TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#527/17-Apr-00

今週号で TidBITS は数えて 10 周年を迎える! Adam は10 周年を記念し て、私たちが何年もかけて学んだことのいくつかを振り返る。Geoff Duncan はコラム“TidBITS ご用達ツール”で iDo Script Scheduler を取り上げ てこれに加わる。他に Now Up-to-Date & Contact 3.9(Palm 同期機能付 き)と PowerMail 3.0 のリリースにも触れる。今週のアンケートでは、あ なたがどれだけ長く TidBITS を読んでいるかを教えてほしい。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/17-Apr-00

(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :湯本 敬 <ymo@finest.gr.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

Palmとの同期機能が付いた Now Up-to-Date Contact 3.9 -- Power On Software 社は、Now Up-to-Date Contact 3.9 をリリースした。カレン ダーと住所録管理がセットになった人気商品 Now Up-to-Date Contact に、Palm ハンドヘルドオーガナイザーとの同期機能を追加してくれる無償 アップデートである。同社によれば、Palmとの同期を必要としていない Now Up-to-Date Contact 3.8.3 のユーザーは、新バージョンへのアップデー トをする必要はないとのこと。Now Up-to-Date & Contact 3.9 は 6.6 MB でユーザー登録している人は無償でダウンロードできる。

<http://www.poweronsoftware.com/site2/html/39/nutdc39.html>

PowerMail 3.0 リリースされる -- CTM Development 社はメールクライ アントソフトである PowerMail のバージョン 3.0 をリリースした。この プログラムの特長である多言語メール機能と Sherlock 検索のサポートを もとに大幅な書き換えをしたものである。PowerMail 3.0 での改良点は、 メールの送受信のマルチスレッド化、インポート機能の強化、一受信者当 たり複数のアドレスを持てる再設計されたアドレス帳、フォルダやメッセー ジ用の色付きラベル、ランダム署名機能付きの多署名、ドメインからの SMTP バッチ送信、等々。CTM Development 社は PowerMail 3.0 を Claris Emailer のユーザーに魅力的でしようとしているので、もしこれまで Emailer からの移行に抵抗してきた人達にとっても PowerMail は一見の価 値があるであろう。PowerMail 3.0 は PowerPC ベースの Mac で Mac OS 8.5 またはそれ以降を必要とする。30 日間のデモが 2.1 MB のダウンロー ドで入手できる。PowerMail 3.0 は新規購入で 49 ドル;1998 か 1999 年 に以前のバージョンを購入したユーザーは 29 ドルで、2000 年に PowerMail を購入した人は無償でアップグレードできる。 [ACE]

<http://www.ctmdev.com/powermail3.shtml>

ACI US 社 4D に名称変更 -- 4th Dimension データベース環境および製 品群の発行元であり販売元である ACI US 社はその会社名を 4D 社に変更 した。この改名はその旗艦製品の知名度をより有効に利用しようとすると 共に人々がインターネット上で会社情報を探しやすくすることを意図した ものである - もっともデータベース開発に従事する程技術的に進んだ人達 は、会社の名前と製品の名前は必ずしも同じである必要はないと十分認識 していると思うが。4D 社はそのフランスの親会社である 4D SA 社の 100% 子会社のままであり、一ヶ月前に買収した StarNine Technologies 社も所有している。 [GD]

<http://www.4d.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05853>

アンケート予告: TidBITS は 10 歳! 今週で TidBITS も出版 10 周年 となった、そこで質問:あなたが TidBITS を読み始めたのは何年でしたか ? あなたは先週申し込んだ数百人のうちの一人(もしそうであれば、よろ しく!)、それとも TidBITS がまだ HyperCard スタックとして配信され ていた 1990 か 1991 年以来読んでいる?今すぐ我々のホームページ上で 投票を!そして、他の人は何年間読んでいるかの結果を見て欲しい。アン ケート結果の下に過去我々が出版してきた TidBITS の歴史、目標、それに 舞台裏での裏話へのリンクを示しているので、そちらも見て欲しい。また いつの日か我々も失敗談もリリースすることになるかもしれない![GD]

<http://www.tidbits.com/>

アンケート結果:まちまちな人々 -- 先週のアンケートでは、人々 に Mac と PC の間でどの様に時間を使い分けているか - もし使い分けて いるとしたならば、についてたずねた。1,800 以上の回答のうち、50 % に 届く人が主として Mac を使っているが PC も使っており、1/3 強の人が (36 %) Mac だけを使うとしている。残りの回答者のなかでは、13 % の人 が主として PC を使うが Mac も使う、そして 2 % の人が PC のみを使う としている。PC だけのユーザーの数人からコメントがあり、TidBITS を購 読している理由として同僚、仲間のために Macintosh に関したニュースに も気を配っている、あるいは以前は Mac ユーザーでそのうち戻りたいと 願っているからとしている。要は、回答者のほぼ 2/3 の人が程度の差こそ あれ PC を使っているとしており、Mac だけと言う人は 1/3 強であった。 結局の所、クロスプラットフォームの時代なのである。 [GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=36>


TidBITS ご用達ツール: iDo Script Scheduler

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>)
(  :畔上 毅範 <azegami@mwe.biglobe.ne.jp>)

私は自称、AppleScript 中毒である。最初に Macintosh を手にして以来 ずっと、マクロ・プログラムと自動化の製品には細心の注意をはらってき た。Mac のプログラミングを知れば知るほど、マクロ・プログラムが、シ ステムにより近いレベルのパッチをいかにたくさん使用しなければならな いかを知り、それらがますます私を脅かした。いつも、これらの製品を使 う以外に選択の余地が無いため、必然的に代償を支払ってきた。私のシス テムは、我慢できないくらい不安定なものになった。そしてまた、マクロ ・プログラムは、他の必要なソフトウェアや新しいバージョンのシステム との互換性もなくしていくのだった。そのため、私は、作業を投げ出し、 違う製品で再出発した...。そして、ついには、マクロ・プログラムを完全 に投げ出してしまった。

AppleScript は、1 つの答えかもしれない。スクリプティング言語は、オ ペレーティングシステムに直接組み込まれた機能をつかって、イベントや データを交換するように作られている。スクリプタブルなアプリケーショ ンというのは、1993 年に AppleScript が登場した当時は、珍しい存在で あった。さらに、この技術は、数年間、Apple 社からはほとんど無視され ていた。だが、今日、ほとんどのメジャーなアプリケーションとユーティ リティは、スクリプタブルであり(少なくともある程度までは)、そして、 欠くことのできない価値ある機能として、高い性能のスクリプタビリティ が多くの製品に見られる。

<http://www.apple.com/applescript/>

しかしながら、AppleScript の欠点の 1 つとして、組み込みのスケジュー ラが無いということが挙げられる。毎朝とても早い時間にとか、10 分毎に とか、あるいは毎月第 2 火曜日にとか、サードパーティ製品を付け加えず に、スクリプトが動くよう自分の Mac に設定しておくことができないので ある。Chris Johnson 氏の Unix をベースとした(そして、名前が謎めい ている)Cron に満足している人もいれば、Mark Alldritt 氏の Scheduler コントロールパネルが長い間利用され続けていたりする。私自身は、 Scheduler を何年も利用していた。とても安定したスケジューラだが、数 多くのイベントをスケジュール化するのは困難である。また、Scheduler というのは、ただアプリケーションやドキュメントを開くだけのものであ る。これに、独立した複数のスクリプトアプリケーションも含めることが できる。しかし、スクリプトを直接動かすことはできない。自分の Mac を 使用している間にイベントが起きると、やっかいな事が生じることがあっ た。さらに、スケジュール化されたスクリプトを手動で動かしたい時は、 さらに他のユーティリティを使わなければならないか、Finder を使って該 当のものを選び出して、自分で起動させなければならなかった。しかしな がら、スリープから立ち上げた時や、PowerBook の電源アダプタを差し込 んだり取り外したりした時に、アイテムをオープンする機能のようなユニー クなものを、Scheduler は提供しているのである。

<http://gargravarr.cc.utexas.edu/cron/cron.html>
<http://www.latenightsw.com/scheduler1.2/>

iDo って言ってみよう --- 最初に Sophisticated Circuits 社の iDo Script Scheduler を取り上げたのは TidBITS-481 だが、私が探していた スケジュール機能かもしれない。Lite バージョンは、最近の Mac OS CD-ROM に収容されているが、Apple 社の AppleScript サイトおよび Sophisticated Circuit のウエッブサイトからも無料でダウンロードでき る。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05396>
<http://www.sophisticated.com/products/ido/ido_ss.html>
<http://www.apple.com/applescript/idosched/ido.html>

簡単に説明すると、iDo Script Scheduler は、システム機能拡張ファイル とコントロールパネルで構成されている。Sophisticated Circuits が、同 社の PowerKey シリーズインテリジェント電源タップ用に開発した、ソフ トウエアから発展したものだ。PowerKey Pro ソフトウエアにはスケジュー ル設定用インターフェースがあり、書類のオープン、ディスクのマウント、 スクリプトの実行、更にマシーンの起動と終了を、スケジュールに従って 実行できる。iDo Script Scheduler は、PowerKey ハードウエアからスケ ジュール設定用インタフェースを分離したもので、Mac OS には無い、スク リプトのスケージュール実行機能を提供する。iDo Script Scheduler は、 スクリプト のみ を実行する、またはスクリプトアプリケーションを実 行する。iDo Script は、アプリケーションや書類を直接オープンできない が、(もちろん)アプリケーションや書類をオープンするスクリプトを実 行できる。

<http://www.sophisticated.com/products/powerkey.html>

iDo Script Scheduler には、2 つのバージョンがある。無料の Lite バー ジョンは、最大 3 つ のイベントのスケジュールを設定できる。試すには ちょうどいいし、一部のユーザーおよび特定の用途に使う Mac には十分か もしれない。iDo Script Scheduler Lite の充実したスケジュール設定イ ンターフェースで、ユーザーは以下の設定ができる:

Lite バージョンから iDo Script Scheduler Enhanced には、25 ドルで アップグレードできる。Enhanced バージョンでは、スケージュール可能な イベント数に制限が無いだけでなく、以下の機能がある:

最後の 2 つの機能は、私にとって価値があるかどうか疑問だった。たくさ んのアプリケーションを使用するので、既に使っているショートカットと ぶつからない、ホットキー設定を見つけるのが難しいからだ。それに、私 が使っていないときに、たとえ自分で書いたスクリプトでも、マシーン上 でかってに動いて欲しくない。しかし、徐々に私はこの 2 つの機能を受け 入れ始め、便利な使い方も見つけた。たとえば、Application メニューの Hide Others コマンドをエミュレートするスクリプトだ。このスクリプト は、しかし、隠したくないアプリケーション(たとえばスティッキーズや、 モニタープログラム)がバックグランド実行中の場合は、そのアプリケー ションを隠さない。私が使っているアイドルスクリプトは、Email のパー ティションの空きが少なくなると警告するスクリプトだけだが、今までの ところ何も問題が起きていない。

そして、iWant... わたしが望むものは... iDo Script Scheduler には、 まだ機能強化の余地がある。私は、イベントの名前順、起こる順、タイプ 別などでコントロールパネル上にイベントのリストをソートできたら、と 思っている。現状では、スケジュール化されたイベントをホットキーで日 付順にリストしたり、使っていないスクリプトは下の方にリストすること ができる。非常にエレガントなスケジュール設定用インターフェースであ るが、いくつか奇妙な点がある。たとえば、毎月第 8 金曜日などというス クリプトのスケジュール化を許してしまうのである。広範囲にアクセスで きるホットキーというのはよいのだが、特定のアプリケーション専用のホッ トキーや特定のアプリケーション以外のすべてに有効なホットキーなどを、 さらに作り出せたらよいと思う。iDo Script Scheduler の機能拡張(本当 は、バックグラウンドで動くアプリケーション)は、それ自体がスクリプ タブルである。しかし、単に既存のイベントを起動させたり、起動を可・ 不可の状態にすることができるというのではなく、むしろ、私は、スクリ プトを使ってすばやく新しいイベントを作成できる機能が欲しい。次回の リリースでは、これらの問題のいくつかにでも取り組んで欲しいものである。

ところで、iDo Script Scheduler は、もうあなたにとって、とても便利な 存在になっているかもしれない。実は、私にとってもそうなのである。 Lite バージョンは無料(既に Mac OS の CD-ROM の中に入っているかも しれない)、Enhanced バージョンは 25 ドル。iDo Script Scheduler は、 Mac OS 8.0 以上で稼働するが、Mac OS 9 では マルチユーザーのための 機能が利用可能(つまり、個々のユーザーがそれぞれのスケジュールを持 つことができるのである)、また、Mac OS 8.5 で導入された Mac OS の組 み込み式の HTML ベースのヘルプを使用している。既に AppleScript をお 使いの方も、iDo Script Scheduler を一見する価値は十分あるだろう。


TidBITS 10 年の教訓

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.mesh.ne.jp>)

TidBITS はインターネット出版物として切れ目なく発行され続け今週号で 10 周年を迎えた。その間、Apple の栄枯盛衰と再起があり、様々なソフト ウェアが現れては消えていった。また、Mac は速く、小さく、カラフルに なった。高まる一方のインターネット人気や Web の躍進に多少なりとも貢 献できたのではと考える一方で、昔ながらの電子メールという確実な配信 方法を奨励し続けている。シンプルな HyperCard スタックから始まった TidBITS は、誰にでも読むことのできる setext フォーマットになり、そ して、従来からの内容に、読者を対象とした調査の結果や特に関心の強い 者の集まりである TidBITS Talk でかわされた議論を密に組み合わせて多 面的な出版スタイルをとるまでに変わってきた。

TidBITS は今までずっと無償で発行してきた。初めはとにかくがむしゃら にやり、そして、インターネットが非商用のものであった時代にスポンサー を擁する草分けの一つとして慎重な配慮を怠らないようにした。TidBITS を発行し続けてこれたのも、スポンサーとなってくれる企業の絶え間ない 後援のおかげであるし、読者からの声により先ごろ始まった TidBITS 支援 カンパに寄せられた 500 人近い読者からの直接の支援のおかげである。自 分たちが(そして願わくば読者の方にとっても)関心のあるニュース、問 題、製品のことをお伝えする私たちのやり方は年とともに変化しているが、 おおかたの Macintosh ユーザーに関わる情報を信頼できる確実な形でお伝 えしたいという基本的な態度は変えていない。

<http://www.tidbits.com/about/support/contributors.html>
<http://www.tidbits.com/about/support.html>

現段階までの我々の成果を見る一つの物差しを出してみよう。この 527 号 までに 250 人以上の手による 4,500 を越える記事を掲載した。その中に は、レビュー 209 本、ニュース 212、ハウツー物や情報が 198、分析やコ メントが 138、テクノロジー一般記事が 140 あった。さらに、誕生から 2 年たった TidBITS Talk では、千を越えるスレッドでおよそ 6,700 の メッセージが交わされた。ボランティアの翻訳者グループが毎週 TidBITS を 5 つの言語に訳してくれている。現在は、オランダ語、フランス語、ド イツ語、日本語、スペイン語の翻訳版が発行されている。

<http://db.tidbits.com/searchtips.html>
<http://www.tidbits.com/search/talk.html>
<http://www.tidbits.com/about/translations.html>

これはすべて、この十年の間に私たちが少しずつ経験を積み重ねていると いうことの証でもある。とても偉そうなことは言えないが、TidBITS を発 行しながら、Mac コミュニティと付きあいながらちょこちょこと学んでき た。今週は我々が 10 年間で学んだことを皆さんにお話ししたいと思う。 我々はその教訓にしたがって公私共に過ごしており、みなさんの中にもお もしろい、使えそうだ、自分の生活でも実践しようというものがあるので はと思う。

連絡可能であるべし -- 原則として、受け取ったメールにはすべて返事 を出すようにしている。ここ数年の間にメールの量が増加の一途をたどっ ているため、これを実行し続けるのは難しくなってきているが、できるだ け早く返事を出すという目標に変わりはない。効率の悪い電話に費やす時 間は極力少なくしているが、かかってきた電話には自分で出るし伝言があ れば折り返し電話をかける。こうして連絡が取れるようにしておくことは、 コミュニティの近くにいることとコミュニティの一員としてあり続けるた めに大切なことだ。

約束を守るべし -- この教訓は一言で言えば「有言実行」ということだ。 私たちは 10 年の間、事前にお知らせする休暇を別として週に一回刊行と いうスケジュールを守ってきた。驚くべきことだが、どうも締切を守ると いうことは珍しいことに属するらしい。ある人が信頼できるかを判断する 際、大学でレポートを締切を過ぎて出したり、まったく提出できなかった ことがどれだけあったかを尋ねる。これでその人にどの程度締切を守る意 欲があるかが判断できるからだ。とはいえ、口約束だって約束だとは思う が、合意内容を手短にまとめた契約書というものも、後になってややこし いことになるのを防ぐことができるので有用だ。契約書があったからこそ スポンサーがちゃんと広告掲載料を払ってくれたこともたまにはあったし、 それでも払ってくれないスポンサーもいたという悲しい事実もある。

敵を作らず、友を作るべし -- あらゆる人と仲よくやってくということ は不可能だが、それでも仲よくする努力を怠らないことは大切だ。メール にはすべて返事を出そうというのもこの一つの現れだし、この努力が実を 結んだことは何度もある。初期の TidBITS の配信が可能だったは何の見返 りも期待しない人たちのおかげだったし、今日 TidBITS の翻訳版があるの も毎週善意で翻訳をしてくれているボランティアの人たちのおかげだ。早 い話、人に手を貸してあげれば、後になってその分、時には何倍にもなっ てお返しがある可能性があるのだ。子供のころ読んだおとぎ話が現実の世 界にもあるようだ。

ついでながら、「大切なのは何を知っているかではなく、誰を知っている かだ」ということわざの前半部分には必ずしも賛成しかねるが、後半部分 はまさにその通りだと思う。コンピュータ業界は個人のつながりで成り立っ ている部分が多く、知り合いが多いということはどんな局面でも役に立つ ことなのだ。

コミュニティを大事にすべし --コネは非常に大事だが、一方でコミュニ ティのことも常に考えなければならない。人間とはもともと社会性のある 動物で、常にコミュニティを形成したり属したりしている。私たちは Macintosh コミュニティにお返しをすることを大いに重視している。そも そも私たちが暮らしているのは(現実および仮想の)コミュニティの中な ので、コミュニティをないがしろにするのは自殺行為だ。こうした行いの 最も優れた例の一つとして、FreePPP がある。FreePPP は何人かのプログ ラマーが作り出し、その成果を無償で提供するとともに、商用目的での利 用には 1,000 ドルを慈善団体に寄付するというライセンスで使用を認めて いる。私は過去数年間 FreePPP のライセンスに関っているが、その間の寄 付額は 20,000 ドルにも上っている。

<http://www.rockstar.com/ppp.shtml>

休むことを知るべし -- 休まずに働き続けるのはどんな馬鹿でもできる し、ほとんどの人はそうしている。私たちはほとんどの時間をそれぞれの 小さな仮想世界で過ごしているかもしれないが、現実世界というものも存 在しており、そこには現実の友人や現実の家族というものもいるのだ。私 たちはだいぶ前に、どれだけ仕事を大切に思っていても、無理にでもコン ピュータを離れて人生を満喫することの大切さを学んだ。森の中を散歩し たり、よい食事をしたり、ベッドでごろごろしたり。することは何でもい いのだが、現実世界から遠ざかりすぎると視野が狭くなるだけなのだ。

何ごとも正当な理由によって行うべし -- TidBITS はビジネスとしてやっ ていけるものであり続けなければならないが、私たちの誰かが金持ちにな るようなことは決してないだろう。私たちが TidBITS を発行する理由は 人々を助けたいから、そして私たちが物事をどのように理解したかを僅か でも明らかにしたいからである。注意してほしいのは、私たちにとって “正しい”理由が、他の人々にとっての理由と常に一致するとは限らない ということだ。例えば私は先週の PC 購入に関する記事を、自分がその状 況にあると気付いた Macintosh ユーザーを助けるために書いた。それにつ いて一部の人々は彼らの Macintosh への情熱から、私たちを“Macintosh 運動に対する破壊活動家”だと非難した。しかしそのような意図のないこ とは、これまでの実績を見れば判っていただけると思う。私たちは TidBITS 読者があの記事から、それがはっきりと意図していた援助の精神を読み取 れるほどに聡明であると感じている。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05890>

ベストな人たちと働くべし -- すべての人々が自分の同僚を選ぶ贅沢が できる訳ではない。だが試してみるべきだ。なぜならあなたのまわりの人々 は、いろいろな点で、あらゆる状況に向き合う最も重要な面だからだ。私 たちがこれに初めて気づくのは大学においてである。そこでは、優れた教 授はあらゆる話題を、たとえそれがどんなに理解しがたく、または困難な もの(英作文?)でも、すばらしい学習体験に変えてしまえる。そして下手 な教授は、とびきりおもしろい授業を台無しにするだろう。この法則はビ ジネスにも同様に当てはまる。私たちは TidBITS を様々な理由で意図的に 小さく保っているが、最大の理由は、興味をそそる実際の作業をするかわ りにビジネスを遂行する管理職になるのには興味がないからだ。小さな組 織を成功させ続けるためには、ベストな人々とだけ働くことが一番大切で ある。私はためらうことなく次のように言える。TidBITS を手伝ってくれ ている Tonya Engst、Geoff Duncan、Jeff Carlson、Matt Neuburg、そし て Mark Anbinder は、そのレベルの人々であると。

何ごとも見かけより難しい -- 私たちは、この業界により深くかかわる につれて、製品や技術の創造の影にある数多くの物語を知るようになった。 創造は(それがロケット科学でなくても)多くの場合、膨大な予算を持つ 巨大企業にとっても容易ではない。製品を世に出すという基本的なことで さえ非常に多くの細かいことを伴い、その実行はしばしば急で困難な状況 下で進められる。要するに、ある会社が失敗したときにそれを酷評するの は簡単だが、目に映るよりたくさんの物語があることを心に留めるように してほしい。明らかなことだが、私たちは失敗の言い訳をしたいのではな く、単に問題は起きるのだと言いたいのだ。そして現実世界の観察者は、 それが避けられないことだと理解すべきである。

無実を推定するべし、間違いは認めるべし -- 失敗の背後にある本当の  ストーリーを学ぶことで、ひどい状況というものはほとんどの部分で様々  な間違いと計画の悪さの結果にすぎず、もっと巨大な某陰謀の一部とか、  あなた個人をターゲットにしたものとかではないことも、よく理解できる。  ある会社がただユーザーを騙すためいかに存在しているか不平を言うのは  簡単だが、状況全体を理解するための時間を費やせば、ユーザーを騙すこ  とはほとんど一度も予定されていないことがわかる。もちろん、多くの会  社が陰謀を理由に訴えられているという事実は、公に彼らが間違いを認め  ることを拒否したことに直接関係している。最悪のケースでは、この拒否  は間違いが実際に起きたことの否定と解釈される。情報操作の専門家は同  意しないかもしれないが、我々は完璧な人間はいないと信じており、人々  や会社は間違いを認めることでもっと人間味にあふれたものに写るのだ。  我々は常に、問題の存在を否定する会社より、製品のリリースに失敗して  もすぐにそれを認めて修正する会社の方により共感するのだ。

正確さと価値の創造に励むべし -- Sturgeon の法則はサイエンスフィ  クションの 90 % が無価値と主張するが、それは全体の 90 % が無価値だ  からだ。Theodore Sturgeon 氏は正しかったかもしれず、残りの 10 % に  入るような製品を作るよう努力すべき理由もそこにあるのだ。我々が  TidBITS に何を書くかを考える際に常に自問することは:

記事に関してはそれら質問に答えるのは一般的に容易だが、ベーシックな ニュースで我々が付加する価値は、最適なニュースの選択と後世に残す総 合的な情報アーカイブの製作にあるのだ。それが、我々が TidBITS で過去 の報道に関連した重要な製品や出来事にフォーカスし、リリース前のソフ トウェアについてはほとんど報道しないことの理由の一つなのだ。

将来の展望 -- 未来は何をもたらすだろう?正直、何も言えない。出版 を止める予定はまったくないが、永遠に続くものは何もない。平均的な仕 事だと約 18 ヶ月しか続かないような業界で、今まで我々は次の段階への 移行衝動に抵抗してきたし、業界が十分に興味深く、事業として TidBITS が成り立つ間は、私は物事を変える理由はないと思っている。

我々や Macintosh コミュニティの実に多く人々が直面している最も重大な チャレンジは、コンピューティング全般に対する情熱を維持できるかどう かだ。TidBITS Talk で Jeffrey McPheeters 氏の言う超批判的で物事に疎 い馬鹿になるのはあまりにも簡単だ。我々はエキサイティングな時代に生き ている。誇大広告や約束は常に我々の業界への評価を曇らせる恐れがある が、我々はいつもコンピュータや我々の人生についての考え方を変えてい く技術や製品に対し、情熱的な眼差しを持ち続けなければならないのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=910>


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