TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#552/23-Oct-00

Microsoft Word は恐らく Mac 用では一番使われているのビジネスアプリ ケーションであろう。そこで寄稿編集者の Matt Neuburg がここ数年間で はじめての Word の本格的アップデートである Word 2001 はそれだけの 価値があるのか詳細にわたって検証する。そして Apple 社の Unix オペ レーティングシステムへの手出しの試みについて考察、さらに Apple 社 の 170 百万ドルの利益計上、MCF Software 社が ListSTAR を 4D 社から 買収について扱う。今週のリリースの中からは、Nisus Writer 6.0、 icWord 1.1、そして Handspring 社の新しいハンドヘルドについて報告す る。

目次:

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MailBITS/23-Oct-00

(翻訳:亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)
(  :佐藤 陽子 <cac25210@pop11.odn.ne.jp>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :三好 泰子<yokomo@vm01.vaio.ne.jp>)

Apple 社 1 億 7,000 万ドルの利益を発表 -- Apple Computer 社は先 週、2000 年度第 4 四半期の純利益を 1 億 7,000 万ドルと発表した。 Apple 社の収益額は ARM Holding 社の株式売却益に支えられるところが 大きく、第 4 四半期の業績にもその利益である 6,200 万ドルが含まれて いる。これを除くと Apple 社の利益は 1 億 800 万ドルとなり、これは 決算月の初めに 同社が第 4 四半期の収益減少を警した際に発表した収益 予測 1 億 1000 万ドルとほぼ一致する。Apple 社は今期 57 万台以上の iMac を含む 112 万 2,000 台を出荷している。また、海外売上高は Apple 社の歳入の約 44 % を占める。純利益率は 25 % であり、これは前 年度同期の 28.7 %、前四半期の 29.8 % から減少した。Apple 社の CEO である Steve Jobs 氏は、次の第 1 四半期(2001 年最初の決算期)は販 売ルートから製品在庫を一掃するべくいっそう努力するが良い結果は約束 できないとコメントした。また同社 CFO、Fred Anderson 氏は第 1 四半 期に多少の黒字を見込んでいるとコメントしている。[GD]

<http://www.apple.com/pr/library/2000/oct/18q4results.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06138>

icWord 1.1 がもっと古い Word 形式に対応 -- Panergy Ltd. 社は icWord 1.1 をリリースした。これは同社の Microsoft Word 文書用ファ イルビューア(20 ドル)のアップデートである( TidBITS-543 の記事 “Word 文書閲覧・印刷ユーティリティ、icWord”を参照)。さまざまな 改良(Word の組み込みグラフィックスのサポートを改善、ヘッダとフッ タ内のグラフィックスを表示可能、表の表示を改善、Word 6 文書内の西 ヨーロッパのアクセント記号をサポート)に加えて、icWord は今回 Microsoft Word 4.0、5.0 および 5.1 文書の文字を閲覧できるようになっ た。それらの文書に含まれるスタイルはまだ表示できないものの、少なく とも内容を読むことはできるはずである。Word のファイル形式が Word 98 から変わらなかったので、icWord はスタイル、レイアウト、グラフィッ クスを含めて Word 2001 のファイルも閲覧できる。icWord 1.1 は、Mac OS 8.1 以上と PowerPC ベースの Mac 向け 1.5 MB のダウンロードと、 System 7.1 と68K Mac で動作する 3.3 MB のユニバーサルインストーラ とがある。30 日間の試用が可能。[ACE]

<http://www.icword.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06074>

Handspring 社の新 Visor がカラーとスピードを提供 -- Handspring 社は先週、同社の Visor ハンドヘルド製品ラインの新たな Palm 互換モ デルを発表した。449 ドルの Visor Prism は 16 ビットカラーのディス プレイ(65,536 色を表示できる。Palm 社の Palm IIIc は 8 ビットカ ラー)をコバルトブルーの匡体に持つ。そして 299 ドルの Visor Platinum は新たなメタリックシルバーの匡体を誇る。2 つのハンドヘル ド製品は共にMotorola 社の DragonBall VZ 33 MHz プロセッサを用いて いる。その理由は Handspring 社によると Palm OS ハンドヘルド用とし て最高の性能だから、とのことである。両方とも 8 MB のメモリを持つ。 これらの新ハンドヘルド製品は現在 Handspring 社のオンラインストアか ら入手可能であり、他の小売店では 11 月に販売される予定である。 [MHA]

<http://www.handspring.com/products/visorfamily/>
<http://www.palm.com/products/palmiiic/>

長く待たれていた Nisus Writer 6.0 が出荷 -- 長い潜伏期間の後、ちっ ぽけな Nisus Software 社は Nisus Writer 6.0 を出荷した。これは同社 のここ数年の主力製品であるワードプロセッサの、もっとも注目に値する アップデートである。新機能は次のとおり。略語をタイプすると用語集の 対応するエントリへ自動的に展開する。Open および Save ダイアログボッ クスが Apple 社のナビゲーションサービスをサポート(プレビューも追 加された)。コンテクストメニューのサポート。新しい文法チェッカ。 IBM 社の ViaVoice 音声認識ソフトウェアのサポート( TidBITS-544 の 記事“Talk Is Cheap - ViaVoice Enhanced Edition”を参照)。 QuickTime によるグラフィックファイルのインポート。そして RTF 文書 を開くための新しい XTND フィルタである。Nisus Writer の風変わりな 機能セットには、次のようにもっと奇妙な追加が行われた。挿入ポイント 付近のテキストを拡大または縮小してフローティングウインドウに表示す る、ズーム機能。文書内のテキストからフレーズと単語のリストおよび出 現頻度を生成する、Nisus Text Analyzer ツール。そして、テキストに変 換した注釈や脚注を含めて文書をテキストファイルとして保存する、新し い TextPlus オプションである。また Nisus Software 社は次のような、 目立たない拡張とバグ修正も行った。メニューの背景をプラチナにした。 スペルチェッカにオプションを追加。変更した Print 設定を保存できる ようになった。そして注釈と脚注の検索をもっと細かく行えるようにした。

<http://www.nisus.com/Products/NisusWriter/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06085>

Nisus Writer に必要なシステムは気持ち良いほど小規模である。System 7 以降(Mac OS 8.0 以降を推奨)が動作する PowerPC ベースのマシンで、 最低 2 MB の RAM が利用可能(仮想メモリを想定)であればよい。Nisus Software 社は Nisus Writer の 68K 版をすぐにリリースする予定である。 そちらは最低 4 MB の RAM が必要になるだろう。RAM に対する要求はこ のように最小であるが、Nisus Writer にさらにメモリを割り当てればもっ と快適に利用できる。それは Nisus Writer が文書全体を RAM に置くか らである。Nisus Writer 6.0 は 100 ドルで、旧バージョンからのアップ グレードは 50 ドル、そして他のワードプロセッサのユーザーが乗り換え る場合は 70 ドル。30 日間有効のデモ版も入手可能。ダウンロードは 12 MB から 30 MB までさまざまな大きさがある。CD-ROM で Nisus Writer を購入することもできる。[ACE]

ListSTAR、4D 社から MCF Software 社へ移管 -- 4D 社は、ListSTAR の販売とサポートは、今後 MCF Software 社が引き継ぐというアナウンス をおこなった。ListSTAR は、この 3 月に 4D 社が StarNine Technologies 社を買収した際に手に入れた、パワフルで柔軟性に富んだ メーリングリストサーバである。1999 年 12 月のバージョン 2.0 へのアッ プデートの前には、しばらくの間ほとんど開発されなかったようであるし、 今後もこのバージョンアップような重要な開発が行われることはなさそう だった。1996 年に TidBITS の配信を自分たち自身で行うようになってか ら、我々はこの ListSTAR に頼ってきた。そして、1997 年のバージョン 1.2 からはアップグレードさえしていないほど、このソフトは我々のニー ズにぴったりと合っているのである。しかし、ListSTAR のサポートを継 続してくれる新たな拠点がみつかったのは良いことだ。MCF Software 社 長のFarokh Iran 氏は、ListSTAR のユーザーコミュニティの中では、 ListSTAR の多くのユーティリティ、スクリプト、そして、テンプレート の開発者として有名な人物だ。価値あるソフトを存続させるための手助け をしている 4D 社と MCF Software 社の両社を讃えたい。ListSTAR の価 格は 295 ドルのままで、評価用ライセンスコードも入手可能。[ACE]

<http://www.4d.com/>
<http://www.liststar.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05680>

アンケートのお知らせ:前面と中央 -- 正直なところ、今週号のワープ ロに関しては、複数の記事を掲載するつもりはなかった。それにしても、 今日のインターネットの台頭にもかかわらず、ワープロ作業というのは、 人間にとってコンピュータを使う上でもっとも共通した仕事なのである。 そこで、あなたが自分の Macintosh 使う仕事でもっとも共通したものは 何なのか、を考えて欲しい。いますぐ我々のホームページで投票しよう。 そうすれば、我々は TidBITS の読者たちと世間一般の平均とを比較する ことができる。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


クイズ結果:アイ・ニックス、ウィ・ニックス、ユゥ・ニックス

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

してやったり! 私たちの行っているクイズは、回答してくれる人を引っか けることよりも、(Macintosh、Apple、Mac OS などに関連することで) みなさんのためになるようにとまず考えて出題している。しかし、先週の クイズ「Apple が今までにリリースした Unix ベースのオペレーティング システムはいくつあるか?」は、その両方に当てはまったようだ。950 人 を超える回答者のうち、正解(5 以上)だったのはわずか 5 % で、70 % 以上が、2 か 3 と答えていた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=61>

私たちが数えたところ、何らかの形で Apple が出した Unix ベースのオ ペレーティングシステムは、最低 6 つはある。すなわち、A/UX、AIX、 MkLinux、Mac OS X Server、Darwin、Mac OS X Public Beta である。し たがって、Mac OS X Server と Mac OS X は同じものだと主張する方がい らっしゃる場合でも(中味は違うものだ)、正解が“5 以上”であること には変わりない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=03870>

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01105>

<http://www.mklinux.org/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04533>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05229>

<http://www.apple.com/macosx/server/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05327>

<http://www.publicsource.apple.com/>

<http://www.apple.com/macosx/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06121>

上記 6 つの Unix ベースのオペレーティングシステムのほかにも、Apple は Unix 界に進出している。たとえば、MAE(Macintosh Applications Environment、Mac のプログラムが一部の Unix で動作するようにするた めのもの)や Mac X (Mac OS 用の X Windows サーバ)といった正式に は OS の範疇に入らないものがある。また、PowerPC マシン用の様々な Linux(MkLinux.org のサイトには立派なリストが用意されている)や、 昔からある Tenon Intersystems 社の MachTen(標準的な Macintosh の アプリケーションとして動作する本格的な Unix)なども含まれていない。

<http://www.tenon.com/products/machten/>


旺盛な Microsoft Word 2001

by Mat N Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <fumiaki@kamakuranet.ne.jp>)
(  :斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)

Microsoft Word は Microsoft 社の Office スイートの礎石であり、個別 ではもっとも多く購入される Office アプリケーションだ。スプレッドシー トは重要で、プレゼンテーションも良いが、ワードプロセッシングは、パー ソナルおよびビジネスでもっとも一般的な生産的コンピュータ作業であり 続けている。そして、Microsoft Word は自らをワードプロセッシングの 業界ベンチマークとして確立している。

Word 4 や Word 5.1 を覚えている者は、Word がかつてはストレートで直 感的、そして、コンパクトであったことを知っている。Word 6 は遅く、 圧倒するもので、クロスプラットフォーム版の外観と動作を有していた。 Word 6 に対する非常に批判的な反応への回答として、Microsoft は Word 98 でインターフェースを改訂し、もっとスムーズでもっと楽しいユーザー イクスペリエンスを提供した。今 Word 2001 では、さらなるインターフェー スの改善により、表面化に潜むいくつかのパワフルな機能へユーザーがもっ と簡単にアクセスできるよう試みがなされている。

インターフェースの改善が、Word の今回のバージョンではほぼ唯一新し くなったことだ。本質的には前回から変更となっていないと思われる巨大 なコアの表面に、改善が散りばめられている。それは、Word が巨大で複 雑な成熟した製品であることを考えると、理解はできるが、アップグレー ドへの決断をさらに難しいものとしている。

第一印象 -- インストールは簡単。Office スイートすべてをインストー ルするには、約 175 MB の空きディスク容量を必要とするが、CD-ROM 内 の Office フォルダをハードディスクにコピーするだけでよい。(選択肢 としてインストーラーアプリケーションを使用できるが、それに気を止め る理由はほとんどないと思える。)最初に Word を起動したときには、新 しい共有ライブラリのインストールや、様々な Office コンポーネントの 登録に 1 分を要したが、二度目以降の起動は瞬時であった。

Word 98 からの移行は同様に痛みを伴わないもので、何が起きたのかほと んど気がつかなかった。Word 2001 は、ツールバーの設定、メニューの変 更、そして、マクロを含む、私の古い Normal テンプレートを取り込んで くれたので、環境は完全に馴染みのあるものとなった。しかし、私の他の ドキュメントテンプレートと起動ドキュメントは、メインである Microsoft Office フォルダ内で、Templates と Office Startup フォル ダから手動で移動しなければならなかった。インストレーションで唯一不 快な機能は沢山の新しいフォントを追加してくれることだ。

Word の要求メモリは非常に大きい。Mac OS 9 で仮想メモリが切の状態で Word を動作させると、私のシステムヒープはほぼ 4 MB 膨れあがり、 Word そのものは別に 17 MB を占拠する。仮想メモリを入にすると状況は 大幅に改善される。Word の使用量は 10 MB まで下がり、システムヒープ の占有量は 1 MB まで落ちる。Apple の仮想メモリより RAM Doubler が お気に入りならば、悪いニュースがある。Word は RAM Doubler 9 および それ以前とは互換性がないのだ。Connectix 社はアップデートに取りかかっ ていると報じられている。その他での互換性は素晴らしく、たとえば、 Word 2001 は Power On Software 社の Action Menus でも動作する (Word 98 では不可)。

<http://support.microsoft.com/support/kb/articles/Q272/8/04.asp>
<http://www.connectix.com/products/rd9.html>
<http://www.poweronsoftware.com/products/actionMenus/>

見えるものと見えないもの -- Word 2001 の新たに洗練されたインター フェースは全体的にほとんど Word 98 のような外観である。パレットの 背景やパレットのアイコンの多くのデザインが変更されたことは、ぼんや りとしか意識されないだろう。これをきれいだと思うかどうかは好みの問 題だか、私はこの結果に満足している。たとえば、新しくなった拡大レン ズは、私にとっては、前の双眼鏡よりも“検索”を思い起こしやすくなっ た。消え去ったものに Word 98 のきわめて不快なステータスバーがある。 これはスクリーンの底部全体を占めていた。いまや各書類のウインドウの 一部になり、申し分なくなった。(この変更だけでも、TidBITS Technical Editor の Geoff Duncan にとってはアップデートに値する。 彼は Word 98 のステータスバーがあるモニタから、別のモニタに Word 書類をたえず分ける必要があったからだ。)ドッキングしたツールバーも、 何もない灰色の領域で画面の面積を無駄に使うことがなくなり、かわりに 必要なスペースだけしか占領しないようになった。

<http://support.microsoft.com/support/kb/articles/Q273/7/19.asp>

インターフェースの中でもっとも目立っている新人は、Formatting Palette だ。これはフローティングウインドウで、ツールバーとは違って いて、カスタマイズもリサイズもまとめることもできない。ただし、項目 ごとに隠したり開いたりはできる。項目は現在選択されているテキストや オブジェクトに合わせて自動的に変わり、いろいろなパレットやダイアロ グからボタンやフィールドが組み込まれる。たとえば、典型的なのは、フォ ントやスタイル、段落の配置や行間、段落を囲む罫線や影、文書のレイア ウトのための項目だ。このおかげで、作業に応じた必須である数多い機能 が一か所にまとめられた。これがなければ多くのユーザーは必要な機能を 見つけることができなかっただろう。残念ながら、必須だと思われなかっ たものは入れられておらず、しかも Word のカスタマイズ可能なツールバー とは違って追加することができない。私は Formatting Palette は楽にな りだいぶ時間を節約するが、それほど便利ではない、と言っておこう。

Word 2001 は標準的なメニュー項目の New という名称を New Blank Document へと変え、File メニューの下へ押しこみ、かわりに Project Gallery の使用をユーザーに奨励すべく、File メニューの一番上にした。 Project Gallery が呼び出す再構成されたダイアログは、テンプレートや ウィザードを選択できるだけでなく、Excel のブックや Entourage のカ レンダーのイベントなど、他の Office のアプリケーションの書類を選択 することもできる(これらはしかるべきアプリケーションでもちろん開 く)。Microsoft のここでの目標は、ユーザーがいろいろなタイプのプロ ジェクトを開始しやすくすることだ。テンプレートやウィザードは新しい わけではないが、おそらくこのダイアログで Office にある種の統一感を 与え、使いやすいフロントエンドになるだろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06139>

Office Clipboard は新しいパレットで、開いている間にコピーしたデー タを毎回蓄積する。そのデータをどれでも選択してコピーすることができ る。つまり複数のクリップボードを実装している。ドラッグ & ドロップ にも対応しており、Office Clipboard のデータは再起動後も、他の Office アプリケーションに切り替えても、生き残っている。同じ Office Clipboard が Excel、PowerPoint、そして Word 上で現れる。しかし、やっ かいなことに管理が徹底しておらず、Entourage(に加えて Internet Explorer )では姿が見えず、Office Clipboard が加える統一感を薄めて しまう。

Word は以前から基本的なグラフィックツールを持っていた。Word 2001 では Photoshop のような機能が追加された。スキャナやデジタルカメラ から画像を直接取り込む、明るさ、コントラスト、カラーバランスを変え る、エンボスやクロムなどの効果を施す、といったものだ。こういった機 能は、無駄に増えているように見えるかもしれないが、デジタル画像はま すます一般的になっており、Microsoft が Office ユーザーに簡単な画像 を操作するツールを提供してもおかしいわけではない。ただ、これらのツー ルを Word 内で使うとき、やりにくく感じられる。Microsoft がなぜグラ フィックツールをまとめて別の Office アプリケーションにしなかったの か、と不思議に思われるだろう。

小さな変更は他にも多くあるが、裏に隠れいて、必要なときのみ現れる。 新しい Find と Replace オプションはすばらしく、同じ語幹から語形変 化したものを検索できる。たとえば、“type”を検索すると、“types”、 “typing”、“typed”も見つけることができ、それらを“writes” “writing”“wrote”で置換することができるのだ!Data Merge Manager はパレットを基本とした差し込み機能のためのフロントエンドで、差し込 みを行うために必要なステップを一か所で集中して行うことができる。し かし、差し込みそのものは旧版の不可解なフィールドベースの差し込みと 同じであり、Data Merge Manager は大けがにばんそうこうを貼っている ようなものだ。

スペルチェック用辞書に加えて、新しく単語の定義辞書ができた(単語を Control + クリックし、Define を選ぶ)。しかし、私にとっては、最初 の試みが最後になるだろう。“automatically”(自動的に)を選択して 得た定義は“automatic drip”(自動的な滴)だった(実際には、たいて いきちんと動くけれど、副詞の時は不正確なことがよくある)。 AutoCorrect が間違いをインライン修正するとき、AutoCorrect 用のリス トだけでなく、スペルチェック用の辞書も使うようになった。しかし、こ の機能は思っていたほど効果的ではない。というのは、間違いが何か疑い ようもないときでさえ、作動しないときがあるからだ。たとえば、Word は AutoCorrect リストに載っていなくても、“misaprehnsions” (misapprehension のタイプミス)をきちんと訂正するが、“typoing” (typing のタイプミス)は、スペルチェック用の辞書が間違いだと分かっ ていて、ひとつしか置換候補がなくても、自動で修正してくれない。

Windows 版の Word のように、やっと表の複合ができるようになった。セ ルが隣り合っているとき、左右だけでなく上下のセルを結合することもで きるようになり、とうとう Word でも HTML の表のようなものを作成でき る。Page ビューでは、ページ内の好きなところをダブルクリックすると、 Word は自動的にリターンとタブを入力し、そこからタイプし始めること ができるようになった。Office Assistant のアニメーションはスムーズ にサイズの変更ができ、Help メニューを通して簡単に消せるようになっ た。

直ったバグ、直らなかったバグ -- Microsoft が具体的にどのバグを フィックスしたのかを判別することは難しい。推測できることは、Word 98 用にリリースされた一連のアップデータで解決されてきた問題は、少 なくとも姿を消しているだろうということだ。したがって、文書全体が突 如として Y ウムラウトで置き換えられてしまうという問題はなくなって いてほしいしが、確かなことはいえない。だが少なくとも、ファイルを保 存するたびに Word Work ファイルが目に見えてディスクを埋めつくすよ うなことは確実になくなっている(依然として Word Work ファイルは増 殖するのだが、不可視の Temporary Items フォルダにきちんと隠されて いる)。また、Word に縦書きテキストの入った Excel チャートをペース トしても正しく印刷される。

一方、古くからのバグや頭痛の種も多数残っている。Option + i Shift + e と入力した際に現れるのは依然として不可視文字で、一部の外国語や特 殊文字フォントを使用する際に深刻な問題となる。Formatting ツールバー や Formatting Palette の Style ポップアップメニューは相変わらず短 すぎ、どういう順序でアイテムが並んでいるのか理解不能だ。Word の作 図ツールも Excel のものと微妙に異なっている。(なぜ Word には Excel の AutoShapes ツールバーにある“Connectors”がないのだろう?)

カーソル近くに“tooltips”が現れて消えると、その下にあったテキスト が再描画されないことが多い。コメントや脚注をそれぞれのペインで開く と、コメントや脚注マーカがウインドウ上部に来てしまい、肝心のテキス トがその上にあるため見えなくなってしまう。Page Up/Page Down キーを 使ってスクロールするとカーソルが動いてしまい、常に移動してやらなけ ればならない。Word 98 のレビューでスタイルの相互依存の問題について 述べたが、この問題は未解決のままだ。文字スタイルと段落スタイルの煮 えきらない関係もそのままだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04822>

番号付きリストのインターフェースも依然として不可解だ。番号付きリス トを新たに作ると、果たしてWord が番号をふり直すか、前にあるリスト の続きとするか予測できない。そして番号付きリストを二つ作った後、 Formatting Palette のボタンをクリックして 3 つ目のリストを作ると、 Word が最初の 2 つのリストの番号をぐちゃぐちゃにしてしまったことに 気がつく。一般的に、ナンバリングを多用した長い文書を編集するのは実 にイライラする経験だ。各段落のフォーマット情報を持った改行マークを うまく扱うという離れ技が必要なのだ。

<http://support.microsoft.com/support/macword/content/word2001top.asp>

困ったヘルプ -- Word に習熟するのは依然として簡単ではない。この ことは紙のマニュアルがまったくないということにも原因がある。Word 98 に付属してきたタスク指向のマニュアルのようなものさえないのだ。 TidBITS 読者の方たちはすでにご承知だろうが、私はこうした状況は許し がたいものだと思うし、Adam も今では有名になった「ドキュメンテーショ ンの死」という記事で嘆いている。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04865>

そのかわり、ユーザーは Word のオンラインヘルプへと突き戻される。ま ずは嬉しいお知らせをお届けしよう。以前よりは良くなっているのだ! Help ウインドウは独自のメニューを持った別個のアプリケーションだっ たが、今度は妙な具合に Word 本体に内蔵された、ごく普通のフローティ ングウインドウとなっている。Back ボタンに加え、Forward ボタンが追 加されている。それに Table of Contents がウインドウ左側のスクロー ルするパネルとなっている。

とはいえ、Help のナビゲーション機能は貧弱だ。その原因の一部は Help がフローティングウインドウであることにある。キーボードショートカッ トがない。ページには順番と階層があるものの、次ページや上の階層に移 動するコマンドがない。加えて目次のパネルではメインパネルでどのペー ジが開いているかを示してくれない。(これは Adobe Acrobat とは対照 的だ。Acrobat でも左側に目次が表示されるが、メインウインドウに対応 する箇所が常に示されている。)こういった問題は特に検索の後に切実に 感じられる。検索結果をクリックして該当するページを開くと、とたんに 自分がどこにいるのかが分からなくなるのだ。

Help の中身にもばらつきがあって舌足らずなうえ、時にはひどい間違い もある。たとえば、Office Clipboard や Compare Documents といった機 能に関する記述はまったく見つけることができなかった。Microsoft Office Resource Kit(Microsoft Press が有償で配布している紙のマニュ アル)では、Web 版への URL が間違っている(それにきちんと選択する ことは不可能だ)。短く断片化されたウインドウからなるオンラインヘル プは、テレビのサウンドバイトと似たようなものだ。ユーザーの記憶を刺 激することはできるが、継続的で筋の通った教示にかわるものではない。 Word にはマニュアルが必要なのだ! それにこの価格では、ユーザーもマ ニュアルを与えられてしかるべきだろう。

最後の言葉 -- 信じようが信じまいが私は Word 2001 が好きだ。Word 2001 は万人にとって最高であるように工夫されており、大いに成功して いる。便利で強力な機能が満載である。まったくの初心者でも手紙や小説、 パンフレット、そして Web ページさえも書くことができる。(HTML エキ スポートは Word 98 より改良されているが、保存する時に念のために “ディスプレイ情報だけを保存”に切り替えないと、 本当にひどい HTML コードに悩まされるだろう。)適度に経験豊かなユーザーなら学術雑誌へ の提出にふさわしい論文を書くことができる。専門家は図、表、章の自動 的なナンバリングと目次を自動的に作る機能によって長く複雑な文書を書 くことができる。Word 2001 は完璧にカスタマイズ可能であり、多くの ショートカットと自動化機能を特色とし、最高のスクリプト言語の一つと して知られている Visual Basic を含む。

Microsoft は Word のこのバージョンを前回の物より簡単に使えるように 懸命に努力して、多くの点で成功した。しかしこれらのうわべだけの工夫 は無計画に行われた。Word の一部の機能は際立って簡単に使えるのに対 して、その他は隠れたツールバーアイコンを通すか、3 層のダイアログを 操作することによってのみアクセス可能である。私の個人的なカスタマー 調査によると、非常に頭の良い人達は Word の多くの機能に対して相変わ らず困惑している。しかし、依然として Microsoft は ハイテクに無縁の 人でも Word を簡単に使いこなせると主張している。AutoCorrect と AutoComplete と AutoText の違いを説明せよ!すべてのアンダーライン をどのようにイタリック体に変えるのか述べよ!もうこれ以上、言うこと はない。

歴史的見地から、私はこのアップグレードが失望させるものだとも知った。 今までに私は Microsoft が Word の奥深い部分まで手を伸ばし、その内 部を再考し 、余分な部分を削除し、Office のアプリケーションを統一す るのを見たいと思ってきたが、代わりに目にした物といえば上っ面だけに くっつけられたつまらないものだった。しかし、Word 2001 が Macintosh の次の主要なワードプロセッサになるのは確かであり(Word の最新版が コンピュータ産業一般においてそうであったように)、それは Word 98 よりいっそう優雅で洗練されている。

では、あなたはアップグレードするべきであろうか?それは必須にはほど 遠いが、もしあなたが Word 98 を快適に使っているのなら、そうする必 要などないであろう。オンラインアップデータのお陰で Word 98 は適度 に良く稼動する。それに書類の互換性に関しても Word 98 と Word 2001 の間、それから Word 98 と Windows 版の Word 97 および Word 2000 と の間も完璧のようだから、他の人達と情報を共有しそこなうことはないだ ろう。

しかし、もしあなたが Word 98 には本当にうんざりしていて値段も気に ならないのなら(それか納得のいく値段を見つけることができるのなら - ある学生に聞いた話だが、彼はキャンパスの本屋で Office 2001 を 33 ドルで買う事ができたそうだ)、もちろん Word 2001 にアップグレード するべきである。私にはこれ以上、特別アドバイスすることがない。なぜ なら個々のユーザーすべてに異なった優先順位があるからだ。例を挙げれ ば、昨日私にメールを送ってきた人は Word 2001 の HTML の脚注を表現 する機能が欲しいがためにアップグレードするそうだ。他の人達は嘲笑す るかもしれないが、彼にとっての優先順位は非常に明白であり、まったく 正しいのだ。

Microsoft Word 2001 は 120 MHz かそれ以上に高速のプロセッサの PowerPC ベースのマシンで、Mac OS 8.1 もしくはそれ以降のシステムが 必要である。仮想メモリが入の場合は最低でも 32 MB の RAM( Mac OS 9 の場合は 48 MB )を Microsoft は推奨している。Microsoft Office 2001 は 500 ドルで、前のバージョンからのアップグレードは 300 ドル である。新しい iMac か iBook を購入してから 60 日以内での完全版の 購入なら 100 ドルのリベートもある。Word 本体は 400 ドルで Word の みのアップグレードなら150 ドルである。

<http://www.microsoft.com/mac/products/office/2001/rebate/>


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