ATI RAGE グラフィックアクセラレータ を備えた最近の Power Macintosh、PowerBook、iMac モデルにあるいくつ かのクラッシュ問題を修正するものだ。このアップデートは 400 MHz 以上 のプロセッサ速度の Mac で 1280 x 1024 ピクセルの画面解像度を使った ときと、高解像度モニタで数百万色表示に設定したときのシステムフリー ズ問題を修正する。スクロール時にクラッシュしたいくつかのアプリケー ションは、このアップデート適用後に通常に動作するようになる。ATI Video Software Update 1.0 は 1.2 MB のダウンロード容量だ。 [JLC]

<http://asu.info.apple.com/swupdates.nsf/artnum/n11475>

Communicator 4.61 がより強固な暗号化を追加 -- Netscape Communications 社は、Netscape Communicator のバージョン 4.61 をポス トした。米国向けと輸出版に 56 ビット DES 暗号鍵と、アップデートされ た AOL Instant Messenger 2.0、さまざまなバグ修正を追加している。リ リースノートに反して、このバージョンは RealNetworks 社の RealPlayer G2 ではなく RealPlayer 5.0 が付属している。また Apple 社の QuickTime ブラウザプラグインも欠けている。128 ビット暗号化を誇るバージョンも 米国とカナダ市民向けに入手可能になっている。( TidBITS-481 の “Netscape Communicator 4.6 登場”を参照。) Netscape によれば、バー ジョン 4.6 で出現した印刷時のいくつかの問題は、このプログラムの印刷 処理モデルに構造的な変更が必要なため、この現在のリリースで解決され ていないという。Netscape 4.61 は Mac OS 7.6.1 以降と PowerPC ベース のシステムを必要とする。 [JLC]

<http://home.netscape.com/download/>
<http://home.netscape.com/eng/mozilla/4.6/relnotes/mac-4.6.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05393>


Alsoft 社の DiskWarrior で崩壊と闘う

by John Christopher <datasavior@excite.com>
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

あなたがソフトウェアアプリケーションに興奮を覚えたとしても、それは ディスクユーティリティプログラムではないであろう。世の中には単にあ まりに多くの流行のゲームやグラフィックアプリケーションやあなたの想 像をくすぐるような機能満載の会計プログラムなどがあふれているが、あ なたのハードディスクの状態をチェックするのが仕事の製品などそれに較 べれば選択肢は非常に限られたものとなる - 結局のところ、あなたがコン ピュータを買うのはそれをメンテするのに時間を費やすために買うのでは ない。何であれ、ディスクユーティリティは、あなたの Macintosh がきち んと動くようにする手助けをし、その結果、あなたは流行りのゲームをし たり、目を奪うようなグラフィックスを作ったり、そして小切手帳の残高 計算をしたりするのにより多くの時間を費やせるようにしてくれる。

Alsoft 社が数ヶ月前 DiskWarrior を発表した時 ( TidBITS-457 “Alsoft 社の DiskWarrior、ディレクトリ損傷の修復に挑む”参照) 、私は今時誰 かがなぜもう一つのディスクユーティリティプログラムなど開発しようと するのか大変興味を持ったものである。Symantec 社は Norton Utilities をバージョン 4 に、MicroMat 社はその TechTool Pro 製品にディレクト リ補修ルーチンを加えて戦列に残っているし、Apple 社ですら単純であっ た Disk First Aid を強化して Mac OS に無償で組込まれたより頑丈なツー ルへと変身している。

<http://www.alsoft.com/DiskWarrior/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05190>
<http://www.symantec.com/nu/fs_num4.html>
<http://www.micromat.com/micromat/TTP2/ttp2.html>

DiskWarrior を数ヶ月使ってみた今、私はこの製品を理解できたし信じら れるようになった。その中身を紹介してみたい。

Warrior 入門 -- HFS, HFS Plus, アロケーションブロックや他の低レベ ルディスク用語に入り込むことなしに、Mac OS ファイルシステムの基本的 機能は本の目次のような働きをするものだと例えてみたい。ちょうど目次 がどの章がどのページにあるかを示すように、Mac のディレクトリストラ クチャはあなたのファイルの場所を記録している。このストラクチャはい くつかの部分に分かれていて、いくつのブロックが使われているか、一つ のファイルがいくつに断片化されているかと、個々の断片がどこにしまわ れているかを記録している。これらのストラクチャは興味深い名前を持っ ていて、たとえば Master Directory Block とか、エクステントディレク トリとか、永久にこの世に名を残すであろうカタログ B ツリーとかがあ る。(Macintosh のディスクがどの様に構成されているか、あるいは HFS Plus ボリュームがどの様に機能するのかのさらに詳細な解説については Geoff Duncan の記事 TidBITS-414 “Macintosh Extended Format (HFS Plus)のすべて”を参照してほしい)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04668>

ほとんどのディスクユーティリティは同じように動く、まずハードディス クをスキャンし、種々のディレクトリストラクチャを調べ、そして何が修 正されなければならないかについて最善の推量をする。これらのユーティ リティが問題を修理する場合、そのディスクディレクトリに永久変更を書 き込む。ほとんどの場合、これらのプログラムは発見した問題をそれが何 であれ直してくれる、しかしたまにはエラーも発生する、たとえばプログ ラムが問題を間違って診断したり、あるいは一つの問題を直したため次の 問題を発生させるとかである。最悪のシナリオでは、修理の行為がディス クにアクセスできなくしてしまうとか、ディレクトリを空っぽにしてあた かもあなたのデータはすべてなくなってしまったというようのところまで 変更してしまう事がある!

実戦 -- DiskWarrior は他の市販ディスクユーティリティとは違ったア プローチを取っている。専門化したプログラムや機能の雑多な寄集めでは なく、DiskWarrior は 2 つの基本的な機能のみを提供する:データの回復 とパフォーマンス改善のためのディレクトリストラクチャの最適化である。 DiskWarrior は市場に出回っているディスクユーティリティの中では最も 簡素化されたインターフェースを持っている - 事実、最近の Apple Software Design Awards では、ユーザ経験部門を含んで複数の賞を獲得し ている。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05402>

問題を見つけ修正するためにハードディスク上を這いずり回るかわりに、 DiskWarrior はあなたのディスク、ファイルそしてそれらがどう整理格納 されているかについて知る事のできる情報の非常に細かい部分までを使っ て、まったく新しいディレクトリを構築しようと試みる。このドライブの ディレクトリを再構築するという全体的なアプローチは、ディスクのディ レクトリストラクチャ上を動きながら、一個一個個別にディレクトリダメー ジを修正しようとする一般的なユーティリティとはまったく違った結果に 到達する事がある。もし DiskWarrior が再構築したディレクトリの結果が 気に入れば、DiskWarrior はディスク上の障害を受けたディレクトリを置 き換えることができる;また DiskWarrior を使って、あなたのディレクト リを最適化するのと小さな問題を重大障害になる前に見つける事で予防保 全として使う事もできる。

DiskWarrior を起動すると、一つのウィンドウがポップアップメニューを 表示する、それでどのドライブ、あるいはボリュームを再構築するのか選 択する。同じウィンドウにはドライブのファイルシステム、バスロケーショ ンとステータスに関する情報が表示されるが、それですべてである。

一旦再構築すべきディスクを選ぶと、DiskWarrior は新ディレクトリを作 り、あなたのディスクのディレクトリストラクチャを調べ、カタログの最 適化を 10 ステップのプロセスで行う。これはきわめて早いプロセスで: 私がテストに使った PowerPC 603e ベースの StarMax Macintosh クローン 上のかなりダメージを受けている 4 GB のハードディスクをスキャンする のにおおよそ 3 分を要した。スキャンが完了すると、DiskWarrior は発見 した問題のレポートを表示する。この時点では、DiskWarrior はすでに新 ディレクトリを作成済みでであるが、ハードディスクに対してはいかなる 変更も加えていない。もし、DiskWarrior を他のドライブユーティリティ と一緒に使おうと考えているなら、DiskWarrior を先に使うのを忘れない ように。というのも、ディスク上にいかなる変更も加えずにここまでこれ てかつその潜在的恩恵のほとんどを手に入れる事ができるからである。

ちょっと待って - DiskWarrior はなぜ変更を加える事なしにあなたを助け られるのか?DiskWarrior の最善の機能はその Preview である、それは ディスクに対してディレクトリの変更を書き加える以前にドライブの内容 を見てさらにそれとやりとりする事ができる。DiskWarrior はこの魔法の ような事をデスクトップに一種の仮想ディスクを作成しかつロックをかけ て書き込みを禁止する事で実現している。あなたのドライブの中身が見ら れるだけではなく、新ディレクトリの機能をプログラムを起動したりファ イルを開いたりする事でテストもできる。最も大事な事は、あなたのデー タを他の記録媒体にコピーする事で救済できる事である。ある場合には DiskWarrior を使ってはここから先に進む必要もないかも知れない:絶対 に欠かせない一つか二つのファイルを外にコピーして外し、後はディスク を再フォーマットしてしまうのである。

この記事を投稿するちょっと前に、たまたま我々のバックアップサーバの 一つがこけてしまった - それは Power Mac G3 で Mac OS 8.5.1 と Conley 社の SoftRaid ドライバソフトウェアを使って 4 つの 6 GB ドライブで構 成した 24 GB のディスクアレイからなっている。サーバがダウンしたとき 重要なデータは含まれていなかったので、この際だからと Norton Utilities と Apple 社の Disk First Aid の最新版を試してみる事とし た。まず Norton Utilities の Disk Doctor はアレイを認識できなかった ;それは SCSI バス上のドライブを個々に認識しただけだあった。Disk First Aid はアレイに対しては動作したがこのサーバのカタログ損傷は直 せなかった。

<http://www.softraid.com/>

それから我々は DiskWarrior を試してみた。このプログラムはドライブが アレイ状にストライプ構成されていると認識した。Rebuild ボタンを押し て数分待った後、我々は新ディレクトリをプレビューした - そしてすべて のファイルは戻っていた。全プロセスにおおよそ 15 分かかったが DiskWarrior はまったく問題なく動いて、他のプログラムが成し得なかっ た事をやり遂げた。

普通と違う最適化 -- ほとんどのユーティリティはハードディスクをデ フラグメントして性能改善を引き出すアプリケーションを含んでいる。こ れらのプログラムはハードディスク上に散らばっている諸々のファイル断 片を検知しそれらを連続するブロックのグループへと再配置する作業をす る。こうする事でファイルやプログラムへのアクセスをスピードアップで きる。

ここでも DiskWarrior は違ったアプローチをとる。ディスク上のファイル をデフラグメントする代わりに、ディスクのディレクトリの最適化に集中 するのである。他の最適化プログラムはカタログ B ツリーおよびエクステ ントファイルをデフラグメントするのだが、DiskWarrior はツリーストラ クチャそのものを変えて改善しようとする。健康なハードディスクに対し ては、あたかも行方知らずのデータの回復を図るかのように、DiskWarrior にディレクトリストラクチャを再構築させてやればよい。ほんの少しの改 善でも望むスピード狂にとっては DiskWarrior からは使うに値するに十分 な効果が得られるであろう。

ディレクトリ専門 -- DiskWarrior はドライブに関するいかなる問題も そのドライブのディレクトリストラクチャのなかのエラーとして現れるこ とを前提としている - そして大抵の場合それで合っている。ソフトウェア クラッシュ、停電、強制再立上げがほとんどのユーザが日常経験する出来 事であり、ひいてはこれがディレクトリに障害を及ぼすだいたいの原因と もなっている。

しかしながら、DiskWarrior はディレクトリのみに焦点を当てていてディ スクの他の所にはあまり注意を払わないのも事実である。あなたのディス クを本に例えるならば、DiskWarrior は目次を調べ、確認しそしてエレガ ントな新しい目次を作ってくれるが、特定のセンテンスを探すためにすべ てのページを文字から文字へしらみつぶしに探してくれはしない。今日の 蓄積装置の寿命と信頼性を考えれば、多くの場合 DiskWarrior のアプロー チは正しい。しかしながら、もしあなたのディスクのデータ領域がやられ た場合 - たとえば不良メディアであったり、メカニズムの狂いであった り、不良部品のせいであったり、あるいは落としたりぶっつけたりしたた めの物理的な障害のせいであったりした場合、DiskWarrior は問題を見つ けて修理する能力は持ち合わせていない。物理的障害は Zip カートリッジ のようなリムーバブルメディアに多発する問題ではあるが、これはどんな 蓄積装置にも起こり得る。ドキュメントの断片を探してドライブの内容を 隈なく探すのは大変な仕事ではあるが、卒論を書き直したり、かなめのデー タを再収集するよりは楽なことが間々ある。他のディスクユーティリティ パッケージはこの様な低レベルツールを提供しており、そして多くのハー ドディスクフォーマッタやディスク最適化プログラムは物理的障害の兆候 を探してディスクの表面スキャンを実行できる。忘れていけないことは、 製造者の心強い保証にもかかわらず、すべての蓄積装置の故障率は 100 パーセントである:それは単に故障がどれだけ早く起こるかの問題にすぎ ない。

修理の仕上げ -- DiskWarrior は、もし度重なるクラッシュを経験して いる人、あるいはソフトウェアエラーやデータ紛失で困っているユーザの ために Mac をメンテする人のためには最高のツールである。DiskWarrior の特長はそのプレビュー機能、スピードある再構築機能、そしてインター フェースの簡潔さである。DiskWarrior は、他のユーティリティが手が出 ない様な場合でもドライブを回復できるほど非常に強力なプログラムであ り、ユーティリティ部門の一角を占めるべきものである。

DiskWarrior は Alsoft 社からは 70 ドルで電子的に入手可能で、CD-ROM 版は多くの再販店で入手できる。DiskWarrior CD-ROM 版は Mac OS 7.6.1, 8.1, それに 8.5.1 のシステムフォルダを持っており、Alsoft 社の人の気 の利いた心遣いで、CD-ROM ドライブから起動できるシステムなら何でも (これは少なくとも SE/30 から最新の iMac そして青と白の Power Macintosh G3 機まですべてカバーする)この CD-ROM を起動ディスクとし て使うことができる。DiskWarrior は 68020 プロセサ以上のシステム(す べての PowerPC ベースのシステム含む)と System 7.1; HFS Plus ディス クを再構築するには Mac OS 8.1 以上が必要である。


RichLink、Hypertext の成果に及ぶ

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:小川 浄 <tao@peanet.ne.jp>)

情報化世代のもっともパワフルな概念の一つがハイパーテキストだ。Ted Nelson 氏によって初めて提唱されたハイパーテキストにはさまざまな形態 があるが、基本的な考えは一つの書類中の語や句が、他の書類の中へのポー タルとなっているという点にある。筆者は情報検索に取り憑かれ長い間ハ イパーテキストに熱中していた。TidBITS レビューのいくつかをハイパー テキスト対応アプリケーションで作ったこともある。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00752>
<http://www.tidbits.com/tb-issues/tidbits-095.html>

ブラウザと WWW のお陰でハイパーテキストは見なれたアイデアになってき た。しかし残念なことに Web ブラウザによるハイパーテキストの実現には ある種の退行が含まれている。

Sentius Corporation 社は上の 2 つの問題を解決しようとした。その手法 は 2 つの部分からなっている。RichLink Author と呼ばれるアプリケー ションと、RichLink View というブラウザ用プラグインである。

<http://www.sentius.com/Sentius/English/>

Rich 書類を作る -- RichLink Author ではスタイルを適用したテキスト 書類から作業を開始する。書類には SimpleText 同様インライン画像を配 することができる。サブの書類ウィンドウを使って特定の語にコメントを 付ける。この書類(テキストおよびコメント)を最終形態としてもよい。 開いて、編集し、読むことができる。RichLink Author を持っている人に 渡し、読んでもらえる。しかしこの書類の本来の目的は Web ブラウザに よってインターネット経由で入手できるようにする、という点にある。

そのためには、RichLink Author に RLF ファイルを生成させる(つまり ファイル名の最後が「.rlf」になるようにする。おそらく「RichLink file」の略である)。そして RLF ファイルにリンクした <EMBED> タグを 含んだ HTML 書類を作るのである。これで利用者が RichLink View プラグ インを組み込んだブラウザで HTML 書類を開くと RLF を確認できるように なる。ブラウザウィンドウには下部に複数のコントローラのあるテキスト スクロールウィンドウとして RLF が表示される。PDF が Adobe 社の PDFViewer プラグインを通して表示されるのとよく似ている。ではコメン トの方はどうなるのだろうか? そこが面白いのだ。コメントは当初見えな いようになっている。コメントが付加された語の上に利用者がマウスを走 らせると、カーソルが変化してコメントの存在を知らせる。その語の上で 利用者がマウスボタンを押すと、階層コンテクストメニューがマウスの下 にポップアップする。このメニューがコメントを表示する。

この簡便な方式、つまり特定の語に付加されたコメントを表示する階層コ ンテクストポップアップメニュー、は極めて独創的である。それはポップ アップによって一時的機能になっている。利用者は現在の書類から離れる ことはない上、マウスボタンを離せばメニューは消える。メニューなので 異なる種類のコメントを同時に含めることができる。しかも階層構造によ り利用者は一度に一つのコメントだけを目にする。たとえば一つの言葉が 次の 3 つのコメントを有しているとしよう。解説、批評、ジョーク。利用 者がその語をクリックすると、ポップアップメニューには解説、批評、 ジョークという 3 つの項目が含まれている。各項目は階層構造であり、利 用者が批評の上にマウスを保持すると実際の批評的コメントのテキストが 右側にポップアップする。

単一カテゴリに複数コメントを配することも可能である。つまりたとえば 批評の上でカーソルを保持すると、2 項目のさらなる階層メニュー、ポス ト構造主義者とフェミニスト、が表示される。その 2 項目はそれぞれ別の コメントにつながっている、という具合に。コメントテキストにはスタイ ルを適用でき、また数種類の特別なフォント(日本語の文字や発音記号な ど)をプラグインの中に埋め込むことができる。単一のメニュー項目もス クロール可能であり、コメントが相当長い段落となっても対応できる。た だし短いコメントの方が扱いやすいことは確かである。テキストのみなら ずコメントも通常のブラウザ・リンクとすることができる。Web ページの URL、画像などを設定しておくと、利用者がその項目を選択すればブラウザ は単純に通常の方法でダウンロードし表示する(単一のテキストから複数 のリンクを張ることも可能)。書類は DOCMaker と同じように複数の章に 分けることもできる。各章間をナビゲートするために、その内容のポップ アップテーブルならびにフレーム下部にある矢印ボタンが存在する。

<http://www.hsv.tis.net/~greenmtn/docm1.html>

辞書がパワーを増幅させる -- 驚くことに RichLink は無料である。 RichLink View のみならず、RLF を生成する RichLink Author プログラム も無料である。では Sentius 社はどうやってこの製品から代金を得ようと しているのか? 辞書によってである。書類に注釈を加える一般的理由に、 その言語にあまり慣れていない読者へのアシストがある。概してそのよう な読者は全体的な意味は取れるのだが、知らない語がわずかにあるのだ。 RLF を用いれば紙の辞書で語を追って時間を費やす必要がなくなる。ただ 語をクリックすれば語義が現れる。

読者がどの語を知らないのか確かめるすべはないので、語に残らず定義コ メントを付けたくなるかもしれない(もしくは非常に一般的な語以外の全 部の語)。そりゃあ大変な仕事だ、そうでしょう? 答えはノーだ。このよ うな定義コメントを付加するプロセスは全自動化されている。Sentius 社 は辞書を独占形態で供給する。同社では現時点までに、英語語義辞書の American Heritage dictionary、さらに英語語義バイリンガル辞書のオラ ンダ語版、フランス語版、ドイツ語版、イタリア語版、日本語版、スペイ ン語版を用意している。それらの辞書に基づいてコメントを付けてほしい と RichLink Author に知らせてやるだけでよいのだ。そしてコーヒーでも 取ってこよう。席に戻ると、辞書に基づいてコメントが付けられている。

簡単なサンプルとして、RLF を埋め込んだ Web ページをポストしてみた。 閲覧するにはブラウザを起動する前にプラグインがインストールされてい る必要がある。フリーズ防止のため、ブラウザの割り当てメモリをかなり 増やしておこう。そのページは実際に数年前の筆者の TidBITS 記事を模し たものだ。主な目的はこうだ。万一フランス語翻訳チームが一時的に活動 停止した場合(神よ御加護を!)我々は仏語圏の読者向けに注釈を付加して ページをポストすることになるかもしれない、という考えだ。英語と仏語 の語義は、筆者の手をまったく煩わすことなく自動的に付加されていった。 加えて手動でコメントを一つ(最初の文の句「a week」に)と、普通のハ イパーリンクを 2 つ(最初の文の語「University」と「Christchurch」 に)を付けた。要した時間は全部で約 5 分だ。RichLink Author 自体は辞 書ベースのコメントを作成するためさらに長い間作業を行っていたのは言 うまでもない。

<http://www.jetlink.net/~mattn/downloads/myantip.html>
<http://www.sentius.com/Sentius/English/RichLink/Software/ rlv_downloads.html>
<http://www.sentius.com/Sentius/English/RichLink/Software/Author/ author_download.html>

目を奪うもの -- RichLink Author のインターフェースは要領は良いが、 簡潔なコンセプトをわざわざ使いづらくしているようで、どうでもよいと ころでしょっちゅう驚かされる。筆者が最初に RichLink に出会ったのは 1998 年 1 月の Macworld Expo であった。今回 shrinkwrap されて出荷さ れた製品をみてがっかりしたのは Sentius 社がその後改善した部分があま りにも少なかった点である。実用テストをほとんどあるいはまったく経て 来なかったようにも思える。

全体がブランクの新規書類を作成することはできない。新規書類は例外な く 2 つのコメント文字を持っており、作業開始にあたってそれを手動で取 り除かねばならない。コメントを作成し編集しているのだから、コメント 間はタブで飛ぶことができる。しかしタブでコメントへ飛ぶ際に編集を行 うことは許されていない(タイプ、ペースト不可)。それから最初に Return を押さねばならないが、使いづらく Macintosh の伝統的作法にも そぐわない。メニューに「保存」は存在しない。RichLink Author は裏側 で絶えず保存を実行している。あえて怖いものを見たい気にさせないよう な出来である。

辞書は巨大だが CD から直接利用できない。大きなハードディスクスペー スが必要だ。辞書を閲覧することは可能だが、メニュー項目からではない。 Window メニューから Startup Screen を選択しなければならず(!)、後 はリザルトダイアログのボタンを押すだけだ。辞書からコメントを呼び出 すには 2 通りのダイアログでそれを命じる必要があるが、煩わしいものだ。

インストールは思いがけない反応の連続で悪夢のようである。警告なしに 数種のビットマップフォントがインストールされ、使用中のフォント管理 システム(Suitcase、Font Reserve 等)はバイパスされてしまう。ある フォントがすでに使用しているフォント(Eudora の Mishawaka)とコンフ リクトを起こした。RichLink のファイルインポートは XTND に依ってい る。その結果フィルタで一杯の Claris Translator フォルダが Claris フォルダの中に作成される。Claris フォルダの中にどんなフィルタが入っ ていたかはお構いなしだ。このゴタゴタを収めるのに筆者は数時間かかっ た。

ドキュメンテーションは良好と言い難い。たった 60 ページのマニュアル は簡明なコンセプトを意味不明のジャーゴンで覆い隠してしまっている。 RichLink の目的と使用法を前もって分っていなかったらマニュアルからそ れを知ることは不可能だったに違いない。マニュアルは印刷物として、あ るいは PDF として、またブラウザで見る RLF として入手可能である。こ の RLF のマニュアルは各章間のリンクが作動せず RichLink 自身の PR に もならないような出来だ。書類内でセクション間を飛ぶ機能が明らかに壊 れている。

最初のうち摩訶不思議にみえる、実際的なオンライン・チュートリアルが 付いてくる。チュートリアル・ファイルの目的が何なのかまったく知るす べがないのだ。ファイル形式は BBEdit だが奇妙にも Apple Guide のアイ コンで偽装してある。その本当の目的を理解してどれを最初にみるか当た りをつけブラウザで開くのは、利用者まかせということになる。重要な詳 細情報や警告、数例のサンプル・ファイルを載せている 2 つの ReadMe ファイルを解読しながら、これらチュートリアル書類をやっつけねばなら ない。全体が大変分りにくくイライラさせられる。

チュートリアルはなかなかよくできた実践的ガイドで RichLink を使い始 める際役に立つ。だが度を越して JavaScript に依存している点はいただ けない。第一ステップを実行(テキストファイルのオープン)しようとす ると、筆者のコンピュータはフリーズした。明らかに RichLink が XTND をインストールしたのが原因である。やっとフリーズ回避の方法をみつけ て第一ステップを実行すると、ブラウザからチュートリアルが見えなくなっ て別の書類と入れ替わっており、チュートリアルは続行困難になった。面 食らうようなスペル違いが書類とプログラム自体に数ヵ所存在する。見て すぐわかる間違いもある。チュートリアルは虫メガネのアイコンを「zoom」 としている(それは「find」である)。

切れてるリンク -- RichLink は素晴らしいアイデアだ。RichLink Author が無料である点も好ましい。しかしこの完成度は筆者を躊躇させ る。Sentius 社が自分で作ったドッグフードを食べていない、つまり同社 の担当者たちが自分で RichLink を使っていないとは筆者は思いたくない。 おそらく彼らは障害に慣れっこになってしまったのだと思う。あるいは障 害を修正する気がないのかもしれない。利用者がカネを返せと机をガンガ ン叩いて叫ぶことがないからだ。良い製品は細部へのこだわりを宿してい る。良い製品は難しいことを簡単にする。良い製品はコンピュータがクラッ シュしない、あるいはデータが壊れないという感触を漂わせている。 RichLink Author はそのどれにも該当しない。しかしアイデア自体がパワ フルなので利用者がその実現方法にこだわらない可能性もあるだろう。

RichLink には System 7.5.5 以降を載せた Power Macintosh、QuickTime 3.0 以降が必須。マニュアルは 6 MB の空き RAM 領域が必要としているが RichLink Author は 39,506 K(38.5 MB)というとんでもない量の RAM を 望ましいとしている(辞書を使う場合はさらに増える)ので眉に唾だ。市 販バージョン(複数の辞書を含む)の価格は 500 ドルからである。


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