TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#548/18-Sep-00

Mac OS X Public Beta が登場!先週パリで開催された Apple Expo 2000 での Steve Jobs 氏の基調講演は、Mac OS X Public Beta と新色構成の さらに強力な iBook のお披露目が目玉だった。また、今週号では、 Macintosh 作家でベテランの David Blatner 氏と過去に今日の技術で遊 んだことについて語り、MindControl 1.1 と WebSTAR Server Suite 4.3 のリリースをお知らせする。今週のアンケートは、あなたは“Mac OS テ ン”と呼びますか?それとも“Mac OS エックス”?

目次:

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MailBITS/18-Sep-00

(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :三好 泰子 <yokomo@vm01.vaio.ne.jp>)

MindVision が MindControl 1.1 にアップデート -- MindVision Software 社は、MindControl 1.1 をリリースした。同社の Mac 用コマン ドラインのラウンチユーティリティをより洗練させたバージョンである ( TidBITS-513 の“Macworld Expo SF 2000 最高のもの”でこれを大い に称賛してある)。MindControl 1.1 は、ファイルパスを最新に保つ機能 が改良され、項目が属するフォルダへのアクセスを提供し、簡単なヘルプ を持ち、Favarites フォルダから項目を表示でき、多少マウスでコントロー ルができるようになり、半透過インターフェースの見栄えを提供する。 MindControl が便利であり、トラックパッドの操作が時に難しいラップトッ プでは特に重宝することは承知だが、MindControl 1.1 は非常に歓迎され ると思われる機能を提供してくれない。たとえば、キーボード主体の操作 によるハードディスクの検索ができたり(“? なんとかファイル”と入力 して“なんとかファイル”を捜す)、そういった検索を Web サーチエン ジンにまで押し広げたり(“google Gettysburg Address”を入力して Google サイトでゲティズバーグの演説のコピーを捜す)、常用の Web ブ ラウザにワードを入力して渡すための別の呼び出しホットキーを備えたり (まず Web ブラウザに切り替えるのではなく)といったことだ。ことに よると MindControl 2.0 ではこいった機能強化が図られるかもしれない。 MindControl 1.1 へのアップデートは 486K のダウンロード容量で、登録 ユーザーには無料だ。新規購入は 20 ドルの価格である。 [ACE]

<http://www.mindvision.com/consumer/products/MindControl/Default.asp>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05772>

WebSTAR Server Suite 4.3 リリース -- 4D 社は、WebSTAR Server Suite 4.3 をリリースした。これは、当社のWeb、FTP、電子メールを含む インターネットサーバのとりわけ強力な製品群の最新バージョンである。 WebSTAR 4.3 での改良点は、WebSTAR Mail における性能の向上とスパム メールの除去機能の強化、WebSTAR Admin における Mac OS 9 のキーチェー ンのサポート、何らかの変更でサーバの再起動が必要になったときの自動 通知、そして、サーチ機能の強化などである。アップグレードは、オンラ インでのみ入手可能で、WebSTAR 4.x のユーザーは無料、WebSTAR 3.x の ユーザーは、199 ドルでアップグレードできる。[ACE]

<http://www.webstar.com/>

アンケートのお知らせ: X(エックスそれともテン?)世代 -- Apple 社のように、企業というのは、製品の名前選びは、たいへん綿密におこな うものである。たとえば、PowerBook、iBook、FireWire、そして、iMac 等の名前は、これらがどのように聞こえ、どのように見え、どのように市 場に受け入れられていくのか、ということを検討して決められている。し かしながら、この度の Apple 社の新しいオペレーティングシステムの名 前は、なんと発音してよいのかわからず、とまどう人が多い。正式には、 Mac OS X の X はローマ数字で、Apple 社によると「Mac OS テン」と発 音する。しかし、最近「Mac OS エックス」と言う人も多い。あなたは、 Mac OS X について語るとき、どちらの言葉を使っているのだろう?我々 のホームページに立ち寄って、投票して欲しい。[JLC]

<http://www.tidbits.com/>


クイズの結果:少ないほうが重要

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:篠原 慎一 <sshino@mbd.sphere.ne.jp>)

先週号で、Kirk McElhearn 氏が コンピュータ・通信の用語集である “Newton's Telecom Dictionary”をレビューした( TidBITS-547 「BookBITS:コンピュータ用語を把握する」を参照)。この本に触発され、 我々は“ligature”“Bezier”“latency”“moire”のうち、“他と似て いない用語はどれか”を読者の皆さんに問うことにしたのだった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06111>

我々が出すすべてのクイズに言えることだが、目的はどのくらいの読者が 正答、あるいは誤答であるかを知ることにあるではなく、ちょっと面白お かしくすること、そして読者がおそらく知らなかっただろう有益な情報を お伝えすることにある。今回、我々はいくつかの DTP 用語 - “ligature” “Bezier”そして“moire” - そして有益なネットワーク概念である “latency”について注目することにした。

DTP 用語に対するネットワーク用語なので、“latency”が我々の意図し た正解だ。しかし、Kirk McElhearn 氏は 3 つの誤答がフランス語からの 外来語でありながら、“latency”はそうではないと大喜びで指摘した。 そして Alex Hoffman 氏はさらに細かく突っ込み、4 つの単語のうち、母 音よりも子音の方が多いのは“latency”だけであることを取り上げた。 我々の意に反した突っ込みも当然あり得る。“Bezier”だけが人名から来 ているからだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1165>

13 % の回答が、2 つかそれ以上の文字を結合して 1 つにしている特殊な 文字だということで“ligature”を選んだ。もっとも一般的な“ligature” は“fi”と“fl”であり、ほとんどのフォントで“Shift + Option + 5” “Shift + Option + 6”を押すことで作ることができる。

回答のトップ、81 % を獲得して最も普通な選択になったが、“latency” はネットワーク上で、データパケットが送信側から受信側に到達するのに 必要な最小時間だ。さらなる情報は“帯域幅と応答時間”の項を参照して ほしい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1014>

その他の 2 つの選択肢は、回答のうちわずか 3 % しか獲得しなかった。 Bezier 曲線(Pierre Bezier 氏から名付けられた)は、ある特定の数式 によって定義される曲線だ。PostScript フォントは Bezier 曲線に基づ いている。これは、あらゆる出力解像度において、曲線上のすべての点を 記憶するよりも曲線を抽象的に記述する数式を記憶する方がより効率的だ からだ。コンピュータのスクリーンとハイエンドの Linotype とでは、解 像度への要求が非常に異なることを知っておいてほしい。

“moire”は、いくつかの理由によってグラフィック画像に現れる、(た いていは)邪魔になるパターンのことだ。たとえば、印刷物をスキャンし た際、画像の解像度の調整に失敗したような場合や、スクリーン角度が適 切でなかった場合などだ。しかし、“moire”パターンはそれ自身が美的 な特性を示すことがあり、T シャツのデザインやスクリーンセーバーのテー マになったりする。


Apple が Mac OS X のベータ版をリリース

by Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
(翻訳:斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)

Apple Computer 社は先週 Mac OS 史上初のパブリックベータを発表した。 30 ドルで販売される Mac OS X のプレヴュー版で、現在 2001 年 1 月に リリースが予定されている。同ソフトウェアは英語版、ドイツ語版、フラ ンス語版が発売されるが、Apple Store でのみ購入可能である(すべての 海外の Apple Stores が含まれ、Apple Canada Store は少し遅れての発 売になる)。ソフトウェアをインストールするのに CD からの起動が必要 なため、(また、サイズがとても大きいため)ダウンロードでは入手でき ない。

<http://www.apple.com/macosx/>
<http://store.apple.com/>

同社は Mac OS X のパブリックベータがプリインストールされた特定の Power Mac G4 と Power Mac G4 Cube も用意している。これらのマシンは Mac OS 9 も同梱することになるが、これは Mac OS X 用に設計されてい ないソフトウェアを Classic 環境上で 走らせるときに必要になる。

Mac OS X Public Beta は最低 128 MB の RAM を搭載した PowerPC G3 ま たは G4 プロセッサのすべての Macintosh 上で動作するよう設計されて いるが、初代 PowerBook G3 とプロセッサアップグレードカードを載せた マシンは含まれていない。インストールの前に、バックアップをすべて取 り、リリースノートをきちんと最後まで読み、Mac OS X のインストール は現在お使いの Mac OS 9 がインストールされているパーティションでは なく、ハードディスクの第二パーティションにすることを強くお勧めする。 Apple にはインストールにあたって必要な情報がいくつか載っている Getting Started ページがあり、Macworld は Macworld Lab のいくつか のテストを含んだ Mac OS X Public Beta に関する大量の情報を蓄積して いる。

<http://www.apple.com/macosx/beta/start.html>
<http://macworld.zdnet.com/subject/macosx/>

読者の皆さんは Apple の Mac OS X Feedback ページで Apple に Mac OS X Public Beta に関するコメントやバグの報告ができるが、Apple はフィー ドバックはすべて読むが、それに答えることはできない、と述べている。 興味深いことに、Apple はアイディアはすべて Apple のアイディアを求 めていないのに提出した場合に関する方針のもとで取り扱われると明確に 述べている。この方針は、Apple は社が求めていないアイディアは受け入 れず、もしなんらかの方法でアイディアを送った場合、Apple の財産とな る、というものだ。これはベータテストだが、Apple は 3 つのサポート 方法を提案している。内蔵の Mac Help、Apple が新たに準備した Knowledge Base、Apple の一件ごとに課金される電話サポートだ。もちろ ん、私は Mac OS X Public Beta のサポート情報を載せたインターネット のウェブサイトやフォーラム(themacintoshguy.com の Mac OS X Beta List など)もきっと現れると思っている。

<http://www.apple.com/macosx/beta/feedback.html>
<http://www.apple.com/legal/default.html#unsolicited>
<http://www.apple.com/macosx/beta/support.html>
<http://www.themacintoshguy.com/lists/X4U.html>


PowerBook に近づいた iBook

by Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Apple 社は先週パリで開催された Apple Expo 2000 において、デジタル ビデオ機能を装備し、新たに 2 つの色が加わった iBook の新モデルを発 表した。エントリーモデルは(7 月に最も人気のあった iMac カラーと同 じ)Indigo カラーと、新色 Key Lime の 2 色が用意されており、366 MHz の PowerPC G3 プロセッサ、64 MB の RAM、10 GB のハードディスク を装備し、1,500 ドルとなっている。iBook Special Edition の方は、 Graphite カラーと Key Lime カラーの 2 色で、価格は 1,800 ドル、ク ロック値が 466 MHz に上がり、CD-ROM ドライブではなく DVD-Video 機 能をもつ DVD-ROM を搭載している。両モデルともに、FireWire ポート一 基と、コンポジットビデオ出力の可能な新 AV ポートが新たに標準装備さ れるほか、RAM を 128 MB、ハードディスクを 20 GB にしてオーダーする こともできる。全モデルに 10/100Base-T Ethernet ポート、56K モデム が付いて、100 ドルの追加料を払えば Apple の AirPort ワイヤレスネッ トワーキングテクノロジーを享受できる AirPort カードを装着できる点は、 今まで通りだ。

<http://www.apple.com/ibook/>
<http://www.apple.com/euro/appleexpo/uk/>

Apple の新 AV ポートに、付属のケーブルを繋ぐとコンポジットビデオと 左右のオーディオを出力できる。この AV ポートは、通常のステレオヘッ ドフォンを繋ぐ、ヘッドフォンジャックとして利用することもできる。こ の AV ポートにより、テレビ、ビデオデッキ、ビデオプロジェクタへの出 力が可能になり、今までのモデルで最も取りざたされた弱点の一つが解消 された。特に、教育機関や企業等によっては、プレゼンテーションでプロ ジェクタに繋がらないラップトップは用無しと見なすところもあったのだ から。

FireWire ポートを搭載し、iMovie 2 がバンドルされた新 iBook は、デ ジタルムービー制作用マシンのラインナップにも加えられた。そのために はハードディスクは 20 GB あったほうがよい(が、800 x 600 の小さな 画面は、iMovie 2 を使うには狭いだろう)。新 iBook の登場により PowerBook G3 との距離が相当縮まった。PowerBook G3 の方が、小型で軽 く、性能と拡張性の点ではすこしばかり秀でており、PC カードスロット を装備し、FireWire ポートが一基多く、がぜん大きな LDC ディスプレイ が付いている代わりに、価格は 2,500 〜 4,000 ドルとかなりお高くなっ ている。久しく変更がない PowerBook ラインが大きく手を入れらる日も うすぐだろう。

Indigo カラーと Graphite カラーのモデルは Apple の代理店およびオン ライン Apple Store ですぐに販売されるが、Key Lime カラーのモデルは Apple Store でしか取り扱われない。Apple はまたもやディーラーとの絆 にひびを入れた。ディーラーにとって Key Lime の iBook を販売できな いというのは腹立たしいことだろう。Apple は先日もディーラーの業務縮 小に繋がるようなことをしているのでことさらであろう。先日お届けした Apple の新しいサービス方針に関する記事を読んだ多数の TidBITS 読者 から、お気に入りのサービスショップ話に加えて、事情説明や激しい怒り の便りも少々寄せられた。

<http://store.apple.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06104>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1149+1150+1151>

広々 PowerBook -- 新 iBook 発表の翌日、Apple が PowerBook G3 の ハードディスク容量を増やすとの発表を行ったのも忘れてはならない。た だちに、6 GB だった PowerBook G3/400 は 10 GB に、12 GB だった PowerBook G3/500 は 20 GB になって販売される。それぞれ 2,500 ドル と 3,500 ドルというベースの価格は据え置かれる。どちらのモデルも Apple Store の BTO(Build to Order)オプションを利用すると、10 GB あたり 300 ドルの追加料金で 30 GB までディスク量を増やすことができ る。

<http://www.apple.com/powerbook/>


InterviewBITS:David Blatner 氏との会話

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :松岡 文昭 <fumiaki@kamakuranet.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)

Macintosh の世界は Macintosh のモデルと同じぐらいいろいろな人物で あふれている。簡単な例を挙げれば、Steve Jobs 氏がの持つ性格が(良 い面も悪い面も)なければ、Macintosh は現在のようではなかったことは 確実だ。デスクトップパブリッシング業界では、David Blatner 氏が、さ かのぼること 1990 年に出版された The QuarkXPress Book で一躍有名に なった。それ以来、彼は 17 冊の本を書き、その話題は QuarkXPress や Photoshop からバーチャルリアリティや数学の円周率に渡る。その間、彼 は Macintosh のハードウェアもソフトウェアも多く集めてきた。彼のオ フィスは Macintosh の歴史を示す遺跡の発掘現場のようで、そこで見つ かるものはスキャナーの ThunderScan(プリンタの ImageWriter にリボ ンのかわりに差して使う装置)だったり、128K Macintosh や Radius の PressView モニターや PowerBook G3 が一緒に並んでいたりする(当然い ろんなケーブルが何マイルもある)。このインタビューでは、私は彼に Mac の進化に関する彼の考え、興味深いと思うプロジェクト、そして、 Quark 社がたまに見知らぬ別世界からやってきたように見える理由をたず ねた。

<http://www.moo.com/aboutbooks.html>

[David] 私がデスクトップパブリッシングを始めたのは多くの人よりは先 でした。1978 年のことですが、私の継父が Xerox 社の PARC で働いてい ました。そして、私が彼に会いにそこに行ったときは、Alto という機械 で遊んでいました(この機械は後に Steve Jobs 氏とその会社に霊感をあ たえました)。私はワードプロセッサを使って、行間やフォントのことに ついて学び、ベクトルを使った画像を作り、カラーのレーザープリンタで 印刷しました。10 代のとき、私はこういったものが“現実の世界”に存 在しないとは思ってもみませんでした。とはいえ、1984 年に最初に Macintosh を手にいれましたが、DTP の仕事を職業としてきちんと始めは しませんでした。始めたのは、カリフォルニアの Palo Alto にある LaserWrite サービス・ビューロで働いたときで、そこには 1986 年から 1987 年までいました。

[David] ええ、直径 18 インチもあった大きなフロッピーディスクなどね。 あれは Star Wars の宇宙船 Millennium Falcon 号のもとにはなったと思 います。PARC の外であれを使うチャンスはありませんでした。

真面目に答えると、実現しなかったものはありません。子供の時に PARC やスタンフォード研究所[略称は SRI で、ここで Douglas Englebart 氏 の研究室がかつて初のマウスとウインドウシステムをつくり出した。現在 彼がやっていることについては TidBITS-459 の“Douglas Engelbart: カサンドラのさらなる考え”を参照。-Adam]で 1970 年代中ごろに見た ものが現実になっています。音声合成のはしりや、ピアノのキーボードを コンピュータに接続するインターフェースツールなどを見ました。今では もう当たり前になっていますね。イーサネット、マウス、カラー画像の描 写プログラム、(思い返してみると、確かコードネームは Griffin です) カラーのレーザープリンタ、ディスプレイがタッチスクリーンになってい たコピー機...。こうったものは今ではつまらなく聞こえるでしょう。今 もしできるなら PARC の建物をうろつき回って研究室をのぞいてみたいで す。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05210>

[David] 私は、今でもバーチャルリアリティが、人間がコンピュータと接 するための最善の手法の一つだと思っていますし、将来ではもっと使われ るのを見るだろうと確信しています。ただ、誰も“バーチャルリアリティ” とは呼ばなくなっているでしょう。その用語にはシミが付いてしまいまし たからね。

[David] 1990 年代の始めに、Steve Roth 氏(Macworldの元寄稿編集長で、 Real World PageMaker 等のいくつかの本の著者)と私はコンピュータと は関係のない本を書くことを決めました。幅広い商業市場向けのものをで す。私達は二人とも通俗科学が好きで、バーチャルリアリティはその揺籃 期にありました(今でもそうだと言う人達もいます)。私達は、Silicon Mirage: The Art and Science of Virtual Reality を書くために、その 分野での専門家である Steve Aukstakalnis 氏と一緒に仕事をしました。

楽しいプロジェクトでしたし、評論家の間では成功を収めました(“バー チャルリアリティ”という用語の考案者である Jarod Lanier 氏が序文を 書いてくれ、主題を本当に上手く説明した最初の本だと言ってくれまし た)。しかし、それは商業的にはまったく成功せず、直ぐに廃版となりま した。採算計算をした時には、何ヶ月も最低賃金以下で実際には仕事をし ていたことが分かりました。ため息ものでした。

私達は、その後、その本が奇妙にもバーチャルリアリティに関する多くの 論文で引用されるのを見てきました。だから、誰かは買ってくれていたわ けです!

今となっては Silicon Mirage は私にとって単なる始まりに過ぎなかった のです。1997 年に、私は The Joy of Pi という本を書きました。数学の 円周率の魅力と知識だけに関する小さな贈呈用の本です。私はこれからも ノンフィクションで通俗科学の本をもっと書くでしょう。

<http://www.joyofpi.com/>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN=0802775624/tidbitselectro00A/>

しかし、健康問題でその元著者は本を完成することができなく、後になっ て、私が代わりに完成するよう依頼を受けました。私は約 4 ヶ月で 600 ページを書く結果となり、The QuarkXPress Book が出版されました。出 版社が実際に私に小切手を送ってきたときは驚きで、本を書き終えたこと に対し、私は興奮しました。私がものを書くことでお金を得たのです。奇 妙な感じでした。さらにもっと興奮したのは彼らが私にもう一冊やってく れるよう依頼してきたときです … そしてもう一冊 …そして、また、と 続きました。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN=0201696959/tidbitselectro00A/>

[David] いえ、単に DTP が当たり前の存在になっただけです。誰もが特 に DTP を意識せずに DTP をやるようになりました。飛行機が珍しかった 頃、飛行機に乗るのは大変なことで、誰もが晴れ着を身に付けて飛行機に 乗り込んだものですが、今では高速に A 地点から B 地点に移動するため の手段に過ぎません。DTP も今では単に情報を運ぶ道具で、今でこそ Web に心を躍らせる人がいるかもしませんが(さすがに HTML を書くために一 張羅を着る人はいないでしょうが)、Web もそう遠くない将来には当たり 前の存在になるはずです。

でも、DTP で儲けたお金を Web 関連事業に使っている企業が少なくない ことは憶えておくべきでしょう。

[David] それはどうでしょうね。過去 10 年間で出版業界に大きな変化が ありましたが、今ほど個人の力が影響力を持っていた時代もありません。 出版業界はそもそも“力を民に”与えるためのものなのです。確かにハイ エンドもあり、極度に専門化する人もいます。でも、一人の人間と一台の Mac でできないことはほとんどないのです。

[David] 私は他のトピックを扱った本も書いていますが、多くの人が私を QuarkXpress 本の作者として知っているようです。当然、これまで Quark と同社の社員(共同オーナーである Fred Ebrahimi 氏と Tim Gill 氏も 含め)とは友好的な関係を作り上げてきました。Quark で働くことも含め、 Quark と仕事をするのは大変だという評判はありますが、私に対しては常 に好意的に接してくれています。

今でも Quark が見るに耐えないことをやってくれることは事実です。た とえば、QuarkXpress 4.0 の発売当時、旧バージョンを買った人に(新バー ジョン発売の 前日 に買った人にさえ)無償アップグレードを認めなかっ たことがあります。でも Quark も変わってきており、なかなかいいこと もしているのです。努力をしている、ということが大事なのですが、業界 の評価が変わるまでにはまだしばらくかかるでしょう。

[David] これは Steve Roth 氏が一番初めからはっきりさせてくれていま した。本は博打のようなものです。バーチャルリアリティの本を共著した のは、主として儲かるだろうという腹があったからですが、結果はその逆 でした。『Real World QuarkImmedia』を共著したのは、主としてこのソ フトウェアが大好きで、書くのがものすごく楽しかったからです。これも 売れませんでした。その結果、好きで書くことの方がはるかに重要だし、 それに楽しいのだということがはっきりわかったのです。

[David] うーん、特に対処しません。ただ前進するだけです。

[David] 16 年間、Mac と PC の役割は全く変わっていません。Mac はエ レガントなツールで、PC は大多数の人が使うツールなのです。PC を使う 人がいるのは依然として驚きです。ハンマーのかわりにドライバの柄を使 うようなものでしょうか。あるいはローラーボールペンのかわりに旧式の ボールペンを使うような。あるいは DVD のかわりに VHS を使うような ...

とはいえ、Mac OS が Windows に匹敵するほど複雑なものになったのは悲 しいことだと思います。私の機能拡張フォルダには 189 のアイテムがあ り、唯一評価できることはファイル名が読める(DTTKO.dll などではなく) ことぐらいです。

[David] PowerBook G3(Bronze keyboard)がメインマシンで、職場と自 宅の間を往復しています。G3 アップグレード付きの Power Macintosh 8100 と、サーバ兼 LaserWriter Select 360 のネットワーク印刷用マシ ンとして Quadra 650 もあります。1984 年 3 月に買った 128K Mac はオ フィスの魔除けとして置いてあります。また、Palm Vx も愛用していて、 PowerBook と赤外シンクロさせています。

[David] もちろん Power Mac G4 で、RAM を山ほど、それに(多分 Apple か SGI の)フラットスクリーンモニタ。あのモニタを見せれば、妻もよ うやくキッチンにコンピュータを置くことに同意してくれるのではないか とにらんでいます。もちろん、本当に無限の予算があれば、誰かに Sony 並みに軽い Mac ラップトップを作らせますが。[ここでの Sony とは、ロ ボ犬 AIBO ではなく、VAIO のこと。 -Jeff]

<http://www.ita.sel.sony.com/products/pc/notebook/>
<http://www.world.sony.com/Electronics/aibo/top.html>

[David] 私は、Mac は成功し続けるだろうと思います。特に Unix ベース の Mac OS X への移行によってです。Apple が、AppleScript、エレガント なデザイン、カラー管理機能のような自社の強みに注意を払い続ける限り、 Apple は特に出版分野において重要な地位を保ち続けるでしょう。

[David] 私の予想がぴったり当たったことはありません。私の予想はとき どき私が考えるよりもっと後になってから実現することがある、と言うべ きかもしれません。たとえば私は NeXT のマシンが究極の出版プラット フォームになると考えていました。 そのこと を本にしなくて良かった と思っていますよ! 一方で、NeXT 的なものの多くが Mac OS X に入って きていますから、おそらく、私はやっぱり正しかったのでしょう。

コンピュータ(とテクノロジー全般)の最大のトレンドは、いつも個人に もっと力を与えることだと思います。Xerox 社は、「どうして個人が写真 複写機を欲しがるのだろう?」と言って個人用コピー機を作らないと決めた ことで、大変な非難を浴びました。ワークグループや大きな組織を相手に するのはとても結構なことですが、個人に力を与えることのほうがもっと 大切です。(これだと、私は積極的な演説をしているみたいですね! やれ やれ。)

一方で、テクノロジーが“予想外の結果”をもたらすのを、私たちはこれ からもっと見ることになるとも思います。携帯電話が健康に対して潜在的 なリスクを持つようなことです。人々はテクノロジーにとても興奮します が、そこには当然、とてもエキサイティングなテクノロジーの一部が逆効 果となるチャンスがあるのです。少なくとも何らかの形で。

[David] 面白い話ですね、でも私はいろいろな“人”と思われています。 ある時は“QuarkXPress な人”、またある時は“Photoshop な人”、でも 『The Joy of Pi』を書いた後は“円周率な人”とね。それを楽しんでいま すよ。今でもまだ全部を続けていますが、現在はコンピュータと関係のな い本を 2 冊書いています。ひとつは航空、もうひとつはユダヤ教に関する 本です。(おっと、“空飛ぶラビ”という冗談は止めてください... もう たくさんです。[訳注:ラビにはユダヤ教指導者という意味がある。]) 私は結局、複雑な主題を選んで万人向けにまとめなおすのを楽しんでいる のだと思います。もし 自分 が理解できる程度にやさしくできれば、そ れはほとんどの人にとって理解できるものになるだろうと考えています。

[David] 劇場で演出家をしていたでしょうね。大学で専攻していました。 卒業後、もし Seattle に住まずに New York へ行くか London へ戻ってい たら、たぶんそうなったでしょう。それとも、配管工の助手をしていたか も。それが本当に一番良かったかもしれません。いや、真面目な話、文筆 業で生活するとは思いもしませんでした。でも文章を書けば書くほど、そ れが自分に最適な仕事だと思えてきました。人生がどうなるかには、時々 びっくりさせられますね!


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