TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#567/12-Feb-01

コンピュータは這い回るケーブルの巣窟を作り出す。互いにネットワーク 接続しようとすると特にそうだ。しかし、ネットワークを拡張するために 穴を開ける前に、Apple 社の AirPort によって可能になったワイヤレス の世界を眺める今週の特集記事を読もう。また、小売商がいかに収益性と いう祭壇に廉価な翌日配達をいけにえとして捧げてきたかを Adam が調べ てみる。ニュースでは、REALbasic 3.0 をとりあげ、Napster 社の最近の 違法騒動を眺め、新スポンサーを歓迎する。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/12-Feb-01

(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)
(  :三好 泰子 <yokomo@mio.to>)

連邦高裁 Napster 差し止めの一審判決を支持 -- 本日 Ninth Circuit Court of Appeals(サンフランシスコ連邦高裁)の 3 判事パネルは 58 ページに及ぶ意見書を提出した。その中で Napster 社が提供している人 気の高いピアトゥピアの音楽交換サービスは、Napster ユーザーによって 提供された著作権のついた作品へのユーザーによるアクセスを可能にして いる事を止めなければならないとしている。連邦高裁の判断は元々 2000 年 7 月 26 日に Marylin Patel 判事によって Napster 社に出された差 し止め判決に沿っている;その内容は、Napster 社が「著作権の付いたす べての歌、音楽作品の配信の、原因となったり、手助けをしたり、場を提 供したり、複製を作成したり、あるいは単に配信を行う」ことを禁ずるも のであった。連邦高裁の 2 判事は、Napster 社と同社を著作権侵害と盗 用をほう助したとして訴えている Recording Industry Association of America(RIAA)の両社が論争することを条件に、Napster 社に対するサー ビス差し止めを一時的に解く判断をほぼ同時に示した。( TidBITS-541 の「判事、Napster 社のボタンを押す」参照。)この連邦高裁の判断は、 Patel 判事が元々「広過ぎる」差し止め内容を修正するまで Napster 社 が業務を継続することを許している。しかしながら、この判決は同時に、 Napster 社はユーザーが著作権を侵害する可能性のある内容にアクセスす ることを防止しなければならないことを命じ、かつ Napster 社は直接的 著作権侵害が実際に起っていることそして擬制悪意が存在することを知っ ていたと認定した。Napster 社は今後著作権侵害および侵害ほう助に対し て自分のシステムを監視する義務をおこたったかどで責任を問われる可能 性を持つ事となった。Napster 社はこの判決を不服とし連邦高裁のフルパ ネル、あるいは連邦最高裁までも上告すると想定されている;判決の全文 は FindLaw.com で入手できる。

レコード業界との関係改善の狙いもこめて、Napster 社のパートナーであ る Bertelsman 社の CEO は最近次のような声明を出した;早ければ 2001 年 6 月には、レコードレーベルやアーティストに対して対価を支払う方 法として、ユーザーに対して月額のサービス使用料を課するつもりである と。しかしながら、そのような支払方法の中からどのようにアーティスト たちに対価を分配するかについての詳細は明らかにされていない。 Napster 社は現在 5 千万以上のユーザーを抱えているとしており、 Napster 経由のダウンロード数は 1 月だけをとっても 20 億に達すると 推定している。[GD]

<http://www.napster.com/>
<http://www.riaa.org/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06056>
<http://caselaw.lp.findlaw.com/cgi-bin/getcase.pl?court=9th&navby=case&no=0016401>

REALbasic 3.0 出荷 -- REAL Software 社は、REALbasic 3.0 をリリー スした。これは、2000 年の 4 月以来初めてのメジャーのアップデートだ。 REALbasic はアプリケーション構築のためのツールで、インターフェース (ウインドウ、ボタン、テキスト領域など)を描き、簡単だが強力なオブ ジェクト指向の BASIC 言語のコードを埋め込み、そしてコンパイルする ものだ。広範囲にわたる機能が組み込まれているが、サードパーティのプ ラグインを追加したり、Mac の Toolbox を直接呼び出すことによって、 この組み込み機能を補強することができる。REALbasic は、趣味で使う人 や初心者にとって特にぴったりな製品だが、いくつかの商用のアプリケー ションの作成にも使われてきた。(『REALbasic: The Definitive Guide』 の著者でもある TidBITS の寄稿編集者 Matt Neuburg が TidBITS-493 の「REALbasic 2.0 が本物に」で REALbasic 2.0 をレビューしている。) このバージョンで最も重要で革新的なのは、Mac OS X(Carbon)下で稼働 もするし、Mac OS X(Carbon)用にコンパイルもできるということである。 Mac OS X の完成版は、2001 年 3 月 24 日まで出荷されないので、REAL Software 社は、出てきたすべてのバグを一掃するために無料でのアップ デートを約束している。Windows へのコンパイルもかなり改良されており、 開発環境(編集とデバッグ)に対しても多くの便利な機能強化が行われて いる。REALbasic の価格は 150 ドル、または、データベース接続機能と Windows 用コンパイル機能が付いた「プロフェッショナル」版が 350 ド ルとなっている。教育用のディスカウントも用意されている。アップグレー ドは、2000 年 11 月 1 日以降に REALbasic 2.1.2 を購入した方は無料、 標準バージョンへのアップグレードは 100 ドル、プロフェッショナル版 へのアップグレードは、150 ドルである。また、30 日間無料で使用可能 な評価版のダウンロードもできる。[MAN]

<http://www.realsoftware.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05508>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/1565926579/tidbitselectro00A/>

CS Odessa 社が TidBITS のスポンサーに -- 喜ばしいことに、我々の もっとも新しいスポンサーとして、インテリジェントなダイアグラム作成 とビジネスドロープログラム、ConceptDraw のメーカーである Computer Systems Odessa 社を発表する。オブジェクトの目に見える属性にしかア クセスできないほとんどのグラフィックプログラムと違い、ConceptDraw は、所与のグラフィックオブジェクトを記述する内部データのすべてにア クセスできるだけでなく、オブジェクト間の関係を作成してそれぞれの振 る舞いをカスタマイズする式を使うことができる。その結果、魅力的なプ ログラムになっている。さらに詳細な説明には、デモ版を入手して TidBITS-553 の Matt Neuburg のレビュー「ConceptDraw コネクション」 を一読されたい。CS Odessa 社は、その地理的な位置のために Macintosh 界では珍しい存在だ。同社はウクライナに拠点を置いており、 先月の Macworld Expo にこの国から出展した最初の会社となったのだ。 米国外から Macintosh 界に多大に貢献している会社を迎えられるのはす ばらしいし、さらに CS Odessa 社は TidBITS のロシア語翻訳を活性化さ せる援助もしている。[ACE]

<http://www.conceptdraw.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06179>
<http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/ru/>


送料無料はもう過去に

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)
(  :林部 清実 <hayashibe@mvb.biglobe.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

利益を押し進めることが多くのインターネット会社に欠くことができなく なっているように、最近、オンラインビジネスが追加の収益を出すために あらゆる努力をしているのが目につく。eBay はオークションの出品料を 値上げし、Amazon は本の宣伝を有料にする計画を発表し、Microsoft は MSN に登録した人たちの PC に対する 400 ドルの払戻しを中止したばか りだ。さらに無料の ISP、Juno はヘビーユーザーの時間制限を設けるだ けではなく、演算プロジェクトに参加して顧客のコンピュータ使用時間を 売ることを検討している。(皮肉にも、我々がカリフォルニアの SETI@home ユーザーに節電のために参加を一時見合わせるよう呼びかけた 直後に、Juno は 200 万人のユーザーに参加を提言した。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06277>

けれども Macintosh ユーザーに最も深刻に影響を与える変更は、 Outpost.com の送料の変更かもしれない。これまでの 18 カ月間、 Outpost.com の翌日配達料は無料だったので、通常では送料が高い商品を 注文する人たちに重宝がられていた。その上、追加の送料を請求されなかっ たので、複数の商品を注文する必要がなかった。

Outpost.com の新しい送料は、翌日配達が 12.95 ドル、翌々日配達が 8.95 ドルで、100 ドルを超える注文については最初の100 ドル分の送料 を徴収しないので、合計が 100 ドルかそれ以上の注文のほとんどがまだ 送料無料だということを意味している。結論として、もしあなたが Outpost.com に注文したいのなら、送料を無料にするために複数の商品を 同時に注文する方法をとれば、かなり満足できるだろう。それに、コン ピュータや UPS のような重い商品は、最終的には他のところより Outpost.com の方が安くなるだろう。

<http://www.outpost.com/help/29485/>

このことで主要な通販会社数社をどうやって比較するか考えさせられた。 1990 年代初期の翌日配達が 3 ドルだった日々は過ぎ去って久しく、 Outpost.com から商品の 2 倍の送料を払わずに 6 ドルの USB ケーブル を注文できるのなら、私は歓迎するだろう。

MacConnection -- その他のチェックした業者中、少なくとも外観的に は、MacConnection が一番簡単な送料形式をとっている。翌日配達の場合、 3 ポンドまでは 10.98 ドルかかり、3 ポンド以上は 1 ポンド増えるごと に 1.69 ドル加算される。重量はすべてポンド計算で端数は切り上げられ る。翌々日配達と陸上便も可能であるが、MacConnection はカスタマーサー ビスページに価格を明示していない。いくらぐらいかかるか知りたかった ので、iBook を注文するふりをして試した場合、翌日配達に 26.19 ドル かかり、翌々日配達、陸上便ではそれぞれ 18.40 ドル、13.42 ドルかか るらしい。USB ケーブルのような物なら、翌日配達、翌々日配達、陸上便 でそれぞれ均一、10.98 ドル、8.40 ドル、7.04 ドルかかるだろう。

<http://www.macconnection.com/scripts/shophelp/durord.asp#shipping>

MacWarehouse -- ランダムに選んだ Macintosh 通販会社の調査で次に 挙げるのは MacWarehouse。そのカスタマーサービスページでは、送料を 知るためのたった一つの方法として、アイテムをカートにいれ、Shipping Rates リンクをクリックし、ZIP コードを入力すること、と説明している。 iBook で試しに調べたら、UPS Ground なら 18.33 ドルかかるところ、こ の場合の送料は翌日配達、翌々日配達で 22 ドルから 29 ドルのあいだで あった。10 フィートの USB ケーブルなら翌日配達だと 10.99 ドル、陸 上便または翌々日配達で 8.99 ドルかかるらしい。

<http://www2.warehouse.com/customerservice/default.asp?sel=faq& Subsel=ship%5Fopt&cshop=#COSTS>

MacZone -- 最後に MacZone をチェック。MacWarehouse と同様、送料 は明示されないので、アイテムをカートに入れて会計まで進まないと送料 がわからない。iBook の場合、翌日配達で 31.99 ドルとなり、三日目に 配達だと 24.64 ドル(翌々日配達のオプションはなし)、陸上便だと 12.20 ドルとなる。USB ケーブルだと翌日配達で 10.95 ドル、三日目で 7.69 ドル、陸上便で 5.99 ドルだった。

<http://www.zones.com/cgi-bin/zones/zbs/scripts/static/static_page.jsp? name=helpdeskavailability#costs>

まとめ -- 販売価格の方は、ここで挙げた業者も他の通販店も似たり寄っ たりだ。とはいえ、DealTime や PriceWatch といったサービスでコンピュー タ関連製品の安売り情報をチェックすることはできる。今回の調査結果か ら、価格や在庫状況といった他の条件が等しい場合、100 ドル以上のまと まった買い物をした際には送料無料となる Outpost.com がやはりお得だ ということがわかった。一方、100 ドル未満で翌日配達してほしい場合に は他の 3 社がほぼ互角だ。すぐには必要でない安価なアイテムなら、陸 上便での送料は MacZone が一番安い。今度 Web にハード・ソフトを買い に行く際には参考にしていただこう。

<http://www.dealtime.com/>
<http://www.pricewatch.com/>


AirPort へ

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

Macworld Expo 関連の記事中、Ricochet を使ったインターネット接続を 共有するためにホテルの部屋でワイヤレス Ethernet ネットワークを構築 したことに触れたところ( TidBITS-565 の「Macworld SF 2001:若い Mac はワイヤレスで行こう」を参照)、数人の読者から同じようなことを したいというメッセージを受け取った。非常に簡単にできるという返事を 書き始めて気がついたのだが、Tonya と私は一年以上前から自宅で AirPort を利用しているというのに、今まで AirPort を使ったワイヤレ ス Ethernet ネットワークの設定や利用に関する記事をほとんど書いてい ない。私がうっかりしてしまった理由は至って単純で、AirPort ネットワー クの設定はあっさりとできたし、いったん動くようになれば、あとは何も しなくても動いてくれるからだ。しかし、単純で信頼できてスマートであ ることが AirPort の良さである。だからこそ、今どきの Mac 用のネット ワークには、まず AirPort をお薦めする。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06284>
<http://www.apple.com/airport/>

iBook をオンラインに -- 私たちは 1999 年末に AirPort ワイヤレス ネットワークの導入を決めた。それは、1 歳を前にした Tristan がさか んに動き回るようになり、Tonya にとって自分のデスクトップマシン(モ ニタが 2 台繋がっている Power Mac 7600)を使うのがだんだん難しくなっ たからである。Tristan が特に好奇心を示したのは、台所、ダイニング、 そして Tonya の Mac へと張り巡らしてあった 50 フィートの明るい青色 の Ethernet ケーブルだった。口に入れて噛むまでには至っていなかった が、この青いケーブルは絶好のおもちゃだった。Tonya が iBook を使う ようになれば、机の上が片づくし、ダイニングに置いてあるマシン類が要 らなくなり、色鮮やかな心配の種(台所から張ってある 50 フィートのケー ブル)を一掃できるうえ、Tonya は家の中のどこにいようとも仕事ができ るようになるなど、数々のメリットが考えられた。しかし、Tonya はメー ルと Web を主に利用していたので、我が家のインターネット接続へのア クセスは欠かせない。その解決策が AirPort ワイヤレスネットワークを 導入だった。

必要なものはふたつ。まず、Tonya の iBook に内蔵の AirPort カード (100 ドル)で、これはマシン購入時にインストールした。そして、300 ドルの AirPort Base Station。これを我が家の有線 Ethernet ネットワー クに繋ぐと、iBook からほかの Mac やプリンタやインターネットにアク セスできるようになる。当時は、AirPort カードを差した Mac をソフト ウェア・ベースステーションとして機能させるためのソフトウェアである Apple 製 AirPort 1.2 がまだリリースされていなかった。そのうえ、我 が家にはソフトウェア・ベースステーションの役目を果たすことのできる AirPort の装備可能な Mac がほかになかった。Mac をソフトウェア・ベー スステーションとして機能させると、200 ドルの節約となり素晴らしいが、 その Mac は常に動いていなければならないのだ。現在の私のマシンであ る Power Mac G4/450 はたいていは動いているが、ソフトウェアをテスト しているときはかなり頻繁にリスタートを繰り返すので、私がリスタート するたびにネットワーク接続が失われてしまっては、Tonya のご機嫌を損 ねてしまっただろう。

正直なところ AirPort ソフトウェアの最初のバージョンはかなりひどい ものだった。Apple が慌てて出荷したことは歴然で、動きはしたもののイ ンターフェースはなっていなかった。私の Mac ではさほどの問題もなく 使うことができたが、PC ユーザーの友人を手伝って、ラップトップ PC と Aironet 802.11 PC Card の動作確認をしたときは、PC で動くように するまでに設定をぐちゃぐちゃにしてしまったり、それを直したりなど大 変であった。Apple は AirPort ソフトウェアのインターフェースにかな りの改善を施し、バージョンを 1.2 にアップデートした。AirPort Base Station は「設定してしまえば存在を忘れてしまう」デバイスであるため に、この新しいソフトウェアを使う理由は私にはない。

その他の接続 -- 旧式の PowerBook G3 用として、時代遅れの Farallon SkyLINE 2 Mbps PC カードを持っている。802.11b ワイヤレス Ethernet 規格は、私の 2 Mbps カードがサポートしている古くて遅い 802.11 のような下位に対する互換性がある。この規格は、デバイス側が 対応するスピードを 11 Mbps から 5、2、1 Mbps にまで落とすこともで きる。たまに自宅でこの Farallon カードを使うこともあるが、ほとんど 意味がない。それは、この PowerBook は家では主に MP3 再生用マシンと なっているため、電源やスピーカーのコードが不可欠であるからで、ネッ トワーク用に線がもう一本増えたからといって問題にはならない。MP3 を 再生したり Web をブラウズするのには 2 Mbps で十分で、唯一何百メガ もあるファイルをコピーしたときに、スピードが気になったぐらいである。 2 Mbps の SkyLINE カードの通信可能範囲は Tonya の iBook ほどは広く ない。これは iBook の内蔵アンテナが関係しているではと思われる。旅 行中、問題なく SkyLINE カードを利用したものの、ソフトウェアはあま り良くないと思った。

我が家には、もうほかにワイヤレス Ethernet アクセスが必要な Mac は ないが、AirPort 対応でない旧タイプの Mac で利用するための製品が登 場し始めている。Farallon は 11 Mbps SkyLINE PC Card を 190 ドルで 出してきており、150 ドル弱の Lucent Orinoco Turbo PC Card(旧称、 WaveLAN Turbo)の対抗馬となるだろう。Apple 製の内蔵 AirPort カード と AirPort Base Station の中味は、実は Lucent で、これが Lucent の 強みでもあり、Apple のソフトウェアが(少なくとも Mac OS 9.x 下では) そのまま使える。

<http://www.farallon.com/products/wireless/skyline/>
<http://www.wavelan.com/>

PowerBook であれば PC カードが使えるが、よくある旧タイプの PCI Power Mac を使っている人も、もはや蚊帳の外ではなくなった。70 ドル の Farallon SkyLINE PCI Card があれば SkyLINE 11Mb PC Card を利用 できる(両方で 240 ドル)。Power Mac 7500 または同等の PCI Mac が、 配線のしにくいところにある場合におあつらえ向きである。

<http://www.farallon.com/products/wireless/skyline/pci/>

NuBus やそれ以外の拡張スロットが載っているようなさらに古い Mac 用 には、Lucent 社製の Orinoco Ethernet Converter がある。標準の Ethernet ポートをワイヤレス Ethernet 接続に変更してくれる Lucent Orinoco PC Card と一緒に使えるようになっている。確かに古い Mac に アクセスできるようになるが、そのために 370 ドルというのは、結構高 すぎる。

<http://www.wavelan.com/products/productdetail.html?id=25>

DSL、ケーブル、モデム -- 56K フレームリレーによってインターネッ トに常時接続しているが、そのために Livingston 社のルータと BAT Technologies 社の CSU/DSU を使っている。AirPort Base Station は我々 の設定で完全にうまくいったが、機能の多くを使っていない。我々のよう な複雑な接続は今では普通ではない。ケーブルや DSL は安く簡単になっ ているし、それに、ほとんどの人はまだモデムに頼っている。そういった 場合には、AirPort Base Station(またはソフトウェアの Software Base Station)が、有線でも無線でも、ネットワーク上にあるコンピュータす べてに接続を分配する。

このからくりは AirPort Base Station が 2 つのネットワーク技術、NAT と DHCP をサポートしている点にある。DHCP は Dynamic Host Configuration Protocol を表し、これで AirPort Base Station がプラ イベート IP の番号を有線、ワイヤレスとも内部ネットワークにあるコン ピュータすべてに分配できる。NAT は Network Address Translation の 略で、このおかげで AirPort Base Station はユーザーの ISP からひと つの IP アドレスを取得し(動的、つまり接続のたびに IP が変わる場合 と、いつも同じである静的な場合がある)、インターネットトラフィック を要求した内部のマシンにルーティングするという必要な仕事ができる。 たとえば、ユーザーの iBookが Web ページを要求すると、AirPort Base Station は自身の IP アドレスからのように要求を送信する。応答を受信 すると、データをネットワーク上の他の Mac ではなく iBook にきちんと 送信する。AirPort Base Station をデータのパケットの道案内をする交 通巡査だと考えるとよい(もし DHCP や NAT を行うルーターをすでに持っ ているなら、AirPort Base Station の NAT と DHCP の機能は簡単に切っ てしまえる)。

よって、インターネットにダイアルアップ接続するなら、ただ AirPort Base Station を電話回線に接続し、電話番号と、ログインに必要な情報 を AirPort Admin Utility で入力すればよい(まだ AirPort Setup Assistant を使って入力していなければの話である。AirPort Setup Assistant はインターネットの設定をコンピュータから AirPortBase Station へ転送する)。インターネットのアプリケーションが接続を要求 すれば自動的にダイアルし、あらかじめ指定したアイドル時間が経つと切 断する。完全に手動でコントロールすることが、電話や ISP への接続料 金を請求される場合に重要となるかもしれないが、サードパーティのユー ティリティを 2 つほど使えば可能になる。Larry Rosenstein 氏の AirPort Modem Utility 1.1 を使えば、モデムを手動で接続、切断でき、 Pascal Werz 氏の AirPort Modem Config 1.0.2 では AirPort Base Station の自動接続を防ぐことができる。

<http://homepage.mac.com/lrosenstein/programs.html>
<http://werz.multimania.com/>

AirPort Base Station は AOL に接続できず、Apple はこの問題にずっと 頭を悩ませているが、文句を言う者はその怒りを代わりに AOL 社に向け るべきだ。AOL が独自の技術に頼り AOL のアプリケーションをユーザー に使い続けさせているのだ。この同じ方針のせいで Eudora や他の標準的 なインターネットメールのアプリケーションが AOL からメールを受信で きない。AirPort Base Station はインターネットの標準的な技術を使う ISP でなら動作する。この問題を修正する責任は AOL にあり、Apple や 他の誰にもない。

DSL やケーブルモデムで接続するならこんなに騒ぐ必要はない。それらは 通常ユーザーの家に Ethernet 接続の形でやってきており、もし有線で Ethernet 接続するマシンがないなら、AirPort Base Station に直接差し 込めば良い。従来のネットワークがあるなら、かわりに DSL やケーブル を Ethernet ハブのアップリンクポートに接続し、そのれから別の Ethernet ケーブルを AirPort Base Station や有線 Ethernet ネットワー クのアクセスが必要な他の Mac に走らせれば良い。こういった状況での AirPort Base Station の設定は TCP/IP コントロールパネルの設定に似 ている(AirPort Setup Assistant が仕事をしてしまっていたら、それさ えも必要でないことがある)。ユーザーの ISP が IP 番号を DHCP で与 えていたら、AirPort Admin Utility の「Connect using」ポップアップ メニューから選択できる。他には、Manually を選び、適切な設定を入力 もできる(その場合 ISP から取得する必要があるだろう)。目立つかす り傷は、AirPort Base Station は PPPoE(PPP over Ethernet という電 話会社が使用を監視するために使うばかげた技術)をサポートしていない ことだ。Farallon 社の新しい 400 ドルの NetLINEWireless Broadband Gateway はモデムがないが、DSL 接続のためのすごくじゃまな PPPoE の 処理をしてくれそうだ。

<http://www.farallon.com/products/netline/broadband/8581_gateway.html>

Apple の PDF 文書「Designing AirPort Networks」(先にリンクした Apple の AirPort ページから入手できる)はワイヤレスネットワークの 設定とインターネット接続への違ったアプローチを検討する役に立つ。

技術的な困難 -- 無批判的に聞こえるのは嫌だが、今まで基本的に AirPort によるネットワークではまったく問題がなかった。唯一印刷の時 に厄介なことが起こる。我が家の LaserWriter Select 360 は私の机の隣 で、AirPort Base Station から 1 階下の最も遠い所にある。Tonya が 彼女の iBook を持って降りてきて、プリンタの隣に座り、MYOB からプリ ントジョブを送ると、印刷できないことがある。これは距離に関連した再 伝送のエラーと、SE/30 が LocalTalk Bridge を動作して、LocalTalk し か話さない LaserWriter にすべての Ethernet 上の Mac がアクセスでき るようにしていることが組み合わさって関係しているのではないかと疑っ ている。彼女が AirPort Base Station に近付けば、問題は解消するので、 あまり大声で文句を言いにくい。

おそらく AirPort によるネットワークでもっともいらいらするのは、あ いまいなことだ。電波が届く範囲がどれ位か決して分からない。邪魔になっ ている壁の種類や数といった変数によって決まるからだ。Apple は150 フィートの範囲だと主張しているが、ほとんどの場合この数字は控えめだ。 iBook と最近の PowerBook 内部のアンテナはそれよりもっといい。Tonya の iBook が、だいたい軽く 300 から 400 フィート離れている隣人のリ ビングルームで動作したことがある。

そういった限界は、AirPort が使う 802.11b ワイヤレス Ethernet とい う基盤となる技術固有のものではない。もっといいアンテナを AirPort Base Station に取り付ければ、範囲を著しく広げることができる。アン テナを加えて範囲を広げることについてほとんど知らないが、AirPort Base Station を改造してもっといいアンテナを取り付ける方法を詳しく 載せているページを見つけた。MacHack の友人は Brumleynet Wireless Networking をワイヤレスネットワークのハードウェアの調達に推薦して くれた。

<http://homepage.mac.com/hotapplepi/airport/>
<http://www.brumleynet.com/>

802.11b 規格に特有の問題は、2.4 GHz 帯の周波数を他の機器と共有して いるという事実で、2.4 GHz のコードレス電話、将来の Bluetooth 機器、 HomeRF 機器(競合するワイヤレスネットワーク技術で、Farallon の親会 社の Proxim 社が多額の投資をしている)が含まれる。この分野を扱って いるジャーナリストの友人が言うには、彼と話した企業はほとんどすべて、 2.4 GHz を使った別の機能の機器で干渉が見られ、パケットロスが再伝送 を強いるためスループットが低下することを認めたそうだ。実際的な言い 方をすれば、2.4 GHz 帯のコードレス電話を持っていてAirPort Base Station の近くで使うなら、電話で話しながら同時にネットワークを使う ときに、スループットが被害を受けることになりそうだ。これについてさ らなる情報は、Scott Mace 氏の 3 部からなる記事「The 2.4 GHz Traffic Jam」を下のリンクでチェックしよう。

<http://www.stardust.com/wireless/views/>

もうひとつ持ち上がっている問題は、セキュリティだ。ほとんどの人はわ ざわざ AirPort Base Station の 40-bit 暗号化の機能をオンにはしない。 それに関する問題を示すために、MacHack のあるグループが EtherPEG と いう、暗号化されていないワイヤレスの接続で空中を移動する画像をすべ て表示するユーティリティを書いた。よって、もし自分のトラフィックを 誰かがかぎまわってやしないか気になるなら、または通りからインターネッ ト接続を使われてさえいないか気になるなら、AirPort Admin Utility を 使って暗号化をオンにしよう。しかし、本当にワイヤレスネットワーク中 のデータの流れに神経質なら、それでも充分でないかもしれない。 U.C. Berkeley の Computer Science Division の研究グループの調査結 果では、802.11 の WEP(Wireless EquivalentPrivacy)アルゴリズムは、 安価で簡単に手に入る機器を使って簡単に攻撃できる多くの弱点を持つと のことだ。よって、商業スパイ(や、もっと伝統的なもの)が気になるな ら、必ずセキュリティの手段を追加して使うべきだ。

<http://www.etherpeg.com/>
<http://www.isaac.cs.berkeley.edu/isaac/wep-faq.html>

最後になるが、どんな技術にもあることだが、うまく行かないものごとも あり、Apple はいろいろな記事を Tech Info Library にポストしている。 もしトラブルに遭遇したら、訪れてみる価値はある。

<http://til.info.apple.com/>

公衆 AirPort -- ワイヤレス・ネットワーキングがオフィスや家庭に限 定されなければならない理由はない。事実、公衆ワイヤレスネットワーク が雨後の筍のように姿を現している。たとえば Seattle Wireless 社は、 シアトルで完全に無料なインターネット接続のできる地域ワイヤレスネッ トワークを構築しようとしている。オレゴン州では、Ashland Unwind 社 が Starbucks 店舗と簡易ホテルを手始めに、地元企業での高速ワイヤレ スインターネット接続を提供する計画だ。他の地域でも公衆ワイヤレスネッ トワークの実験を開始しつつあり、TidBITS Talk でも話題になっている。

<http://www.seattlewireless.net/>
<http://www.ashlandunwired.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1280>

Starbucks の Ashland 店はいずれ Starbucks 本社から何らかのお達しを 受けることになるだろう。というのも、Starbucks は MobileStar 社と、 宇宙全域での Starbucks 店舗(正確には 2002 年 1 月までに 2,500 店 舗、2003 年 1 月までに 5,000 店舗)でワイヤレスインターネット接続 を提供するという独占契約を発表したばかりだからだ。サンフランシスコ では、Surf and Sip という会社が独立系喫茶店やその他の公共の場を接 続し始めている。

<http://www.mobilestar.com/pressreleases/starbux.html>
<http://www.surfandsip.com/>

私がワイヤレスでインターネットに接続したことのある唯一の公共の場は シアトル・タコマ国際空港で、ここは Wayport という会社のおかげでワ イヤレス接続が可能になっている。シアトルから Macworld に行くために 飛行機を待っている間、私と Jeff Carlson はインターネットに接続し、 メールを受け取り、Web ブラウジングをすることができた。あっぱれ、と いうべきだろう。Wayport のサービスは今後数ヵ月の間は無料だ。 MobileStar や Surf and Sip も同じだが、事前に面倒なセットアップな どをしなくても、ユーザーがアクセスタイムに応じて適切な使用料を支払 えるような簡便な仕組を考案しなければならないだろう。

<http://www.wayport.com/>

こうしたプロバイダが、インターネット接続を設置し、ワイヤレス Ethernet 経由でエンドユーザーに提供する会社だけから集中的に使用料 を徴集するという経営方針を打ち出してきても驚くにはあたらない。こう した企業にとって、ワイヤレスインターネット接続を提供することは、客 を引き寄せ、繋ぎ止めておくことにつながるからだ。他方、万人に等しく 毎月、あるいは時間あたりで課金するというのは困難で、そもそものワイ ヤレスネットワーキングの手軽さを失ってしまうことになるだろう。

回路を閉じる -- これからの時代はワイヤレスだ。ケーブルももちろん 役に立つのだが、動き回ったり近くにある別の機器と交信する必要のある デバイスの場合、ワイヤレスの方が明らかに理に適っている。ワイヤレス Ethernet が普及する直前に、手間暇をかけて家庭やオフィス、あるいは 学校にケーブルを張り巡らした人たちには気の毒に思う。

最後に、一つの思いを。PC の世界からは絶対に聞こえてこないだろうが、 Apple が AirPort を世に送り出したことをコンピュータ業界全体が感謝 すべきだろう。他のあまりにも多くのテクノロジー(マウス、3.5 インチ フロッピー、CD-ROM、それにオンボード Ethernet)と同様に、Apple は 必ずしも 802.11b ワイヤレス Ethernet を発明したわけではないが、 Apple の肩入れがあって初めて世間に認知されるに至ったのだ。すべての Mac にAirPort スロットを装備し、他社をはるかに下回る価格で売り出し たことは、広範な普及を何年も早める効果があった。当初、AirPort ベー スステーションを安く手に入れたくて仕方のない PC ユーザーたちは、 Mac ユーザーと仲良くすべく必死だった。AirPort の設定には AirPort 対応の Mac が必須だったからだ。Apple が AirPort と iBook を世に送 り出して 18 ヵ月以上たった今、ようやくPC メーカー各社がラップトッ プにアンテナを装備して今日のワイヤレス Ethernet PC カードに見られ る厄介なふくらみを避けるようになった。Apple が賭けに打って出てくれ たおかげで、今ワイヤレス Ethernet が存在するのだ。そしてこれからも。


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