TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#505/08-Nov-99

MP3 ファイルを保存するのに大容量ハードディスクを検討中? まずは Jerry Kindall 氏による Macintosh 用 MP3 エンコーダ総覧でベストの費用対ビッ トレート効果をゲットしていただこう。また、TidBITS が Outlook Express 5.0 でスパムとして認識されはしなかっただろうか? なぜそうなったかの かと、Microsoft がどんな対策を講じているかをお知らせする。ニュース としては Microsoft が独占企業であると認定されたことや、Mac インター フェース世論調査の結果、それに Eudora 4.2.2 と Power Mac G4(PCI Graphics) ROM のアップデートをお届けする。

目次:

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MailBITS/01-Nov-99

(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)

Microsoft 独占企業との認定 -- 先週の金曜日、Thomas Penfield Jackson 連邦地方裁判所判事は、進行中の Microsoft 社に対する連邦反ト ラスト訴訟について“事実認定”を発表した。それによると、Microsoft 社は Intel 互換 PC オペレーティングシステムを独占していると認定して いる。( TidBITS で取り上げた一連の Microsoft 反トラスト訴訟につい ては、現行の訴訟についても詳しく伝えている二部構成の「誰を反トラス トするか?」を参照されたい。リンクは下記の通り。)Jackson 判事による と、「総合すると、Microsoft が独占状態にあることを示す事実は 3 つあ る。まず、Microsoft の Intel 互換 PC オペレーティングシステムのシェ アは極めて高く安定していること。次に、Microsoft の圧倒的シェアは参 入障害よって保護されていること。そして、この障害の結果として、 Microsoft のユーザーは Windows に代わる現実的な選択肢を欠いているこ と。」一方、Microsoft は Bill Gates 氏からの書簡を Web サイトに掲載 した。「裁判所の判定には敬意を表しつつも、同意しかねる点がいくつか あります。最終的には Microsoft の行為や革新が公平で合法的なものであ り、消費者や業界、そして米国の経済に多大な利益をもたらしたことが、 米国の法体系によって認められると信じています。」事実認定は判決では ないが、このことは Jackson 判事がこの歴史的反トラスト訴訟において米 国司法省原告の主張に傾いていることを示すものと考えられる。最終判決 は来年まで出ないだろうし、控訴や和解交渉のために裁判が相当期間長引 くことも予想できる。 [ACE]

<http://usvms.gpo.gov/findfact.html>
<http://www.microsoft.com/presspass/trial/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1152>

Eudora Pro 4.2.2 アップデート -- Qualcomm 社は Eudora Pro 4.x の すべてのバージョン(ただし公開ベータ版は除く)を 4.2.2 にアップデー トする無料の 4.1 MB のアップデータをリリースした。新バージョンは無 数の小さなバグフィックスにより、すべての 4.2 ユーザーにとって重要な 意味を持っている。加えて Mac OS 9 のマルチユーザー機能を使っている 人には耳寄りな仕様変更も行われている。バージョン 4.2.2 から、新規に インストールされた Eudora は Eudora Folder(メール、ニックネーム、 フィルタ、設定などが格納されている)を Mac のオーナーの Documents フォルダの最上位に保存する。他のユーザーの Eudora Folder は Users フォルダの個人フォルダの中にある Documents フォルダに入ることにな る。従来バージョンからのアップグレードの場合は、Eudora は問題なく今 までどおり System Folder に Eudora Folder を格納する。マルチユーザー のサポート以外にも、この方式によって Eudora Folder がバックアップさ れる可能性が高まり、クリーンインストールの際に消滅する危険が減り、 デフォルトで Sherlock のインデックス対象となる。[ACE]

<http://www.eudora.com/pro_email/updaters.html>

Power Mac G4(PCI Graphics)ROM アップデート -- Apple は Power Mac G4 (PCI Graphics)ユーザーで、まだ Mac OS 8.6 を使っているユーザー のために Mac OS ROM ファイルのアップデートを公開した。(G4 マシンが PCI Graphics か AGP Graphics かをチェックするには、マイクとスピー カージャックが水平方向に並んでいるかを見る。水平だったら PCI Graphics なのだ。Power Mac G4 ROM 1.8.1 アップデートは 2.5 MB の自 己マウントディスクイメージで、Power Mac G4(PCI Graphics)で仮想メ モリがオンになっている際に起きるデータ破損に対処し、Extensis PhotoTools がインストールされている際に Adobe Photoshop がクラッシュ する問題に対応したものだ。Power Mac G4(AGP Graphics)と Mac OS 9 では問題はすでに解決されているので、この場合にはアップデートは不要 でありインストールもできなくなっている。 [MHA]

<http://asu.info.apple.com/swupdates.nsf/artnum/n11533>
<http://www.adobe.com/products/photoshop/>
<http://www.extensis.com/phototools/>

アンケート結果:QuickTime と Sherlock のインターフェース -- 政治 家が投票の結果僅差で勝ち、人々から支持されたと自慢するのには、いつ も当惑させられる。しかし、Apple 社や他の開発者が将来のユーザーイン ターフェースを“スタイリッシュな”QuickTime Player や Sherlock 2 に もっと似せて作るべきと思うか否かを問いかけた、我々の最新のアンケー ト結果によって、我々は人々の支持について考えさせられた。遠慮なしに 言うと、人々はこのデザイントレンドを嫌っており、投票者の 95 パーセ ントはそのようなインターフェースが将来使われるのを見たくないと回答 している。

もちろん、このアンケートは科学的ではなく、我々のホームページを訪れ てこの話題に投票する時間と興味があった約 950 人の TidBITS 読者の意 見を単に記録しただけのものだ。しかし 95 パーセントだって? 我々は Apple 社に対してどうしろと言うことはできない(まあ、我々には言える が、馬の耳に念仏だろう)が、Macintosh に精通したユーザーの大部分が、 このデザイントレンドはインターフェースの未来を示すべきでないと強く 感じていると思われる。このメッセージはおそらく、Macintosh 開発者コ ミュニティーへ伝えられるのがよいだろう。インターフェースの革新は注 意して行われなければならない、そして Apple 社の伝統的なヒューマンイ ンターフェース規約を守って間違いを犯さないようにというメッセージを、 開発者たちは肝に銘じておいて欲しい。 [ACE]

クイズのお知らせ:PRAM はあなたを滅入らせたか? 今週のアンケートの 話題から少し離れて、代わりに不思議な Mac の問題を解決する助けになる クイズに移ろう。Mac はどれでも、様々の大切な設定を“パラメータ RAM” または短く PRAM と呼ばれる何かに保存する。PRAM の内容は損なわれる可 能性があり、そうなると異常な動作が次々と起きる。一例を挙げよう。我々 の仲間が最近、自分たちの Performa 6400 が内蔵ハードディスクからも CD-ROMからも起動しなくなったと泣きついてきた。外部ハードディスクか らの起動も失敗したが、ついに私はフロッピーディスクから起動すること ができ、その後いくつかのディスクユーティリティを実行したが何の問題 も報告されなかった。最後に私は、Mac を完全に動作する状態へ簡単に戻 す手段である PRAM のリセットを試した。ここで質問:あなたはどんな方 法で PRAM をリセットするか? たくさんの長年にわたる Macintosh ユー ザーが答えを知っているので、PRAM に保存される設定のリストを含むボー ナス情報がクイズの回答ページにある。あなたの知識を試すために、また 少しは学ぶことがあるかもしれないから、我々のホームページに立ち寄っ て欲しい。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


OE 5.0 Junk Mail Filter の困った所行

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Microsoft 社から最近リーリースされた Outlook Express 5.0 メールクラ イアントの主な新機能の中に Junk Mail Filter というものがある。これ をオンにしておけば、メッセージが入ってくるとそれがあなたの読みたい と思うようなものかどうか審査してくれる。この Junk Mail Filter の目 的はスパムを割り出して、ユーザーが時間を無駄にしたり、押し付けがま しい広告メールを目にしなくてすむようにすることである。ところが、こ の Junk Mail Filter を使うと予期せぬ結果に出くわしたりする。

Microsoft 社の目指すところは実に素晴らしい。スパム撲滅は我々みんな が望むことである。同社は Windows 用の Outlook Express 5.0 ベータ版 の類似の機能のためにグリーティングカード会社 Blue Mountain Arts 社 に起こされた訴訟問題を避けるための対処さえ行った。ベータの Windows 版とは違い、Mac 版の方の Junk Mail Filter はデフォルトでオフになっ ており、スパムだと思われるメッセージを動かしてしまうのではなくスパ ムとして印をつける。また、使用するフィルタの条件や方法が異なっている。

<http://news.cnet.com/news/0-1005-200-338013.html>

調査をしたり考えたところ、残念ながらインターネットメールをまっとう に使用している会社にとっては Mac 版の Junk Mail Filter でも問題にな ると感じた。ごく最近読者から“感度”スライダがデフォルトのままの状 態で、Junk Mail Filter は TidBITS をスパムに分類したという報告を受 けた。この振る舞いは我々にとって由々しきことであるが、まっとうなメッ セージを送っているのに迷惑者としての電子らく印を押されてしまうのは 我々だけに限った話ではなく、他にもいるのだ。

スパムに分類されたからといってあれこれ言うのは、過剰反応と思われる かもしれない。なにしろ、Junk Mail Filter がスパムメールとみなすもの に対し、今後そのような判断をしないようにユーザー側で指定する術がい くつか用意されているのだから。しかし、インターネットでは仕事上の信 用は極めて大切なものであり、メールがスパムとして分類されるのは、会 社の信用に傷をつけられることになるので、深刻な問題になる。長期にわ たり購読してくださっている方々が戸惑う心配はないだろうが、Microsoft 社の大きさとその業界における地位が作用して、新規購読者が Outlook Express の判断を安直に受け取ってしまい、TidBITS がスパムであると思っ てしまうかもしれない。その人がもしその間違った思い込みをインターネッ ト上で触れ回ったり、またはその人がどこかの組織やスポンサーになって くれるかもしれないところの決定権を持った人だったりすると、購読者や スポンサーを新規開拓しようという我々の努力は容易に水になってしまう だろう。我々が話をしたほかの企業も同様の心配をしていた。

Outlook Express の設計者は善かれと思ってやったことだと考え、先方に 連絡をとり我々の抱いている危惧について説明した。我々の状況を細かに 説明し、我々およびメールを利用している企業への影響などを話し合った 結果、Microsoft 社は以下のことに同意をしてくれた。

『Outlook Express 5 の Macintosh 版に付属している Junk Mail Filter がユーザーが読みたいだろう一部のメッセージまでスパムの疑いのあると して判断してしまうことがあると判明しました。同社は現在、読みたいだ ろうメッセージと読みたくないだろうものをもっと賢く分類するように Junk Mail Filter を改善すべくこの分野の専門家と密に作業を行っている ところです。たとえば、先日購読方式のニュースレター TidBITS がスパム の疑いがあるメッセージとして分類されるということを知りました。Junk Mail Filter が TidBITS ニュースレターをはじめとするすべての読みたい メールを確実にスパムではないと判断できるように、以下に挙げる簡単で すぐにできる手順のうちいずれかを実行するようお願いします。』

"1) あなたのアドレス帳にメーリングリストのアドレスを追加する。

"2) Junk Mail フィルタの除外リストに送り主のドメイン名(例、 tidbits.com)を追加する。

"3) Mailing List Manager を利用してその送り主用のメーリングリスト ルールを作成する。

<http://www.microsoft.com/mac/oe/oe5junkmail.htm>

Microsoft が TidBITS やその他企業を害しようとしていると非難するつも りは全くない。我々を含め Junk Mail Feature のために迷惑を被ることに なったのは不愉快であるが、同社の迅速かつ適切な回答には満足している。


MP3 の作成 Part 2

by Jerry Kindall <kindall@manual.com>
(翻訳:冨田 将英 <atimot18@sa2.so-net.ne.jp>)
(  :石川篤利 <ishia@hk.ntt.net>)

最近の MP3 人口はみんなインターネットから音楽ファイルをダウンロード するようになった。MP3 エンコーディングソフトを使えば、自分が持って いる音楽 CD から MP3 ファイルを作ることができる。この記事の第一部で は、MP3 エンコーディングについて簡単に述べた( TidBITS-504 の“MP3 の作成 Part 1”を参照)。今週は、ヘッドフォンテストと、5 つの有名な エンコーディングプログラムによる MP3 作成の結果をお伝えする。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05636>

Xing AudioCatalyst 2.0.1 -- AudioCatalyst は Mac 用 として最初の、 そしてオーディオを一旦ハードディスクに保存せずに CD から直接エンコー ドできる最初の MP3 エンコーダである。初期リリースでは Windows の先 輩ソフトにあった機能を備えていなかったが、AudioCatalyst 2.0 では兄 弟ソフトと肩を並べるようになった。

<http://www.xingtech.com/mp3/audiocatalyst/>

プログラムは Windows 用のソフトのようで、オプションはいろんなダイア ログボックスに隠されている。しかし、競合相手にはないような数々の機 能を備えている。例えば、エンコードする前に CD トラックの音量レベル を自動的に標準化してくれるのだ。(古い CD の多くはかなり低いレベル でマスタリングされている。標準化すると、音声信号がダイナミックレン ジをフルに使えるようになる。)また、トラックの前後にある無音部分を 自動的に切り捨てる機能もある。

AudioCatalyst の機能の揃い様は、我々が他の MP3 エンコーダを見るとき の基準となった。AudioCatalyst は CD のトラックの名前をインターネッ トの CD Database (CDDB) から探してくれるので、出力されたファイルに 名前を付けなくて済む。また、オプションでファイル名の付け方を好きな ように指定でき(例:トラックナンバー + 曲名 + アーティスト名)、し かもアルバムごとにフォルダを作ったり、さらに外側にアーティスト名の ついたフォルダを作ったりできるのだ。

<http://www.cddb.com/>

AudioCatalyst は可聴周波数帯域 20 Hz から 20 KHz までの全てを含む MP3 ファイルを作成できる最初の Mac 用 MP3 エンコーダである。(古い MP3 エンコーダは 16 KHz の周波数をカットしていた。)十分に高いビッ トレートでは、MP3 を CD 品質に近付けることができるが、低いビットレー トでは、このどうにも聞けたものじゃないオーディオデータが残りのオー ディオスペクトルの傷ついた様子を示している。ほとんど全ての機能と同 様に、AudioCatalyst はその拡張レンジでのエンコードをオフにしたくな る。

AudioCatalyst は、低めのビットレートで単純な流れの音楽をエンコード するとき、複雑な、または込み入った流れのエンコードに使用するビット 数を自動的に増加させる可変ビットレートエンコーディング (VBR) 機能を 最初に使った。標準的な MP3 エンコーディングは、固定ビットレートまた は CBR とも呼ばれ、一秒間に使うビット数は一つのファイル内では同じで ある。VBR はほんの控えめなファイルサイズの増加で、MP3 の音質を十分 に引き上げることができる。いくつかの古い MP3 プレーヤと QuickTime 4 は VBR ファイルを再生できないが、昨今のプレーヤのほとんどは対応し ている。

AudioCatalyst はこの総括の中で唯一、コンピュータのマイク、またはオー ディオラインインからライブで MP3 エンコードができるプログラムだ。他 のエンコーダでは、free Coaster のようなプログラムを使って一旦 AIFF フォーマットのオーディオファイルに録音し、それからそのファイルを MP3 にエンコードしなければならない。

<http://www.in.tum.de/~rothc/coaster.html>

もし AudioCatalyst だけが持つ機能を使いたい、または膨大な量のファイ ルをコンバートするのなら、他のプログラムでは機能的に AudioCatalyst の足元にも及ばない。$30 では、この総括にでてくる他の機能満載なエン コーダと比べて十分いい勝負だし、ダントツに一番柔軟である。また、最 も早く、かつ音質の良いファイルを作成するエンコーダでもある。(我々 の低ビットレート拷問テストでは、第二位だった。)しかしながら、この プログラムのユーザインターフェースは必要以上にとっちらかっていて分 かりにくい。もし、面倒は抜きにしていくつかのお気に入りの曲を MP3 に コンバートしたいだけならば、他のプログラムの方が良いかも知れない。

Casady & Greene SoundJam MP 1.1 -- SoundJam MP は、MP3 プレーヤと 同時にエンコーダでもある。オーディオ CD コントローラにもなるし、も ちろんインターネットからの MP3 ストリーミング放送も再生できる。 (SoundJam に関するより詳しい情報は、 TidBITS-501 “MP3 の幸せ (第二部)”を参照。)

<http://www.soundjam.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05603>

一つのプログラムで MP3 を作成、再生をしたいならば、SoundJam は良い 選択だ。Audion と Macast などの再生専用の競合相手のように、プログラ ムの見た目を変えられるいろいろな“skins”もついてくるし、オーディ オ、ビジュアルイフェクツのプラグインにも対応している。これは Arboretum's Realizer プラグインを唯一サポートしている。Arboretum's Realizer はイコライザに替わるとんでもないもので、聴覚心理の規則を取 り入れてコンピュータの小さいスピーカでの低音を増幅し、ステレオの音 像を強調し、しかも失われた高周波を合成してくれる。

高いポイントを獲得しているにもかかわらず、SoundJam のエンコーダの機 能性は他のエンコーダと比べて十分とはいえない。このプログラムは CDDB に対応しており、自動的にファイルの名前を付け、アルバムの名前を付け たフォルダを作成してくれる。また、オプションで全周波数(20 Hz 〜 20 KHz)のエンコーディングにも対応しており、低ビットレートでエンコード するときには自動的にこのモードをオフにすることもできる。しかし、フ ル周波数レンジでエンコードしたときでも、SoundJam でエンコードした ファイルの音質は他のプログラムで作成した MP3 と比べてソフトではっき りしない。(判定は極めて主観的で、少なくとも 128 Kbps のビットレー トに関してはどのプログラムでもほとんど差はない。拷問テストでは、残 念ながら SoundJam 1.1 は余り良い結果はでなかった。)

SoundJam の作者たちは音の欠点には気づいており、これを治療するために 一生懸命働いている。この総括の第一部を出版した後で、Jeffrey Robbin 氏は SoundJam の新しいバージョンのβ版を送ってきた。彼は、いくつか の機能は完成しておらず、また実はバージョンナンバーがいくつかなのか 彼ら自身も定かでないことを付け加えながら、音質が大変良くなったこと に気づくだろうと考えた。結果はその通りだった。この SoundJam MP のβ バージョンは我々の低ビットレート拷問テストをあまり遺物を残さずにう まく切り抜けた。だが、周波数応答を厳しく制限することでこれを乗り切っ たため、結果としてできた MP3 は CD というより AM ラジオの音に近く なってしまった。それでも、音楽としては成り立っているが遺物でめちゃ くちゃにされてほとんどなんだか分からないようなぼやけた MP3 を聞いた ところ、低ビットレートではSoundJam は他のエンコーダのなかで一つを除 いて全てのエンコーダよりも遺物が少なかった。もっと典型的なビットレー トでは、我々がバージョン 1.1 で指摘したぼやけた感じは大分なくなっ た。また、このプログラムには可変ビットレートが追加され、非可聴範囲 の 10 Hz 以下の周波数を周波数帯から抜き取る機能も備えている。

SoundJam には Apple の Velocity Engine を利用できる唯一の MP3 エン コーダであるという強みがある。Power Macintosh G4 を利用すれば(入手 できればの話だが)、これは少なくとも Proteron が約束の N2MP3 への アップグレードを行うまでの間は、あなたが購入できる最速の MP3 エン コーダである。もし、お得なマルチメディアプレーヤとエンコーダを探し ているなら、SoundJam はその候補に入る資格がある。アップグレードテス トでは、エンコーダとしての長所を見ても力強い競合相手となるだろう。

Proteron N2MP3 -- この名前の説明には困ってしまうものの、Proteron 社の新しい MP3 エンコーダはこの総覧で紹介するプログラムの中で一番直 感的なユーザーインターフェースによって有利な立場にある。このインター フェースはとても素晴らしい出来なので、どうして全ての MP3 エンコーダ は同じようにならないのだろうかと不思議に思う事だろう。もしこのプロ グラムが Apple Human Interface Design Excellence(HIDE)で優勝しな いとしたら、それこそ世の中どうかしている。

<http://www.n2mp3.com/>

どうなるのかというと、こうだ。オーディオ CD をコンピュータの CD-ROM ドライブにセットする。すると、素早い CDDB ルックアップ機能によって、 デスクトップの CD アイコンの名前はあなたが挿入したばかりの CD のタ イトルにマウントされた途端に変更されるのだ。この CD アイコンを開い てみると、中には個々の曲のタイトルのアイコンがあるのが見える。N2MP3 はこのウインドウを一ひねりする事すら出来て、そうすると今度は曲のタ イトルと一トラックごとの演奏時間を表示する事ができる。曲を MP3 に変 換するには、曲のアイコンをダブルクリックしてデスクトップ上(もしく は前もって用意しておいたフォルダ)に保存するか、もしくは曲のアイコ ンを CD から別のフォルダへドラッグすればいい。N2MP3 の作業進行状態 を示すウインドウがポップアップし、それから数分もすれば出来たてホヤ ホヤの MP3 ファイルがオーブンから飛び出してくるという寸法だ。N2MP3 は更に Enhanced CD(この CD はファインダのデスクトップ上ではオーディ オ CD としてマウントされない)に収録されたオーディオトラックや非圧 縮 AIFF オーディオファイルのエンコードについても便利な方法が用意さ れている。

このエンコーダはほとんどユーザーインターフェースを持っておらず、そ れらはエンコーディングセッティングを選ぶ為のほんの少しのダイアログ にまとめられている。これらのセッティング項目は AudioCatalyst の様に 多種多様なセッティングではないのだが、最良というには程遠い組み合わ せで、そして一つのマイナーな省略がある事を抜きにしても必要なものは ほとんど揃っている。N2MP3 はフル周波数レンジでのレコーディングをサ ポートしているものの、AudioCatalyst や SoundJam において可能なよう にこの機能をオフにする事ができない。この機能は低ビットレートのエン コードではパフォーマンスの妨げになるのだが。

エンコードの設定はエンコード作業を開始する際に表示されるポップアッ プダイアログで選ぶ事ができる。または N2MP3 Settings コントロールパ ネルで設定する事もできるし、エンコード前に出るダイアログは全く表示 させないようにする事もできる。この“fast track”の方法は MP3 のエン コーディングを Mac OS に組み込んだものに最も近い形のものである。

中でもユニークなのは play-during-encode 機能だろう。この機能では当 然プログラムはリアルタイムのスピードでのエンコーディングに制限され る。最速でのエンコーディングの為には、この機能はオフにする事。しか しながら、我々はある事を発見して少しがっかりしたのだが、この機能は デコード最中の 圧縮された ファイルを再生するのではなく オリジナルの オーディオをただ再生するだけで、だから作成中のエン コードファイルが上手くいっているかどうかをこれによって確認する事は 出来ないのだ。(我々は 3 ヘッドのテープデッキでのテープモニタスイッ チのようなものを期待していた)

AudioCatalyst のように、N2MP3 では可変ビットレートのエンコーディン グが用意されており、しかしそれらはより制御しやすい形で提供される。 AudioCatalyst では low から high へと主観的に分類された 5 つのクオ リティセッティングからただ一つを選ぶ事ができる。N2MP3においては、最 小限のビットレートを固定ビットレートファイルのビットレートを設定す るのと同じスライダーを使用して設定し、二つ目のスライダーを使ってあ なたがどの程度のサウンドのファイルを作成したいのかを教えてあげれば よい、つまり、より高いクオリティは必然的にビット数が上がる事になる。 マニュアルの記載によれば、スライダーの設定を Better にした時には、 MP3 エンコードにおける split-second フレーム各々のエンコードビット レートは、フレームの歪みが事実上生じる事のない程度まで自動的に増加 する。あなたがスライダーを Worse 側近くまで動かすと、N2MP3 は各々の フレームに追加できるビット数をどんどん低く制限して配置する。

強力な割にはあいまいな場所に隠されてお粗末な程に説明不足な機能があ るので、ここでその不足分を補強しておく事にする。最高の音質で MP3 を 作成する為には、プログラムは無駄で不必要なビットを削除する事ができ るので、出来得る限り一番最低のビットレート(32 Kbps)を選択した上で VBR クオリティスライダーを Better にドラッグする。ファイルの各々の フレームはそれによって最高の結果を得る為に必要なだけのビット数が使 用され、それ以外は切り捨てられる。これはちょっと言葉ではピンとこな いかもしれないが、スライダーを 32 Kbps に設定した Better VBR ファイ ルは注目すべき事に一定ベースの 128 Kbps のビットレートでエンコード したファイルよりも大きくなりうるという事なのだが、しかし他のどのエ ンコーダもこの最小のファイルで最高のサウンドクオリティを得る為の簡 単な方法を提供していないのである。

Fast モードにセットした時 N2MP3 はこの記事中で紹介した物の中で一番 早いエンコーダであり、固定ビットレートにおける我々の 300MHz G3 マシ ンで 4 分のファイルを圧縮してみた結果は 数秒の差で AudioCatalyst を 打ち負かしている。オリジナルの音質と比較してみるとこのモードでエン コードされたファイルは少しだけ歯擦音(“sss”を発声する際の強調され た高周波)が聞かれたものの、それも許容範囲内だ。(Proteron 社は同社 のエンコーダは 160 Kbps でのエンコーディングに最適化されていると言っ ており、同レートで再度試した結果歯擦音はほとんど消えた)N2MP3 は Best Quality モードでは大変遅めだった - 実際、一つを除いた他のエン コーダよりも遅く、その一つのエンコーダは無料のものである。我々の行っ た拷問テストによれば、N2MP3 は音質的には AudioCatalyst に負けてい る。通常のビットレート(128 Kbps 以上)の場合は、それでも、N2MP3 は 一定の位置をキープしていた。

QDesign MVP 1.0 -- QDesign 社はデジタルオーディオの圧縮では他所も のではない。同社の音楽圧縮技術は QuickTime 3 と 4 に取り入れられて いるものなのだ。MVP は、Casady & Greene 社の SoundJam MP のように、 マルチメディア・プレーヤとエンコーダの結合を志向している。(それら の持つ共通点は実はそれだけではない、何故なら SoundJam の MP3 エン コーダは QDesign からライセンス供与を受けているのである)MVP は QuickTime ビデオを再生さえするし、音楽ソフトを検索し、ダウンロード し、購入する為の機能を持っている。

<http://www.mvpsite.com/>

MVP のエンコードオプションは SoundJam のそれに比べてより限定された ものとなっている。エンコード時に選択できるのは(固定)ビットレート である。で、それだけなのだ。MVP は自動的にファイルの名称変更を行う CDDB ルックアップを備えており、AudioCatalyst スタイルのフレキシブル なファイルネームフォーマットを提供するが、不可解な事に AIFF ファイ ルを MP3 にエンコードする事が出来ず、それ故このソフトは我々のタイム トライアルからは外される事となった。運がよければ QDesign 社は将来的 にはこの非常に貴重な機能を追加するだろう。エンコードされたファイル はやはり SoundJam と同様に幾分“ソフト”なサウンドの弊害を被ってお り、これは明白な理由による。

一つ MVP に有利な点を挙げておくと、巨大なトラックタイトルのディスプ レイ付きの外観がとてもいい(SoundJam、Macast や Audion に装備されて いる“ skins”よりもいい。MVP の外観は変える事は出来ないのだが)。 同ソフトも非常に簡単な操作で費用はたったの 20 ドルである。

Macromedia SWA Export Xtra と Lindvall MP3 Encoder 0.12 -- Macromedia Director の Shockwave Audio(SWA)機能は(同社の Shockwave プラグインを介してウエブページに埋め込まれた)Director ファイルにオーディオストリーミングを含める事ができるというものであ る。Macromedia 社は事実を宣伝していないのだが、実は SWA は本質的に は MP3 なのだ。The SWA Export Xtra は同社の SoundEdit 16 オーディオ エディタのプラグインであり、この SoundEdit 16 の価格は約 300 ドルも する。だが、恐れる事はない。我等がけちん坊、Johan Lindvall 氏は MP3 Encoder という名の、十分に SoundEdit 16 のプラグイン機能をサポート して SWA Export Xtra を走らせ、保存する前にはファイルの SWA 特有の ビットを削ってくれる、小さなアプリケーションを書いたのである。この ソフトは無償で、しかもプラグインもそうなのだ。さあ、見よ、これぞ即 席無料 MP3 エンコーダである。

<http://www.macromedia.com/support/soundedit/how/shock/sound_devtools.html>
<http://www.dtek.chalmers.se/~d2linjo/mp3/mp3enc.html>

MP3 Encoder を AudioCatalyst と間違えたりする者は誰もいないだろう。 このソフトのインターフェイスはほとんど MVP のそれと同じくらい最小限 のものである。オーディオ CD から直接エンコードする事は出来ず、かわ りに MoviePlayer またはフリーウエアの Track Thief を使って AIFF ファ イルを作成しなければならず、その為に一曲一分あたり約 10 MB のディス クスペースが必要になる。

<http://www.student.nada.kth.se/~d88-bli/misc/>

The SWA Xtra は可変ビットレートのサポートが欠けており、しかも可聴周 波数域一杯のエンコードも出来ない(せいぜい 16 KHz まで)。その上、 遅い。我々のテストでの一番遅い 2 つの結果はこのソフトウエアの Normal と Higher Quality モードによるものであった。だが、使える事は使える。 実のところ、限定された周波数反応にも関わらず、とてもいい。このエン コーダは我々の低ビットレートにおける拷問テストにおいては他のどのプ ログラムよりも良かった。それから、このソフトは無償だという事はもう 言ったっけ?

The Final Note -- 我々の総覧で取り上げた全ての MP3 エンコーダはど れも少なくとも一つは推薦する理由があり、そして全てが代表的なビット レートで満足のいくファイルを作成している。MVP は広範囲のマルチメディ アファイルを再生し商業製品としては一番安価である。SoundJam はわずか ながら MVP よりも柔軟性があり、インターネット MP3 ストリーミングや 再生専用の競争相手のビジュアルなベル音やホイッスル音も再生できる。 同ソフトはさらに Realizer という、代表的なコンピュータ用スピーカの 音質を向上させる事ができる機能が付属していて、独立したプレーヤやエ ンコーダと比べても魅力的な価格となっている。

N2MP3 はより良いサウンドのファイルを作成し、設定箇所が多めではある が、洗練されて簡易なユーザーインターフェイスを持っている。 AudioCatalyst は極端に設定項目が多く、とても速く、最高のサウンドファ イルを作成してくれる。そして SWA Xtra と MP3 Encoder のコンビは無料 でとてもナイスな低ビットレートのエンコードをしてくれる。

我々は一つのプログラムだけを包みの中から引き当てようとしたのだが、 そんな事はどだい無理な話だった。もし我々が力づくで引き出すとすれば、 我々の投票結果は、大部分のユーザーには N2MP3 を、オーディオマニアに は AudioCatalyst を、となる。実のところ、我々が夢みている Mac 上で のエンコーダというのは Xing のエンコーダと N2MP3 のユーザーインタ フェイスを足して 2 で割ったものであり、我々ひねくれ者の衝動を満足さ せる為に一つ、または 2 つの追加チェックボックスを Advance 設定内に 持っているものなのだ。にも関わらず、Mac における MP3 エンコーディン グの状況は欠点だらけの状況からより素晴らしいものへと驚くべき短期間 の間に進歩して来た。これは全てこの技術に関わって来た開発者達の努力 の賜物なのだ。どのソフトがあなたの目的に合うのかを知る為にも、どう か全てのプログラムを試してみてほしい。どれでもきっとこの MP3 テクノ ロジーを楽しめる事だろう。

[Jerry Kindall 氏は Macintosh に特化したテクニカルライティングおよ びウェブデザイン事務所である Manual Labor の創始者。彼の音楽コレク ショには、少なくとも 900 枚の CD がある。]

<http://www.manual.com/>


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