TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#610/17-Dec-01

2001年の最後は、中身のぎっしり詰った号で年送りとしたい!Dan Kohn が、デジタルコンテンツの将来についての彼の論点は窃盗を正当化してるだけなのかどうかを問うエッセイをもって再登場。そして Mark Anbinder は Virtual PC 5.0 の新機能を検証。Matt Neuburg は Apple の来るべき AppleScript Studio をこっそり覗いてみる。そして Adam は 1月の Macworld Expo で見逃してはいけないイベントに明りを当てている。PowerBook G4 Titanium, IPNetRouter 1.6.3, そして PowerMail 3.1 についても簡単にふれている。それでは、2002年にまたお会いしましょう!

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MailBITS/17-Dec-01

さよなら 2001年、そして皆さんどうもありがとう -- 長いそして難しい年ではあったが、いよいよ年の最後を迎えようとしている。この年の最後のホリデーシーズンが皆様にとって静かで安らかなものであることを願うものである。いつものことではあるが、私の心からの感謝を TidBITS を可能としてくれた人々におくりたい:Tonya, Geoff, Jeff, Matt, そして Mark, 我々のスポンサー企業、インターネットホスト、TidBITS に直接寄付をしてくれた人々、今年出版した記事を書いてくれた人達、五ヶ国語に TidBITS を翻訳してくれた無私のボランティアの人達、TidBITS Talk への多くの参加者、そして最も重要な読者の皆さん、皆さんがいなければ残りは何も起らなかった。新年号は 07-Jan-02 である。更なるスケジュールの変更とか予知できない交通障害とかさえなければ、Steve Jobs の Macworld Expo キーノートについてお伝えできるはずである。では、皆さんのホリデーが願い通りとなりますことを願って、幕を閉じます。[ACE](カメ)

PowerBook G4 Titanium に Combo Drive が付く -- 高級ラップトップの組合せの選択に頭を悩ますのにはもう辟易である?Apple は今日 PowerBook G4 を化粧直しした。お陰ですべてのモデルにスロットローディング型の DVD-ROM/CD-RW Combo ドライブが標準で付くことになった。これで DVD ムービーを楽しみ、CD を焼き、そして(勿論のこと)標準のオーディオとデータ CD を読むことが出来るようになった。なぜ今なの?というのははっきりしないが、多分 Apple としてはまだ残りあるホリデーショッピングシーズンを当てにしたいということなのであろう(とは言っても、この新構成での出荷にはあと一週間は見込まなければならないと思うが)。もちろんこの Combo ドライブは有用ではあるが、Macworld Expo キーノートで Steve Jobs が強調出来る様なたぐいのものではない。この 10 月にリリースされた PowerBook G4(TidBITS-602_ の "Apple が iBook と Titaniumを高速化" 参照)の購入者へのアップグレードは考慮されていると聞くが詳細はまだわかっていない。[ACE](カメ)

<http://www.apple.com/powerbook/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06601>(日本語)Apple が iBook と Titanium を高速化

IPNetRouter 1.6.3 動的対応となる -- Sustainable Software は同社の人気のインターネット共有ソフトウェア IPNetRouter に大変重要な機能を追加して、バージョン 1.6.3 をリリースした。動的に割り付けられた IP 番号をもつ接続(多くの商用ブロードバンド接続は動的 IP 番号を持っている)を共有している IPNetRouter の利用者にとっては、IPNetRouter 1.6.3 を使う事でDynDNS.org の無料の動的 DNS サービスを利用できるようになる。 DynDNS クライアントととして働くので、IPNetRouter は DynDNS に対して、自分の IP アドレスが変ったとき自分の固定ドメイン名を新しい IP アドレスに対応するよう更新する通知をする。Mac 対応の他の DynDNS クライアントもあるが、例えば James Sentman のfree Dynamic DNS Client、もしすでにインターネット接続共有に IPNetRouter を使っているのであれば、DynDNS サーバーへの IP アドレス変更通知をする仕事は、それ自身にさせるほうが優雅であり理屈の上では速いはずである。登録ユーザーに対しては IPNetRouter 1.6.3 へのアップグレードは無償である;プログラムは1.4 MB のダウンロードとなる。[ACE](カメ)

<http://www.sustworks.com/site/prod_ipr_overview.html>
<http://www.dyndns.org/dyndns/>
<http://www.sentman.com/dyndns/>

PowerMail 3.1 が IMAP サポートを強化 -- CTM Development はPowerMail 3.1 をリリースした。これは同社の多機能の電子メールクライアントの最新版であり、IMAP サポートが完全に書き直された。(PowerMial 3.0 についてのレビューは TidBITS-jp-530 の "新天地 PowerMail へ" を参照。)他の新機能としては、フィルタの手動による起動、他言語サポートの改善、フィルタの高速化、行にまたがった長い URL をクリックしたとききちんと作動するようペーストあるいはドラッグされた URL を自動的にカッコで包む機能、改善された AppleScript 機能、そして Mac OS X 下でのマウスホイールのサポート等がある。PowerMail 3.1では前版で見られた数多くのバグが修正されている。PowerMail 3.0 の登録ユーザーに対してはアップデートは無償で、さらに 30日限定のデモ版も 4.1 MB のダウンロードとして出されている。[ACE](カメ)

<http://www.ctmdev.com/powermail3.shtml>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05930>(日本語)新天地 PowerMail へ


Macworld Expo SF 2002 イベント情報

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

Macintosh ユーザにとってのメインイベントが、カレンダーに大きく浮かび上がってきている。Macworld Expo San Francisco は、2002 年 1 月 7 日から2002 年 1 月 11 日まで開催される予定だ。PC 向けのトレードショーは 9 月11 日のテロ以前から衰退気味であり、その後 Las Vegas で行なわれた Fall Comdex では入場者数が 40 パーセントまで減ったり出展者が一つの会場でまかなえてしまうようになるなど悪くなる一方だ。しかし、7 月に New York で行なわれた Macworld Expo は、入場者数からいえば前月の PC Expo を上回っているので、今回もまたうまく行くことを望みたい。そうは言っても、New Yorkに比べ San Francisco の出展社数は多少下回っており、厳しい予算が反映される出展会社のパーティーに比べ Netter's Dinner などのユーザが主催するイベントのほうが目を引くことだろう。

<http://www.macworldexpo.com/>

Jobs の基調講演は前日に -- IDG World Expo は先週遅く、Macworld Expoで恒例の Steve Jobs の基調講演が一日前にずれると発表した。これにより基調講演は 2002 年 1 月 7 日月曜日、午前 9 時から 11 時半となった。これは不幸にも San Francisco に月曜に到着する予定を立てていた多くの報道関係者にとって、基調講演が全く聴けなくなるかフライトやホテルの予定の変更を迫られることになる。しかしながら Apple は、この影響を受けた人には何らかの弁償をするつもりである模様だ。その他の主要な基調講演の聴衆 - カンファレンスパスを持つ人達 - には、Macworld Expo カンファレンスが元々月曜日から始まる予定だったこともあり、あまり影響はないだろう。Apple は基調講演を月曜日に行なえば聴衆の数が減る事に間違いなく気付いている(そして Steve Jobs は満場の観衆の前で演説したい)だろうが、月曜日に基調講演を行なうことは同じ月曜日の夜に Las Vegas で行なわれる CES、International Consumer Electronics Show から報道関係者を根こそぎ奪うことになるかもしれない。最近 Apple の iPod に見られる一般消費者向け電化製品への進出、そして噂されるコンシュマーレベルの新デザイン iMac には、基調講演に報道関係者が大勢を占める必要があるのだ。

<http://www.macworldexpo.com/expo/keynotes/>

TidBITS のイベント -- 今まで同様、たくさんの TidBITS メンバーがMacworld で講演する予定だ。もし来ていただけるのならどなたでも歓迎する。私のプレゼンテーションに TidBITS T シャツを着て来て頂ければその場でサインするし、また私達のイベントで幾つか TidBITS T シャツをお渡しできる可能性もある。

Netter's Dinner -- わざわざ成功を妨げることもない、ということで 16 年目の今回も毎年恒例 Netter's Dinner は Macworld Expo で最も長く続いている行事となる(そして気分にあうものの一つだ)。轟く声とハワイアンシャツがこれも伝統となりつつある(昨年は計画通りではなかったが)大胆な発起人である Jon Pugh は残念ながら今回も欠席なので、私が伝統的にどんちゃん騒ぎとなる「手を挙げて」調査を執り行う。ステージの上でアドリブを飛ばさなければならない羽目に陥らないよう、質問に関する提案を送って欲しい。

今年もまた、Moscone の南側にあるエスカレータを上がったところで 6 時にお会いしよう。元気に、時には雨に濡れながら San Francisco のダウンタウンの通りを混乱させながら歩く準備が必要だ。最終目的地はもちろん Sansome とBroadway の Hunan で、辛くスパイシーな中華料理(ベジタリアンのための料理もある)が今年は $18 である。事前(2002 年 1 月 8 日まで)に Kagi 経由で登録が必要である。

<http://www.seanet.com/~jonpugh/nettersdinner.html>

Hess Macworld イベントリスト -- Ilene Hoffman は Robert Hess Memorial Events List に Macworld Expo 会期中のイベントを集め始めた。まだかなりまばらなので(CES のパーティーリストも負けず劣らず寂しいものだったことは慰めにならないが)ここ数週間でこのリストが埋まって欲しいものだ。とにかく、Hess Events List にブックマークしておき開催直前にチェックすれば、Macworld Expo 期間中のイベントを昼であろうが夜であろうが他の方法では知ることができなかったものまで見つけることができるだろう。

<http://www.ilenesmachine.com/partylist.shtml>

それでは、San Francisco で!


AppleScript のしっかり者 Studio

文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

Apple がバージョン 10.2 をリリースしたら、Mac OS X のユーザはクリスマスプレゼントの中におまけを発見するだろう。それは AppleScript Studio だ。9月の発表後、即座に MacWorld 賞を受賞したにも関わらず、AppleScript Studio はもっぱら名前だけの存在だった。ベータテスターはそれが何であるかを喋ることを禁じられていた。しかし、先週、AppleScript Studio のドキュメントが公開され、AppleScript Studio自体も無料の Developer Tools 12 月号でリリースされたため、この秘密も公のものとなった。その内容もすごいものだ。AppleScript Studio は単なるスクリプトを書くための道具ではない。これはAppleScript にちょっとインターフェースウィジェットをくっつけただけのものではない。AppleScript Studio は Cocoa そのものだ。

<http://www.apple.com/applescript/macosx/ascript_studio/>
<http://www.macworld.com/2001/09/27/show.html>
<http://developer.apple.com/techpubs/macosx/CoreTechnologies/AppleScriptStudio/>

Cocoa は、インターフェースウィジェット一式、それらの操作方法についての知識、そしてウィンドウやドキュメントなどを含めて、標準的なアプリケーションをまとめるための枠組みだ。この枠組みはMac OS X 自体に組み込まれているため、Cocoa のアプリケーションは比較的小さく、見た目や操作性も統一性がある。システム自体がコードの多くを内蔵しており、同じインターフェースウィジェットやその動作を利用している。Cocoa アプリケーションを書くために、Apple は Interface Builder と Project Builderと呼ばれる無料の道具を提供している。これらを使用してそれぞれインターフェースを描き、コードを書ける。今まで、ユーザはObjective-C と Java の二つのプログラミング言語の選択肢があった。AppleScript Studio のおかげでそれに三つ目が加わった。AppleScript である。

AppleScript は元は他のアプリケーションを走らせるための Apple イベントを記号化するために設計された英語に似た言語である。AppleScript Studio はこの言語に Cocoa のインターフェースウィジェットや内蔵機能を使用するためのフックを提供する OS X のシステムのレベルの追加である。 Interface Builder や Project Builder の使用方法が単純ではないことからも分かるように,この道具も使い始めるまでには時間がかかる。しかし、既にAppleScript を知っている人たちや、もっととりつきづらい本格的なプログラミング言語を学ぶかわりにこれを学ぼうという努力を惜しまない人たちにとっては、その知識を梃子にしてCocoa アプリケーションを書く事が可能になる。ここで強調しなくてはいけないのは、外からは AppleScript Studio で書かれたアプリケーションと他の Cocoa アプリケーションとは全く区別がつかないことだ。インターネット上ではあなたが犬だったとしても誰もわからないように、AppleScript Studio を使用すればあなたが Objective-C を知らなくても誰にもわからない。

Mac OS X 10.1 での新しい Scripts メニューなどからも分かるように、何年もの間無視した後、Apple がようやく AppleScript の重要性を認識し、一人前の扱いをし始めたことが明らかだった。AppleScript Studio が出たことで、すべてが揃った。Mac OS X 10.2 が発売になったら調べてみると良い。あなたの内に潜むCocoa プログラマーを解き放せるだろう。


Virtual PC 5.0 の新機能と Mac OS X との互換性

文: Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
訳: 細川 秀治 <hosoka@ca2.so-net.ne.jp>

今月の初めに、Connectix 社は、Power Macintosh 上で Windows (および他のPC オペレーティングシステム) を走らせる Pentium エミュレーションソフトウェアの、Virtual PC 最新バージョンを出荷開始した。 Virtual PC 5.0 はWindows 98 バンドルと PC-DOS バンドルが即入手可能で、Mac OS 9 と Mac OS X の両方で使用できる。Mac OS X ではマルチプロセッサを活用して、二番目のプロセッサには画面の更新をやらせることができる。この最新バージョンは Test Drive バージョンにあった Mac OS X 下での種々の欠点が解決され、そしていくつかの新しい感触が追加された。インストールしたソフトウェアは、Mac OS 9 と Mac OS X の両方で共通に使用できる。ただし、Mac OS X 環境下でインストールした場合は、若干の手作業による環境設定をしなければならないだろう。

<http://www.connectix.com/products/vpc5m.html>

Virtual PC 5.0 での最も革新的な新機能は明らかに“取り消し可能”ドライブイメージだ。この機能によりユーザは Windows セッションを過去の特定の時点に戻すことができる。 基本的に、Virtual PC はハードディスクイメージに加えられた変更そのものを別のファイルに保存している。そこで元の状態に戻るには、単に変更を適用しない元のバージョンを使うだけだ。そしてまた、ハードディスクイメージに変更をマージすることもでき、そうすることであなたが戻ることのできる状態を確定する。この機能は、かの Power On Software の Rewind ユーティリティを思い起させるが、Rewind で可能な、どんな任意の時点にでも戻る能力はない。しかしこれは加えられたセッションを容易に消去できる利点を提供する。我々はこの機能がソフトウェア開発者や共有ユーザラボ環境で巨大な潜在的価値を持っていると想像している。留意点として、この機能はパスワード保護されていないため、あなたの Mac にアクセスするユーザが、あなたのエミュレートされた PC を以前のセッションに戻してしまうおそれがあることだ。

<http://www.poweronsoftware.com/products/rewind/>

新しい“仮想スイッチ”機能は、Mac OS X 環境下の仮想マシン間でのネットワークを提供し、ゲストの“仮想”コンピュータ間で互いに双方向のネットワークが可能だ。仮想スイッチの実行されている Mac、そしてネットワーク上の他のコンピュータとも交信できる。仮想スイッチネットワーキングの素晴らしい点は、あなたの Mac の中に小さなネットワークをシミュレーションできることだ。 例えば、あなたはひとつの仮想マシンで Windows 2000 Server のWeb サーバを走らせて、そして Mac を Windows 98 仮想マシンにしてウェブブラウザからそれに接続することができる。

古いネットワーク共有アプローチは Mac OS 9 用および Mac OS X 用の両方でまだ存在しており、ユーザは Windows ネットワーキング環境設定のやりかたを知らなくてもよいよう、デフォルトのままになっている。 けれども、ネットワーク共有にはひとつの悪い面がある。デフォルトで Windows とMac OS X の両方を走らせると、NetBIOS でファイル共有クライアントがコンフリクトする。結果として Windows クライアントは使用不能になり、解決策として仮想スイッチネットワークの使用を提案する旨エラーメッセージが表示される。

私がとても嬉しいのは、Virtual PC 5.0 で画面解像度を設定できることだ。Virtual PC 4 ではMac が不意に断りもなく解像度を変更してくれるので、Mac 画面ではウィンドウがゴチャゴチャになりアイコンの位置がずれて悩まされたが、新しいバージョンは随分と気持ちがよい。Mac 画面の解像度をあなたに無断で変更しないだけでなく、初めて Windows で解像度をその都度変更できるようになった。これはフルスクリーンモードで、Windows のデスクトップを利用可能なスペースまで (PowerBook G4 固有の 1152×768 解像度さえ) 拡張できることだ、そしてユーザはウィンドウのリサイズハンドルをドラッグしてVirtual PC のウインドウをリサイズすると、Virtual PC はそれに合った解像度に Windows を変更する。これによりユーザが Windows の中でディスプレイコントロールパネルを使い解像度を変更する複雑な手続きを理解しなければならない煩わしさを省いている。

Mac OS X で使用した Virtual PC 5.0 のパフォーマンスについては様々な報告がある。ある人々はかなり遅い − Mac OS 9 での Virtual PC 4.0 またはMac OS X での Test Drive と比較して使用できないくらい、と報告した。私自身のテストでは、500 MHz PowerBook G4 を Mac OS X で使用して結構使えるし (今では 256 MB を 512 MB の RAM にしたので申し分ない)、そして驚くほどのことではないが、800 MHz のデュアルプロセッサ Power Mac G4 で走らせると、そばにある 700 MHz Pentium III と全く同様の滑らかさで Windows が動く。Apple が Mac OS の初期 PowerPC バージョンをリリースした時とちょうど同じように、Connectix はユーザ・インタフェース項目のパフォーマンスに焦点を合わせている。 メニューやウィンドウの描画を特に優先して、インタフェースの見栄えを前のバージョンよりも、概ねキビキビしたものにしている。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1544>

最高の性能を引き出すには、もちろん、Virtual PC にできるだけ多くの CPU パワーと RAM を割り当てることだ。Virtual PC 5.0 を使用するには PowerPC G3 または G4ベースの Mac (Mac OS X では少なくとも 400 MHz 以上) と、Mac OS 9.1 かそれ以降あるいは Mac OS X 10.1 かそれ以降を必要とする。RAM の最小容量は Mac OS 9 か Mac OS X か、そしてどの PC オペレーティングシステムを走らせるかによって 64 MB から 256 MB まで異なる。必要なディスクスペース空き容量も、どの PC オペレーティングシステムを使うかにより、260 MB から 2 GBまで違ってくる。

Virtual PC 5.0でのマイナーな特徴にはこの他に、DVD データや CD イメージのサポート、リムーバブルメディアの自動共有、Macintosh キーボードに無い特別な Windows キーへのアクセス、メモリの利用率やパフォーマンス統計に関する詳細を表示する Get Info ウインドウなどがある。 そしてまだ確認できてないのだが、報道によると Virtual PC には Mac OS X で選択された言語に基づいて自身を自動ローカライズ (英語、仏語、独語、イタリア語、日本語、スペイン語) する。

Virtual PC 5.0 はまた、Microsoft の Windows XP と互換性がある。Connectix は、どのバンドルが人気があるかにより Virtual PC を米国において Windows XP Home Edition とバンドルし、日本においては Windows XP Professional Editionとバンドルする予定だ。どちらのオペレーティングシステムも 2002年1月にアドオン OS パックとしてどこでも購入可能の予定だが、バンドル製品のみは個々の市場により異なる。

以前のバージョンから Virtual PC 5.0へのアップグレードは 80ドル (2001年11月1日以降に Virtual PC 4.0 を購入したユーザは無料)、DOS 付きのVirtual PC は 100ドル、Windows 98 付きの Virtual PC は 200ドルの価格だ。Windows 2000 と Windows XP Home Edition のバンドルバージョンは数週間内に出荷予定で、そして Connectix OS パックも既存の Virtual PC オーナーで Windows オペレーティングシステムの追加を希望するユーザ向けに販売されるだろう。


このエッセイは盗用自由−その4: 窃盗を正当化してるだけ?

文:Dan Kohn
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

情報こそ、民主主義における通貨だ。 - トマス・ジェファーソン

少なくとも合衆国憲法が著作権を保護する権力をはっきりと議会に与えて以来、知的所有物に関する知的基礎はこれまで順調に築かれてきた。前回までの連続エッセイにおいて私は、この基礎が今や崩れかけており、あと 10年もしてブロードバンド接続が至るところに普及され尽くし(したがって大きなファイルも簡単に転送できるようになり)人々がコンピュータの上の文章(これはコピーされるのを防げない)を読むことに慣れきって従来の紙の上の文章(これは依然としてある程度排除的のもの)を読まなくなるようになれば完全に消え去るだろう、という議論を展開してきた。別の言い方をすれば、現在コンテンツを売って生計を立てているあなたにとって状況は容易ならざるものだ、ということだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1209>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1503>
<このエッセイは盗用自由−その1: コンテンツは純粋公共物>
<このエッセイは盗用自由−その2: 暗号化では止められない>
<このエッセイは盗用自由−その3: コンテンツ作成の報酬は>

しかし、この成り行きが避け得ないものかどうかは別にしても、それがはたして正しいことなのかどうか、排除的なコンテンツの消滅というものが嘆くべきことなのか喜ぶべきことなのかということは、今我々が立ち止まって考えておくべきことだろう。エコノミストの定義するところの財産というものは、一般的には競争的(例えば、私があなたの自動車を持って行ったら、あなたの手元には自動車がなくなる)かつ排除的(例えば、あなたは家のドアの鍵をかけて私が入れないようにできる)なもののことを言う。情報がデジタル化されるにつれて(したがって非競争的かつ非排除的になるにつれて)知的所有物というものの知的根拠は蝕まれ、今日では「知的所有物」という言葉自体がほとんど自己撞着と言わざるを得ないような状態になってしまった。今日すでにあり得ない言葉、例えば「適正な弁護士費用」とか「低タールのたばこ」とか「管理機能無しの Windows」とかが異様に耳に響くのと全く同様に、「知的所有物」という言葉も、あと数年経てば異様な響きをもって聞こえる言葉になってしまうのだろう。

ただし、ここで注意しておかねばならないのは、著作権というものがすべて消え去る運命にあるとしても、特許権というものは 99 パーセントが有効で生き残るだろうということだ。なぜなら、特許権の大部分は現実の物体に施すべき操作に関わる権利を保証するものであるからで、ここが単なるデジタル情報と違うところだ。あなたが「改良ネズミ取り器」の作り方の特許を持っていたとして、もしもどこかの会社がそのアイデアを盗んで類似のネズミ取り器を売り出したとしたら、当然あなたはその会社を訴えて、彼らのネズミ取り器工場を閉鎖させ、莫大な保障金を取ることができるだろう。また、情報を物理メディアに保存する方法、例えば DVD にムービーを記録するための MPEG 特許のようなものでさえも確実に有効で、その特許権を侵害した DVD 工場があれば裁判に訴えて閉鎖させられるだろう。特許権の中で次第に消え去りつつあるのは、ネットワーク上でデジタル情報を転送する方法に関するもの、例えば MP3 音楽を制作するソフトウェアに対して Fraunhofer が持っている特許のような場合だ。確かに Fraunhofer はこの特許権を侵害している大会社たち、例えばMicrosoft や Real など、を訴えることはできるのだが、それでも趣味で MP3 ソフトウェアを作ってそれを無料で配布している数多くの個人ユーザーたちをとどめることはもはや不可能だろう。デジタルビットは仮想世界のもの、現実の物体は現実世界のものだ。大事なことは、蹴飛ばすことのできないものを訴えることはできない、ということだ。

さて、著作権に話を戻して、はたして他の人の「所有財産」を「盗む」ことは人々の良心に訴えることで押しとどめられるものなのだろうか? Napster の人気を定着させた、何百万人もの大学生たちに聞いてみるとよい。ほとんど常に新しいテクノロジーはユーザーたちのものの見方を変えてゆき、何が許されるのか、さらには何が道徳的なのかということについてさえも、考え方は変わってゆく、というのが現実なのだ。例えば、ピルというものの登場は、結婚外セックスの許容度(そして実行可能性)についての社会的認識を根底から変えてしまった。さらには生活全般にわたる女性の役割そのものに対してもより大きな影響を与えたのだ。もっと時代を遡って考えてみよう。もしもグーテンベルク聖書によって実現された印刷版聖書の広範な普及とそれに伴う一般大衆の読み書き能力の向上というものが無かったならば、マルチン・ルターによるプロテスタント革命はとても実現しなかっただろう。実際、グーテンベルクの印刷技術によって情報配布にかかるコストが劇的に下がったことこそが、当時のいわゆる啓蒙思潮、そしてそれに伴った知的諸生産物、リベラルな民主主義、市場資本主義といったものすべての根底を支えたと言っても過言ではないだろう。(もちろん、当時の印刷技術が同時に異端のテキストや絵画を出版するのにも使われたことも忘れてはならない。これがちょうど、VCR ビデオの普及によって誰もが簡単に自宅でアダルト映画が見られるようになったことや、Napster の後継者たちが現在 MP3 音楽に加えて盛んにアダルト映像を交換するようになってきているのと類似していることにも注意しよう。)

情報を配布するためのコストの下限がメガバイトあたり数セント(現在のほどんどのメディアでの現状)から次第にゼロに近づいてゆくにつれて、社会全般に与えるインパクトも次第に加速してゆくはずだ。多くの人にとって、財産とか窃盗とかいう言葉は、情報の配布とか、ものの創造に対する資金援助の方法とかいった事柄とは、おそらく全く縁もゆかりもないことと感じられるようになってゆくだろう。

今日の各種メディアでのメガバイトあたりの価格
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本               $20/50 MB      1冊につき MB あたり $0.40
新聞             $0.50/10 MB    1部につき MB あたり $0.05
30秒のテレビ広告 $500,000/5 MB  1人につき MB あたり $0.03
                                (3百万人の視聴者がいるとして)
CD-ROM           $15/650 MB     1枚につき MB あたり $0.02
DVD              $50/7000 MB    1枚につき MB あたり $0.007

A.J. Liebling の言葉に「出版の自由というものは、それを持つ者の手の中にある。」というのがある。ごく少数の、しかし並外れた権力を持ったエリートたちによって情報の配布が独占されてきた、というのが過去の歴史を通じての現実なのだ。古代のエジプトにおいては、宗教指導者たちが天文学の知識をものものしく保護することによって、毎年のナイル川の洪水の時期を予想することのできる社会の最上層者としての地位を守っていた。ローマン・カトリック教会が理論上の君主である王たちよりもはるかに強大な実質上の政治権力を中世の 1,000 年以上の期間にわたって保持し続けることができたのは、司祭たちや修道士たちが識字能力を独占していたのが理由だった。出版の自由というものが合衆国憲法にはっきりと記されているにもかかわらず、大多数の情報配布チャンネルは、ごく一部の出版社や放送局のエリートたちの手に握られているのが今日の現実だ。人々がどんな音楽を聞くかという選択は、事実上たった5つのパワフルな会社によって決定される売手寡占の状態にある。(私の意見では、Britney Spears なんかにこんなに人気があるのにはこれ以外の理由は考えられない。)

有名なメディア理論家の Ithiel de Sola Pool は、自由のテクノロジーという概念について次のように述べている。「この概念は、特定のアイデアを普及させようとするよりも、むしろ表現の多面性を目指したものといえる。」Pool 氏は、コミュニケーション・テクノロジーが政府によって規制を受ける状況について研究し、どのくらい少ない数の出版者しかサポートできないかという政府の都合によって著しく規制の様相が変化してきた、という分析を行なった。新聞社はいわゆるゴールド・スタンダードであって、他のものを測る際の基準となっており、また新聞が広く普及しているという事実のもとに憲法上の最大限の保護を与えられている。反面、ラジオやテレビの放送局は、放送周波数域が限られていることを根拠に政府を説得し、強い規制の必要性を納得させることに成功している。こうして、政府は放送可能なコンテンツの規制(裸を見せさえしなければどんな暴力シーンも構わない、というのが現状だ)ばかりでなく、競合者の新規参入を非常に困難なものにすることによって現存の放送局を保護するようになった。

もしも Pool 氏が今も生きていたとしたら、彼はきっとインターネットこそ究極の自由のテクノロジーだと思ったに違いない。また、かの ACLU 対 Reno の裁判で Communications Decency Act(通信品位法)が憲法違反だという画期的な判決を出した Dalzell 判事がその判決の中で述べたように、「インターネットは、これまでわが国が、いや世界中がかつて一度も目撃したことのないような、大量発言の多重参加市場となることを達成し、かつこれからもずっと達成し続ける、と結論づけても何ら誇張とは言えないのである。」興味深いことに、彼はその判決で、インターネットはその結果として現在の出版業界で適用されているものよりもさらに進んだ表現の自由の保護を与えられるべきだ、としている。その理由は、基本的な読み書きの能力さえあれば誰でもインターネットを利用できて、巨大な、かつさらに増大しつつある聴衆に向けてほとんど費用もかけずに発言できるからだ。もしも Liebling 氏が正しくて、かつて印刷機が高嶺の花だったのが出版の自由が限られていた理由だった、ということを認めるのならば、今日の状況、すなわちインターネット・カフェが1時間あたり $1 そこそこで利用できるようになったこと、さらには国内各所の図書館で無料でインターネット・アクセスが得られること、が何を意味するかは、おのずと明らかだろう。

<http://www.aclu.org/court/cdadec.html>

それならば、今や我々は、コンテンツの配布が基本的に無料であり、同時にコンテンツの作成に対しては対価を支払わねばならないという、新しい世界に足を踏み入れようとしているのだ。しかしながら、現状はと言えば、知的財産の新しい概念を普及させるべき最も責任ある立場にあるはずの者が、実は音楽を配布するのと引き替えにアーティストの音楽の所有権を獲得しているレコード業界なのだ。そのレコード業界が今だに、音楽を盗むのは自動車を盗むのと同じだなどという馬鹿げた発言を続けているのは、どうしたことだろうか?(レコード業界はまた、音楽のコピーを今だに piracy(海賊行為)などと呼び続けているが、これは公海上で毎年何百人もの人々が殺されている現実の重大犯罪を軽々しく扱おうとするものだ。海上の海賊行為というのは、現実の品物が競争的である事実から直接に起因する暴力的な行為なのだから。)

配布が無料となる世界というものは、同時にまた、より多くの人々の声が聞かれる世界だということをも意味している。(そして望むらくは、人々が仕事に応じて生計を立てられる世界であって欲しいものだ。)しかし、レコード業界を支え続けられるほどのお金が残ることはあり得ないだろう。こうして RIAA の弁護士たちの最後の一団が職を失った夜、彼らは町に出て、乾杯してこう言うだろう。「まあ、少なくとも我々は Napster だけはやっつけたぞ」と。彼らが退場した後、音楽業界の売手寡占の崩壊に涙する人は、そう多くはないだろう。

もちろん、現存の音楽業界は手をこまねいてその日を待っているわけではない。あきらめずに戦いを挑んでくるだろう。次回のエッセイでは、彼らが現在計画しているデジタル提供法と、Napster の後継として生まれてきた各種サービスとの比較検討をしてみたいと思う。


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