TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#570/05-Mar-01

インターネットを介して他の人と書類の作成などをやった経験はないだろ うか。はた目で見るよりも大変な場合が多いものだ。そこで、TidBITS で はどうやっているかや、書類作成の共同作業を状況に応じてうまく機能さ せるにはどうすればよいかについて、今週から Adam が連載記事を開始す る。また、久々に Louise Bremner 氏が TidBITS に寄せてくれた記事、 Macworld Expo Tokyo のレポートをお届けするとともに、Macintosh 専門 誌としては古株の MacWEEK が姿を消すことになったニュースをお伝えす る。

目次:

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MailBITS/05-Mar-01

(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)

MacWEEK 紙 MacCentral に併合 -- プリントバージョンで 11 年、そし て eMediaweekly へと変換(ただこれ自体はたった 5 カ月しかもたなかっ た)してからさらに 3 年を経て、MacWEEK 紙はついに最後を迎えた。今 日付けで Mac Publishing 社は MacWEEK 紙のコンテンツを MacCentral のサイトに併合する。Mac Publishing 社が MacCentral を買収したとき、 MacWEEK 紙が焦点としていた業界ニュースの分析記事は、MacCentral の 強調する頻繁にアップデートされるニュースと Macworld 誌の論説、特集、 それにレビュー記事との間にうまくとけ込むのに難しさがあった。オンラ イン MacWEEK 紙が昔のプリントバージョンが持っていた強い存在感を失っ て久しいが、それでもそれが消えていくのを見るのは残念であるし、Mac Publishing 社のオンライン部門のリストラに伴いレイオフされた 7 人の 従業員の人たちがうまくやっていけることを祈るものである。これからも MacWEEK 紙は我々の記憶の中に残るであろう - 明らかに誰もが真似した 無料購読の形態の罪のない嘘、ここにでるのは重要な噂だと思わせたコラ ム Mac the Knife、そしてこの業界すべてを震撼させた MacWEEK 誌編集 者 Robert Hess 氏の死。[ACE]

<http://macweek.zdnet.com/2001/02/25/0203requiem.html>
<http://macweek.zdnet.com/2001/02/25/macweek.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04890>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05272>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05425>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01175>


Macworld Tokyo 2001 の感想

by Louise Bremner <log@gol.com>
(翻訳:林部 清実 <hayashibe@mvb.biglobe.ne.jp>)
(  :飯橋 真紀 <k-m611@ma4.seikyou.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)
(  :敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)

Macworld Expo といえば San Francisco と New York が重要視されてい るが、Macworld Tokyo 2001 では 今年一番の記録だった Macworld San Francisco の来場者数をおよそ 2 倍上回る人数を動員した(181,000 人 対 93,000人)。私は今回初めてデジタルカメラを携帯し、いつも使用す る Psion Series 3mx は持って行かなかった。見たことすべての記憶はカ タログと私が撮る写真にかかっていた。この試みは思ったより上手くいか なかったが、まったくの大失敗ということでもなかった。というのは下に リンクされたページの画像から思い浮かべることができる(Ringo MUG と いう東京にある英語版マックユーザーグループもショーについて他の情報 と一緒に何枚かの写真を載せている)。また私は特に目を引いた製品や会 社の URL も挙げている。しかし、中には日本語のページだけで英語のペー ジがないものもあることに注意しよう。

<http://www.idg.co.jp/expo/mw/>
<http://albums.photopoint.com/j/AlbumIndex?u=1375758&a=11785088>
<http://www.ringo.net/mw2001.html>

入場時間は? -- 私はそのままショーへ行けると思って、記載された開 演時間直後に着いた。案内状を読み返して間違いに気づいたのは少し後に なってからだった。例年の Expo では、一般人は基調講演の開始時間と同 時にイベント会場に入ることができた。だから誰もが会場中央に設置され た巨大スクリーンで講演を見ることや、混雑する前にブースを見て回るこ と、またもちろん、どちらも少しずつすることも可能だった。しかし今回 は、基調講演終了時間の午前 11 時 30 分まで入場できなかった。私は講 演会場の後ろから何とか入り込もうとしてみることもできたが、どのみち 後で登録しなければならないということになる。

その代わり愉快なことがあった。それは午前 10 時 30 分までチケットカ ウンターの前で並ぶことから始まった。その間中、メガフォンを持った若 者たち(以降 YMG と記す)が、お釣りが要らないように 2,500 円を準備 しておくことを私たちにひっきりなしに大声で呼びかけていた。しかし、 私は 一万円札で支払ったが女性販売係はまったくむっとしなかった。次 に、午前 11 時 まで予約デスクの前で、囲いの中で並んでいた(その間 もさっきより多い人数の YMG が、5 列になって詰めて並ぶように口やか ましく叫んでいた)。それから午前 11 時 30 分まで入口の前で、もっと 多くの囲いの中で並んだ(そこでは、さらに多くの YMG が、4 列に狭まっ て並ぶように指示していた)。普段はショーでもらう印刷物があるからで きるだけ身軽に準備していくようにしているが、今回はたまたま本を鞄に いれておこうと思い立って良かった。

チェックする製品の一覧を持参したのは間違いのようだった。というのは それを買い物リストのように使ってしまった。私の持論では、ぎっしり詰 まった財布は持ち主をまどわし、射程内の商品のあらゆるいかれた品物に 「ここにカモがいるぜ!」と呼びかけるシグナルを放つものだ。だから私 は T-Zone ブースに向かってジグザクに進んでしまったのかもしれない。 そして、予想以上にパワフルだった Sonnet の G3 アップグレードパッケー ジを買ってしまった。というのは、そのスペシャルパッケージは我々の Power Macintosh 7100 に必要になるかもしれないビデオアダプター付属 で、限定 5 個販売のうちの 1 個であった。もちろん、その後ずっと、か さばるパッケージを引きずりながら歩き回っていたのはおわかりだろう。 本当に愚かなことをしてしまった。

<http://www.sonnettech.com/product/crescendo_nubus.html>

幸い、PowerBook G3 用に主人が欲しがっていた U.S. キーボードは予算 をはるかに超えていたし、それ以外にお目当ての物は見つからなかった。 そこで私の財布のシグナルも消え失せて、後のショーを思う存分楽しんだ。

<http://www.amulet.co.jp/mac/mac.html>

告白タイム -- 少し気が咎めるが白状してしまうと、Macworld Expo に 展示参加している大企業よりも中小企業のほうが、はるかに私の興味を引 くものであった。とりわけ、中小企業が Apple の参入していない分野を 開拓してニッチマーケットをつくっていることを考えるとなおさらだ。大 企業が、巨大なブース代を支払って Expo 疲れした者には嬉しい快適な座 席を提供して、Macworld Expo Tokyo に多大な貢献をしていることは承知 している。しかしながら、彼らの派手で大げさなプレゼンテーションは私 の興味をそぐものであった。

Id East End 社はその中小企業の一つで、去年は数種のキーボードや PowerBook 用のアクセサリをひっさげて登場したが、今年は Arch 43 を 目立つように展示していた。それは、キーボードを使わない時はモニタの 下に収納し作業の邪魔にならないようにできるキーボード棚だ。Arch 43 は今まで見てきたようなセンスのない金属の棚ではなく、木製の上品なアー チ形のもので、色はライトブラウンと漆塗りの赤がある。棚を利用すれば、 使わない時のキーボードを収納するのに十分な広さのスペースができるし、 また Apple の Cinema Display モニタの前脚を置くための上部 2 箇所の くぼみとスピーカを取り付けるための 2 つのホルダがご自慢の代物なの だ。それは、リビングで浮くこともないスマートな家具の一つだ。 [TidBITS 発行現時点では、Arch 43 に関する情報はまだ同社のサイトに 載せられてはいなかったが、上記のとおり、Louise がその姿を写真に収 めている -Geoff]

<http://www.id-ee.co.jp/>

また Mac 用 Matrox の Millennium G400 にも興味を抱いた。それは、2 つの接続口もつビデオカードで G4 Cubes が複数のモニタをサポートする ことを可能にさせた。なんといっても、マルチモニタへのスムーズなサポー トは、Mac 製品が売れる最大の強みの一つなのだ。もう一つの接続口は TV 端子とも繋げることができる。

<http://www.matrox.com/mga/products/mill_g400/home.cfm>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1033>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1225>

さらに、サードパーティのキーボードもすべて展示されていた(面白いが、 あまり有用とは思えない特殊な図柄が表示されたキートップのキーボード も存在した)。どうしても腑に落ちないのは、なぜ Apple Japan は JIS キーボードしか提供しないのだろうか。JIS とは Japanese Industrial Standards の略であって、理論上はこの市場に適切なものであるはずなの だが、代替品をつくる企業の数から判断しても、この実に嫌な配列の使用 に満足してる人は少ないようだ。サードパーティの JIS キーボードも幾 つかあったが、多くはなかった。代替キーボードの大半は、U.S. 規格か、 かな付き ASCII 配列の U.S. 規格であった。Eleking 社は例によって JIS キーボードから U.S. キーボードにより近いものに変えるための多様 なキットを販売しており、かな付き ASCII キーを普通の ASCII キーに変 えるための取り外し可能なキートップのセットも揃えていた。

<http://www.eleking.com/>

未知の領域 -- 私はもし Macworld Tokyo に来なかったらまず絶対に見 ることなどないだろうと思われるアプリケーションに目を見張った - 一 例としては、顕微鏡の頭に搭載出来る CCD カメラがあった。これは、情 報のいっぱい詰まった名刺、野球カード、あるいは結婚記念品として印刷 できるほど小さな画像を Mac か CD-R ディスクに送ることが出来る。

また、私にとっては Windows マシン用の Mac エミュレータである SoftMac 2000 を見る初めての機会でもあった。展示員は世界最小の「Mac」 を誇らしげに説明していた - それは Sony Vaio C1 PictureBook.に搭載 したものであった。これは Amulet 社から日本で販売されている。同社の 通常のブースでは、いかにも技術に長けた風に見える若者がその場での PowerBook アップグレードを行っていた。

<http://www.emulators.com/>
<http://www.sonystyle.com/vaio/picturebook/main.htm>
<http://www.amulet.co.jp/>

Palm 関連 -- 私のお気に入りの PDA は Psion である。しかし最新の Psion は残念ながら Mac とうまくインターフェースしないので、私はい まだ旧型の 3mx を使っているのだが、これは残念なことに日本語機能を 有していない。日本化された Palm のクローンを買ったことはあるのだが、 いまだ使いこなせていない。ということは、Palm 製品は見ることは見る が、基本的には学術的興味からだけある。

私の興味を引いたのは、小さくて可愛らしい「超小型 AC/DC アダプタ」 と、MemorySafe という名前の Palm 機用のバックアップモジュールであ る。これらの物の存在を知っていれば、私の気持ちももっと Palm に傾い ていたかも知れない。そして気を引いたもう一つの物 gMovie Maker があ るが、一体全体ちっぽけなスクリーン上で映画を見たいなどと思う理由は 何であろうか?

<http://www.diatec.co.jp/>
<http://www.genericmedia.com/products.html#maker>

それから、Palm をゲーム機に変えるアタッチメントもあった。一例は、 Visor GameFace で、これは既存のボタンの上にはまるジョイスティック とボタンのコンビネーション製品である。私には、これらのことはすぐ忘 れなければならない必要があり、パンフレットも一切持ち帰らなかった。

<http://www.handspring.com/products/Product.jhtml?PRODID=607&CATID=606>

有能なオペレーター -- 製品のデモは私には到底できない縁のない仕事 なので、それを余儀なくされた人たちには同情してしまう。友達と話し込 んで見込み客を無視する人もいれば、通りすがりの人に突然声をかける人 もいて、そんな時私は驚いてその場を去ってしまう。それら 2 つの両極 端なタイプの中間に、私の注意を引き付け、私を引き込むことに成功する 有能なオペレーターたちがいる。

私が出会った最初の上手なデモンストレーターは、SoftPress Freeway の ブースにいた。ディスプレイを見ていた私にその男の人は、Web サイトを 作ることに興味があるかと尋ねた。 私の答えはすげない拒絶を意味する 「ええ、でも操作をすべて日本語で覚える気はないわ。」だった。すると 彼は Freeway 3.0-J はオリジナルの英語のメニューに切り替えることが できると言って、その特徴を見せるために私を座らせた。それから彼は、 QuarkXPress の経験がある人ならいかに簡単にマスターページを作ること ができるかを見せ、そして次に個々のページへと移った。私は自分がのせ られていると感じていたが、それは楽しい経験だった。とりあえず自分の 写真用に画像をつぎはぎしたような、格好悪い Web サイトを作ろうと漠 然と考えていたが、それには HTML コードを手で書く方法を学ぶしかない のだと思っていた。 彼は私が専用のソフトウェアパッケージに投資する ことは良い案だろうと考えさせた。もちろん世間にはたくさんのパッケー ジがあるが、最初に私の注意を引いたのは Freeway のデモンストレーター だった。

<http://www.softpress.com/>
<http://www.freeway-j.com/>

次に出会ったのは、基本的な CD ラベル印刷パッケージをデモする男の人 だった。最近、Hisago が発売した 5 つの製品の内の1つで、ユーザーが 違う色とパターン、画像でカスタマイズできるテンプレート付きの CD-ROM と特殊な紙がパッケージになった物だった。彼はとても熱心だっ たので、私の古い HP プリンターが光沢紙にまず対応できないというのに、 私はもう少しでパッケージ数個を買うところだった。

<http://www.hisago.co.jp/OP/shiagariMac/>

それと、常におかしな出会いがある。Expo を見てまわる内に、ブースや 製品、デモンストレーターやお客の後ろ姿等の写真をすでにたくさん撮っ たことに気が付き、何か他のなるべく可愛らしい物を探しに行った。残念 なことに、メタリック風船を叩いている小さな女の子の動きは、私のノン フラッシュのシャッタースピードには速過ぎた。次に私は、背の高い椅子 に横になっている動かない犬を見つけた。それは理想的な被写体だった。 ブースの人たちが、あたかもその犬が生きているかのように見えるよう騒 音を立てている間に、私は犬の写真を何枚か撮った。ブースの人たちに感 謝して先に進み、ふと振り返ると、彼らの後ろの大きいスクリーンが目に 入った。それは、ずらりと並んだサムネイル画像のような物を写し出して いた。彼らは私がカメラを持っていて、数回シャッターを押していたのを 見ていたはずなので、私が大容量の Compact Flash カードを持っていて、 写真をカタログにする必要があることぐらい暗示していたはずだ。なのに なぜ彼らは犬を見せびらかす代わりに、製品をデモしなかったのだろうか?

最後に -- 会場を離れる前に Titanium PowerBook G4(すごく好きだけ れど 必要 ないので、あまり欲しいとは思わない)を触ったり、新しい Flower Power と Blue Dalmatian の iMac を見たりした。半透明なボディ から内部をはっきり見ることができない誘惑的なところが iMac の魅力の 一部だと思っていた私は、少したじろいだ。あれらの柄でボディを不透明 にする意味は何なのだろうか?

今年の Macworld Tokyo は Macintosh 業界にとって主要なイベントでは なかったが、悪い Expo でもなかった。日本に多くの真剣な Mac ユーザー がいるということを単に証明したものだった。今年は、より多くの年配者 たちやスーツ姿の人たち、若い家族連れなどが訪れて、来場者の幅が広がっ たように感じられた。事実、会場に入る途中で、あまりにも多くの一般人 の集団が来場者を占めているように思われたので、私は来る日を間違えた のではないかと思った。 けれどもいろいろな意味で、その広いユーザー の幅はここ日本でも世界中でも、まさに Apple が必要とするものである。

[Louise Bremner 氏は東京在住のフリーのテクニカル翻訳者(日本語から 英語)である。]


みんなでやろう:文書作成の共同作業、第 1 部

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

インターネットには、遠く離れた人と、コミュニケーションをしたり一緒 に仕事をしたりできるという優れた一面がある、という話をその道の人か ら聞く。この場合のコミュニケーションは、メール(時としてインスタン トメッセージ)を使って行われるのがほとんどである。文章の作成から完 成までの作業をインターネットで繋がった仲間と一緒にやったことがある 方なら、インターネットを介しての書類の受け渡しが作業全体からすると ごく些細な部分であることや、グループ作業を効率良く行うのがかなり難 しいということをご存知に違いない。

TidBITS では、文書の編集・校閲にみんなでかなりの時間をかけてやって おり(もっとも、実際にオフィスを共有していたりはしないのだが)、私 たちにとって実に効率的な作業の仕組みを編み出した。しかし、各人が様々 な出版物や企業のための記事なども書いているので、共同作業のやり方に ついても多様な体験している。グループでの文書作成作業をうまく行うこ との大変さや、その対処法として採用されているアプローチの多彩さだけ でも常々驚かされる。

今週は、文書作成を共同で行う場合に状況に応じて変わってくる事項を取 りあげるとともに、TidBITS 内ではどのように文書を共有しているかにつ いて詳しくお伝えする。そして次回の記事では、TidBITS 以外の共同作業 で私が経験したやり方をいくつか例に挙げ、それぞれがどのように機能し ていたかお話しよう。今後グループで文書作成などの仕事をする際に迅速 かつ効率的に行うための一助になればと思う。

共同作業のための検討事項 -- 共同で文書を作成する手順を決める際に 考慮しなければならない点がいくつかある。高価で、導入が大変で、使い にくい大仰なツールを利用できない人には特に大切な事柄だ。ここでは以 下のような場合を想定して話をしよう。校閲や編集をしてもらいたい文書 が手元にあるとする。発行に至るまでの間には、何人もの人が文書の「オー ナー」になるかもしれないが、それぞれの過程においては、責任者は一人 しか置かないようになっているとしよう。

どんな状況にもあてはまるような共同作業の方法などないのだから、グー ループが変わればそれに応じたやり方を採用しなければならないというこ とを肝に銘じておいていただきたい。

TidBITS 方式 -- 私たちが採用している文書作成の流れ作業は実にうま くいっている。完璧であるとは言えないし、どんな局面でもうまくいくと いうものではもちろんないが、部分的にでも参考にしていただくためにこ こで解説しよう。

私たちの場合、FTP と AppleShare over IP でアクセスすることのできる 一つのサーバを中心に、小数の校閲者が順番に作業する回覧方式を採って いる。すべての文書は Nisus Writer 文書で、スタイルを使ったマークアッ プはできるものの、Word のような改訂履歴やコメント機能はない。ある 文書が TidBITS の記事となるまでにどんな経過をたどるかをおおまかに 紹介しよう。

1. 誰かが最初の草稿を作成する。その際、TidBITS 発行形式の仕上げ・ 配信用マクロで処理できるように特定のスタイルを適用していく。同じ人 が第一段階のチェック作業も行う。小さな変更点はあまり気にしないが、 重要な変更点は色を付けてどこがどう書き換えられたか他の人がわかるよ うにする。追加されたり変更された箇所は緑で、削除した方がいいと思わ れる箇所は赤で印を付ける。パラグラフ全体についてコメントや質問があ る場合には、パラグラフの下の行に赤で書き込む。テキスト内のコメント と区別するためだ。すべてのコメントには、書き込んだ人のイニシアルが 付けられる。コメントや質問がほんの少しのテキストにだけ関わるもので ある場合、そのテキストに青く印を付ける。コメントと削除対象となるテ キストの両方が赤なのは、いずれも配信直前に自動的に削除するためだ。

2. 第一段階のチェック作業が終わった後、文書はサーバの IN というフォ ルダに入れられる。ファイル名の末尾にはバージョンナンバーとイニシア ルが付けられる。この記事は今 Collaboration.1.ace という名前になっ ており、私一人だけのチェックが済んでいるということを示している。

3. 第二段階のチェックは Jeff Carlson が行うものと仮定しよう。IN に 入っているファイルは誰にも帰属していないので、まず OUT というフォ ルダに移動する(AppleShare over IP を使って Finder でドラッグ ド ロップするか、FTP なら Interarchy の Rename/Move コマンドを使う)。 Jeff はファイル名に Collaboration.1.ace.jlc という具合に自分のイニ シアルを付けるので、このファイルが誰のものであるかはすぐにわかる。 Jeff と Geoff にとっては、ファイルをチェックすることはダウンロード することも意味するが、私の場合はサーバと同じネットワーク上にいるの で直接開くことができる。この点を別とすれば同じルールに従う。Jeff がファイルを OUT に入れている間は、最初のステップで述べた色分けに 従って気が済むまでいじることができる。

4. TidBITS スタッフ以外の人が執筆した記事は、Jeff が Managing Editor として著者に送り返すのだが、ここで少々困ったことになる。 Nisus Writer からテキストをコピーして他のプログラム(たとえば Eudora)にペーストすると、テキストに付けられていた色が失われてしま う。(コメントは色が付いていなくても十分に目立つよう、最初にアスタ リスクを 3 つ付けておく。)面白いことに、Microsoft Word でもこの色 が失われる問題が起きるので、Nisus Writer から Microsoft Word にエ クスポートするという方法も使えない。それに Nisus Writer を使ってい る人は比較的少ないので、元のファイルを送るという方法はあまり役に立 たない。したがって、記事をメールの本文にペーストして送り返し、通常 の返信と同じようにコメントしたり修正を提案してもらうという方法を採 用している。続いて Jeff が手動で変更を加える。修正が少ない場合には これで問題ないのだが、大幅な書き換えになる場合にはファイルを送り返 し、本人に書き換えてもらい、もう一度最初からやり直すということにな る。Jeff の作業が終わったら、ファイルを再度 IN にアップロードし、 ファイル名を Collaboration.2.ace.jlc に変更する。これで第二段階の チェックが終了しており、誰が担当したかがわかるのだ。

5. この間、原稿を知り合いの専門家に送ってざっと目を通してもらうこ ともある。この場合にも記事はメールの本文として送られ、コメントや修 正を加えたうえで返信してもらう。記事を送信した担当者が責任をもって ファイルに修正を反映し、コメントを書き込み、必要に応じてもう一度確 認する。時にはファイル名の末尾のイニシアルが長くなりすぎるため、最 初の方は削除する。

6. Jeff の作業が終わったら、最新バージョンを OUT に入れ、色やコメ ントを含めたテキスト全体を私たちが「コピーファイル」と呼ぶものにペー ストする。これは TidBITS 一号分がそっくり収められることになる原稿 だ。コピーファイルに全部の記事が入った時点で IN に入れられ、同様の 流れで処理されるのだが、ファイル名にイニシアルを追加するのはファイ ルを OUT に入れる段階でだ。というのも、この作業は月曜日に行われる ので、誰がファイルを抱えこんでいるかが常に正確にわからないといけな いからだ。月曜日にはメールや電話を多用して、いつファイルが移動する かを他のメンバーに知らせることになる。こうすればわざわざ IN と OUT を見に行く必要がなくなるのだ。

7. 全作業を通じて、色やコメントはそのまま残される。最終的な配信の 直前に、Geoff Duncan が最後の一読をしたうえで(たいていは声に出し て読み上げるので、近所迷惑になっているかもしれないのだが)、コメン トなど削除対象となるテキストを削除する。

全体として、私たちの方式はシンプルなテクノロジーだけを利用している。 AppleShare/FTP サーバとワープロで作った色つきのテキストだ。何が行 われているかについて混乱がないように、マークアップの規則は意図的に シンプルなものにしている。メールで作業に参加する外部の校閲者に依頼 する場合には、規則を覚えてもらう必要はないし、説明するとしても簡単 に済む。

一方、私たちの方式は小人数のハイテクに精通し、しかも細部への注意力 に卓越した校閲者たちの存在にも依存している。一人でもだらしなかった り規則を守れない人がいたら崩れてしまうのだ。特にファイルを IN、OUT に動かすところでは、他のメンバーの修正を消してしまうことになりかね ないので注意が必要だ。こういう場合により効果的な方法というのもある ので、次回はほかに試した方法を失敗例も含めて紹介しよう。


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