TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#563/15-Jan-01

今週号は Macworld Expo の記事でいっぱい。まず、Mac を「デジタルラ イフスタイル」のハブだとする Apple 社のビジョンを Adam が分析し、 同社のニューメディアソフトウェアである iTunes と iDVD にも言及する。 Jeff Carlson は Expo の花形だった、高速で艶やかな PowerBook G4 Titanium を取り上げる。また、まもなく登場する Apple 社の Mac OS X 1.0 の詳細や、Mac OS 9.1 のリリースに触れるとともに、私たちのメー リングリストサーバが先週壊れたことをお詫びする。そして一番新しいス ポンサーである Bare Bones Software 社を歓迎する。

目次:

Copyright 2001 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。TidBITS 日本語版 では翻訳に協力してくれる方を募集しています。詳しくは以下の URL を 参照してください。

<http://jp.tidbits.com/join_us.html>


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/15-Jan-01

(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
 (  :敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)
 (  :三好 泰子 <yokomo@mio.to>)

TidBITS メーリングリストサーバの災難 -- 先週号の TidBITS-562 の 配付を始めてからおよそ 4 時間もの間、我々のメインのメーリングリス トサーバがひどいドライブの故障を起した。不幸にもその故障は Adam と Jeff が Macworld Expo に出かけていて不在だった午前 2 時頃起きた。 問題が解決された翌日までにすでにダメージは発生し、数千人の TidBITS 購読者が白紙、もしくは不完全な内容の物を複数、受け取っており、さら に千人近くの人は何も受け取らなかった(もちろん、まだ Web で読むこ とはできる)。予備のマシンと交換し、バックアップからリストアしたが、 今週号の配付から目を離さずに注意しているつもりだ。ご迷惑をお掛けし た皆さんに謝罪すると共に、故障が直るまでの間の皆さんの辛抱強さと、 普遍的なマナーの良さに感謝したい。同じく急な連絡にもかかわらず、義 務の域を越えて問題解決を手助けしてくれた我々のホストである digital.forest の素晴らしい方々にも感謝したい。[GD]

<http://www.forest.net/> 

Bare Bones Software 社、TidBITS のスポンサーに! -- 皆さんよくご 存じの Bare Bones Software 社を我々の一番新しいスポンサーとして報 告できるのは大変うれしいことだ。衛星インターネット接続もない外モン ゴルで休暇をとっていた人々にとっても、Bare Bones 社は、パワフルな テキストエディタ BBEdit と、この BBEdit のテキスト編集機能とサーチ 機能をメールに取り込んだ Mailsmith で最も有名な会社である。もとよ り Bare Bones 社は、BBEdit をプログラマー向けの市場に正面切ってね らいを定め、多くの開発者に最高のプログラマー向けのエディタとして今 でも認識されている。ちょっとした天才的ひらめきで、HTML が一般的に なると、Bare Bones 社は BBEdit の中に HTML のサポートを加え、HTML のコードがどう見えるかを気にかける人々(データベースで生成されたペー ジの中のすべてのタグに工夫をこらすために BBEdit を頼りにしている我々 のテクニカルエディタ Geoff Duncan のような)のための HTML エディタ の選択肢となった。ビジュアルな HTML エディタとしてもより強力で人気 が高まるにつれ、BBEdit のパワーユーザーのファンはこのプログラムを 大いに信頼し続け、そして、Macromedia 社は、Dreamweaver と BBEdit を統合して Web の開発者がビジュアルにもコードでも両方でアプローチ できるようにしている。また、BBEdit は、その他のさまざまな言語を幅 広くサポートしている。たとえば、メール版の TidBITS で我々が使って いるマークアップ言語 setext 用のブラウザもサポートしている。さらに は、Bare Bones 社の人材の面では、Rich Siegel 氏が率いる Bare Bones 社の仲間達は、MacHack の開発者向けカンファレンスへの定期的な出席 (とサポート)、TidBITS Talk のようなメーリングリストへの参加、そ していまや、TidBITS のスポンサーとして、長期に渡って Macintosh コ ミュニティの強力な支援者なのである。スポンサーに Bare Bones 社を迎 えることができて、われわれにこれ以上の幸せはない。[ACE]

<http://www.barebones.com/>

Mac OS 9.1 オンラインから約 70 MB で入手可能に -- Apple 社は、 Mac OS 9.1 を静かにリリースした。これは、現在出荷中のオペレーティ ングシステムの最新バージョンだ。Mac OS 9.1 では、マルチユーザーや iTools のサポートの改良が行われ、AppleScript 1.5.5、AppleShare Client 3.8.8、OpenGL 1.2、FireWire ソフトウェアの改訂、新しいプロ セスマネージャ(タスクの切り替えを速めたり、いくつかのバックグラウ ンドにあるアプリケーションのパフォーマンスを上げたりできる)、 ナノカーネルのかなりの改訂、を含む数多くの内部的な機能強化がなされ ている。また、Finder の「情報を見る」も機能的に改良され、Finder に ウインドウメニューが追加されている。そして、System、Documents、 Apple Extras、Applications(Utilities と Assistants が現在置かれて いるところ)のみがより容易にインストールできるような Mac OS X の最 上位フォルダの構成にあわせて、新しくセットアップされたドライブの最 上位のフォルダの構成がシンプルになっている。Mac OS 9.1 は Mac OS 9 と同じく、Power-PC 搭載のシステムで 32 MB の RAM(64 MB 以上推奨) が必要である。Apple は、サードパーティ品の PowerPC アップグレード をサポートしていない。これらを使っても動くかもしれないが、もっと好 奇心旺盛のユーザーに様子を見てもらった方がいいだろう。また、Mac OS 9.1 と Mac OS X Public Beta とは互換性がない。Mac OS 9.1 は、Mac OS X Public Beta の Classic 環境を壊してしまうのである。

<http://www.apple.com/macos/>

米国英語版 Mac OS 9.1 アップグレードは、オンラインから無料で入手可 能だが、相当なダウンロード容量になる。約 70 MB の 15 分割されたファ イルか、単一のファイル(まもなく入手できる)になっている。CD を注 文するほうが良いかもしれない。というのは、米国内で Mac OS 9 のお持 ちの方は、Apple の証明書付き購入クーポンか日付入りの領収書があれば、 Apple から 20 ドルで Mac OS 9.1 を注文できるのである。初期の NuBus Power Mac と Workgroup Server をお持ちの方は、 Mac OS 9.1 にアップ グレードするためには完全版インストール CD を使用しなければならない ことに注意してほしい。同じように、Mac OS 9 でランゲージキットを使 用している方も、自分のランゲージキットをアップグレードするためには 完全版の Mac OS 9.1 の CD が必要だ。Mac OS 9.1 アップグレードの他 の言語バージョンもオンラインで入手可能になっているものがいくつかあ る。まもなくもっと多くの言語版がオンラインで入手可能になるだろう。 どんなシステムソフトウェアのアップグレードでもそうだが、かならずイ ンストールの前には完璧にバックアップをとって行うようにしよう。[GD]

<http://www.info.apple.com/kbase/kbnum/n106089>
<http://asu.info.apple.com/swupdates.nsf/ searchresults?searchview&query=update+mac+os+9.1>


Jobs 氏、Apple 社 でデジタルライフスタイルを目指す

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)
(   :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :蒲生 竜哉 <gamo@lib.bekkoame.ne.jp>)

Apple 社 は方向性の無さや、Mac が 他の PC とどのように異なっている か説明できなかったことで、しばしば非難されてきた。多分、Steve Jobs 氏が Apple 社 にもたらした一番の功績は、特に iMac と iBook のおか げで Apple 社が注目されたことだった。それらのマシンの成功が、一時 的に批判的な人々を静かにさせたにもかかわらず、Apple 社の最近の財政 困難が災いして再び批判されだした。それ故に、先週の San Francisco での Macworld Expo における基調講演で、Apple 社の方向性の再確立を 管理することが Jobs 氏に義務づけられたが、大部分において彼は失望さ せなかった。

彼は今度の Mac OS X 1.0 についての詳細から始め、Power Mac G4 の最 新モデルの仕様に移り、そして PowerBook G4 Titanium はとてもお勧め だと締めくくった。下の記事と来週号を読めばそれらの発表すべてが書い てあるが、Jobs 氏は講演の途中で Apple 社の未来のビジョンについて、 「我々がどこに行こうとしているのかお話ししましょう。」と話し出した。

PC は死んだ、PC よ永遠に -- Jobs 氏は、パーソナルコンピュータは 死んだとする PC メーカー首脳たちの見解に異論を唱えた。続いて、1986 年から 1994 年までを「生産性の時代」、つまりワープロや表計算が支配 した時代とし、1995 年から 2000 年までを「インターネットの時代」、 つまり Web ブラウザとメールが支配した時代とした年表を提示した。 Jobs 氏によると、今私たちは「デジタルライフスタイルの時代」へ移行 している。デジタルライフスタイルの時代の特徴は、私たちが持ち歩いて いる携帯電話、PDA、CD プレーヤー、MP3 プレーヤー、それにデジタルカ メラといった電子機器と、DVD プレーヤーなどのコンシューマー向け機器 にある。左のポケットに Palm V、右のポケットに Samsung 製携帯電話と デジカメの Canon PowerShot S100 を入れていた観客席の私には、Jobs 氏の考えは当っていると思えた。

というわけで、Apple のビジョンは、Macintosh をデジタルライフスタイ ルの「デジタルハブ」とし、こうしたバラバラの機器をつなぎ合わせ、付 加価値を高めることにある。こうした機器のサイズと単用性のため、すべ てをまとめあげる接着剤にはパーソナルコンピュータが最適であると Jobs は論じたのだ。小さく断片化したコンシューマー向け電子機器とは 異なり、コンピュータには大型の画面があり、高速なインターネット接続 ができ、複雑なアプリケーションを走らすことができ、安価な大容量スト レージが用意されており、データを安価で規格化されたリムーバブルメディ アへ書き込むことができる。各種機器の中心にコンピュータを据え置くこ とにより、たとえば音楽 CD からオーディオトラックをハードディスク移 し、好みに応じてアレンジし、車で再生するために CD-R に焼きつけるこ とができるようになる。あるいは、デジカメからハードディスクに大量の 写真を移し、最低限のレタッチをしたうえで Web サイトで公開したり、 保存用に CD-R や DVD に焼くことができる。

Jobs 氏によると、Apple の今後あるべき姿として Macintosh をデジタル ライフスタイルの中核に据えるという考えは、同社の簡単ビデオ編集ソフ トである iMovie の成功がヒントになっているそうだ。iMovie の成功は、 普及率の高いコンシューマー向け電子機器(デジタルビデオカメラ)が Apple 製ハードウェア(Mac、FireWire)とアプリケーション(iMovie)、 インターネットサービス(ムービーをストリーミング用 QuickTime サー バにポストするために必要な iTools の HomePage)、それに Apple のマー ケティングと広告による側面支援で本来なら Macintosh 購入を検討しな かった層にアピールしたことが原因となっている。こうした経験を踏まえ、 Apple は CD-RW を装備した新 Power Mac や iTunes や iDVD といった新 ソフトウェアでデジタルライフスタイルの隙間を埋めようとしたのだ。

iTunes -- Macintosh をデジタルハブにするという構想を推進するため Apple はオーディオの世界にフォーカスし、新しい無料ソフトウェアであ る iTunes をリリースした。このプログラムに革命的な機能は特にない。 ただ MP3 のエンコーダーとプレイヤーを合体させた上に音楽データをポー タブル MP3 プレイヤーに転送する機能を持たせ、さらにオーディオ CD を“焼く”事ができるだけというものだ(但し、オーディオ CD 作成機能 は当面 Power Mac G4 に内蔵された CD-RW ドライブにのみ対応する)。 個々の機能はどれもみな今日の市場に存在するほかのソフトウェアによっ てすでに実現されているものばかりだ。だが、iTunes はきわめて使いや すいユーザーインターフェースを用いてこれらの機能を統合したという 点において他を遥かに凌駕している(Jobs 氏は iTunes を Windows 向け 製品を含めた他の MP3 ソフトウェアと比較してみせた。言うまでもない ことだが、それらのさまざまなユーザーインターフェースと比較しても iTunes の使い勝手は際立っている)。この欄は製品レビューのコーナー ではないのだがこれだけは書いておきたい。今回の Expo が開催された時 点で iTunes が Apple に移籍した Jeff Robbin 氏によって書かれた事は すでに広く知られていた。彼は Casady & Greene 社で SoundJam を開発 していた人物だ(ところで SoundJam はまだ販売されている。また Casady & Greene 社の Terry Kunysz 社長は SoundJam には iTunes には ない柔軟性があり、そのことによって iTunes と競争していけるだろうと コメントしている)。さらに ResEdit を使ってちょっと中を覗いてみれ ば、iTunes がベースとなった SoundJam と非常によく似ていることが見 て取れるはずだ。このプログラムの書き直し作業は Jeff 氏に SoundJam を開発するときになされた選択をもう一度考え直す機会を与えたようで、 iTunes は我々が数年にわたって批判してきた問題点のいくつかに対する 修正が行われている。

<http://www.apple.com/itunes/>
<http://www.apple.com/itunes/theater/>

ところで、iTunes を無料で公開し、さらにすべての新しい Mac にこれを バンドルすることは Apple の立場からみると大きな意味を持つ。MP3 再 生機能、ポータブル MP3 プレイヤーやオーディオ CD 作成といった徐々 にポピュラーになりつつある新技術と記録済み音楽 CD を結合することに よって iTunes は Apple が Mac に持たせたいデジタルハブという役割を 家庭に持ち込むからだ。確かに iTunes はかつて Apple が Outlook Express をバンドルすることで電子メールソフトウェアビジネスが他の電 子メールソフトウェアベンダーにとってさらに厳しいものになったように、 今すでに過酷な MP3 ソフトウェア市場をさらに複雑なものにするだろう。 しかし iTunes を取り巻く状況は電子メール市場の状況ほど面倒な事には ならないはずだ。MP3 再生ソフトウェアはさほど種類が多くないし、また 電子メールソフトに費やすのと同じほど長い時間を MP3 再生ソフトに費 やす人はいないだろう。MP3 を聞く方が電子メールを読み書きするよりも 大切だと主張する人もほとんどいないはずだ。むしろ、今までデジタル音 楽に接する機会のなかった人々に iTunes がデジタル音楽を試す機会を与 える事によって、iTunes よりも強力だったり、新たなインターフェース を提供したり、あるいは付加的なサービスを提供する製品の市場がさらに 広がる可能性がある。

Apple はまた古い Mac の市場も開発者達の手に残している。iTunes が動 作するためには最低でも Mac OS 9.0.4 (Mac OS 9.1 を推奨)が必要だ。 また、Apple は動作可能機種と不可能機種をそれぞれリストするのではな く、ただ単に iTunes は“1998 年 8 月以降に Apple から発売されたす べての機種で動作します”としか発表していない - ちなみに数は少ない が我々が古い Mac で行ったテストでは iTunes が前述した動作環境でちゃ んと動作する事が確認されている。iTunes のダウンロードサイズは 2.8 MB だ -。もしあなたが MP3 に夢中なら、このソフトウェアは一見の価値 がある。

iDVD -- iTunes が競争の激しい市場に参入していく一方、iDVD は独自 の道を歩んでいる。iDVD は価格 3,500 ドルの 733 MHz Power Mac G4 に 搭載されている、通称「SuperDrive」DVD-R ドライブと連携して動作し、 DVD に書き込まれたムービーやスチル画像にグラフィカルで階層化された インターフェースを簡単に作成するためのものだ。作成された DVD ディ スクは、DVD-Video をサポートした家庭用 DVD プレーヤー(最新型のも の、ということらしい)で再生することができる。iDVD は無償だが、し かるべき仕様の Power Mac G4 にしか付属しない。(Jobs 氏は 1,000 ド ルの DVD Studio Pro も手短に紹介した。これは iMovie に対するプロ仕 様の Final Cut Pro に相当する iDVD の姉妹製品だ。)

<http://www.apple.com/idvd/>
<http://www.apple.com/dvdstudiopro/>

iDVD の驚くべき特長は、高度なデザイン技術を要したり、コンピュータ で処理するには困難なタスクを、実にシンプルなインターフェースでまと め上げていることにある。ドラッグ & ドロップで DVD に QuickTime ムー ビーを加え、サムネイルにするフレームを選ぶ。同様に、画像ファイルの 入ったフォルダを iDVD にドラッグしてスライドショーを作成する。バッ クグラウンド画像やフォント、色の変更は手軽にテーマを切り替えて行う こともできるし、自分で画像を加えたり特定のフォントや色を指定するこ ともできる。こうしてディスクの設定が終わったら、iDVD が必要な圧縮 とエンコード処理を実行し、DVD-Video 用のファイルに変換する。

<http://www.apple.com/idvd/theater/>

Apple は、この処理時間を再生時間の 25 倍からわずか 2 倍へ短縮する (したがって、1 時間のムービーをエンコードする所要時間が 25 時間か ら 2 時間になった)というソフトウェア上の偉業をなしとげたとしてい る。この点について私自身は確認していない。Jobs 氏は、家庭用 DVD プ レーヤーで再生可能な DVD を作成するために必要なハードウェアとソフ トウェアを揃えると、合計約 5,000 ドルの出費となるとしているが、こ ちらの主張は正しい。周辺機器とソフトウェアで 5,000 ドルかかる機能 を、最速の Macintosh(733 MHz Power Mac G4)に組み込み、しかも全部 を 3,500 ドルで売り出すのは見事だとしか言いようがない。加えて、 Apple は DVD-R メディアを各 10 ドルで販売しており、これは通常の 30 〜 40 ドルと比較したらかなり安い。

デジタルへ向かう -- では、私は Apple の新たなビジョンをどう評価 しているか? 説得力がある。そう感じているのは、主として Apple が現 実を認識したことに由来している。iMovie がいい例だが、Apple の本領 は新地平を切り拓いて新機能を提供することにある。だが、Apple は遠く 先を見つめすぎ、現在をおろそかにする傾向があったとも思う。いわゆる 「デジタルライフスタイル」を実践している人たちが非常に多いという事 実があり、市場のこの部分に注目することによって Apple は私たちの生 活を非常にリアルに変えていく可能性があるのだ。

これまで何年もの間、私は Mac を日常生活に組み込むことについて繰り 返し TidBITS で語ってきた。主な舞台は Tonya と一緒にセットアップし た「キッチン Mac」で、カレンダー、生鮮食品を注文するなどのための Web アクセス、地下にあるサーバから AirPort ワイヤレスネットワーク を使っての MP3 再生などを取り上げてきた。2000 年の 5 月からは、 Macworld.com でネット生活についての連載をしている。私たちの多くが すでに実践している生活に Apple が追いつくまで少し時間がかかったが、 ここに来て足並みが揃ったことは喜ばしいことだ。日常生活に食い込んで きたデジカメや携帯電話、PDA といったデジタル機器がもたらす問題に Apple がどう取り組むか、興味は尽きない。

<http://www.macworld.com/columns/wiredlife/>

デジタル機器を使いたいと思わない人たちは、Apple がデジタルライフス タイルに擦り寄る様子を見て無意味で軽薄だと感じていることだろう。私 たちも以前は iMovie を軽視していた部分があるし、iDVD で DV を焼く ことなどまったく眼中にないという人も多いに違いない。だが、The Mac Show の Shawn King 氏と Expo 会場で歓談中に氏が指摘してくれたよう に、売上と使用頻度は必ずしも比例しないのだ。Apple は製品を売りたい のであって、私たちがその製品を常に使っていてほしいと願ってはいるか もしれないが、別にそうでなければならない必要はない。したがって、 iMovie が決め手となって誰かが iMac を買うことになったら、その人が ほんの少ししかムービーを作らなくても Apple としてはどうでもいいこ となのだ。その証拠に、今年の Netters Dinner に集まった 160 人(こ れほどのオタク集団はないだろう)のうち、iMovie でムービーを作った ことのある人はわずか 10 〜 15 人ほどで、ムービーを 2 〜 3 本以上作っ たことのある人はほんの一握りに過ぎなかった。同様に、最上位機種の DVD-R ドライブ付き Power Mac G4 を買った人が、友達や親戚用に数枚だ け DVD を焼いてそれっきりということになるのも間違いない。毎日使わ れることにはならなくても、iDVD が Apple の売上に貢献したという点で 成功したことに変わりはないのだ。早い話、ユーザーがメールを送るのと 同じ頻度でムービーを作ることがないからといって、ビデオ関連製品が Apple にとって、またこうした製品を実際に使うユーザーにとって重要な ものでないと考える理由にはならない。

最後に、私の思いを述べておこう。「生産性の時代」から「インターネッ トの時代」、そして「デジタルライフスタイルの時代」への推移という 点で Jobs 氏は正しいかもしれない。だが、ビジネスアプリケーションや インターネットクライアントが改良を重ね、より高速で使いやすくなって いるとはいえ、私たちに許されている時間には限りがある。私たちは依然 としてワープロや Web を使い続けているのだ。何時間もかけてオーディオ CD を MP3 ファイルに変換したり、携帯電話の品定めをしたり、ビデオを 編集したり、何千というデジタル写真を整理したことのがある方はご存じ のように、デジタル・ライフスタイルのためには犠牲にしなければならな いものもある。こうしたデジタルな生活を営むうえで必要な時間はどこか から割かれてこなければならない。そのために料理や運動、あるいは単に 人と一緒に過ごすといったアナログな活動が押しやられてしまうとしたら とても残念だ。あるいは、Apple がアナログな活動に Mac を統合するた めのヒントを与えてくれるのだろうか。

投票 -- みなさんはどうお考えだろうか? Apple はここに来て何かを掴 んだのだろうか? それとも、最近の業績不振の原因だった戦略とその実行 にミスがあったという事実を覆い隠そうしているだけなのだろうか? TidBITS ホームページで今週のアンケートに票を投じていただきたい。ま た、Apple の新方針に関する意見を TidBITS Talk <tidbits-talk@tidbits.com> で聞かせていただこう。

<http://www.tidbits.com/>


PowerBook G4 Titanium は明々と燃える

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)

Steve Jobs 氏の CD を変換したり DVD を焼いたりする話もあったが、 Macworld Expo での基調講演で本当に燃え上がったのは、最後に PowerBook G4 Titanium のベールを剥いだときだった。そのほっそりした ポータブルコンピュータは、データを燃え上がらせ、ひざを焼き焦がし、 懐に穴をあける。

<http://www.apple.com/powerbook/>

Expo 前は、Apple 社が新しいラップトップを準備中との噂が飛び交った。 基調講演前は次の疑問が浮かび上がった。驚いて口をあんぐりと開けるよ うな発明がもう一度あるのか、それともスペックが改善されたスピードバ ンプモデルへのアップグレードに過ぎないのか?さあ口をあける場所を準 備しよう。

マーキュリー登場 -- PowerBook G4 は明らかにその前身よりも速く力 強い。Apple が PowerPC G4 プロセッサをポータブル機に初めて搭載した マシンであり、標準構成は 2 種類発売される(どちらも Apple Store で カスタマイズできる)。400 MHz モデルは 128 MB の RAM と 10 GB のハー ドディスクを搭載し、500 MHz モデルは 256 MB の RAM と 20 GB のハー ドディスクを搭載する(30 GB のハードディスクも選択できる)。どちら の構成も 100 MHz のシステムバス、1 MB の L2 キャッシュ、ATI Rage Mobility 128 グラフィックチップ、10/100Base-T Ethernet を装備し、 DVD ビデオや音楽 CD を再生できる DVD-ROM ドライブ、56K 内蔵モデム、 赤外線ポート、オプションで AirPort カードを装着するスペースもあり、 稼動時間が最高 5 時間のリチウムイオンバッテリを搭載している。

この PowerBook は USB ポートを 2 基、FireWire ポートを 1 基搭載し て拡張性を実現(明らかに 3 ポート分のスペースしかなく、そのため Apple は FireWire ポートを 1 基削った)、PC カード / CardBus 用ス ロットを 1 基、ステレオミニジャック、VGA ビデオ出力ポート、S ビデ オ出力ポートを誇っている。つまり、Mac のモバイルユーザーが最新のラッ プトップで望むもののほとんどすべてを備えているのだ。

<http://www.apple.com/powerbook/specs.html>

Thin Different -- しかし、PowerBook G4 の売り上げの原動力はハー ドウェアだけに限らない。新しいマシンは商業用純チタニウム(CP チタ ン)で構成されている。チタニウムは頑丈だが軽い金属で、インプラント 手術や航空機のエンジンにも使われる。当然、PowerBook は明るく輝き、 ブラシ研摩処理をした金属のような QuickTime のインターフェースをほ ぼ魅力的にみせる。(「ほぼ」だが。)チタニウムのケースは PowerBook G4 の軽さのもとにもなっている。ほんの 5.3 ポンドという軽さは、現行 の PowerBook G3(FireWire)モデルと比較してみるとよい。その差はそ れほどでもなくみえるかもしれないが、ラップトップを持ち運ぶ人なら、 皆荷が軽くなって喜ぶことだろう。しかし、次が一番よいところだ。 PowerBook G4 Titanium は厚さ 1 インチ、それも上蓋を閉じた状態で だ。Apple は PowerBook G3 の発表以来 PowerBook を薄く軽くしようと してきたが、PowerBook G4 のせいでほかのものは皆明らかに分厚く見え てしまう。

全体的にみると、ケースは現行のデザインより少し奥行きが狭く(9.5 イ ンチ)幅が広い(13.5 インチ)。よいニュースがある。ボディが薄くなっ たおかげで、スクリーン上部の縁が低くなり、PowerBook G4 の飛行機の 中での使い心地がよくなったようだ。そうそう、Apple はケースのロゴも 変え、素敵なマシンを使っているのを周囲の人が見たとき、またはテレビ にちらっと現れたときに上向きになるようにした。

Apple のエンジニアはどうやってこのすばらしい薄さを実現したのだろう か。常に小型化していく部品に加えて、場所をとらなくするために特筆す べきデザイン上の工夫をこらした。たとえば、DVD ドライブはスロットロー ディングとなり前面の右側に内蔵され、拡張ベイもない。バッテリも薄い 正方形になり、底面のすき間に納まっている。キーボードも薄くなってい るが、レイアウトは現行の PowerBook と同じで(邪魔な配置の Fn キー も同じ)、Eject 機能が F12 キーに割り当てられている。上蓋のラッチ が小さな磁石の留め金の形で正面についてる(残念なことに、G4 は iBook の持つエレガントなラッチレスの開閉システムを備えていない)。

スタンダードから「ワイドスクリーン」へ -- まだすごいとおもわない 人は、PowerBook 一族から離脱する大きな一歩の最後のやつはどうだろう (そう、大きい のだ)。PowerBook G4 のスクリーンは「ワイドスクリー ン」フォーマット(3 対 2 の横縦比)で 15.2 インチあり、マシンの横 幅が広くなっている。解像度はデフォルトで 1,152 x 768 ピクセルだが、 もっと一般的な解像度(たとえば 1,024 x 768 など)の 4 対 3 で表示 することもできる。搭載されている 8 MB ビデオメモリにより外部モニタ でミリオンカラーを表示でき、ビデオミラーリング、デュアルディスプレ イでのデスクトップの拡張もサポートする。Apple は大きいスクリーンを 使えば iMovie や Final Cut Pro でのビデオ編集がやりやすくなる、と 相変わらず宣伝しているが、私としては Microsoft 社の Word 2001 や Adobe 社の GoLive 5 といったプログラムでのどんどん増えるパレット群 を置く場所が増えたのがありがたい。

お熱いのがお好き? -- このパワーすべてが PowerBook G4 のもうひと つの熱い側面を予告している。温度だ。Expo 会場に置かれていた製品は、 ディスプレイ用の照明に照らされたテーブルの上に置いてあったことを考 慮しても、底面がちょうどよい焼け具合だったはずだ。チタニウムのケー スがヒートシンクとして作用しているはずであることを考えると、G4 プ ロセッサが出す熱の多くがひざを暖めるはめになるはずだ。

Apple は 400 MHz の構成を 2,600 ドル、500 MHz を 3,500 ドルで販売 している。この値段は安くはないが、今までの PowerBook シリーズと比 べても適正な価格だ。Expo に来ていた人々は、PowerBook G4 を買う誘惑 にかられ、言葉をかわし比較をしていた。中には燃え上がる欲望に屈し、 Apple Store に AirPort を搭載した展示中の PowerBook G4 で注文する 人もいた。

しかし、そこに PowerBook G4 Titanium 最大の問題となりうる点が存在 する。Apple は需要についていけるのだろうか。Jobs 氏はこの新しいマ シンは 1 月末に限られた出荷数で発売されはじめるだろう、と発表した。 Apple が製品の発表を製造が本格稼動する前に行う歴史を考えると、特に 厚さ 1 インチのポータブル機のような複雑で精密な製品の場合、どのぐ らいがんばれるのか見物であろう。それでもまだ、欲望は燃え上がる。私 はすでに注文した。


Macworld Expo で Mac OS X がより充実したものに

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:山下 英治 <vatcanza@fhe.freeserve.ne.jp>)
(  :林部 清実 <hayashibe@mvb.biglobe.ne.jp>)
(  :飯橋 真紀 <k-m611@ma4.seikyou.ne.jp>)

サンフランシスコで先週開催された Macworld Expo での Steve Jobs 氏 の基調講演の要点は、今日の「デジタルライフスタイル」のハブとして Macintosh を宣伝するものであったかもしれない。しかし、同時に講演で 重要であったのは、Jobs 氏が述べた Mac OS X 1.0 の詳細であった。

Jobs 氏はまず Mac OS X の発表済みの 2、3 の特色について手短にデモ を行った。その後、Public Beta リリース以来、ユーザー達からのフィー ドバックをもとに Apple 社が変更した点を発表した。まったく信じ難い ことだが、Jobs 氏によれば、わずか 1 万人程度のユーザーが Public Beta を購入し、ほんの 3 千から 4 千のコメントしか得られないと Apple 社は予想していたのだという。この予想はまったく見当違いとなり、 Public Beta は 10 万以上のユーザーが購入し、7 万 5 千件のフィード バックが寄せられた。

めざましい開発 -- 謙遜していたが Jobs 氏が重要な改良を行ったとい えるであろう。Mac OS X は「Sleep」「Restart」「Logout」また何時で もアクセスできるコマンドを収納している機能アップルメニュー(メニュー バーの中心にあった不要な飾りではなく)を左端に持っている。Dock 機 能の欠点に対して、Apple 社は Dock 上のアイコンをクリックしてコンテ クストメニューを階層に表示させるようにし、Dock に収納されたフォル ダを開け、そこにあるアプリケーションから最近使用したドキュメントに アクセスできるようにしている。そして Font パネルの大きさについては、 様々な方法で変更できるようにした。最後に、Mac OS X では無駄な場所 を画面内で使用するのを軽減するために Finder ウインドウのツールバー を小さくし、自由にカスタマイズできるようにした。また、クリックする と完全に非表示にできるボタンを加えた。ツールバーが非表示の時、Mac OS X はオールインワン・ウインドウ方式からウインドウを開いたら各フォ ルダが表示されている Mac OS 9 バージョンに切り替わる。

これらの改良がすべて良い方向へ進んでいく上での途中段階であり、ユー ザーフィードバックに感謝するのはもちろんのことであるが、絶対的な結 論をするのにはまだ早いであろう。たとえば、アプリケーションメニュー はアップルメニューのすぐ右隣に位置したままであり、アプリケーション メニューはアプリケーションの名前が表示されることにるので、アプリケー ション名の長さによって、その右隣にあるファイルと Edit メニューの位 置が一定しないため、これまでよりは使い勝手は悪くなってしまっただろ う。Mac OS X に AppleScript という言葉が収納されているけれど、ユー ザーがネットワーク接続や印刷、また Mac OS 9 ではスクリプタブルなそ の他の機能をスクリプトできるかどうかは後にならないとわからないであ ろう。

新 OS の明暗 -- Mac OS X 1.0 がどんなものかは明確につかめていな いが、価格と発売日は発表された。予告通りであれば、129 ドルで 2001 年 3 月 24 日に購入できるはずだ。さらに Jobs 氏は、Apple 社が 2001 年の 7 月からすべての Mac に Mac OS X 1.0 をデフォルトでプリインス トールし販売開始することを宣言した。当分の間は、Mac OS 9.x が新し いハードウェアでも使えるので、Mac OS X Public Beta 版でしたような デュアルブートの手段でも Mac OS X 搭載機種が Mac OS 9 に帰属するこ とが可能なはずだ。これは重大視すべき点だ。共存できなければ、Mac OS X 対応準備が整うまで、ハードウェアの購入をためらう Mac ユーザーが 出てくる可能性がある。学校や企業では特にその傾向が予想されるだろう。 複数の OS をサポートすることを望まないし、公式採用することもしない だろうからだ。

Jobs 氏はまた Mac OS X 開発にたずさわっているデベロッパーの数を報 告したが、その数字は何の意味も持たないし何も実証できない。デベロッ パー各社のサポートは、今月 3 月から始まり 7 月にはピークに達し年内 に完了する、といった釣鐘グラフを描けると Apple 社は確信している。 Apple 社の予測通りであることを期待してはいるが、Apple 社の Mac OS X デベロッパーが多種多様な周辺機器へのドライバサポート等の問題に今 なお頭をかかえている事実が明らかである状況で、Apple 社側が早急な発 売の責任を自分たちに完全におしつけていることに疑問を抱くデベロッパー もいる。

Mac OS X を発売することで、Apple 社は、ワニとピラニアが放たれたプー ルの上に吊るされて 3 次元 Twister ゲームをするほどの綱渡りをしては いない。カーボン化するのが容易でないプログラムをかかえている、ある いは今だ実現不能な機能を Mac OS X に求めているデベロッパーや、ソフ トウェア、ハードウェア、知識へのかなりの投資が無意味になることを恐 れている長年の Mac 信仰者たち、といった身内からの批判の声は大きい。 しかしながら、これらの危機から Mac OS X 1.0 を救うために安全策を持っ て準備している者も存在する。移行トラブルの心配もない新規ユーザー、 Unix と並んだ主流生産性のあるアプリケーションを動かすのを心待ちに している Unix ユーザーや、Cocoa の迅速な開発環境のなかで新しいプロ グラムを作成しているデベロッパーたちだ。Apple 社は、68K から PowerPC への変換で奇跡を起こしてくれた実績はある。しかし、3 月発売 どころか 7 月までにこれらすべてのグループの真の要望に応えるのも非 常に難しい。


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway