TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#529/01-May-00

スパムを違法とすべきだろうか? Brady Johnson 氏は、不要な宣伝用の電 子メールを削減するための州や合衆国政府の努力、そして、スパムを規制 することによる実際の影響について考察する。さらに、Adam が Mac 立ち 上げプロセスのコントロールを手中に収めるかぎを、徹底的に細部にわたっ てお伝えする。また、MailBITS では、AOL 5.0、Palm Desktop 2.6、 Virtual PC 3.0.3 のリリース、Apple 社による iMovie の無償リリース、 そして、FileMaker Pro 5 におけるインターネット上での主なセキュリティ 問題についてお伝えする。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/01-May-00

(翻訳:三好泰子 <yokomo@mio.to>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

合衆国政府、Microsoft 社分割を勧告 -- Microsoft 社に対する一連の 独占禁止法違反の訴訟問題で、先週の金曜日、合衆国政府は Microsoft 社 をこの 10 年で 2 社に分割するよう勧告した、という新しい動きがあっ た。2 社のうちの 1 社は、ウィンドウズのオペレーティングシステムに厳 しく限定し、これを中核としたビジネスを行う。そして、もう 1 社は、 Microsoft 社のウィンドウズ以外のすべてを包含し、オフィス、オンライ ン製品、開発ツール、サーバ用ソフトウェア、Web ブラウザ、ゲーム、等々 を含むビジネスを行うものである。Microsoft 社は、自分達に対するいか なる判決に対しても徹底的に自社を守る意向であることを繰り返し主張し ている。[GD]

<http://www.usdoj.gov/atr/cases/f4600/4639.htm>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1152>

FileMaker 5 インターネット上のセキュリティに落とし穴 -- Blue World Communications 社は、FileMaker Pro 5 と FileMaker Pro 5 Unlimited において、XML の公開と電子メール機能に深刻なインターネット上のセキュ リティの問題があることを概説した警告を発表。電子メール経由と Web の セキュリティ設定を XML が認識しないことの 2 つの隙につけこんで、侵 入者が Web 公開されたデータベースの中身全体を乗っ取ってしまうことが 可能なのである。もう 1 つは、FileMaker 5 の電子メール機能を使って、 インターネット上で勝手に電子メールでメッセージを送ることができると いう問題である(世界中でスパマー達が大喜びしているに違いない)。こ の新事実が発覚したのは、FileMaker 社が FileMaker Developer 5 で FileMaker Pro 5 の Web 公開機能に関する書面を発表した1週間後のこと である。しかし、FileMaker の XML の機能に関する部分は、FileMaker 社 の Web サイトに 5 週間も掲載されていた。この記事を書いている時点で も、FileMaker 社は問題を認識していない。現時点では、FileMaker 5 の Web Companion を使用できないようにするか、FileMaker Pro 4.x に戻す か(4.x では、これらのセキュリティ問題は起こらないが、FileMaker 5 のデータベースを開くことができない)、外部からのリクエストが Blue World 社の Lasso のようなミドルウェア製品のゲートウェイを通るように する、ことが対応策のようだ。[GD]

<http://www.blueworld.com/blue>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05904>

Apple 社 iMovie のダウンロードを無償で -- iMovie に対する人気ある 需要にこたえて、Apple 社は PowerBook G3(FireWire)と Power Macintosh G4 マシンの所有者に対してその入門レベルのデスクトップビデ オ編集プログラムを無償のダウンロードとして提供することとした。iMovie はデジタルカムコーダからの FireWire 経由での入力を受け付け、まだ蕾 の映画監督達がクリップを再編集したり、トランジション効果、音声、そ れにタイトルを加えたりする事ができるようにする。編集後の映画は色々 なフォーマットでエクスポートできる。19.2 MB のダウンロードには160 MB のチュートリアルは含まれず、なおかつ Apple 社は Web 版に対しては 技術サポートを提供しない。iMovie は現在 iMac DV コンピュータと共に 出荷されている。[JLC]

<http://www.apple.com/imovie/download/>

Handspring 社 Palm Desktop 2.6 をリリース -- Handspring 社は Palm Desktop 2.6 for the Macintosh をリリースした。これは Visor 携帯デバ イスとコンパチで Mac OS 9.0.4 で発生した USB 同期問題を解決してい る。これまで、Visor の所有者は Palm 社が 1999 年 10 月にリリースし たバージョン 2.5 ではなく Palm Desktop 2.1 を使うことを余儀なくされ ていた( TidBITS-501 の“Palm Desktop 2.5、HotSync を強化、そして、 USB サポート ”参照)。Palm Desktop 2.6 ではリリース 2.5 で提供され た機能、Palm Desktop アプリケーション内での HotSync 機能の統合、強 化された USB サポート、それにユーザー間での容易な切替を含んでいる。 Handspring 社としては新アプリケーションのはずだが、そのドキュメン テーションも外観も Palm 社のアップデートであることを示している (Handspring 社は Palm 社から Palm OS と Palm Desktop のライセンス を受けている)。我々のテストでは、このアップデートは Visor のみなら ず Palm V でも正常に動作した。しかしながらこの記事を書いている段階 では Palm 社からはこのアップデートは提供されておらず、この無償の 12 MB のファイルを Handspring 社からダウンロードするには Visor のシリ アル番号を入力しなければならない。[JLC]

<http://www.handspring.com/support/softwareup.asp>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05596>

AOL 5.0-- America Online 社は AOL 5.0 for Macintosh をリリースし た。これには新しいカレンダー機能、過去 24 時間以内に間違って削除し てしまったメッセージを回復することができる機能、メッセージを読み上 げる Apple 社の text-to-speech 機能のサポート、等々を含んでいる。し かしながら、この新しいクライアントはその Web ブラウザとして、もっと 新しい Internet Explorer 4.5 や 5.0 ではなく、Internet Explorer 4.0 のカスタマイズ版を使っている。AOL 5.0 は PowerPC ベースの Macintosh で最低 Mac OS 8.1, 32 MB の RAM と 30 MB のディスクスペースを必要と しているが、AOL 社は PowerPC G3 かそれ以上のプロセサ、64 MB から 128 MB の RAM、そして 100 MB のディスクスペースを推奨している。AOL 5.0 は 10.4 MB のダウンロードサイズである。[JLC]

<http://www.aol.com/>

Virtual PC 3.0.3 アップデートリリースされる -- Connectix 社は Virtual PC 3.0.3 アップデータをリリースした。これは Windows 2000 と Red Hat Linux 6.1 とのコンパチビリティを改善したものである。この Pentium チップエミュレータの新版はまた Power Mac G4 マシン最適化用 の Velocity Engine(AltiVec)も追加して、iMac DV システムとの問題を 解決し、さらにフォルダ共有やドラッグアンドドロップの安定性も改善し ている。このアップデート版は 2.5 MB のダウンロードで、Virtual PC 3.0 の所有者には無償である。[JLC]

<http://www.connectix.com/products/vpc3.html>
<http://www.connectix.com/downloadcenter/updater_vpc_303.html>

Dartmouth 大学ソフトウェアをスピンオフ -- Dartmouth College によっ て開発され販売されてきた 3 つの人気ネットワーク監視及びトラブル シューティングツールが新たに創設された New Hampshire 企業である Dartware 社に移譲された。含まれるのは、メール警告とページング機能の 付いたネットワークおよびサーバ監視ツールである InterMapper、多機能 ピングベースのネットワークトラブルシューティングツールである MacPing、それに SNMP ネットワーク監視コンソールである SNMP Watcher である。この新企業には Stuart Pompian 氏と共に Rich Brown 氏と Bill Fisher 氏(両人は過去 4 年間に渡り Dartmouth 大でソフトウェアの制作 とサポートにあたって来た)が参加している。[MHA]

<http://www.dartware.com/>

アンケートのお知らせ:付随的なスパム -- 今週は Brady Johnson 氏の 合衆国における反スパム法制についての結論をお伝えする回となったが、 彼の記事を読んでいて、あなたにとってはスパムはどれ程深刻な問題となっ ているかに興味を持った。我々の所でも毎週おびただしい数のスパムメッ セージを受け取るが(私の場合で、2000 年を平均すると週に 56 通とな る)、我々のアドレスは極度に公のものである。そこで、インターネット 上でのスパムの実際的なインパクトはどんなものか判断する手助けをして 欲しい。質問:“もし受けているとしたら、平均して、自分のメールアド レス宛てに週に何通の自分では希望していない商業メールメッセージを受 けているか?”あなたがスパム問題は過剰にとりあげられすぎていると思っ ているかあるいはインターネット上のたたりだと思っているかに関わらず、 我々のホームページ上で自分の票を投ずるのを忘れないで欲しい![ACE]

<http://www.tidbits.com/>


Macintosh の起動に手を加える

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

先週のクイズで、“リムーバブルメディアをイジェクトするために起動時 に押しっぱなしにするものは?”という質問を出した。答えはマウスボタン で、回答者の 2,150 人のうち約 3 分の 2 の方が正解だった。しかし、選 択肢にあげてあったほとんどが起動時に押しておくと何かが起こるものだっ た。さらに、TidBITS Talk の物知り連は起動時に影響を及ぼすその他の キーなどのことを言及してくれた。次回 Macintosh を起動するときに下記 のどれか一つを試してみてはいかがだろうか。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=38>

起動後の環境を制御する -- Shift キーを押しておくと機能拡張がロー ドされないのはたいていの Macintosh ユーザーが承知していることだが、 それ以外にも起動後のシステムの状態に影響を及ぼす起動モディファイヤ が数多くある。

<http://www.casadyg.com/products/conflictcatcher/8/>

<http://www.connectix.com/products/rd9.html>

トラブルを断ち切る -- 起動時のモデファイヤーには、Mac の低レベル 部をデフォルトにするので、トラブルシューティングに利用できるものが いくつかある。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58029>

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=15>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05656>

起動ディスクの選択 -- 当然のことながら、起動時のモディファイヤは Mac の起動に使われるディスクに影響を及ぼすものが多い。その一部は特 定のマシンでしか起こらないものがある。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n18059>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n24881>

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58477>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n20881>

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n2680>

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58342>

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58583>

切実な局面での起動用モデファイヤー -- 以下に述べる起動用のモディ ファイヤを便利だと感じるのは、プログラマーと相当はまったユーザーだ けであろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1057>

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n60285>

ただのお遊び -- Apple は起動のモディファイヤにお遊びで入れていた “Easter Eggs”を外してしまったが、古いモデルの Mac のなかには実行 できるものがわずかにあるだろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=03711>


メールスパム:宣伝カーは鳴りやまず(第2部)

by Brady R. Johnson <brady@seanet.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

TidBITS は迷惑な広告メール(UCE)、もっと一般的には“スパム”と呼ば れるメールの処置方法に関してさまざまな記事を掲載してきた ( TidBITS-442 の“スパムに反撃”を参照)。インターネットの広範な 普及と伴に問題が大きくなるにつれ、国会議員が有権者のメールボックス に殺到する広告メールに重大な注意を払い始めた。この記事の第一部では、 スパムの法的な定義づけと、ひどさを増すスパムに対して政府機関によっ てなされた研究のいくつかを取り上げた。今回は、さまざまな政府機関が この増大する問題をいかに取り扱おうとしているかを見ていこう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05032>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05907>

国会と州議会による反応 -- 電子メールによるセールスは、ごみメール や放送広告のような他の形式のコマーシャル広告戦略と同じくらい一般的 になっている。宣伝スピーチは憲法修正第1条によって保護され、広告メー ルセールスも含むいかなる形態の広告に対する明確な禁止も違憲となる。 しかし、商用目的の言論は個人的な言論よりも強く規制することができる。

2 つの連邦取引委員会(FTC)報告(この記事の第1部を参照)と増える一 方の消費者の苦情をもとに、国会といくつかの州議会がこの問題に対する 法案を審議し始めた。国会はまだどの法案も通過させていないが、20 州が この問題を審議して 15 州がこれを法制化した。他の州もこの問題に対処 する法制化の審議を積極的に続けている。

<http://www.ftc.gov/opa/1999/9912/fiveyearreport.htm>
<http://www.cdt.org/spam/>

この州法と連邦法は、法案と成立法のどちらもあるが、多数の類似の条項 が含まれている。インターネットで広告宣伝をしようとする企業は、次の ような規則にしたがうことで法を犯すことを避けられる:

米国内の事情 -- さまざまな詐欺や迷惑なポルノの広告の急増、その他 の迷惑行為についての消費者の苦情が増加していることを受けて、いくつ かの州議会は、消費者を保護しかつ商品を広告する合法的な商行為を許容 しながら、いかにインターネットのメール広告を法規制するか審議を始め た。結果としての法案と成立法は渾沌としている。多くは罰金を規定し、 ほとんどは損害に対する訴訟の私権を創設し、いくつかは損害に対する民 事判決と司法命令を行うために州司法長官の権限を強化している、といっ た具合だ。

<http://www.spamlaws.com/state/>

また、州と連邦の両レベルの電子メール規制はかなりな類似点を持ってい る。各州がいくぶん異なるスパムの定義を採用したとしても、類型化する に十分な要因がある。これまでスパムに関する法案を通過させた 15 州の うち 8 州が、次のような禁止条項への違反を、個人または団体に対して罰 金と実行可能な懲役を科せる犯罪であるとした。

個人または団体に対する公的義務を創設しようとしている州法の中に含ま れる他の条項には次のようなものがある。

15 州のうち 10 州は、州が賦課する他の罰金または賠償金に加えて、個人 が侵害行為でスパマーを告訴することを許可する。これらの州のほとんど では、上述の禁止事項に違反するスパムの受取り手が、送信者に法定の損 害賠償金を請求できる。その範囲はデラウェア州などの一件につき 10 ド ルからワシントン州の一件につき 500 ドルまでに渡る。さらに、インタラ クティブなコンピュータサービスの提供者(たとえば ISP)はもっと高額 の賠償金を請求できる。ワシントン州では、一件につき 1,000 ドルの金額 である。これらの条項の重大さを示すために、ワシントン州のある係争中 の訴訟を例にしよう。5,800 通の UCE を受け取った ISP がある企業をこ の州の対スパム法違反で告訴しているのだ。一件につき 1,000 ドルだから この送信者の損失可能金額は 500 万ドルとなるわけだ。

ほとんどの州法では、州内の住民に対してメール広告を送信した者が州裁 判所の司法管轄下に置かれることを規定している。これは遠くまで力の及 ぶ法令として知られる法形式である。ある州で商品を売ろうとした者は誰 でも、それがカタログまたはメールセールスで州外からのものであっても、 たとえば買い手が支払いを拒否した場合もこの州法の保護に出会い、そし て消費者保護法や対スパム法のような州法に従う義務を持つ。こうして、 UCE の受信者は自身の州の法廷に訴訟を起こせるようになるわけだ。複数 の州の受信者に送信して一つ以上の法を犯したスパマーは、気がつくとい くつかの別々の州裁判所に提訴された複数の訴訟に賠償責任を負っている ということもある。

4 つの州法に含まれる興味深い条項は、UCE の送信者は自分の利用する ISP の方針を尊重しなければならないことだ。たとえば、ある人がインターネッ トでメールを送信するために AOL を使い、そしてそのメールが AOL の成 文の公示された方針に違反すれば、この送信者の AOL の方針の侵害は 同時に カリフォルニア州、アイオワ州、ルイジアナ州、ノースカロライ ナ州の法律違反となる。

カリフォルニア州とテネシー州は、すべての UCE に広告だと付票すること を要求する法律を通過させた。販売を目的とする商品やサービスを申し出 る電子メールのタイトル行は、“ADV:”という文字列で始めなければなら ない。カリフォルニア州では、メール広告が 18 歳以上の人々にのみ合法 的に閲覧もしくは処理できるものの場合には、タイトル行は“ADV:ADLT.” という文字列で始めなければならない。

州民に送られた違法な UCE に対して司法権を認める遠くまで力の及ぶ法律 の下では、カリフォルニア州民に広告メールを送信し“ADV:”識票を省略 するいかなる州のスパマーも、カリフォルニア州で罰金を課せられること になる。現時点では、裁判所はこの司法権の問題をまったく解明していな い。この問題には、遠くまで力の及ぶ司法権だけではなく、“法律の抵触” と呼ばれるものも含まれる。これは、ある訴訟が一つ以上の州の法令の範 囲内にあることである。このような訴訟では、裁判所はどの州法をこの訴 訟に適用するかを決定する必要がある。抵触の分析は非常に複雑になろう。

いずれかのタイプの対スパム法を法制化した州は、カリフォルニア州、コ ネチカット州、デラウェア州、アイオワ州、イリノイ州、ルイジアナ州、 メリーランド州、ノースカロライナ州、ネバダ州、オクラホマ州、ロード アイランド州、テネシー州、バージニア州、ワシントン州、ウエストバー ジニア州である。

メイン州では、適切な法律制定のために問題を研究し議会に対して勧告文 書を作成する委員会を設置することを定めている。

連邦法へ -- 1997 年以来、電子メールを使ったセールスに対処するため の法案が上院・下院の両方にいくつも提出されてきている。両院で承認さ れたものはない(したがって大統領の署名が求められるに至ったものはな い)ものの、議会がどのような問題意識をもっているかを知る参考にはな る。これには二つの理由がある。まず、議会がいつかはこの問題に関する 法案を通すであろうし、次に反スパム法をすでに制定している 15 の州の うち 2 つが、連邦法が成立した際には州法は無効となる条項を盛り込んで いるからだ。

これまでに提出されてきた連邦法案のいずれにも各州法に見られるほどの 厳しさはない。大体において連邦法案では違法行為が犯罪とされず、ユー ザーがメーリングリストから脱退することができるよう措置があれば、な んらかのセールス行為が認められているものがほとんどだ。UCE を題名か ら区別できるようにするという措置を盛り込んでいる法案は一つだけだし、 送信側が ISP の利用規約を遵守すべきだとしているものも一つだけだ。

最も最近に議会に提出された法案は Unsolicited Electronic Mail Act of 2000 だ。もし成立したら、この法のもとではスパマーが ISP の利用規約 に違反することは犯罪となり、スパマーが有効な返信用アドレスを維持す ることが義務づけられ、ユーザーの脱退の意志も尊重しなければならない。 また、セールスメールは標準に基づいた方法(これは FTC が規定)で見分 けられるようにもしなければならない。この法案は 3 月に委員会で修正さ れ、改めて下院に提出されたうえで可決されたら上院に提出される。いず れの段階でも再度委員会に再検討のために差し戻されることがありえる。 最後に両院を通過したら、大統領の署名ということになる。

<http://www.spamlaws.com/federal/hr3113.html>
<http://www.spamlaws.com/federal/summary.html#hr3113>

将来における連邦法が既存の州法にどのような影響を与えるか、現時点で ははっきりしない。とはいえいわゆるジャンクファックス法での先例はあ る。連邦電話消費者保護法では、セールスファックスが消費者のもとに送 られることを禁じており、違反の際にはファックス一件あたり 500 ドルの 罰金が課される。ワシントン州などではほぼ同じ内容の州法もある。UCE の場合もファックスの場合と同様に連邦法と州法が共存することになるの が濃厚だ。

難題 -- 大体において、どの法案もスパムとの戦いの根本的な問題を見 落としている。スパマーは正体を明かしたがらないものなのだ。スパマー が本名や返信用アドレスを隠すのには理由がある。ユーザーが脱退通知の メールを送信するのはそもそも彼らがスパムを送信するのとおなじぐらい 簡単だということは判っているのだ。もしスパマーが本当に犠牲者の声に 耳を傾けたとしたら、スパマーは脱退を要求するメールの洪水に襲われ、 メーリングリストからスパムを受け取りたくない人のアドレスを取り除く ためにそれこそ日夜苦労しなければならない。

この問題のいい例が Engst v. Worldtouch の訴訟だ。1998 年 7 月、当時 新法だったワシントン州反スパム法に基づいて Adam Engst 以下 3 名の TidBITS メンバーが “Christopher Lee Knight”および“Worldtouch Network, Inc.”を訴えた。ほとんどの州でそうだが、ワシントン州でも訴 状は被告個人に直接手渡されなければならない。法人を訴えるには登録さ れた代理人か社員に手渡す。ところが、“Worldtouch Network, Inc.”は そのまぎらわしい名称にもかかわらず実際には会社ではなく、 “Christopher Lee Knight”は数多い偽名の一つであることはすぐに明ら かになった。“Worldtouch Network, Inc.”の行方を追跡するのは簡単だっ たが(告発されてから毎月一回住所を変更していたのだ)、Knight 氏を見 つけ出すのははるかに大変だった。これには結局 3 人の私立探偵と一年の 月日が必要だった。

<http://www.tidbits.com/anti-spam/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05000>

もちろん、弁護士や探偵を雇うにはお金がかかる。ワシントン州法では同 州の司法長官がスパマーを告発することもできるとしている。司法長官の 方が普通の個人よりもスパマーを探し出す能力が高い。だが司法長官はス パムに関する苦情の処理に忙殺されており、限られた数のケースしか取り 上げることができない。というわけで単に連邦法や州法を無視して返信用 アドレスやルーティングヘッダを偽造し、スパム行為を続ける違法スパマー に対する手立てを欠いたままになる。

もう一つの問題は国際スパマーにある。他国からスパムを送ってくる人は、 米国と当該国の間に法適用の条約がない限り、米国の法が適用されない。 バハマなど商行為に対する規制がゆるく米国と法適用条約がない国にある 企業については、オフショアでのインターネットギャンブルですでに問題 になっている。米国内でのスパマー規制が強化されるにつれ、国外から米 国へのスパムが増えることが予想される。この問題が国際的に検討される ようになったのはつい最近のことだ。米国ほどのインターネットトラフィッ クがある国はないし、米国ほど規制なき資本主義が奨励されている国もな い。したがって意味のある国際的解決策が現れるまでにはまだ時間がかか るだろう。

まとめ -- 米国では、インターネットアカウントは当たり前のものにな りつつある。広告には誇らしげに Web URL を表示し、メディアも Web に コンテンツを載せるようになってきている。小企業も大物と競合すべく Web サイトを立ち上げている。インターネットアクセスのない個人や企業は、 まるで電話がなくて世の中から取り残されているような気分になっている。

インターネットの商業化とともに、悪用、押し売り、迷惑セールスもやっ てきた。そうして消費者の苦情と、さらに政府による規制が続いた。規制 は今のところ各州がそれぞれ勝手に次々と立法措置を取り、連邦政府はイ ンターネット上での商業言論の自由を規制することの是非、それにその方 法を論じ合っている。

色々な意味で、スパムのような悪用を規制することは大切かつ必要なこと で、大勢の支持を得ている。だが一方、考えなければならないより深い問 題がある。政府にインターネットの規制を求めれば、それだけ規制を受け ることになる。そこで受ける規制のすべてが私たちの気に入るものではな いかもしれない、ものによっては消費者が期待するものと反対のものもあ るかもしれない。「願い事は慎重に」という昔の賢者の言葉をよく覚えて おかねばなるまい。


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