TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#593/20-Aug-01

電話番号のことで頭を悩ますのにウンザリしてる?ニューヨーク州イサカでのパーソナルな音声通信について Adam と Tonya が再考してみたのを読んで参考にして欲しい。おそらくあなたのテレフォンライフをシンプルにできることだろう。またテキストの切れ端を溜めておく完璧な場所を探しているあなたの為に、Matt Neuburg が読者の奨めてくれた3つのプログラムを試した。ニュースの部では、Palm が Be を買い、SpamCon 財団が設立された。そして Netscape 6.1 と Interarchy 5.0 のリリースに注目する。

記事:

Copyright 2005 TidBITS: Reuse governed by Creative Commons license
<http://www.tidbits.com/terms/> Contact: editors@tidbits.com>


本号の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/20-Aug-01

Palm が Be を買収、その思惑は -- Palm Inc. 社は Apple 社の元重役のJean-Louis Gassee 氏により設立された Be Inc. 社を買収する予定である。Apple は 1996 年に Be に目をつけていたこともあったが、その後代わりにSteve Jobs 氏の NeXT 社を買収した。Palm は Be の知的財産および技術資産を 1100万ドル相当の Palm 株で買収する予定であり、それには BeOS と BeIA オペレーティングシステムが含まれており(後者はインターネットアプライアンスのために設計された)、また Palm は Be の技術者の雇用も行う予定である。Be としては、現金および現預金、受取勘定、特定の契約上の権利を保有することになる。少々面白い言い方では、Be はまた「反トラスト法などに基づき、ある訴訟原因を主張し訴訟を起こす権利を保持する」が、これは支配的なオペレーティングシステムベンダーの Microsoft 社に対する訴訟を予言しているのではないかと何人かのアナリストが憶測している。Palm は Be の技術を使用して、2001 年末に完全に子会社としてスピンアウトされる Palm Platform Solutions Group の元で Palm OS を拡張するつもりであると述べた。[JLC](美礼)

<http://www.palm.com/>
<http://www.be.com/>
<http://www.be.com/press/pressreleases/01-08-16_assetsale.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00778>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00779>

Netscape 6.1 をリリース -- Netscape Communications 社は Web ブラウジング、電子メール、HTML 編集、インスタントメッセージの機能を持つ統合インターネットソフトウェア群である Netscape 6.1 をそっとリリースした。Netscape 6.1 に含まれる主な新機能は、複数の電子メールアカウントのサポート、IMAP アカウントのオフラインでのサポート、インスタントメッセージ機能の統合、フォームの自動入力のためのフォームマネージャー、ユーザーがカスタマイズ可能なサイドバーに内蔵された柔軟な検索機能などがある。Netscape6.1 のインターフェースも新しくなり、アプリケーションの外観を変更するテーマのサポート機能も加わった。Netscape 6.0 を使ってみた多くの人々にとってもっと大切なことは、パフォーマンスと安定性の改善であり、今のところ我々のテストでは、アプリケーションはきちんとインストールされ(Netscape 6.0 と比較して、だ。我々編集者の何人かのところではハードディスクの損傷と関係していたのだ)、まだあまりクラッシュしていない。そうは言っても、Netscape 6.1 のインターフェースは遅く、使いにくく、モーダルダイアログが無駄に多く、 Mac 的でない。たとえば、初期設定ダイアログボックスはモーダルだがサイズの変更が可能で、デフォルトでは内容に対してサイズが小さすぎ、初期設定のカテゴリーを開いたときの状態や選択内容を記憶しない。Netscape 6.1 の動作には、266 MHz の PowerPC 604e 以上、最低 64 MBの RAM、Mac OS 8.6 または Mac OS 9 を必要とする。Mac OS X 用のNetscape 6.1 のプレビューリリースも公開されているが、Default Downloader Plugin と Java の機能がなく、Mac OS X でスペルチェッカーを使用するとクラッシュを引き起こす可能性がある。Netscape はインストールのための小さなエージェントを使用して必要なモジュールをダウンロードするようになっているので、インストールを開始したら、数メガバイトダウンロードするつもりでいてほしい。[ACE](美礼)

<http://home.netscape.com/computing/download/>
<http://home.netscape.com/browsers/6/index.html?cp=djulrn>
<ftp://ftp.netscape.com/pub/netscape6/english/6.1/mac/macosx/sea/Netscape6-macosX.sit.bin>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1444>

FTP Disk 機能が Interarchy 5.0 の目玉 -- Stairways Software は人気の Macintosh FTP client アプリケーションを大幅にアップグレードしてInterarchy 5.0 をリリースした。Version 5.0 での新機能は FTP Disk である。これは FTP サーバにアクセスする時 Finder 経由であたかもデスクトップ上のディスクにアクセスするのと同様に出来るようにする機能である:Interarchy はまず指定のディレクトリをハードディスク上のローカルフォルダにダウンロードする、次にリモートディレクトリに対するアップロードや変更をバックグラウンドで即応的に管理してローカル・リモートの両方とも常に更新された状態に保つ。Interarchy 5.0 は統合された"Fat Carbon" アプリケーションでもある。これの意味するところは、同じアプリケーションファイルが Mac OS 8, Mac OS 9, そして Mac OS X 上でネイティブに動作することである(従って、自分の Mac のオペレーティングシステム用のバージョンはどれかと探し回る必要はなくなる)。他の新機能としては、強化された mirroring 機能、Tunnel via SSH(Mac OS X のみ)つまりユーザ名・パスワードがインターネット上で暗号化されないまま送られる事は無くなる、ブラウザリンクに対する drag & drop サポート、それに整理されたメニューといったところである。Interarchy 5.0 は $45 で;25-Jun-01 以降に Interarchy 4.0 を購入したユーザに対してのアップグレードは無料、その他の Interarchy 4.0 ユーザは購入時のレシートで割引を要求することができる。Interarchy 5.0 のフルバージョンは 01-Oct-01 まで入手可能であり;3 MB のダウンロードとなっている。[GD](カメ)

<http://www.interarchy.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06250>

SpamCon Foundation 反スパム活動を援助 -- 誰もがスパムを憎んでいる。しかしさらにもう一歩踏みだしてスパムを叩き潰すのに手を貸そうという人達もいる。とりわけ際立っているのは、最近設立された California 公益法人 SpamCon Foundation の executive director である Tom Geller である。Tom は ZiffNet/Mac や MacWEEK で著名な Macintosh 先達の一人で、スパム撲滅に古くからエネルギーを投入してきた;最初は Suespammers Project、そして今は SpamCon Foundation を通じてである。SpamCon Foundation の提供しているサービスとしては、受取るスパムの量を減らしたいと思っている個人向けのガイド、スパムに関与することなく email を駆使したいと思っている商業者向けの援助、 スパムに関する 7,000 以上に上るメディア記事からなる検索可能なデータベース、スパムの悪影響度を実証する統計ライブラリ、それに suespammers.org ドメイン内での受信専用の無償の email アドレスがある。SpamCon Foundation はさらに週刊ニューズレターを発行し、スパム問題に関するメーリングリストも運用している。スパム撲滅に興味のある方は SpamCon Foundation の Web site を訪れてみる事をお勧めする、そして彼らが良く貢献していると賛同されるならば、税控除対象の寄付をして彼らの活動を援助する事を考えてみて欲しい。[ACE](カメ)

<http://www.spamcon.org/>

先週のアンケート結果: Was Your KidSafe? -- 先週の質問は、Apple の KidSafe はどうして Apple がサービスを継続するのに足りるだけ顧客に使ってもらえなかったのかについての意見を問うものであった。結果は我々の予想通り、33% の人が KidSafe など聞いた事もないとしている。とりもなおさず、このことは Apple 側のサービスのプロモーション活動に問題があったことを示唆している。しかしながらもっと多くの人が - 34% - いかなるフィルタリングソフトもいらないとし、22% の人が自ら自分の子供達のインターネットの利用の仕方をチェックしている。そこそこの人数が(13%)KidSafe を試したことがあるが出来が悪いと思ったとし、6% と少数ではあるが役に立ったとした人もいる。たった一人ではあったが、KidSafe の代りに他の同様のサービスを使っていた人もいる。回答者総数は極めて少数であったが(これは回答者を子供がインターネットを使用することに責任を持っている人のみに限定したせいである)、私から見たこの調査の結論としては、好ましくないインターネットサイトを子供達が探し回ったり、たまたま出くわしたりすることへの心配は多くの人にとっては、不具合を隠れ持っているかもしれないフィルタリングソフトを探しそして使わなければいけないと思うほどには大きくないということなのであろう。[ACE](カメ)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=73>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1443>


パーソナルな電話によるコミュニケーションの再考

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 倉石 毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

読者の皆様もご存知のとおり、7月上旬に Tonya、Tristan、そして私はシアトルからニューヨーク州イサカに引っ越した。新しい家に徐々に落ち着きつつあり、新しい場所での生活に必要な色々な事務手続きをこなしつつある。その中でも -驚いたことに- 興味深いのは我が家の電話システムだ。大抵の人は電話のことなどあまり考えもしないが、今、私達の電話でのコミュニケーションは微妙に変化しつつある最中なのだ。そこで、Tonya と私は引越しを好機に電話の使い方を考え直してみた。

-- 五年前のシアトルで、私達は電話システムの構築に関して大きな構想を描いていた。複数の電話線を家の各部屋に引き、かけた番号や時間帯によって鳴る音を変えてみたりなどと。しかし、私達が頑張って立てた多々の計画同様、6ヶ月以上の間電話線を一本しか提供出来なかった US West(現 Qwest)電話会社のおかげで潰されてしまった。二人とも仕事で電話を必要とし、インターネット関係の作業もモデムを使用して行う必要があったため、電話線一本だけというのはいかに制約的であったか見当がつくだろうと思う。(ちなみに US West がフレームリレーをつなげるまで九ヶ月もかかった。)

いざ電話線が増えた頃には元の番号が二人共通の周知のものとなってしまい、二人で区別することも出来ないため、かかってくる電話は全てその番号で受けることになってしまった。一つ目の番号が通話中にならないよう、二つめの番号はこちらか電話をかけるときに使用し、もし前者が通話中か誰も出なければであれば US West の留守電サービスにつながるようになっていた。Tonya が出産で仕事を休んでいた間は私が二本目の番号をファックスの送受信に使っていた。

やがて私達はこの設定の非効率さに気が付き、是正を試みた。まず使用頻度の低いファックス線を解約し、ファックス受信のため無料の eFaxアカウントを登録した(ファックスは主番号から送信出来るようになっていた)。そして、Tonya が仕事時間中に電話を気兼ねなく使えるよう、市内通話用に携帯電話を買った。彼女の友人らは携帯に電話するようになったおかげで、彼女に電話がきたと伝えるために家の中を走り回る必要も減った。

(余談になるが、無料の eFaxアカウントはファックス受信には非常に便利で、お勧めしたい。複数の電話線や妙な切り替え器を必要としなくなるだけでなく、ファックスがメールの添付書類として届くので、必要とするファックスだけを印刷すれば良く、それ以外は読んだら削除すればよい。もっと詳しいことは TidBITS-484のHudson Barton氏 の”インターネットファックスの実態”を参照して欲しい。)

<http://www.efax.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05428>

私達は電話番号はメールアドレス同様、場所でなく人につながるべきだと徐々に気が付いてきた。誰かに電話をかけるのは多くの場合、その場所ではなく、その人と話したいからであり、そこにいる別の人が出ても何も役に立たないことが多い。イサカで私達が電話を再考するに至った最後のきっかけは、私達の友人と夕食の約束をするために最高で五つの番号に電話する必要があることに気が付いたからだ。(それぞれの職場の番号、それぞれの携帯、そして自宅の留守電 -ここまで至ることも珍しくなかった。)これはあまりにも馬鹿らしい。

-- 二人それぞれのメールアドレス同様、各々の電話番号が欲しいという認識だけでなく、二人とも携帯電話を愛用するようになっていた。どこにいても電話が出来るという便利さだけでなく、大きな集会で友人を捕まえるためのヤッピーなトランシーバとしても非常に便利だった。(私達はものすごい混雑のスーパーで相手を見つけるためにも活用したことがある:「今どこにいるんだ?」「野菜セクションのピーマンのそば。」「そこにいて。今すぐ行くから!」)

アメリカで携帯を使うことの問題は使用量が高くなりがちな点である:(自分からかけたときの通話代しか払わないオーストラリアやその他の国と違い)自分からかけても、かかってきても通話代を払うからだ。料金は年々下がって来てはいるが、携帯電話だけで用を足そうとすると通常の電話線に比べて非常に高い料金をくらいがちである。また、普通の電話線に比べて携帯電話網は非常に脆い。2001年2月28日のシアトル地震の際には地震の直後に携帯電話網に通話が殺到しつながらなくなってしまった。また、私達はよく複数の受話器を同時に使用して友達や親戚と話すが、自分の知る限り一台の携帯電話で二人以上が話すことは出来ない。

以上の理由から私達は普通の電話線も必要とし、同時にTonya に比べて自分のほうが電話を使用している時間も長いので、それを自分の番号にするのが妥当であった。しかし、公表する電話番号を一つだけにしたかったので、(また、家と携帯の留守電を両方チェックするのも面倒なので)Verizon 電話会社の、留守電は付いていないが応答無しや通話中に電話を転送するオプションを注文した。電話会社は多くの場合これらのオプションを低額か無料で提供しているが、仕組みが分かりにくく使用者が混乱することもあってあまり宣伝されていない。さらに転送先の番号を変更するにはカスタマーサービスに電話をしなくてはならない。

Tonya は電話をあまり使わず出かけていることも多いため、彼女の電話を携帯にするのが妥当であった。もし電話に出なかったり、切っている場合にはメッセージは留守電へ行く。もし長距離電話をする必要があれば普通の電話を使えばよい。

誰かが私の番号に電話をかけると以下の四つのうちのいずれかが起こる。

<http://www.thinkgeek.com/stuff/things/324a.html>
<http://search.ebay.com/search/search.dll?MfcISAPICommand=GetResult&query=GE+cordless+headset+phone>

携帯をつけたり消したりというのはややこしく聞こえるかもしれないし、私はその手順に慣れたものの、この設定の一番の面倒な点である。問題は自分が普通の電話にも携帯にも返事をしない場合、かけてきた人が留守電が応答するまで十回以上の鳴る音を聞く羽目になる点である。転送されるまで鳴る回数(この設定は Verizon しか変更できない)と携帯の留守電が応答するまで鳴る回数とが加算されてしまうからである。多くの人たちは十分待たずにあきらめる。私がもう少し努力して、Tonya が長距離電話をしているのでなければ携帯を切ってあるようにすれば、電話をかけてきた人たちが留守電に至るまで鳴るか回数がまともなものになるだろう。

携帯電話コネクション -- このシステムを構築する際に直面した問題はややこしい発信音の設定を解明することだけではなかった。Tonya と私は共にサムスンの SCH-411 型の携帯電話を持っているのだが、シアトルや他の都市圏では問題なく作動していたにも関わらず、携帯電話網が完全ではないイサカではあまり良く作動しなかった。私達の家では、Tonya の電話はかかってきてもならなかったり、通話中に切れてしまったりと、信頼性に欠けていた。私の電話はというと、いまだシアトルの Verizon で通話代なし、長距離電話なしサービスに加入しているにも関わらず、着信音がならないことも多く、また新しい留守電のメッセージが届いていることを知らせもしなかった。友人に確認したところ、イサカでは Verizon の携帯電話網が一番充実していると聞き、使っている会社を変えても解決には至りそうになかった。そこで、私達は技術面や近郊のインフラに詳しい専門家を探すことにした。

一ヶ月ほど前にイサカ近郊のプロバイダーやインターネット関連会社が主催したインターネットピクニックがあったのだが、そこで私は旧友の助言に従い、携帯電話販売と Verizon のサービスを扱う IthaCom Wireless というローカルな会社のオーナーである David McKinley 氏に相談を持ちかけた。私がマックとインターネットオタクであるとすれば、David は携帯電話オタクと言えるだろう。会って数分もしないうちに彼は近所の携帯電話網のインフラや障害の原因と思われる サムスン製の電話の問題について説明し始めてくれた。オタク天国…

<http://www.ithacom.com/>

どこかの Verizon の店に行って新しい携帯電話を買ったら、全く問題なくローカルサービスに切り替えられたはずだろうとは思う。しかしイサカに引っ越した理由の一つは、ここが個人的なつながりに大いに価値がある小さな町だからだった。その利益はすぐにあった。私は PalmOS ベースの電話がいまだにかさばるため買うのをやめたのだが、David はモトローラ製の 120c を試用に貸してくれ、うまく作動しない場合には取り換えてくれると約束してくれた。さらに無料で車用の充電器とヘッドセットをつけてくれた。(ニューヨーク州では、運転中に手動操作不要キットを利用せずに携帯電話を使用することが2001年11月から違法になる。)(モトローラ 120c は確かに受信が良かったため)Tonya のために新しい電話をとりに行った際には、彼は嬉しそうに自分が発見した電話の裏技を説明してくれ、私達の古い電話をレンタル用に使うから買い取ると申し出て、Tonya の口座に紹介料をつけてくれた。私はどのように物が働くとか何が起こっているのか学ぶのが好きな人間なのだが、David と IthaCom Wireless とつながりを持てたおかげで、携帯電話の使用が巨大企業との苛立つ非人間的な交渉から似たもの同士の楽しい会話の機会へと変わった。

私達のシステムは完成し全て正しく働いており、その使用にも慣れつつある。今までで学んだ一番大事なことは外出中に携帯電話が鳴っている(実際には振動だが -この方がはるかに迷惑にならない-)のをいつ無視するかということである。電話に出るのに適切な場かどうか即座に判断するのが難しいからだ。それでも、その時にいた場所によって無差別に電話への対応を押付けられるのに比べて、自分にその選択権がある方を私は選びたい。


断片情報キーパーをあと3つ

文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

いろいろな情報を自分のコンピュータにしまい込んで、整理し、あとからそれを検索する、そのための良い方法を探し続けることは、私のライフワークの1つになったようだ。過去いくつかの TidBITS の号で私は、さまざまなアウトライナー、データベース、著述ツール、あるいはそれらの組み合わせとなるようなソフトウェアを紹介し続けてきた。それらはいずれも、私の気に入ったソフトウェア、あるいはこれなら気に入るかもしれないと思えるもの、だけを選んできた。そういう私の紹介記事が TidBITS に載るたびに、読者の皆さんから、皆さんそれぞれがお気に入りの、私が紹介した以外のプログラムについてのメールをたくさん頂いたものだ。たいていの場合、私はそういうプログラムを1つ1つ使ってみている。そのプログラムが気に入った場合には、そのプログラムのレポートを書いたこともあった。けれども、気に入らなかった場合には、私は原則として黙っておくことにしている。私にとっての TidBITS の記事の原則は、第一に筆者自身の経験に基くもの(ただ完璧を期するためだけに包括的な記事を目指すのではなく)であるべきで、また TidBITS ではできるだけ肯定的な評価をできるものに焦点をしぼるべきだと思うからだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1196>

しかしながら、今回はこの私の原則を破って、私の好みにはあまり合わなかったけれども何人かの TidBITS 読者の皆さんには非常に気に入った、3つの安価な“断片情報キーパー”、つまりさまざまなテキストの断片を保存しておくためのプログラム、を簡潔に紹介してみようと思う。なぜそんな気になったかというと、好みは人によってそれぞれだ、ということが今回は特に感じられたからだ。たとえば私は多重の階層構造とかスクリプティングとかが好みだが、簡潔・シンプルが好みで機能は少ない方がよい、という人が多いのも事実だ。そういう人たちにとっては、1つのことだけを確実にこなし、使いやすくてわかりやすい、マニュアルなんか読まなくても使える、というようなプログラムが良いわけだ。これから紹介する3つは、いずれもそういうタイプのプログラムであり、しかも無料で試用できて購入価格も安い。3つのそれぞれについて、なぜ私の気に入らなかったのかも説明したいと思う。これはあくまでも私自身の好みをはっきりさせるためであって、決して皆さんに使うなと言っているのではないことに留意して頂きたい。あくまでもこの記事は肯定的な目的のため、そういうプログラムがあるということを皆さんに知らせ、そして私とは好みの違う方には気に入ってもらえるかもしれない、という趣旨なのだから。

StickyBrain 1.2.1 -- Chronos 作の StickyBrain では、1つのウィンドウが1つのノート(テキスト断片)に対応している。これらのウィンドウは、Mac に標準添付のスティッキーズをモデルにしているようだ。一方スティッキーズはもともと 3M(スリーエム)社の Post-it Notes(ポスト・イット ノート)をモデルにしている。これらのウィンドウにはスクロールバーがない。幅の狭いタイトルバーが付いていて、そのノートが最前面でない時にはタイトルバーは消える。ウィンドウの右下隅にはごく小さなL字型のグローアイコンがあり、ウィンドウの背景はカラーだ。StickyBrain では画像やテクスチャを背景に使うこともできるし、反対にポスト・イット ノート風の外見をすべて排除してノートをプラチナ外見の標準化することもできる。スティッキーズとは違って、StickyBrain のウィンドウは完全機能のスタイル付きテキストエディタになっている。

StickyBrain では個々のノートを隠したり表示したりできる。そして、ノートを整理するための主たる道具となるのが、「カテゴリー」という概念だ。好きなだけの種類のカテゴリーを作ることができ、それぞれのカテゴリーごとにデフォルトの外見設定(背景カラー、テキストスタイル、初期テキスト、初期サイズ、その他)を与えることができる。ノートを新規に作った時、またノートのカテゴリーを変更した時は、そのカテゴリーでのデフォルト値が適用される。もちろん、個々のノートについてこれらの値を別のものに自由に変更することもできる。特定のカテゴリーに属するノートだけを表示することもできるし、すべてのノートのリストを使って特定のノートだけを選んで表示することもできる。

HotKey という名の補助のバックグラウンド専用アプリケーションを使って、他のアプリケーションに居ながらキーコンビネーションで直接 StickyBrain のいくつかの機能にアクセスすることができる。StickyBrain があらかじめ動作している必要もない。1つのカテゴリーに対応するキー・コンビネーションを使えば、現在選択されているテキストがそのカテゴリーの新規ノートとしてコピーされる。1つのノートに対応するキー・コンビネーションを使えば、そのノートの内容を現在のアプリケーションにペーストすることができる。

その他にも多数の特別機能があるが、その多くは私が1年ほど前に紹介した Idea Keeper の機能と非常によく似ている。各ノートをパスワードで保護できる。各ノートにアラームを設定できる。ノート中のメールアドレスから自動的に電子メールプログラムに新規メッセージを生成させ、ノート中の URL からブラウザを動作させ、ファイルエイリアスからファイルを開く。ノート中のボックス上のクリックでチェックマークを出したり消したりして“to-do”リストを作る。テキストの検索・置換は複数のノートにわたって実行できる。インラインのスペルチェッカーさえ付いている。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05931>

StickyBrain は確かに機能満載だ。けれども私にとっては、そもそもスティッキーズのメタファーそのものが大嫌いなものに見えた。スクロールバーのないウィンドウなんて、テキスト編集環境としては最低だ。ポスト・イット ノートなんて、物ごとをただ雑然とさせるだけだ。ウィンドウのスタイルをより標準のプラチナ・スタイルに変えることができたところで、1つのカテゴリーのノートをすべて同時に表示するなどという StickyBrain の基本思想そのものがすでに雑然の極み以外の何者でもない。StickyBrain のバックグラウンド機能は、キー・コンビネーションのみに依存しているので、ノートの数が増えるにしたがってあっという間に使い物にならなくなる。外部への書き出し機能は無くて、すべての情報が独自フォーマットでの単独のファイル内に格納されている。このファイルが壊れてしまったらいったいどうするのだろうか。とは言っても、多くの読者が StickyBrain を支持する便りを寄せてくれたのだから、ひょっとしたらあなたの好みにも合うかもしれない。

Sticky Brain の価格は $35、Mac OS 8.1 以降のすべての Mac で動作し、5 MB の空き RAM と 5 MB のディスク容量、640×480 以上のスクリーンを要する。

<http://www.chronosnet.com/>

EZNote 2.01 -- John Holder 作の EZNote は、かつてはコントロールパネルで非常にモーダルなインターフェイスを持っていた。しかし今日ではアプリケーションに進化して複数ウィンドウも持てるようになり、ずっと良くなっている。このプログラムでは、スタイル付きテキスト断片を、いくつかのフォルダに属するファイルとして保存している。これらのフォルダのそれぞれがカテゴリーとして扱われ、個々のファイルがノートとして扱われる。これらすべてが、あなたの指定した親フォルダの中に格納される。実際、EZNote を使ってハードディスクの全体をブラウズし、好きなフォルダの内容を確かめたりファイルを作ったりすることもできるのだ。(タイプが‘TEXT’のファイルはすべてノートとして扱われる。)しかしながら、EZNote がカテゴリーとして特別扱いできるのはユーザー指定の親フォルダ内第1レベルのフォルダだけに限られていて、たとえば指定のカテゴリーに直接移動したり、ノートを別のカテゴリーに移したり、といった操作もそういうものに限定されてしまう。

EZNote のウィンドウはブラウザ部分とエディタ部分とに分かれている。左側のブラウザ部分は、現在のフォルダ内のすべてのフォルダとテキストファイルとを一列にリストする。このブラウザ部分で1つのテキストファイル名をクリックすれば、そのファイルの内容がエディタ部分に表示される。エディタ部分では、スタイル付きテキストの標準的な基本編集機能が使える。加えて、テキストスタイルに名前を付けて保存することもできる。検索・置換は複数のノートにわたっても使える。多数のプラグインが付属していて、選択したテキストをさまざまに変換できる。(大文字・小文字変換、改行文字を消去、HTML タグを消去、その他...)ブラウザ部分で別のテキストファイルに移る時には、現在のファイルは自動的に保存される。

EZNote はバックグラウンド・アプリケーションとしてもうまく働く。キーボード・ショートカットも設定できるし、いつでも表示できるフローティング・パレットも使える。フローティング・パレットの機能はキーボード・ショートカットによるものよりも少ないが、StickyBrain にはできなかった重要な機能を持っている。ショートカットを一切使わずに、現在の選択範囲をどのカテゴリーの新規ノートにするかを自由に指定でき、また現在の挿入ポイントにどのカテゴリーのどのノートをペーストするかも自由に選べるのだ。こうして EZNote はスタイル付きテキストの複数クリップボードを見事に実現している。たくさんの定型句をペーストすることが頻繁にあるのなら、これは便利だろう。また、選択されたテキストにプラグインによる変換を施すこともできる。逆に、EZNote内で、クリップボードをもとに新規ノートを作ったり、選択したテキストをバックグラウンドで動作している他のアプリケーションにペーストしたりすることもできる。

EZNote への不満点はいくつもある。まず、複数ノートを書き出すことができない。(複数のノートを最初に1つのノートにまとめておいてからそのノートを書き出すことはできる。)カテゴリーを消去することができない。(Finder でそのフォルダを消去することはできる。)そして、私の個人的意見では、確認なしの自動保存機能は危険な機能だ。しかしながら、私の見るところ EZNote のインターフェイスは、ちょっとぎこちないところは見られるにしても、StickyBrain のインターフェイスに比べればはるかに優れているし、それに個々のテキスト断片ごとに別々のプレーンテキストファイルとして保存するというやり方も非常に好感が持てる。StickyBrain のビジュアル面(背景テクスチャなど)とか追加機能(スペルチェッカー、“to-do”チェックボックス、ファイルエイリアスなど)とかは不要だ、という人には、断然 EZNote の方をお勧めできると思う。

EZNote は System 7 以降のすべての Mac で動作し、たった 2 MB の空き RAMと 2 MB 以下のディスク容量しか要さず、価格も $20 と安いシェアウェアだ。著者の Web サイトに行ってみたら、彼の作った他のユーティリティも見てみるとよい。本当に欲しかったのが複数クリップボードだけだったのなら、またはテキスト以外のものも保存したかったのなら、彼の作品の中から QuickScrap コントロールパネルや ScrapIt Pro アプリケーションを検討してみるのも悪くないはずだ。

<http://www.northcoast.com/~jvholder/ezndesc.html>

Z-Write 1.2.1 -- Stone Table Software 作の Z-Write のウィンドウは、驚くほど EZNote のウィンドウに似ている。左側にノートのリストが一覧でき、ノートの名前をクリックすればそのノートの内容が右側の編集領域に表示される。EZNote と同様、スタイル付きテキストが編集でき、またスタイルに名前を付けて保存できる。また EZNote と同様に、多数のテキスト変換機能(大文字・小文字変換、連続スペースを消去、その他)がある。しかし、Z-Write にはカテゴリーという概念はない。その代わりに、書類という概念があって、一覧できるのは1つの書類の中のすべてのノートなのだ。Z-Write で特徴的なことは、これが著述用ツールとして作られたということだ。だからこそ、ノート(Z-Write では「セクション」と呼ばれる)の順序を入れ替えたり、1つの書類からすべてのノートを別の書類へドラッグしたり、選択した複数のノートをスタイル付きテキストとして、RTF として、または HTML として書き出すこともできるのだ。

Z-Write には著述家向けの追加機能が多数付いている。キーボードによるナビゲーションは充実しているし、テキストのスタイル付けをコピーしたりペーストしたりできる。ブックマークのタグを挿入できる。これは、たとえば“<bookmark mymark>”というような単純なテキスト・マークアップに過ぎないのだが、ポップアップメニューを使って手軽にジャンプできる。“<link mymark>”のようなハイパーリンクも挿入できて、これを command-クリックするとそのハイパーリンク(ブックマークのタグ、あるいはノートでもよい)にジャンプできる。グロッサリ項目(名前の付いた定型句)を定義することもでき、ポップアップメニューを使って、またはその名前をタイプするだけで定型句が挿入できる。“<insert xxx>”というタグもある。これで、出力時にそのタグが“xxx”という名前のノートの内容で置き換えられる。

Z-Write は著述ツールとしてもテキスト断片を収集するツールとしても優れている。そのインターフェイスはこれ以上ないほど素晴しくクリーンなデザインの実例と言っても過言ではないだろう。しかし、その機能のどれをとっても私がすでに持っているツールでできないものはないので、私にはあまり魅力が感じられない。もしも Z-Write がノートの複数階層レベルも持っていたら、キーワードを使って特定のノートのセットを隠したり表示したりできたとしたら、もう少し魅力が増したかもしれない。しかし現状の Z-Write では、ただのアウトライナーをたった1レベル階層に機能限定したものに過ぎない、とも言える。Z-Write の機能の大多数、たとえばブックマークとか、グロッサリとか、テキスト変換とかは、一般的な著述ツール、たとえば Microsoft Word とか Nisus Writer にもすでに装備されている。また、基本インターフェイスは EZNote のインターフェイスに似ているだけではなくて、Word の document map 機能をも思い起こさせるものだ。もしも Z-Write の説明書があんなにもうるさくこのプログラムの「ユニークさ」、「独創性」について繰り返さなかったら、この「ノン・リニアなワードプロセッサ」の斬新性について騒ぎ立てなかったら、そうしたら、こんなにもこのプログラムが私にイライラ感を残すことはなかったかもしれない。(ノン・リニアなアウトライナーについては、私は Apple II の時代から論評し続けてきたし、TidBITS でもほとんど 10 年も前からノン・リニアな著述ツールについてレポートし続けているのだから。)それでも、Z-Write を声高に擁護する読者がいることは確かなので、もしもこれがあなたの求めていたものかもしれないという気がしたのならばぜひ試してみるとよい。

Z-Write の価格は $20、System 7.5 以降で QuickTime を装備した PowerPC Macで動作し、10 MB(印刷プレビュー機能を使用する場合はそれ以上)の空き RAMと 5 MB のディスク容量を要する。

<http://www.designwrite.com/sts/z-write.html>


tb_badge_trans-jp2

非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA