TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#581/21-May-01

Mac OS X の Unix 基盤の利点は、高性能なリレーショナル・データベー スを作動させる性能があることだ。Jonathan Rentzsch 氏は、競争の激し い世界へと Mac OS X を導くことになり得るデータベース製品をいくつか 検討する。また、Matt Neuburg は Copernican Technologies 社の Boswell テキスト断片アーカイバを批評する。ニュースでは、Apple 社が 新機種への Mac OS X のインストールを開始したことを伝える。そして Apple 社の最初の直営店、OnStream テープドライブの復帰、Mac OS X Server、FileMaker Pro 5.5、BBEdit 6.1.2 のアップデートについて触れ る。

目次:

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MailBITS/21-May-01

(翻訳:山下 英治 <vatcanza@fhe.freeserve.ne.jp>)
(  :尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Apple 社、2001 年中に最初の 25 店舗の直営店をオープン -- Apple Computer 社は最初の直営店を Virginia 州、McLean の人通りの多い Tyson's Corner mall と Los Angeles の近くの Glendale Galleria にお いてオープンさせた。Apple 社は、Chicago の North Michigan Avenue や、Manhattan の SoHo 地区の Prince Street や、Minnesota 州の巨大 な Mall of America のような場所に、2001 年中に 25 の店舗をオープン すると誓約した。Apple の店舗では、MP3 プレーヤー、デジタル・カメラ、 デジタル・ハンディカム、PDA 機器や、その他の「デジタル・ライフスタ イル」製品はもちろん、Apple 製品の全種類が揃っている。また、プロ用、 一般用、教育用の数百タイトルのソフトも在庫している。Apple の直営店 は、5 のセクションに分けて構成されている。Apple のテクノロジーをデ モンストレーションする Theater、Mac を最大限に活用し、他のデジタル 製品に結合して使う方法が分かる Solutions、そして地元の Mac コミュ ニティーの Mac に精通したスタッフを置いている「Genius Bar」などが あり、お客のどんな質問に対してもやる気満々で答えてくれる。直営店の 構想を公表した記者会見では、客足が多く、たえず客が流れ込むショッピ ングセンターや小売店街区において、これらの店舗は、Apple 社のテクノ ロジーの具体的な有利性を試験的に供覧するための、一目で分かりやすく、 また流行を押さえたモデルであって欲しいと、Apple 社は明確に述べた。 Apple 社の小売担当副社長、Ron Johnson 氏は、2001 年の休暇シーズン 中、Apple の店舗には、一週あたり 10 万人以上が訪れるであろうと推測 している。現段階では、Apple 社の直営店の新規開発事業は、長い間忘れ られている Apple Cafe よりもうまくいきそうである。最初の 2 店舗で は、第 1 週目の週末に 7,700 人以上の客の応対をし、およそ 60 万ドル の商品の売り上げがあった。[GD]

<http://www.apple.com/retail/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00814>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1396>

フラットへ -- 昔ながらのブラウン管方式(CRT)モニタはいずれ時代 に取り残されるとだれもが感じているだろうが、Apple のすぐれたフラッ トパネル Studio Display に 17 インチのモデルが導入されたことにより、 その日が来るのが早まったようだ。この 17 インチの Studio Display は、 1280 x 1024 の解像度(解像度を下げ、1024 x 768 または 640 x 480 で 表示することもできる)で、現在 Power Mac G4 システムに装備されてい るデジタルの Apple Display Connector を利用するようになっている。 この 17 インチ液晶ディスプレイが 1,000 ドルで発売になると同時に、 15 インチの液晶ディスプレイの価格が 600 ドルに下げられた。さらに、 あのゴージャスな 22 インチの Apple Cinema Display は、2,500 ドルに 値下げになり少しばかり手の届く値段に近づいた(このモニタは 3 カ月 前に 4,000 ドルから 3,000 ドルへの値下げがあった)。この時点で、 Apple 製のモニタは、iMac に付いているものだけが CRT モニタで、それ 以外はすべて LCD ディスプレイになった。 [MHA]

<http://www.apple.com/displays/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06317>

BBEdit 6.1.2 へのアップデート登場 -- Bare Bones Software 社製の 評判のテキストおよび HTML エディタ BBEdit に無償アップデートが出た。 BBEdit 6.1.2 では、Mac OS X で使用する際のパフォーマンスが向上し、 対応 FTP サーバの幅が広がり、Mac OS X 用の Cocoa Web ブラウザであ る OmniWeb で Web 書類をプレビューする機能が備わった。いつものよう に、 Bare Bones 社は修正点および変更点を網羅したリストを出している。 このアップデートのダウンロード容量は 3.5 MB である。BBEdit 6.1.2 は、System 7.5.5 以降(推奨は Mac OS 8.6 以降)が載っている PowerPC マシンで動作する。[GD]

<http://www.barebones.com/products/bbedit.html>
<http://www.omnigroup.com/products/omniweb/>
<http://www.barebones.com/support/bbedit/bbedit-notes.html>

帰ってきた OnStream -- OnStream 社の破産宣告から 2 カ月弱が経過 し( TidBITS-573 の「OnStream 社が連邦破産法第 7 章による破産を申 請」を参照)、同社の資産および知的所有権は、新たに創業したオランダを 本拠とする OnStream Data B.V. 社に買い取られた。同社は、Advanced Digital Recording(ADR)大容量テープドライブの販売およびサポートを 行うことになる。OnStream 社は、SCSI、IDE、USB、FireWire のいずれか のポートの付いた 30 GB のテープドライブを販売している。また、サー ババックアップ用として 30 GB および 50 GB の SCSI バージョンも取り 扱っている。 TidBITS-569 で最初に OnStream 社のことを取り上げたと き、ADR 形式(および、Ecrix 社の VXA-1ドライブで採用している形式) を扱うメーカがまだほかに出てきていないという懸念を述べた。つまり、 製造元が万が一左前になることもありえるし、バックアップソリューショ ンとしては危険な選択になってしまうのだ。OnStream のテクノロジーが 引き続きサポートされるのはうれしいかぎりである。[JLC]

<http://www.onstream.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06367>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06322>


TenBITS/21-May-01

by TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Apple 社はサンノゼで開催中の WWDC(World Wide Developers Conference)において、Mac OS X Server 10 の発表や、Mac OS X を搭載 した新 Mac の出荷開始の報告を行った。また、17 インチのフラットパネ ルディスプレイも発表された。

今後、新しいマシンは Mac OS X を搭載 -- Apple は、2001 年 5 月 21 日付けで、すべての Mac に Mac OS X をプリインストールして出荷し 始めたと報告した。これは、以前公表していた予定をほぼ 2 カ月繰り上 げたものである。現状では、今まで通り Mac OS 9.1 から起動するように 設定されているが、Apple の Dual Boot 機能を利用すれば、起動 OS の デフォルトを Mac OS X に変更することができる。Apple によると Mac OS X を動かすのに十分なメモリを積んでいないマシン(RAM が 64 MB の エントリーモデルの iMac や iBook)でさえも、ハードディスクに Mac OS X がプリインストールされることになるらしい。なお、2001 年 5 月 21 日以降に新規購入した Mac に Mac OS X がプリインストールされてい ない場合は、Apple の Mac OS Up-To-Date プログラムを通じて、Mac OS X を無償で入手することができる。Apple はプレスリリースの中で Mac OS X が好評だったので Mac OS X をプリインストールする時期を早めた と述べているが、同社の開催する WWDC にタイミングを合わせて実施した ということは明白である。Mac に Mac OS X をインストールして販売する ことで、Mac OS X 対応アプリケーションの潜在市場が拡大するし、ひい ては、デベロッパーが自分の製品の Mac OS X 対応版を出そうという気持 ちが高まることに繋がるのだから。[GD]

<http://www.apple.com/macosx/>
<http://www.apple.com/pr/library/2001/may/21macosx.html>

Mac OS X Server 10 -- 同じく WWDC において、Mac OS X Server 1.2 の公式な後継者となる Mac OS X Server 10.0.0 が発表された(こちらも Mac OS X 製品の特異なバージョン番号の付け方を踏襲している)。Mac OS X Server は、Web 、電子メール、FTP サービスを処理する Apple 社 製サーバソフトウェアで激務にも耐えうる。しかし、一般向けの Mac OS X とは異なり、学校や研究所をはじめ共同作業を行うような状況のための Macintosh Manager や NetBoot に加え、本格的なファイル共有やプリン トサーバといった機能が備わっている。また、Mac OS X Server 10 には Apple 社製の新 WebObjects 5 が付属する。WebObjects 5 は、専用のイ ンターネットのアプリケーションやソリューション(凝った Web サイト やデータベース用の専用フロントエンドなど)を作成するためのパワフル なアプリケーションサーバソフトウェアの Java ベースの新バージョンで ある。Mac OS X Server 10 は Apple の Darwin オープンソースの Unix カーネルがベースになっており、Mac OS X のデスクトップ版と同じ Aqua ユーザーインターフェース(サーバのインターフェースは、青ではなくプ ラチナっぽいハイライトになっている)が売りである。Mac OS X Server 10 は、小規模なグループ向けにクライアント数を 10 に限ったものが 500 ドル、クライアント数が無制限のもが 1,000 ドルとなっている。 (さらに、500 ドルで 10 クライアント版から無制限版へアップグレード できるようになっている。)Mac OS X に組み込まれているのと同じ業界 標準の Apache ソフトウェアを利用する Web サーバは、どちらの版でも 制限はない。

<http://www.apple.com/macosx/server/>
<http://www.apple.com/webobjects/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05327>

さらに、Macintosh Server G4 の構成が新しくなった。登場した 2 構成 は、どちらも 256 MB の RAM、60 GB のハードディスク、10/100/ギガビッ ト内蔵 Ethernet、Mac OS X Server の Unlimited クライアントライセン ス版を搭載している。3,000 ドルの方は 533 MHz PowerPC G4 のシングル プロセッサであるが、4,000 ドルの方は 533 MHz G4 デュアルプロセッサ になり、複数のネットワークを管理できるように 10/100 Ethernet カー ド用のポートが 4 基装備されている。[MHA]

FileMaker Pro 5.5 for Mac OS X -- FileMaker 社は、同社の人気のデー タベースアプリケーション FileMaker Pro(通常版)をバージョンアップ し、バージョン 5.5 をリリースした。この新バージョンは、Mac OS X 用 にカーボン化されたほか、(JavaScript を利用した)インタラクティブ なボタンなど Web 出版機能が向上し、Web から FileMaker 製 ScriptMaker コマンドのサブセットを実行する機能や、デフォルトの Instant Web Publishing ナビゲーション用インターフェースを無効にす るオプションが備わった。また、バージョン 5.5 は、レコード単位での アクセス権設定、新たなスクリプト処理、ダイナミックな SQL クエーリ といった機能を搭載しているほか、FileMaker Pro 5 から可能になった ダイアログのサイズ変更やウインドウの位置指定が改良され、Excel のデー タのインポートが改善された。ただし Mac OS X 版では、ツールバー、 ODBC のインポート、Mac OS X のアプリケーション Mail で Send Mail スクリプトを処理する機能がまだサポートされていない。なお、 FileMaker Pro 5.5 の Windows 2000 版も発売になっている。前バージョ ンからのアップグレードは 150 ドル、FileMaker Pro 5.5 の新規購入は 250 ドルとなっている。

<http://www.filemaker.com/products/fm_home.html>

同社は、Mac OS X および Red Hat Linux で動作する FileMaker Pro Server 5.5 と、Web 出版機能に制限がなく新しいマルチスレッド Web Companion プラグインを備えた FileMaker Pro Unlimited を今年の第 3 四半期の終わりまでにそれぞれ 1,000 ドルで発売する予定である(上記 のプラグインは一般的な Web サーバの作業の能率アップにはなるに違い ないが、FileMaker が Web 出版部分で抱えている根本的な遅さの問題を 改善してはくれない)。FileMaker デベロッパーが独立型ソリューション を作成でき、ドキュメンテーション、SDK、その他データの揃っている FileMaker Pro Developer 5.5 は、2001 年末までにはリリースされるこ とになっている。[GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05576>


Boswell:テキスト保管庫

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:飯橋 真紀 <k-m611@ma4.seikyou.ne.jp>)
(  :西村 尚 <hsashin@hotsync.co.jp>)
(  :斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)

ゴキブリホイホイを思い浮かべて欲しい。「一度入れば出られない。」と いう仕組みだ。実は、Copernican Technologies 社の Boswell はあなた のテキスト形式ドキュメントに同様の処理を施してくれる。それはテキス トファイルアーカイバなのだ。断章を Boswell に保管すれば、後にさま ざまな方法でまとめられたリストからその断章にアクセスすることが可能 となるが、それらを過失や故意に消去することは不可能となる。

<http://www.boswell.com/>

このプログラムはどうして「Boswell」と名付けられたのか。Copernican 側は、「Amanuensis:筆耕者(口述筆記や原稿を写す人)」よりもスペル が簡単だからだと説明している。しかしながら、James Boswell 氏は有名 な『Life of Samuel Johnson』 の著者であり、それは古今を通じて最も 優れた伝記の一つと言い得るもので、彼は誰の筆耕者でもない。彼は旅行 家、遊び人、エッセイスト、法律家、地主の顔をもち、知性と芸術性の頂 点にあった 18 世紀イギリスの知的かつ芸術的功績に大いに貢献した人物 であった。さらに、彼の包み隠しのない真にせまった日記から、人々が深 く理解したと思える作品を書き記した数少ない歴史的人物の一人だという ことがわかる。彼の伝記文と日記は、的確に情報を記録しておくことの価 値を証明するものだ。「Boswell」 というプログラムは、あなたのテキス トファイルを的確に保管してくれる。

<http://www.andromeda.rutgers.edu/~jlynch/Texts/BLJ/>
<http://www.andromeda.rutgers.edu/~jlynch/Texts/journal-selection.html>

2 つ目の知識 -- 「知識には 2 種類ある。すなわち、主題そのものを 知っていること、あるいはその主題に関する情報を見つけられる場所を知っ ていることだ。」- Samuel Johnson

Boswell はハードディスクに 1 MB 単位で増加する保管ファイルを作成す る。このファイルの中にテキストの断章を入れるいくわけだ。断章は Boswell 自体の中で作成できる。つまり新規の断章にテキストをタイプす るかペーストでき、このテキストにはスタイルをつけられる。代わりに、 テキストファイルを、個別にもしくはフォルダごと読み込むこともできる。

新規に作成したあるいは新規に読み込んだ断章は、一種の集結地に駐在す る。ここで 3 つのフィールドを変更できる。すなわち本文、表題、「コ メント」フィールドだ。ここで行うことが重要になることもある。あとで キーワードを使って断章を探したりするからだ。コメント欄はキーワード を入れるのに特によい場所だ。

この集結地から、断章は保管ファイルに納められる。ここからはもう編集 することができなくなる(コピーして集結地に新しい編集可能な断章を作 ることはできるのだが)。また、保管ファイルからは断章を削除すること もできない。保管ファイル全体を閲覧する組み込まれた手段はない。それ よりは断章のリストを作成しはじめた方がよい。

これらのリストはデータを見るための唯一の手段だ。リストは断章のあら ゆる部分集合から成ることもあり、断章はいくつのリストの中にあっても いい。あるリストから一つの断章を削除しても、あるいはあるリスト全体 を削除しても、どの断章にも影響はない。しかし、ビューに過ぎないとは いえ、リストは単なるカゲロウではない。リストは Boswell を使った作 業の土台なのだ。明示的に削除するまで存続し、意味のある名前をつける ことを期待されている。いつでも全リストのリストを確認して、どのリス トでも開くことができる。明らかに重要な疑問はこうだ。断章はいかにし てリストの中に入るのか?

方法はいくつかある。断章を確認できるなら、ダイアログでその断章をど のリストに含めるか操作したり、ドラッグ & ドロップを使ってを一つ以 上のリストにその断章を加えることができる。ダイアログは検索条件を使っ てリストを配置できるようにする。また、特定のキーワードに特定のリス トを関連づけられるので、ある断章に含まれるいかなるキーワードを持つ リストのどれにも、その断章を自動的に追加するよう Boswell に命ずる ことができる。

これで全部だ。リストを作り、それを使って断章を表示する。また、テキ ストを断章から別のプログラムにコピー & ペースト(またはドラッグ & ドロップ)することもできる。そしてリストの全体、つまりすべての断章 のすべてのフィールドを一つのテキストファイルに書き出すことができる。

善意で舗装された道 -- 私は Boswell のいくつかの面に関する開発者 の仮定やデザインの決定について賛同できない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkmsg=5627+5629+5640+5641>

もっと欠点を集めた文章をお目にかけよう。ファイルのインポート時、ス タイルが失われる。断章は文字数が 32K 未満でなければならない。これ 自体悪いわけではないが、ファイルの複数入ったフォルダをインポートし たとき、長いファイルは分割されるのではなく省略され、どれなのかは知 らされない。与えられたリストに関連するキーワードをすべて知る方法が ない。これは深刻な手落ちだろう。断章をキーワードにもとづいて自動的 にリストに追加するやり方は、自動的 すぎる 。リストを「ロック」す ることができず、途中確認のダイアログもないので、Boswell は簡単に既 存のリストをごちゃごちゃにしてしまう。検索条件も保存されない。だか らリストがどのようにして引き出されたのかを知ることもできないし、ぐ ちゃぐちゃになったときに再構築する方法もない。

最後に、Boswell のインターフェースはとても非標準的だ。これは犯罪で はない。個人的には、独創的なインターフェースは大好きだし、Boswell のは、ドラッグアンドドロップの面白い使い方など、極めて感じがよい。 しかし、Boswell は、なにかを選択したら、選択したものすべてに影響を 与える、といった、もっとも基本的な Mac のしきたりのいくつかさえ無 視してしまっている。だから、たとえば、特定の断章を選択して、特定の タグを加えたり、コメント欄にあるキーワードを加えたり、といったこと ができないのだ。これは不必要にいらいらし、不便である。マニュアルで は、これが普通ではないデザインの決定だと Boswell の開発者はみな気 がついているとほのめかしてあるし、これについてちょっと考えている、 と暗に言っている。さて、このプログラムの他の多くの点と同様、彼らは よく考えたが、その考えは間違っていたのだ。

最後にもう一発 -- James Boswell のおかげで我々は Oliver Goldsmith の Samuel Johnson に対する評価を知ることとなる。「彼のピ ストルがねらいをはずしても、床尾で倒される」ので、彼と議論をするこ とはできない。Boswell というプログラムの場合、ユーザーを倒す「床尾」 はマニュアルだ。業界用語の領域を多く旅してきたが、用語が一つの場所 にこれほど濫用されひしめき合っているのを見たことがない。「journal」、 「archive」、「notebook」、「entry」、「library」、「fluid」、 「frozen」、「browser」、「hub」、「zip」、「zap」、「zip-zap」、 他にもっとある。全部頭がぼうっとしてくるし、むしろ信じられないこと で、まったく必要無いことだ。Boswell は非常に単純なプログラムなのだ から。

TidBITS の読者は私が情報の保管と復旧ユーティリティに極めて好意的で、 ほとんど取りつかれているのをご存じだろう。データを整理する方法とし ては、Boswell の変化しないリストは素晴らしい、エキサイティングな仕 組みだ。しかし、Boswell を何に使うかあまり想像することができない。 Eudora のメールのメッセージをインポートはしないだろう。Eudora の方 が、蓄積されたメッセージを検索するのに優れているからだ。フィールド がないのでスケジュール管理や文献管理には使わないだろう。断章の順番 を整理できないため、執筆ツールとしては使わないだろう。Boswell を使っ ていろいろなメモをためておくのは想像できる。しかし削除できないので 使うのはもうちょっと先にしようかと思う。整理のために使うとき、同時 にアーカイブ化しなくてもよければいいのに、と思う。全体的に見ると、 依然として私の好みは、Helix のような本当のデータベースや、MORE の ようなアウトライナー、IN Control や Web Arranger のようなフィール ドベースのアウトライナー、Idea Keeper のような専用の断章オーガナイ ザなどで、古き良き HyperCard でさえ好ましい(誰か Mark Zimmerman 氏の FreeText を覚えていないだろうか)。しかし、Boswell のすること が希望通りなら、簡単でシンプルという魅力的な美徳を備えている。値札 がその魅力を帳消しにするかは自分で決めなければならないだろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1196>
<http://www.his.com/~z/c/>

Boswell の価格は 130 ドルで、PowerPC 搭載の 7.1.1 以上のシステムが 動作する Macintosh を必要とする。デモが 1.6 MB のダウンロードで入 手可能である。

<http://www.boswell.com/html/demo.html>


リレーショナル・データベースと Mac OS X(第二部)

by Jonathan "Wolf" Rentzsch <tidbits@redshed.net>
(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>)
(  :西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

Mac ユーザーは、Mac OS X の中核であるという理由から、Unix に関連し たおたくの世界に立ち向かっているが、新たに必要とされる強力なリレー ショナル・データベースソフトウェアを動作させる能力については気づい ていないかもしれない。この記事の第一部では、リレーショナル・データ ベースはどのように動くものかについての基礎を論じた( TidBITS-580 参照のこと)。今週は、現在 Mac OS X 上で利用できる商用、あるいはオー プンソースのデータベースについてお知らせしたいと思う。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06432>

先週 Mac OS X をサポートする FileMaker 5.5 がリリースされたように、 Classic Mac OS X の下で稼働しているデータベースのほとんどが Mac OS X へ移植されようとしている。しかしながら、新しいデータベースプログ ラムも参入してきている。これらのデータベースすべては、違うプラット フォーム上には、何年も存在するものだった。そして、Mac ユーザーが、 やっとこれらのデータベースソフトを動かすことができるのは、Mac OS X だけなのである。

まず言いたいのは、Mac OS がデータベースパワーの点で、勝っていない にしても今では、Windowsと同等に張り合っているなどということはどう でもいい、ということだ。Macintosh の世界には、マイクロソフトの Access のような使いやすい 一般向けの SQL データベースがいまだに存 在しないが、Mac OS X で利用できるデータベースは、量・質ともに比較 にならないほどのものとなっている。特に Oracle が乗りこんできたら、 なおのことである。

また、これらのデータベースのうち、FileMaker、あるいは 4D、MySQL の ように日々のデータ入力や クエリのための直接的な使用を意図している ものなど 1 つもない、ということを心に留めて置いてほしい。さらに、 PostgreSQL は、コマンドラインで操作されるデータベースであり、その 一方で FrontBase や OpenBase は、初歩的なデータ入力や検索のインター フェースしか持っていない。その代わり、これらのバックエンド・データ ベースは、利用シーンの後方で作業し、ある種のフロントエンド・インター フェースと組み合わせて使うように意図されている。たとえば、ウェブペー ジやデスクトップアプリケーションがそうである。

MySQL -- MySQL はもっとも人気のあるオープンソースのデータベース であり、多くのデータベースと違って、MySQL は大きな本文のテキストを 扱え、このことが Web 会議室にあるような Web パブリッシングおよびメッ セージングシステムにふさわしいものにしている。悲観的に見れば、 MySQL は ACID(この記事の第一部で学んだように Atomicity、 Consistency、Isolation、Durability)を満たしていない。トランザクショ ン処理のサポートが加わったのは最近のことで、これはむしろ付加的なも のだ(MySQL のトランザクションはテーブル全体をロックする)。ACID は完全に組み込まれている必要があるのだ。トランザクション処理のサポー トがないことは MySQL に速度的な優位性を与えていたが、PostgreSQL は さまざまなタスクで MySQL に匹敵することがわかっていた。

<http://www.phpbuilder.com/columns/tim20001112.php3>

最後に、MySQL はオンラインバックアップをサポートしているが、コピー を実行中はデータベースをロックして更新ができない(読み出しのみのア クセスは除く)。オンラインバックアップは、データベースを完全に終了 させることなくバックアップを可能にする。

結論:MySQL は無料であり、コンテンツ重視のシステムには合うだろうが、 伝統的なビジネス用途では、私なら PostgreSQL または FrontBase にす るだろう。

<http://www.mysql.com/>

PostgreSQL -- PostgreSQL はおそらく最良のオープンソースのデータ ベースだ。トランザクション処理をサポートし、このことが本格的なビジ ネス用途に合うものにしている。PostgreSQL はオンラインバックアップ を備えており、MySQL と違って、バックアップ中もデータベースの更新処 理を継続する。PostgreSQL に以前あった 8K という一行のサイズ制限は、 幸いにもバージョン 7.1 でなくなった。

PostgreSQL は、定期的にデータベースを「VACUUM」する必要があるとい う欠点を依然としてもっている。VACUUM は、データベースをほぼきれい にする PostgreSQL だけの、非標準 SQL コマンドである。VACUUM コマン ドは時間がかかることがあり(15 分はまれではない)、実行中はそのデー タベースのいかなる使用も拒否する。また、データベースを単に汚れたま まにしておくという選択肢もない。というのは、PostgreSQL は、定期的 に VACUUM をしないと、なぜだか動作しなくなりだす。状況が異なれば VACUUM の頻度も異なるものだが、ある人はこの命令を週に一度行い、他 の人は一時間ごとに行う。

結論:PostgreSQL は無料であり、Mac OS X 上のビジネス用途では最良の オープンソースのデータベースである。

<http://www.postgresql.org/>

FrontBase -- 私は実は FrontBase が好きだ。PostgreSQL と同じく、 SQL92(およそ 1992 年の最新バージョンの国際標準 SQL)をサポートす る。各データベースは単一ファイルに存在し、これがデータベースファイ ルの同定と移動を簡単にしている。FrontBase はオンラインバックアップ とクラスタリング(2 台以上のマシンにデータベースを共有させて、相互 に接続を受け渡させる機能で、信頼性と速度が向上する)をサポートし、 raw disk サポートを備える(ファイルシステムのオーバーヘッドを回避 できる)。

FrontBase は強力に ACID を達成するが、それにはほぼあらゆる変更をデー タベースに任せる必要がある。FrontBase は Mac OS X と X Server 用の グラフィカルな管理ツールを備えるが、エンジン自体はさまざまな他のオ ペレーティングシステム(Windows NT/2000、Linux、LinuxPPC など)で 動く。また、Web ベースの管理ツールもある。Mac OS X では、標準のシ ステムインストーラを使用し、これはグラフィカルで親しみやすい。

MySQL や PostgreSQL とは違い、FrontBase はオープンソースではない。 しかし、2 種類の 無料の FrontBase ライセンスがある。一つは、デベ ロッパーライセンスで、すべての FrontBase の機能が 6 ヶ月間(更新可 能)有効になる。しかし、システムを導入する権利は与えられないので、 他のいかなる人にもあなたのデータベースを使用させることはできない。 二つ目の無料ライセンスは、システム導入が可能だが、ホットバックアッ プもクラスタリングもデータベースへの外部接続(ネットワーク上の遠隔 接続として定義される。したがってあるマシンから CGI または WebObjects への接続は問題ない)もできない。外部接続とホットバック アップを可能にする 999 ドルのライセンスと、これにクラスタリングを 加えた 3,499 ドルのライセンスがある。

FrontBase はデータの読み込みを簡単にしている。FileMaker Pro や MySQL、OpenBase、Sybase から既存のデータベースを変換するためのイン ストラクションやツールが含まれるからだ。FileMaker Pro ツールが広告 通りに働くことは、個人的に保証できる。このコンバータがあるので、 FrontBase に加えて WebObjects は、もっとパワーを必要とする FileMaker Pro デベロッパーにとって、魅力的な選択肢となっている。

FrontBase には 2 つの欠点がある。一つは、ソフトウェアのインストー ル後にライセンス番号を入力しなければならないことだ。これはそれ自体 悪くはないのだが、このライセンスはマシンの IP アドレスと結び付けら れ、DHCP(あなたの Mac は再起動ごとに異なる IP アドレスが割り振ら れる可能性がある)では効力がない。だから、DHCP 使用を必要とする、 携帯する PowerBook 上や DSL またはケーブルモデム接続の Mac 上で FrontBase を動かすのはやりにくいこともある。

FrontBase 社のある社員は私にこう伝えた。「これは、root アカウント の下で動かさないと、ソフトウェアがそのコンピュータの Ethernet MAC アドレスを取得することを Mac OS X Server が許さないためです。」 FrontBase は、ユーザーに FrontBase を root で動かす(セキュリティ的 にまずい)ことを強要したくなかったので、アクセス可能なもの、つまり IP アドレスでいくことにしたのだ。デスクトップ版の Mac OS X では変 更されているので、FrontBase は将来ライセンスを MAC アドレスに結び 付けるだろう。

FrontBase の第二の欠点は、同社が出張サポートを提供しないことだ。 FrontBase は管理をほとんど必要としないし、電子メールのサポートは迅 速で満足のいくものだが、会社によってはこれが取引を困難にすることも あろう。

結論:FrontBase は Mac OS X 用のもっとも安価なハイエンドの商用デー タベースだが、出張サポートを受けることはできない。

<http://www.frontbase.com/>

OpenBase -- ユーザーインターフェースという点では OpenBase の圧勝 だ。エレガントで美しいインターフェースを誇るほか、データベースの構 造をグラフィカルに示す、なかなか使えるモデリングツールが付属する。 例を挙げると、テーブルは四角く表示され、テーブル間の関係は線で示さ れる。

OpenBase のデータベースエンジンは高速・モダン・強力と三拍子揃って いるようだ。FrontBase と同様、OpenBase は無料の開発用ライセンスを 提供しており、オンラインバックアップもサポートしている。 ClickConvert という 295 ドルの移行ツールも用意されており、 FileMaker Pro データベースからデータを移す手助けをしてくれる。

OpenBase の美しさは Mac OS X の Cocoa 環境に由来しているのだが、そ の一方で OpenBase がサポートするプラットフォームが限定される理由に なっている。OpenBase は Mac OS X と Mac OS X Server を直接サポート しているが、Solaris や Windows 2000 で OpenBase を使うには、 WebObjects をまず購入してインストールしなければならない (WebObjects に Cocoa フレームワークが付属するからだ)。最近 WebObjects の価格が大幅に引き下げられたとはいえ、OpenBase の価格 2,000 ドルにさらに 700 ドルが加わることになる。OpenBase のグラフィ カルなインターフェースは Java で書き直されているので、将来サポート されるプラットフォームは増えるはずだ。残念なことに、テクニカルサポー トはメールのみとなっている。

OpenBase は高価だが、低予算ユーザーにも望みはある。この記事を執筆 中、OpenBase は PHP との組み合わせで使用するための 499 ドルのライ センスを発表した。PHP はデータベースと Web サイトをリンクする人気 の高いツールだ。この低価格版には 2 つの制約がある。FrontBase の無 料配備ライセンスと同様に、外部接続が許されないことと、FrontBase と は異なり、WebObjects をサポートしないことだ。とはいえ、FrontBase では 999 ドル以上する機能であるオンラインバックアップはサポートし ている。

結論を言えば、価格的に最も敷居の高いデータベースが、ハイエンドなリ レーショナル・データベースの初心者に最も向いているという皮肉なこと になる。高給取りのコンサルタントや、データベースを早くセットアップ しなければならないという場合には、OpenBase の使いやすいインターフェー スが高価格に見合うだけのものになるかもしれない。

<http://www.openbase.com/>

Oracle? Oracle が Mac OS X に移植されるという噂は以前から絶えず 囁かれている。技術的にはできない理由はない。Oracle はすでに数種類 の Unix で動いており、Larry Ellison 氏は Apple の役員として名を連 ねている。

Oracle が Mac OS X というプラットフォームの地位を揺るぎないものに すると考えている人は数多い。この考えは確かに当っている。Oracle は パワー、柔軟性とサポートで知られている。一方、非常に高価で複雑でも あり、Oracle データベースだけの管理を生涯の職としている人も数多い ほどだ。

<http://www.oracle.com/>

選択の時 -- 財布が気になる方には、FrontBase の無料開発・配備ライ センスが魅力だろう。一銭も使いたくないがオンラインバックアップは必 要だという場合、PostgreSQL がベストだろう(ユーザーインターフェー スの点では劣るが)。エレガントで使いやすく、スピードも大切なのであ れば、間違いなく OpenBase をお薦めする。いずれ Mac OS X に移植され ると仮定して、Oracle は自分以外の誰かのお金を使い、真に巨大で複雑、 あるいは高速なデータベースを開発する場合にだけ検討すべきだろう。

これまでリレーショナル・データベースの条件と、主な候補となる製品を 見てきた。次回は、コンピューティングの舞台で、リレーショナル・デー タベースが再び脚光を浴びることになった理由の一つであるプログラム、 Apple の WebObjects に注目する。

[Jonathan "Wolf" Rentzsch 氏は、Red Shed Software 社を経営しており、 イリノイ州北西部で毎月 Mac プログラマーの会合を開いている。]


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