TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#549/25-Sep-00

PageSpinner 3.0 と MRJ 2.2.3 のリリースと、Apple 社が Amazon 社の 1-Click 特許のライセンスを得たニュースは別にして、今週号は、新しい インターネット技術のプラットフォームである XNS と、XNS 標準の運用と XNS コミュニティの運営のための独立系の非営利団体である XNSORG の説 明に全面的に誌面をあてている。一見の価値あり。(ご注意:次週は休刊 !)

目次:

Copyright 2000 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。TidBITS 日本語版 では翻訳に協力してくれる方を募集しています。詳しくは以下の URL を 参照してください。

<http://jp.tidbits.com/join_us.html>


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/25-Sep-00

(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :佐藤 公子 <umi@cf.mbn.or.jp>)

次週は休刊 -- 次週は、大きなプロジェクトをいくつか仕上げた疲れを 癒すため家族と休暇を取る計画なので、次号の TidBITS はお休みにする。 Web サイトへの速報の掲載は引き続き行うし、TidBITS Talk への投稿は景 気よく続ける。00 年 10 月 9 日の次号をお楽しみに。 [ACE]

MRJ 2.2.3 が Oracle Certified、Java アーカイブ をキャッシュ -- Apple 社は 同社の Java 仮想マシンの最新版である Macintosh Runtime for Java 2.2.3 をリリースした。MRJ 2.2.3 ではバグフィックスが行わ れ、パフォーマンスの向上、長時間にわたる Java アプリケーションの動 作時のメモリ使用量が減り、2 バイト文字を使ったファイル名のアプレッ トのサポートが改善されている。Internet Explorer 5 を使用すると、MRJ 2.2.3 は Oracle Applications 11i では Gold Certified、Oracle Developer 6i では Bronze Certified となり、これにより企業における Oracle ベースの環境で Macintosh を使用することがわずかながら不適切 なものでなくなる。MRJ 2.2.3 は Java アプリケーションが使用するコー ドを集めたものである Java アーカイブ(JAR ファイル)を効率よくキャッ シュもするようになった。MRJ 2.2.3 は最大 100 MB の Java アーカイブ をローカルのハードディスクに保存することができる。Java アプリケー ションを再びロードするとき、MRJ は JAR ファイルがアップデートされた かを調べ、新しいバージョンのときだけダウンロードする。この機能によ り Java プログラムを再度起動するときの時間を短縮できる。MRJ 2.2.3 は現在標準になっている Java 2 ではなく、Sun の JDK 1.1.8 の仕様しか 依然としてサポートしていない。MRJ 2.2.3 のダウンロードサイズは 4.7 MB で、Mac OS 9 の Software Update コントロールパネルでの入手も可能 である。MRJ 2.2.3 は、PowerPC 搭載で、最低 40 MB の 空きメモリ、Mac OS 8.1 以降のシステムを必要とする。[GD]

<http://asu.info.apple.com/swupdates.nsf/artnum/n11572>
<http://java.sun.com/j2se/>

PageSpinner 3.0 が HTML エディタ機能を向上 -- Optima System 社は PageSpinner 3.0 をリリースし、同 HTML エディタに新機能が追加され、 複数のマークアップ言語のサポートも向上した( TidBITS-384 の“Web を編む・ Part I :トレードオフと PageSpinner”で始まる PageSpinner 2.1 のレビューを参照)。新バージョンでは、ようやく HTML 4.0 と XHTML 1.0 のタグを認識し、HTML チェッカーを内蔵し、グラフィカルな HTML エ ディタで作成された Web ページのサポートも改善された。また、 PageSpinner 3.0 では FTP サーバに置かれたファイルを直接編集すること も可能になり、SSI(Server Side Includes)を扱うためのコマンドも含ま れている。PageSpinner 3.0 はバージョン 2.0 以降の正規ユーザーは無料 でアップグレードでき、その他の場合は 30 ドルとなる。新バージョンの ダウンロードサイズは 1.9 MB で、21 日間デモとして使うことができる。 [JLC]

<http://www.optima-system.com/pagespinner/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02195>

Apple 社が Amazon.com 社から 1-Click のライセンスを許諾 -- Apple 社は議論の的になっている Amazon.com 社の 1-Click による注文の 特許を同社のオンラインストアで使用するためにライセンスを受けた、と 発表した。Apple は特許を受諾するのに Amazon.com と提携しなかった初 の企業である。1-Click を使った注文のための設定に登録すると、個人の 請求先、配送先の情報を Apple のサーバに保存するので、商品を注文する 際によくあるように、いくつものステップを通過しなくとも商品を買うこ とができる。オンラインの小売業者の多くは 1-Click による注文に似たや り方を提供しているが、Amazon は 2000 年 2 月にも技術の実装の特許を 与えられている( TidBITS-520 の“Amazon.com アフィリエートプログラ ムに特許”を参照)。他のオンラインで商売する販売業者や、出版者の Tim O'Reilly 氏など業界の著名人はこの特許を批判している。Apple がライセ ンスを受けたものには、1-Click の登録商標の使用も含まれ、間違いなく 市場でのよいチャンスであり、オンライン注文も改善される。[JLC]

<http://www.apple.com/pr/library/2000/sep/18amazon.html>
<http://www.patents.ibm.com/details?pn=US06029141__>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05833>
<http://www.oreilly.com/ask_tim/amazon_patent.html>

アンケート結果: X(エックスそれともテン?)世代 -- Apple 社では、 Mac OS X の正式な発音は“テン”であり“エックス”ではないということ を明らかにした。だが、そのうちに Apple 社が前言を撤回するかどうかが 興味深いところだ。というのも、先週行ったアンケートでは、投票者 1,300 名のうち実に 53 パーセントの人が、Apple 社の次期オペレーティングシ ステムについて語るとき“Mac OS エックス”と呼ぶのが最も一般的である と述べているからだ。Apple 社は正確な発音をめぐって苦しい戦いに直面 することになるだろうが、この混乱状態のせいで Shannon Spires 氏が有 名なアボット&コステロの“Who's on First?”のあらましをもじった“X on X”を TidBITS Talk へ投稿する気になったことだけは確かである。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=58>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkmsg=8262>
<http://www.paradiselost.org/whosonfirst.html>

アンケートのお知らせ: 生涯 1 アドレス? 今週は、独立系の非営利団 体の協力による、魅力的な可能性を秘めたインターネットテクノロジー XNS の始動を記念し、今号の後の誌面をすべて使って XNS がもたらす利 点とその働きについて解説する。そこで、この解説にすべて目を通した後、 XNS が成功すると思うかどうかという今週のアンケートに答えて欲しい。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


XNS と XNSORG がデビュー

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

Macintosh を使い始めた当初、Macintosh ユーザーになり、Mac を支持し、 そして他の人にも広めようとすることで世界を変えることができると実感 していた人が多いだろう。私や Tonya もまさにその通りだった。Tonya は、自分の言動が他に及ぼす影響がだんだん分かりづらくなったために、 Mac に、続いて HTML に対する興味が薄れていった。私の情熱はまだ冷め ていないが、ずっと同じテンションを保つのは難しい。TidBITS は、最初 Macintosh で唯一のオンライン出版物だったが、今は雨後の筍のように生 えてくる Macintosh ニュースサイトと一線を画すのが大変になっているの だ。

そんな折り、新たなテクノロジーと出会った。そのテクノロジーにあまり にも惹かれたため、影響などを分析をするという通常の私の仕事を逸脱し て、その最も重要な部分に携わるまでに及んでしまった。そのテクノロジー は、eXtensible Name Service を略して、XNS と名付けられている。 TidBITS の仕事もすべて今まで通り行う上で、非営利団体 XNS Public Trust Organization の代表を務めることにした。インターネットでは新し いテクノロジーは常にギャンブルであるが、これが成功した暁には、イン ターネットを利用するすべての人の生活や、すべての企業や団体の業務に 影響を及ぼすことになると確信している。大風呂敷きかもしれないが、私 は今その実現に向けてものすごい時間とエネルギーをつぎ込んでいる。

<http://www.xns.org/>

XNS とは インターネットは、出版、ファイルの配布、買い物、検索な ど 情報へのアクセス に係わるすべてに長けている。しかし、 情報のやり取り という点では、問題を抱えているし、バーチャルでは ない現実の世界よりも下手だったりする。フォームに記入するのはクレジッ トカードを読み取り機に通すよりも大変だし、オンライン上のプライバシー を気に病む人の数は増える一方であり、電子メールにはスパムが溢れ、現 在のネーミングの方式は混乱し首が回らなくなってきているし、メールア ドレスが頻繁に変更になるために、個人的にも仕事の上でも差し障りが出 る。

シアトルで誕生したばかりの OneName Corporation 社が開発した XNS は、 世界規模で利用できるプラットフォームで、インターネット上での情報の やり取りを簡素化し、個人情報に対するプライバシー保護を行うのを目的 としている。XNS は、まず次世代ネーミングシステムとコミュニケーショ ン・エージェントから成っている。これはオープンなインターネット標準 をベースにしており、ソースコードの準備が調い、運営グループがオープ ンソースのライセンスを決定すれば、すべてがオープンソースとして利用 できるようになる。XNS は、純粋なインターネットのテクノロジーとして の利点に加え、企業にも様々な恩恵をもたらす。その中には直接金銭に繋 がるものもある。今までに現れたその他のテクノロジーと XNS の大きな 違いは、XNSORG(XNS Public Trust Organization)という独立したコミュ ニティによって運営されるということだ。

まず、XNS エージェントを利用することの利点をいくつか紹介し、次に、 それがどのように機能するかをご説明しよう。

XNS エージェントの機能 -- XNS はプラットフォームである。しかもオー プンソースのプラットフォームなのだ。だから、以下に挙げる事柄は、現 時点で利用可能または利用の見込みのあることにすぎない。XNS に登録し た人や企業の数が増えるに従い、またテクノロジーが進むに従い、もっと いろんなことが可能になってくるだろう。確かに XNS と同じような製品 やサービスを行っている企業もすでに存在している。だが、それらはいつ までたっても馬鹿の一つ覚えで、さらなる可能性のために自分たちのテク ノロジーを寄与しようとしない、もしくはほとんどしない輩である。もう 一つ大事なことは、XNS が、一つの例外を除き全機能がサーバレベルで提 供され、ダウンロードを一切せずに、どんなプラットフォームでも利用で きるし、複数のマシンからも利用できるということである。

<http://www.xns.org/services/>

<http://www.xns.org/whitepapers/filtering.html>

これだけでも十分たいしたものなのだが、これは実は氷山の一角に過ぎな い。エージェントが管理する、プライバシー契約に守られ、シンクロされ たリンク群には、以下のような可能性も秘められている。

データが住所録的な情報に限られるということはない。医療の世界では、 エージェントが管理する投薬履歴にアクセスできれば、有害な副作用を防 ぐ手段にもなるとして大いに注目されている。ここでも、XNS エージェン トによって患者はどんな情報を誰に対して開示するかということを的確に コントロールすることができ、どのリンクにも内在しているプライバシー 契約に保護されているのだ。とにかく可能性は無限であり、しかも独立の 非営利団体が管理するオープンソース・プラットフォームであることから、 ある特定の企業が成功することに依存すること、あるいは株主に利益を与 えることを目的としている組織に権力を集中すること、がほとんど問題と ならなくなる。

利点についてはこのぐらいにして、こうした恩恵がどのように実現される かを見てみよう。

エージェント -- オンラインショップで買い物をする時には、生身の人 間ではなくサイトのエージェントとして機能しているサーバとやりとりを する。買うものを選んでいる段階ではこれは良いことだが、会計の際には 色々な情報を手で入力するか、あるいは以前に買い物をした時の情報にア クセスすることになる(これを書き換えたり更新するのもまた一苦労だ)。 Internet Explorer の自動記入機能のようなツールを使っても、フォーム の管理や個々の業者が保存しているデータをメンテする厄介からは逃れら れない。

XNS のエージェント技術により、こうした問題はなくなる。XNS エージェ ントは、インターネットのサイトを代表するエージェントと直接やりとり してくれるのだ。あなたのエージェントが、あなたが公表して差し支えな いと同意した情報だけを、あなたが指定した条件のもとでのみ開示する。 たとえて言えば、「事務レベルで詰めましょう」といってあとは任せてお けばいい。あなたの XNS エージェントが他の XNS エージェントと情報交 換の交渉をしてくれるからだ。

この情報交換のしくみは? XNS という名前からもう察しておられるだろう が、XNS は XML(eXtensible Markup Language)をベースとしている。 HTML には H1 や CITE など意味や構造を示すタグもあるが、90 年代のブ ラウザ戦争を経て HTML はフォントや改行といった表示を指定するタグを 擁した画面表示言語になってしまった。この状態は今日まで続いている。 一方の XML では、構造がすべてだ。タグは中身の情報がどんなものである かを示し、誰でも好きなようにタグを作ることができる。たとえば Eudora 5.0 ユーザーの方は、Eudora がメール使用記録を保存している Eudora Statistics.xml というファイルを開いて、<STARTTIME> や <RECEIVEDMAIL> といった内容を示すタグだけが元になっていることがわかるだろう。とい うわけで、XNS エージェントが受け渡しているのは XML 文書なのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05859>

XNS エージェントは単に情報をやりとりするだけではない。XNS エージェ ントどうしが交信する際、両者の間に恒久的な双方向のリンクを張ること ができる(が、そうしなくてもいい)。このリンクはアクティブであり続 けることが可能で、つまり情報が必要に応じて双方向に流れ続けることが できるのだ。以上から、XNS エージェント間に一旦リンクができたら、 XNS エージェントはリンクの両端からデータをシンクロさせることができ る。これが自動更新電子名刺のしくみだ。

エージェント間の交信には、今のところ Web ブラウザと同じ HTTP (HyperText Transfer Protocol)と、クレジットカード番号などの傍受 を防止するための SSL(Secure Sockets Layer)が利用されている。 XNSORG が XNS 機構(XNS エージェントを用いるサーバサイト)向けに制 定するセキュリティ規格により、さらなるセキュリティが提供される。

名前 -- 前に出てきた次世代のインターネットネーミングシステムの話 に移ろう。XNS エージェントが本当に数億個も存在するシステムにおいて、 エージェントはどうやってお互いを見つけることができるのだろうか? 簡 単に言えば、XNS エージェントは XNS ネームによって識別される。

従来のネーミング方式は複雑で、制限があり、同時に知的所有権に関する 問題がたくさんある。まず、現在の階層的なドメインネームシステム (DNS)が技術に明るくない人にとって使いやすいものだと主張する人はほ とんどいない。また一般的な英単語のうち、約 98 % がすでに .com トッ プレベルドメインに登録されてしまっている。さらに、mcdonalds.com の ようなアドレスを誰が取得するかという争いを、私たちはみんな見てきて いる。XNS はこれらの問題を解決する。

エージェンシー -- 前に、エージェントは XNS エージェンシーによって ホストされると述べた。エージェンシーには本質的に 3 つの種類がある。 OneName 社が運営する root エージェンシー、そして public エージェン シーと private エージェンシーである。root エージェンシーは、Network Solutions 社が運営するトップレベル DNS レジストリに良く似た働きをす る。ネーム情報はシステムの低いレベルでキャッシュされることがあるが、 最終的には常に root に到達する。このあたりで XNS とDNS は比較できな くなり始める。DNS では、Network Solutions 社以外の企業がドメイン名 の登録を許されたのはつい最近のことである。しかし XNS では、root エー ジェンシーは public および private エージェンシーを登録するだけであ り、登録された public および private エージェンシーはエージェントを ホストするだけでなく、エージェントの新規登録も受け持つ。

たいていの人は主に public エージェンシーとつきあうであろう。なぜな ら、public エージェンシーを運営したいと思うであろう組織には ISP、 Yahoo 社のようなポータル、Pobox 社のようなメールプロバイダ、そして 大きな大学が含まれるからである。public エージェンシーはエージェント のホスティングサービスを、特定の人たち(大学の学生、スタッフ、教授 のような)だけに制限して行うかもしれないが、グループ内の誰に対して もオープンである。最も重要なのは、エージェントを所有するのは public エージェンシーにそのエージェントを登録するその人だということだ。つ まり、Public エージェンシーは他の人のためにエージェントを登録し、ホ ストするのである。

これと対照的に、private エージェンシーは主に大企業や政府機関によっ て運営されるであろう。彼らも public エージェンシーと同様に特定の人 たちにサービスを行う。しかし現在の企業内メールアカウントと同じく、 private エージェンシーがホストするエージェントはその private エー ジェンシー自身が所有する。つまり、Private エージェンシーは彼ら自身 のためにエージェントを登録し、ホストするのである。そして、そのエー ジェントは個人に属するというよりも、業務上の権限に属する。

ある組織がエージェンシーを運営したいかもしれないというのには、いく つか理由がある(必要なコンピュータと通信帯域幅のため、運営は安価で はないだろう)。最初に、一番重要な理由はサービスであろう。XNS は魅 力的な機能(特にスパム防止)を提供する。ISP、ポータル、メールプロバ イダの利用者はそうした機能を欲しがるだろうし、機能を提供することは、 事業体が大問題である顧客の不満を減らす助けになる。XNS のビジネスモ デルも魅力的である。現在、personal および business ネームの登録はそ れぞれ年間 12 ドルと 100 ドルである。そして顧客とシンクロするリンク が必要な大企業は、それに加えてリンク毎の費用を小額だが毎年払うこと が多いと思われる。名前登録による収益は登録を行ったエージェンシーと root エージェンシーに分配される。そしてリンクによる収益は、顧客の personal エージェントをホストするエージェンシー、企業の business エージェントをホストするエージェンシー、それと root エージェンシー に 3 等分される。

プライバシー -- プライバシー乱用に関する主要な問題の一つは、乱用 が本質的に技術とは無関係なことである。自分の住所をどこかの企業に、 注文した品を受け取るなどのもっともな目的で一度でも教えると、住所を 知った企業があなたにジャンクメールを送るのを止める術はない。まった く同じことがスパムについても言える。責任を持って行動せよという社会 的な圧力は、郵便や電話やメールにおいてプライバシーを乱用するのに夢 中な人に対して、明らかに効果を持たない。法律は問題を解決できるだろ うが、概して時間がかかり、手間もかかり、それ自身にも問題がある。そ れに、特にプライバシーを対象として立案される訳ではなく、国際的に通 用する必要があるはずだということも考慮されない。さらに、私のように シアトルに住んでいると、WTO のような国際的非政府組織(去年この地で 行われた会議に対して大量の抗議活動があった)が役に立たないことが大 変はっきりわかる。

プライバシー保護を奨励することに関する別の注目すべき問題は(Neal Stephenson 氏の Computers, Freedom, and Privacy 2000 会議での基調講 演を紹介していて気づいたのだが)、現在、プライバシー保護に必要な努 力がしばしばリスクを認めるよりも大変だということである。私はクッキー をオフしない。なぜなら、率直に言って、オフしたまま Web をブラウズす るのは私にとって価値より苦労が多いからである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05951>

OneName 社の創業者で CTO である Drummond Reed 氏は、XNS の基礎を設 計する時にこれらの問題を認識していた。彼の解決策は、プライバシー乱 用を技術的に防ぐのではなく、次のようなやり方だった。法的に強制でき るプライバシー契約をユーザーの介入なしにあらゆるリンクに自動的に埋 め込む、内部に矛盾を持たないシステムを作るという方法である。XNS を 利用するには、誰であっても、プライバシー保護の基本的要件を規定する 登録契約に同意しなければならない。具体的には次のような用語が使われ ている:

“あらゆる「XNS エージェント」と「エージェンシー」を「登録する人」 すべては、「XNS 登録契約」の主目的が以下のとおりであることに同意す る。すなわち、「XNS コミュニティ」のすべての「メンバー」が他のすべ ての「メンバー」のプライバシー、安全、責任に関わる権利を、尊重し、 保障し、実行するという相互信頼状態を成立させることである。”

また XNS Global Terms は、次のことを明確にしている。あなたが自分を 故意に他人だと偽らない限り、真に法的に本人であることを主張していな い状況においては、匿名もしくは仮名を用いることが認められる。

だが「法的に強制できる」とは何を意味するのか? 契約の拘束力は、比較 的世界中どこでも認知されている。そしてもし XNS プライバシー契約が破 られた場合は、被害者は訴えを起こして、XNSORG が定めた紛争解決手続き (今後もきっと改良されていくだろう)を開始することができる。私たち の目標は、エントリーするのに障壁が低く(プライバシー侵害の訴えを起 こすのに高い金額を払う必要はないはずだ)、拘束力のある法的仲裁に委 ねる(間違いなく少しは費用がかかる)という結論を出す前にもっと簡単 な方法を試み尽くす、そんなシステムを作ることだった。

XNSORG の紛争解決システムは、実際には XNS に関するあらゆる苦情を扱 うように設計されているが、主な苦情はプライバシー侵害や business ネー ム登録の紛争だろうと私たちは予想している。サイバー不法占拠の禁止条 項を作ることで、私たちはそうした問題の多くを回避しようと試みたが、 きっと少しは生じてしまうだろう。

XNSORG の役割 -- ここまででかなり明らかになってきたと思うが、す べての鍵は XNSORG にある。XNS エージェントが保有しようとしているよ うな性格の情報の管理権を持つ会社、それがいかなるものであれ、信用し ようとする人は少ないであろう。そして、論争を解決しようとすることが 企業の法務部門との争いになるようでは、これはとても成功の見込みなど たちはしない。

これがなぜ Drummond が、OneName 社がその知的所有権を XNSORG にライ センスすることを保証したかの理由である。組織を立ち上げ OneName 社 とのライセンスおよび登録契約の交渉だけでもすでに大変なのに、XNSORG にはやらなければならない仕事が山積している。たとえば、XNS とは何で あるかの説明、論争の解決、オープンソースコードベースの調整、組織が 遵守しなければならない技術上のそして運営上の規約作りと維持、等々で ある。

私の役割は XNSORG 創生期においてはまったくの力仕事ではあったが、 XNSORG に日々の運営を担当するスタッフが必要となることは明らかなの で、将来はもっと方針に関わる分野に集中していけるようになるなること を期待している。そして、我々の考えている資金計画 - 個人および企業の 名前登録から約 1.7 % 相当の固定金額を XNSORG に回すことでやっていけ ると考えている。なぜならばこれが固定金額であることで、料金変更や販 売促進活動(最初の百万個人名は無料にする等の)の影響を受けることが なくなるからである。

しかしながらもっと重要なことは、XNSORG を XNS コミュニティによって 構成されかつその代表とすることである。我々が - いやどんな人でも - 今日のニーズに、ましてや将来のニーズにまで、柔軟に対応できる法的か つ管理的な枠組みを確立できるなどと思うのは単純に傲慢としか言えない であろう。したがって、我々は XNSORG と我々の法的基盤を柔軟でかつ拡 充できるように保ってくることに気を配ってきた。しかし今や我々は XNSORG の覆いを取り去ったのである。今や人々を招き入れ、XNS について 知って貰い、コミュニティ全体があって欲しいと願う方向にシステムを発 展させるのに手をさしのべて貰う時が来たのである。もし興味があるので あれば、まず我々がホストしているメーリングリストを覗いてみることか ら始められる。そしてこれらのリストから、個別のテーマについてのリス トへと発展し正式なワーキンググループが形成されることを願っている。

<http://www.xns.org/lists/>

XNS に対する障害 -- XNS が直面しているいくつかの重要な障害につい てもふれないとしたならば、片手落ちというものであろう。

インターネットに対する社会的契約 -- XNS には間違いなく他にも多く の障害が待ち受けていると思うし、そして個人的にはそれらを克服して生 き延びられることを願うが、絶対大丈夫であるなどと装うつもりはない。 しかしながら XNS は今日のインターネットに関わる重大な問題のいくつ かに解決の道を開くものであることを私は確信しているし、その成功を手 助けするために私のエネルギーを投入すると決心した度合いが、どれだけ これが重要であるか私が確信していることの尺度として理解されることを 希望するものでもある。XNS を十分に理解するのには時間が必要であり、 今私がお願いしたいことは、開かれた心で見て欲しいということだけであ る。


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway