TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#543/14-Aug-00

今週の「報道をハックする」では、Adam が編集記事の形態の違いを考察す ることで、コンピュータ業界紙の内部作業をさらに解明する。また、 Macworld Expo の 2 つの TidBITS イベントを要約し、新しいスポンサー を発表し、最新の Microsoft Word 文書を表示、印刷できる 20 ドルのユー ティリティ、icWord をざっと眺める。最後に、その結果があなたの生産性 を向上させること請け合いの次のアンケートを募集する。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/14-Aug-00

(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :蒲生 竜哉 <gamo@lib.bekkoame.ne.jp>)

MyFonts.Com が TidBITS のスポンサーに -- Web 以前の情報欠乏の時 代、私はコンピュータ関連雑誌を熟読し、デザイナーの経験などないにも 関わらず、フォントカタログが特に好きだった。それらは、非の打ち所の ないデザインを誇り、白い紙にきれいな黒が鮮やかな文字サンプルと、ど れにもそのフォントの系統、効能、用途を称賛する説明文がついていた。 フォントカタログは久しく目にしていないが、MyFonts.com の Web サイト を同じように楽しんでいる。そして MyFonts.com を我々のもっとも新しい スポンサーとして歓迎したい。

カタログの場合と同様に、MyFonts.com は有名なタイプデザイナーの経歴 とフォント紹介文とを使って、タイポグラフィに意匠を凝らす。しかし、 MyFonts.com に魅力を与えているのは、そのダイナミズムだ。サイト全体 は、どのフォントからでも出発して、同じデザイナーやメーカー、ベンダー によるタイプフェースと、加えて見た目が似ている他のフェースをどんど ん見ていける総合的なデータベースによって支えられる。 TypeXplorer ツールは、このような閲覧方法をほとんどのフォントで次のレベルに引き 上げる。太さ、幅、コントラストや x-ハイト の違う類似のタイプフェー スを探すことができるのだ。どのフォントでもすべての文字セットを見る ことができ、さらに、テキストをある長さまで入力してどのように見える か確認できる。WhatTheFont という名前の別のツール(旧名 Identafont) で、アップロードしたテキストのスキャンデータにマッチするフォントを MyFonts.com の 10,000 のフォントデータベースから探してみることがで きる。

Internet Movie Database(IMDB)のような、情報の巨大データベースへの 窓を与えてくれる他の Web サイトと同じように、タイポグラフィに少しで も興味があれば、MyFonts.com はただただ楽しい。そして、デザインの専 門家であれば、MyFonts.com で見つけたフォントの多くを購入できる。い ずれにしても、MyFonts.com のいたるところを見て回る時間はきっと楽し いと思う。 [ACE]

<http://www.myfonts.com/>

Word 文書閲覧・印刷ユーティリティ、icWord -- Panergy 社は Microsoft Word 文書閲覧・印刷ユーティリティ、icWord を発売した。も しあなたが Word 文書は読みたいけど編集する必要はないというのであれ ば、価格 20 ドルのこのアプリケーションは 400 ドルの Word 98 や、Word と Excel、PowerPoint がバンドルされて 500 ドルの Office 98 よりもは るかに安い買い物だ。icWord は元のファイルで指定された書式を保ったま ま、各種バージョンの Macintosh 版および Windows 版の Word 文書を開 くことができる(Macintosh 版 Word 4 と Word 5 を除く)。また、対象 の文書の中で指定されたフォントがなかった場合のため代替フォントを指 定することが可能。さらに icWord は StuffIt、Zip、uuencode、BinHex 形式で圧縮された Word ファイルを直接参照することすら可能だ。私たち が行ったテストで icWord はほとんどの Word 文書を正しく表示すること ができた。もしときおり Word 文書を読んだり、その一部をコピーするこ とはあるけれどもそれ以上の機能は要らないというのであれば、icWord は あなたにまさにうってつけのツールだ。icWord は System 7.1 以上、8 MB 以上の空きメモリで動作する。30 日間試用版(1.3 MB)もあるので興味の ある方はぜひ試してみて頂きたい。 [JLC]

<http://www.icword.com/>
<http://www.microsoft.com/mac/products/office/>

クイズのお知らせ:大きいことはいいことだ -- 1984 年に デビューし た初代 Mac の画面は横 512 ピクセル x 縦 342 ピクセル、サイズ 9 イン チの白黒画面だった。この、他のコンピュータよりも高い解像度と忠実な グラフィック再現性能が Mac 成功の要因の一つであることに異論の余地は ない。ところで今日の iMac の画面サイズは 15 インチ、解像度は 1024 x 768 にアップしている。解像度で考えると初代 Mac の 4.5 倍の大きさ だ。確かに広い表示領域を持った大きなディスプレイの方が一度に多くの ものを見たり同時にいろいろなことができるぶん使いやすい。そこで今週 のクイズはどうすればあなたの Mac のデスクトップでより多くのものを見 ることができるか? その方法を問題としたい。ヒントを一つ:新しい Mac やモニター、その他周辺機器等を買う必要はない。また、特別なソフトウェ アをインストールする必要もない。ぜひあなたの知識を私たちのホームペー ジで試してみて欲しい。正解は来週お知らせする! [GD]

<http://www.tidbits.com/>

アンケートの結果: 眺めのいい噂 -- たとえ流れた噂がその企業にとっ て営業妨害となる可能性があるとしても、噂サイトが流す情報は消費者に とって重要か否か? を尋ねた先週のアンケートは賛否ないまぜの結果となっ た。800 人以上の回答者のうち、62 % の回答者は営業妨害の危険を犯して まで噂を流す意味はないと感じているのに対し、38 % の回答者はたとえ営 業妨害となる可能性があるとしても噂を報じるのは有益だと考えている。 また、TidBITS Talk の「噂はその企業にとっても有益だ。なぜなら噂が流 れることによって売り上げが伸び続けているし、だから企業によっては故 意に噂を流すんだ。それから噂の本当に有益な点は消費者に買いどきを伝 えてくれる点だ」という議論も興味深い。彼らは“Apple、真剣に漏れを塞 ぐ”の記事について新製品情報が漏れたことによって潰れた企業の古典的 な例は Kaypro 社ではなく、Osborne 社だったという間違いも指摘してい る。ところで、これらの投稿の中でもっとも考えさせられたのは Linux Journal 誌の上級編集者で Cluetrain Manifesto の共著者でもある Doc Searls 氏の投稿だ。氏は Open Source の方法論を導入することで消費者 とベンダーどちらにも有益な状況を作ることができるはずだと指摘してい る。ぜひ一読していただきたい。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=52>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1125>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06070>


TidBITS Expo イベント報告

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:三好 泰子 <yokomo@vm01.vaio.ne.jp>)
(  :斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)

TidBITS Talk の読者なら知っている通り、私は、先月 New York で行われ た Macworld Expo で非公式なイベントを 2 つ開いた。TidBITS そのもの の中では、取りまとめしやすい人数になるように、あえてそのことをアナ ウンスしなかった(Hess Event List には、掲載されていたが)。

Ice Cream Social -- ショーの前の火曜日の晩、TidBITS Ice Cream Social なるものを開いた。格好いい Paramount Hotel のロビーで皆とお ち会い、歩いて近くの Ben & Jerry's のアイスクリームを食べに行った。 アイスクリーム屋の店員たちは、36 人にもなるグループをちょっと追い払 いたい様子で、大きな音で音楽を流して我々を追い出そうとしたが、諦め た。(幸運にも、ちょうど到着した Barbizon School of Modeling の T シャツを着た女の子たちの一団に、店を丁重にお譲りしようと決心した時 までには、全員が自分のアイスクリームを食べ終えていた。)参加者の多 くは、最後には Paramount Hotel のロビーに戻って、普段座ったことがな いような椅子を数時間も占領してしまった。Paramount Hotel の方からは、 ロビーで写真を撮らないよう言われていたが、フィンランドの MacMaailma 誌の Pekka Helos 氏は、外からグループの写真を何枚か撮ったのだった。 Pekka 氏だけが海外からの参加者でなく、Philippe Lopatka 氏はスイスか ら、そして、Dave Fitch 氏は、スコットランドからの参加者であった。2 人の TidBITS 翻訳メンバーも海外からの参加を実現させた。オランダチー ムの Jacques German 氏と、ロシア語の通訳で手助けてくれた Elana Pick 氏だ。思いもよらぬ成功をおさめたイベントだった。必ずや、恒例のイベ ントとして続けて行くつもりである。

<http://www.tidbits.com/resources/543/mw-icecream.html>

アンダーグラウンドツアー -- ショウの最終日の朝、約 10 人の小さな グループの Macworld Expo 90 分ツアーを案内した。どんな風になるのか まったく想像がつかなかったが、しばらく会場を皆で歩き回り、面白そう なブースを見て、顔見知りの業界人と話しをしようと思った。会場を適当 に歩き回るのはあのサイズのグループでは難しく、結局は失敗だったが、 皆が気軽に会って話せるようにしたのはとてもうまくいったと思う。私た ちはまず Main Event Software 社のブースに立ち寄ると、同社の社長で、 Mac 界における AppleScript の達人の 1 人である Cal Simone 氏が、新 しい Scripter Personal Edition を自慢げに見せてくれた。これは AppleScript のオーサリングツールで、AppleScript を使うのに Apple の つつましやかな Script Editor よりはるかに楽だ。そのあと、TidBITS の スポンサーである Dantz Development 社のブースで、マーケティング担当 副部長である Craig Isaacs 氏が、Retrospect4.3 の新しい部分と、Mac OS X が入手できる時に Dantz 社が発表予定のものをざっと説明してくれ た。最後に、Casady Greene 社の SoundJam MP の作者の 1 人である Jeff Robbin 氏が SoundJam のデモをし、次のバージョンに向けてやって いることについて話してくれ、さらに SoundJam のアラームクロック機能 のインターフェースに関する提案を寛大にも受け入れてくれた。

<http://www.mainevent.com/>
<http://www.dantz.com/>
<http://www.soundjam.com/>

実のところ、このツアーには私が普段展示会の会場でやっていることがしっ かり反映されていた。通路をあちこち行ったり来たりしてブースや製品を 見て、誰か知り合いに会うと今度は話すのに 15 分から 20 分はかかる。 こういったことは私のような業種にはとても楽しいし極めて有益なことな のだが、今回のツアーではもっといろいろな所に行けずに不満が残った。 それに、もし申し込みをした 25 人全員が本当に来たなら、手に負える人 数ではなかっただろう。

これからのショウのため、もっといいツアーの企画を引き続き考えておく し、TidBITS で私達は話題を掘り下げて長い記事を書くのを楽しんでいる が、ツアーもそのようになったらいいと思っている。いずれにしても、定 員が限られている場合はいつも、おそらく協力者の方々と TidBITS Talk に最初にお知らせし、それから TidBITS の読者全員にお知らせするだろう ということを心に留めていただきたい。これで TidBITS Talk をメールや Web でチェックしたくなるだろう理由が増えたことと思う。

<http://www.tidbits.com/search/talk.html>


報道をハックする、パート 3: 報道の種類

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)
(  :三好 泰子 <yokomo@vm01.vaio.ne.jp>)

報道はどのように働くか、そして報道とどうつきあうかを扱った、私のシ リーズ記事へ再びようこそ。私はパート 1 で報道を気にかけるべき理由に 少し触れ、パート 2 では様々な出版形態に関する議論を行った。今週はあ なたがしてもらえると期待できる報道の種類に移ろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1172>

かなりの競争をしているプログラムのレビューを私たちが書くと、いつで も、なぜそのプログラムを競争相手と比較しないのかというメールがすぐ に届く。私たちの答えは毎回同じで、その記事は レビュー であって 比較記事 ではない、というものである。そう答えるのは責任逃れに感じ られていつも不愉快なのだが、事実、どんな出版も状況に応じて異なる種 類の記事を発行する。では、最も小さく一番軽んじられている、しかし重 要性が最も低い訳ではないものから順に見ていこう。

言及 -- 報道記事について考えてみよう。長い特集記事や競争相手のレ ビューの中にたぶん現れるような、ある製品や会社に関するちょっとした 言及について、読み進むのをやめて関心を払う人はほとんどいない。もし それがあなた自身、あなたの製品、またはあなたの会社(簡単にするため、 以後はこの 3 つをまとめて“あなた”と略すことにする)に関することで あったとしても、あなたは気付きもしないかもしれない。とにかく、記事 そのものはあなたに関するものではないのだから、2、3 の単語がどんな違 いを生むというのだろう?

本当のところ、言及はあなたが得られる最も強力で役立つ形の報道のひと つであり、成功の兆しでもある。こと報道に関しては、無視されるのは不 運なことだ。言及に値するほどにあなたが高く評価されているという事実 は、以下のどれかを意味する。

従って、小さな言及の効用を過小評価してはいけない。たくさんの情報を 伝えはしないが、重要なのは読者がその文脈であなたのことに思いを巡ら すということである。ジャーナリストと交際を深めて、あなたの名前を広 く知らしめるためのしっかりした広告宣伝戦略に基づいて行動する以外に は、確実にあなたに言及してもらうためにできることはほとんどない。

ニュースブリップ -- “ニュースブリップ”は専門用語ではないが、私 は、ひとつか 2 つの文に要約できるような類のニュース報道を指すものと して用いている。出版は、報道をよりタイムリーで幅広いものにするため に、しばしばニュースブリップを使う。なぜなら、他のやり方では報道で きないような製品や会社でも、ニュースブリップにするのは簡単だからで ある。

読者は、やさしく要約されていて、起きていることの概要をわからせてく れるので、ニュースブリップを好む。MacCentral、MacInTouch、MacFixIt、 それと MacNN のような Web ベース出版、さらに MacSurfer のようなヘッ ドラインサイトでさえも、人気の大部分を頻繁に更新されるニュースブリッ プ(最近のイベント、製品リリース、読者レポートを扱ったもの)によっ て得ている。

ニュースブリップをひとつ作るのは簡単だが、数多くのニュースブリップ を毎日掲載するという継続的な努力は大変である。やってくるメールを分 類し、他の出版物を走り読みする(そう、誰もがやっている昔ながらの研 究手段だ)だけでも、頭が痛くなる。その上、結果を明けても暮れても書 き上げるには、真の気概が必要である。

従って、ニュースブリップの収集と作成を簡単にするためにあなたができ ることは何でも、あなたが報道されるチャンスを増やしてくれるだろう。 それは、必要な情報をすべて含んだ効果的なプレスリリースを作ることに 集約される。あなたは露骨にこんなことをすべきではないけれども、あな たのプレスリリースの先頭によくまとまった一節があれば、非常な時間的 重圧を受けていたり全部をゼロから書くべきだと感じていない出版が、そ れをニュースブリップとして採用するかもしれない。ひとつ警告を。プレ スリリースを出してニュースブリップとして報道してもらうためだけに、 (ベータ版リリースのような)イベントをでっち上げたり水増しし過ぎな いこと。しばらくの間はうまくいくだろうが、それは本質的に狼と少年の 寓話の現代版である。

私はニュースブリップの人気を否定しないけれども、個人的には、手短な 言及より役に立たないものだと思う。なぜならニュースブリップ専門の出 版は、扱うものを厳選するより、何でも扱おうとすることが多いからであ る。私は特定の話題を掘り下げているサイトや出版がますます好きになっ ている(Macintosh に関するものだけでなく)。そういう訳で、あなたが どこに努力を集中するか決める時には、あなたが望んでいる読者を持つ出 版を第一にし、それからもっと一般的な出版に焦点を移すとよいだろう。

製品発表記事 -- 報道の舞台で次に来るのは、多くの読者がレビュー記 事と混同する、製品発表記事である。製品発表は本質的にはニュースであ り、出版は正式なレビューを行う前にそのニュースを出したいと思ってい る。優れた製品発表記事は適量の情報を伴い、そして背景やアドバイスを 提供するので、人々は製品発表記事をレビュー記事と混同することが多い。 よい記者は、発表された肯定的な情報と釣り合いをとるために、初期ユー ザーのコメントや公開ベータ版から得た知識を含めることさえできる。出 版はこの 2 つを簡単に差別化できるが、読者はそう簡単に 2 つを区別で きないという事実は、あなたにとって好都合だろう。

製品発表記事は、情報の大部分が企業から発せられたものであるため、肯 定的になりがちである。記者はまだプログラムの最終バージョンを長時間 使うことができないので、否定的な情報が含まれていたとしても、それが 重大だったり具体的だったりすることはあまりない。従って製品を発表す る時にはあなたの Web サイトを、記者がニュースブリップを製品発表記事 に変えるために使えるような情報(新着情報や what's cool など)でいっ ぱいにしておこう。加えて、もし特定の記者にコネがあるなら、あなたが 特に気に入っている特定の機能についてほんのちょっと踏み込んだ情報を、 その記者たちにそれぞれ別個にプレゼントするとよい。そうした努力をす れば、より良くより詳しい製品発表記事を書いてもらえるチャンスが増え るだろう。記者たちは同じような記事を書きたがらないものである。

レビュー記事 -- 理論上は、レビュー記事はあなたが享受できる究極の 報道形態である。というのも、たまには競争相手についても扱われるとい うマイナスはあるにしても、それはあなたの製品だけを扱うからである。 ここで“理論上は”といったのはレビュー記事には色々気をつけなければ いけないことがあるからである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05872>

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06037>

出版物のなかでレビューして貰うチャンスを増やす最善の方法はレビュー コピー(あるいは“complimentary”(謹呈)の意の“comp”コピーや“Not for Resale”の意の“NFR”コピーとも呼ばれる)を送るか、あるいはあな たの製品をレビューして欲しいと思う出版社にソフトウェアの登録者数を 送ることである。(しかしレビューコピーを送ればレビューして貰える _ と勝手に思ってはいけない - それは単にそのチャンスを大きくしてくれる だけである。)レビューコピーを送るに要するコストはそのレビュー記事 がもたらすことのできる売上げに較べれば無いに等しい。従ってレビュー 記事が書かれるために必要とされるものを提供することに最善を尽くすべ きである。もし出版社からレビューコピーが欲しいといわれたら、愛想良 く引き受けよう。レビューコピーをしつこくせがまなければいけないとい う事態はジャーナリストがもっとも嫌うものの一つであり、業者がレビュー コピーを出し渋ったばかりに記事そのものがキャンセルされてしまったこ ともある。多くの場合、レビュー者はレビューの後でそのソフトウェアを 使おうとは考えない - 製品について書くのは単なる仕事であり、後にその ソフトウェアを所持することはほとんどボーナスとはならない。例を挙げ れば、私は以前 Macworld のためにクロスプラットフォーム問題に関した 特集記事を書いたことがあるが、その時は箱が 18 個とバラの CD-ROM が 10 枚とが手元に残ってしまった。これらは大体がレビュー記事のために必 要なだけだったのである。ところでその結果、今の私の手元にはどのぐら い残ったと思われますか?棚の上にはさらに 4 フィートにも達するソフト ウェアの箱があるが、これらにはこれからも多分一度も手を触れることは ないと思う(そのテーマを再度とりあげることになったとしても、その時 は多分新しいバージョンを必要とするであろう)。

レビューコピーを送ることと裏表の関係にある大事な(しかしとかく見過 ごされがちな)ことは、その製品に関する筆者の質問や懸念に対して速や かに答えを用意してフォローアップをすることである。もしレビュー者の 質問に答えなかった場合、記事になる可能性はほぼゼロにまで落ちるであ ろう。良きレビュー者たるものは読者の心配する点を予測してプログラム を深く掘り下げてみるので、その質問は将来の開発ではどこに注意を払え ばいいかを浮き上がらせることであなたの助けとなってくれることが屡々 ある。答えは率直であるのが一番である;個々の質問をあなたの製品に対 する攻撃と取ってはいけない。防衛的であることは、レビュー者に問題と なっている機能に対してさらに疑いをふくらませ焦点を当てさせることに なるかも知れない。

多くの会社がレビュー者のための詳細なガイドを出して来る。これに関し ては私自身は 2 つの気持ちを感じている - これらは当然役に立つのだと 思う、そうでなければわざわざ時間をかけたりしないだろう、しかしなが らその一方では、少々出しゃばりなのではないかとも感じている。プロの レビュー者として言えば、私は対象のプログラムを自分自身であるいは他 のユーザーと協調して調査を進めるべきであり、与えられたレビュー者の ためのガイドに沿ってではないはずである。もしあなたがしっかり時間を かけてこのようなものを作るべきかどうか迷っているのなら、私の薦めは そのプログラムのハイライトについて 1 ないし 2 ページの要約だけに抑 えることである。こうすればレビュー者はこの要約を抜けがないかどうか のチェックに使えるし、さらに予め結論を与えられたような気にもならな いであろう。

比較記事 -- 読者はレビュー記事が好きだが、比較記事はもっと好きで ある。レビュー記事の場合はある製品を買おうとすべきかどうかを読者に 伝えるのが目的であるが、比較記事は競合するプログラムの間での相似点、 相違点を並べることでその決心をさらにしやすくしてくれる。

レビュー者の立場から見た比較記事に関する問題点は、それがとてつもな く難しいことである。なぜならば、レビュー者は複数のプログラムを同時 に入手しかつ内容を理解し、記事を書いているあいだ中それらの情報を覚 えておかねばならないからである。比較記事は、上位に来ない製品を出し ている会社には不評である - レビュー記事ならばユーザーがその製品は買 う価値があると思うチャンスはあるが、比較記事では白黒は比較的はっき りしてしまう。更なる弱点としては、比較記事は多くの出版物にとっては どうしても長すぎる結果となり易く、そして長さの割には、一つのプログ ラムを掘り下げて検討する余裕がない。

比較記事に関して注意を向けるべきなのは、特定の比較記事だけを掲載す る Web サイトである - 最近 TiVo と ReplayTV というデジタルテレビレ コーダを較べていてこのようなサイトがいくつかあるのを知った。もしあ なたがこのような比較記事を常時のせているサイトに出くわしたとしたら、 あなたのプログラムに関する情報はすべて正確であるようそこの人達と協 力し合うように努めるのが結局はあなたの利益になると思うべきである。 しかし図にのって競合品の詳細についてコメントするのは危険である。

<http://www.iwantptv.com/compare/UltimateComparison.htm>

特集記事 -- ここまで論じてきた事柄のほとんどすべてが、製品を中心 にした報道についてであったが、特集記事は製品ではなくむしろトピック スに焦点をあてている。私は、Macworld 誌に、バックアップ、電子メール 用ソフト、そして、マルチプラットフォームに関する話のようなトピック スについていくつかの特集記事を書いてきた。そして、それぞれの記事で は、多くの製品のことだけでなく、その使い方の戦略、落とし穴、また、 このトピックスのその他の側面についても語った。

上記の「言及」の中でのコメントは、特集に期待できる種類の報道にうま く当てはまっている。それは、おそらく、あなた自身が特集記事の焦点と なることはないからである。どんな形にせよあなたのことが特集記事の中 に書かれるのは良いことである。それは、報道されているトピックスの中 であなたが認められているからである。

記者と編集者の間で良い関係を保つことの重要性は、口が酸っぱくなるま で言ってもいいことだ。複数の出版物に記事を書いている記者が多いが、 これらの出版物はすべて既存のハードウェアとソフトウェアについて新鮮 な見解を探求しているものだ。もしも、自分の製品にこれまでとは違った カテゴリにまたがるような新機能が加わったとしたら、このことは、おそ らく特集記事の中で言及されるであろう。たとえば、Mac のデスクトップ PIM (personal information manager)の市場については、数年間、話題になる ようなことはほんどなかった。しかし、新しい Palm 機の同期機能の出現 によって、初めて、PIM が言及されるまったく新しい編集のカテゴリが開 かれたのである。

格付け記事 -- 一部の出版は、レビュー記事や比較記事や特集で扱った 製品に格付けを与えている。Macworld 誌は合併により MacUser 誌からマ ウス格付けを引き継いだし、MacAddict には“Freakin' Awesome”という 小人がいる。格付け記事は読者にとっては、あなたの製品に関する記者の 意見をうまくまとめたものである。そして役に立つのは、よい格付けをあ なたの製品や Web サイトに付けることができたときだけだ。しかしいくつ かの理由で、格付けは微妙なものである。

あなたは格付けについて反論することはできない。もしそうすれば全員を いらいらさせるだけだ。ひどい格付けを受けた場合のベストな戦略は、レ ビューで挙げられた問題点に対応した改訂版をリリースし、新バージョン を見てみるよう出版に頼むことである。完全なレビューをしてもらえなかっ たとしても、出版は格付けをやり直してくれるかもしれない。

私たちは最近 TidBITS Talk で、TidBITS で格付けシステムを始めること について少し議論した。最終的にそれは私たちの編集方針に合わないと結 論付けたのだが、とても面白い議論だった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1080>

技術サポートおよびハウツー記事 -- 私は技術サポート記事とハウツー 記事を、両方ともあなたのプログラムの特定の側面だけを扱うことから、 ひとまとめにした。出版は通常、この種の報道の対象を、多くの読者が使 うだろうと考えられる重要なプログラムに限定する。だから、あなたがそ のような形で実際に報道されるのは素晴らしいことである。なぜなら、そ れは、あなたがそうした扱いを受けるに充分なほど重要であることを示し ているからだ。もし記事が、あなたのプログラムがうまくできない仕事に 触れているとしても、同じ記事の中に対策方法がたぶん示されているだろ う。

この種の報道に影響を与えるためにあなたができることはほとんどない。 ひとつの例外は、あなたのソフトウェアに利口なヒントを添えて記者に渡 すことである。そのヒントが充分に役立つと記者が考えれば、それは記事 になるかもしれない。

記者の分析と意見 -- 私は最も曖昧な種類の報道を最後に残しておいた。 それは、記者があれこれの話題について、とうとうと述べるような種類の 記事である。私が書くものはほとんどがこの種類なのだが、それは私が話 題を探し回って説明しようとするのが好きだからだ。開発者にとっては、 この種の報道は素晴らしいものかもしれないし、困ったものかもしれない。 なぜなら、この種の記事は記者の経験と知識が大きく現れたものであり、 その質と洞察には大きなばらつきがあるからである。インターネットのお かげで誰もが自分の意見を表明できるし、(私を信じてほしいのだが)あ らゆる物事のどの面にも幅広い質の異なる意見があるのだ。

私はこの記事の中で、関係を持つことの効用を強く述べてきた。だがよい 関係とは、決して報道の編集に影響を与えることそのものではない。こん な風に考えてみよう。あなたは適切な分析や意見をもって言及されたいし、 その言及が肯定的であって欲しい。もしあなたに、その分析や意見を書く 人とまったくコネがなければ、言及されるチャンスは減り、そうした言及 が否定的になるチャンスが増える。対照的に、もしあなたが記者と関係を 持っていれば、その記者はたとえば引用を探したり例を挙げる時にあなたの ことを思い出しやすい。そして、その人にあなたや、あなたの製品、あな たの会社のことを正確に理解してもらえれば、あなたは誤った例に悩まな くて済むだろう。記者の立場では、正確な情報は不必要なコメントや訂正 を避ける助けになる。

また、記者と関係を持てれば、あなたが報道して欲しいと思うトピックに その人の目を向けさせる余地が得られる。“これとこれについて書くべき ですよ”などと言うのは、記者の気分を害するだろうから、一般的には良 くない考えである。しかし、それが興味深いものだと考えられる理由を書 いた短い注意書きを添えてトピックをメールで知らせるのは、決して間違っ たことではない。ことによれば、それが、あなたを主役にした記事になる かもしれない。

以上が、ずいぶんと多岐にわたる報道の種類を扱った、今週の報道である。 私は、 どうやって 記者と関係を作ればよいか、という大きな疑問に行 き当たったことに気づいている。次回はその話題を扱う予定だ。


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