TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#594/27-Aug-01

TV の支配権を取り返したい?だったら TiVoパーソナルビデオレコーダーを試してみるといい。Andrew Laurence によるレビュー。その他の TVニュースでは、Apple が FireWire でエミー賞を受賞し、MoMA が G4 Cube の収蔵を決定。注目すべきリリースとして、Mac OS 9.2.1, Now Up-to-Date & Contact 4.0.3, REALbasic 3.5, IPNetRouter 1.6.1, Nisus Writer 6.0.2, Mailsmith 1.1.8, そして Quicken 2002 Deluxe を取り上げる。最後に Ecrix と Exabyte が合併し、早起きは 29 ドルのお得! Macworld Expo SF 2002 のチケットをタダで入手するには...

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MailBITS/27-Aug-01

Mac OS 9.2.1 リリース -- Apple は Mac OS 9.1 あるいは 9.2 が稼働している「Mac OS X 対応」コンピュータ (Power Mac G4、Power Macintosh G3、PowerBook G4、PowerBook G3 (初期型 PowerBook G3 を除く)、iMac、および iBook) 用の 9.2.1 アップデートをリリースした。このアップデートに新機能はないが、Mac OS 9.1 のさまざまなバグが修正され Mac OS X とクラシックアプリケーションの互換性が向上している。アップデートは北米英語、国際英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、オランダ語、日本語用がある。82MB のディスクイメージ 1 つか 6 分割版をダウンロードすることができる。[JLC](久島)

<http://kbase.info.apple.com/cgi-bin/WebObjects/kbase.woa/wa/query?type=id&val=120030>

REALbasic 3.5 リリース -- REAL Software, Inc. は使いやすく、HyperCard の真の後継者と目される開発環境 REALbasic バージョン 3.5 をリリースした。データベースを操作するための DataControl や RBScript の構文解析などはさほど成功したとはいえないが、正規表現のサポート、Microsoft Office の自動化、3D グラフィックツールなどの新機能は歓迎できる。REAL Software は多くのバグを修正し、多少のバグは残っているが、REALbasic 3.5 はバージョン 2.1.2 以来最良の出来である。最も印象的なのは複数の OS をサポートしていることである - それは Mac OS 7.6.1 以降で動作し、Mac OS X でもネイティブモードで動作する。また Mac OS 8 以降 (68K または PowerPC)、Mac OS X、および (多少劣るが)Windows 用にアプリケーションをコンパイルできる。REALbasic はプログラミング入門として素晴らしく、ツールや特殊なアプリケーションの製作に使え、コマーシャルソフトウェアの元にもなることが出来る。スタンダード版は $100 でWindows コンパイル機能とデータベース操作機能のあるプロフェッショナル版は $300 である。(CD と印刷されたドキュメント込みは $50 追加。) アカデミック割引 (スタンダード版 $60、プロフェッショナル版 $180) や期限つきデモバージョンもある。TidBITS ライター兼編集者 Matt Neuburg のREALbasic 関連書籍第二版も来月出版予定である。[ACE](久島)

<http://www.realbasic.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05043>
<http://www.oreilly.com/catalog/realbasic2/>

IPNetRouter 1.6.1 がリリース -- Sustainable Softworks 社は IPNetRouter 1.6.1 をそっとリリースした。小さなバグの修正版であり、2 週間前のもっと主要なリリースである 1.6 での NAT(Network Address Translation)のバグを修正している。IPNetRouter 1.6 ではソフトウェアルータのポートマッピングおよび IP フィルタリング機能の改善といくつかのバグの修正が行われていた。IPNetRouter 1.6.1 で必要とされるシステム条件は今も最小限ですむ。68030 または PowerPC ベースの Macintosh で Open Transport 1.1.1 が動作する Mac OS 7.5.3 以上(Mac OS X 版は開発中)である。アップデートはどちらも登録ユーザーには無料である。(美礼)

<http://www.sustworks.com/site/prod_ipr_overview.html>
<http://www.sustworks.com/site/prod_ipr_relnotes.html>
<http://www.sustworks.com/site/mac_os_x_status.html>

Nisus Writer 6.0.2 が 各国語のサポートを改善 -- Nisus Software 社が 同社の主要ワードプロセッサの無料アップデート版である Nisus Writer 6.0.2 をリリースした。新バージョンでは、WorldScript と ローマ字アルファベットでの RTF(Rich Text Format)ファイルの読み書きのためのトランスレータが改良され、Mac OS 9.1 に同梱された日本語および中国語のランゲージキットとの互換性を誇っている。アップデートされたプログラムは PowerPCベースのマシンでしか動作しない。多数のバグ修正が行われている。Nisus Writer 6.0.2 のアップデータのダウンロードサイズは 3.6 MB である。[JLC](美礼)

<http://www.nisus.com/Products/NisusWriter/Upgrade/VersionChanges.asp>
<http://ftp.nisus.com/#http-download>

Now Up-to-Date & Contact 4.0.3 がリリース -- Power On Software 社の 多機能のカレンダー、コンタクト情報管理ソフトである Now Up-to-Date & Contact 4.0.3 をユーザーはダウンロードできる。このメンテナンスリリースは印刷時に問題を引き起こし、Meeting Availability オプションが利用できない原因となっていたバグを 3 つ修正している。アップデータは 2.6 MB のダウンロードで、4.0 以上の登録ユーザーは無料である。[JLC](美礼)

<http://www.poweronsoftware.com/products/nudc/tour/productInfo.asp#403>
<http://www.poweronsoftware.com/download/default.asp#NUD>

Mailsmith 1.1.8 がリリース -- Bare Bones Software 社は Mailsmith 1.1.8 を出荷し、同社の電子メールクライアントにバグ修正と新機能を少し加えたアップデートを無料で提供する。新しいバージョンには書き出しのスクリプティングコマンドの追加、いくつかの SMTP サーバとの互換性の向上、Apple Remote Access との問題を解決、その他の修正が含まれる。アップデートは Mailsmith 1.0 以降の所有者には無料であり、ダウンロードサイズは2.6 MB である。[JLC](美礼)

<http://www.barebones.com/support/mailsmith/mailsmith-notes.html>
<http://www.barebones.com/support/mailsmith/mailsmith-updates.html>

Ecrix 社と Exabyte 社が合併 -- VXA-1 テープドライブのメーカーである Ecrix 社と、大容量のネットワークバックアップが必要な状況で使用される高性能の MammothTape ドライブのメーカーである Exabyte 社が合併の計画を発表した。合併後の会社はより幅広い製品を VXA ブランドと MammothTape ブランドの両方で提供し、VXA の革新的なパケット技術およびノントラッキング方式と MammothTape の高性能の入出力技術を統合する予定である。合併によりExabyte の現金ポジションが増加し、また Ecrix の共同創立者であり、以前Exabyte の設立に協力した Juan Rodriguez 氏を Exabyte に呼び戻すことになる。ありがたいことに、合併後の会社は Exabyte と呼ばれる。Ecrix という社名はいつも発音を教えてもらわないといけなかった。Ecrix VXA-1 テープドライブの所有者の立場からすると、合併は良いニュースのように思われる。なぜならこの方式がもっと広く業界で支持されるだろうからだ。Ecrix VXA-1 についての詳細は、TidBITS-569_ の「Ecrix 社製 VXA-1 テープドライブ:高速・大容量バックアップ」を参照してほしい。[ACE](美礼)

<http://www.ecrix.com/>
<http://www.exabyte.com/>
<http://www.ecrix.com/press/pr-2001-08-23.cfm>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06322>

Quicken 2002 Deluxe Adds Mac OS X (未訳)
CompatibilityMacworld Expo San Francisco 2002 Free Passes (未訳)

上記2つの MailBITS の未訳記事は英語版でご覧になれます。


受賞に見るAppleの貢献

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

マッキントッシュ愛好家の間ではAppleの技術革新や功績は良く知られているが、世間一般には Apple はそこらのコンピュータメーカーの一つぐらいしか見られていないと感じることが多い。しかし Apple の貢献がマッキントッシュの世界に限られてはいないことを知らしめる助けとなりそうな出来事が最近二つあった。FireWire に関してのエミー賞受賞と、PowerMac G4 Cube や他の Apple製品が近代美術館のデザインコレクションへ加えられたことである。

FireWire のエミー賞 -- Academy of Television Arts & Sciences は Apple の FireWire技術がテレビ業界に著しい貢献があったとして2001年プライムタイムエミー賞を与えた。FireWire はハードドライブやディジタルビデオなど高速データ転送装置のための高速シリアル接続技術である。IEEE 1394a として知られる 400 Mbps の FireWire を共通基準に推した Apple の努力のおかげで、FireWireはディジタルビデオカメラをマックや PC達に接続するための第一の方法となった。

しかし最高 480 Mbpsのデータ転送速度を可能にする USB 2.0 について PC 業界が優柔不断な態度をとっていることもあり、それ以外の FireWire の活用はもっぱらマッキントッシュの世界に限定されている。だが USB 2.0 には厳しい前途が待ち受けている:次世代の FireWire, 1394b は最大(光ファイバーでは 1600 Mbps、電線では)800 Mbps まで可能にするとされる;また USB 2.0 はまだ広く採用されていない;そしてつい先月、Agere Systems (もとは Lucent Technology のエレクトロニクス部門)が「Universal Serial Bus (USB)製品をサポートする部品」の製造を中止すると発表した。同時に Agere は USB 1.1 と 1394a製品の販売を続けながら、1394b関連の製品開発を加速すると発表した。

<http://www.lucent.com/micro/NEWS/PRESS2001/071601a.html>

一言で言えば、何百万とあるディジタルビデオカメラとビデオのディジタル化のおかげで USB 2.0 との競争では FireWire が上手を握ったと言えよう。プロのためにディジタルビデオの値段を引き下げた点と一般消費者がディジタルビデオを使いやすくしたという面において Apple は賞賛に値し、Academy of Television Arts & Sciences のようなグループがこのような功労を認めたことは喜ばしい。

MoMA 三乗 -- Apple はグラフィックインターフェース、マウス、CD-ROM、イーサネット、USB など自分で開発しなかった技術の広い利用に大きな役を果たした。そのような Apple の技術貢献やマーケッティング能力を一般社会が認識していなくても、Apple のデザイン技量は皆の認めるところである。そして今、スマートな PowerMac G4 Cube を含む Apple の革新的なデザインがニューヨーク市の近代美術館(MoMA)のデザインコレクションに加えられるという名誉を得た。

<http://www.nytimes.com/2001/08/16/technology/circuits/16GEE1.html>

これを予言するかのごとく、最近製造中止になった Cube の初期の宣伝に「確かに近代美術館に展示されていてもおかしくないが、G4 Cube は実はデスク上におけるスーパーコンピュータなのだ。」というのがあった。皮肉なことに、Cube が MoMA に選ばれた今、デスク上にこれを置くためには中古として買うしかない。どんなに優雅なデザインであろうと、目標とする客層が小さすぎては販売数増加につながらない。(これに関しての Steve Jobs の台詞は今年ベストの一つに数えたい。「これは誤ったコンセプトだった - 見事に製品化したのだが。」)

Apple のデザインは数多くの賞を得ているが、MoMAコレクションに選ばれたことはその中でも名誉あることである。コンピュータは仮想の電子の世界で機能するものであるにも関わらず、その具現化もまた職場環境における大事な一面であるという考えを裏打ちするものである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04898>


EtherMac iPrint LT でまた動きだせ

文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

私のお得意先の一人 - David - は、いつも私が運転中に電話をかけてくる。これでは、まったくジョークのネタ「移動中なのは自分であって、彼ではない」のようだ。「印刷ができないんだよ」と、彼が言う。私達の新しい挨拶だ。「出来る事は全てやってみたんだが...」

ともかく、解決策のチェックリストを一通りおさらいする。プリンタの再起動、もちろん Mac も。デスクトッププリンタで「プリントキューの開始」が選ばれてることを確認。コンピュータ、プリンタ、そしてイーサネットのハブのケーブルが緩んでないかをチェック。それでもダメ。数十分が経ち、渋滞の中をやっと数マイル動いた後、私達はやっとうまい解決方法を探り当てた : AppleTalkコントロールパネルで Remote Access を使用するようにし、一旦 AppleTalkコントロールパネルを閉じてまた開き、Ethernet に戻してから AppleTalkコントロールパネルを閉じて設定を保存するのだ。David は印刷できたから良かったのだろうが、彼の PowerBook G3 (Bronze)で LocalTalk ネットワークに印刷できるようしたこの対処法は、私に言わせれば綱渡りのようなものだ。

ネットワークにかける橋 -- 彼の問題を解決するのは簡単ではあるけれど、David の印刷問題のそもそもの発端は Steve Jobs にあると言いたい。Jobs が PowerBook G4 Titanium を発表した日、私はサンフランシスコにいたのだ。ちょうど David が電話で質問をしてきたので、私はこのピカピカで新しいマシンがいかに素晴しいかを話した。あたかも、David に魔法の呪文「もしあなたが G4 を買うんだったら、私があなたのマシンを引き取るよ」を唱えて欲しいかのようにね。で、私は G4 を買い、David も約束を守った。お互いに前より良い PowerBook を手に入れたということだ。唯一の問題は、私の使っていた PowerBook G3 (Bronze) はシリアルポートを持っていなかったことで、それは David の LocalTalk ネットワークにアクセス出来ないことを意味する。そして彼の Mac に LocalTalk 経由でつながっていた古い QMS-PS 410 レーザプリンタもまた然り。

幸運にも、問題は簡単に解決出来た。David は安いイーサネットのハブを買い、それで彼の新しい PowerBook G3 と前に使っていた PowerBook 3400 をつないだ。3400 は LocalTalk ネットワークにつながったままで、プリントサーバとして動作する。Apple の LocalTalk Bridge ソフトウエアのおかげだ。(古いマシンはまたネットワーク経由で大事なファイルをバックアップするのにも使用できたし、彼の家族が使うこともできる)

<http://kbase.info.apple.com/cgi-bin/WebObjects/kbase.woa/wa/query?type=id&val=60290>

この状態でしばらくは大丈夫だったが、問題はいつも不意に現れた。3400 の使用電力は小さかったものの、いつも動作していることが必要だった(David には、印刷する度に電源を入れたりスリープを解除するのが不便だった)。さらに、イーサネットの接続が時々沈黙を決め込むのだ。3400 は、一つのポートをイーサネットとモデムで共用している ; 数年間日常的にモデムを使っていて電話線を差したり抜いたりしていたため、このマシンのポートは少し弛んできていた (電話線とイーサネット両方をつなげるアダプタを使っても駄目だった)。なので、イーサネットケーブルがちゃんと差し込んであっても、時々ピンとコネクタがきちんと接触するよう、ちょこっとこずいてやる必要があった。ポートの修理も可能だがそれは出費が大きすぎたし、さらに言えば、ほとんど問題を起こさないとはいっても、LocalTalk Bridge は年代物でサポートもされていないのだ。

我印刷す。故に我幸福なり -- 思うに、解決策はやはり Steve Jobs にお願いするのがフェアと言うものだ - ただ、今回はそのデザインの重要性に。用事の途中に、Apple の新しい Power Mac G4 と、今は生産中止となったFlower Power iMac を一目見ようと University of Washington 近くのUniversity Bookstore に寄ってみた。自分は頑固な PowerBook ユーザだが、同時に Apple のインダストリアルデザインの熱心なファンであり、あの新しい QuickSilver を間近に見てみたいと思ったのだ。

そこでラップトップの上の棚に載っていたのは、Farallon の EtherMac iPrint LT、$100 のアダプタで、これこそネットワークのブリッジとして PowerBook3400 に代わるものに見えた。(Farallon はまた、EtherMac iPrint Adapter SLという、元々 LocalTalk をサポートしない StyleWriter プリンタをつなぐものも販売しているが、新しいプリンタの方が安いだろうし印刷品質も高いに違いない) 私は David に電話し、彼の信頼できるレーザプリンタに確実に印刷できるようになるなら $100 は安いものだということになり、iPrint を買って家路についた。

[Farallon のウェブサイトはこの時応答しなかったので、この URL がまだ正しいかどうかは検証できなかった。 -Geoff]
[訳注:Farallon は Proxim に買収されており、以下の URL に変わっている] <http://www.proxim.com/products/all/macadapter/pn559/index.html>

ここではインストールと設定方法の詳細を述べることになっているので、長々と細かいことを書くからそのつもりでいて欲しい。まず箱を開け、iPrint をコンセントにつなげる。それから、3400 につながっていた PhoneNet コネクタを外し LocalTalk ケーブル (実は普通の電話線) を iPrint の LocalTalk ポートにつなげる。反対側にイーサネットケーブルをつなぎ、それを David のハブに接続。(iPrint の箱の中には、LocalTalk ケーブル、普通のイーサネットケーブル、そして“クロス”イーサネットケーブルが入っている。最後のやつは、ハブを経由せずにコンピュータを iPrint につなぐ時に使う) 私がしなければいけなかった唯一の設定変更はといえば、3400 の AppleTalk コントロールパネルの設定を Ethernet にすることだけだった。これで、David はどちらのPowerBook からも、印刷そしてファイルの転送もできるようになった。

iPrint のおかげで、David のプリンタと他の PowerBook はセレクタにいつも現れるようになった。私の綱渡りの対処法はもはや過去の事となり、David はまた動きだした。もし同じことがシアトルのあの渋滞にも言えれば良かったのだが。


TiVo: 時間をずらせばそこに自由が(第1部)

文: Andrew Laurence <atlauren@uci.edu>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

自分ではなかなか気が付かないことだが、実は、私の自由になる時間の多くの部分は、別人の力によって長年コントロールされてきたのだ。名前も知らない、テレビ局の人間、放送時間のスケジュールを決定する人たちにによってだ。

私自身は、そんなにたくさんテレビを見ているわけではない。アメリカ、カナダ、日本での調査によれば平均的な人は週に 19 時間から 32 時間もテレビを見ているそうだから。それでも、私の頭脳の片隅には見たいテレビ番組のことをいつも考えている部分があって、何曜日の何時、何チャンネルで、というようなことをいつも気にしていたのだ。その時間に見られない場合にはビデオ録画のセットをして、ビデオテープに録画時間分の空きがあるかどうかをチェックし、さらにはどのテープにどの番組を録画したかというようなことまで管理しなければならなかった。私の個人的スケジュールが、テレビ局の放送時間のスケジュールによって左右されてきたのだ。その時間に家に居られるか? テープはちゃんとビデオ機に入れたか? 夕食の時間をどこに入れるか? 番組が始まるまでに洗濯機を回して母さんに電話を入れる時間があるか? 小さな子供を持つ私の友人などの場合にはもっと問題は複雑で、“The West Wing”がいい場面になるたびに6ヵ月になる子が家じゅうハイハイを始めるし、3歳になる子はといえば“Sesame Street”をやっている早朝の時間帯にはテレビなんか見たくないと駄々をこねるくせに、“Jerry Springer”とか“The Young and the Restless”といったたぐいの番組ばかりやっている時間帯に限ってテレビを見たいと騒ぐのだ。加えて、57 チャンネルもあるのにどれも点いていない、という現状を考え合わせれば、もはやテレビ局の作った放送スケジュールがたいていの視聴者の必要を満たしていない、ということは明らかだろう。テレビ局のスケジュールは視聴者の生活をテレビに合わせるように要求するのだが、テレビというものは本来我々の欲するものを我々が欲しい時に供給するべきものなのだ。

パーソナルビデオ録画機登場 -- パーソナルビデオ録画機 (PVR) が家電業界に参入したのは比較的最近のことで、時としてこれはテレビ番組表を記憶できる普通のビデオ機 (VCR) をちょっと高級にしたもの、という風に表現されることもある。PVR はもちろんあなたの受信できるすべてのテレビ番組表を記憶できる。あなたの指示に従って、番組を内蔵ハードディスクに録画して、あとで再生することができる。しかし、ビデオテープというリニアなメディアを使うのをやめたことで、PVR ではまったく新しいタイプのテレビ体験ができる。どんな番組でも、好きなところで一時停止・巻戻し・早送り・スロー再生ができる。これはすでに録画したものに限らず、ライブのテレビ放送でも可能だ。“60 Minutes”が 15 分前に始まっている場合でも、今すぐ番組の始めから見ることができる。PVR は同時進行で残りの番組の録画を続けてくれているのだ。コマーシャルの部分は全部早送りにして Andy Rooney を生放送で見ることができる。昨日の晩の“The Sopranos”を見ながら同時に今夜の“Ally McBeal”を録画することもできる。その上、録画しておいた番組を見つけ出すのも、テレビ番組表から番組を見つけるのと同じ感覚でできる。読めないラベルの字を探してテープの山から探し出し、機械にテープを入れたら早送りで苦労して頭出し、などという手間は無用なのだ。

この業界に最初に参入したのは TiVo と ReplayTV で、1999年のことだった。どちらの会社も、それぞれのデバイスに必要なソフトウェアと、内蔵のプログラムガイドをアップデートするサービスをセットにして提供した。ハードウェアユニットを実際に製造・販売したのは提携したハードウェア会社だった。TiVoのハードウェアは Sony、Philips、Hughes が、ReplayTV のハードウェアは Panasonic が販売した。最近の参入例を挙げれば、Microsoft の UltimateTV (Sony と RCA が販売) や Dish Network の DishPVR 501 などがある。

<http://www.tivo.com/>
<http://www.replaytv.com/>
<http://www.ultimatetv.com/>
<http://www.dishnetwork.com/>

TiVolution にようこそ -- 私が最初に TiVo を見たのは友人の家でだった。彼はホームシアターのオタクで典型的な新し物好きだった。正直言って、興奮しきった彼から初めて説明を聞いた時には、なんて怠け者なんだ(「テープを交換する必要がないんだ!」)という感想しか浮かばなかった。しかし、実際に使うのを見せてもらううちに、私にもその良さが見えてきた。今放送中の番組を一時停止できる(電話がかかってきたり、トイレへ行きたくなった時など)のは便利だ。用を足して戻って来たら Play ボタンを押せばよいのだ。生放送の最中に数秒前まで巻戻して聞き損ねた会話を聞き直せることも、テレビを見るうえでの大きな不満を解消してくれる。録画された番組のプレイリストはいつでもすぐに見られ、彼の好みの番組がずらりと並んでいるわけだが、これを見て私は、なるほど視聴者の必要を満たすテレビも存在するのだな、と思った。いつでも見たいときにすぐ、というわけにはいかないだろうが。私がついに購入に踏み切ったのは 2000年の 8月、Circuit City のクリアランスセールで TiVo が売り出された時だった。最大 14 時間の録画ができるこの機械は、キャッシュバック後の価格でたった$99 だった。

箱を開けたとたんに目に入ったのは、この録画機をテレビやステレオに接続する手順を説明した注意書だった。ちゃんとした説明書は付けない、ア・ラ・カルトで付属品を寄せ集める、という PC 業界の慣行に慣れた私の目には、完璧なユーザーマニュアルが付いていて接続用のケーブル類も必要以上に完備しているのは快い驚きだった。セットアップの操作といえば、まずテレビに接続、信号入力を接続(アンテナ、アナログまたはデジタルのケーブル、サテライト、の3者いずれも可能で、これらのうち2つまで同時に接続できる)それからいくつかの設定画面に従って操作していくだけだった。

まず ZIP コードを入力すると、内蔵の 33.6 Kbps モデムを使って必要な電話番号のリストとテレビ回線プロバイダのリストが自動的にダウンロードされる。次に、あなたの選んだテレビ回線プロバイダとチャンネルパッケージに対応した 14 日分の番組ガイド情報(Tribune Media Services によるもの)がダウンロードされる。それから、そのガイドデータがデコード・インデックス付けされる。これだけで、あなたのテレビにはもう TiVo が装備されたのだ。

<http://www.tribunemedia.com/>

57 チャンネルもあれば、どれかは点いてるさ -- TiVo の画面のユーザーインターフェイスには、メニューで選べるオプションとして、番組を観るために2つ (Now Playing と Watch Live TV)、あとで録画する番組を選ぶために3つ (TiVolution Magazine、Network Showcases、Pick Programs to Record)、そしてシステムの各種設定 (Messages と Setup) がある。

Now Playing は、録画された番組を時間の順に並べたプレイリストを表示する。それぞれの項目には短い説明、カテゴリー、チャンネル情報が付けられる。Now Playing から好きな番組を選んで再生できる。これは現在別の番組を録画中でも構わない。また、Now Playing で番組を消去してハードディスクに空きを作り、もっと別の番組を録画できる余地を作ることもできる。(空きが無くなった時には自動的に古い番組が消去される。)Watch Live TVでは、現在テレビで放送中の番組を観られる。リモコンの Live TV Guide ボタンを押せば、TiVo の番組ガイドに従って現在放送中の番組を次々とスキャンできる。

録画する番組を選びやすくするために、TiVolution Magazine と Network Showcases はすべての番組をいくつかのカテゴリーに分類する。TiVolution Magazine は TiVo の提供する機能で、番組のタイプやジャンルに従って以下の5つのカテゴリーに分けて一覧を見やすくする: TiVo's Spotlight、Kids' Stuff、Movie Marquee、Sports Arena、 Lifestyle の5つである。Network Showcases はテレビ局が独自に作った番組リストで、このリストに載せてもらうためにテレビ局は TiVo に料金を支払っている。どちらも、ケーブルテレビまたは衛星放送の契約をしている人のためのものだ。普通のアンテナ信号のテレビしか見ていない人にとっては、これらのオプションは受信できない番組の宣伝以外の何者でもない。

Pick Programs to Record では、正確に番組を選択するために3つの方法を提供している: Search By Title、Search Using Wishlists、それにTiVo's Suggestions の3つだ。第1の Search By Title では、画面上のアルファベットから文字を選ぶたびにアルファベット順の番組リストの、そのタイプした文字に合う部分が順次アップデートされて表示される。たとえば“Buffy the Vampire Slayer”を選ぶためには“BU”と入力するだけで番組リストが即座に“BU”で始まる名前の番組のところにスクロールする。やってみると、“Buffy”は上から6番目あたりに来ていた。そのすぐ上にあったのは 1947年の Abbott と Costello の映画“Buck Privates Come Home”とか“Buckmasters Whitetail Magazine”とかだった。(そう! 私は Abbott と Costello が大好きだ! この映画は AMC で8日連続午前3時からの放送だったが、もちろんそんなことは何の問題でもない - 私は即座に“Record This Showing”を選んでTiVo の“To Do”リストにこの映画を追加したのだった。)第2の Search Using Wishlists では、検索条件セットを指定して、その条件に合う番組を自動的に録画できる。たとえば、監督による Wishlist を使えば Alfred Hitchcock の映画をすべて選ぶことができるし、俳優の Wishlist にカテゴリーの条件を組み合わせれば(たとえば“Eastwood, Clint”と“Western”)ダーティーハリーシリーズ以外の彼の映画を集めることもできる。キーワードの Wishlist では番組の説明に登場する語句がすべて使える。

第3の TiVo's Suggestions では、あなたの番組の好みを TiVo が推理してそれをリストする。この推理は、あなたがこれまでに選択した番組とあなたの指定した各種設定値とに基いている。(リモコンには“Thumbs Up”と“Thumbs Down”のボタンが付いていて、あなたの番組への評価が入力できるようになっている。このボタンを多用すればするほど、TiVo が推理はより正確なものとなる。)もしもあなたが映画“Cool Hand Luke”を気に入って“Thumbs Up”ボタンを3回押したなら、TiVo は“Hud”も推薦リストに加えてくれるだろう。きっとあなたは“Hud”も好きに違いない、と推理するわけだ。デフォルトでは TiVoはディスクの空きの許す限りこの推薦リストの番組をすべて自動的に録画する。この機能はオフにもできるのだが、私にとってはこの機能が TiVo の新鮮な驚きの1つだった。ある朝目が覚めて、昨晩遅くに、聴取していたとは知らなかったチャンネルでやっていた映画“Casablanca”を録画してくれていたと知ったときの感動といったら...(TiVo よ、これがおまえと俺の美しい友情の始まりだったのだ)

録画したい番組を見つけたら、“Record This Showing”を選べばそれが“To Do”リストに追加される。もしもデータベースプログラマーの眉毛が見事に上下するのを見たいなら、“View Upcoming Episodes”を選んで見せるとよい。たとえば、“South Park”を録画したかったとして、でも奥さんは“Law & Order”を見たくて、どちらの番組も水曜の 10 PM の放送だとしよう。“View Upcoming Episodes”を見れば、たちどころに Comedy Central が“South Park”の再放送を週日何度もやっていることがわかり、リストから別の放送時間帯を選べる、というわけだ。

TiVo の Season Pass を利用すれば放送時間の変更を気にする必要もない。番組が翌日に順延になったり、2時間の特別番組になったり、特別のボーナスエピソード編が組まれたり、ということにも自動的に対応できる。たとえば TiVoに NBC の“Frasier”を Season Pass で録画するように設定すれば、そのデータベースはちゃんと NBC の“Frasier”を録画してくれる。ただ4チャンネルを毎週火曜日の 9:00 PM から 9:30 PM まで録画する、というだけではないのだ。テレビ局の都合で(いつものように)番組が他の曜日や他の時間に移動しても、この録画機は毎晩ダウンロードする番組ガイドによって時間帯の変更を認識して自動的に“To Do”リストを修正してしまう。Season Pass をカスタマイズすることも可能で、再放送でないものだけを録画したり、重複を除いて最大回数の放送分を保持したり、放送時間延長に備えて数分間録画を延長したり、ビデオ品質を指定したり、番組をどのくらいの期間 Now Playing リストに保持しておくかを指定したり、といったこともできる。

価格・販売店 -- 独立の TiVo 録画機は Sony や Philips から出ていて、録画容量は 20、30、60 時間のものがある。価格は $199 から $599 まで。DirecTV 内蔵のものは Sony、Philips と Hughes から出ていて録画時間は最大35 時間、価格は $299 (キャッシュバック後) から $399 ほど。どの録画機でも、付属の TiVo サービス契約の別途購入が必要で、その契約によって番組ガイドのアップデートやソフトウェアのアップグレードが行なわれる。サービス契約は月額 $10、または録画機ごとに無期限で $250。録画機の購入はいくつかの販売店にて、たとえば 800.com、Amazon.com、Best Buy、Circuit City、Good Guys、Outpost.com など。購入の際には DealTime や mySimon などの価格比較サービスを利用するのが絶対のお奨めだ。

<http://www.dealtime.com/>
<http://www.mysimon.com/>

次回のTiVo:時間をずらせばそこに自由が(第2部)では、TiVo の動作原理についてもっと詳しく解説してみたいと思う。また、そのプログラミングに関していかに賑やかなコミュニティーが形成されてきたか、そしてそれがいかに私の心をテレビ局の独裁から解放してくれたか、についても触れたい。

[Andrew Laurence は、著作家の一家に生まれながら、コンピューティングの職業を選んだために一家の問題児になってしまったのだった。彼の文章で誤解しないで欲しいと思うが、彼は実際にはそんなにテレビを見たりはしていないのだ。本当に。]


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA