TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#579/07-May-01

Apple 社の新 iBook が欲しくてたまらない?大半の人があなたと同じ状 況だ。Matt Deatherage 氏の新機種の詳細な調査を読み通して、まさにあ なたが欲しているものだと確認しよう。また引き続き Mac OS X の最も重 要なニュースを抜粋し、新たに発売された Mac OS X 10.0.2 や、sudo セ キュリティ問題、そして注目の Mac OS X コンパチブルなソフトウェアの リリースを 2、3 取り上げる。ニュースの中で、昔なじみの Fetch 4.0. のリリースについて特筆できることを嬉しく思う。

目次:

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MailBITS/07-May-01

(翻訳:山下 英治 <vatcanza@fhe.freeserve.ne.jp>)

Fetch 4.0、鎖を外す -- Jim Matthews 氏は、アメリカのテレビのゲー ム番組「Who Wants To Be A Millionaire」で得た賞金で、Dartmouth 大 学から Fetch FTP クライアントの権利を彼のもとに手に入れ、Fetch Softworks 社を設立した。そして現在、 Fetch 4.0 をリリースした。プ ログラムの大幅なアップデートは 1995 年以来初めてである。Jim は Mac OS X に対応するよう 12 年の歳月を経た由緒ある FTP クライアントをアッ プデートした。Mac OS 7.0 までのシステムとの互換性を保ちながら、完 全な Aqua インターフェースを備えている。Fetch 4.0 は、AppleScript、 Keychain、コンテクストメニュー、メディアを見るための QuickTime、 フィードバックのためのテキスト・スピーチ機能を含む現代的なテクノロ ジーをサポートしている。その他の興味深い特色としては、ローカルフォ ルダとリモートフォルダ間で同期させるミラーコマンド、テキストファイ ルやグラフィックファイルを BBEdit と Graphic Converter で作成し、 編集するサポート、Kerberos セキュリティのサポート、割り込みされた ダウンロードのリジューム機能や、再帰的にリストを取ることによってフォ ルダにどれぐらいのデータ量が保存されているかが分かる Get Info コマ ンドなどがある。しかし最も驚くべきことは、ファイルをある FTP サー バから他の FTP サーバへコピーしたり、ウィンドウからウィンドウへと ドラッグして FTP サーバ内でファイルを移動させることができる Fetch の新しい機能である。Fetch は個人で使用する場合、価格は 25 ドルだが、 教育団体または慈善団体には無料でシリアルナンバーが入手でき、複数の コピーに対してサイトライセンスが用意されている。2000 年暮れに Dartmouth から譲渡されたにもかかわらず、2000 年 4 月 30 日以降に購 入したものであれば、バージョン 3.0.3 からのアップグレードは無料で ある。再びこんなに前進した Fetch の発展を見ることができるとは最高 だ! [ACE]

<http://fetchsoftworks.com/Goodies/story.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01227>
<http://fetchsoftworks.com/Features/technologies.html>
<http://fetchsoftworks.com/Features/tricks.html>


TenBITS/07-May-01

by TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Mac OS X 10.0.2 と iTunes 1.1.1 で CD が焼けるように -- 先週 Apple 社から Mac OS X の 2 度目の無償アップデートが出た。Software Update コントロールパネルから入手可能のこのアップデートにより、ア プリケーション全般の安定性が向上するとともに、オリジナル音楽 CD が 焼けるようになった。変更点についてもっとちゃんとしたリストをご覧に なりたい方は、このアップデートに関する Apple の Tech Info Library の記事を参照いただきたい。(例によって、システムソフトウェアをアッ プデートする前は、データをバックアップしておくのが賢明だろう。)

<http://www.apple.com/macosx/>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n106293/>

これと同時に、Mac OS X 用 iTunes の無償アップデートもリリースされ た。この新しい iTunes 1.1.1 により、オーディオ CD が焼けるようになっ ただけでなく、今まで Mac OS 9 でしか利用できなかったフルスクリーン でのビジュアルエフェクトもサポートされた。iTunes 1.1.1 でオーディ オ CD を焼くのは少々注意が必要で、USB CD-RW ドライブを利用して焼く 場合、作成速度は 2 倍に設定しておかなければならず、また、iTunes が オーディオ CD を焼いている間に、Mac もしくはディスプレイでさえもス リープすると失敗に終わってしまうことがある。したがって、省エネルギー コントロールパネルで、スリープをしないように設定するとともに、「ディ スプレイのスリープを別に指定する」の項目が選択されていないことを確 認しよう。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n60841>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n60842>

Mac OS X 10.0.2 アップデートをかけたために、少なくとも(私の PowerBook G3/250 を含んだ)一部システムで、外部スピーカに繋いであ るのに内蔵スピーカがオンになるという妙な現象がおこっている。ソフト ウェアによる音量調節が内蔵スピーカにしか効かず、外部スピーカの音量 調節は専用のボリュームつまみ等を搭載していなければできなくなる。ス テレオサウンドに加えてもう一つ音源があるのを喜ぶ人もいるだろうが、 一般的に、ヘッドフォンがささっているときに内蔵スピーカから音が出る のは不適切だろう。[ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1381>

Mac OS X 10.0.2 が FTP の攻撃される可能性のある部分に修正を -- Apple は、Mac OS X 10.0.2 で ftpd FTP サーバが新バージョンになった とも言っている。これで、数週間前に CERT が指摘した FTP の攻撃され る可能性のある部分(詳しくは TidBITS-577 の「TenBITS/23-Apr-01」 を参照いただきたい)が修正されるのだろうか。我々は更なる情報を Apple に繰り返し要求していたが、いまだに返答はない。今回、Apple は Mac OS X 10.0.2 に「セキュリティ面で重大な改善がなされた新しいバー ジョンのインターネット・ファイル共有(ftpd)」が入っているというこ としか公表していない。幸い、Larry Rosenstein 氏 <lsr@alum.mit.edu> が TidBITS Talk で、Mac OS X 10.0.2 ftpd サーバのバージョンが、 Darwin オープンソースにある ftpd サーバの一番最近アップデートされ たバージョンと同じであることを立証してくれた。Apple(または、その た Darwin オープンソースにかかわるだれか)が無事 FTP セキュリティ ホールを埋めてくれたと考えてもよさそうだ。Apple がこんなに早く修正 を配付してくれるとは素晴らしいことだ。そして、まるで壊れたレコード (私の歳がばれてしまうたとえだ)のようではあるが、Apple はもっと素 直になって CERT のようなセキュリティ関連のグループに対して問題を認 めるようにしなければならない。[ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1372>

Sudo にセキュリティホール -- Stepwise のサイトに sudo コマンドラ インプログラムのセキュリティホール情報が出ている(このサイトでは、 先週お伝えした Apple Mac OS X インストーラのバグ情報も早くから扱っ ていた)。なお、このプログラムを使うと、Mac OS X ユーザーが root ユーザーとしてログインしていないとき、さらには root ユーザーがオン にならないようになっているときでも、Unix のコマンドを実行できるよ うになる。残念ながら、その他多くのセキュリティ関連の失策同様、Mac OS X に付属していたバージョンの sudo に、(マシンの前に座って操作 している場合、SSH または Telnet で接続している場合どちらにおいても) 認証を受けたユーザーがさらに上にアクセス権を取得することを可能にし てしまうバッファ・オーバーフローが発生してしまうことが判明した。こ の問題が最初に明るみに出たのは 2001 年 4 月 23 日だったが、先週出 したMac OS X 10.0.2 アップデートではこの問題は修正されていない。 sudo の作者はすでにパッチを作成しており、Stepwise の Scott Anguish 氏が Mac OS X に付いている sudo を新しいバージョンに置き換えるイン ストールアプリケーションを作成してくれている(ダウンロード容量: 122K)。[ACE]

<http://www.stepwise.com/Articles/Workbench/2001-05-01.01.html>
<http://softrak.stepwise.com/display?pkg=2046&os=20>

DragThing 4.0.2 クラッシュの問題を修正 -- James Thomson 氏は自作 の Dock 代替ユーティリティ DragThing が Mac OS X でクラッシュする 問題を修正したバグ修正アップデートをリリースした。修正されたのは、 DragThing が起動時にログイン項目をクリアしてしまう問題(詳細は TidBITS Talk 中の James の説明を参照いただきたい)と、それほどは深 刻でない 2、3 バグである。DragThing 4.0 ユーザーは、DragThing 4.0.2 へ無料でアップグレードできる。ダウンロードサイズは 1 MB であ る。[ACE]

<http://www.dragthing.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkmsg=10707>

Mac OS X をサポートした PowerMail 3.0.9 -- スイスの小さな会社、 CTM Development 社は同社のメールクライアント PowerMail に新機能少々 を追加し、バグ少々修正し、そして何よりも大切なことに Mac OS X(正 確には Mac OS X 10.0.1 以降)への互換性を備えたバージョンを出した。 その他多くの Mac OS X 互換製品と同様、PowerMail 3.0.9 は内容で検索 するためのインデックス関連で時折起こるクラッシュ、コピーやペースト の最中のエラー、StyleWriter で印刷する際の問題などまだ未解決の問題 をいくつか抱えている。PowerMail 3.0.9 への無償アップデートは、Mac OS 8 および Mac OS 9 用の「Classic」版(ダウンロード容量:1.9 MB) と Mac OS X 用の Carbon 版(ダウンロード容量:2.0 MB)が用意されて いる。[ACE]

<http://www.ctmdev.com/powermail3.shtml>
<http://www.ctmdev.com/documentation/Read_me.htm>

QuickDNS Pro で Mac OS X の DNS 設定が簡単に -- DNS(Domain Name Service)は、216.168.32.83 のようなインターネット IP 番号に、 www.tidbits.com のような人間が読んでわかるような名前にマッピングす るもので、心臓の弱い人には向かないものだ。編集中に一文字でも間違え てタイプしてしいたら、その設定を行ったインターネットドメイン全体に アクセスしてもらえなくなってしまうこともあるのだから。Men & Mice 社製の QuickDNS Pro for the Mac は、その DNS の設定や管理を簡単に することを目指した製品であり、つい先日、QuickDNS Pro 3.5 for Mac OS X が登場し、Mac OS X での設定などが楽になった。現状の QuickDNS Pro は、GUI の QuickDNS Manager と QuickDNS Remote と呼ばれるサー バ側のユーティリティの 2 つからなっており、後者が QuickDNS Manager で Unix BIND 8.2.3 DNS サーバ(Mac OS X、Red Hat Linux 6.2、7.0、 SuSE Linux 6.3、6.4、7.0 など)の設定を可能にしてくれる。QuickDNS Pro 3.5 for Mac OS X の価格はシングルライセンスの場合 350 ドル、ラ イセンス 2 つで 550 ドル、バージョン 2.x からのアップグレードは195 ドル、また、ボリュームディスカウントも用意されている。[ACE]

<http://www.menandmice.com/infobase/mennmys/vefsidur.nsf/index/2.2>
<http://www.menandmice.com/download/quickdnsprodownload.html>


素晴らしく小さくなった iBook

by Matt Deatherage <mattd@macjournals.com>
(翻訳:敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)
(  :斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

Apple Computer は先週、待ち望まれたポリカーボネートの新しい iBook をお披露目した。第 2 世代の iBook の技術的な仕様は、Apple のコン シューマーと教育のためのポータブル・コンピュータへの変更からかなり 期待できるものである。しかし、人目を引く Titanium のようなデザイン とコンシューマーからの要望があった追加の接続ポートが付いた新型は、 旧型より際立って小さくて軽い。パッケージがとても魅力的なので、実際、 Virginia 州 Henrico 郡の学校区は Apple から 23,000 台の iBook をレ ンタルすると発表した。Apple が 3 月の四半期全体で 55,000 台だけの iBook を販売したことを考えると、これはとても大規模な契約である。。

<http://www.apple.com/ibook/>
<http://www.apple.com/pr/library/2001/may/1henrico.html>

外観について--Apple の Web サイトの写真から判断するのは難しいが、 私がサブノートと言える唯一の定義である「実物大のノートよりいくらか 軽く小さい」という点において、iBook(Apple 公認の名称は「iBook (Dual USB)」)はサブノートパソコンとみなされるだろう。そのことを 顧慮して、iBook(Dual USB)はサブノートと呼ぶのにふさわしい。11.2 インチ(28.5 cm)の幅は旧型の iBook より 2 インチ以上狭く、9.1 イ ンチ(23.0 cm)の奥行きは前モデルより 2.5 インチ狭い。iBook(Dual USB)は厚さ 1.35 インチ(3.4 cm)で 2.06 インチ(5.23 cm)の従来モ デルと比較される(最も厚い部分を測った場合)。重さは前モデルの平均 の 6.7 ポンド(3.04 kg)と比較して、平均 4.9 ポンド(2.2 kg)だ。 ノートよりさほど大きくはない。 実際、3 箇所のサイズすべてが人気の ある PowerBook 2400c よりも小さく(このモデルはしばしば「サブノー ト」と呼ばれた)、Apple 製の最初のサブノートである PowerBook Duo より少しだけ大きくて重たい。

<http://www.apple.com/ibook/specs.html>
<http://www.webopedia.com/TERM/s/subnotebook_computer.html>

重量の減少は主にバッテリの変更によるものだ。新型 iBook の 42 ワッ トのリチウムイオンバッテリは元祖 iBook の 45 ワットのバッテリより は多少のパワー不足だが、サイズはかなり小さい。元祖 iBook のバッテ リは著しく大きかったが、新型のものはそうではなく、取り付けがより簡 単で LED チャージ表示器を装備している。Apple は旧型 iBook のバッテ リ持続時間は 6 時間だと言っていたが、新型のものは PowerBook G4 と 同じくバッテリ持続時間が 5 時間である。iBook を使用中なら 6 時間で 充電が可能で、シャットダウンやスリープの時は 3 時間半で充電できる。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n60423>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n88121>

Apple の iBook Developer Note によると、飛行機で使用するための「飛 行機用電源ケーブル」もある。ケーブルに特別なセンスレジスタがついて いて、iBook がセンスレジスタを検出すると、ケーブルが供給する AC 電 源を使用するが、バッテリを充電しようとはしない。ほとんどの飛行機の コンセントは、バッテリの充電とコンピュータへの供給を同時に行えるほ どボルト数が高くないからだ。

<http://developer.apple.com/techpubs/hardware/Developer_Notes/ Macintosh_CPUs-G3/ibook/>

匡体も軽くなり、ポリカーボネートプラスチック製で、チタンケースの PowerBook G4 と並べてもお似合いだが、金属でできているわけではまっ たくない。もっとも、新しい iBook は強度をあげるためにマグネシウム のフレームを持っており、ゴム引きされた脚の周りに簡単にはずれないよ うに金属製のシールドをしてはいる。また、薄いラバーコーティングがさ れており、Macworld の編集者の Andy Gore 氏が述べるように、「小さな 手でも」しっかりと握ることができる。

<http://maccentral.macworld.com/news/0105/01.ibook.shtml>

閉じてみると、PowerBook G4 と同じ磁石のラッチとリリースボタンを見 ることができる。開けてみると、iBook(Dual USB)はキーボードの幅よ りもわずかに広いだけで、キーボードは PowerBook G4 モデルで見られる ものとほぼ同じものである。旧 iBook と同様、PowerBook の悪名高いポー トカバーのような、外れてしまいそうなドアやパネルはない。ヒンジは匡 体を開けるためのものがひとつしかなく、これさえも違っている。開けた ときに匡体の上ぶたが底部よりも後ろに下がり、低い位置になり、その結 果わずかに奥行きを加え、高さを抑えるように回転する。キーボードは 2 つのスピーカーの下に位置する。旧モデルのハンドルはなくなったが、寂 しく思う人はあまりいないだろう。私もハンドルの外観とコンセプトは好 きだったが、ハンドルを使って街を歩く人を想像するのは難しい。新モデ ルはかわりにケーブルロック用の標準的なセキュリティスロットを備えて いる。旧モデルではハンドルがこの役割を担っていたからである。

左側には、いままでのどの iBook よりも多い拡張ポートが見える。 「Dual USB」の名前で分かる通り、iBook では初めて USB ポートが 2 基 搭載され、加えて 400 Mbps の FireWire ポートが 1 基、V.90 56K 内蔵 モデム、10/100Base-T Ethernet ポートも備え、iBook(FireWire)で導 入されたものと同じタイプの、専用ケーブルで TV 出力、アナログオーディ オ出力が可能なオーディオ/ビデオポート、モニタ識別の規格である DDC をサポートするあらゆるモニタに接続するまったく新しい RGB 出力ポー トを装備、ケーブルも同梱されている。しかし、ビデオミラーリングしか 行えず、また Mac OS X で行うためには Mac OS X 10.0.2 が必要である。 残念ながら、アナログ「Apple AV ケーブル」はもう同梱されず、別売で 20 ドルとなる。リセット用の小さな穴は AV ポートの上にある。電源コ ネクタは匡体の右側にある。

この新しいコンピュータのプロモーションビデオで、コンピュータショッ プで働く男の人が手にしている姿が移っているが、その人の手よりわずか に大きいだけのようだ。発表に立ち会った記者達はある理由のためにべた 褒めである。iBook(Dual USB)は小さく軽いのだ。この理由だけでも、 小型製品が価格プレミアムとなる日本では特に人気が出るはずだ。しかし iBook は小型ゆえに高価であることはない。なかなかいい線をいっている。

箱の中身の考察 -- iMac と同じように、iBook もいまだ PowerPC G3 プロセッサファミリーを使っているが、それなりの理由があってのことで ある - 高価でないし、パワーも食わない、その上もっと動作周波数の高 い Pentium III システムに匹敵するだけの性能をつめこんでいる。iBook (FireWire)は 366 MHz から始って最高は 466 MHz どまりであった、し かし iBook(Dual USB)の方はスピードは一つ - 500 MHz だけだが、こ れは昨年の PowerBook(FireWire)の最高機種と同じ速さである。さらに PowerStep を使うことで、あまり重要でない作業時には望むなら速度を 400 MHz に落すこともできる。とはいっても、PowerBook G3(FireWire) とまったく同じに速いわけではない - iBook はいまだ 66 MHz のシステ ムバスと、256K に制限された Level 2 キャッシュをボード上に搭載した PowerPC 750CX チップによって制限を受ける。したがって iBook の性能 が PowerBook の性能と同じというわけにはいかないのである。

一方で、iBook(Dual USB)のディスプレイは特記に値する - 12.1 イン チ LCD のままだが、以前の iBook モデルの最高であった 800 x 600 の 代わりに、正真正銘の 1024 x 768 ピクセルの解像度で動作する。これは 100 ドットパーインチ以上の解像度に相当するが、説明会の参加者の話で はこのディスプレイはそれを感じさせるのに十分なだけ鮮明であったとい う。もし本当に必要なら 800 x 600 も 640 x 480 も補間とスケーリング を使って実現できる。グラフィックスが ATI Rage Mobility 128 チップ を使ってドライブされるのは変らないが、中身は同じではない:今度のは ATI Rage Mobility 128M である。128M モデルは 1024 x 768 の解像度の ニーズを満たすためで、Rage Mobility 128 チップではできなかったもの である。この新型の 128M チップはまた 3D グラフィックスのアクセレレー ションも持っている。Andrew Gore 氏の話では、Apple 社の経営陣は非公 開説明会で、Rage Mobility 128 が今のところ性能と消費電力の間のバラ ンスが一番良いと言っていたという。これまでと同じく、このチップは 8 MB の SDRAM グラフィックスメモリを持ち AGP 2X 専用グラフィックスバ スの上に装着されている。

これまでコンシューマー用コンピュータ用の光学デバイスの選択について は何をやっても批判されてきただけに(批評家達によれば、最初の DVD は間違いの選択であったし、それを CD-RW で置き変えたのも間違いであっ た)、Apple 社は今度はトレイ装着型の光学デバイスならば、DVD を焼く ことを除いてはほぼ何でも選択できるようにした。ベースモデルは小売価 格 1,300 ドルで 24x CD-ROM が付いてくる;1,500 ドルの構成だと 8x DVD-ROM 付きで CD-ROM は 24x で読める。1,600 ドルのモデルだと内蔵 の CD-RW(CD-R 書込みは 8x、CD-RW 書込みは 4x、CD の読取なら 24x)、 さらに build-to-order の 1,800 ドル構成だと、Apple Store か build-to-order システムを扱う販売店から入手できるが、 「Combo」ド ライブを特長としている。これは 8x4x24x CD-RW のように働くと同時に DVD-ROM を 8x のスピードで読める。

光学デバイスを除けば、上位 iBook(Dual USB)3 機種はほぼ同じ物であ る。ということは、CD-RW ドライブは DVD-ROM よりも 100 ドルコスト高 で、同様に Combo ドライブは DVD-ROM 単独より 300 ドルコスト高であ ることを意味している。もはやどのドライブにも、イジェクトボタンは付 いていないで、代りに F12 キーを数秒間押し続けると光学ディスクを排 出する(もし Mac OS X を使っているのであれば、空のときにトレイを排 出できるようにするには Mac OS X 10.0.2 かそれ以上が必要である)。

最廉価版を除いたすべてのモデルがマザーボードに半田付された 128 MB の RAM を備えている(1,300 ドルのモデルは 64 MB しか付いていない); PC100 SO-DIMM の単スロットに 512 MB までの追加 RAM が装着でき、合 計で最大 576 MB か 640 MB の RAM 容量となる。すべてのモデルが一つ の Ultra DMA/33 10 GB ハードドライブ付きとなるが、build-to-order システムを使えば 200 ドルの追加で 20 GB にアップグレードできる。ハー ドドライブはゴム製の囲いの中に収納されており、不必要に重量を増すこ となしにショック緩衝機能を付加している。1999 年 7 月の元祖 iBook 以後のすべての Apple システムと同じに、この新モデルも 100 ドルの AirPort カードが容易に使える。予備バッテリは小売 130 ドルで、予備 の AC アダプタ(PowerBook G4 にも使える)は 70 ドルである。

教室とその先 -- こいつは実に優秀な製品だ。元祖 iBook は大胆なデ ザインと派手な色、重さ、少ないコネクタ類、それに高すぎる価格といっ た点で批判されていた。Apple は新 iBook でこうした問題をすべて解決 した。堅牢で軽量なうえ、シャープながら控えめなデザインに身を包んだ 強力なコンピュータとなったのだ。スタイル以外、たとえばエントリーレ ベルのモデルで 366 MHz プロセッサが 500 MHz プロセッサに変わった点 などで納得したいという方は、Mac Observer の比較ページを参照された い。

<http://www.macobserver.com/article/2001/05/01.13.shtml>

この iBook は実際に動いているところを見ないと本当の良さがわからな い。Apple がハードウェアの新製品を発表する際、短いプロモーション用 ビデオを作成するのが通例だが、普通は会場に居合わせた人たちが目にす るのと、報道関係者に衛星中継されるぐらいだ。だが今回、Apple はこの 5 分 30 秒のビデオを公開しているので、誰でも目にすることができ、新 iBook に少しでも興味がある方には一見の価値がある。ただし、ムービー ファイルは ISDN 以上の広帯域幅版で最低 21 MB(私がダウンロードした ものは 35 MB だった)、ISDN 未満の狭帯域幅版で 7.7 MB だということ を肝に銘じておいていただきたい。ブロードバンド接続以外では、ダウン ロードに 20 〜 30 分が必要になる。iBook がどれだけ小さいかがわかる し、ほとんどの部分をアップで見せてくれている。

<http://www.apple.com/hardware/video/ibook.html>

この製品が教育市場を狙い撃ちにしたものであるという指摘は正しい。3 年前、Apple は 5 月初に iMac を発表した。実際に製品が出荷されるの は数ヵ月後だったのだが、8 月になれば何かいいことがあるということを 教育関係者たちに知らせることができたのだ。教育機関が購入を決定する のは今月なので、Apple が新製品出荷前に派手な発表をするのは理に適っ ている(Apple によると出荷は「5 月中旬」なのだが、一部ではすでに出 荷が始まっているという報告もある)。学校向け価格は一台 1,200 ドル だし、それに 70 ドルの AirPort カードを付けると、iBook(Dual USB) は生徒向けワークステーションとして実に魅力的なものになる。

教育市場向けであれば、なぜこれだけのポートを装備しているのだろうか? 一部パフォーマンスを別とすれば、これで iBook が iMac と同じ性能を 持つことになるからだ。iTunes と iMovie 2 が付属し、学校の機材に接 続できる RGB ビデオミラーリングポートがあり、USB ポートも 2 基装備 されているので、片方をオーディオに、もう片方を他の USB 周辺機器に 使用することができる。iBook は解像度さえ iMac と同じ 1024 x 768 ピ クセルになったので、差は今やパフォーマンスだけなのだ。差別化のポイ ントは明確で、iBook はポータブルでやや遅く、iMac は安価でやや速い という位置づけになる。しかしながら iBook には旧型のテクノロジーが リサイクルされて使用されているというわけではない。iBook(Dual USB) は DMA FireWire、Ethernet、Ultra DMA IDE、USB といったほとんどのハー ドウェア機能を司る新型の Pangea コントローラチップと、オーディオ変 換、音量、イコライザなどのデジタルオーディオ機能を司る Tumbler を 採用した Apple 初のマシンなのだ。

これまで 2 年近くの間で、Apple は 70 万台ほどの iBook を売ってきた のだから、一日で 23,000 台のリース契約を獲得したのは特筆に値するこ とだ。同時にこれは教育機関向けの売上をことあるごとに吹聴する Dell 社の Michael Dell 氏に対する挑戦でもある。Dell は自らを教育機関向 けコンピュータメーカーのリーダーとして位置付けようとしているので、 Apple は Dell だけが学校にコンピュータを大量に納入しているわけでは ないことをアナリストや報道関係者に印象づけようとしているのだ。普通 Apple は個別の販売実績をプレスリリースで誇示するようなことはしない のだが、Dell が大量納入がリーダーの条件であると暗示しているため、 Apple としては事実は事実としておきたいのだろう。

現行の iMac シリーズはコンシューマー向けの製品だが同時に学校向けと しても最適で、新 iBook は学校向けの製品だが同時にコンシューマー向 けとしても最適だ。バックパックに収まり、重さも 2.2 kg なのでどの学 年の生徒も iBook を気に入るはずだ。iTunes が教室で使われることはあ まりないだろうし、iMovie 2 の使い道は色々あるだろうが、これはむし ろ別製品という感が強い。プロモビデオで私が気に入っているのは、6 年 生の Harry Tannenbaum 君が友達と一緒に撮影して iMovie で編集したビ デオについて語っているくだりで、軽い驚きとともに「まあ悪くはない出 来だよ」と言っているところだ。

iBook シリーズはこのところ低迷しており、期待されたものの iMac の二 匹目のドジョウにはついにならなかった。ようやく現れた iBook (FireWire)でさえ、可能性は秘めていたものの期待されたほどの売上に はつながらなかった。新 iBook こそ、Apple だけでなくより幅広いコン ピュータの世界で、iBook を二流から一流の製品に押し上げるものになる かもしれない。6 ヵ月後にスピードアップを伴うマイナーチェンジをすれ ば、年末商戦もばっちりだ。

この iBook のルックスなら John C. Dvorak 氏にこきおろされることは ない。従来モデルの重大な欠点とされた点はすべて改善され、価格もより 安く(または、ハイエンドモデルは同じ価格ではるかに充実している)、 学校が必要とするものをすべて備え、子供向けにもぴったりで、Mac OS X にも対応している。Apple がこのマシンを 9 月までに数十万台売ること ができなかったら、コンシューマーや学校向けのポータブル Macintosh の市場というものはおそらく存在しないのだろう。というのも、もしそう いう市場があるとしたら、この製品はまさにうってつけだからだ。欲しい。

[Matt Deatherage 氏は MacJournals.com を主宰しており、シリアスな Macintosh ユーザー向け、広告ゼロの MDJ、MWJ、MMJ といったそれぞれ 日刊、週刊、月刊のジャーナルを刊行している。どれも MacJournals.com で無料のお試し購読ができる。この記事は先週MDJ に掲載された情報を元 にまとめられたものだ。]


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