TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#592/13-Aug-01

コレクションした MP3 を持ち歩きたい? Travis Butler 氏が Archos Jukebox を、以前レビューした Nomad Jukebox と比較する。セキュリティが関心事である Glenn Fleishman 氏は、Apple 社の AirPort と他の802.11b 無線ネットワーク装置が利用する WEP プライバシープロトコルが簡単に破られることをお見せする。ニュースでは、Microsoft 社が独占判決について最高裁判所へ上訴したこと、Apple 社による KidSafe の中止、そして Maxum 社の PageSentry 4.0 リリースをお伝えする。

記事:

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MailBITS/13-Aug-01

Apple 社が KidSafe を中止;ご意見を募集 -- Apple 社お薦めの子供向けインターネットサービスと、非該当サイトへのアクセスを制限するKidSafe 機能を利用していた人々は、別のサービスへ切り替えなければならなくなった。Apple 社は利用が少ないことを理由に KidSafe を中止したと発表した。人々がそのサービスを利用しなかった理由ははっきりしないが、私たちはそれを推測する代わりに今週のアンケートを用意したので TidBITS ホームページをご覧いただきたい。アンケートは KidSafeに関する意見を問うものであり、結果を見れば利用者がとても少なかった理由が判るだろう。KidSafe を利用している方は KidSafe 機能拡張 をExtensions フォルダから、KidSafe Sherlock プラグインを Internet Search Sites フォルダからそれぞれ削除できる。今回の KidSafe の中止は今年 2 月の iReview の終了に続くものである。[ACE] (吉田)

<http://kidsafe.apple.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05763>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06320>
<http://www.tidbits.com/>

PageSentry 4.0 が Mac OS X に対応 -- Maxum Development 社は同社のサーバ監視および管理ユーティリティの最新バージョンをリリースした。簡単に言うと PageSentry はインターネットサーバを継続的に監視し、サーバが応答しなくなると何らかの動作(メールを送る、ページャに伝える、AppleScript スクリプトを実行する)を行う。(現在私は古いバージョンを使って、IPNetRouterMac 実行用の Mac のイーサネットカードがいかれてインターネット接続がうまくいかなくなった時に、そのMac をリブートさせている。)PageSentry 4.0 は Carbon 版と Classic版の両方が含まれるようになり、System 7.1 から Mac OS X までとの互換性を持つ。新機能としては、拡張された統計情報、Status ウインドウの新たな詳細情報、テスト項目{訳注:これを sentry と呼ぶ}の並べ替え、特定時刻にテストを停止する機能、Web レポートの改良がある。PageSentry 4.0 は扱えるテスト項目の個数が異なる 4 つのバージョンがあり、価格は PageSentry OneSite(5 項目)の 95 ドルから PageSentry ISP(500 項目)の 595 ドルまで。[ACE] (吉田)

<http://www.maxum.com/PageSentry/>

マイクロソフトが独占判決を最高裁判所へ控訴 -- マイクロソフト社が独占企業 であり競争を阻害する行為を行ったと高等裁判所が認定してから一ヶ月 (TidBITS-586”分割への険しき道”を参照)、マイクロソフトは反トラスト法違反 訴訟を連邦最高裁判所に控訴した。マイクロソフトは、地方裁のトマスペンフィールド ジャックソン判事が同社に対して偏見を抱いており裁判に関わるべきでなかったた め、高裁の判決が覆されるべきだと主張している。高裁は刑罰過程におけるメディアに 対してのコメントに関してジャックソン判事を厳しく譴責したが、ジャックソン判事 の判決自体に偏見を見出してはいなかった。同時にマイクロソフトは最高裁判所がマ イクロソフトの控訴を審理するかどうか決断するまで訴訟を現在担当している高裁が 判決を下すことを延期するよう、求めた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06475>

連邦最高裁判所にはマイクロソフトの控訴を審理する義務はまったくなく、この4年 にもなる訴訟を取り上げたり既に下された高裁判決を覆すとも思われない。そのため、 マイクロソフトの行動はもっぱらウィンドウズXP-マイクロソフトによるウィンドウ ズとインターネットエクスプローラの組み合わせ同様、今まで別だった機能をさらに ウィンドウズOSに統合している-の発売日の先まで反トラスト法違反訴訟を延ばすた めの引き伸ばし作戦としか見られていない。[GD] (倉石)

Microsoft Office 10 の Palm・ODBC サポートについて -- 先週号の Microsoft Office 10 についての記事に間違った情報を載せてしまったのでここに訂正したい。Microsoft Office 10 の最初のリリース版において「抜けている機能」について私と Microsoft との間の意思疎通に誤解があったために、間違いが生じてしまったのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06514>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkmsg=11379>

結論から言えば、Palm との同期機能や ODBC のサポートは Office 10 にも含まれる予定なのだが、Office 10 の最初のリリースには含まれず、後日になってから無料の追加機能として登場することになる、ということだ。Microsoft の Macintosh Business Unit の General Manager、Kevin Browne は、この誤解から生じた間違いが読者の皆さんに混乱や当惑を引き起こしたかもしれないことについてまず謝ってから、こう書いてくれた:

Microsoft は、これまでと変わりなく ODBC の API に真剣に取り組んでおりますし、またお客様がこれまでと同様に Mac の電子メール・PIM プログラムのMicrosoft Entourage を Palm OS の携帯機と接続できるようにと努めております。しかしながら、これら2つの機能を装備するために必要ないくつかのコンポーネントの完成を Office 10 のリリース予定日に間に合わせることができませんでしたため、これらの機能につきましては Office 10 の販売開始日よりも以後、無料のアド・オン・パックとしてリリースさせていただきたいと存じます。

Kevin はまた、MacBU としては ODBC 機能を必要としている人たちとぜひ連絡を取りたい、とも言ってくれた。そうすることで、彼らの ODBC の設計が実際の用途での必要に合致したものであるかどうかを確かめることができるし、また Apple に ODBC の重要性を説得するための材料にもなる、というのだ。読者の皆さんの中で、Office 10 の ODBC サポートについてご意見のある方は、私<ace@tidbits.com> までご連絡下されば、私から Microsoft の適切な人物にあなたのメッセージを転送させていただきたいと思う。 [ACE] (永田)


ワイヤレスはガラス張り

文: Glenn Fleishman <glenn@glennf.com>
訳: Mark Nagata<nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

AirMac のセキュリティーは死んだ。いや、何も空港が危険なところだなどと言っているのではない。[訳注: アメリカでは AirMac は AirPort と呼ばれている。]Apple の AirMac テクノロジーや、その他の 802.11b(別名 Wi-Fi)規格で各社から発売されているワイヤレス・ネットワーク・ハードウェアに内蔵されているセキュリティー機能の話だ。Wireless Equivalent Privacy (WEP)プロトコルには大きなセキュリティーホールがあって実際の使用に安全性が保証できない、ということは何か月も前からセキュリティーの専門家たちが指摘してきたところなのだが、今月発表された2編の論文によってついにこの問題にとどめが刺されたのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06300>

WEP はデータ・スニッファの攻撃に対する第一線の防御を担っている。802.11b デバイスというものは無線で通信するのだから、無線信号の届く範囲にいる者ならば誰でも信号を傍受できるわけだ。だから、もしも WEP 暗号化がなければ単純なパケット・スニッファ・ソフトウェアを使って簡単に傍受した信号を解読して電子メールのメッセージや Web ページ、その他何でも読み取ることができてしまうのだ。(2000 年の MacHack で開発されたプログラム、EtherPEG は、実験者が Web ブラウズをしている傍で、通信されているその Web ページの画像を傍受してみせた。)

<http://www.etherpeg.org/>

WEP を使うと、パスワード(AirMac の場合)や暗号化キー(たいていの PC システムの場合)を入力することになる。そのネットワークにおいては、同じキーを持ったシステムだけがアクセス可能になるわけだ。しかしながら、この WEP の使用しているアルゴリズム - この暗号化システムを成り立たせているアルゴリズム - は非常に脆弱なものであることがわかってきたのだ。さきほど触れた2編の最近の論文によれば、ネットワーク・トラフィックを数分間観察するだけで、そのネットワークについての知識が全く無くてもキーが解読できてしまうというのだ。暗号化アルゴリズムというものは本来、推測不可能な、反復しない、非常に多数のデータ・チャンクを扱うことによって、極端に大量の傍受情報とか実行不可能なほどの量の計算とかをもってしなければ解読できないようなものであるべきだ。ところが、WEP で通常使われるアルゴリズムでは、ネットワークヘッダの決まったパターンにごく少数の組み合わせの置換をほどこしたものしか扱わないのだ。

1つめの論文は Adi Shamir 他3人の著者によって書かれた。Adi Shamir といえば RSA の“S”、暗号が商業化され始めた時代に重要な役割を果たした RSA暗号化法の作者の一人として有名な人物だ。この論文では、パッシブ・スニッフィングによってキーの解読が可能になるような論理的脆弱点について論じている。(この論文はまだオンラインになっていないが、EE Times の解説記事がかなり詳しく内容を説明している。)2つめの論文は、1つめの論文の第1稿が発表されてからたった一週間後に発表されたもので、その攻撃の実現方法について具体的に議論している。

<http://www.eetimes.com/story/OEG20010803S0082>
<http://www.cs.rice.edu/~astubble/wep/>

どうすればよいのか -- ワイヤレスを積極的に推進しようとしている人々の多く、中でも業界の協会である WECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance、Apple もこの一員)は、重要なデータについては WEP によるこの最小限の保護だけでなく、さらに暗号化を加えることを強く推奨してきた。このアドバイスは WEP 保護とは無関係のシステムにも同様にあてはまることで、全国に拡がるほとんどすべての公共ネットワーク(有料にしろ無料にしろ)にも、今や 500 か所以上にもなった Starbucks 店舗にも言えることだ。

<http://www.mobilestar.com/starbucks_update.asp>

多くの会社では virtual private network (VPN) が使われており、これは PPTP(Point-to-Point Tunnelling Protocol) または IPSec (Internet Protocol Security) に基いて信号を暗号化し、個々のユーザーのラップトップやインターネット上のリモートコンピュータから会社のファイヤウォールを通して社内のネットワークまで継ぎ目なしの信号伝達を実現している。

<http://www.wi-fi.com/>
<http://www.ietf.org/html.charters/ipsec-charter.html>

個人ユーザーは、SSH (Secure Shell) や SSL (Secure Sockets Layer) 製品を使ってみるのがよい。これらはいずれも、安全性の保証されないネットワークを経由する接続を暗号化を用いて安全に行なおうとするものである。Macintosh上で SSH や SSL を実現したプログラムの数は多くはないが、Unix ベースの Mac OS X ならばこれからいろいろのものが登場してくるだろう。たとえば、Stalker Software の CommuniGate Pro は業界標準能力をもつメールサーバーである。Web 上の SSL はもうお馴染みだろう。オンライン売買などで普通に使われているセキュアサイトでは SSL を使ってサイトとあなたのブラウザとの間の通信を暗号化している。まだ一般的ではないがこれからますます増えてくると思われるのが SSL プラグインだ。これは既存のソフトウェア、たとえば Eudora などに追加機能を与える。SSL を装備したメールサーバーで、あなたの名前もパスワードも、また受信や送信する電子メールも、一切プレーンテキストでは送らずに Eudora を使うことができるようになるのだ。

<http://www.eudora.com/email/>
<http://www.stalker.com/CommuniGatePro/>
<http://developer.netscape.com/tech/security/ssl/howitworks.html>

SSH は Telnet に代わるものとして作られた。Unix またはそれに類似のシステムのコマンドラインに対して安全なリモートアクセスを得るためのものだ。NiftyTelnet 1.1 SSH と MacSSH とはどちらもフリーウェアで、Telnet スタイルの接続に SSH をサポートしている。また、F-Secure は $120 のMacintosh 用 SSH クライアントを発売していて、これで Unix またはWindows NT/2000 の F-Secure SSH サーバー サーバによってトンネル化されたインターネットサービスで安全な通信ができる。Mac OS X では、無料のOpenSSH が、標準の Telnet 接続を置き換えてSSH 付きの Unix シェルになっているが、SSH というものはさらに広く、POP メールサーバーへの通信や、プロキシ経由であなたのマシンとサーバーとの両端で暗号化をするような通信のための「トンネル」としても使えるのだ。

<http://www.lysator.liu.se/~jonasw/freeware/niftyssh/>
<http://www.macssh.com/>
<http://www.stepwise.com/Articles/Workbench/2001-05-02.03.html>
<http://www.openssh.org/>
<http://www.f-secure.com/products/ssh/client/>

これらのセキュリティー対策は、「誰かがあなたのデータを狙っている」という考えに基いている。それは無差別なもの(たとえばワイヤレスアクセスの公共のネットワークでのスニッフィング)もあれば特定者を狙うもの(たとえばあなたの家や会社のネットワークに侵入するケース)もあるだろう。たいていのホームユーザーはそれほど心配することはない。適当なハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク技術がありさえすれば比較的簡単に短時間で攻撃が可能とはいっても、個人の家に対して無差別な攻撃が行なわれることはまずないからだ。インターネットのデータ通信の大部分は普通の電子メールや Web ブラウジングに過ぎず、攻撃者にとって大して興味のないものだ。その結果、ワイヤレスネットワークだからといって悪いヤツに狙われることはそれほどにはありえないとも言える。

オープンなワイヤレスのネットワーク(またその他誰かにクラックされたネットワーク)での最大の危険性は、あなたが電子メール、FTP、Telnet、SSL なしの Web サイト、などで送るパスワード - たとえばキーチェーンや Internet Explorer のパスワード管理システムなどに保存されているもの - が比較的簡単に読み取られてしまうことだ。パスワードを盗まれることはあなたのデータが危険にさらされるだけではなくて、あなたのコンピュータが悪用される可能性を開くことを意味する。たとえばあなたのコンピュータが denial of service 攻撃の踏み台に使われたり攻撃者の隠れ蓑として使われたりするかもしれないのだ。あなたのパスワードを守るための最良の方法は、いつでもパスワードを暗号化するプログラムを使うこと、パスワードを頻繁に変更すること、また違うサービスには違うパスワードを使うことだ。(あなたの POP メールと Unix ログインとに同じパスワードを使えば、それだけ誰かが Unix アカウントに侵入してくる可能性を増やすことになる。)

今回の記事はここまでにするが、また今後の TidBITS で Macintosh におけるセキュリティーの問題についてさらに考察してみたいと思う。今すぐにもっと詳しいことを知りたい人、一冊の本程度の長い議論を読みたい人には、つい最近 Peachpit Press から発売された“Internet Security for Your Macintosh”(Alan Oppenheimer、Charles Whitaker 著)を一読してみることを勧めたい。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0201749696/tidbitselectro00A/>
<http://www.peachpit.com/macsecurity/>


Nomad Jukebox に挑戦する Archos Jukebox 6000

文: Travis Butler <tbutler@birch.net>
訳: 久島 昌弘<sheemer@ryukyu.ne.jp>

携帯型の MP3 プレイヤーが出てから2年になる。第一世代と第二世代は小型でバッテリ消費が少く、便利な、しかし演奏時間が極端に短い flash ROM を使用していた。2001年1月に、私は flash ROM でなく小型のハードディスクを曲の保存に使い、100時間分以上の楽曲を演奏できる Creative Labs 社の Nomad Jukebox をレビューした。("Portable MP3: The Nomad Jukebox" TidBITS-562 を参照のこと)

<http://www.nomadworld.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06261>

私は Nomad Jukebox のコンセプトが気に入った。しかしそれはまた私が本心から推薦することのできない、刮目すべき問題点をいくつか持っていた:コンピュータなしでプレイヤーが保持できる何千曲もの音楽を扱うのは厄介なのと、時々止まったように遅くなるのだ。500ドルという定価もひっかかるところだ。その後300ドルに下がったのでより魅力的にはなったが。残念なことにこれまで Creative Labs は私が気づいた問題点を直していない。そこで私は Archos Jukebox 6000 のような別の選択肢を見ることにした。

Archos Technology はマックのマーケットではあまり知られていないが、最近のいくつかの Macworld Expo で携帯型の記憶装置を展示し、2000年7月のMacworld Expo ではハードディスクベースの MP3 プレイヤーの模型を展示した。2001年1月の Macworld Expo ではその動作機があり、その後の数ヵ月の間にそれは Archos Jukebox 6000 という名前で小売り店に出回り始めた。Best Buy がそれを200ドルで売り始めたとき、私はこれを試してみることにした。

<http://www.archos.com/us/products/product_500096.html>

ハードウェアデザイン -- Nomad Jukebox と同様、Archos Jukebox 6000 は音楽保存のための6GBハードディスク、電源にAA型ニッケル水素充電池4本、パソコン接続のための USB をもっている。Archos は Nomad よりだいぶ小さい;Nomad はポータブル CD プレイヤーのサイズだが、Archos はポータブルカセットプレイヤーのサイズ - Nomad の約半分でポケットにいれることが出来る。操作系はボタン二つと4方向のナビゲーションディスクとシンプルである。私見では Archos はこれらのボタンにいろいろと機能を詰め込みすぎたようである。- 私はボリュームなどには別の専用ボタンがあってもいいと思う - がまあ、全体的にはいいデザインをしている。

ハードウェア的なデザインの問題は二つだけである:

<http://www.tidbits.com/resources/592/archos-jukebox.jpg>

Archos をヘッドフォンと外部スピーカーで聴いてみたが、どちらでもいい音に聞こえた(外部スピーカーでは Nomad より明らかに音量が小さかった)。しかしわたしは率直にいって「音キチ」ではないので他の人が気づく問題に気づいていないかもしれない。一般的な操作では Archos はスピーディで、Nomad が時々起こしたような目だった遅延は発生しなかった。バッテリの寿命も非常によくて、おそらく Nomad よりは少し長いだろう:連続的ではないが、私は普通に1回の充電で一日動作した。

全体として、ハードウェアは Nomad Jukebox ほど洗練されてはいないが、堅牢によく作られている。

ユーザーインターフェース -- Archos は Nomad よりシンプルで、より洗練されていない。がそれは欠点というわけではない:シンプルなのはより速く、より簡単ということもある。たとえば Nomad は起動時にソングライブラリを読み、アーティスト、アルバム、ジャンルで検索できるようにデータベースを生成する。Archos はこれをしないが Nomad よりずっと速く起動する。

Archos はシンプルなメインメニューを持っている。オプションはVolume, Bass/Treble controls, Play Mode (once/repeat/shuffle/scan), Language (English/French/German), Hard Disk (space used/remaining), Diagnose (checks disk for directory corruption), Firmware (version check), External (MP3 or line in), and Contrast (adjusts the LCD display)である。メインメニューへのアクセスは簡単ですばやくできる。スリープの設定もあるといいのにと思う;Archos は電源に関係なく40秒でスリープになるが、これはしばしば短すぎる。

音楽のロード -- Nomad Jukebox に音楽をロードするには、現在は廃れてしまった SoundJam MP についてきた、そして現在では iTunes でサポートされており、将来あたらしい Audion 2.5 でサポートされると思われる MP3 ソフトウェアプラグインを介するしかない。 Nomad の音楽ライブラリをコピーし管理するにはあなたの MP3 プログラムを利用するしかない。 MP3 ソフトウェアを利用するといくつかの役に立つツールが利用できるが、それでしか MP3 プレイヤーを制御できないのは面倒な制限でもある。

<http://www.apple.com/itunes/>
<http://www.panic.com/audion/>

それに比べ、Archos Jukebox 6000 は、マックからはもう一つのPCフォーマットされた USB ハードディスクに見える。Archos USB ドライバをインストールすれば、Jukebox 6000 はプラグインするとディスクとしてデスクトップに現れ、あなたは単に MP3 のフォルダをコピーするだけでよい。マックでどの MP3 ソフトウェアを使っているかはまったく関係しない。

私はこのアプローチが好きだ;この方が最良の MP3 プログラム用プラグインより面倒がないし、(ファイルを)組織化するのにさらにコントロールしやすい。Nomad の楽曲はプレイリストがなければアルバム、アーティスト、ジャンルでしか組織化できない;なのでグループ化したい曲の Genre タグを変更するといった小細工に頼らなければならないことがしばしばある。一方 Archos では、あなたは自分用のフォルダーレイアウトを作ることができ、どの様な好みにでも楽曲をグループ分けすることができる。 MP3 以外のファイルやフォルダをハードディスクにコピーすることもできる。これによりバッテリー電源によるポータブルの記憶デバイスとして使うこともできる。

ハードディスクをエミュレートする Archos は、マックの MP3 周辺機器としてより優れている。Nomad は SoundJam と iTunes のプラグインを用いてコンピュータから操作することができ、その方が Nomad のビルトインの操作系より強力である。残念ながら Nomad はマックのオーディオシステム経由では鳴らないので、Nomad 用に別のスピーカーシステムを用意するか、マックに装着しているものを借りてこなくてはならない。どちらも最良の方法とはいえない。しかし Archos は単にハードディスクに見えるので、あなたは好きな MP3 プレイヤーを使い、マックのスピーカーで音楽を鳴らすことができる。

残念なことに、ハードディスクという方法には欠点もある。あなたは通常のファイルやフォルダを Archos のハードディスクにコピーすることができる(ただしフォルダと MP3 ファイルだけしか液晶ディスプレイには表示されない)が、フォルダ名がディレクトリリストをごちゃごちゃに見にくくしてしまう。もうひとつ混乱しやすいのは、Archos が PC ハードディスクにマックのファイルシステムの情報を保持するために生成する不可視フォルダを表示してしまうことである。

上記の問題は初心者ユーザーを困らせるか、最悪混乱させる程度のものだ。しかし以下の問題はもっと悪いもので、マニュアルのほとんど致命的な間違いが更に問題を大きくしている。これについては ReadMe ファイルとArchos のウェブサイトのサポートセクションでしか問題解決できない。- パッケージに紙に書いていれておくか、マニュアルをシール書きで訂正しておく方がよい。

Archos のハードディスクはデスクトップにマウントできるため、それをマックのディスクとしてつかうために「ディスク消去」でフォーマットすることができる。マニュアルには「これは File Exchange を使うか、マックのボリュームとしてフォーマットしないとマックのディスクとしては使えない」と書いてあり、半ばフォーマットを薦めた形になっている。残念なことにそれをマックのディスクとしてフォーマットするとディスクを読むファームウェアがマックのフォーマットを読めないために MP3 プレイヤーとして使えなくなる。再フォーマットしてしまったら、ファインダの「ディスク消去」コマンドで 5.5GB DOS disk としてフォーマットすることで問題を半分解決できる。このことは ReadMe ファイルには書かれていない( PC に接続してフォーマットするよう書かれている。)完全に問題を解決して全ての機能を回復するには Archos のウェブサイトからファームウェアアップデートファイルをダウンロードし Archos のハードディスクにコピーしなくてはならない。これが Jukebox 6000 をハードディスクとして扱うときの最大の問題点である;私はこの問題を、プレイリスト作成の実験中にディレクトリを壊してしまい、ハードディスクの再フォーマットを余儀なくされたときに、かなり苦労して見つけた。

この問題にもかかわらず、私は MP3 プレイヤープラグインで Nomad を使うより Archos をハードディスクとして扱える方が好きである。Archos がマックについてさらに気がつくようになり、これらの問題をマック的にわかりやすく説明すれば、問題はほとんど解決したようなものだ。

楽曲を検索し演奏する -- 楽曲を検索し演奏する方法について、Nomad Jukebox と Archos Jukebox 6000 は対極にある。Nomad は実質上、プレイリストの作成をコンピュータで行なうことを強制する;Nomad 上で手動で楽曲をブラウズするのは面倒なことである。Archos で手動ブラウズするのはずっと簡単だが、バンドルされているマック版の MusicMatch は Archos で利用可能なフォーマットのプレイリストを生成できないので、あなたは他のソフトを見つける必要がある。

<http://www.musicmatch.com/>

Nomad は「演奏キュー」をもとに構成されている。プレイリストか楽曲を手動で選ぶとそれらは演奏キューにロードされる。このアプローチは非常に柔軟性がある;あなたは演奏する楽曲のリストをセットし、それを演奏しながらライブラリから他の楽曲を探すことができる。残念なことにビルトインの操作系で操作するのは非常に煩わしい。(詳細は私の以前の Nomad Jukebox に関するレビューを参照のこと)

Archos で楽曲をブラウズするのはずっと容易だ;ライブラリを管理可能な小部分に分け、実用的なフォルダ階層を設定できる。しかし管理方法はそれしか用意されていない;アーティストやアルバムといった、いかなる MP3 でも検索できないし、リストは曲名タグでなく MP3 ファイルのアルファベット順に並ぶ。これらの制限にもかかわらず、私は Nomad の方式より Archos の方式が好きである。ほとんど管理できない MP3 情報タグを検索するより、自分自信の管理構成ができる方が重要だと思う。

Archos のソングライブラリをブラウズしていくのは実際には容易である(多少繰り返しは多いが)。ハードディスクのトップレベルの第一項目から始めて一つづつ飛ばしていき、目指すフォルダを見つける。次にフォルダを選択し探している楽曲が見つかるまで同様に繰り返す。Archos が Nomad のような複数行のディスプレイを持っていればこの作業はもっと楽なのだが;Archos は2行ディスプレイになっており、うち一行はステータス表示である。ナビゲーションをうまくやるには一行だけでは十分でない。

残念なことに Archos は楽曲の演奏については柔軟性が少い。ノーマル演奏モードでは、あるフォルダの楽曲を選択すると、その後は同じフォルダの楽曲をアルファベット順に演奏していき、最後の演奏が終ると止まる。おしまい。アルバムの曲をフォルダにいれるときは、曲順をファイル名の頭につけないといけない;でないとアルファベット順に演奏される。(私は SoundJam のプレイリストの順にファイル名を書き換える AppleScript を書いた。「as-is」を条件に(?)アップロードしておく。

<http://www.tidbits.com/resources/592/archos-applescripts.hqx>

Archos はインターフェースに表示されている楽曲を演奏するので、演奏している間はライブラリの別の場所を見ることができない;フォルダを移動すると演奏が止まり、ブラウズして戻る以外には元の場所へ戻れない。Archos には絶対的に Nomad のような演奏キューが必要だと思う;それがあれば手動のプレイシステムはほぼ完全だ。

プレイリストサポート -- Archos のプレイリストは Nomad のものより原始的である;Archos のプレイリストは単にフォルダに保存されたファイルのことであって、一般的な方法でアクセス可能な(globally accessible)リストではない。これ自体は大きなハンディではない。しかし同梱されているMusicMatch Jukebox は標準的な Windows の .m3u プレイリストを生成せず、Archos はそれしか認識できない。

.m3u フォーマットとは、実際は DOS テキストファイルに書かれた、DOS スタイルのファイルへのパスである。幸い、マックのゲームプログラム会社である Green Dragon Productions のプログラマが MacEmThreeYou というプログラムを書いた。これに MP3 ファイルの入ったフォルダをドロップすると .m3u フォーマットのプレイリストを生成する。DOS テキストファイルを扱える BBEdit などのエディタで別々のフォルダの楽曲から自分用のプレイリストを作ることができる。MacEmThreeYou はドロップしたフォルダから階層を生成するので、プレイリストを作るときはフォルダ階層の一番上の同じところからコピーするように。

<http://www.greendragon.com/macemthreeyou/>

BBEdit 6 のフルバージョンを使って(旧バージョンでは試していない)SoundJam のプレイリストから .m3u プレイリストを生成する AppleScript をでっちあげた;他の SoundJam スクリプトと同じところから入手可能だ。これらのツールがあれば Jukebox 6000 でプレイリストが非常によく使えるようになる。Archos は Mac Jukebox サポートページから MacEmThreeYou へダイレクトにリンクを張っているが、Archos自身がこの様なツールをプレイヤーと同梱で提供して欲しいと思う。

<http://www.archos.com/support/tech_jb6000_mac.html>

楽園は未だ -- 私はまだ完璧な MP3 プレイヤーを見つけ出していない。Archos Jukebox 6000 は Nomad Jukebox とは別の利点・弱点を持っている。が、まだ目だった欠点がある。全体としては私は Nomad のより Archos の欠点の方が我慢できる。しかしその一部は自分の作業スタイルによるものだ。私の経験を読んでどちらのプレイヤーが自分に合っているかを判断する情報を得られることを望んでいる。


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA