TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#583/11-Jun-01

Apple 社が(PowerBook G4 Titanium のお陰で)スタイリッシュなノート パソコンという市場で優位に立ったと思えるこの時に、小さな iBook (デュアル USB)のリリースを切り札にして、勝利を確実なものにしよう としている。ポーカーのごとく賭金つり上げて勝負に出たようなものだ。 あなたは、どちらのマシンを選ぶだろうか?ローカルなニュースとして、 ワシントン州最高裁が同州の反スパム法を支持するとしたことを取り上げ る。このことは、TidBITS のスパム訴訟問題に対してこれまで何が起こっ てきたかを我々に思い起こさせるものだ。また、ニュースとして、 AppleScript のワーム、Microsoft Word のマクロに関するセキュリティ 問題の修正、そして Handspring 社のリベートについて、さらに TidBITS の新しいスポンサーである Sustainable Softworks 社への我々の歓迎の 意をお届けする。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/11-Jun-01

(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>)
(  :今井 律子 <poorsun@mb.neweb.ne.jp>)
(  :山下 英治 <vatcanza@fhe.freeserve.ne.jp>)

Sustainable Softworks 社、TidBITS のスポンサーに -- TidBITS の新 しいスポンサーとして、ネットワークユーティリティを扱う Sustainable Softworks 社をご報告できるのをうれしく思う。同社のソフトウェアで最 もよく知られているのは IPNetRouter で、これはほとんどすべての Mac を機能が充実したネットワークルータに変えてしまう。ネットワーク接続 のテストやトラブルシューティングの手助けをする IPNetMonitor や、 Open Transport の内部設定の調整が自分でできる IPNetTuner のように、 Sustainable Softworks 社は他にも便利なユーティリティを作っている。 ごく最近では Sustainable Softworks 社は、IPNetSentry をリリースし た。これは目立たない個人向けのファイアウォールで、Mac からインター ネット上のクラッカー達を見張ったり阻止するだけではなく、システムク ラッシュの原因となる不完全なパケットを除去することによってシステム 全体の信頼性を改善できるソフトウェアである。しかし、Sustainable Softworks 社の最も重要なソフトウェアと言えば、依然として IPNetRouter であり、これは我々が頼りにしてきたソフトウェアである。 TidBITS データベースの記事や TidBITS Talk のメッセージを読んだり、 TidBITS のメール版を受信する時にはいつでも、適宜 IPNetRouter を通 してデータが配信されている。安定性、柔軟性、信頼性があり、作成者で ある Peter Sichel 氏の飛びぬけて優れたオンラインサポートにより裏打 ちされたソフトウェアなのである。また、重要なのは、Peter 氏と Sustainable Softworks 社の他のスタッフは、長い間 Macintosh Internet コミュニティの活動的なメンバー達であることだ。我々のえり 抜きのスポンサー会社のグループに Sustainable Softworks 社を迎え入 れることができたのは、この上ない幸せである。[ACE]

<http://www.sustworks.com/>

Word のマクロに関するセキュリティ問題修正版、入手可能に -- Microsoft は、Microsoft Word for Macintosh Security Update: Macro Vulnerability を公表した。ただ一つの重要な修正にしては、長いタイト ルである。Word 98 と Word 2001 においては、質の悪いコードを Rich Text Format(RTF)のマクロに組み込むことができる。これは、Word の 内部のマクロチェックのメカニズムに認知されなかったためだろう。この アップデートでは、セキュリティの警告をしてマクロのファイルを開くよ うにしている。この問題は、Word 98 と Word 2001 のみに影響しており、 他の Microsoft Office のコンポーネントには影響していない。このアッ プデートのダウンロードサイズは、361K である。 [JLC]

<http://www.microsoft.com/mac/download/office2001/wordmacro.asp>

Mac.Simpsons Email のワームが Microsoft のソフトを直撃 -- 先週、 電子メールで届く新しい Mac OS のワームが明らかにされた。Microsoft の電子メールユーザーの Outlook Express や Entourage を利用して、感 染したユーザーの address book に載っている面々にワーム自身を送りつ けるというものだ。Symantec 社によると AppleScript のこのワームは、 かつて人気があった Simpsons というテレビシリーズの知られざる何百も のエピソードを示すという予告にちなみ、「Mac.Simpsons@mm」と名付け られている。このワームはまた Sent Items フォルダからすべてのユーザー メッセージを削除するかも知れないが、なぜかそれらのメッセージは Deleted Items フォルダから取り戻すことができる。この添付書類は Simpsons Episodes と名付けられた AppleScript のスクリプトとして現 われる。

<http://www.symantec.com/avcenter/venc/data/mac.simpsons@mm.html>

Microsoft 社の Entourage アプリケーションは電子メールクライアント と個人情報マネージャを組合わせて Office 2001 にバンドルされている もので、address book の登録者にワームのコピーを送る前に、疑わしい 動きが見られるということをユーザーに警告する。しかし Outlook Express はこうした警告はしない。このワームはまたユーザーの Startup Items フォルダに自身のコピーを作り、Internet Explorer を使って特定 の Web サイトにアクセスしようとするとレポートは示唆している。もし、 あなたの Mac も危ないような気がするなら Startup Items フォルダの中 にこのワームや怪しいファイルがないかチェックしてみよう(もし今 Mac を起動していないのなら、起動項目を無効にするために必ず Shift キー を押したまま起動すること)。[MHA]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06139>

Handspring 社、古い PDA 機器に対し 100 ドルのリべートを提供 -- 6 月 7 日、Palm OS 互換ハンドヘルドのベンダーである Handspring 社は、 作動するしないに関わらず、ほとんどどんな PDA とでも引き換えに、薄 型の Visor Edge を購入するユーザに 100 ドル分のリベートを与えると いう買い換えキャンペーンを発表した。同社はリベート申し込み用紙と Visor Edge のパッケージから取った製品コードの原物、適格な古いハン ドヘルドを受け取り次第、Visor Edge 購入者に 100 ドルの割り戻し小切 手を送付する。受付可能な下取り品には Palm OS 搭載ハンドヘルド、 Pocket PC や Windows CE 搭載ハンドヘルド、Symbian、カシオ、Psion、 シャープのハンドヘルドや懐かしい Apple の Newton までもが含まれて おり、周りに使わなくなったこれらのいずれかひとつがまだあればよい (現在 Handspring の Visor を所有している人は、シリアルナンバーを 送付すれば Visor Edge の 100 ドル割り引きが受けられ、今持っている Visor は手元に置いておける)。Handspring 社は古い機器をリサイクル する準備が完了したと述べている。この申し込みはアメリカとカナダの居 住者を対象に 7 月 1 日まで実施され、リベート依頼の郵便物、または古 いハンドヘルドを梱包した小包はすべて 7 月 31 日までの消印が有効で ある。

<http://www.handspring.com/promos/tradeup.jhtml>


スパム、ワシントン州で窮地に

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:飯橋 真紀<k-m611@ma4.seikyou.ne.jp >)
 (  :斎藤 美礼<mirei@x.age.ne.jp>) 
 (  :西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)

昨年キング郡上位裁判所 Palmer Robinson 判事がワシントン州反スパム 法は違憲であるとした判決を、ワシントン州最高裁判所は先週満場一致で 却下した。この法律が発効すれば、特定のメールアドレスがワシントン州 住民と関係していることを証明するようにスパマー側に要求することから、 Robinson 判事はこの反スパム法が合衆国憲法の州際通商条項を犯すもの だと裁定した。Robinson 判事は正しい。このような要請は煩わしいもの だ。しかしながら、同判事は状況を考慮しきれていなかった。実際には、 誤解させる情報を件名に載せていたり、無効な返信アドレスを使用してい たり、ルーティグ情報を偽るように試みたりしている問題のあるメールの 場合にのみ発信先との関係証明が要求されるのだ。要するに、頼んでもい ないメールでさえも合法の商用メールならばワシントン州反スパム法には まったく抵触しないのだ。そのため発信先との関係証明問題にはまだ議論の 余地がある。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05871>

さらに、スパムを規制する矛盾を含んだ州法は州際通商に負担となるとの Robinson 判事の意見に、ワシントン州最高裁判所は反対の意を表明した。 他の 17 州で制定されている反スパム法はある点で互いに重複する部分や 補足しあう部分が多くみられるものの真の矛盾はないとするワシントン州 最高裁判所の見解を示した。

Susan Owens 判事は、判決文に「反スパム法がスパマーに課す唯一の重荷 は誠実の要求だ。その要求は、商業活動に負担を強いるものではまったく ないし、詐欺行為を排除することから実際には商業活性化を促すものだ。」 と記して的確に意見を表明した。

<http://www.courts.wa.gov/opinions/opindisp.cfm?docid=694168MAJ>

ワシントン州反スパム法を適用すればスパムメールは姿を消すだろうか? それは無いだろう。確かにスパムメールを最終的に減少させることになる 重要な裁決ではある。だが問題は、大量のスパムメールがケチな詐欺師か ら送信されることだ。彼らは刑法に触れずに頻繁に名前やアドレスを変更 して十分な資力のある大企業とは別の所にいることで、社会のわずかな隙 に入りこんで生きているのだ。こういった輩はいつの時代にも存在するが、 これまでは彼らのくだらない詐欺にも限度があった。ところがインターネッ トが個人の力を飛躍させたおかげで、莫大に増え続けていくお客に詐欺行 為を働くことが可能となってしまった。スパム発信の経済性は芳しいもの ではないが、その日暮らし的人生を送るには良くある必要はないし極めて 低い成功率で十分なのだ。

個人や企業がスパマーへの対抗策として反スパム法を使えるようにするこ とで、スパム発信の危険度は高まる。ただ、その危険性は大きなものでは ない。しかしながら、スパム発信が成功する余地はいずれにせよ少ないの で、付加される危険性が効力を生ずるほど巨大なものである必要はないの だ。それよりも、スパム発信にある程度の危険性を加える点でその法律が 誠実な企業を誠実なままにしておくことを助長するものだということの方 がより重要なのだ。仮に、誤解を招く情報を載せたりルーティング情報を 偽ったりした頼みもしない商用メールを現在より容易く送信できることに でもなれば、おそらくこういったアプローチをとる企業が出てくるに違い ない。反スパム法がそういった企業への歯止めとなることを期待している。

反スパム法案通過と相関してか 1999 年にスパムメールの減少を我々は実 際に経験したが、ワシントン州法は違憲であるとの判決が下されると著し くその数は再び増加した。メールサーバに効果的なフィルタを次々と加え たにもかかわらず、Geoff Duncan も私も、一日当たりに受けたスパムメー ル数は 1998 年より 2000 年の方が多かったのだ。(サーバサイドフィル タを通して受けた Geoff の 2000 年一日当たり平均スパムメール数は 7.8 通、ちなみに私は 8.2 通であった)。一年前のアンケート結果で我々 が他の TidBITS 読者と如何に比較したかがご覧頂ける。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05929>

経験談をひとつ -- ご存じの方も多いと思うが、1998 年 7 月に TidBITS はワシントン州の反スパム法に基づいて、スパマーに対して初の 訴訟を起こした( TidBITS-439 の「TidBITS、スパマーを起訴」を参照)。 問題のスパマーは Bull's Eye Gold というスパム用ソフトウェアを不法 に販売していて、TidBITS スタッフのメンバー全員の間で、ほとんど同じ 内容のスパムメールを 100 通近く受け取っていた。どのように訴訟の手 続きをとるか、といった血なまぐさい法律に関する詳細はそんなに面白く ないが、見どころを載せておこう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05000>

第一の障害は、スパマーの Christopher Lee Knight 氏を見つけ、訴訟に 関する書類を送達できるようにすることだった。最初、これは比較的簡単 だろうと思っていた。というのも、問題の Bull's Eye Gold のスパムは Worldtouch Networks 社のロサンジェルスの実際の住所と電話番号を載せ ていたからだ。我々の最初の間違いは書類を送達する前に公表してしまっ たことだった。というのは、多くの人が気がつき幸せに思ったように、 Bull's Eye Gold のスパムは我々が訴訟を発表したとたんに止んだからだ。 残念ながら、これは我々が彼を見つけだしたことが知られたということで、 彼は地下に潜ってしまった。

令状を送達する会社を Worldtouch 社の住所へ送ったが、Knight 氏を見 つけることはできなかった。我々は訴訟を取り下げることを考えたが、事 態は急にもっと面白くなりはじめた。考えを同じくする人が我々と同様に 書類を送達しようとし、また、Knight 氏とガールフレンド(Nikole Ducatte 氏というらしい)に関する秘密をかなり知っているが、話すのが 恐い、という匿名の情報提供者も現れた。それで、我々は少々お金を使っ て調査員を雇うことに決めたが、詳細な真実をいくらか明らかにしてくれ た。

明らかになったことは、Christopher Lee Knight はおそらく我がスパマー の正式な氏名ではない、ということだ。別名 Christopher Duke、どうや ら Christopher Joyce が本名のようだ。我々が訴訟を起こし、調査員が 見つける間に、彼は 6 回引っ越しをしていた。訴訟が終わるまで、調査 員は 5 州で 12 の住所を記録し、最後の郵送先住所は 6 番目の州の私書 箱となった。調査員は全資産の簡単な調査も行い(詳細なものはもっと費 用がかかる)、最近まで使用されている銀行の口座の数千ドルを見つけた。 先へ進むにはそれで充分に思えたので、続けることにした。

ついに調査員は Christopher Lee Knight 氏だと信じる根拠がある人物に 送達することができた。もっとも、その人物は自分が Knight 氏ではない と否定し、その否定を確認するための身分証明書の提示を拒否した。しか し、ワシントン州の判事は我々が適切な人物に送達した可能性が充分ある と認め、この訴訟を先に進めさせてくれた。告訴に応じるか、相手を間違 えていると主張するために、Knight 氏に 60 日間が与えられた。そのど ちらも起こらず、実は何も起こらなかった。

60 日が過ぎた後、我々は申請をし、欠席裁判を受けた。それは我々が勝 訴したことを意味する。なぜなら Knight 氏は姿を現し自分を弁護しなかっ たからだ。あとは我々の戦利品を取り立てる以外にすることはなかった。 残念ながら、取り立てのためにはカリフォルニア州で弁護士を雇わなけれ ばならず(さらに費用と日数がかかる)、それから調査会社をまた雇って Knight 氏の全資産をもう一度調査しなければならなかった。今度は彼ら は預金口座を閉じ、訴訟手続き中に Knight 氏はカリフォルニアを去り、 コネチカットのいろいろなモーテルに滞在していることに決めたようだっ た。別の州で取り立てするには、そこでまた別の弁護士と調査員を雇うこ とになり、Knight 氏がいつでも簡単に州境を飛び越すことができるのは はっきりしていたので、このプロジェクトにこれ以上お金を注ぎ込まない ことに決めた。

調査員からの最後の情報には面白い話があって、どうやら Knight 氏 (Christopher Joyce の名前を使い、また Nikole Ducatte 氏も一緒)は 現在 Pennsylvania の O'So Lo Foods という会社の社長らしい。低炭水 化物の食品を販売しているらしく、もしこういう人々がどんなふうか知り たければ、スタッフの写真もあるので、Web でチェックしてみることもで きる。

<http://www.osolo.com/meetthecompany.html>

訴訟を評価して -- 疑問なのは、この訴訟にやるだけの価値があったの かということだ。一つの例外、つまり約 3,000 ドルの費用を負担した財 務面を除いて、イエスと言わなければならないだろう。当時のもっとも悪 質なスパマーの一つ(我々が受け取った Worldtouch Network に同情的な 多くの電子メールから判断して)を制止したし、スパム問題に対して公衆 の大きな注意を喚起させたし、全体としてスパムの量を減らすのに貢献し たように思えた。結局はこの結果を喜んでいる。ただ、訴訟費用の支払い にご援助をくださる方がいれば、<editors@tidbits.com> アドレス宛てに Kagi もしくは PayPal を通して TidBITS への寄付をいただければ幸いだ。 (万が一我々が負担したよりも多くのお金が集まった場合は、適切な非営 利に寄付するつもりだ)。

<http://www.tidbits.com/about/support/contributors.html>
<https://www.paypal.com/refer/pal=editors%40tidbits.com>

あれやこれやで私にははっきりした。我々が解き放ったこのインターネッ トの精といかに共存すべきかを学ぼうとすると、一団体としての我々の前 には歩むべき遠い道程がある。しかし、人生の運不運は両方とも受け入れ なければならないし、私は依然として楽観的だ。いつの日か、法規制の必 要なく我々の生活からスパムを根絶する、有効な社会的で技術的な仕組み を我々は手にしていることになろう。


iBook? それとも TiBook?

by Mike Whybark <mike@whybark.com>
(翻訳:蒲生 竜哉 <gamo@lib.bekkoame.ne.jp>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)
(  :篠原 慎一 <sshino@mbd.sphere.ne.jp>)

もし少し働くだけでぴかぴかの PowerBook G4 Titanium か Apple の最新 鋭機、驚異のモバイルコンピュータ iBook(Dual USB)がもらえるとした らあなたならどちらにするだろうか。むろん簡単には答えられないことは 判っている。どちらの Mac も大変に魅力的だ。しかし、この究極の選択 にこの記事で答えを出したいと思う。ところで私の立場はかなり特殊だ。 私は Macintosh のラップトップコンピュータを必要とするようなマルチ メディアソフトウェアの会社で働くフリーランスエンジニアであり、他の 雇い主は私が必要としているような最高速のラップトップコンピュータ購 入費用の一部を喜んで出資してくれる。もし、あなたがこの二つのコン ピュータのどちらにするかこれから決めようとしているのであればぜひ以 下の記事を参考にして欲しい。私の考えがあなたの選択の手助けになれば 幸いだ。

私が欲しいと思っているコンピュータとは最新かつ高速で、タフな上に軽 量なポータブル Mac だった。私はこれを 3 年間は使いたいと考えていた のでこのコンピュータはハイパワーでなければならない。またイメージと オーディオ編集を多く含むプロジェクトを生業としているため CD-R と大 容量内蔵ハードディスク、高速な外部通信ポート、たくさんのメモリ、そ れに大きく明るいディスプレイも欲しかった。さらに自宅にある AirPort ネットワークを使って仕事ができるように AirPortカードも必要だった。 一見、こうした要件を考えると最新鋭の PowerPC G4 プロセッサによって 駆動され、ハイエンドなスペックを誇り、巨大な LCD ディスプレイを持 つ PowerBook G4 Titanium こそがお眼鏡にかかるマシンのように思えた。

Titanium の問題 -- 私は Apple の Web サイトから調査を開始した。 驚いたことに、 PowerBook G4 Titanium はたった 3 種類のハード構成、 ハードディスクの容量がそれぞれ 20 GB と 30 GB の 400 MHz モデルと 30 GB の 500 MHz モデルしか用意されていないことが判った。

特にがっかりしたのはドライブ構成が DVD-ROM ドライブの 1 種類しかな いことだった。Titanium の薄い筐体には他のデッキは入らないのだ。私 が長年使っていた先代のマシンには DVD-ROM ドライブがついていたが、 このドライブで DVD-ROM を見たことはまだ一度もない。私はデータを CD に焼かなければならないことがよくあるので、CD-R ドライブがないこと は私の仕事の妨げになりかねなかった。外付けの FireWire CD-R ドライ ブは持っているからポータブル機内蔵の CD-R は絶対要件ではない(もっ とも、このためには FireWire ポートが絶対要件にはなるが)。Titanium は FireWire を内蔵しているのでこの点は問題がない。しかしこの CD-R がないという失望感は私に他の選択肢を探させる原動力となった。そして 一つの選択は即座に現れた。

<http://store.apple.com/1-800-MY-APPLE/WebObjects/AppleStore?family=PowerBook>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06269>

iBook をチェックする -- 2001 年の 5 月 1 日、Apple は新しい iBook(Dual USB)を発表した。白く輝くプラスティックのボディからす ぐさま“iceBook”というニックネームのついた新型は見た目の上でも機 能の上でも今までのキャンディーカラーの iBook とは大きく異なる。従 来の曲線的なデザインの iBook に比べて小さくそして軽くなり、実際小 型化という点ではあの美しい Titanium よりも優れている。幅も奥行きも Titanium より小さく、4.9 ポンド(約 2.2 キロ)のボディは 0.4 オン ス(11 グラム)軽い。また厚みも装置を閉じた状態でかすかに 0.35 イ ンチ(8.9 ミリ)しか違わない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06422>

6.6 ポンド(約 3.0 キロ)の重量とかさばる筐体のため旧型の iBook は 検討候補に入っていなかったのだが、新型 iBook のサイズと重さは私に とっては大いに魅力的だった。さらに詳しく見てみると嬉しいことに新型 iBook には FireWire ポートもあることが判った。もちろん AirPort はす ぐに使えるし、さらに興味深いことにこのマシンには CD-ROM、CD-RW、 DVD-ROM、それに CD-RW/DVD-ROM コンボドライブの 4 種類のドライブ構 成がある(ところでこれは購入時に選択する必要がある。従来の PowerBook G3 シリーズとは異なり、ドライブは交換不能だ)。これだけ 機能を備えているにも関わらず、最低装置価格は Titanium と比べて 1000 ドル以上安い。

<http://store.apple.com/1-800-MY-APPLE/WebObjects/AppleStore?family=iBook>

いろいろ iBook について調べているうちに、このマシンには Titanium と比べるとプロセッサ、システムバスのスピード、そしてビデオとディス プレイの 3 つの点で劣ることが判った。言うまでもないとは思うが、それ ぞれの点において Titanium の方がパワフルだ。

すぐに気がつく違いはもちろん、より高速な上それに最適化された一部の アプリケーションの演算速度を劇的に向上させる Velocity Engine を搭 載した PowerPC G4 ではなく PowerPC G3 プロセッサが iBook で使われ ていることだ。Mac OS X 自身 Velocity Engine に最適化されており、そ こから考えると同世代のマシンの割には iBook の方が PowerBook G4 Titanium よりも遅く感じられるであろうことは明らかだ。これは 3 年は 使いたいという私の要求が iBook では満たせないだろうということを意 味する。

次に iBook には 66 MHz のシステムバスが使われていることが挙げられ る。対して Titanium は 100 MHz のシステムバスが使われており、この ことは大量のデータをシステムバス上で移動させなければならないような 処理においてマシンの性能に大きな影響があると考えられる。反面 iBook の 256 K の L2 キャッシュは PowerBook G3 のチップに内蔵されていて 500 MHz で動作するのに対して、G4 チタンの 1 MB の L2 キャッシュは プロセッサモジュールに搭載されていて CPU の半分の速度でしか動作し ない(200 ないしは 250 MHz)。

<http://www.apple.com/powerbook/specs.html>
<http://www.apple.com/ibook/specs.html>

最後にそしてもっとも重要な違いとしてビデオとディスプレイの問題が挙 げられる。iBook の内蔵ディスプレイは最大解像度 1024 x 768 ピクセル、 12 インチの XVGA TFT アクティブマトリックス LCD だ。これ自体みすぼ らしいとは言えない。しかしながら Titanium の 1152 x 768 ピクセル、 15.2 インチのワイドスクリーン LCD とはやはり比べものにならない。

iBook は旧型の PowerBook G3(FireWire)とほとんど同じビデオサブシ ステム、AGP 2x の ATI RAGE Mobility 128M を搭載している。しかし、 iBook の VGA 出力ポートは内蔵ディスプレイのビデオミラーリング機能 しかサポートしていない。これはプロジェクターを使うときや大きなモニ ターを iBook の最大解像度で使う分には問題にならないが、PowerBook G4 Titanium がサポートしているモニタースパンニングを使った広大な画 面はやっぱり魅力的だ。

最後にもう一点、iBook には Titanium と異なり PC カードスロットがな い。しかし内蔵された機能と通信ポートを考えると私には PC カードで機 能を拡張しなければならない理由は特に思いつかない。

外野の意見 -- 少し希望を見直せば iBook がちゃんと選択肢になると わかったところで、次に自分の欲求から必要なものだけを選り分ける段に なった。そのためにゆっくり時間をかけて他の人からのアドバイスを求め ることができて、私は幸運だった。

まず自分の妻に相談した。妻は私の説明を聞いた後、最終的に彼女にとっ ては値段が問題だと教えてくれた。明らかに安い iBook のほうが良い選 択肢だと考えたのである。コンピュータのプロフェッショナルたち(多く は非 Mac ユーザー)に尋ねてみても同じ答えだったが、新しい見方もあっ た。私の使い方と周辺機器を考えると、買おうと思っているマシンはすで に持っている Power Mac G4 デスクトップシステムの代わりにはならない だろうというのだ。だから小さく、軽く、そして安い「いつも身近な」シ ステムを手に入れるのが賢明だろうということだった。

TidBITS Talk で精通した Mac ユーザーに尋ねると、やや違う意見が返っ てきた。Titanium のほうが iBook より良いというのである。その理由は ディスプレイと画面サイズがもっとも多く、続いてバッテリーの持ち、速 さ、そしてプロセッサ関係の順だった。また TidBITS Talk の人たちはポー タブルコンピュータで CD-R をという私に対して、それはなくても良かろ うという意見だった。

因習打破主義を貫く TidBITS Contributing Editor の Matt Neuburg 氏 は PowerBook G3(FireWire)を勧めてくれた。理由はそのプロ向き機能 で固めた頑強さと、新型ポータブルの発売による値下がりだった。彼の考 えは説得力があった。しかし大きさと重さが否定的要因として頭にあった ので、私は彼のお勧めのマシンを詳しく検討しなかった。それでも電池を 2 個積めることと転売時の価格(eBay で Final Cut Pro 付きが約 1,800 ドルだった)によって、このマシンはプロフェッショナルユーザーにとっ て iBook に匹敵する値打ちがある。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1390>

iBook に関して手を伸ばした情報源の最後は Macintosh の価格/バンドル の調査サイト、それに討議グループと掲示板である。これらのフォーラム からは結構興味深いことを学べた。最も際立ったのは、多くの人が Titanium から新しい iBook に照準を下げようとしていること、それに Titanium はその宇宙時代にふさわしい構造にもかかわらず、その薄さと 大きな形状規格から壊れやすいという印象を与えているようである。 Titanium に関するその他の否定的な事項には DVD-ROM ドライブとの問題、 閉じられたときにスクリーンに付くかすかなキーボードの跡(キーボード 上のゴミや油汚れによる)、アンテナ位置とチタンの遮蔽効果によると思 われる AirPort の貧弱な到達距離があげられている。もちろん Apple 社 は早晩これらの設計上の不具合を解消してくれると思うが、今回の購入ま でにはとても間に合わない。時期に関して言えば、Apple 社はこれまで量 産段階で約束どおり出荷するのに問題があったが、新型 iBook(とりわけ CD-ROM 版)は順調で、オンラインオーダーの一部は約束期日以前に出荷 しているようだ。

一方で、新型 iBook のオーナーが経験している問題点のいくつかについ ても知った。最初に表面化したのは iBook の音声出力に関する問題で、 これは再起動しないと解決できないというものであった;これに対しては Apple 社は即座にソフトウェアアップデートで対応し、すべての iBook オーナーはダウンロードしインストールするよう勧めている。二つ目はト ラックパッドに関する種々の問題で、カーソルがフラフラしたり跳んだり する現象である。このトラックパッド問題は今でも報告が入っており、こ の問題の解決法も、問題の起っている範囲についての明快な説明も今のと ころは出されていない。[Small Dog Electronics から到着したばかりの 新型 iBook を見てみると、カーソルがフラフラしたり跳んだりする現象 は、少なくとも私のマシンについては、大きなトラックパッド表面に複数 の指でたまたまさわることと関係しているように思う。-Adam]

<http://asu.info.apple.com/swupdates.nsf/artnum/n12255>

自前の建物で経営しているような店には iBook の在庫が結構あることを 読んで、Seattle にある地元の Computer Store に立寄ってみようと思い 立った。Titanium の形状規格とスクリーンサイズからするときっとより 印象深いだろうと想像していたのだが、実際に両方のマシンを並べて使っ てみると、iBook のキーボード、トラックパッド、それにボタン配置の方 がその差がわかるほど使いやすいことに気づいた。とりわけ、Titanium に はマシンの前面の端とトラックパッドボタンの間に、半インチほどのへこ みがあり、親指でボタンを押そうとするたびにかわりにこのへこみを押し てしまうのである。iBook では、トラックパッドとボタンは Titanium の と形も大きさも同じなのに、この問題には遭遇しない。これ自体はたいし た問題でない - Titanium のへこみを避けるように操作するのに慣れるの もたいした時間もいらないと思う。それでも結局のところ、iBook の方が 使いやすいというのが私の印象である。

iBook のディスプレイは非常に鮮明で明るい。最大解像度の 1,024 x 768 の時でも、それを見つめのにもあるいは小さくなったコントロールをヒッ トするのにも困難さはなかった。Titanium の大きなディスプレイはそれ はそれでいいものだが、何らかの理由で、iBook のディスプレイの方が私 にははっきり見えるのである。最後に、Titanium のスロットローディン グ型の DVD-ROM はマシンは前面にイジェクトするので、ベッドの中で使っ ている時はちょっと気をつけなければなどと思ったりした。側面のトレイ ローディング型の iBook ではこの問題は気にしなくてよい。iBook に関 するほかのおまけとして、膝の上にのせて使った時、第一印象にしかすぎ ないのだが、Titanium よりも発熱が少なく動作するのではないかという ことである。寒い季節、雨の季節には、膝の上の暖房はありがたいが、そ うでなければことさら腿を焼く必要はない。

最後に、iBook がいかに 小さく 見えるかに感心した。一方で Titanium の方はその幅のせいで大きさを感じさせる。その違いは長手方 向に端から端まででたったの 2.2 インチでしかないが、パッケージでは この数インチの違いが大変重要なのである。

Book を選ぶ -- 要するに、iBook の価格は、Titanium に比べてはるか に魅力的だということがわかった。また、この価格の安さで、ライフサイ クルが 3 年なくても我慢できるようになった。主な技術的な差異、たと えば CPU 速度、ディスプレイサイズやモニタのスパンニング能力は、結 局のところ決定的なものではないのだ。というのも、ポータブル機を、私 が主に使用しているデスクトップ機と連携して使おうと考えているからだ。 結局、2 台のマシンを並べて操作する機会が、漠然とした理由ではあるけ れども、私に iBook の雰囲気の方を選ぶ決意をさせたのだ。

結局、iBook が私の要求にいちばん近いのだ。備えている最新のポート群 は私の家にある周辺機器との接続性があるので、最も安価な CD-ROM モデ ルを入手することに決めた(追加の RAM と電池つきだが)。iBook のと ても小さなサイズは旅行に携行するのが容易だということであり、 Titanium との価格差は、最近の収入のいくらかを節約して、よく言われ る「まさかの時の蓄え」を作る手助けをしてくれる(電力が非常に高価な この西海岸では、それは晩夏に電気料金請求書の形でやってくるかもしれ ない)。私は自分の iBook の箱を開けるのを楽しみに待っている。

[Mike Whybark 氏はシアトルに本拠を置く Bare Knuckle Boxers で明青 色の電気マンドリンを演奏している。また、数ある中でも、DVD アニメク ラシック「Bubblegum Crisis」や「Better Homes and Gardens」2 種の Webサイトのユーザインタフェースやロゴのデザインを行った。直近では iPromotions(現在は 24/7 Media 社の一部門)用のオンライン宝くじや コンテストの管理システムにおける初期開発を指揮した。]

<http://mike.whybark.com/>
<http://www.bareknuckleboxers.com/>


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