TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#617/18-Feb-02

デジタル写真から最良の品質のプリントをしてくれるのはどのオンラインフォトサービスか?Alex Hoffman による数多くのオンラインフォトラボ比較の結論を見て欲しい。この大変実用的な側面から離れて、Adam は面白い概念について触れている。無料のライセンス供与機構、数連想研究プロジェクト、オンライン広告の効果に関するテストが含まれている。ニュースの部では、Default Folder X のリリースと PayPal の株式上場について触れている。

記事:

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MailBITS/18-Feb-02

Default Folder X、Mac OS X Open/Save ダイアログを改善 -- 長年にわたって Macintosh ユーザは Power On Software の Action Files や St. Clair Software の Default Folder のようなユーティリティを用いることでより強力な Open と Save のダイアログを使うことが出来た。そしてついにそのうちの一つが Mac OS X 対応版を Default Folder X 1.0.1(TidBITS-475 の“TidBITS ご用達ツール:Default Folder”を参照)という形で出してきた。Default Folder X は、従兄弟とも言うべき従来の Mac OS 版と同じ基本機能を提供している;すなわち Open と Save のダイアログの中で、好みのそして最近使ったフォルダに容易にアクセスできる。さらに、ファイルとフォルダについて名前の変更、情報を見る、削除が出来、そして Finder の中でフォルダを開く事も出来る。Default Folder X はまた現在の場所を表示しフォルダの中で最後に選択されたアイテムへと跳ぶ。これらの機能へのアクセスは Open と Save のダイアログの右側に位置するツールバー経由で行う;キーボードからのショートカットも使える。更に、この新版ではこれだけでも価値があるといえるような珠玉の機能が加えられている:Mac OS X のコラム型のダイアログをキーボードからまっとうに操作できるのである。Apple の現在の Open と Save のダイアログの化身(詳細については TidBITS-601“Appleの隠れた汚点”参照)とは違い、ファイル階層の混迷の中にあなたを置去りにする代りに、Default Folder をインストールしてフォルダ名をタイプするとリストの中でそのフォルダをハイライトしてくれる。現時点では、このユーティリティは Carbon アプリケーションの中でしか働かないが、次に予定されている無償のアップデートでは Cocoa アプリケーションもサポートするようになる。Default Folder X は 30日無償の試用版として入手可で、その後の登録料は $35 である;Default Folder 3.x の所有者は $20 でアップグレードできる。インストーラは 1.4 MB のダウンロードとなっている。[JLC](カメ)

<http://www.stclairsoft.com/DefaultFolderX/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05341>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06594>

PayPal の上場、下落傾向に逆らう -- インターネット株が数年前の高揚した状態に戻ることはもうないとは思うが、インターネット取引サービスの PayPal 社の先週行われた株式上場では最近の下落傾向に逆行する動きを見せた。株価は $13 で始り NASDAQ での取引初日を $20 を越える水準で終了した。これは 55% のゲインであり同社の価値を 10億ドル にまで引上げた。PayPal は特許侵害訴訟一件に直面しており、かつ多くの州当局から銀行法規制に反して業務を行っているのではないかとの疑いで調査の対象とされている。また Paypal はどう見ても儲かっているとはいえない。2001年には 1億480万ドル の売上に対して、1億780万ドル の損失を計上している。そうではあっても、PayPal は 1280万の顧客を持っており、毎日1万8千の割合で顧客を増やしている。そしてオンライン取引サービスのリーダーと見なされている - TidBITS-562“お薦め Web Site:PayPal”参照。[ACE](カメ)

<http://www.paypal.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06260>(日本語)お薦め Web Site:PayPal


面白い概念を数個

文:Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳:倉石毅雄 takeo.kuraishi@attglobal.net

インターネットのおかげでそこらの変人が陽の当たる所に出てきたのは否定できない。だが、同時に本当に優れたアイデアがある人達にとってはそれをを試してみる場を提供できるようになったのも事実だ。見方によってはドットコム内部崩壊も良かったのかもしれない。ビジネスプランを作って百万ドルものベンチャーキャピタルをそろえなければインターネット上では何もできないような日々を反省するのにうってつけだ。別に、はげ鷹資本家が百万ドルを抛ってよこしてくれなかったからといってすねている訳ではない。

公共地の再植民 -- スタンフォード法学教授で、The Future of Ideas や Code and Other Laws of Cyberspace の著者でもある Larry Lessig が面白い概念を発表し、Creative Commons と名づけた。基本的には、音楽家、作家、プログラマー、アーティスト、その他使用方法を特定しながらも作品を広く配布したいと思うすべての人のために、柔軟で適応性のある知的財産ライセンスを提供しようというアイデアだ。弁護士からの請求書を見て思わずむせてしまった経験を持つ人達にとって一番素晴らしいのは、Creative Commons がこのライセンスを無料で提供する予定という点だ。

<http://www.creativecommons.org/>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0375505784/tidbitselectro00A>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0465039138/tidbitselectro00A/>

2002年 5月に予定されている Creative Commons の発進後は、自家製のライセンスを欲している人は誰でも Creative Commons ウェブサイトへ行き、自分の状況に合ったオプションを選択して、一銭も払わずに自分に適したライセンスを手に入れられる。それだけではない。どのライセンスも、そのライセンスの条件を指定する電子的なタグを内蔵している。ライセンスとそれでカバーされる内容が検索エンジンで索引されると、タグを使って特定のライセンス条件の許で使用できる内容を検索することが出来るようになる。例えば、環境保護ニュースレターの編集者が非商用目的で使用できる自然の写真を一覧したりなどできる。

Creative Commons が計画しているもう一つのプロジェクトは知的財産の保護と配布をうながす“保護区”だ。私の分かる限りでは、その目的は私が1998年に Electronic Phoenix Project の名前で提案した枠組みと似ている。商業的な母体が古いプログラムを維持出来なくなったら、この団体に寄付することにより、オープンソースの世界で寿命を保つというものだ。意見ばかり多く実際に費やされた労力が圧倒的に少なかったため、Electronic Phoenix Project は発足時からして無理があったが、それから環境が改善しているのかもしれない。Larry Lessig やその同僚ら、Creative Commons プロジェクト全体に幸運を祈りたい。彼らの努力が、泥沼のようになってしまった著作権や知的財産を考え直すきっかけになって欲しい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05141>
<http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/gate/archive/2002/02/11/creatcom.DTL>

真剣に数えてみよう -- ものを書く者としては、知的財産は文章を意味して、数を気にすることは少ない。だが、The Secret Lives of Numbers という新しい研究発表を読んで、私は自分のデジタル関係を計算しなおしてみた。それはどういうことか説明しよう。著者らは特別なソフトを作り、多くの公共検索エンジンを使用して検索を走らせ、その結果を統計的に分析して、数値関連のインタラクティブな検索方法を開発した。数値関連とは何か?例えば、17 という数字は 17インチのコンピュータモニタ、B-17 Flying Fortress、そして Glock 17 と関連がある。

Mark Twain が、嘘と大嘘とそしてその上は統計だ、と言ったのはさておき、結果は興味深かった。Java ベースのインタラクティブ可視化をロードし、100,000 未満の数字を入力して、その数字と一番関連深いのは何か見てみよう。その周りと比べてその数がどれだけ人気あるかが、スクロール可能な棒グラフで表示される。そのグラフの好きな行をクリックすれば、その数字と関連あるものが表示される。Java アプレット(Mac 上でも Internet Explorer 5.1 と Opera 5.0 では驚くほどうまく働くが、Netscape 6.2 ではそこまでうまくは行かない)を試してみるのと、番号がどれだけ我々の生活を支配しているか振り返ってみるためにも、数分ほど試してみる価値はある。郵便番号、市外局番、製品バージョン、数値リストなど、数は我々の生活に数え切れないほどの方法で絡んでいる。

<http://www.turbulence.org/Works/nums/>

ついでにもう1つ概念を -- 数の話題になったついでに、この記事のタイトルに出てきた“couple”という単語について考えてみよう。“couple”って、いったい何個のことだろうか? もちろん、もともとは2個のことだけを意味していたのだが、くだけた会話の中では、2個以上のことに使われることも現実にある。もう少し多い個数の“few”(1よりは多いがそれほど多数ではない)とか、さらにもう少し多い“several”(2よりは多いがそれほど多数ではない)にまで踏み込むようなニュアンスで“couple”が使われることさえある。こんな説明を付けたのは、この記事でもう1つ、第3の話題に触れたいと思ったからで、タイトルに“couple”という単語を使ったのを忘れていないよ、と断わっておきたかったからだ。(なにしろ我がチームの編集者の Geoff は、こういう言葉遣いにうるさいので、必ず文句を言ってくるだろうからね!)

話がそれてしまった。最近深刻になってきている数に関した話題、その数字の低迷が深刻になっている、というのはオンライン広告の話題だ。長い間、(と言ってもインターネットの世界での長い間というのはだいたい数ヵ月の話だが)オンライン広告は広告というものの復活の救世主だと思われてきた。その根拠は、オンライン広告にはかくも素晴しい統計情報が直結されているからだ。Mark Twain の言うことなんか気にしなくてもよい。統計情報の数字、それもありとあらゆる情報の数字の山が手に入る。夢のような数字たち!何もユーザーのプライバシーを侵害する悪辣な手を使わなくても、広告主の会社には自然に表示数、クリック数、その他さまざまな統計情報が入ってくる。広告担当者のスプレッドシートを、こんなにも簡単に、それも手を汚さずに数字で埋め尽くすことができるなんて、この業界の歴史が始まって以来無かったことだ。オンライン広告を始めてからというもの、ブランド認識度というようなファジーな概念を弄ぶ必要はもはや無い。どの広告を何人の人が見たか、何人の人がクリックしてくれたか、そのうち何人の人が実際に購入をしてくれたか、すべて厳密な数字がわかるようになったのだから。これこそ、数字の天国!

でも、ちょっぴり問題はあった。というのは、時を経るにつれて、次第にいくつかの数字が減る一方になった、ということだ。中でも、クリック率はどん底まで下がってしまった。開けてびっくり玉手箱、実は、ウェブというのはアクティブなプロセスであって、ユーザーは目標を持ってウェブを利用しているのだ。バナー広告がたまたまそのユーザーの目標にぴったりと一致したものでない限り、ユーザーがそのバナー広告をクリックする可能性は非常に低い。さらに、ユーザーたちがオンライン広告に慣れてくればくるほど、クリック率はもっと低くなる。こんな状況に甘んじてはいられない、というわけで、積極的な広告主たち、例えば X10 などが立ち上がり、新手の広告方法を編み出した。それがポップアップ、あるいはポップアンダーの広告で、ユーザーのコンピュータのモニタ画面を侵略し、占領して、その迷惑度はこれまでの十倍、と言えるほどにユーザーをイライラさせるものだった。(私の経験では、ポップアップ広告が出るたびに私の口からは“@#$%!!”という(文字にできない)悪態が飛び出し、私の指はとても健康的とは言えないほどの強さでキーボードの コマンド+W のキーを叩き付けるようになった。)それでも最初のうちはポップアップ広告も効果的ではあった。なにしろ新鮮だったし、とにかく目についたし、ことにこの X10 の広告の場合には、ワイヤレス小型ビデオカメラを使えば目の覚めるようなブロンド美人が着替えたりなんかしているところをこっそり撮影するのも簡単、というような印象を与えたことで気をそそられたユーザーもいたかもしれない。(こういう風に言うと、きっと X10 社は白々しくこう返答するだろう:「まさか! そんな風にわが社の製品を受け取る方がいらっしゃるなんて、ショックとしか言いようがありません! この広告では、はっきりと、普通の人々がご自身の安全とプライバシーとを守るためにこの監視カメラを設置して頂きたい、という意図になっております。例えば、客用寝室に設置して頂いて、お泊まりになっているご友人の美人の奥様が、色っぽくシャワーを浴びられた後にちょっとタオルを失敬したりなさらないかどうかを監視したりする、という目的でお使い頂けます。ええと、それから、お母様方が台所に設置して頂いて、お子さんたちがミルクカートンから直接ミルクを飲んだりしないか監視する、というような目的も大切かと存じます。おっしゃるような、悪意の目的のためのものと一方的に決めつけられるのは、とても心外です!」)

<http://www.ecommercetimes.com/perl/story/14488.html>

また話がそれてしまった。X10 の広告については、あのイヤらしい広告が当然受けるべき報いを受けるようになるためならばできることをすべてしたい、という衝動を抑えるのは、私にとって容易ではないのだ。お許し頂きたい。話をブランド認識度の話に戻そう。伝統的な広告業界では、ブランド認識度を上げることが、長らく中心的な目標であった。テレビで自動車の広告を見たからといって、即座に家を飛び出して自動車を買いに走る人はいるまい。こういうテレビ広告の目的は、こんど自動車を買う時になって、それまでに積み重ねられてきたテレビ広告の記憶の結果、「そうだ、あの新しいガソリン・電気ハイブリッドのカッコイイ HONDA 車に試乗してみなければ」という気がふっと起こるように、ということなのだ。(いや、この例は現状とはちょっと違うようだ。Honda も Toyota も、どちらも今のところは、現物を見ない限り注文はしたくないというユーザー層にハイブリッド車を積極的に売ろうという熱意に欠けているようだから。あんなに広告しているのに、店頭に試乗車を出さないというのは、どういうつもりだろうか。)けれども、ブランド認識度というのは、正確な値を知るのが難しい。アンケート調査などをして人々に質問をしてみても、まともな返答ができる人は少ないのだから。ある市場調査で普段どの鎮痛剤を使っているかという質問に対して、わが妻 Tonya が何と答えたかというと、「あの、丸い瓶に入ってるやつ。」

広告というものは、ブランド認識度を上げるためには現実に役に立つ。これは 1992年に TidBITS がスポンサープログラムを開始(これはおそらくオンライン雑誌の広告としては最初のものだっただろう)した時から我々が言い続けてきたことで、最近になって Dynamic Logic という会社がついにこのことを実証してくれた。彼らのやった実験はこうだ。まず彼らは架空のブランドを作った。これは、勘定し切れないほどの(というか、普通の時給よりはずっと高い)お金を稼ぐ人たち向けの管理人タイプのサービスということにして、インターネット上の広告のみを使って宣伝した。FTMarketWatch と iVillage というイギリスのウェブサイトを使って数百万通の広告を流したのだ。その後で、彼らは調査を実施して、次のような結果を得た。およそ 4% の人々が、そのブランドは聞いたことがあるけれどもその広告は見たことがないと答えた。(人の言うことがどれだけいいかげんかがこれでわかる。)そのおよそ3倍、11% の人々は、そのブランドは聞いたことがあるしその広告も見たことがあると答えた。結局、この広告のターゲットとされる層、つまり 18 歳から 49 歳までの男性で年収が $120,000(約 1600万円)以上の人々全体のうち、何と 19% がその広告を覚えていた。要するに、きちんとターゲットをしぼり、適切な広告をすれば、ちゃんと効果があるということだ。何も、ユーザーのモニタ画面じゅうにウィンドウを溢れかえらせたりする必要はないのだ。

<http://www.yessirnosir.net/>


デジタル写真をプリントする−その2

文: Alex Hoffman <ahoffman@mac.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

新しく買ったデジタルカメラを持ってハネムーンに行ったので、1000枚以上もの写真が溜まり、妻はそのうちの 100枚ほどを入れたフォトアルバムを作りたいと言う。そこで、私はオンラインのデジタルフォトラボのうちでどれが一番良いのかを調べてみることにした。前回の第1部の記事デジタル写真をプリントする−その1 では、私は 11種類のサービスを、コスト・使い勝手・関連商品の点から比較してみた。この調査を始めた当初は、私は各社のウェブサイトを見ていくつかサンプルを注文してみさえすればどれが良いのかすぐにわかるだろうと思っていた。確かに、いくつものサービスが候補からすぐに外れた。けれども、こうして外れたものも、結局私はそのほとんどをこれから述べる品質比較テストに含めてしまった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06717>(日本語)デジタル写真をプリントする−その1
<http://www.shutterfly.com/>
<http://www.ofoto.com/>
<http://www.dotphoto.com/>
<http://www.photoaccess.com/>
<http://www.apple.com/iphoto/>

当初私は、写真のプリントの品質自体についてはどのサービスでも大差無いだろうと思っていた。実際にやってみた後になってみると、この私の予想は外れていたばかりでなく、でき上がったプリントをよく観察した結果、私のやり方の欠陥、注文のためにファイルを送る前に私が直しておくべきだったいくつかのことを発見することもできた。私が考慮に入れておかなかったこういう注意点を覚えておくだけで、今後皆さんもより良い結果が得られるようになると思う。

クロップ -- 私の第1の間違いは、クロップの問題を見過ごしたことだった。たいていのデジタル写真は、コンピュータのモニタやテレビ画面に合わせた縦横比になっている。つまり、幅と高さの比が 1.33 対 1 になっているのだ。しかし、写真の標準サイズはこれとは違う縦横比だ。こちらは 35mm フィルムをもとにしていて、幅と高さの比が 1.5 対 1 なのだ。こうして 4インチ x 6インチ(10.2cm x 15.2cm)の 1.5 対 1 とか 5インチ x 7インチ(12.7cm x 17.8cm)の 1.4 対 1 とかいう比は、デジタル写真よりも幅が広くて高さが短い。反対に、8インチ x 10インチ(20.3cm x 25.4cm)の 1.25 対 1 や 11インチ x 14インチ(28cm x 35.6cm)の 1.27 対 1 では幅が狭くて高さが長くなる。PhotoAccess だけは、普通のカメラでの縦横比に合わせたサイズにプリントするオプションがあり、その場合は画像をクロップする必要がなくなるが、もちろんこのようなプリントの写真は従来のフォトアルバムや額縁にはきっちりと収まらない。

この問題の解決法は3つある。1つは、写真を縦横異なる比率で拡大縮小することだが、ほとんどの場合これは話にもならない結果を生む。人物の顔がビックリ屋敷の鏡に写ったように見えてしまうだろう。2つ目は、縦横同じ比率で縮小することだ。これならばちゃんとした写真になるが、問題は写真が用紙サイズいっぱいにならないことだ。普通のテレビ画面でワイド画面用の映画を見るような具合になってしまう。上下の縁か、左右の縁か、どちらかに幅広の白い縁どりが残ってしまうわけだ。ただ、少なくともこの方法は最も安全なやり方とは言えるだろう。そして最後の、3つ目の方法が、写真をクロップするやり方だ。つまり、画像の一部分を切り取ることによって、プリントするサイズの中に写真を収めるのだ。あなたが自分の写真を自分でクロップするのならば、これがベストの方法だろうが、プリントラボが自動的にクロップしてしまって、大事な部分が切り取られてしまったら、その結果は悲惨なことになるかもしれない。

私は、初めてフォトサービスを利用してみた時、この縦横比の補正の問題はきっとうまく処理してくれるのだろうと何となく決めてかかっていた。けれども、この補正プロセスは自動的に処理されるのだから、いつも理想的な結果になるわけではないのは、考えてみれば当然のことだった。やはり、私が自分であらかじめすべての写真1つ1つにクロップの作業をしておくべきだったのだ。ほとんどのサイトではクロップ用のツールが用意されており、アップロードの前に写真をクロップするオプションもある。推奨されている通りにそのサービスのウェブサイトや、あるいはそのアップロード用ソフトウェアで作業していれば、1つの写真ごとについて 30 秒もかからずにクロップができていただろう。私が手間を惜しまずにこの作業をしていたら、この最初のプリント注文の結果にあれほど落胆させられることもなかっただろう。

Shutterfly と Apple は、最も多彩なクロップのオプションを持っているということで特記すべきだろう。利用者は、どういうふうにプリントすべきかについて完璧にコントロールできるようだ。他の各社ではコントロールの可能性が若干減る。例えば Ofoto では、形の修正のために余分の縁どりを入れるのか、それとも画像の中心を保ったままで画像の縁を均等に切り取るクロップを自動的に施すのかの選択肢があるだけだ。これとは対照的に、Shutterfly のアップロード用アプリケーションも Apple の iPhoto も、いろいろな写真サイズに応じて縦横比がきちんと合うように画像を自分でクロップできるようになっている。Shutterfly の場合は、いったんアップロードしてしまった写真を後でクロップし直すことさえできる。

クロップすることはまた、プリントされる写真の拡大率を調整することにもなる。写真の一部分を削除すれば、それだけ画像全体のピクセル数を減らすことになるからだ。もしもクロップで画像の大部分を削除してしまったら、残った部分を大きなサイズにプリントした場合に写真がまともに見えるだけの情報が残っていないかもしれない。2メガピクセル以上の解像度を持つカメラで撮った写真ならば 8インチ x 10インチ(20.3cm x 25.4cm)のサイズにプリントしても画質の良い写真に仕上がるだろうが、もしもクロップしすぎてしまったらもはや望みのサイズに引き伸ばすには耐えないものになるかもしれない。幸いにも、私が試してみたサービスのどれもが、どの画像はどのサイズまでならばうまくプリントできるかについて何らかの警告メッセージを示してくれていた。あまり目につかないような表示の仕方のものもあったが。

ガンマ -- デジタルカラーを正しく扱うのは、実はとても難しい。モニタによって表示カラーは異なるし、カメラやスキャナ、アプリケーションソフトウェアやオペレーティングシステムによっても違ってくる。これは、個々のピクセルにおいて指定の色を出すために、赤・緑・青の三原色のどのような組み合わせ、どのような明暗を使うべきか、ということについてそれぞれが微妙に違った前提に基づいているからだ。この状況において重要になってくるのがガンマ補正、つまり画像の全体としての輝度のコントロールだ。

<http://www.bberger.net/gamma.html>
<http://www.photo.net/photo/fixing-gamma.html>
<http://www.cgsd.com/papers/gamma.html>

Mac では普通ガンマ値は 1.8 に設定されており、PC では普通ガンマ値が 2.2 になっている。この違いが、Mac で作った画像を Windows で見ると暗くてコントラストの強いものに見え、逆にたいていの Windows 機で作った画像を Mac で見ると白っぽく見えてしまうことの原因だ。たいていのフォトサービスはより多くの顧客のニーズに応えるためだろうが、2.2 のガンマ値に合わせてプリントしようとしているようだ。このため、残念なことに私のテストプリントのほとんどは思ったよりも暗い仕上がりになって届いた。私のコンピュータの画面でちょうど良いカラーに見えていた写真も、プリントでは思うような色調になっていなかったのだ。

Apple の ColorSync テクノロジーは、このような機器・アプリケーション・材料・プリント処理によって異なるカラー変化の問題を解決するためのもので、実際 iPhoto を使って Mac から直接印刷する場合にはこの ColorSync が使われている。しかし、外部のフォトサービスを使う場合には ColorSync も何の役にもたたない。Ofoto 社の社長に聞いた話によると、Ofoto ではこの問題に対処するために JPEG 画像の EXIF (Exchangeable Image File Format) 情報を利用しているとのことだった。ところが皮肉なことに、iPhoto はあなたが画像ファイルに編集を加えるたびにそのファイルの EXIF データを消去してしまう。つまり、iPhoto の画像をプリントしてくれる Ofoto 社も、iPhoto を通じて受けたプリントの注文に対してはこのテクニックを使うことができないわけだ。

<http://www.apple.com/colorsync/>

このような分野こそ、Apple が力を発揮できるチャンスのはずだ。Apple が賢明にも独自のプリントサービスを始めたのも、こういうことが理由の一つだったはずだ。Apple はこの形で入ってくる注文がすべて Mac から来た注文のみであることを知っているのだから、プリント出力を普通の Macintosh モニタに合わせた色調に調整することもできたはずだ。残念ながらこのことはまだ実現されていないが、これから実現してもらえる望みはあると思う。Ofoto の社長は Apple 経由のプリント注文には専用のカラー修正を施すというアイデアに対して前向きの意向を示してくれたようだ。しかし現在のところ、この問題の唯一の解決策は画像をすべて iPhoto 以外のアプリケーション、例えば Photoshopや GraphicConverter などで編集し直すことしかなく、現実問題としてはたいていのユーザーには無理なことだろう。Caffeine Software の無料の(しかも素晴しくステキな)ツール、PixelNhance を使って写真をすべて編集するのも良い手段だが、これもたいていの人にとっては、そこまでする気にはなれない、というものかもしれない。

<http://www.adobe.com/products/photoshop/>
<http://www.graphicconverter.net/>
<http://www.caffeinesoft.com/products/pnh/pnh_index.html>

いくつかのサービスにこの問題の苦情を言ってみたが、今のところまだ解決策は見えていない。Shutterfly も応答してくれて、顧客の登録したコンピュータプラットフォームに合わせた設定を提供することを検討中との返事をもらえたが、残念ながら(こういう話題になると「残念ながら」という言葉が何度も出てくる)確約は何もしてくれなかった。

最も重要なテスト: 品質 -- テストのため、私は同じ6つのファイルをすべてのサービスに送って、各社のプリントの仕上がりを比較してみた。驚くべきことに、同じ写真なのに、仕上がりのプリントはサービスによって比べてみれば大きく違う、という結果になった。加えて、私の思い通りの仕上がりになったものは一つもなかった。これは先ほど述べたガンマ値の問題もあるだろうし、また私の PowerBook G4 の素晴しいモニタ画面の輝度を紙の上に複製することはそもそも不可能、ということもあるかもしれない。

こうして、各社から送られてきた(とても満足のいくものとは言えない)プリントを手にして私が次にとった行動は、各社のプリントを比較してどれがベストなものかを見極めよう、ということだった。現に目の前に並べてあるのだから、当然見て比べればどれが一番良いかはわかるはずだ! 自分だけの好みに片寄らないために、私の妻と、私の母、それに幾人かの友達にも頼んで見てもらい、単純にそれぞれの写真ごとに各社のプリントのうちどれが一番良いと思うか、意見を聞かせてもらった。またすべてのプリントについて「良い」「どちらとも言えない」「悪い」のランク付けもしてもらった。

どのサービスからのプリントも細かいところまでくっきりと写っており、いつもドラッグストアで受け取るのと同じ普通の分厚い材質のプリントだった。問題はカラーの色調だけだった。全般に予想よりも暗い色調だったのは先ほど説明した通りだが、それに加えてあるものは全体に金色がかって(写っている人がみんなオスカー賞の像のように見えて)いたり、またあるものは茶色がかって(色白の友人がよく日焼けしたように見え、インド人の私の妻や妻の親戚たちは暗い色の泥を塗りたくったような顔に見えて)しまったり、という具合だった。一番ひどかったのは dotPhoto から(dotPhoto はアップロード用の Macintosh アプリケーションが無かったのだが、値段が最も安いために比較テストに残したのだった)のセットの1つで、すべてが緑色がかって(iMac のカラーで言えばセージ色、船酔いした顔色と蛙のカーミットの顔色の中間くらい)写っていた。それ以外のものもすべて色がさめたような感じで、どのセットでも、私の妻の黒いコートや私の友人のタキシードの細かい部分はカラーの問題のせいで判別できない状態だった。

そしてさらに私を驚かせたことには、さらにびっくりするような問題点がプリント工程そのものの中に潜んでいたのだ。同じ写真、同じデジタルファイルであっても、Ofoto、Apple、ImageStation の各社からプリントされて来たものは、すべて(実はどれもみな Ofoto 社でプリントされたのだが)どれがどのセットかが一目で判別できるほど違っていることが多かった。Ofoto だけではない。私は間違って同じ注文を dotPhoto あてに2回出してしまったのだが、その結果届いた2つのセットはこんなに違うのかと驚くほど違っていた。片方は全テストの中で断然最悪のセットで、もう片方は何とベストのセットに近いと言ってもよいくらいのものだった。同じ会社なのになぜこんなに違うのか? その理由は、もとのファイルは確かにデジタルだが、実際にプリントする工程のほとんどはケミカル、アナログなもの(普通の写真を現像・プリントするのと同じ RA4 プロセス)を、どのサービスでも使っているからだ。さらに、少なくとも Ofoto では一日に数回、設備の再調整を行なっているが、それでも温度や湿度の変化に伴って、わずかだが、しかし目で見てわかるほどの影響が、製品に現われてしまうのだ。

実際のところ、最大の問題は、いろいろのサービスでのプリントの品質にあまりにも違いがありすぎることだった。どのサービスから届いた写真も、「良い」「どちらとも言えない」「悪い」のすべてのランクに分かれて分布した。ベストと言えるほどに傑出したセットは一つもなかった。比較の結果を何万回も見直したあげく、妻は私にどのサービスに注文を出すつもりかと聞いた。品質があまりにもまちまちだったので、私には答えを出すことができなかった。はっきり良いと言えるようなサービスは無かったのである。

とにかく、私はこの結果に心底がっかりした。どれかがベストな写真、という結果になることを、私は本当に希望していたのだ。私は、Ofoto を利用した Apple のサービスが一番、という趣旨でこの記事の第一原稿を書き始めてさえいたのだ。なぜなら、きっとここならあのガンマ値の問題に対策をしてくれているはずだと思ったからだ。でも、プリントの結果をみれば、実際はそうではないことがわかった。コンピュータ画面で見るカラーとマッチしていたのは唯1つ、私が自分で直接 iPhoto から印刷した写真集だけだった。(これはレーザーライターによる印刷で、本当の写真プリントのような細部までくっきりと写った画質は望めるはずもない。)使いやすいウェブサイトの Shutterfly が一番になって欲しいとも思ったが、プリントの画質は他のものと比べて一長一短だった。画像の実際の縦横比と同じサイズにプリントしてくれる PhotoAccess にも気持ちが引かれたが、これもコンスタントな品質というわけにはいかなかった。

完璧な写真なんて無い -- 結局、1つのサービスにしぼることはできなかった。Apple の iPhoto は注文の易しさでは一番だが、関連商品は一番少ない。dotPhoto は値段が一番安いが、使いにくさも一番で、品質最悪のセットはここからのものだった。Ofoto はプリントの到着が一番早かった。PhotoAccess には 1.33 対 1 の縦横比でのプリントのオプションがあり、また関連商品も一番多かったが、プリントの色調が(他のと同様)あまりにも暗すぎた。Shutterfly はウェブサイトが最高でカスタマーサービスも素晴しく、Mac をサポートしてくれる実績も一番だったが、やはり他と同様カラーの問題を抱えていた。

ほとんどのサービスでは最初にサインアップした際に無料プリント(送料のみ実費)の特典があるので、いくつかのサービスをまず試してみるのも良い考えだろう。私の場合は、iPhoto を通じての注文の易しさと、将来 Macintosh ユーザーのために出力の色調を調整してくれるだろうとの期待をこめて、まずは Apple/Ofoto のコンビを選ぶのを基本にしようかと考えている。しかし、Apple のサービスでは手に入らない商品(例えばマウスパッド、マグカップ、その他)に興味がある時などは、ぜひ Shutterfly や PhotoAccess での注文もやってみたいと思う。

テストの結果はバラバラになってしまったけれど、依然として私はデジタル写真をプリントするベストの方法はオンラインサービスでの注文だと思っている。別の方法としては、前回の記事でも触れたように、インクジェットプリンターを使って自分で印刷するというのもある。TidBITS 読者の皆さんから、こちらの方法に関する反響を多数頂いて、大きいサイズのプリントに使うならば充分コストの節約になるとか、画像の品質に関しては充分比較に耐えるものができるとかいう意見も頂いた。自宅で写真を印刷する経験を積んだ読者の方からのお手伝いがもし頂けたら、いつかまた新たな記事で自宅での写真印刷について探究してみたいと思う。

[Alexander Mishra Hoffman はニューヨーク在住の IT マネージャで、レッドソックスとペイトリオッツのファン、そして、新婚さんである。]


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA