先週、Appleはより速く使いやすいiBookとPowerBook G4を発表し、続けて2001 年度の最終四半期では6千6百万ドルの利益を得たと発表した。今回はAdamがMac OS X 10.1でのセキュリティ問題を調査し、Matt NeuburgがCE Softwareの年老いたQuicKeysのMac OS X下での再生を取り上げ、Don Kahnがピア・ツー・ピア世界におけるディジタル内容の未来を模索し、BBEdit 6.5のリリースを取り上げる。
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Apple 社 6千6百万ドルの利益を発表 下落傾向にあるアメリカや世界の経済状況や2001年9月11日のテロリストによる攻撃の後遺症にも関わらず、Apple Computer社は第四四半期に14.5億ドルの売上に対して6600 万ドル(一株当たり18セント)の利益があったと発表し、アナリスト達の予測を上回った。しかし、Appleは今期 - 2002年の第一四半期 - は厳しくなるだろうと警告した。12月で終わる期は例年は年末商戦で業績が良いが、CFOのFred Andersonは今年は14億ドルの売上に対して一株当たり10 セントの利益を予測している。この予測によれば、昨年のAppleが一時的な投資からの収入を除き、2.47億ドルの損失を出した年度末期の業績を上回るはずである。2001年度ではAppleは53.6億ドルの売り上げに対して2500万ドルの損失を出した。2000 年にはAppleは79.8億ドルの売り上げに対して7.86億ドルの利益をあげた。
<http://www.apple.com/pr/library/2001/oct/17results.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06273>(日本語)
Apple、予測を下回る損失を報告
Appleの経営内容は比較的強いままだった。四半期で85万台のMac(そのうちiBookは25万台 - 学校へのiBook機数は3倍に増えた)を発送し、その利ざやは30.1%で、現金は43億ドルあった。四半期の収入の約41%は海外からだった。Appleの2001年の終わりまでに客通りの多い場所で25店舗を開く計画も今のところ予定通り進行している。AndersonによればAppleでは従業員数を一定に抑えようとしているものの、大幅な解雇が必要になるとは予想していない。[GD](倉石)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06436>(日本語)Apple 社、2001 年中に最初の 25 店舗の直営店をオープン>
BBEdit 6.5でより快適にGrep -- Bare Bones Software社は働き者の旗艦商品であるテキストエディターBBEditの新しいバージョンを発表した。バージョン6.5は統合された「Fat Carbon」アプリケーションであり、Mac OS Xでネイティブに、また古くは(CarbonLibありの)Mac OS 8.6までで走る。内蔵された正規表現(regular-expression)検索エンジンは、今までは少々癖があり標準的ではなかったが、Perlと互換性がある正規表現(Perl-Compatible Regular Expression (PCRE))検索ライブラリを基にした新しい検索機能で置き換えられた。これにより新しい機能が加わり、作動も標準的なPerlやUnix表現と共通になった。またBBEdit 6.5には前から要望があった文法カラー化とCascading Style Sheetsの文脈マークアップのサポートが加えられた。(しかし、「HTML文法のチェック」機能が正しいと解釈するHTMLの定義はW3C検証器の解釈と未だにかなり異なる。)Mac OS Xとの統合は感心するほどである。BBEditはUnix shellから起動でき(コマンドの出力をそれにpipeすることも出来る)、また、逆にBBEditがshellスクリプトだけでなく、PerlやPythonスクリプトをも走らせることも出来る。BBEdit 6.5の定価は120ドルだが、前のバージョンからは40ドルでアップグレードできる(最近6.1を購入したのであれば無料)。使用説明書全てと笑いを誘うリリースノートも付いてくる。Bare Bonesのウェブサイトでは起動回数制限があるデモが提供されている。[MAN](倉石)
<http://www.barebones.com/products/bbedit/>
<http://validator.w3.org/>
<http://www.barebones.com/products/bbedit/bbedit-demo.html>
文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 吉田節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>
Apple 社は先週、第 4 四半期の財務状況を発表する前日に、販売好調なiBook (Dual USB)と PowerBook G4 Titanium の改良モデルを発表した。(詳しくは TidBITS-579 の“素晴らしく小さくなった iBook”、TidBITS-563 の“PowerBook G4 Titanium は明々と燃える”、および TidBITS-583 の“iBook? それとも TiBook?”を参照。)iBook の改良点は、まずプロセッサを 66 MHz システムバスの 500 MHz PowerPC G3 と新しい 100 MHz システムバスの 600 MHz PowerPC G3 から選べるようになったことである。次に 128 MB の RAM が標準になった(しかし現実的にはこれでも足りないし、Apple のRAM の価格は他で買うよりはるかに高い)。また 10 GB のハードディスクはなくなり、15 GB、20 GB、および 30 GB が用意された。さらに、従来より扱いやすい四角形の電源アダプタが添付される。基本構成での価格は従来と同じく、どの光学式ドライブを選ぶかによって 1,300 ドルから 1,700 ドルまでの範囲にある。
<http://www.apple.com/ibook/>
<http://www.apple.com/powerbook/>
<http://www.apple.com/powerbook/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06269>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06459>
(日本語)素晴らしく小さくなった iBook
(日本語)PowerBook G4 Titanium は明々と燃える
(日本語)iBook? それとも TiBook?
Titanium も同様に新しいプロセッサを採用した。オンチップで 256K の二次キャッシュを内蔵する 550 MHz および 667 MHz の PowerPC G4 である。また667 MHz モデルは 133 MHz のシステムバスを持つ(従来の500 MHz モデルと新しい 550 MHz モデルの 100 MHz システムバスより速い)。Titanium のグラフィック機能は ATI Mobility Radeon グラフィックアクセラレータと 16 MB の DDR ビデオメモリにより改良され、DVD ビデオをフル・フレームレートで再生できるようになった。この他、標準の DVD-ROM ドライブの他にオプションでスロットローディング方式の CD-RW ドライブを選べるようになり、ギガビットEthernet が標準となり、RAM が増え(従来使われていた PC100 に代わって新たに PC133 RAM が使われる)、新しい四角形の電源アダプタが付属するようになった。また Apple によると新モデルでは、旧モデルの弱点だった AirPort(訳注:日本での名称は AirMac)の通信可能な範囲が広がったとのことだ。基本構成での価格は 2,200 ドルから 3,300 ドルである。
<http://www.apple.com/powerbook/specs.html>
<http://maccentral.macworld.com/news/0110/17.apple.php>
<http://dealram.com/prices/systems/11/256MB.html>
<http://www.ramseeker.com/Titanium133.shtml>
<http://developer.apple.com/techpubs/hardware/hardware.html>
ところでこれらの改良は、非常に人気のある iBook との差別化が必要となっ てきた Titanium にとって特に歓迎されるものだ。Apple が今の時期に iBook を強化した理由はあまりはっきりしないものの、今度の年末商戦に向けて(た ぶん、秋学期のうちに一台欲しくなった学生たちに対しても)iBook をもっと 魅力的にするものではある。Apple が最近発表した新しいローエンドの iMac と共に、年末商戦で一役買うのは間違いないだろう。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06580>(日本語)Apple 社 $800 の iMac をラインナップに加える
<http://www.apple.com/imac/>
文:Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳:倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
Mac OS X 10.1の性能と使いやすさの著しい改善を目の当たりにして、信頼性の高い働き者のMac OS 9からの乗り換えを考えている人は多いだろう。しかし、セキュリティの件に関して気楽に考えている訳にはいかなくなったのは言うまでもない。最初のリリース後からいくつかのMac OS Xのセキュリティの問題点が発見されている。ほとんどはUNIXを土台にしていることから来ていた。Mac OS X 10.1のリリースでいくつかの心配とされた点の修正を加えたが、すぐにも新しく三点ほど発見された。ひとつはInternet Explorer 5.1に影響し、もうひとつはWebDAVとiDiskにつきまとい、三つめはどんなアプリケーションでも root 権限で働くことを可能にする。前に較べAppleの対応は早く、数日中にはInternet Explorer問題の防止策を発表し、Mac OS X 10.1発売開始から3週間も経たない2001年10月19日にはInternet Explorerとroot権限問題の修正策を発表した。
それは良かったのだが、Appleがセキュリティ問題に対処する方法には問題が残る。Mac OS X 10.0発売開始直後から(TidBITSを含めて)多くの人たちがセキュリティの穴に関して何らかの発表をするようAppleに呼びかけた。当初は全く何ら反応がなかったのだが、やがてAppleはセキュリティ発表のメーリングリストと関連したウェブページを作り、後者の一つにMac OS X関係のセキュリティアップデートを列挙した。しかし、それ以降、メーリングリストは2001年の5月に作られてから一度しか使われず、それもセキュリティアップデートページへ行くようにと伝えただけだった。さらに困ったことにそのページには2001年10月19日の修正の説明が未だに載っていない。最新の情報が載っていないとはいえ、Appleが認め、修正したセキュリティ問題を見るためにだけでも時々閲覧してみる価値はあるだろう。
<http://www.apple.com/support/security/>
<http://www.apple.com/support/security/security_updates.html>
いまだ未解決のWebDAVとiDiskの問題を含め、これら三つの問題点を見てみよう。
Rootになり易いMac OS X -- 悪質なハッカーがインターネット経由でコンピュータを乗っ取ることを心配する場合が多いが、Mac OS XのUNIXの土台と複数ユーザ機能を考えると、一部のユーザにとってはローカルのユーザによる悪さの方が心配だ。古いMac OSでは第三者のソフト(もしくはMac OS 9に組み込まれているファイル暗号化)で保護されていないMac の前に座れば、Mac上のどんなファイルのデータをも読める。古いマルチユーザー機能を使えば子供がMacをめちゃくちゃにするのは防げたが、意図的に侵入しようとする者を防ぐまでは出来ない。Mac OS Xではこれよりも高い基準のセキュリティが前提となっているので、root権限を可能にしたことがなくても、デスクトップにいる誰でも簡単にroot権限を手に入れる方法があることを発見したのは大きな心配の種だった。(NetInfo Manager、Disk Utility、Print Centerなどの)いつもrootとして走るアプリケーションを起動し、Appleメニューの最近使用メニュー(もしくはAppleメニューのどこからでも)から別のアプリケーションを起動するだけでroot権限が手に入ってしまう。Appleはソフトウェアアップデート機能設定から手に入るSecurity Update 10-19-01でこの問題を直した(Appleメニューから「このマックについて」を選択し、「Version 10.1」をクリックする。もし「Version 10.1」が「Build 5L14」で置き換えられば既に修正が加えられている)。この抜け穴がどうやって働くかのStepwise.comからの説明を読んでみるのも興味深いかもしれない。
<http://www.stepwise.com/Articles/Admin/2001-10-15.01.html>
なぜこれが問題なのか?UNIXの視点からは、誰かroot権限があれば設定など関係なくコンピューター全体をコントロールできるのは一大事である。一人だけで使っていて起動時に自動的にそのユーザとしてログインするような普通のMacユーザからしてみれば、このセキュリティの穴は大して心配することもない。誰かが私のiBookのroot権限を得てしまうといっても、そのためにはコンピュータに実際に触れなければならないわけで、私なら本体自体が盗まれてしまうということの方がよほど心配だ。もっとも、このバックドアの発見を考えるとNetopiaのTimbuktu ProやVNCサーバーやクライアントなどの遠隔操作プログラムに気をつける必要があるだろう。
<http://www.netopia.com/software/products/tb2/mac/>
<http://www.osxvnc.com/>
<http://www.webthing.net/vncthing/>
別の視点から見れば、Mac OSインストールCDやハードディスク上にインストールされたMac OS 9があれば誰でもMac OS Xコンピュータを再起動できることを思い出すべきだ。Mac OS 9はローカルのディスクのMac OS Xでのファイル許可を認識せず無視するため、この人は完全にシステムをコントロールできる。AppleはOpen Firmwareでのこれらの抜け穴を塞ぐ努力をしているが、Open Firmwareをリセットするか、ディスクを他のコンピュータへ移し換えればその制限を乗り越えられる。そう考えれば、このローカルrootの抜け穴はコンピュータに直接触れられればそれを実質コントロールでき、ファイルシステムの暗号化以外には ソフトウェア によるセキュリティは不可能であるという点を補強するものと考えればよいだろう。
Internet Explorer 5.1からの自動起動 -- Microsoft Internet Explorer 5.1はデフォルトでダウンロード中にMacBinaryとBinHexファイルを自動的に解読するように設定されている。これは新しいことでもなく、セキュリティ上の問題でもない。しかし、なぜかMac OS X 10.1ではInternet Explorer 5.1はStuffItで圧縮されていないがMacBinaryやBinHexで記号化されただけのアプリケーションのいくつかを起動してしまう。普通のアプリケーションでは問題はないが、誰かがTrojan horse -トロイの木馬のように無害な物のように装うアプリケーション - を掲載すれば被害があり得る。どのような(Classic、Carbon、Cocoaなど)アプリケーションが、またなぜ自動的に起動されるのかはっきりしていないが、AppleがSoftware Update機能設定パネルを使用してInternet Explorer 5.1.3を発表したからもう問題ではない。今すぐにアップデートが出来ない場合は問題の解決は単純である。Internet Explorerの機能設定ウィンドウのDownload Optionパネルで「MacBinaryファイルの自動解読」と「BinHexファイルの自動解読」をオフにすれば良い。これらの設定を変えてなんら機能上の問題はない。Internet Explorerが内部で解読する代わりにStuffIt Expanderにその仕事を任せるだけのことである。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1490>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=106503>
WebDAV使用でのiDiskにおけるパスワード露出 -- Mac OS X 10.1ではAppleは昔のApple Filing Protocol(AFP)ではなくWebDAVを使用してiDiskをアクセスするようFinderを変更した。しかし、Open Door NetworksのAlan Oppenheimerによると、Mac OS X版のWebDAVではパスワードを暗号化していないテキストのままインターネット上へ送り出している。これはWebDAV仕様の違反で、かつ基本的なセキュリティ原則に反している。他人のインターネット接続を監視できるのであればパスワードを発見し、iDiskとmac.comのメールアカウントへアクセスできる(多くの人は一つのパスワードを繰り返し使用するので他のサービスも危険にさらされている)。AFPは今でも安全なのだが、それを使用してiDiskへアクセスするにはGoメニューから「Connect to Server」を選択して“afp://idisk.mac.com”と入力する必要がある(この手順を行ったらiDiskへのエイリアスを作って「お気に入り」に加えれば将来のアクセスが楽になる)。FTPもパスワードを暗号化していないテキストのまま送るので、心配の度合いはFTPでパスワードを露出することに対する心配と似たようなものだろう。もしFTPやWebDAV経由でiDiskを使うのであれば、より重要なサービスで使っているパスワードを再利用しないよう気をつけるのが常識だろう。FTPの代用としてはInterarchy 5.0.1やRBrowserを試してみれば良かろう。どちらも(Mac OS X 10.0.4以降に組み込まれている)SSH暗号を使用して安全に接続することが出来る。
<http://www.opendoor.com/macosxalert.html>
<http://asg.web.cmu.edu/rfc/rfc2518.html#sec-17.1>
<http://www.interarchy.com/>
<http://www.rbrowser.com/>
私達が知る範囲ではこのWebDAVのセキュリティの問題をAppleは認識しているが、Security Update 10-19-01においてはまだ修正されていない。TidBITS Talkの議論によればMac OS X 10.1版のWebDAVは基本的な認証方法しかサポートしていないらしい。これではFTPに較べてのWebDAVの大きな利点が消えてしまう。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkmsg=11678>
この記事からの教訓を述べるなら、それはSoftware Updateでアップデートを定期的に検索させるべきだということだ。Appleがリリースするアップデートを手に入れるのには一番早い方法だろう。もしMac OS Xに関するセキュリティの基本についてもっと詳しく知りたいのであれば、Roland Millerが10.0に関して投稿したレポートがほぼ10.1にも当てはまる。
<http://www.sans.org/infosecFAQ/mac/OSX_sec.htm>
文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
Mac OS X 10.1 が到来してからというもの、私はほとんど常時 Mac OS X を使うようになった。しかし、このことはまた、私が長い間馴染んできたいろいろな作業の習慣が使えなくなったことをも意味するものだった。なぜなら、こうした習慣は、さまざまのサードパーティのユーティリティによるものであって、そうしたユーティリティの多くはまだ Mac OS X に移行できていないし、さらには移行することが完全に不可能なものも多くあるおそれがあるからだ。そもそも Mac OS X はこれまでとは根本的に違うシステムなのだから、Mac OS X の機能に修正を加えたいと思うソフトウェア開発者たちは、以前とは全く違うハッキングの方法を一から学び直さなければならないわけだ。そうは言っても、将来的にどんなことが可能なのかの限界点は、まだ誰にもわからない。我々は決して、Macintosh ソフトウェア開発者たちの創造的能力を過小評価してはならないのだ。
Mac OS X が初めて登場した時、すでに私はマクロユーティリティがどうなるのだろうかということを一番に考えていた。マクロユーティリティとは「マシンに住む幽霊」、あらかじめ設定しておいた一連のアクションを、あたかもユーザーが現在キーをタイプしたりマウスを動かしたりしているかのようにあなたのコンピュータに思い込ませることによって自動的に実行してくれるユーティリティだ。そういうわけで、今回 Mac OS X の土俵においても、CE Software社の QuicKeys が、山高帽のウサギの紳士となって穴をくぐって私を案内し、不思議の国の庭園に連れ出してくれた時には、私は喜びの気持ちでほっと安堵のため息をついたものだった。しかし! 我に返って考えてみると、不思議の国に降りて行ったアリスと同じく、そこに行けるのは、瓶の薬を飲んで自分の体を小さくしてからでなければならなかったのである。
<http://www.cesoft.com/products/qkx.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1044>
(日本語)形態、機能と Quickeys 3.5 (第一部)
(日本語) 形態、機能と Quickeys 3.5(第二部)
(日本語)OneClick - スーパーユーティリティ
(日本語)KeyQuencer - QuicKeys キラーになるか ?
(日本語)Mac とマクロをめぐって
(日本語)気になる QuicKeys 4
(日本語)ボタンを押す自由 - OneClick 2.0
Mac OS X においては、QuicKeys X は普通のアプリケーションであって、ショートカットを実行するためにはあらかじめアプリケーションとして動作していなければならない。そこで、これはログイン設定パネルで起動項目に入れておくのが良いだろう。普通のアプリケーションなのだから、QuicKeys X は今回から普通のウィンドウや普通のメニューを持つようになった。つまりこれは、インターフェイスが一段と良くなったことを意味している。わけのわからないモーダルダイアログの羅列はもはや過去のものとなった。実際のところ、CE 社は今回 QuicKeys のウィンドウを見事に Mac OS X らしいものに仕上げてくれた。巧みなドローワーの利用、カスタマイズ可能なツールバー、ドラッグ&ドロップなどだ。使いやすさも良くて直観的なので、マニュアルなど読む必要もないほどだ。しかしながら、設定したトリガーすべてを一覧することは相変わらずできないし、個々のアクションがどのシーケンスやどのフローティングパレットに使われているのかを見るための手がかりもない。こうした問題点は私が何年も前から指摘してきたことなのだから、CE 社も今回のこのような機会に取り組んでくれても良かったのに、と思うのだが。
QuicKeys の個々のアクションは何種類ものトリガーを持つことができ、それらはそれぞれ、普遍的かまたは指定のアプリケーションが前面にある時のみかのいずれにも設定できる。アクションに指定できるトリガーには次のようなものがあり得る: キーの組み合わせ、またはキーの組み合わせの連続; 絶対的な時刻、起動時からの経過時間、または時間間隔の繰り返し; QuicKeys のフローティングパレットでのクリック; QuicKeys メニュー(メニューバーの右端、または Dock にある)の項目の選択。
さて、一番の問題は利用できるアクションの種類がぐっと少なくなってしまったことで、これは Mac OS X が QuicKeys に課した制限によるものと思われる。QuicKeys X は文字をタイプできる; マウスを動かしたりクリックしたりできる; コンピュータをスリープさせたりシステム終了させたりできる; そしてUnix シェルにコマンドを送ることができる。これらの機能は非常に貴重なものだ。それ以外に QuicKeys で可能なアクションは、他の方法でも可能なものとか、あまり重要とは思えないものだ。ただしアクションのシーケンスを拡張する時には便利かもしれない。そういうものの例を挙げれば: ファイルやフォルダを開いたり、AppleScript スクリプトを走らせたり、アプリケーションを切り替えたり、URL を開いたり、フォルダの Finder での表示を切り替えたり、[開く][保存]のダイアログでフォルダを切り替えたり、といった具合だ。
けれども、QuicKeys はもはやボタンをクリックしたりメニュー項目を名前で選択したり、ウィンドウを切り替えたりウィンドウをスクロールしたり、クリップボードにアクセスしたり、また生の Apple event を送ったりといったことができなくなってしまった。さらに悪いことには、QuicKeys X はもはや画面を「見る」ことができない、つまりあるウィンドウが前面にあるかとか、あるメニュー項目が選択可能かとかいうことを判断基準にアクションをコントロールすることができなくなった。QuicKeys のスクリプト機能も大幅に削減されてしまった。要するに、あらかじめ書き上げて名前を付けて保存しておいたアクションを動作させるという、それだけのものになってしまったのだ。
QuicKeys X のリリースは確かに嬉しいことで、皆が歓迎できるものだろう。私自身も、すでにこれをかなり使っている。よく使う語句や文章がいくつも登録してあっていつでもどんなアプリケーションにでもタイプさせられるし、いくつかのメニュー項目がキーボードショートカットで選べるようにしてある。(ただしこれは以前よりも速度が遅いしあまり信頼もできない。なぜならメニュー項目は直接選ぶのではなくて QuicKeys がマウスカーソルをメニュー項目の場所まで動かして選択をシミュレートするだけなのだから。)けれども、QuicKeysにできることの範囲は、私のこうした手技のうちのごく一部を占めるだけのものになってしまっている。
QuicKeys X のことを過度にこき下ろすのは私の本意ではない。Mac OS 9 の下で利用できた機能のすべてをカバーするだけの標準にはまだ達してはいないかもしれないが、これはまだバージョン 1.0 に過ぎないのだし、以前の QuicKeysで培ってきたノウハウはことごとく Mac OS X で変わってしまったのだから。我々すべてが Mac OS X のユーザーとしてこの新しい Mac OS に慣れるまで相当の時間がかかるのと同じことで、Apple が Mac OS X の内部動作の情報を充分な深さまで公開して CE 社のエンジニアたちがこのマクロユーティリティを真に魔法のツールに熟成させることができるようになるまでには時間がかかるだろう。CE 社は今後も QuicKeys X の能力を拡張させてゆきたいと言明している。Mac OS X の内部動作の秘密をうまく探り出して自動化を実現できるよう、彼らに幸運を祈ろうではないか。
けれども CE 社はできるだけ急いだ方がよい。QuicKeys の機能のいくつかを先取りするような小さな Mac OS X 用ユーティリティはすでに数多く現われてきているのだから。どんなアプリケーションにでもテキストをタイプするのはSelznick Scientific Software の Typist とか Michael Kamprath の Keyboard Maestro とかが実現している。DragThing や LaunchBar、それに Sig Software の Drop Drawers などは、いろいろな方法でアプリケーションを起動したり切り替えたり、また AppleScript スクリプトを走らせたりできる。その他私がまだ知らないようなユーティリティで QuicKeys のその他の機能を噛み取りつつあるものも、まだまだ沢山あるに違いない。
<http://www.selznick.com/products/typist/>
<http://www.keyboardmaestro.com/>
<http://www.obdev.at/products/launchbar/>
<http://www.dragthing.com/>
<http://www.sigsoftware.com/dropdrawers/>
QuicKeys X の価格は $60 で、30日間有効のデモ版がダウンロードして利用できる。
文: Dan Kohn
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
このエッセイは盗用自由。さもなければ、どうしてこうしたエッセイが出版の未来を代表するものと言えるだろうか。注: 私は、こういうものを書くことで一銭の収入も得ていないのだ。
Freedom of the press belongs to those who own one.(「出版の自由というものは、それを持つ者の手の中にある。」)- A.J. Liebling
もしもあなたが、またはあなたの知っている誰かが、コンテンツ(文章、音楽、ビデオ、その他)を制作してそこから収入を得たことがあるなら、またはこれから得ようと考えているなら、用心した方が良い。
何故かと思うなら、試しに Aimster、LimeWire、eDonkey2000 など、数限りなくあるピア・ツー・ピアのファイル共有システムのどれでも1つ選んでダウンロードして(もちろん、無料で、だ)みればわかる。こういったシステムはNapster が今春 Recording Industry Association of America (RIAA) によって首を切り落とされて以来、九頭の怪物ヒュドラーのごとくに次々と Napsterに代わって首を生やしてきたものたちだ。これまで Napster で出回っていたMP3 の音楽が事実上すべてこれまでと変わらず無料で入手できるばかりではなく、今やそれ以外のタイプのコンテンツも、例えば映画(DVD から直接「剥ぎ取って」きたもの)とか、その他何でも(シェークスピアの作品からハードコアのアダルト物まで)次々と加えられつつある。
<http://www.aimster.com/>
<http://www.limewire.com/>
<http://www.edonkey2000.com/>
<http://www.napster.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1206>
(日本語)判事、Napster 社のボタンを押す
(日本語)Napsterが(ついに)Mac クライアントをリリース
(日本語)連邦高裁 Napster 差し止めの一審判決を支持
(日本語)Napster 社に対する差し止め命令出される
しかしこれらの Napster 後継者たちが以前と違う点は、RIAA でさえももはやどうしても裁判に訴えることができない、ということだ。Napster とは違って、ソフトウェアのインフラストラクチャとなるべき会社組織が存在していないし、押収すべきサーバーも無ければ逮捕状を突きつけるべき役員もいない。この新世代のピア・ツー・ピアのクライアントは、中心となるインフラストラクチャを全く必要とせず、世界中に散らばった開発者たちのごく弱い繋がりから成るグループによって開発されているだけなのだ。個々の開発者は、その仕事の結果として金銭的収入を得ようということは一切考えずに、多くの労力を無償で提供しているのだ。これらの開発者たちは皆、成人か、またはティーンエイジャーの子供たちで、社会的な立身出世コースを目指してはいないかも知れないが、どんなスポーツ選手や企業家にも劣らない実力を備えている。多くの者たちは自分のソフトウェアをオープンソースとして配布しているので、バグを修正したり改良を加えたりといったことが誰にでもできる。つまり、その意味するところは、これまで我々が馴染んできた音楽業界というものがもはや死んでいて RIAA に死化粧を施されつつある、という事実にとどまらない。今や、すべてのコンテンツというものがいかに創出されいかに配布されるかという、その方法に更なる一大変革が訪れようとしていることを予告しつつあるのだ。そして、コンテンツの制作者(たとえばこのエッセイの著者)がその仕事に対して報酬を得るということがそもそもあり得るのか、という深刻な疑問さえも提示しているわけだ。
最前線のテクノロジー・アナリストたちの書く記事を何十と読んでみても、そのほとんどのものが、息もつかせぬほどの勢いで、これこれの新技術が大革新を引き起こすとか、変化の節目だとか、歴史の終結点だとかと断定していることがわかるだろう。実際のところ、いくらインターネットの成長率が高まったといっても、他のテクノロジー、例えばラジオとかガスレンジだとかいう技術の方がこれまでは開発の速度が上だった。しかし、我々はこのデジタル複製技術やピア・ツー・ピアのコンテンツ配布についての表面的な騒ぎに紛れて、音楽・映画・著作物の作者や出版者に押し寄せつつあるそのインパクトを過小評価しているのではないだろうか。
単純に言ってしまえば、コンテンツの複製が基本的に無料でできて、実際問題としてそういう行為を止めることが誰にもできないような世界においては、コンテンツ創出をこれまで支えてきた従来型の経済モデルは死に絶えてゆくのだ。法律家やロックバンド(のうちのいくつか)や政府などがいくらそれに楯突いても(驚くことにこれら三者が仲良く敗者の側に属するというわけだ)我々は皆、否応無しに「すばらしき新世界」に突入してゆくわけだ。
ちょっと強引なテクノロジー決定論的観点になってしまったが、もしもそのようにしてコンテンツがすべて無料になるべきものだとしたら、つまりコンテンツの制作者や出版者が今日のような形で(例えば皆が店頭で CD を買うという形で)直接報酬を得るということが無くなったとしたら、そこで中心となる疑問は、これまで 300 年間にわたってうまく機能してきたコンテンツ報酬システムに代わるべき新しいシステムとは何なのか、ということだろう。しかし考えてみれば、無限に再配布可能な品物についての収入モデルを作ることは何も新しい問題というわけではない。コンテンツの創出をサポートし得るような経済モデルも、いくつか現存してはいる。ただし、このような経済モデルでは、著者をサポートすることは可能でも、著者に加えて出版者までをもサポートできるだけの収入を確保することは無理かもしれない。そして、おそらくそのことが RIAA をしてこれほどまで必死にデジタル配布の妨害へと駆り立てているのだろうか。エコシステムが重大な環境変化を経験するとき、それ以前には重要な役割を担っていた生命体のいくつかが、もはやエコシステムの片隅にひっそりとたたずむだけの存在に落ちぶれてしまう、ということもあるのだ。かつては二酸化炭素を酸素に変える中心存在であったシアノバクテリアも、また大きなレコード会社で働いていたアーティスト担当社員たちも。
デジタル商品についてエコノミストたちが使う用語がある。ある品物を他の誰にもそれを手放させることなく我々が使用することができるとき、その品物は「非競争的」と呼ばれる。例えば、私があなたの CD をコピーしても、あなたはそれで何も損はしない。(つまり「非競争的」だ。)しかし、もしも私があなたの車を盗んだら、あなたは怒るに違いない。(つまり「競争的」だ。)一方、ある品物を1人が利用できる際に、現実的には誰にとがめられることもなく誰もが同時に利用できるとき、その品物は「非排除的」と呼ばれる。例えば、普通のテレビ放送を他の人々に見させなくすることは、現実的にはできない。(つまり「非排除的」だ。)しかし、映画館に他の人が入場するのを止めることは現実的に可能だ。(つまり「排除的」だ。)エコノミストは、非競争的かつ非排除的な物を、「純粋公共物」と呼んでいる。ここで「公共“public”」という用語を使ってはいても、決して合衆国政府から与えられたものを意味するというわけではないことに注意して欲しい。
純粋公共物の古典的な例は、灯台だ。灯台の光を1隻の船が見ても他の船が見る灯台の光に何も影響を与える訳ではないのだから、これは非競争的だ。また、航行するすべての船から見えるのだから、非排除的だ。ただし今から2世紀前のニューイングランドでは、(メンバー以外の者の使用を妨げることができないにもかかわらず)船団ギルドが組合専用管理の灯台を作ったことはあった。今日の大多数の医学研究や、ほとんどすべての基礎科学研究は純粋公共物と言える。しかしながら、まさにそれが理由で、ほとんどのこうした研究は(少なくとも間接的には)政府によって資金を供給されている。典型的な純粋公共物の例を他に挙げるとすれば、国の防衛、蚊の駆除、公共ラジオ放送などがあるだろう。これらの例のいずれも、1人の消費者にそれを提供するコストが他の何人の消費者に提供するためのものと等しく(したがって非競争的)かつそれを誰かが利用することを差し止めるのは非現実的(したがって非排除的)と言える。次の表に、いくつかの例を挙げてみた。
| 排除的 | 非排除的 -----------+--------------- ----+-------------------------------- 競争的 | 自動車、ラジカセ | 非管理の漁業権 -----------+--------------------+-------------------------------- 非競争的 | 映画館の映画、 | 灯台、国の防衛、 | 大ホールでの | 蚊の駆除 | コンサート |
コンテンツがもし純粋公共物になろうとしているのならば、コンテンツをコピーすることが窃盗にあたるというレコード業界の主張は、根本的に考え直さねばならないことになる。我々は、対価を支払わずに使用された場合でも、競争的な品物と非競争的な品物とでは大きく異なった反応を示す社会的傾向がある。例えば、自動車を盗まれた場合と、基金の募金に寄付をしない人が公共ラジオ放送を聞いた場合とでは、課せられる罰は大きく違うだろう。もちろん、対価を支払わない人を効率的に排除することが可能な場合には、品物が競争的か非競争的かということはそれほど問題ではなくなる。(例えば Microsoft を考えてみれば、Office を1人に売るためのコストは1億人に売るためのコストとそう変わらない(したがって非競争的)けれども、密告者を巧みに使い、法律的刑罰を強権的に振り回すことによってそのソフトウェアを実際的に非常に排除的なものに変えているのだ。少なくとも業務用ソフトウェアについては。)
音楽業界や映画業界を代理する弁護士たちは、デジタルコンテンツに関する彼らのビジネスモデルに迫りつつあるこの危機に充分気付いており、彼らはすでにそれに対処できる解答を見い出したと考えている: それが暗号化だ。暗号化はおそらく音楽業界の最後の望みの綱、彼らの製品を排除的に保つための最良の解決策のように見える。次回のこのエッセイは盗用自由−その2: 暗号化では止められないでは、彼らの考え方がなぜ間違っているのか、暗号化によるコンテンツの保護が失敗の運命にあるのはなぜか、を語ることにしよう。
[Dan Kohn は Skymoon Ventures 社の General Partner として働いている。彼の著作のアナウンスメントは<dankohn-subscribe@yahoogroups.com> で知ることができ、関連する討論は <dankohn-discuss-subscribe@yahoogroups.com>.で参加できる。]
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA