TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#569/26-Feb-01

現在の Mac の標準である巨大なハードディスクのバックアップをとるの に、あなたならどうする?魅力的で新しいバックアップ装置、Ecrix 社の VXA-1 テープドライブについて Adam が詳しく調べた今週号を読んでみよ う。Joe Clark 氏の身体障害者のためのアクセシビリティ 2 回目は、Mac で使用可能な製品を取り上げる。そして今週のニュースは、Apple が新 iMac と新 G4 Cube を発表し、iTunes 1.1 をリリースし、そしてひっそ りと iReview をゴミ箱に捨てた。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/26-Feb-01

(翻訳:敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)
(  :蒲生 竜哉 <gamo@lib.bekkoame.ne.jp>)
(  :飯橋 真紀 <k-m611@ma4.seikyou.ne.jp>)

新型 iMac、Macworld Expo Tokyo での呼び物に -- 東京の Macworld Expo においての基調講演で、新型 Mac で選択できるメディアドライブと して CD-RW を採用するという移行を Apple が継続すると Steve Jobs 氏 は言った。Apple の iMac シリーズは Indigo と Graphite モデルの他に、 サイケデリックな Blue Dalmatian と Flower Power のデザインが加わる。 400 MHz の標準モデル(900 ドル、CD-ROM ドライブ搭載)とハイエンド の 500 MHz と 600 MHz モデル(1,200 ドルと 1,500 ドル、CD-RW ドラ イブ搭載)が入手可能で、今や iMac ファミリーは Apple の「デジタル ライフスタイル」推進の中核である。興味深いことに、DVD-ROM ドライブ はローエンドの 450 MHz Power Mac G4 Cube(1,300 ドル)に搭載されて いるにもかかわらず、今のところ iMac には搭載されておらず、Power Mac G4 と G4 Cube へは BTO オプションで選択可能だ。新しい G4 Cube モデルは 1,600 ドルと 2,144 ドルで(標準モデルの 64 MB に対し、そ れぞれメモリ 128 MB と 256 MB)、CD-RW ドライブを搭載し、さらにハ イエンドユニットには Nvidia GeForce2 MX ビデオコントローラと 60 GB のハードディスクも搭載されている。

<http://www.apple.com/imac/>
<http://www.apple.com/powermaccube/>
<http://www.nvidia.com/products/geforce2mx.nsf>

Apple は 22 インチのフラットパネルの Cinema Display を 1,000 ドル 値下げしたことを発表し、今では 3,000 ドルである。Jobs 氏は Nvidia GeForce3 グラフィック処理装置(GPU)についても明らかにした。これは、 毎秒 8,000 億以上の演算を行ない 3D オブジェクトをレンダリング処理 する Mac 初のハイエンドチップで、4 月から Power Mac G4 の BTO オプ ションで入手可能になるだろう。忘れられそうだったが、Apple の製品ラ インのトップである、CD と DVD に書き込みができる SuperDrive 搭載の 733 MHz Power Mac G4 ミニタワーが出荷中だ。[MHA]

<http://www.apple.com/displays/acd22/>
<http://www.nvidia.com/products.nsf/geforce3_mac.html>
<http://www.apple.com/powermac/>

iTunes 1.1 がサードパーティ製 CD-RW ドライブに対応 -- 先月サンフ ランシスコで開催された Macworld Expo で約束した通り、Apple は iTunes 1.1 を先日リリースした。今回のリリースでは安定性が向上した ほか、キーボードによるコントロール、さらには 20 以上のサードパーティ 製 CD-RW ドライブによるオーディオ CD 書きこみのサポートが追加され ている。iTunes によりユーザーはプレイリストに載っている MP3(ある いは iTunes がサポートする他のオーディオフォーマット)ファイルをオー ディオ CD に焼くことができる。こうして作られるオーディオ CD は最長 74 分の標準のもので、一般的なオーディオプレイヤーで再生可能だ。今 では何時間分もの MP3 ファイルを 650 MB のデータ CD に書き込み、コ ンピュータや CD-MP3 プレイヤーで再生することも可能だが、iTunes で はこうしたデータ CD を作ることはできない。データ CD を作るためには Apple の Disk Burner(CD-RW を内蔵した最新の Mac 用)か、Roxio 社 の Toast や CharisMac 社の Discribe(その他のサードパーティ製 CD-R および CD-RW ドライブ用)などのサードパーティ製ソフトウェアが必要 だ。iTunes 1.1 は Apple から無料でダウンロード可能だ。ダウンロード サイズは 3.6 MB、最低でも Mac OS 9.0.4(CD を焼く場合には Mac OS 9.1)が必要。[GD]

<http://www.apple.com/itunes/>
<http://asu.info.apple.com/swupdates.nsf/artnum/n11901>
<http://www.roxio.com/en/products/toast/>
<http://www.charismac.com/Products/Discribe/>

賞賛しないうちに iReview を失うことに -- Apple 社は Mac 中心イン ターネット戦略の一環として iCards や iTools と共に一年少し前から展 開された iReview の幕を静かにおろした( TidBITS-512 の「Apple 社 の“i”戦略は“i”ンプレッシブと“i”エる」参照)。ユーザーフィー ドバックや評価を備えた Web サイトレビューを提供することで、iReview は新たなインターネットユーザーのための一つの足掛かりとなるはずであっ た。しかし残念なことに、iReview は他のレビューサイトが陥った同じ落 穴にはまってしまったようだ。それは、単にレビューすべき Web サイト があまりにも多すぎたことと、とりわけ Apple のようなハイテク企業に おいては経済的引き締めが叫ばれている状況で、直接的な利益をもたらさ ない仕事に従事する一流の編集スタッフへの費用は容易にまかり通るもの ではないことから生じたものだ。子どもや学校向け推薦 Web サイトをお 探しの方は Apple の EdView に目を向けるかもしれない。それは、随所 に古臭さが感じられ、たくさんのレビューあるいはフィードバックに欠け るが、多くの人々が有用であると認めているものだ。[GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05763>
<http://edview.apple.com/>

アンケート結果:貴方の望む TidBITS の形式は? -- 我々は、TidBITS をメール受信する際のオプションを追加することを考えている。そんなわ けで、先週、別の形式への要求を測るため読者にとっての最適な TidBITS 受信方法をお尋ねした。2400 人余りの読者から回答を頂いたが、圧倒的 多数(75 %)の方々が、現行通りの方法、つまりプレーンテキスト形式メー ルでの全文配信を希望すると答えた。一方で、25 % の方々は可能ならば 別のオプションを望んでいた。その内のおよそ 15 % は HTML 形式での全 文発行を求めるもので、およそ 10 % は HTML 形式にしろテキスト形式に しろそれよりも簡潔なアナウンスを望む意見であった。我々はメール購読 オプションを 追加する ことを考えていると明言したのだが、プレーン テキスト編集を廃止するつもりだと思われた方々もいた。そうでは ない 。 需要がある限り、我々はプレーンテキスト形式のメールメッセージの発行 を継続する予定だ。追加されるオプション購読がどんな形式をとるのかは まだ未定だが、我々の努力目標を明確化するより有力な見解を得た次第で ある。皆様のご協力に感謝したい。[GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=71>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1300+1302>


Ecrix 社製 VXA-1 テープドライブ:高速・大容量バックアップ

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :林部 清実 <hayashibe@mvb.biglobe.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

大容量ハードディスクは、最近の MP3 や QuickTime ムービーの世界では 大いに頼りにされているものだ。しかし、これらは、確実なバックアップ 方法の開発をより難しいものにしている。私が最初に 2.6 GB の DAT ド ライブを購入した頃を振り返ると、その頃は、ちょうど自分がメインに使っ ている Mac に最初の 1 GB のハードディスクを追加したところであり、 自分のネットワーク上に、オンラインで 700 MB 以上のディスクを持った Mac は他になかった。Retrospect のインテリジェントなスナップショッ トによるバックアップ方法や差分バックアップを使えば、2、3 本のテー プで 1 ヶ月ほどもっただろう。今では、ただ最初のバックアップをとる のに 8 本の DAT テープを使い、13 本のテープのバックアップセットの 1 本目からもう 1 度使わなければならなくなるまでに約 1 ヶ月しか持ち 堪えられないのである。もっと悪いことには、8 本のテープに書き込みし てベリファイするためには入れ替えが必要となるため、初期バックアップ を終えるのに 4、5 日かかる。その間、私がやっている仕事の大部分がデー タ保護されていないままになっているのだ。

Ecrix(“エクリー”と発音する)社の方々から同社の新製品 VXA-1 テー プドライブの評価用機器を私に送ってくれるとの申し出をいただいた時、 このチャンスに飛び上がってしまった。しかし、私は彼らに、真剣に評価 するのには長い時間がかかるということを警告をしておいた。バックアッ プ機器を真にテストするということは、実世界のコンディションの下でそ の機器がどのように性能を出すかをみることだからだ。現在、私は約 8 カ月間 VXA-1 テープドライブを使っている。そして、この VXA-1 を正し く理解できたと思う。

<http://www.ecrix.com/>

大容量で高速 -- Ecrix 社は自社のテープ技術を大事にしている。 VXA-1 で書かれた特殊テープは、その技術のおかげで他の手法によるもの よりも信頼できて寿命も長いと思われる。私はデータを失ったことはない けれども、耐久性の高さについてコメントはできない。テストテープを煮 え立ったコーヒーや凍りつくような水に浸すようなことはなかったからだ。 私の目に VXA-1 が特別に映るのは、データが大量に入るから、そして目 もくらむ速さで読み書きできるからである。

<http://www.ecrix.com/tour/>
<http://www.ecrix.com/extreme/overview.cfm>

Ecrix 社によれば、同社の V17 テープには 66 GB のデータが入る(ハー ドウェア圧縮を伴うが)。また書き込み速度は毎秒 6 MB(毎分 360 MB) とのことで、これにもハードウェア圧縮が効いている。バックアップ装置 は生の速度や容量で論じるのが一般的にはよいので、そうすると容量は 33 GB、速度は毎秒 3 MB(毎分 180 MB)となる。というのは、圧縮から 少しも利益が得られないからではなく、ドライブが期待を下回るよりも超 えるものだったほうが幸せだからである。

たとえば私が SCSI 版 VXA-1 を 450 MHz Power Mac G4 に入れた Adaptec 29160 SCSI カードと組み合わせた時、Retrospect が示した書き込み速度 は毎分約 250 MB だった。これは非圧縮時の毎分 180 MB という値より充 分に高いが、Ecrix 社の言う毎分 360 MB よりはるかに低い。この記事で は生の速度と容量を用いることにする。あなたが VXA-1 を他のテープド ライブと比べる時には同様にして正しく比較すべきである。

仕様だけを見ると、VXA-1 はしっかりしたバックアップ装置のようだ。大 容量で、高速で、そして信頼できる。これが私の結論だが、先に弱点を述 べたい。VXA-1 はとてもよい製品だが完璧ではないし、こうした極めて魅 力的なバックアップ装置を検討している人にとって私が学んだことはたぶ ん役に立つだろう。

速度についての留意点 -- 毎分 250 MB バックアップするというのはよ だれが出そうな話だが、ほとんどの場合そんな速さは見られないだろう。

VXA-1 を高速な Mac につながなければならない。最初私は古い Power Mac 7100 につないだが、ローカルハードディスクのバックアップでさえ たかだか毎分 30 MB でしかできなかった。そのうえ VXA-1 の 68 ピン高 密度コネクタを 7100 の 25 ピン SCSI ポートへつなぐのに特殊なケーブ ルを注文する必要があった。私の Power Mac G4 に入っている安価な Adaptec 2930 SCSI カードでも毎分 200 MB だったのだが。もし古めの Mac をバックアップ専用にするつもりなら、VXA-1 との組み合わせについ ては考え直したほうがよいかもしれない。(Ecrix 社は最近 FireWire 版 ドライブをリリースした。このドライブは SCSI 版を高速な SCSI カード につないだ時と同程度の性能を出すそうだ。)

VXA-1 自体が性能のボトルネックになることはめったにない。他のマシン をネットワーク経由でバックアップする場合、ネットワーク速度とバック アップされる Mac の速度が性能に著しく影響する。ネットワーク上のよ り速い Mac、たとえば私の PowerBook G3 と Tonya の iBook だと、それ ぞれ毎分 53 MB(10 Mbps の有線 Ethernet 経由)と毎分 40 MB(11 Mbps の AirPort 無線ネットワーク経由)に達する。私たちの Performa 6400 は Ethernet 経由で毎分 30 MB が関の山だし、古くなった SE/30 は毎分5 MB あたりをうろうろしている。このようにネットワークバック アップの遅さを VXA-1 のせいにはできない。しかしネットワーク速度や バックアップされる Mac を速くすることで問題を解決できるのは事実で ある。さらに現実的には、これは初回のバックアップに関して問題となる 場合がほとんどだ。差分バックアップを用いれば、毎回コピーされるデー タははるかに少ないからである。

容量についての留意点 -- 容量 33 GB について検討するとき、またい くつか留意点がある。 まず第 1 に、Ecrix 社は実際には、3 種類の異な る容量のテープを販売している。30 ドルの V6 カートリッジは実質容量 12 GB である。45 ドルの V10 カートリッジは実質 20 GB の容量を持っ ているし、私が使用している 80 ドルの V17 カートリッジはテープの長 さが最大であり、実質容量 33 GB である。20 GB の V10 は少しだけギガ バイあたりのコストが経済的であるが、私は余分に容量を持つ V17 に少 しくらい多くお金を払うことは惜しくない。

<http://www.ecrix.com/products/VXAtape-desc.cfm>

前述したように、ほとんどすべてのテープドライブは 2 対 1 のハードウェ ア圧縮率を主張している。その主張は比較的、スダンダート形式のドキュ メントにはあてはまるが、我々が現在使用している最も大きなファイルの 多く(MP3、QuickTime ムービー、JPEG グラフィックス)は、元々すでに 圧縮されている。たとえばバックアップデバイスまたは Aladdin 社の StuffIt Deluxe のようなプログラムで使用される可逆的圧縮ルーチンで は大きなファイルを 2 対 1 では圧縮できない。そして、最悪のケースは ファイルがわずかに大きくなってしまうかもしれない。

しかし、バックアップテープの容量を奪いとってしまうまだ他の問題があ る。どんなテープドライブを用いても、スペースの最適使用のために、コ ンピュータからのデータ転送でドライブを待機させたくないだろう。ほと んどのテープドライブは、待機中に「パッドブロック」を書き込む。とい うのもドライブは停止、巻き戻し、保存、バックアップ速度を速めること や再書き込みを始めることよりパッドブロックを書き込む方が速いのであ る。しかし、VXA-1 は違う。データ待機中にテープ動作を停止させるが、 依然として古いデータと新しいデータ間に「スプライスポイント」を書き 込まなければならない。そのため多くのスプライスポイントが集積される ので容量は減る。もし遅い Mac を使用しているか、またはネットワーク でバックアップをしているのなら、スペースをいくらか無駄にしてしまっ ていることがあるかもしれない。

私はまさにこれら 2 つの問題が組み合わさった事態に直面した。私はほ とんどのバックアップを 10Mbps の Ethernet 経由 で行っているので、 時間がかかってしまう。だから VXA-1 を PowerMac 7100 から私の Power Mac G4 に移して初めて毎分 25 MB をはるか超える速度でバックアップす ることができた。さらに悪いことに、我々の Performa 6400 のファイル サーバーの約 9 GB のファイルは MP3 である。言うまでもなく、私は知 らずにかなりのテープスペースを無駄にしていたし、私のテープが約 29 GB だけしか保存できなかった時は腹が立った。しかし、Ecrix 社のテク ニカルサポートの説明でやっと私の VXA-1 の使用方法の悪さを認識した。

2 つの解決策を考えた。第 1 に、MP3 をテープにバックアップするので はなく、CD-R に焼きつけることである。CD-R はあるレベルのパックアッ プができるし、友人からのクリスマスプレゼントの Philip 社の CD-MP3 プレイヤーで再生できる。第 2 に、VXA-1 内の構成設定をいくつか変更 するのに VXATool といわれる Ecrix 社のプログラムを使用することがで きる。オプションのひとつはドライブがスピードより容量優先になるよう に設定できる(おそらく V17 テープは最大 33 GB の容量であるが、スピー ドが優先される場合は 20 GB になる)、だから私は容量が優先になるモー ドに変更した。そのため Power Mac G4 ハードディスクの初期のバックアッ プスピードは毎分 250 MB から毎分 135 MB に落ちたが、その後のインク リメンタルバックアップと私のすべてのネットワークボリュームのスルー プットに影響はなかった。しかし、私がそれぞれのテープにさらにどの程 度データを書き込めるか判断できるほど十分に長く使用してはいない。残 念ながら VXATool は古風なコマンドラインのプログラムである。容量優 先にするコマンドは「1 capacity y」である。

その他検討事項 -- 当初は VXA-1 をサーバルームの 7100 から私の机 のところにある G4 に移すのは気が進まなかった。というのは、 Retrospect のバックアップサーバスクリプトが常時動いている状態にし ておきたい一方、必要以上にファンの音を耳にするのが嫌だったからだ。 ところが心配は無用で、Retrospect は毎晩 11 時に自動的に起動し (Retro.Startup 機能拡張のおかげ)、ネットワーク上にあるデータをす べてバックアップし、翌朝すべてが順調に運んだことを確認してから終了 しても文句一つ言わない。より重要なこととして、VXA-1 のファンは音こ そけっこう大きいものの、必要な時にしか回転しないのでほとんどの時は 無音だということがある。

VXA-1 の筐体はやや大きめだが、ルックスは悪くなく、縦にも横にも置く ことができる。前面にある 4 個のライトが色や点滅の仕方をあれこれと 変えて様々なメッセージを伝えてくれる。残念なことに、ライトの解読方 法は Ecrix の PDF マニュアルにしか記載されていない(紙の Getting Started カードは用意されているのだが)。

ライトを解読する事態になったことは 2 度ほどある。一回目は価格 35 ドルの特別なクリーニングテープでヘッドを掃除すべきだと教えてくれた。 二回目はもっと深刻だった。私が最初に受け取った製造初期のモデルが動 かなくなってしまい、ライトが問題があることを知らせてくれたのだ。 Ecrix のテクニカルサポートに相談しながら問題を解決しようと試みたの だが、ファームウェアのアップデートも効果がないことがわかった時点で、 Ecrix はすぐに今手元にあるユニットと交換してくれた。このユニットは その後一度だけの例外を別として、問題なく動いてくれている。

その例外は、私がまだ Power Mac 7100 を使っていた頃で、テープへの書 き込みが行われている時に何かが原因でマシンがクラッシュした。 Sophisticated Circuits 社の Rebound が Mac を再起動したのだが、 VXA-1 はまだテープに書き込みを続けていると勘違いしたのだ(これ以外 のクラッシュではこんなことはなかった)。動作を止めることも、テープ をイジェクトすることすらできなくなった。Ecrix の説明によると、こう いう場合に VXA-1 はテープに記録されたデータのディレクトリを書き込 み、電源を一度切って再度入れた場合にも何をバックアップしようとして いたかを思い出すことができる。この場合には何らかの理由でこのディレ クトリの書き込みが完了しなかったのだと考えられた。そこで、Ecrix の テクニカルサポートは秘伝の技を教えてくれた。前部にあるイジェクトボ タンを 10 〜 15 秒間押し続けると、VXA-1 はテープを吐き出してくれる。 このテープは消去して新しいバックアップを書き込んだほうがいいのは言 うまでもない。データがいい状態にあるとは思えないからだ。

購入指南 -- こうしたトラブルはあったにせよ、実際に VXA-1 と 8 ヵ 月間暮らした後、むしろ以前よりも自信をもって VXA-1 をお薦めするこ とができる。Ecrix のテクニカルサポートは私の問題を解決してくれただ けでなく、 なぜ 問題が発生したかも説明してくれたのだ。私にとって、 自分のシステムがどのように、またなぜ動くかを知っていることは大切な ことなのだ。このドライブには不測の事態にも確実に動作してもらわなけ ればならないのだから。

VXA-1 のギガバイトあたりのコストは非常に安いが、ドライブ本体は家庭 内ネットワークや小規模なオフィス環境には安いとはいえない。価格は内 蔵か外付けか、FireWire か SCSI か、Retrospect Desktop が付属するか Retrospect Server か、などによって 1,000 ドルから 1,500 ドルとなっ ている。Ecrix はオプションを削った構成も用意はしているが、必要なも のをけちってはいない。最も安い最低限のパッケージでも 35 ドルのクリー ニングテープと 80 ドルの V17 テープが含まれている。そのうえ、どの パッケージでも 30 日間無料でお試しが可能だ。

<http://store.ecrix.com/cgi-bin/Ecrix.storefront/1704575581/Catalog/1020>

家庭や小規模なオフィスでは、OnStream 社の 25 GB と 15 GB(いずれも ネイティブ容量)の Echo テープドライブが VXA-1 のいいライバルにな るだろう。Echo は USB、FireWire、それに SCSI のバージョンが用意さ れている。ドライブ本体の価格は、特に 15 GB の USB ドライブだと VXA-1 よりはるかに安いが、テープの容量は低く、スピードも遅く、15 GB テープのギガバイト当たりのコストは VXA-1 の 33 GB テープよりも 高い。OnStream 製ドライブの信頼性や使いやすさについてはコメントで きない。

<http://www.onstream.com/>

また、将来の拡張性を考えて、Ecrix は VXA-1 を 1 台あるいは 2 台に 15 本入りのテープローダを組み合わせた VXA AutoPak も用意している。 値は張るが、内容的には決して高くはないし、最初は小規模に始め、後に なって拡張していくことがメディアの種類を変えずに行えるのだ。

わずかな不安があるとすれば、Ecrix にしても OnStream にしても複数の メーカーがメディアとメカニズムを製造するような業界標準になっていな いことがある。いずれかが消滅してしまい、新しいメディアが必要だった り、バックアップしたデータを取り出すためにメカニズムを買い替えなけ ればならないユーザーを見捨てることになってしまうという心配はあるだ ろう。どちらの技術も業界標準にはなっていないので、どちらも同じぐら い脆弱であるといえ、この点を真剣に心配する方はほかを当たるか万が一 の事態に備えておく必要がある。

いずれにせよ、私は VXA-1 ドライブに満足しているどころか、以前の古 くて遅い DAT ドライブと山積みになったテープと比較すると大いに幸せ だ。古すぎるハードウェアのためにバックアップ戦略に問題が出てきてい るなら、VXA-1 を 30 日間試してみることをお薦めする。あなたの問題も、 私の問題と同じぐらいあっさりと解決されるかもしれない。


Mac とアクセシビリティ:対応策

by Joe Clark <joeclark@joeclark.org>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)

先週、視覚や聴覚に障害を持っていたり肢体不自由であったりする人が Mac を使おうとするとどんな不便にぶつかるかについてお話した。すなわ ち、Macintosh におけるアクセシビリティは衰退の一途をたどっており、 Mac OS X の登場により良くなるどころか悪化するかもしれない。そして、 Windows が載ったマシンのほうが Mac よりもずっと障害を抱えた人にや さしいというのが現状だ。( TidBITS-568 の「Mac とアクセシビリティ: エデンの園の課題」を参照いただきたい。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06311>

朗報 -- まず、Mac には、一貫したユーザーインターフェース、ネット ワークの簡単さ、アプリケーションやシステムの拡張機能をインストール したり外したりする作業の手軽さ、見た目の美しさなどもともと Windows よりも優れている部分があり、それらは多くの身障ユーザーにとっても非 常にありがたいものである。そして、音声出力(および機能限定ではある が音声認識)機能を始めから搭載しているなど明らかに上を行っている部 分がある。

障害を持った同僚、社員、友人、親戚などに Mac を使ってもらうような 必要ができても、だいだいはなんとかなる。Windows よりも選択肢の数は 限られるが、おおむねどんな障害を持った人が使うにしても、障壁を取り 除くまたは低減する何らかの手段がある。

Mac、Windows を問わず補助用の支援製品などを探す場合は、歴史のある 雑誌かつ Web サイトを作っている Closing the Gap 社でまず情報集めを すべきだ。同社には検索可能な広範な情報がある。

<http://www.closingthegap.com/rd/>

肢体不自由 -- 反復ストレス障害や多発性硬化症などのためタイプやマ ウス操作が難しい場合は、Apple 社製のアクセシビリティ・ソフトウェア が手を貸してくれる。これは、Mac OS の CD-ROM に収録されているので、 カスタムインストールすればよい。また、当該ファイルは Apple のサイ トから直接ダウンロードすることもできる。

<http://www.apple.com/education/k12/disability/easyaccess.html>

そのなかで特に便利なユーティリティが Sticky Keys と Mouse Keys で ある。Sticky Keys を利用すると、モディファイアキー、文字・数字キー と順番に一つずつキーを押せばよくなるので、キーを同時に押さなくてす む。たとえば、Command を押して、次に shift キー、それから Q キーと いった具合に。(Command + Z のようにキーが近くにあるためなどで)モ ディファイアキーと別のキーを同時に押すことができてしまったりすると、 Sticky Keys が自動的にオフになるので、本当は可能な操作ができなくなっ てしまうという腹立たしい事態になる。Mouse Keys を使うと、テンキー でマウス操作ができるようになる。(テンキーのないマシン用に Mouse Keys for PowerBooks という類似ユーティリティもある。)しかし、こう いった Apple 製のユーティリティは最低限のことしかできないのが常で あるし、ここ 5 年ほどはほとんど改善されていない。

サードパーティからでている製品の方が優れているかもしれない。Tash 社製の 100 ドルの SwitchClick はずんぐりした円筒形の大きめの装置で マウスの代替となるものだ。これと 275 ドルの MouseMover ソフトウェ アを併用すれば、クリックする、押したままにしておく、単に動かしたい ところにマウスを動かすといったマウスでの作業をコントロールできるよ うになる。

<http://tashinc.com/catalog/ca_switch_click.html>
<http://tashinc.com/catalog/ca_mouse_mover.html>

SmartClick というマウス代替ソフトウェアが RJ Cooper 社から 100 ド ルで出ている。これは「Dwell Selection」という技術を利用したもので、 対象となるところにあるカーソルを移動させて、画面に表示されている SmartClick のメニューから、クリックや、ダブルクリック、クリック & ドラッグなどの操作を選択して実行させる。この機能を利用するためには、 マウス、トラックパッドが必要となる。また Tash 社製の SwitchClick のようなマウスの代替装置でもいいし、さらには Origin Systems 社製の HeadMouse(USB ケーブル付で 1,890 ドル)でも利用できる。

<http://rjcooper.com/smartclick/>
<http://www.orin.com/access/headmouse/>

HeadMouse では、簡単に額に付けることのできる小さなシルバーのドット を用いる。モニターもしくは CPU にすぐ上に置いた HeadMouse ハードウェ アが、双方向赤外ビームを送り、額についているドットの位置を測定する。 これにより、頭を動かすことで、通常のマウスの動きの代わりになる。 HeadMouse と SmartClick を併用すれば、手足ともに麻痺している方も、 頭の動きでカーソルを動かし、通常のマウス操作すべてを実行できように なる。

重度の肢体不自由でない方には、タイプができるようになる特製キーボー ドがある。たとえば、Don Johnston 社はキーボードとマウスを組み合わ せた Discover:Kenx(ディスカバーコネクツと読む)を 780 ドルで出し ている。大きなサイズのキーボードが必要ならば、同じく Don Johnston 社製の 500 ドルの Discover:Board というものがある。

<http://www.donjohnston.com/catalog/disked.htm>
<http://www.donjohnston.com/catalog/disbrdd.htm>

また、発想は Apple の Key Caps ディスクアクセサリと似ているオンス クリーンキーボードを使うという選択肢もある。RJ Cooper 社製の 100 ドルの OnScreen などがあり、支援用ハードウェアとともに利用する。

<http://rjcooper.com/onscreen/>

聴力障害 -- 耳が聞こえないもしくは重度の難聴であるあるという理由 で、コンピュータを使うのに必要になるものはほとんどない。この頃は Napster などが元気な時代ではあるが、おおむねコンピュータは視覚によっ てコミュニケーションを行う無音のデバイスである。それどころか、聴力 障害者にとってコンピュータはコミュニケーションを行うためのアクセシ ビリティとなっている。まったく耳を使わなくともメールやインスタント メッセージのやりとりができるのだから。

<http://www.wired.com/news/print/0,1294,33736,00.html>

音が大切だという場合は少しだけある。たとえば、Mac では、Sound コン トロールパネルで警告音のボリュームをゼロにして、警告音が鳴る代わり にメニューバーがフラッシュするようにできる。

マルチメディアは、障壁として居座り続けているし、今やマルチメディア のインターネット進出は拡大し続けている。この問題とその対応策につい ては今度の機会に記事にしよう。

視力障害 -- コンピュータを使うことに関する障害のうちで最も影響の 大きいのは視力障害である。Palm からタブレット型コンピュータ、イン ターネット冷蔵庫にその他もろもろ、形は千差万別であっても現実の世界 では、たいていコンピュータといえばすなわちディスプレイである。もし ディスプレイが見えないとしたら、どうやってコンピュータを使うのであ ろうか?

もし視力障害が比較的軽度であれば、スクリーンを拡大できれば事は足り る。無償の Apple ユーティリティ CloseView は最低限の拡大機能を提供 してくれるが、得られるものは値段相応でしかない。これに替るものとし ては、Mac 用では唯一のスクリーン拡大ツールともいえる Alva Access Group から出されている 295 ドルの InLarge をお勧めする。これには、 16 段階の拡大レベル、スクリーンの拡大部分がどのように動くかを制御 する 3 個のセッティング、拡大された部分だけを表示する機能等々があ る。

<http://www.aagi.com/aagi/inlarge.asp>

多くの視覚障害者にとっては、明るい白の背景に暗色のテキストというの が一番耐えがたいという。ほんの一握りのアプリケーション - Web ブラ ウザ、WordPerfect、Eudora - だけが背景と前景の色の選択を可能にさせ てくれるが、ほとんど標準といえる Microsoft Word は白上の黒、または 青上の白のどちらかの選択しか許さない。Window Monkey ユーティリティ を使えば、Finder ウィンドウの背景色とパターンを指定できるようにな る。

<http://www.tigertech.com/monkey.html>

もしモニタが実際に見えないほど視力が悪ければ、スクリーンリーダーと 呼ばれるものが必要となる - これはスクリーン上のテキスト、メニュー、 アイコン等々を読上げてくれるプログラムである。残念なことに、 Macintosh 用のスクリーンリーダーは実質一つしかない。Alva Access Group から 700 ドルで出ている OutSpoken 9 である。

<http://www.aagi.com/aagi/outspoken_products.asp>

スクリーンリーダー技術は Windows の世界では進化しておりかつ競争的 でもある。ここには 3 つの大きな名前があり - Jaws、Window-Eyes、そ して IBM Home Page Reader - いずれも Web サイトを解釈でき(精度は まちまちだが)かつ標準アプリケーションソフトウェアのちょっとしたし かけや機能も解釈してくれる。

<http://www.hj.com/JAWS/JAWS.html>
<http://www.gwmicro.com/windoweyes/>
<http://www-3.ibm.com/able/hpr.html>

対照的に、多少時代遅れになった Macintosh 用の OutSpoken は HTML を 解釈できない。Alva Access Group の Lou Grosso 氏によれば、 OutSpoken 9 は 「単にスクリーン上にあるテキストを左から右に読むだ けであるが、2001 年の後半にリリース予定の OutSpoken X では Web と HTML アクセスは大幅に改良されるであろう」。Alva Access Group はさ らに OutSpoken を Microsoft のソフトウェアと一緒に使用しないよう強 く警告している。もちろん Microsoft の製品に対応する他のソフトウェ ア代替品は存在するのだが、それらを使うということ自体、協調環境でド キュメントを扱う能力を制限することとなる。現実の世界では、スクリー ンリーダーを必要とする人は、そして全盲の人はほとんどすべてそうであ り、誰でも Windows を使った方が良いというのが悲しい真実である。

<http://www.aagi.com/aagi/faq_osm9_applic.html#1>

Windows で出ているものと比較できるフル機能の Mac スクリーンリーダー は OutSpoken がただ一つあるだけであるが、RJ Cooper 社からは盲目の 子供用の一種のミニスクリーンリーダーである 95 ドルの KeyRead が出 ている。他には、AV Mac 時代にまでさかのぼる一つの古い Apple ユーティ リティが samizdat フォームでオンラインで入手可能である。それは HearIt で、ほとんどすべてのアプリケーション上でほとんどいかなるテ キストでも選択でき、そして Macintosh スピーチアウトプットを使うこ とでそれを聞くことができる。

<http://rjcooper.com/keyread/>
<http://www.ldresources.com/tools/shareware.html>

障害を持つ人々には、Mac プラットフォーム上では適応支援技術に関して は、ほとんど選択肢はない。Mac でなければならない以上に Mac を使う ために生ずる障害のほうが多い。とはいっても、障害を持つ Mac 愛好者 が完全に見捨てられしまったわけではない。Apple 社が、すべてのフォー ムでのアクセシビリティを積極的にサポートし、自己のハードウェアとソ フトウェアを改善し、Mac OS と Windows の間に存在する技術的ギャップ を縮めるよう開発者を支援する戦略的(そして、時とともに重要性を増す 法的)重要性を認識する期待を抱かせるものが見えてきている。

[Joe Clark 氏はトロント在住の元ジャーナリストで、障害に関する分野 に 20 年間たずさわり、執筆し、働いてきた。アクセシビリティに関する 多数のオンラインリソースを彼の Web サイトで読んでみよう。]

<http://joeclark.org/access/>


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