TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#518/21-Feb-00

スピードが必要? FireWire が必要? Apple は 500 MHz の Power Mac G4、 500 MHz の FireWire 付き PowerBook、そして改訂版の iBook を初公開 した。ゲームが必要? Connectix 社の Virtual Game Station に対する 差し止め命令は解除された。だが現在 Sony 社は特許を理由に訴えている。 FileMaker の代わりが必要? Matt Neuburg がビジュアルデータベース環境 Helix の復活を吟味する。また Eudora 4.3.1、GraphicConverter 3.8、 そして(おっほん!)Windows 2000 のリリースを取り上げる。

目次:

Copyright 2000 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。TidBITS 日本語版 では翻訳に協力してくれる方を募集しています。詳しくは以下の URL を 参照してください。

<http://jp.tidbits.com/join_us.html>


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/21-Feb-00

(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)

Eudora 4.3.1 がバージョン 4.3 を置き換える -- Eudora 4.3 の最初の 早すぎたリリースの後、Qualcomm 社はすぐにバージョン 4.3.1 をアップ ロードした。これは、最終コンパイル時にコードの一行が不注意で削除さ れたために発生したバグを修正する。そのバグとは? Sponsored モードで Eudora 4.3 が広告を取りに行かないだろうというものだ。残念ながら Eudora 4.3 は不安定になり、広告を受け取らないで何日か経つと小言を言 うようになり、数週間を過ぎると Light モードへ切り替わってしまう。だ から、もしあなたが 4.3 をダウンロードして Sponsored モードで使って いるなら、代わりに 4.3.1 を手に入れたくなるだろう。さらに、もしあな たが現行の Eudora Pro 4.x ユーザーなら、今週後半に予定されている、 Eudora 4.3 にアップデートした上で Paid モードに登録してくれるアップ データを待つのがよい。なぜなら、完全版の Eudora 4.3.1 は Eudora 4.x の登録番号を受け入れないからだ。当初先週に予定されていたアップデー タは、今週後半に入手可能となる見込みである。

<http://www.eudora.com/download/>
<http://www.eudora.com/email/upgrade/>

また、先週の TidBITS-517 の記事で、私たちは Eudora に必要なシステ ム構成を少し低く書き過ぎたことに注意してほしい。Eudora 4.3.1 は PowerPC ベースの Mac と Mac OS 7.6 以上、QuickTime 3.0.2 以降を必要 とする(これは Eudora のインストーラでカスタムインストールを選ぶと ダウンロードできる)。Eudora 4.3.1 は 5.6 MB のダウンロード。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05800>

GraphicConverter 3.8 が AppleScript を追加し、バグを修正 -- Lemke Software 社は GraphicConverter をバージョン 3.8 へアップデートした。 このバージョンは AppleScript サポートを PowerPC 版に追加し、画像ファ イルを扱うための多目的ツールに数多くの微調整を加えるものだ。 (GraphicConverter はイメージ編集アプリケーションに関する最近の TidBITS アンケートで上位にランクされた。 TidBITS-516 の“アンケー ト結果: 十人十色”を参照。) GraphicConverter の基本的な AppleScript サポートにより、ユーザーは製作スピードを速めるように、サイズ変更や ビット深度変更など複数の編集操作をファイルに適用できる。 GraphicConverter 3.8 は 1.9 MB のダウンロードで、シェアウェア登録料 はヨーロッパでは 30 ドル、それ以外では 35 ドル。 [JLC]

<http://www.graphicconverter.net/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05793>

Farallon が 11 Mbps の SkyLINE カードを発表 -- Farallon Communications 社は、速度が 2 Mbps の以前のバージョンに代わって、 11 Mbps で動く同社の SkyLINE 802.11 無線ネットワークカードを発表し た。これは 4 月に出荷予定で、AirPort 互換の PC カードである。最近の PowerBook(2400、3400、G3 シリーズ。190、1400、5300 のサポートは計 画中)とタイプ II PC カードスロットを持ち Windows 95、98、NT (Windows 2000 のサポートは計画中)で動作するポータブル PC に、無線 によるイーサネット接続を提供する。Farallon は 11 Mbps 版の SkyLINE カードの価格をまだ発表していないが、2 Mbps カードのユーザーには安価 なアップグレードを提供する予定だ。 [ACE]

<http://www.farallon.com/news/00_02_16.html>

Microsoft が Windows 2000 をリリース -- Microsoft 社は先週、 Windows 2000 を正式にリリースした。これは同社のエンタープライズ向け サーバ OS である Windows NT を継ぐものだ。Windows 2000 は USB サポー トや多くのゲームとの互換性などの一般消費者向け機能を持つが、Windows 98 のアップデートではなく、Microsoft が宣伝(歩き、ガムを噛み、 Windows する)であなたに信じさせたような全てを備えたものでも到底あ り得ない。実際には、Sm@rt Reseller 社の Mary Jo Foley 氏の今では有 名な記事“63,000 bugs”のような話もあるが、Windows NT 4.0 を動かし ていた友人からたまたま聞いたコメントによれば、Windows 2000 は信用で きる Windows NT 向けアップデートなのだそうだ。Macintosh の立場から は、主として Windows 2000 が Macintosh クライアントに提供するサービ スが興味深い。私たちがこれまで見たレポートは、それらのサービスが Windows NT 4.0 より改良されたことを示している。だが、もしあなたが Microsoft は Macintosh コミュニティに加わりつつあるのだと思っている なら、Macworld 誌の記者である Philip Michaels 氏の楽しいレポートを ご覧あれ。このレポートは、先週 San Francisco で行われた Windows 2000 の発表会に参加した Mac 野郎がどんな様子だったかというレポートだ。 [ACE]

<http://www.microsoft.com/MAC/msmacproducts/ntsmac.asp>
<http://macweek.zdnet.com/2000/02/13/crossplatform.html>
<http://www.zdnet.com/pcweek/stories/news/0,4153,2436920,00.html>
<http://www.zdnet.com/filters/special2000/news/>
<http://macworld.zdnet.com/2000/02/18/windows2000.html>

アンケート結果: 広告入り -- 先週の Eudora 4.3 のリリースによって 私たちは、有料で提供される機能を無料で使えるようにするのと引き換え に広告を表示するという選択肢について、TidBITS 読者の考えを聞くこと を思いついた。850 を超える回答を受けたが、それらは次のようにきれい に分かれた。回答者の 47 % はそのアイデアを少なくともちょっとは気に 入っていた。いっぽう 53 % はそのアイデアが嫌い(もしくは非常に嫌い) だった。TidBITS Talk での議論も同様だったが、私たちはこの話題を特定 の答えに落ち着かせるのは難しいことを理解した。それは Eudora 4.3 が、 このモデルを用いていて現時点で唯一広く使われているアプリケーション だからだ。そして Eudora 4.3 は入手可能になってまだ一週間しか経って いない。 [GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=944>

アンケートのお知らせ: 私をかわいく彩って -- Apple 社は先週、同社 の iBook ラインのカラーパレットを広げ、グラファイトを基調にした一般 消費者向けラップトップを追加した(この後の記事を参照)。これは同社 のコンピューティング製品に関して、Apple は後先を考えず性急に色を選 んでいるのではないか、という話題を再開させた。そこで私たちのホーム ページの今週のアンケートの質問は: 未来の Mac に Apple が使ってほし い色は何か? 私たちは共通して求められるテーマをいくつか選んだが、他 のアイデアをどうぞ自由に TidBITS Talk へ寄稿してほしい。 [GD]

<http://www.tidbits.com/>


より多機能のラップトップとより高速な G4 - Macworld Tokyo にて -

by Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>)

Apple CEO Steve Jobs 氏は、Macworld Expo Tokyo での基調講演の中で、 Apple 社のラップトップとプロ向けのデスクトップ製品の機能強化バージョ ンについて唱い挙げた。最新の PowerBook G3(Apple 社の増えつつある意 味のない命名の中で“PowerBook(FireWire)”として知られている)は、 これまでの PowerBook G3(Bronze Keyboard)によく似たケースに納めら れている。そして、特徴としては、500 MHz までのスピードアップしたこ と、デュアル・バッテリー機能によってバッテリーの寿命が 10 時間まで 延びたこと、Airport カード内蔵用のスペースの確保、デジタルビデオを サポートする 2 つの新しい FireWire ポート、これら全てが 2, 500 ド ルから 4,000 ドルの間で価格設定されていること、等が挙げられる。 PowerBook(FireWire)のその他の変更点は、これまでの PowerBook G3 と は異なった RAM のアップグレードモジュールであること、SCSI ポートが ないこと、新しい iBook スタイルの 電源アダプタ、DVD-ROM ドライブ、 である。ただし、この DVD- ROM ドライブは、PowerBook G3(Bronze Keyboard)のメディア・ベイとの互換性がない。しかし、バッテリや他の メディア・ベイ機器は、現在互換性あり。

<http://www.apple.com/powerbook/>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58581>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58588>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58582>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58586>

1,600 ドルの iBook の製品ラインにおいて、今では、それぞれのモデルが 64 MB メモリと 6 GB のハードディスクドライブを備えている。一方で、 新しい 1,800 ドルの グラファイト・カラーの iBook のスペシャル版は、 もっと速い 366 MHz G3 プロセッサを採用している。そうこうしているう ちに、Apple 社は、Power Macintosh G4 の製品ラインの衝撃的なスピード アップに関するアナウンスを行った。400、450、そして、500 MHz の 3 つ の構成で出荷、そして、価格は、これまでのモデルと同価格帯で 1,600 ド ルから始まる予定である。これらの機能強化は、もともとは、1999 年 8 月にアナウンスされたプロセッサのスピードを Apple 社の G4 システムに 復活させたものである。

<http://www.apple.com/ibook/>
<http://www.apple.com/powermac/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05615>

また、Macworld Tokyo において、Apple 社が大日本スクリーン製造株式会 社と Mac OS X での高品質フォントに関して契約したことについてアナウ ンスを行った。このフォントは、パソコンで使用可能なこれまでで最も大 きなサイズのキャラクター・セットということになる。Mac OS X は、2000 年の中旬にソフトウェア製品の一つとしてリリースされ、2001 年には、す べての Macintosh のコンピュータにプレ・ロードされる予定である。

<http://www.apple.com/macosx/>


Virtual Game Station、再度出荷へ

by Adam Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Connectix 社は Sony 社の PlayStation 用の多数のゲームを PowerPC G3 またはそれ以上の Macintosh でプレイできるようにするエミュレータ、 Virtual Game Station( TidBITS-471 の“Virtual Game Station で会お う”を参照のこと)を 1999 年 1 月にリリースしたのだが、Sony は即座 に Connectix に対し販売を停止するよう告訴した。Sony の出していた Virtual Game Station の出荷緊急差し止め命令請求をサンフランシスコ地 裁が却下し、この訴訟の第一ラウンドは Connectix が勝利した。折しも Sony 側はさらに厳しい出荷差し止めの仮処分を申請していたのだ。1999 年 5 月に Sony 側の出荷差し止めの仮処分が通り、それ以降 Virtual Game Station は店の棚から姿を消していた。このために Connectix 社は Macworld Expo ではさぞかし悔しい思いをしたことだろう。さらに、同社 は Virtual Game Station のWindows 版に取りかかることもできなくなり、 Windows 上に限り動作する別の PlayStation エミュレータ、Bleem に先を 越されてしまった。

<http://www.virtualgamestation.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05314>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05252>
<http://www.bleem.com/>

先ごろ合衆国第 9 連邦巡回控訴院は以下のような決定を下し、出荷差し止 めの仮処分を出していたサンフランシスコの地裁の決定を覆した。 「Connectix 社のエンジニアが購入した PlayStation のコンソールから引 きだした Sony 社の BIOS に対する Connectix 社のリバースエンジニアリ ングは、正当な使用の範囲内である。Connectix 社が行ったその他の Sony BIOS の媒介コピーに関しては、Sony 社の著作権を侵害してはいるが、救 済命令は不当である。以上の事由により、地裁の命令は無効とし、今件は 地裁に差し戻す。なお、Connectix 社の Virtual Game Station が Sony PlayStation の商標を犯しているとする地裁の判定も棄却する。」上記の 判決の全文が読みたい場合は、第 9 連邦巡回控訴院の意見書のサイトにあ る訴訟番号 99-15892 をご覧いただきたい。

<http://www.ce9.uscourts.gov/web/newopinions.nsf>

これにより Virtual Game Station は再び販売されることになったし (TidBITS のスポンサーである Outpost.com は 20 ドルで扱っている)、 Windows 版 Virtual Game Station が登場することも期待できる。しかし、 出荷差し止めの仮処分が却下されたからといって、訴訟が終了したわけで はない。裁判はさらに続くことになるが、今回の控訴審の見解により、Sony 側は Virtual Game Station が著作権を侵害した、または Sony の商標権 を侵したとするいずれに関しても訴えを続けるのは困難になるだろう。

Sony の弁護士は諦めておらず、Connectix に対しさらに別の訴訟(今度は 特許の侵害の訴訟)を起こしている。前回の訴訟の出荷差し止めの仮処分 が著作権法にのっとり行われていたので、今回 Sony はさらに勝ち目のな いとされる特許法を持ちだして戦おうとしている。いずれにせよ、訴訟を 長引かせ、その間に新世代のゲーム機に移行し、Connectix の PlayStation エミュレータが時代遅れのものになるようにすることが Sony の唯一の目 的のように見受けられる。


復活: Helix の逆襲

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

長年の間、FileMaker Pro は構築された情報を保存したり呼び出したりす る、私の定番ツールの一つであった。FileMaker では住所録や音楽収集デー タベースが簡単に構築でき、その徹底したスクリプト対応性による他アプ リケーションとのデータ交換は見事なものだ。1995 年のバージョン 3.0 にはリレーショナルデータベース機能が導入されたが、その後のバージョ ンにはほとんど目新しいものがなく(そしてとても高くなった)、私はそ れ以上アップグレードするのを止めてしまった。そして最近ではバージョ ン 5 で、核となる機能向上に代わり、非常に高価な価格設定が導入され、 私は今まで負け馬に賭けてきたのではないかと疑問に思ってしまった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05576>

私はここ最近に Odesta 社の Helix がいまだに存在していることを驚きを 持って知った。1991 年の一時期に Helix を使用したことがあったが、そ の後はその消息を知らずじまいだったのだ。Helix(すぐに Double Helix と呼び名が変更された)は 1984 年に遡る最も初期の Mac 用製品の一つ だ。それは時代を先取りしたものだったが、非生産的な開発過程へと追い やられてしまう - 実は、多くの時間と労力が Helix 用の VAX をベースと したサーバ開発に費やされ、その直後、パソコンが突如として、VAX が可 能とした以上に、高速、かつ安価となってしまい(Mac IIfx を覚えている ?)、1992 年に会社は分裂してしまったのだ。製品は Helix Express へ と名称が再度変更され、いくぶんしぼんでしまったが、今は Helix 信奉者 によって運営される The Chip Merchant 社によって引き取られ、古代の遺 物的コードの近代化、メモリリークの修正、そしてバグ潰しといった悪夢 のような書き換え作業の真っ最中だ。その間、現在 Helix RADE(Rapid Application Development Environment)と再び名称変更された Helix の 基本部分は、驚くべきことに、無償となっている。

<http://www.helixtech.com/>
<http://www.helixtech.com/history.html>

中核の部分 -- Helix RADE(ここでは単に Helix と呼ぶ)はデータベー ス構築とデータ処理(入力、ビュー、クエリー、そして、ソート、書き出 し、印刷)を行うための環境だ。構築過程は、通常にはないほど視覚的で、 Prograph( TidBITS-312 の“Prograph を使ってみよう”を参照)をいく ぶん思い出させる、アイコンとウィンドウを中心としたオブジェクト志向 のものだ。使用される用語もやや風変わりなので、ご辛抱願いたい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01160>

データベース構造とデータを含んだ Helix のデータベースファイルは“コ レクション”と呼ばれる。一度に開けるのは一つのコレクションだけだ。 それはまず、リレーションを表すアイコンをドラッグするための、空のウィ ンドウとして表示される。各々のリレーションはデータを入れるテーブル であり、全てのレコード(行)は同じフィールド(列)で構成されている。 FileMaker ではこれをデータベースと呼んでいる。ゆえに、一つのリレー ションのコレクションは平面的なデータベースであり、後で説明するが、 二つ以上のリレーションのコレクションがリレーショナルデータベースと なり得るのだ。

リレーションのアイコンをダブルクリックすると、更にアイコンをドラッ グできる別の空ウィンドウが開く。これらアイコンには様々な異なった種 類がある:

リレーションウィンドウにドラッグされた各アイコンは何かされるまでそ こに座ったままだ。まず、それに名前を付ける。ちょうど Finder でファ イルに名前を付けるようにだ。そしてダブルクリックしてウィンドウを開 き編集するのだ。フィールド用ウィンドウではデータタイプと確認ルール を特定する。インデックス用ウィンドウではどのフィールドでソートする かを特定する。アバカス用ウィンドウでは実行したい計算式を記述するが、 これもアイコンを完全に使用したもので、操作とフィールドを表すアイコ ンをウィンドウにドラッグし、それらをデータフローダイアグラムにそっ てアレンジするのだ。たとえば、“first name followed by space followed by last name”とするには、“followed by”アイコンをドラッ グし、次に“first name”をその最初のパートにドラッグし、そして、二 番目のパートとしてスペースを入れ、それから二番目の“followed by” アイコンをドラッグして、最初のアイコンから出力矢印を二番目の最初の パートに加え、“last name”フィールドをその二番目のパートにドラッグ するのだ。

テンプレート用ウィンドウは幾つかの矩形描画ツールを伴った一枚の白紙 として始まる。ここでは何を描くかが重要となる。なぜならビューは、思 い出して欲しいが、実際にデータを入力したり調べたりする唯一の場所で あり、全てのビューは特定のテンプレート一個の表示なので、もしレコー ドの“last name”フィールドに値を直接入力できるようするには、その フィールドはテンプレート中になければ ならない のだ!

テンプレートには二通りの形態がある。レコードを一つずつ表示するテン プレートがエントリテンプレートだ。エントリテンプレートを使用する ビューでは、Next/Previous Record メニューアイテムを使ってレコードを ブラウズする。レコードのフィールドをすべて同時に表示するテンプレー トがリストテンプレートで、リストされるデータの周囲に二重線の四角を 描いて作成する。たとえばテンプレートの“姓”フィールドの周囲に二重 線の四角を描いたら、このテンプレートを使用するビューではすべてのレ コードの“姓”フィールドのデータを同時に表示する。ここで「すべて」 というのは、「ビューで表示されるべきものすべて」という意味で、ビュー にクエリーやインデックスを付け加えて表示されるデータを絞り込んだり ソートすることは可能だ。

リストテンプレートをもう一つのテンプレートの中に入れ込むこともでき る。外側のテンプレートを使うビューで、それぞれのテンプレートのリレー ションになるフィールドを指定する。これで内側のテンプレートは両方の フィールドのデータが合致したレコードだけを表示する。こうしてデータ ベースがリレーショナルになるというわけだ。内側のテンプレートにある エレメントは非常に柔軟な表示ができるので、Helix は極めてパワフルな リレーショナルデータベースに仕上がっている。たとえば、内側のリスト のソート順を指定することができるし、クエリーでさらにレコードを絞り 込むこともできれば、リストテンプレートを入れ子にしてさらにリレーショ ンの層を加えることもできる。

Helix はデベロッパーとユーザーという二種類のモードで動作する。デベ ロッパーモードとは私がこれまで述べてきたものだ。ユーザーモードでは、 一部のビューやメニューアイテムだけが見えることになり、ビューにもデ ベロッパーモードで指定された一定の種類のアクセスしか許されない。他 のユーザーがいない場合でもユーザーモードは意外と便利だ。設計が終わっ たらユーザーモードに切り替えて不要なウインドウを閉じ、データを入力 したり参照することに専念することができる。

実力拝見 -- このレビューを書くにあたって、Helix をテストするため に私が Mac プログラミング雑誌の編集をしていた頃に使用していた FileMaker データベースの構造、データ、それに機能を Helix コレクショ ンとして再現してみた。このシステムはほとんど

FileMaker の手に負えないぐらいの代物だったので、Helix がどの程度頑 張ってくれるかを見たかったのだ。以下、やや詳しく紹介するので胃腸の 弱い方はとばして読んでいただきたい。

このシステムは入稿・出版された原稿と、著者への支払いを記録するもの だった。一本の記事は一つ以上の“断片”から成っており(たとえば Readers Tips コラムの tip はそれぞれが断片だった)、このため記事の 著者というものは存在せず、断片の著者というものがいた。そうして一つ の断片には複数の著者がいることがあった。ここまでで、記事、断片、著 者という 3 つのデータベースが必要になる。すべての記事につき、著者・ 断片・支払いという組み合わせが必要になる。だが FileMaker データベー スでは、記事データベースのポータルで著者を表示するにはどうしたらい いのだろう? 著者は記事とは直接リンクしていないし、ポータルにポータ ルを入れたりクエリーで絞り込むことはできない。

私たちの解決策はもう一つのデータベースを用意し、断片と著者(それと 支払い)をマッチングさせたリンクを作るというものだった。この断片・ 著者データベースに記事データベースのポータルを設けることができた。 だがどの断片と著者の組み合わせを表示するべきを指示するには? 記事デー タベースのキーが断片・著者データベースの記事キーと合致しなければな らないのは明らかだ。ではこのキーの値はどこから得るか? 断片・著者デー タベースには記事はなく、記事は断片・著者データベースの断片とマッチ ングされていたのだ! そこで断片・記事データベースのレコードがどの記 事の一部であったかを教えこむために断片データベースをルックアップさ せたのだ。

これは私たちが使用した多くのポータル/ルックアップ関係の裏技の一つ にすぎない。ここでの問題は断片・著者データベースというもう一つのデー タベースではなく(これは多数から多数へのリレーションでは普通のこと だ)、データの恐るべき脆弱性にあった。FileMaker でのルックアップは リアルタイムではなかったので、記事データベース側で常にスクリプトを 走らせてルックアップをリフレッシュしておかなければならなかった。新 たな記事のレコードを作成する際には、正しい手順を踏んで行わなければ ならなかった。そうしないと背後で断片・著者データベースが正しく更新 されないのだ。注意はしていても壊れたレコードにつながる可能性は大き かったし、手作業でのチェックを頻繁に行う必要があった。

Helix 版の方がはるかにシンプルかつ強力で、マニュアルを読んでからわ ずか 2 日で作成することができた。Helix に熟練した人ならはるかに短い 時間でできるだろう。記事のビューの中で断片と著者の組み合わせをリス トするには断片と著者の関係を定義しなければならない点は同じだが、こ のための方法は非常にわかりやすい。記事テンプレートの中に断片テンプ レートを入れ、記事をキーとしておく。ここにさらに断片・著者テンプレー トを入れておき、断片をキーとしておく。データの保全は背後で行われる ポストによって行われる。断片のリレーションで断片の著者を入力すると、 Helix は自動的に断片・著者リレーションにこの二つを組み合わせた新た なレコードを作成する(ただし同じ組み合わせがすでに存在していない時 だけ)。

Helix 版はデベロッパーにとってもはるかにわかりやすい。FileMaker は 大切な情報を数々のモーダルダイアログに隠してしまっている。Define Fields ダイアログ の Options サブダイアログ、Field Format ダイアロ グ、Portal Setup ダイアログ、ScriptMaker に Script Definition サブ ダイアログなどがそうだ。一方 Helix ではすべてが最上位、つまりウイン ドウの中のアイコンとなっており、モーダルなアイコンウインドウはない ので複数を一度に開いて見ることが可能だ。アイコンウインドウで別なア イコンをダブルクリックしてそのウインドウを開くことができるのだ! リ レーションウインドウをリストとして(Finder の Name ビューのように) 表示し、それぞれのアイコンについての有用な情報を同時に表示すること ができる。どのアイコンにも Get Info ウインドウがあり、コメントを入 力したり、このアイテムを使用しているもののリストを見ることができる。 最後に、Helix では別のアイコンに使われているアイコンを削除するなど のデータベースの破損につながる動作をしようとすると警告を発してくれ る。

Helix はエレメントがオブジェクトに基づいた独立性を持っているがため に大いに柔軟かつ強力なものになっている。計算を例に取ろう。FileMaker の場合、計算は基本的に一種のフィールドとなっている。Helix では、ア バカスは単にアバカスなので、好きなように使うことができる。フィール ドにデータを入れたり、データを検証したり、インデックスのソート順に なったり、ビューや入力フィールドのポップアップメニューでデータを絞 り込むクエリーだったりする。一方、エレメントである必要がないものは エレメントにはならない。FileMaker の場合、データベース間のリレー ションはこれまた一連のダイアログを経て設定するものだが、Helix はこ れは単に一つのデータの眺め方であることがわかっているので、特定の ビューの一つの属性として扱われる。FileMaker では、まずデータベース を作り、色々な切り口から内部のパーツにアクセスするという感じだが、 Helix ではまずパーツを用意し、これを組み合わせてデータベースを作り 上げるという感じだ。

電子顕微鏡の下で -- Helix は心臓の弱い人のための物ではない。マニュ アルは(幸いにして書き換えられる予定だと言う)大量の PDF だし、説明 書というよりは仕様書である:誤字は目につくし、絵も大体は何を言いた いのかわからない、視覚原語の観点からは重大な欠陥品である。過去の賢 者から引継がれてきた Helix 流の考え方、独特の文化それに裏技といった ものを教えるのに完全に失敗している。習熟曲線は非常に加速度的である ;まるで壁を突き抜けるかのようにある時突然“あ、そうか”という瞬間 があって後はすーっと行くか、あるいは山から落ちてしまうかである。

Helix にはまだバグがあるし - 私も何回もクラッシュした - 欠陥も多い。 改版は進んでいるので、これらのいくつかはもうすぐ解消されるかもしれ ない;しかしながら現状では、新規のユーザーは Helix はギクシャクして いて化石化していると思うかもしれない。Helix はまるで Frankenstein の Monster の様に育ってきた;新しい部分は古い部分とは何の脈絡もなく 植え付けられ、それも多くは 1984 年までさかのぼる - そしてそれを感じ させるのである、とりわけインターフェースはバルーンヘルプとかタブ付 きパネルとかの近代的要素をまったく取り入れていない。

ナビゲーションには大きな問題がある。ウィンドウメニューはないし(ど うしようもない過誤である)、あなたのコレクションを示す階層化された アウトラインビューもないし、上方にナビゲートする方法がまったくない (たとえば、Index ウィンドウからそれを包含する Relation ウィンドウ へとのような)。したがってあなたは大部分の時間をどこに居るか判らな いまま過ごす羽目となる;確かにアイコンの名前を見る事ができそしてそ れを開く事すらできるが、それがどのようなものに属しているのかわから ないので、結局それを探すためすべての関係にまでドリルダウンせざるを 得ない。

大切なウィンドウで理解の及ばないのものも目につく、あなたが非常に経 験豊かかあるいはマニュアルと見比べてでもいない限りはダメである。そ してその情報もしばしば整理されないまま個々にバラバラで提供される。 あなたが外側と内側のテンプレートの関係を定義する View Setup ウィン ドウはどうにもならない:その大きさは読もうとする名前にすら小さすぎ、 もしもう一つの内側テンプレートを追加したりすればそのダイアログはそ れまでのセッティングをすべて忘れてしまう。

リストビューでのデータは編集できない - しかしエントリビューでは編集 でき、リストされた一つのレコード(あるいは選択された複数のレコード) をダブルクリックし開くことができる。内側リストはスクロールしないし、 また複数選択もサポートしない。また他方では、リストビューはユーザー 選択可能なソート順をサポートしているが、エントリビューはしていない - 何とも不思議な非対称性である。

最後にその他の雑多さについて。使えるのは 8 色だけである。多選択 フィールドはラジオボタンで代表できない。メニューショートカットの数 も制限される、というのもモディファイヤとしては Command キーしか使え ないから。見ているのは現在のセットの中のどのレコードであるかを知る すべはまったくない。アバカスには検索・置換の機能が含まれてないので、 どうしてもの時はデータをエクスポートし、変換し、そして再インポート する必要がある。

複製と進化 -- Helix はメニューアイテムかビューの中のボタンを経由 して内部的にスクリプタブルである;ただしスクリプト可能なのは、ビュー を開くこと以外では、通常はメニューアイテムとして提供されているもの ばかりである。これは FileMaker と較べて大変弱い、しかしポストはしば しばスクリプトを不必要にし、それにボタンはスクリプト自身が持ってい ないある種のブランチングやルーピングを実現できる。

Helix は AppleScript スクリプトを流せない、したがってアプリケーショ ン間の通信は外部から起動されねばならない。応答は、AppleScript に対 してはダメだが、かなり奇妙に作られた Apple イベントに対しては反応す る;これを送るには Frontier のようなプログラムが必要である。そのレ パートリーは非常に限られたものである - レコードをフェッチする、レ コードをロードする、レコードを削除する - しかしこれも事前にデータ ベースをうまく配置することでなんとかやれるかもしれない、多分 QuicKeys や OneClick を時折上手に併用してやることで。

私はまだ Helix の市販製品を見たことがない;二つある。Helix Converter (500 ドル)はデータベースをスタンドアローンのアプリケーションへと (永久ユーザーモードで)変換する。Helix Client/Server は複数のユー ザーが単一のデータベースに AppleTalk 経由でアクセスできるようにす る。本格的な CGI 作業にはこれの方が向いているかもしれない、またこれ なしでは同一ローカルネットワーク上では二つの Helix を動作させること はできない。2 クライアント版が 300 ドルから始まりそこから上がっていく。

今回の Helix 探求を通じて私は少なくとも虜になった、完全に乗り替えた とまでは行かないにしても。まずバグつぶしが完了したら、次は機能強化 であろう。ここで何が含まれるかは今ははっきりしない - 真に近代的な Helix ではインターフェースは刷新され、スクリプト性ももっと幅広くな り、それに TCP/IP と ODBC 対応 - あるいは将来どんな価格体系となるの かもわからない。しかし何と言っても現在の価格体系は無敵である:強力 なリレーショナルデータベースプログラムがタダである。あなたが失うも のは何もない、FileMaker への依存性を除いては。

Helix は PowerPC ベースの Macintosh で System 7.5.5 以上を必要とする。

<http://www.helixtech.com/download.html>

[注:この記事は Helix Technical Support の Matt Strange 氏の個人的 な協力と指導なしにはあり得なかった]


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway